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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157370
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】美白剤、及びスキンケア用還元剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20241030BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071696
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000104814
【氏名又は名称】クニミネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】田邉 悠
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 道也
(72)【発明者】
【氏名】山内 優希
(72)【発明者】
【氏名】立花 和宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智博
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB441
4C083AB442
4C083BB51
4C083BB60
4C083CC03
4C083DD27
4C083EE16
(57)【要約】
【課題】生体への安全性が高く、さらに安定性に優れ、長期に亘りメラニンの蓄積を抑制できる、美白剤及びスキンケア用還元剤を提供する。
【解決手段】有効成分として粘土鉱物を含有する、美白剤及びスキンケア用還元剤。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として粘土鉱物を含有する、美白剤。
【請求項2】
有効成分として粘土鉱物を含有する、スキンケア用還元剤。
【請求項3】
前記粘土鉱物がメラニンの蓄積を抑制する、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
前記粘土鉱物が、当該粘土鉱物の2質量%水分散液の酸化還元電位が0.33V vs.SHE以下である粘土鉱物である、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項5】
前記粘土鉱物がスメクタイトを含む、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の剤を含有する、化粧品。
【請求項7】
前記粘土鉱物の含有量が0.05~30質量%である、請求項6に記載の化粧品。
【請求項8】
酸性還元剤を含有する、請求項6に記載の化粧品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白剤、及びスキンケア用還元剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚が紫外線に曝されると、活性酸素により皮膚中のメラノサイト(色素細胞)においてメラニンが合成される。メラニンが局所的に過剰量合成されたり、ターンオーバーが乱れてメラニンが沈着したりすることにより、肝斑(しみ)や雀卵斑(そばかす)が発現し、これらは美容上好ましくないとされる。
図1に示すように、メラニンの生合成経路には、ユーメラニン(黒色メラニン)とフェオメラニン(赤褐色メラニン)という2種類のメラニンの生合成経路が存在し、ユーメラニンが上記のしみやそばかすの原因となる。この生合成経路では、アミノ酸の一種であるチロシンを出発物質として、チロシンがチロシナーゼの作用によりドーパ、ドーパキノンへと変換され、その後ドーパクロムを経て酸化反応が進行し、酸化物が重合することによってユーメラニンが合成される。そのため、チロシンからユーメラニンまでの合成経路を阻害する化合物や、蓄積したユーメラニン(酸化型メラニン)を還元して淡色の還元型メラニンとできる化合物の開発が積極的に進められている。例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)はチロシナーゼの活性を阻害することが知られており、さらにユーメラニンを淡色の還元型メラニンに還元できることが知られている。また、ハイドロキノンは、チロシナーゼの活性を阻害するだけでなく、メラノサイトの数を減少させることができ、強力な美白剤として用いられている。
【0003】
上記のようにハイドロキノンやアスコルビン酸はメラニンの蓄積を抑制できることが報告されている一方で、安定性に劣り、長期に亘りメラニン蓄積の抑制効果を発揮することができない。そのため、ハイドロキノン等の美白剤について、安定性を向上させるための研究開発が進められている。
例えば特許文献1には、ハイドロキノンと、多価アルコールと、水膨潤性粘土鉱物と、油性成分と、安定化剤と、水と、を有することを特徴とするハイドロキノン含有皮膚外用剤が開示されており、当該皮膚外用剤において、ハイドロキノンの安定性が向上していることが示されている。なお、当該皮膚外用剤において、前記水膨潤性粘土鉱物は、W/O製剤(油中水型製剤)の乳化剤として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-112595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生体への安全性が高く、さらに安定性に優れ、長期に亘りメラニンの蓄積を抑制できる、美白剤及びスキンケア用還元剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、化粧品等の分野において増粘剤や乳化剤としての使用実績があり、人体への安全性が高いスメクタイトの水系分散液が、強い還元作用を有することを明らかにした。また当該還元作用により、メラニンの蓄積を、長期に亘り安定的に抑制できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段により解決された。
〔1〕
有効成分として粘土鉱物を含有する、美白剤。
〔2〕
有効成分として粘土鉱物を含有する、スキンケア用還元剤。
〔3〕
前記粘土鉱物がメラニンの蓄積を抑制する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の剤。
〔4〕
前記粘土鉱物が、当該粘土鉱物の2質量%水分散液の酸化還元電位が0.33V vs.SHE以下である粘土鉱物である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の剤。
〔5〕
前記粘土鉱物がスメクタイトを含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の剤。
〔6〕
前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の剤を含有する、化粧品。
〔7〕
前記粘土鉱物の含有量が0.05~30質量%である、前記〔6〕に記載の化粧品。
〔8〕
酸性還元剤を含有する、前記〔6〕又は〔7〕に記載の化粧品。
【0008】
本発明の美白剤、及びスキンケア用還元剤は、人体への安全性が高く、強力な還元力を有し、さらに長期に亘りメラニンの蓄積を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】メラニンの生合成経路の概略図である。
図2】酸化還元電位測定に用いる装置の概略図である。
図3】反応後15日目におけるメラニンの蓄積の様子を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態について具体的に説明するが、本発明で規定すること以外はこれらの形態に限定されるものではない。
【0011】
[美白剤、スキンケア用還元剤]
本発明の美白剤、及びスキンケア用還元剤(以下、これらを総称して単に「本発明の剤」とも称す。)は、有効成分として粘土鉱物を含有する。本発明の剤は、当該粘土鉱物の作用により、水に分散させた際に弱アルカリ性を示す一方で、強力な還元作用を示す。そのため、当該還元作用により、メラニンの蓄積を抑制し、美白効果を発揮することができる。なお、本発明ないし本明細書において「メラニン」とは、ユーメラニン、フェオメラニン等の総称であり、当該メラニンはユーメラニンであることが好ましい。
本発明の剤は、メラニンの生成を抑制する機能、及び生成されたメラニン(ユーメラニン)を還元して脱色する機能の両方を有すると想定される。図1に示すように、ユーメラニンはチロシンを出発物質として、一連の酸化反応により合成されるため、本発明の剤の有する強力な還元作用により、メラニン(ユーメラニン)の生成を抑制でき、メラニンの蓄積を抑制して美白効果を発揮することができると考えられる。また、生成されたユーメラニン(酸化型メラニン)は黒色メラニンと呼ばれ、しみやそばかすの原因となる一方で、黒色メラニンが還元された還元型メラニンは淡色を呈する。そのため、本発明の剤により酸化型メラニンを還元して脱色することにより、黒色メラニンの蓄積を抑制して美白効果を発揮することができると考えられる。
以下、本発明の剤に特徴的な構成等について下記に説明する。
【0012】
(粘土鉱物)
本発明の剤において、前記粘土鉱物は、スメクタイトであることが好ましい。前記スメクタイトの種類は特に限定されず、目的に応じて適宜に設定することができる。また、天然のスメクタイトや合成スメクタイトを用いることもでき、不純物の含有量が少ない観点から合成スメクタイトを用いることが好ましい。前記合成スメクタイトとしては、結晶末端に水酸基を有するスメクタイトであってもよく、当該水酸基をフッ素原子により置換したフッ素化スメクタイトであってもよい。合成スメクタイトは、常法によって製造することができる。
前記スメクタイトは、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、ソーコナイト、及びスチブンサイトから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましくサポナイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、スチブンサイトから選ばれる1種又は2種以上であることがより好ましい。
【0013】
前記スメクタイトの層間陽イオン種は特に限定されないが、ナトリウムイオンやリチウムイオンであることが好ましい。前記層間陽イオンをナトリウムイオンやリチウムイオンとすることにより、例えば粘土鉱物を水系媒体等に分散させた際に優れた膨潤性を付与することができ、また分散安定性を付与することができる。
前記スメクタイトの陽イオン交換容量(CEC:Cation Exchange Capacity)は、分散時の膨潤性を向上させる観点から、15meq(ミリ当量)/100g以上が好ましく、20meq/100g以上がより好ましく、25meq/100g以上がさらに好ましい。また通常、本発明に用い得るスメクタイトの陽イオン交換容量は250meq/100g以下である。
【0014】
前記粘土鉱物の粒子径は特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、前記粘土鉱物の粒子径(一次粒子径)を20~500nmとすることもでき、30~400nmとしてもよく、40~380nmとしてもよく、50~370nmとしてもよい。本発明において分散液中の前記粘土鉱物の「粒子径」とは、体積基準のメディアン径である。この粒子径は、例えばレーザー回析/散乱式粒子径分布測定装置により決定することができる。
【0015】
本発明の剤において、前記粘土鉱物の含有量に特に制限はなく、例えば本発明の剤を適用する化粧品等の種類等に応じて適宜設定することができる。前記含有量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。また、本発明の剤の全てが前記粘土鉱物であってもよいが、通常は99質量%以下であることが実際的である。
【0016】
(その他の成分)
本発明の剤は、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤等の他の成分を含んでもよい。添加剤として、例えば、pH調整剤、保湿剤、酸化防止剤、香料、各種ビタミン剤、キレート剤、着色剤、薬効成分、無機塩類、防腐効果を有する成分、植物抽出物などスキンケア製品に有用な成分等を配合することができる。更に、安定化剤、消泡剤、比重調整剤、粘度調整剤、有機溶剤、界面活性剤、エモリエント剤、顔料、紫外線吸収剤、及び紫外線散乱剤等を併用しても良い。当該添加剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の剤中の当該添加剤の含有量は、添加剤1種類あたり、0.01~10質量%であることが好ましい。
【0017】
(液媒体)
本発明の剤は、粘土鉱物が液媒体中に分散してなる分散液とすることもできる。このような液媒体は特に限定されず、粘土鉱物を均一に分散させることができる種々の液媒体を用いることができる。中でも、粘土鉱物の分散安定性の観点から、当該液媒体は水又は水溶液等の水系媒体であることが好ましく、水であることがより好ましい。なお、当該液媒体は、上記その他の成分を含む液媒体であってもよい。
前記水に特に制限はなく、水道水でもよく、蒸留水やイオン交換水等の精製水でもよい。分散安定性の観点から、水中のイオンが除去された精製水であることが特に好ましい。この場合、水のイオン伝導度は10μS/m以下が好ましく、5μS/m以下がより好ましく、2μS/m以下がさらに好ましい。
本発明の剤が水に分散してなる分散液である場合、当該分散液中の粘土鉱物の含有量は特に限定されないが、取扱性、及び美白効果を発揮させる観点から、0.1~30質量%であることが好ましく、0.5~20質量%とすることもでき、1~15質量%とすることもできる。
【0018】
<酸化還元電位>
本発明の剤は、有効成分である粘土鉱物に起因して強力な還元力を有する。この還元力は、水素標準電極(SHE:standard hydrogen electrode)に対する酸化還元電位を測定することにより判定することができ、一般的に酸化還元電位が低いと還元力が高いことを意味する。本発明の有効成分である粘土鉱物の酸化還元電位は、この粘土鉱物を水(精製水)に分散させて、粘土鉱物の濃度が2質量%濃度(固形分濃度)の分散液としたときに、SHEに対し0.33V以下(0.33V[vs.SHE]以下)であることが好ましく、0.30V以下(0.30V[vs.SHE]以下)であることがより好ましく、0.28V以下(0.28V[vs.SHE]以下)であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明の剤の有効成分である粘土鉱物の酸化還元電位は、例えば以下の方法により測定することができる。図2は、前記酸化還元電位を測定するための装置の概略図を示す。ガラスセル1に、本発明の有効成分である粘土鉱物を水(精製水)に分散させて、粘土鉱物の濃度を2質量%濃度(固形分濃度)とした分散液2を充填し、このセルに作用極として白金電極(Pt)3を浸漬させる。また、別のガラスセルにpH10の緩衝液4を充填し、このセルに参照極として、水素標準電極(SHE)に対して酸化還元電位が+0.1Vである水銀-酸化水銀電極(Hg/HgO)5を浸漬させる。さらにこれら2つのセル間を塩橋6で連結する。25℃条件下において、作用極、参照極を各々電位差計7に接続した後、5分間静置後の電位差([作用極の端子の電圧]-[参照極の端子の電圧])を読み取り、当該電位差の値にSHEへの補正値である0.1Vを足すことにより、SHEに対する酸化還元電位(V[vs.SHE])を求めることができる。
【0020】
<pH>
本発明の剤のpHは特に制限されず、人体への安全性の観点、及び廃棄等の取扱いの観点から、例えば、粘土鉱物の濃度が2質量%濃度(固形分濃度)の分散液の場合に、室温(25℃)条件下においてpH3.0~11.0の弱酸性~弱アルカリ性であることが好ましい。例えば、層間陽イオンがナトリウムイオンやリチウムイオンであるスメクタイトをそのまま水に分散させた場合、pHは弱アルカリ領域の8~11程度になることが多い。このようなスメクタイトを本発明の含有する粘土鉱物として用いる場合には、pHの調整を行わずに、そのまま本発明の剤として用いることもできる。
また、一般的にヒトの皮膚のpHは4.5~6.5の弱酸性であるとされているため、本発明の剤にpH調整剤を添加して、本発明の剤を分散させてなる分散液のpHの範囲を前記弱酸性の範囲内となるように調整することもできる。前記pH調整剤として用いられる酸性化合物としては、例えばカルボキシ基やリン酸基等を有する酸性有機化合物である有機酸であってもよく、また塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸(鉱酸)であってもよい。また、還元力を有する酸性化合物(酸性還元剤、例えばアスコルビン酸又はその塩)であってもよい。当該pH調整剤は、下記に説明する化粧品に含有させてもよい。
【0021】
<粘度>
一般的な化粧品の中には、当該化粧品の肌等への付着性を向上させる観点から、セルロース化合物などの増粘剤が添加されているものがある。本発明の剤は、有効成分である粘土鉱物により、当該剤を水系媒体に分散させてなる分散液が適度な粘性を有する。そのため、例えば本発明の剤を化粧品等に配合する場合に、増粘剤等を加えることなく、適度な粘性を有する化粧品等とすることができる。
本発明の剤の有効成分である粘度鉱物は、2質量%濃度(固形分濃度)の水分散液としたときに、25℃条件下において、粘度が10mPa・s以上であることが好ましく、100mPa・s以上であることがより好ましく、500mPa・s以上であることがさらに好ましく、1000mPa・s以上であることがさらに好ましい。また液としての取扱性の観点から、当該粘度は200000mPa・s以下であることが好ましく、100000mPa・s以下であることがより好ましく、10000mPa・s以下であることがさらに好ましく、5000mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0022】
上記粘度は、例えばBrookfield型(B型)粘度計を用い、測定温度25℃条件下、測定粘度範囲に適したローターを用い、12rpmで回転させた際の、回転開始から60秒後の測定値とすることができる。
【0023】
[化粧品]
本発明の剤は、化粧品等に含有(配合)させて用いられることが好ましい。すなわち、本発明の剤を含有する、美白用化粧品又はスキンケアのための還元用化粧品(還元作用を有する化粧品)とすることができる。本発明ないし本明細書において、「化粧品」とは、本発明の剤を含有し得る化粧品である。例えば、メイクアップ(仕上用)化粧品、皮膚用化粧品、浴用化粧料、ボディパウダー等の各化粧品ないし化粧料が包含される。中でも、上記化粧品は皮膚用化粧品であることが好ましい。当該皮膚用化粧品としては、例えば化粧水、化粧液、クリーム、乳液、日焼け用化粧料、日焼け止め用化粧料、洗浄料、パック等が挙げられる。
なお、本発明の剤が上記で説明したように粘土鉱物を水等に分散させてなる分散液である場合には、当該分散液(剤)そのものを、上記の化粧品等として用いることもできる。
【0024】
前記化粧品において、化粧品中の前記粘土鉱物の含有量は特に限定されず、化粧品の種類に応じて適宜設定することができ、0.05~30質量%であることが好ましく、0.1~25質量%であることがより好ましく、0.5~20質量%であることがさらに好ましく、1~15質量%であることがさらに好ましい。
また、上述したその他の成分を、当該化粧品に含有させることもできる。
【0025】
また本発明の剤は、有効成分として粘土鉱物を含有するため、界面活性剤としても機能する。そのため、本発明の剤を前記化粧品に配合することにより、他の界面活性剤の添加量を抑え、また割愛することもできる。
【実施例0026】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
<試験液の調製例>
各試験液の調製に用いた材料は以下の通りである。なお、下記粘土鉱物の層間イオンは全てナトリウムイオンである。

(粘土鉱物)
・スメクトン-ST(商品名):合成粘土、スチブンサイト、陽イオン交換容量 25meq/100g、平均一次粒子径35nm、クニミネ工業社製
・スメクトン-SWN(商品名):合成粘土、ヘクトライト、陽イオン交換容量 43meq/100g、平均一次粒子径75nm、クニミネ工業社製
・スメクトン-SWF(商品名):合成粘土、フルオロヘクトライト、陽イオン交換容量 70meq/100g、平均一次粒子径90nm、クニミネ工業社製
・スメクトン-SA(商品名):合成粘土、サポナイト、陽イオン交換容量 66meq/100g、平均一次粒子径100nm、クニミネ工業社製

(美白剤)
・ハイドロキノン:特級、富士フィルム和光純薬社製
・L-アスコルビン酸ナトリウム:特級、富士フィルム和光純薬社製

(pH調整剤)
・水酸化ナトリウム:特級、富士フィルム和光純薬社製
・炭酸水素ナトリウム:特級、富士フィルム和光純薬社製
【0028】
(実施例1~4)
下記表1に記載の粘土鉱物を、それぞれ表1に記載の配合比で蒸留水(導電率0.2μS/cm以下)中に分散させ、実施例1~4の試験液を調製した。
【0029】
(比較例1)
JIS K8001:2017に記載の方法に準拠し、上記水酸化ナトリウム試薬及び炭酸水素ナトリウム試薬を前記蒸留水に溶解して得られた水酸化ナトリウム溶液と炭酸水素ナトリウム溶液により調製した緩衝液(各実施例のpHと同程度のpH10)を、比較例1の試験液とした。
【0030】
(参考例1)
公知の美白剤であるハイドロキノンを、表1に記載の配合比で前記蒸留水中に溶解させて水溶液とし、当該水溶液を参考例1の試験液とした。
【0031】
(参考例2)
公知の美白剤であるL-アスコルビン酸ナトリウムを、表1に記載の配合比で前記蒸留水中に溶解させて水溶液とし、当該水溶液を参考例2の試験液とした。
【0032】
<試験例>
得られた実施例1~4、比較例1、並びに参考例1及び2の各試験液を用いて、下記の試験を行った。
【0033】
(pH測定)
実施例1~4、比較例1、並びに参考例1及び2の各試験液のpH(25℃)を、pHメーター(型番:LAQUAtwin-pH-33B、堀場製作所製)により測定した。結果を下記表1に示す。
【0034】
(酸化還元電位測定)
酸化還元電位測定装置の概要図を図2に示す。内容積20cmのガラスセルに、実施例1~4、比較例1、並びに参考例1及び2の各試験液を、容積の80%まで充填し、このセルに作用極として白金電極(商品名:Pt カウンター電極 5.7cm、BAS社製)を4cm浸漬させた。また、別の内容積20cmのガラスセルに、比較例1と同様のpH10の緩衝液を、容積の80%まで充填し、このセルに参照極として、水素標準電極(SHE)に対して酸化還元電位が+0.1Vである水銀-酸化水銀電極(RE-2BP、BAS社製)を4cm浸漬させた。これら2つのセルをイオン的につなぐため、pH10の緩衝液で湿らせたろ紙を塩橋として設置した。
25℃条件下において作用極、参照極を各々電位差計(電気化学測定装置ALS600、BAS社製)に接続した後、5分間静置後の電位差([作用極の端子の電圧]-[参照極の端子の電圧])を読み取り、当該電位差の値に0.1Vを足すことにより、SHEに対する酸化還元電位(V[vs.SHE])を算出した。結果を下記表1に示す。
【0035】
(メラニンの蓄積評価試験)
ジャガイモに含まれるチロシナーゼという酵素は、アミノ酸の一種であるチロシンを酸化してドーパ、ドーパキノンを生成し、さらにその後に続く一連の酸化反応により最終的に黒褐色のメラニン(ユーメラニン)が生成されることが知られている。ジャガイモをカットして放置しておくと、切断面が褐変(黒変)するのはこのチロシナーゼによる反応が進みメラニンが生成されるためである。この性質を利用し、ジャガイモを用いて上記試験液のメラニン蓄積抑制効果を試験した。
ジャガイモをおろし金ですりおろし、不織布に包んで汁を絞った。得られたジャガイモの汁10gを試験管に移し、実施例1~4、比較例1、並びに参考例1及び2の各試験液を2g加えて反応液とし、25℃で静置させた。反応後4日目、及び15日目の反応液の色調の変化を目視により観察した。なお、色調の変化の基準として、試験液を加えていないジャガイモの汁12gを、試験管に入れて同様に25℃で静置させ、上記試験における4日目、及び15日目の色調判断の基準液として用いた。反応後4日目、及び15日目の各反応液について、基準液の色調を基準として、下記評価基準により判定した。結果を下記表1に示す。また、反応後15日目の反応液の外観写真を図2に示す。

-評価基準-
◎:基準液よりも褐色の度合いが薄い。
○:基準液よりも褐色の度合いがやや薄い。
△:基準液と同等の褐色の度合い。
×:基準液よりも褐色の度合いが濃い。
【0036】
【表1】
【0037】
試験液としてpH10の緩衝液を用いた比較例1の試験液は、酸化還元電位が0.36とやや高めであった。また、当該試験液を添加した反応液では、静置後4日目、及び15日目において、基準液と同様の褐色を示した。図3にも示すように、比較例1の反応液は基準液と同等の褐色を示すことがわかる。このことから、pHをアルカリ側に調整したアルカリ溶液自体には、メラニンの蓄積抑制効果は見られないことが明らかとなった。
また、試験液としてハイドロキノンを用いた参考例1の反応液では、静置後4日目、及び15日目のいずれも、反応液が黒変した。これは、ハイドロキノンが不安定であり、黒色のキンヒドロンへと変換されたことを示している。また、試験液としてL-アスコルビン酸ナトリウムを用いた参考例2の反応液では、静置後4日目では基準液と比較して褐色の度合いが薄いものの、静置後15日目では褐色の度合いが基準液と比較してやや薄い程度となった。これは、L-アスコルビン酸ナトリウムの作用によりメラニンの蓄積が抑制されており、また長期の反応によりL-アスコルビン酸ナトリウムによるメラニンの蓄積抑制効果が弱まったことを示している。
これに対し、試験液としてスメクタイトの水分散液を用いた実施例1~4の試験液は、いずれもpHが10前後であり、酸化還元電位が0.33V[vs.SHE]以下であった。また、当該試験液を添加した反応液では、静置後4日目において基準液よりも褐色の度合いがやや薄いか(実施例4)、薄く(実施例1~3)、また静置後15日目においても、基準液より褐色の度合いが薄かった(実施例1~4)。これは、反応後15日間という長期に亘り、スメクタイトがメラニンの蓄積を抑制できたことを示している。
【符号の説明】
【0038】
1 ガラスセル
2 分散液
3 白金電極
4 緩衝液
5 水銀-酸化水銀電極
6 塩橋
7 電位差計

図1
図2
図3