(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157356
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】成長促進剤、及び育成方法
(51)【国際特許分類】
A01K 61/10 20170101AFI20241030BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A01K61/10
A01K63/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071676
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】金 美貞
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊秋
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104AA13
2B104BA09
2B104CA01
2B104EB05
2B104EB20
(57)【要約】
【課題】確実に水生動物の成長促進を図ることができる成長促進剤を提供する。
【解決手段】水生動物Aの育成に用いる成長促進剤1であって、葛根湯と、葛根湯の全質量に対して0.05~5.00質量%のダイゼインとを含むことを特徴とする。成長促進剤1を用いて水生動物Aと植物とを育成する育成方法としては、水生動物Aを育成する養殖槽11内に成長促進剤1を供給する成長促進剤供給工程と、成長促進剤供給工程で供給された成長促進剤1を摂取した水生動物Aの排泄物の生分解により分解液を生成し、植物に供給する分解液供給工程と、を備える。水生動物Aを育成する養殖槽内の飼育水に少なくとも酸素を含む気体を吹き込んで、マイクロバブル又はナノバブルを生成する気泡生成工程をさらに備えてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生動物の育成に用いる成長促進剤であって、
葛根湯と、
前記葛根湯の全質量に対して0.05~5.00質量%のダイゼインと
を含むこと
を特徴とする成長促進剤。
【請求項2】
前記水生動物は、魚類であること
を特徴とする請求項1に記載の成長促進剤。
【請求項3】
前記ダイゼインの全質量に対して3.3~20.0質量%のゲニステインをさらに含むこと
を特徴とする請求項1に記載の成長促進剤。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに記載の成長促進剤を用いる育成方法であって、
水生動物を育成する養殖槽内に前記成長促進剤を供給する成長促進剤供給工程を備えること
を特徴とする育成方法。
【請求項5】
前記養殖槽内の飼育水に少なくとも酸素を含む気体を吹き込んで、マイクロバブル又はナノバブルを生成する気泡生成工程をさらに備えること
を特徴とする請求項4に記載の育成方法。
【請求項6】
前記成長促進剤供給工程で供給された前記成長促進剤を摂取した前記水生動物の排泄物を、前記養殖槽内の飼育水を循環利用する水耕栽培槽において生分解することで分解液を生成し、当該分解液を前記水耕栽培槽に収容される植物に供給する分解液供給工程をさらに備えること
を特徴とする請求項4に記載の育成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水生動物の育成に用いられる成長促進剤、及び当該成長促進剤を用いる育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、水生動物を効率よく成長させる技術について研究されている。例えば水生動物の養殖において、水生動物の成長を促進することは、出荷までの所要期間を短縮化するなどの生産効率の向上につながる。また、キャビアが採取されるチョウザメのように育成期間の長い水生動物は、順調な生育環境の維持や致死原因の対策など、生産リスクの高さが問題視されている。そのため、水生動物の成長を促進することは、生存率の低下抑制などの生産リスクの抑制を図る上でも重要な問題である。
【0003】
特許文献1には、イソフラボン配糖体を含む魚類用薬剤、又はイソフラボン配糖体と葛根等の生薬を含む魚類用薬剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された魚類用薬剤によれば、薬剤に含まれるイソフラボン及びイソフラボン配糖体のうち少なくとも何れかが、魚類の体重kgあたり2~4mgであることがとくに好ましいとされている。しかしながら、魚類を効率よく成長させるための、イソフラボンに分類される具体的な有効成分の含有量や配合比率については、記載も示唆もされていない。そのため、特許文献1に開示された魚類用薬剤では、魚類の成長促進の再現性に問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、確実に水生動物の成長促進を図ることができる成長促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明における成長促進剤は、水生動物の育成に用いる成長促進剤であって、葛根湯と、前記葛根湯の全質量に対して0.05~5.00質量%のダイゼインと、を含むことを特徴とする。
【0008】
第2発明における成長促進剤は、第1発明において、前記水生動物は、魚類であることを特徴とする。
【0009】
第3発明における成長促進剤は、第1発明において、前記ダイゼインの総重量に対して3.3~20.0質量%のゲニステインをさらに含むことを特徴とする。
【0010】
第4発明における育成方法は、第1発明~第3発明の何れかの成長促進剤を用いる育成方法であって、水生動物を育成する養殖槽内に前記成長促進剤を供給する成長促進剤供給工程を備えることを特徴とする。
【0011】
第5発明における育成方法は、第4発明において、前記養殖槽内の飼育水に少なくとも酸素を含む気体を吹き込んで、マイクロバブル又はナノバブルを生成する気泡生成工程をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
第6発明における育成方法は、第4発明において、前記成長促進剤供給工程で供給された前記成長促進剤を摂取した前記水生動物の排泄物を、前記養殖槽内の飼育水を循環利用する水耕栽培槽において生分解することで分解液を生成し、当該分解液を前記水耕栽培槽に収容される植物に供給する分解液供給工程をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明~第3発明によれば、成長促進剤は、葛根湯と、葛根湯の全質量に対して0.05~5.00質量%のダイゼインとを含む。このため、水生動物の体重を効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物の成長促進を図ることができる。
【0014】
特に、第3発明によれば、成長促進剤は、ダイゼインの総重量に対して3.3~20.0質量%のゲニステインをさらに含む。このため、水生動物の体重をさらに効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物のさらなる成長促進を図ることができる。
【0015】
第4発明によれば、水生動物を育成する養殖槽内に成長促進剤を供給する成長促進剤供給工程を備える。このため、水生動物の体重を効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物の成長促進を図ることができる。
【0016】
第5発明によれば、養殖槽内の飼育水に少なくとも酸素を含む気体を吹き込んで、マイクロバブル又はナノバブルを生成する気泡生成工程をさらに備える。このため、水生動物の体重をさらに効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物のさらなる成長促進を図ることができる。
【0017】
第6発明によれば、成長促進剤を摂取した水生動物の排泄物を水耕栽培槽において生分解することで分解液を生成し、当該分解液を水耕栽培槽に収容される植物に供給する分解液供給工程をさらに備える。このため、水生動物の体重と植物の重量とを効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物と植物との成長促進を同時に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1実施形態における育成システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態における育成システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第2実施形態における育成システムの一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態における育成システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第3実施形態における育成システムの一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態における育成システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態としての成長促進剤、及び成長促進剤を用いた育成方法の一例について、図面を参照しながら詳細に説明をする。なお、各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0020】
(第1実施形態:成長促進剤1)
成長促進剤1は、例えば
図1に示すように、水生動物Aに供給される。成長促進剤1は、水生動物Aの成長促進を図るために用いられる。
【0021】
成長促進剤1は、漢方薬の一種である公知の葛根湯を含む。葛根湯は、葛根を主成分とし、タイソウ、(大棗:ナツメ)、マオウ(麻黄)、カンゾウ(甘草)、ケイヒ(桂皮)、シャクヤク(芍薬)、ショウキョウ(生姜)等を含む。
【0022】
成長促進剤1は、イソフラボン類を含む。イソフラボン類は、例えばグリコシド型(配糖体)とアグリコン型とに大別される。グリコシド型イソフラボンは、分子量が大きく生物に吸収されにくい。一方で、アグリコン型イソフラボンは、グリコシド型イソフラボンから糖が分離した状態であり、グリコシド型イソフラボンよりも分子量が小さい。そのため、アグリコン型イソフラボンを摂取した生物は、例えば抗炎症作用や抗酸化作用など、イソフラボンの各種生理作用の効果を得ることができる。成長促進剤1は、アグリコン型イソフラボンを含むため、成長促進剤1を摂取する水生動物Aに対して、イソフラボンの各種生理作用効果が提供され得る。
【0023】
成長促進剤1は、イソフラボン類(大豆イソフラボン)の一種であるダイゼインを含む。本実施形態において好適に用いられるダイゼインの含有量は、成長促進剤1の全質量に対して0.05~5.00質量%である。ダイゼインの含有量が成長促進剤1の全質量に対して0.05質量%未満の場合、水生動物Aの体重を増加させることができない。また、ダイゼインの含有量が成長促進剤1の全質量に対して5.00質量%超の場合も同様に、水生動物Aの体重を増加させることができない。このため、ダイゼインの含有量は、成長促進剤1の全質量に対して0.05~5.00質量%であることが好ましい。この場合、水生動物Aの体重を効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物Aの成長促進を図ることができる。ダイゼインの質量%に応じた成長促進剤1の効用については、後述の実施例において説明する。また、水生動物Aが魚類の場合、より確実に成長促進を図ることができる。
【0024】
また、成長促進剤1は、ダイゼインに加えて、例えばイソフラボン類の一種であるゲニステインを含んでもよい。本実施形態において好適に用いられるゲニステインの含有量は、ダイゼインの全質量に対して3.3~20.0質量%である。ゲニステインの含有量がダイゼインの全質量に対して3.3質量%未満の場合、ゲニステインを含有しない場合と比べて、水生動物Aの体重を増加させることができない。また、ダイゼインの含有量がダイゼインの全質量に対して20.0質量%超の場合も同様に、水生動物Aの体重を増加させることができない。このため、ゲニステインの含有量は、ダイゼインの全質量に対して3.3~20.0質量%であることが好ましい。この場合、水生動物Aの体長及び体重をさらに効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物Aのさらなる成長促進を図ることができる。ゲニステインの質量%に応じた成長促進剤1の効用については、後述の実施例において説明する。
【0025】
成長促進剤1は、イソフラボン以外の成分として、例えばカルシウム、マグネシウム、カリウム、及びリンのうち少なくとも1以上を含んでもよい。イソフラボン以外の各成分の濃度は、例えば0.003%~0.2%である。
【0026】
水生動物Aとしては、河川、湖沼、地下水、海洋などの水域に生息する動物が含まれる。水生動物Aの具体例としては、例えば遊泳力に優れる遊泳動物、遊泳力のない浮遊動物、水底で生活する底生動物等が含まれる。遊泳動物は、例えば魚類(メダカ、ベステルチョウザメなど)、クジラ類、イカ類、水生昆虫などが含まれる。
【0027】
(第1実施形態:成長促進剤1を用いた育成システム100)
図1を参照して、本発明の実施形態に係る成長促進剤1を用いた育成システム100の一例を説明する。
図1は、本実施形態に係る育成システム100の一例を示す模式図である。
【0028】
<育成システム100>
育成システム100は、養殖槽11を備える。育成システム100は、例えば海上養殖に用いられてもよく、陸上養殖に用いられてもよい。育成システム100は、天然環境から継続的に海水や淡水を養殖槽11内の飼育水110として引き込むかけ流し式でもよく、養殖槽11内の飼育水110を浄化しながら循環利用する閉鎖循環式でもよい。
【0029】
育成システム100は、図示しない供給機構を介して、養殖槽11に成長促進剤1を供給してもよい。育成システム100は、図示しない公知の供給機構(魚用自動給餌機など)を介して、養殖槽11に成長促進剤1と水生生物Aの餌とを供給してもよい。
【0030】
成長促進剤1は、例えば乾燥した固形の状態で、水生動物Aを収容する養殖槽11に供給される。
【0031】
<養殖槽11>
養殖槽11は、飼育水110と水生動物Aとを収容する。養殖槽11は、例えば水生動物Aを収容する生け簀や水槽等である。養殖槽11内を遊泳する水生動物Aは、外部から成長促進剤1が供給されるとともに、水生動物Aが摂取するための餌が供給される。
【0032】
(第1実施形態:成長促進剤1を用いた育成方法)
図2を参照して、本発明の実施形態に係る成長促進剤1を用いた育成方法の一例を説明する。
図2は、本実施形態における育成システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0033】
成長促進剤1を用いた育成方法は、成長促進剤供給工程S11を備える。
【0034】
<成長促進剤供給工程S11>
成長促進剤供給工程S11において、育成システム100は、水生動物Aを育成する養殖槽11内に成長促進剤1を供給する。この場合、水生動物Aの体長及び体重を効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物Aの成長促進を図ることができる。養殖槽11に供給する成長促進剤1の効用については、後述の検証実験において実験データに基づいて説明する。
【0035】
本実施形態によれば、成長促進剤1は、葛根湯と、葛根湯の全質量に対して0.05~5.00質量%のダイゼインと、を含む。このため、水生動物Aの体重を効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物Aの成長促進を図ることができる。
【0036】
本実施形態によれば、成長促進剤1は、ダイゼインの全質量に対して3.3~20.0質量%のゲニステインをさらに含む。このため、水生動物Aの体重をさらに効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物Aのさらなる成長促進を図ることができる。
【0037】
本実施形態によれば、水生動物Aを育成する養殖槽11内に成長促進剤1を供給する成長促進剤供給工程S11を備える。このため、水生動物Aの体重を効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物Aの成長促進を図ることができる。
【0038】
(第2実施形態:成長促進剤1を用いた育成システム100)
図3を参照して、本発明の実施形態に係る成長促進剤1を用いた育成システム100の一例を説明する。
図3は、本実施形態における育成システム100の一例を示す模式図である。本実施形態は、養殖槽11内の飼育水110にマイクロバブル又はナノバブルを吹き込む点で、第1実施形態とは異なる。なお、上述の内容と同様の構成については、説明を省略する。
【0039】
<育成システム100>
育成システム100は、気泡発生装置2をさらに備える。
【0040】
<養殖槽11>
養殖槽11は、収容する飼育水110に少なくとも酸素を含む気体を吹き込み、マイクロバブル又はナノバブルを生成する。養殖槽11内を遊泳する水生動物Aは、マイクロバブル又はナノバブルが吹き込まれた飼育水110内において、外部から成長促進剤1が供給されるとともに、水生動物Aが摂取するための餌が供給される。マイクロバブル又はナノバブルが生成された飼育水110内に供給される成長促進剤1の効用については、後述の検証実験において実験データに基づいて説明する。
【0041】
<気泡発生装置2>
気泡発生装置2は、養殖槽11内の飼育水110にマイクロバブル又はナノバブルを生成する。気泡発生装置2は、例えば公知のマイクロバブル発生装置又はナノバブル発生装置を用いてもよい。気泡発生装置2は、養殖槽11と接続される。気泡発生装置2は、少なくとも酸素を含む気体を飼育水110に吹き込むことにより、酸素ナノバブル水(酸素ナノバブル含有飼育水)を生成する。
【0042】
気泡発生装置2による酸素ナノバブル水の生成方法は、例えば酸素や空気等の気体を加圧して、飼育水110中に過飽和で溶解させ、急減圧により、液中にマイクロバブルとナノバブルを発生させ、マイクロバブル浮上分離後、ナノバブルのみ液中に残留させることにより実現し得る。ただし、酸素ナノバブル水は、ナノオーダー(1μm以下)の直径の酸素ガスの微細気泡を含有する水のことを指しており、ナノオーダーの酸素ガスの微細気泡に加え、マイクロオーダー(1~100μm)の微細酸素ガスを含有するマイクロナノバブル水(酸素マイクロバブル含有飼育水)としてもよい。また、気泡発生装置2は、酸素ナノバブル又は空気ナノバブルのいずれか一方或いはその両方を含む少なくともナノサイズの微細気泡として酸素を含有する酸素ナノバブル水を生成してもよい。酸素ナノバブル水の具体例としては、直径200nm以下の気泡のうち平均直径50nm~100nmの気泡が9割程度含まれ、気泡の濃度が2×103個/mL~6×109個/mLである。
【0043】
酸素ナノバブル水の生成方式としては、例えば酸素気体と水を混合し、高速で旋回させることで酸素の気泡を作る「旋回流方式」、酸素気体に圧力をかけ、水中に溶け込ませて、一気に開放することで酸素の気泡を作る「加圧溶解方式」、オリフィス等の微細孔へ酸素気体に圧力をかけて通すことで酸素の気泡を作る「微細孔方式」、超音波でキャビテーションを起こして水中の酸素気体を膨張させて酸素の気泡を作る「超音波方式」、突起物が設けられた気液流路内において気体を旋回させ粉砕して気泡を作る「スタティックミキサー式」、気液流路内に急激な圧力変化を形成して気泡を作る「エゼクター式」又は「ベンチュリ―式」等が例示される。なお、酸素ナノバブル水の生成方式は、特に限定されるものではなく、マイクロオーダー(1~100μm)の微細酸素ガスを含有するマイクロナノバブル水を生成できる手段であればよい。
【0044】
飼育水110中にマイクロバブル又はナノバブルを生成することで、飼育水110中の水生生物Aは、活動が活発になり、成長が促進される。
【0045】
(第2実施形態:成長促進剤1を用いた育成方法)
図4を参照して、本発明の実施形態に係る成長促進剤1を用いた育成方法の一例を説明する。
図4は、本実施形態における育成システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0046】
成長促進剤1を用いた育成方法は、気泡生成工程S12をさらに備える。気泡生成工程S12と、成長促進剤供給工程S11とは、どちらか一方が先に実施されてもよく、同時に実施されてもよい。
【0047】
<気泡生成工程S12>
気泡生成工程S12において、育成システム100は、気泡発生装置2を介して、水生動物Aを育成する養殖槽11内の飼育水110に少なくとも酸素を含む気体を吹き込み、マイクロバブル又はナノバブルを生成する。
【0048】
<成長促進剤供給工程S11>
育成システム100は、例えばマイクロバブル又はナノバブルが生成された飼育水110を収容する養殖槽11内に、成長促進剤1を供給してもよい。この場合、水生動物Aの体重をさらに効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物Aのさらなる成長促進を図ることができる。マイクロバブル又はナノバブルを生成した飼育水110を収容する養殖槽11に供給する成長促進剤1の効用については、後述の検証実験において実験データに基づいて説明する。
【0049】
上述した工程を実施し、本実施形態における育成システム100の動作は終了する。なお、育成システム100は、例えば上述した工程を繰り返し実施してもよい。
【0050】
本実施形態によれば、養殖槽11内の飼育水110に少なくとも酸素を含む気体を吹き込んで、マイクロバブル又はナノバブルを生成する気泡生成工程S12をさらに備える。このため、水生動物Aの体重をさらに効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物Aのさらなる成長促進を図ることができる。
【0051】
(第3実施形態:成長促進剤1を用いた育成システム100)
図5を参照して、本発明の実施形態に係る成長促進剤1を用いた育成システム100の一例を説明する。
図5は、本実施形態における育成システム100の一例を示す模式図である。本実施形態は、育成システム100が水耕栽培槽12さらに備える点で、第1実施形態とは異なる。なお、上述の内容と同様の構成については、説明を省略する。
【0052】
<育成システム100>
育成システム100は、植物Bを収容する水耕栽培槽12をさらに備える。育成システム100は、水耕栽培槽12において養殖槽11内の飼育水110を循環利用する、閉鎖循環式である。
【0053】
育成システム100は、飼育水110(後述の飼育水110aを含む)を殺菌消毒する殺菌消毒装置3、を備えてもよい。育成システム100は、養殖槽11内の飼育水110を水耕栽培槽12に供給する第1接続配管13と、水耕栽培槽12内の飼育水110を養殖槽11とに供給する第2接続配管14と、を備えてもよい。
【0054】
植物Bは、水耕栽培に対応可能な植物を指す。植物Bの例としては、キク科植物(リーフレタスなど)、ヒユ科植物(ホウレンソウ、スイスチャードなど)、ヒガンバナ科植物(ニラなど)、セリ科植物(パセリなど)、アブラナ科植物(クレソン、ワサビ菜など)、が含まれる。
【0055】
<水耕栽培槽12>
水耕栽培槽12は、植物Bを収容する。植物Bは、図示しない土台(スポンジ等)で水耕栽培槽12内に固定される。水耕栽培槽12は、養殖槽11から第1接続配管13を介して、成長促進剤1を摂取した水生生物Aの排泄物が含まれる飼育水110aが供給される。水耕栽培槽12は、水生生物Aの排泄物が含まれる飼育水110aとともに、水生生物Aの排泄物が含まれない飼育水110が供給されてもよい。
【0056】
水耕栽培槽12は、槽内に収容する図示しない微生物の分解作用により、飼育水110aに含まれる排泄物を生分解し、分解液120を生成する。水耕栽培槽12に収容される植物Bは、分解液120が供給される。水耕栽培槽12に収容する微生物としては、例えば硝化菌が挙げられる。
【0057】
水耕栽培槽12は、第2接続配管14を介して、水耕栽培槽12内の飼育水等(飼育水110、飼育水110a、分解液120を含む)を養殖槽11に供給する。
【0058】
<養殖槽11>
養殖槽11は、第1接続配管13を介して、成長促進剤1を摂取した水生生物Aの排泄物が含まれる飼育水110aを供給する。養殖槽11は、第2接続配管14及び殺菌消毒装置3を介して、水耕栽培槽12内の飼育水等を殺菌消毒した飼育水が供給される。
【0059】
<殺菌消毒装置3>
殺菌消毒装置3は、水耕栽培槽12から排出される飼育水等を殺菌消毒する。殺菌消毒装置3は、例えば第2接続配管14に設けられる。殺菌消毒装置3は、例えば公知の紫外線殺菌浄化装置、オゾン発生装置や次亜塩素酸水生成装置等が用いられる。
【0060】
(第3実施形態:成長促進剤1を用いた育成方法)
図6を参照して、本発明の実施形態に係る成長促進剤1を用いた育成方法の一例を説明する。
図6は、本実施形態における育成システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0061】
成長促進剤1を用いた育成方法は、分解液供給工程S13をさらに備える。分解液供給工程S13は、成長促進剤供給工程S11の後であれば、気泡生成工程S12の前後で実施されてもよく、同時に実施されてもよい。成長促進剤供給工程S11の後、養殖槽11は、成長促進剤1を摂取した水生動物Aの排泄物を含む飼育水110aを水耕栽培槽12に供給する。すなわち、水生動物Aの排泄物には、成長促進剤1由来の成分が含まれ得る。
【0062】
<分解液供給工程S13>
分解液供給工程S13において、育成システム100は、成長促進剤供給工程S11で供給された成長促進剤1を摂取した水生動物Aの排泄物を、水耕栽培槽12において生分解することで分解液120を生成し、分解液120を水耕栽培槽12に収容される植物Bに供給する。育成システム100は、水耕栽培槽12内の微生物により、水耕栽培槽12内の飼育水110aを生分解し、分解液120を生成する。育成システム100は、水耕栽培槽12内の分解液120の一部を水耕栽培槽12から排出し、殺菌消毒装置3を介して養殖槽11に供給する。この場合、水生動物Aの体重と植物Bの重量とを効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物Aと植物Bとの成長促進を同時に図ることができる。水耕栽培槽12に繋がれた養殖槽11に供給する成長促進剤1の効用については、後述の検証実験において実験データに基づいて説明する。
【0063】
また、気泡生成工程S12をさらに備えることで、水生動物Aの体重をさらに効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物Aと植物Bとのさらなる成長促進を同時に図ることができる。水耕栽培槽12に繋がれ、マイクロバブル又はナノバブルを生成した飼育水110を収容する養殖槽11に供給する成長促進剤1の効用については、後述の検証実験において実験データに基づいて説明する。
【0064】
上述した工程を実施し、本実施形態における育成システム100の動作は終了する。なお、育成システム100は、例えば上述した工程を繰り返し実施してもよい。
【0065】
本実施形態によれば、成長促進剤1を摂取した水生動物Aの排泄物を水耕栽培槽12において生分解することで分解液120を生成し、当該分解液120を水耕栽培槽12に収容される植物Bに供給する分解液供給工程S13をさらに備える。このため、水生動物Aの体重と植物Bの重量とを効率よく増加させることができる。これにより、確実に水生動物Aと植物Bとの成長促進を同時に図ることができる。
【実施例0066】
以下に、上述した実施形態を用いた場合の本発明例及び比較例を挙げて具体的に説明する。
【0067】
<成長促進剤1の検証実験1>
本発明に係る、ダイゼインの質量%に応じた成長促進剤1の効用に関する検証実験について説明する。本実験では、他の物質を意図的に添加しない略純粋な葛根湯とダイゼインとを乾燥した状態で特定の重量比で混合して調製する。このため、葛根湯の総重量に対するダイゼインの重量%に応じた効果は、葛根湯の全質量に対するダイゼインの質量%に応じた効果と同等の効果を示すものといえる。
【0068】
本実験では、ダイゼインを含有しない成長促進剤1を供給した水生動物Aの育成期間90日の体長及び体重と、ダイゼインを含有する成長促進剤1を供給した水生動物Aの育成期間90日の体長及び体重と、から体長増加率及び体重増加率を算出し、特に体重増加率を基準として水生動物Aの成長促進効果が認められるダイゼインの重量を確認した。なお、本実験では、乾燥状態の固形の成長促進剤1を、水生動物Aを収容する養殖槽11内に供給した。成長促進剤1に含まれる葛根湯としては、株式会社ツムラ(登録商標)製の「ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A」を用いた。成長促進剤1に含まれるダイゼインとしては、長良サイエンス株式会社製のダイゼインを用いた。
【0069】
なお、本実験における水生動物Aとしては、メダカとベステルチョウザメとを用いた。各実験に用いたメダカは、1試験区あたり20匹であり、平均体長が1.07cm、平均体重が0.04gであった。各実験に用いたベステルチョウザメは、1試験区あたり12匹であり、平均体長が20.0cm、平均体重が15.2gであった。また、その他の条件として、無調整の淡水を飼育水110として用いており、飼育水110の水温は約25℃、飼育水110のpHは7.2~8.3、飼育水110の溶存酸素量は6.8mg/L~9.0mg/Lであった。また、餌供給率((養殖槽11への餌供給量-養殖槽11内の1日後餌残存量)÷餌供給量)は、いずれも約2%であった。成長促進剤1の供給方法としては、予めダイゼインの含有量を調整した成長促進剤1を餌と混合して供給した。また、成長促進剤1の供給回数としては、メダカには1日1回ベステルチョウザメには1日3回、それぞれ供給した。
【0070】
ここで、「体長」とは、メダカの口先から尻尾までの長さを指すものとする。平均体長の測定方法としては、メダカの体長合計を物差しで計測し、養殖槽11(ビーカー、水槽を含む)内の個体数で除して平均値を導出した。平均体重の測定方法としては、メダカ(ベステルチョウザメ)と養殖槽11と飼育水110の総重量と、養殖槽11と飼育水110の重量と、を電子天秤(メダカ:TX423N、ベステルチョウザメ:AXC30K01)で測定し、総重量から養殖槽11と飼育水110の重量を差し引き、その差分を養殖槽11内の個体数で除して導出した。平均体長及び平均重量の測定方法については、以降の検証実験においても同様とする。
【0071】
また、成長促進効果が認められるダイゼインの重量を特定するために、葛根湯の乾燥重量1gに対して、後述の表1に示すとおり所定量のダイゼインを添加して、比較例2~3、及び本発明例1~15の成長促進剤1を調整した。なお、比較例1の成長促進剤1としては、ダイゼイン無添加の葛根湯を用いた。なお、比較例2~3及び本発明例1~15の体長増加率及び体重増加率は、比較例1に対する増加率を示す。
【0072】
また、体長増加率及び体重増加率に基づき成長促進効果が確認された場合、その効果の程度を低い順に「可」「良」「優」の3段階で評価した。
【0073】
本実験の結果は、表1のとおりである。
【0074】
【0075】
本発明例1~15では、葛根湯の乾燥重量1gあたりのダイゼイン重量を0.50mg~50.00mgとした。すなわち、葛根湯の総重量に対して0.05~5.00重量%のダイゼインを含む成長促進剤1を用いた。その結果、比較例1に対する体重増加率が0より大きい値であった。このため、水生動物Aの成長促進を図ることができる。
【0076】
比較例2では、葛根湯の乾燥重量1gあたりのダイゼイン重量を0.20mgとした。すなわち、葛根湯の総重量に対して0.05重量%未満のダイゼインを含む成長促進剤1を用いた。その結果、比較例1に対する体重増加率が0%であった。このため、比較例2では、水生動物Aの成長を促進することができない。
【0077】
比較例3では、葛根湯の乾燥重量1gあたりのダイゼイン重量を70.00mgとした。すなわち、葛根湯の総重量に対して5.00重量%超のダイゼインを含む成長促進剤1を用いた。その結果、比較例1に対する体重増加率が0%であった。このため、比較例2では、水生動物Aの成長を促進することができない。
【0078】
以上の結果から、ダイゼインの重量%に応じた成長促進剤1の効用に関する評価結果は、0.05~5.00重量%で「可」とし、より高い効果が確認された0.50~2.50重量%で「良」、さらに高い効果が確認された1.70~2.20重量%で「優」とした。
【0079】
すなわち、水生動物Aの成長促進を図るうえで、水生動物Aに供給する成長促進剤1に含まれる好適なダイゼインの量は、葛根湯の総重量に対して0.05~5.00重量%であり、より好ましくは0.50~2.50重量%であり、さらに好ましくは1.70~2.20重量%である。また、この結果を葛根湯の全質量に対する質量割合に換算すると、水生動物Aに供給する成長促進剤1に含まれる好適なダイゼインの質量割合は、葛根湯の全質量に対して0.05~5.00質量%であり、より好ましくは0.50~2.50質量%であり、さらに好ましくは1.70~2.20質量%である。
【0080】
<成長促進剤1の検証実験2>
次に、本発明に係る、ゲニステインの質量%に応じた成長促進剤1の効用に関する検証実験について説明する。本実験では、他の物質を意図的に添加しない略純粋な葛根湯とダイゼインとゲニステインとを乾燥した状態で特定の重量比で混合して調製する。このため、ダイゼインの総重量に対するゲニステインの重量%に応じた効果は、ダイゼインの全質量に対するゲニステインの質量%に応じた効果と同等の効果を示すものといえる。なお、成長促進剤1に含まれる葛根湯及びダイゼインは検証実験1と同様であり、ゲニステインとしては、長良サイエンス株式会社製のゲニステインを用いた。
【0081】
本実験では、ゲニステインを含有しない成長促進剤1を供給した水生動物Aの育成期間90日の体長及び体重と、少なくともゲニステインを含有する成長促進剤1を供給した水生動物Aの育成期間90日の体長及び体重と、から体長増加率及び体重増加率を算出し、特に体重増加率を基準として水生動物Aの成長促進効果が認められるゲニステイン含有量を確認した。
【0082】
なお、本実験における水生動物Aとしては、メダカを用いた。各実験に用いたメダカは、1試験区あたり30匹であり、平均体長が1.03cm、平均体重が0.04gであった。また、その他の条件として、無調整の淡水を飼育水110として用いており、飼育水110の水温は約25℃、飼育水110のpHは7.2~8.3、飼育水110の溶存酸素量は6.8mg/L~9.0mg/Lであった。成長促進剤1の供給方法としては、検証実験1と同様である。
【0083】
また、さらなる成長促進効果が認められるゲニステインの重量を特定するために、葛根湯の乾燥重量1gに対して、後述の表2に示すとおり所定量のゲニステインを添加して、成長促進剤1を調整した。本実験では、ダイゼインを含有しゲニステインを含有しない成長促進剤1を供給した例を本発明例16、ダイゼイン及びゲニステインを含有する成長促進剤1を供給した例をダイゼインとゲニステインの重量比ごとに本発明例17~25、ゲニステインを含有しダイゼインを含有しない成長促進剤1を供給した例を比較例4~7とし、比較例と各本発明例との結果に基づいて体長増加率及び体重増加率を算出した。なお、本発明例17~25及び比較例4~7の体長増加率及び体重増加率は、本発明例16に対する増加率を示す。
【0084】
また、体長増加率及び体重増加率に基づき成長促進効果が確認された場合、その効果の程度を低い順に「可」「良」「優」の3段階で評価した。
【0085】
本実験の結果は[表2]のとおりである。
【0086】
【0087】
本発明例18~24では、成長促進剤1のダイゼイン重量10mgに対するゲニステイン重量を0.33mg~2.00mgとした。すなわち、ダイゼイン総重量に対して3.3~20.0重量%のゲニステインを含む成長促進剤1を用いた。その結果、ゲニステインを含まない本発明例16に対する体重増加率が0より大きい値であった。このため、水生動物Aのさらなる成長促進を図ることができる。
【0088】
本発明例17では、成長促進剤1のダイゼイン重量10mgに対するゲニステイン重量を0.29mgとした。すなわち、ダイゼイン総重量に対して3.3重量%未満のゲニステインを含む成長促進剤1を用いた。その結果、ゲニステインを含まない本発明例16に対する体重増加率が0%以下であった。このため、本発明例17では、水生動物Aのさらなる成長促進を図ることができない。
【0089】
本発明例25では、成長促進剤1のダイゼイン重量10mgに対するゲニステイン重量を10mgとした。すなわち、ダイゼイン総重量に対して20.0重量%超のゲニステインを含む成長促進剤1を用いた。その結果、ゲニステインを含まない本発明例16に対する体重増加率が0%以下であった。このため、本発明例25では、水生動物Aのさらなる成長促進を図ることができない。
【0090】
比較例4では、成長促進剤1のゲニステイン重量0.10mgとし、ダイゼインを含まない。その結果、ゲニステインを含まない本発明例16に対する体重増加率が0%以下であった。また、ダイゼインを含まず、ゲニステインをそれぞれ0.50mg、1.00mg、1.20mg含む比較例5~7の成長促進剤1についても同様に、本発明例16に対する体重増加率が0%以下であった。このため、比較例4~7では、水生動物Aのさらなる成長促進を図ることができない。
【0091】
以上の結果から、ゲニステインの重量%に応じた成長促進剤1の効用に関する評価結果は、ゲニステイン無添加の場合と比べてより高い効果が確認された3.3~20.0重量%で「良」、さらに高い効果が確認された約10.0重量%(6.7重量%超20.0重量%未満)で「優」とした。
【0092】
すなわち、水生動物Aの成長促進を図るうえで、水生動物Aに供給する成長促進剤1に含まれる好適なゲニステインの量は、成長促進剤1に含まれるダイゼインの総重量に対する重量割合が3.3~20.0重量%であり、より好ましくは約10.0重量%である。また、この結果をダイゼインの全質量に対する質量割合に換算すると、水生動物Aに供給する成長促進剤1に含まれる好適なゲニステインの質量割合は、ダイゼインの全質量に対して3.3~20.0質量%であり、より好ましくは約10.0質量%である。
【0093】
<成長促進剤1の検証実験3>
次に、本発明に係る、マイクロバブル又はナノバブルを生成した飼育水110を収容する養殖槽11に供給する成長促進剤1の効用に関する検証実験について説明する。
【0094】
本実験では、飼育水110中にバブルを生成せずに成長促進剤1を供給した水生生物Aの0週~12週の体長及び体重と、ナノバブルが生成された飼育水110内に成長促進剤1を供給した水生生物Aの0週~12週の体長及び体重と、から体長増加率及び体重増加率を算出し、特に体重増加率を基準として水生動物Aの成長促進効果を確認した。
【0095】
なお、本実験における水生動物Aとしては、メダカとベステルチョウザメとを用いた。各実験に用いたメダカは、全90匹である。各実験に用いたベステルチョウザメは、全48匹である。また、その他の条件として、無調整の淡水を飼育水110として用いており、飼育水110の水温は約25℃、飼育水110のpHは7.2~8.3、餌供給率は3%であった。また、成長促進剤1に含まれるダイゼインの重量は、いずれも葛根湯の乾燥重量1gあたり20mg(2.0重量%)とした。成長促進剤1の供給方法としては、検証実験1と同様である。
【0096】
本実験では、飼育水110中に気泡を生成せずに成長促進剤1をメダカに供給した例を本発明例26、飼育水110中に空気を吹き込んでナノバブルを生成するとともに成長促進剤1をメダカに供給した例を本発明例27、飼育水110中に酸素を吹き込んでナノバブルを生成するとともに成長促進剤1をメダカに供給した例を本発明例28、飼育水110中に気泡を生成せずに成長促進剤1をベステルチョウザメに供給した例を本発明例29、飼育水110中に空気を吹き込んでナノバブルを生成するとともに成長促進剤1をベステルチョウザメに供給した例を本発明例30とし、各本発明例の結果に基づいて体長増加率及び体重増加率を算出した。なお、本発明例27、28の体長増加率及び体重増加率は本発明例26に対する増加率を、本発明例30の体重増加率は本発明例29に対する増加率を、それぞれ示す。また、養殖槽11内のナノバブルについては、メダカ及びベステルチョウザメが稚魚の間はナノバブルの濃度が標準値(2×103個/mL~6×109個/mL)の1/3~1/10になるように気泡発生装置2の稼働時間を調節して調製し、成長期以降は気泡発生装置2を毎日3時間以上稼働させ、常に溶存酸素濃度が6.8ppm以上を維持するように管理した。
【0097】
本実験の結果は[表3]及び[表4]のとおりである。
【0098】
【0099】
【0100】
メダカの体長増加率の実験結果は以下のとおりである。本発明例27(空気吹き込み)においては、本発明例26に対する体長増加率が、育成期間3週で8.80%、育成期間6週で9.55%、育成期間9週で11.17%、育成期間12週で10.91%と、育成期間3週以降において継続的に0より大きい値であった。また、本発明例28(酸素吹き込み)においては、本発明例26に対する体長増加率が、育成期間3週で10.40%、育成期間6週で8.28%、育成期間9週で5.85%、育成期間12週で8.64%と、育成期間3週以降において継続的に0より大きい値であった。本発明例27、28を比較すると、育成期間12週においては本発明例27の方、すなわち飼育水110に空気を吹き込んでナノバブルを生成した養殖槽11内のメダカの方が、体長増加率が大きい値であった。
【0101】
メダカの体重増加率の実験結果は以下のとおりである。本発明例27(空気吹き込み)においては、本発明例26に対する体重増加率が、育成期間3週で20.00%、育成期間6週で11.11%、育成期間9週で16.67%、育成期間12週で12.50%と、育成期間3週以降において継続的に0より大きい値であった。また、本発明例28(酸素吹き込み)においては、本発明例26に対する体重増加率が、育成期間6週~9週では0%であったが、育成期間3週で40.00%、育成期間12週で6.25%と、育成期間3週及び12週で0より大きい値であった。本発明例27、28を比較すると、育成期間12週においては本発明例27の方が、体重増加率が大きい値であった。
【0102】
ベステルチョウザメの体重増加率の実験結果は以下のとおりである。本発明例30(空気吹き込み)においては、本発明例29に対する体長増加率が、育成期間30日で9.87%、育成期間60日で5.18%、育成期間90日で5.31%と、育成期間30日以降において継続的に0より大きい値であった。
【0103】
以上の結果から、水生生物Aを育成する養殖槽11内の飼育水110にマイクロバブル又はナノバブルを生成するとともに、養殖槽11内に成長促進剤1を供給することで、水生生物Aの成長促進が図られることが確認された。
【0104】
<成長促進剤1の検証実験4>
次に、本発明に係る、水耕栽培槽12に繋がれ、マイクロバブル又はナノバブルを生成した飼育水110を収容する養殖槽11に供給する成長促進剤1の効用に関する検証実験について説明する。
【0105】
本実験では、養殖槽11と水耕栽培槽12とが独立した場合の育成期間90日目の水生動物Aの体重と、養殖槽11と水耕栽培槽12とが繋がれた場合の育成期間90日目の水生動物Aの体重と、から算出する体重増加率に基づいて、水生動物Aの成長促進効果を確認した。また、養殖槽11と水耕栽培槽12とが独立した場合の育成期間30日目の植物Bの可食部平均新鮮重量と、養殖槽11と水耕栽培槽12とが繋がれた場合の育成期間30日目の植物Bの可食部平均新鮮重量と、から算出する可食部平均新鮮重量の増加率に基づいて、植物Bの成長促進効果を確認した。
【0106】
なお、本実験における水生動物Aとしては、ベステルチョウザメを用いた。各実験に用いたベステルチョウザメは、1試験区あたり36尾ずつである。本実験における植物Bとしては、リーフレタスを用いた。各実験に用いたリーフレタスは、独立した水耕栽培槽12に用いたリーフレタスが30株、養殖槽11と繋がれた水耕栽培槽12に用いたリーフレタスが150株である。可食部平均新鮮重量の測定方法としては、全株数から選択した10株について可食部(茎葉)新鮮重量の平均値を算出した。単独の水耕栽培槽12では、水温を約20±2℃とし、公知の水耕栽培装置(型番:UH-A01E)と、化学液肥ジャストワン(登録商標)とを用いた。また、その他の条件として、無調整の淡水を飼育水110として用いており、飼育水110の水温は約20±2℃、飼育水110のpHは7.2~8.3、餌供給率は3%であった。また、成長促進剤1に含まれるダイゼインの量は、いずれも葛根湯の乾燥重量1gあたり20mg、すなわち葛根湯の総重量に対して2.00重量%(全質量に対して2.00質量%)とした。成長促進剤1の供給方法としては、検証実験1と同様である。
【0107】
本実験では、独立した養殖槽11内のベステルチョウザメに成長促進剤1を供給し、独立した水耕栽培槽12内のリーフレタスを従来の栽培方法のみで育成した例を本発明例31とし、水耕栽培槽12と繋がれた養殖槽11内のベステルチョウザメに成長促進剤1を供給し、水耕栽培槽12内のリーフレタスを従来の栽培方法に加えてベステルチョウザメの排泄物を含む飼育水110aを用いて育成した例を本発明例32とした。また、独立した養殖槽11内の飼育水110中に空気を吹き込んでナノバブルを生成するとともにベステルチョウザメに成長促進剤1を供給し、独立した水耕栽培槽12内のリーフレタスを従来の栽培方法のみで育成した例を本発明例33とし、水耕栽培槽12と繋がれた養殖槽11内の飼育水110中に空気を吹き込んでナノバブルを生成するとともにベステルチョウザメに成長促進剤1を供給し、水耕栽培槽12内のリーフレタスを従来の栽培方法に加えてベステルチョウザメの排泄物を含む飼育水110aを用いて育成した例を本発明例34とした。以上の各本発明例の結果に基づいて、ベステルチョウザメの体重増加率、及びリーフレタスの可食部平均新鮮重量の増加率を算出した。なお、本発明例32の体重増加率及び可食部平均新鮮重量増加率は本発明例31に対する増加率を、本発明例34の体重増加率及び可食部平均新鮮重量増加率は本発明例33に対する増加率を、それぞれ示す。また、養殖槽11内のナノバブルについては、検証実験3と同様の方法で調整する。また、水耕栽培槽12内のナノバブルについては、水耕栽培槽12内のリーフレタスが発芽から苗時の間は養殖槽11から流入するナノバブルのみ活用し、リーフレタスの成長期以降は気泡発生装置2を毎日0.5~3.0時間以上稼働させ、ナノバブルの濃度が標準値(2×103~6×109個/mL)になるように気泡発生装置2の稼働時間を調整した。また、上記条件の他、発芽時から苗時の間において、ナノバブルの濃度が標準値(2×103~6×109個/mL)の飼育水110(110a)を用いてリーフレタスを種苗生産してもよい。
【0108】
本実験の結果は[表5]のとおりである。
【0109】
【0110】
ベステルチョウザメの体重増加率の実験結果は以下のとおりである。本発明例32においては、本発明例31に対する育成期間90日の体重増加率が5.74%と、0より大きい値であった。なお、生存率については、本発明例31、32いずれも100%であった。本発明例34においては、本発明例33に対する育成期間90日の体重増加率が8.41%と、0より大きい値であった。なお、生存率については、本発明例33、34いずれも100%であった。また、本発明例34の体重増加率は、本発明例32の体重増加率よりも大きい値であった。
【0111】
リーフレタスの可食部平均新鮮重量の増加率の実験結果は以下のとおりである。本発明例32においては、本発明例31に対する育成開始30日の可食部平均新鮮重量増加率が16.98%と、0より大きい値であった。本発明例34においては、本発明例33に対する育成開始30日の可食部平均新鮮重量増加率が17.98%と、0より大きい値であった。また、本発明例34の可食部平均新鮮重量増加率は、本発明例32の可食部平均新鮮重量増加率よりも大きい値であった。
【0112】
以上の結果から、水生動物Aを収容する養殖槽11と、植物Bを収容する水耕栽培槽12と、が繋がれた育成システム100において、養殖槽11に成長促進剤1を供給することで、水生生物A及び植物Bの成長促進が図られることが確認された。また、ナノバブルが生成された飼育水等を循環する場合の、養殖槽11と水耕栽培槽12とが繋がれた育成システム100においては、水生生物A及び植物Bの成長促進がさらに図られることが確認された。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。