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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157383
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】放熱樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241030BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20241030BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20241030BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20241030BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/04
C08K5/34
C08G59/18
C09K5/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071715
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加須榮 旭
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD141
4J002CD191
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA036
4J002EU007
4J002EU047
4J002EU147
4J002EU187
4J002FD206
4J002FD207
4J002GQ00
4J036AB01
4J036AB07
4J036AB17
4J036AC01
4J036AD08
4J036AF01
4J036AK15
4J036AK17
4J036DA01
(57)【要約】
【課題】良好な放熱性を維持しつつ、粘度を低減することができる放熱樹脂組成物を提供する。
【解決手段】放熱樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、炭素材料(C)と、含窒素複素芳香環化合物(D)とを含有する。前記含窒素複素芳香環化合物(D)が、6員含窒素複素芳香環を含み、前記6員含窒素複素芳香環の炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが有機基で置換されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)と、
硬化剤(B)と、
炭素材料(C)と、
含窒素複素芳香環化合物(D)と
を含有し、
前記含窒素複素芳香環化合物(D)が、6員含窒素複素芳香環を含み、前記6員含窒素複素芳香環の炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが有機基で置換されている、
放熱樹脂組成物。
【請求項2】
前記炭素材料(C)が、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ及び炭素繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含み、前記炭素材料(C)の含有量が、前記放熱樹脂組成物に対して、20体積%以上である、
請求項1に記載の放熱樹脂組成物。
【請求項3】
前記含窒素複素芳香環化合物(D)の前記有機基が、ヒドロキシアルキル基、エポキシ基を含む基、エステル結合を含む基、エーテル結合を含む基及びアルキル基からなる群より選択される少なくとも一種を含む、
請求項1に記載の放熱樹脂組成物。
【請求項4】
前記含窒素複素芳香環化合物(D)の含有量が、前記放熱樹脂組成物に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、
請求項1に記載の放熱樹脂組成物。
【請求項5】
前記含窒素複素芳香環化合物(D)の分子量が10万以下である、
請求項1に記載の放熱樹脂組成物。
【請求項6】
前記含窒素複素芳香環化合物(D)の前記6員含窒素複素芳香環が、ピリジン環及びピラジン環の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の放熱樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放熱樹脂組成物に関し、詳しくは、炭素材料を含有する放熱樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における電気・電子部品の小型化、高性能化に伴い、狭いスペース中で、電気・電子部品で発生する熱を効果的に外部へ放散させる放熱対策が非常に重要となっている。この放熱対策のため、樹脂中に熱伝導率が高いグラファイト等の炭素材料を含有させた樹脂組成物が検討されている。
【0003】
このような樹脂組成物として、特許文献1には、熱可塑性樹脂(A)と、炭素材料(B)と、分岐部を介してビニルポリマー鎖を有する分岐型ポリマー分散剤(C)とを含有する成形用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-149242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来の樹脂組成物は粘度が高く、塗布して用いることが難しいと考えられる。
【0006】
本開示の課題は、良好な放熱性を維持しつつ、粘度を低減することができる放熱樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る放熱樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、炭素材料(C)と、含窒素複素芳香環化合物(D)とを含有する。前記含窒素複素芳香環化合物(D)が、6員含窒素複素芳香環を含み、前記6員含窒素複素芳香環の炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが有機基で置換されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、良好な放熱性を維持しつつ、粘度を低減することができる放熱樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.概要
本実施形態に係る放熱樹脂組成物(以下、組成物(X)ともいう)は、エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、炭素材料(C)と、含窒素複素芳香環化合物(D)(以下、単に化合物(D)ともいう)とを含有する。含窒素複素芳香環化合物(D)は、6員含窒素複素芳香環(以下、6員含窒素複素環(P)ともいう)を含む。6員含窒素複素芳香環(P)の炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つは、有機基(以下、有機基(Q)ともいう)で置換されている。
【0010】
発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意検討を重ねる上で、特定の構造を有する化合物が、エポキシ化合物(A)中における炭素材料(C)の分散性を高めることができることを見出し、さらに検討を進め、本開示を完成させた。
【0011】
組成物(X)によれば、良好な放熱性を維持しつつ、粘度を低減することができる。組成物(X)が前記構成を備えることで、前記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。炭素材料を含有する従来の樹脂組成物では、樹脂組成物中において炭素材料同士が凝集し、分散性が不十分であったため、粘度が高くなっていたと考えられる。炭素材料(C)は、通常、炭素原子同士がsp混成軌道による結合によって形成されるハニカム形状のグラフェン構造を有し、また、カルボキシ基等の酸性基を有している。一方、組成物(X)における化合物(D)は、6員含窒素複素芳香環(P)を含み、この6員含窒素複素環(P)に有機基(Q)が結合した構造を有している。この6員含窒素複素芳香環(P)は、環構成原子である窒素原子が、塩基性を示す非共有電子対を有している。化合物(D)は、6員含窒素複素環(P)により、炭素材料(C)のグラフェン構造のπ電子と静電相互作用する。加えて、化合物(D)は、塩基性を示す窒素原子の非共有電子対により、炭素材料(C)の酸性基と酸塩基相互作用する。これらの相互作用により、化合物(D)は、炭素材料(C)に吸着することができる。そして、化合物(D)における6員含窒素複素環(P)に結合した有機基(Q)同士が反発することにより、炭素材料(C)同士の凝集が抑えられるか、又は有機基(Q)がマトリックスを構成するエポキシ化合物(A)と相互作用すると考えられる。これらの結果、炭素材料(C)のエポキシ化合物(A)のマトリックス中での分散性が向上する。これにより、組成物(X)の粘度が低減すると考えられる。
【0012】
2.詳細
<放熱樹脂組成物>
組成物(X)は、エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、炭素材料(C)と、含窒素複素芳香環化合物(D)(以下単に、化合物(D)ともいう)とを含有する。組成物(X)は、さらに、無機充填材(E)及び分散剤(F)を含有することが好ましく、本開示の効果を損なわない範囲において、前記成分以外のその他の成分をさらに含有してもよい。
以下、各成分について説明する。
【0013】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物(A)は、組成物(X)において、炭素材料(C)を分散させるマトリックスとなる成分である。
【0014】
エポキシ化合物(A)は、一分子中に1つ以上のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ化合物(A)は、一分子中に2つ以上のエポキシ基を有することが好ましい。
【0015】
エポキシ化合物(A)としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジル基含有シリコーン樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等の化合物などが挙げられる。
【0016】
エポキシ化合物(A)として、分子中に芳香環を含むものを用いることが好ましい。この芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環等の芳香族炭素環などが挙げられる。エポキシ化合物(A)が芳香環を含む場合、同様に芳香環構造を有する炭素材料(C)との相互作用を高めることができ、組成物(X)中での炭素材料(C)の分散性をより向上させることができ、粘度をより低減することができる。
【0017】
エポキシ化合物(A)は、芳香環を含むエポキシ化合物(A)を含むことが好ましく、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0018】
エポキシ化合物(A)の含有量は、組成物(X)に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。この場合、組成物(X)の粘度をより低減することができる。エポキシ樹脂(A)の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。この場合、組成物(X)の放熱性をより向上させることができる。
【0019】
[硬化剤(B)]
硬化剤(B)は、エポキシ化合物(A)と硬化反応を生じうる化合物であれば特に限定されない。
【0020】
硬化剤(B)としては、例えば、イミダゾール硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。
【0021】
イミダゾール硬化剤としては、例えば2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0022】
酸無水物硬化剤としては、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0023】
フェノール硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;フェニレン骨格又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;トリフェノールメタン型樹脂等の多官能型フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール型樹脂;トリアジン変性ノボラック樹脂などが挙げられる。
【0024】
アミン硬化剤としては、例えば、エチルトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼン、1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン等が挙げられる。
【0025】
硬化剤(B)は液状であることが好ましい。この場合、組成物(X)の粘度をより低減することができる。硬化剤(B)は、イミダゾール硬化剤を含むことが好ましい。この場合、組成物(X)の粘度をより低減することができ、また、貯蔵安定性をより向上させることができる。
【0026】
硬化剤(B)の含有量は、組成物(X)全体に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。この場合、組成物(X)の放熱性をより向上させることができる。硬化剤(B)の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。この場合、組成物(X)の粘度をより低減することができる。
【0027】
硬化剤(B)のエポキシ化合物(A)に対するモル比(硬化剤(B)/エポキシ化合物(A))は、例えば0.6以上1.4以下である。
【0028】
組成物(X)は、硬化剤(B)に加えて、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、例えば1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン類;2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとパラベンゾキノンの付加反応物、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ボレート以外の対アニオンを持つ4級ホスホニウム塩;2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。
【0029】
組成物(X)が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、硬化剤(B)100質量部に対して、例えば1質量部以上10質量部以下である。
【0030】
[炭素材料]
炭素材料(C)は、組成物(X)に熱伝導性等の放熱性を付与する成分である。
【0031】
「炭素材料」とは、炭素の単体を主成分とする材料を意味する。「主成分」とは、最も含有率の大きい成分をいい、含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。炭素材料(C)としては、例えばグラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維、フラーレン、カーボンブラック等が挙げられる。グラフェンは、炭素原子同士がsp結合によりハニカム形状に結合して形成された層状の物質である。グラファイトは、グラフェンの層が2以上積層された物質である。グラファイトとして、例えば、鱗片状グラファイト、球状グラファイト等が挙げられる。カーボンナノチューブは、グラフェンの層がチューブ状に形成された物質である。炭素繊維は、グラフェンの層が繊維状に形成された物質である。炭素材料(C)は、材料中に、例えば、カルボキシ基等の酸性基を有している。炭素材料(C)は、これらの中で、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ及び炭素繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。グラファイトは、球状グラファイトを含むことが好ましい。この場合、炭素材料(C)の組成物(X)中の含有量をより高め、より高充填化させることができる。
【0032】
炭素材料(C)の含有量は、組成物(X)全体に対して、例えば、10体積%以上であり、20体積%以上であることが好ましく、25体積%以上であることがより好ましく、30体積%以上であることがさらに好ましい。この場合、組成物(X)の放熱性をより向上することができる。炭素材料(C)の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば、50体積%以下であり、40体積%以下であることが好ましい。
【0033】
炭素材料(C)の含有量は、組成物(X)全体に対して、例えば、8質量%以上であり、17質量%以上であることが好ましく、22質量%以上であることがより好ましく、26質量%以上であることがさらに好ましい。炭素材料(C)の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば、44質量%以下であり、35質量%以下であることが好ましい。
【0034】
炭素材料(C)の含有量は、エポキシ化合物(A)100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、100質量部以上であることがより好ましい。炭素材料(C)の含有量は、400質量部以下であることが好ましく、250質量部以下であることがより好ましい。
【0035】
[含窒素複素芳香環化合物(D)]
化合物(D)は、組成物(X)において、炭素材料(C)の分散性を高めることができる成分である。「含窒素複素芳香環化合物」とは、環構成原子として少なくとも1つの窒素原子を含む芳香族複素環を有する化合物を意味する。
【0036】
化合物(D)は、6員含窒素複素芳香環(P)を含んでいる。「6員含窒素複素芳香環」とは、環構成原子として少なくとも1つの窒素原子を含み、かつ6員環である芳香族複素環を意味する。また、6員含窒素複素芳香環(P)の炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つは有機基(Q)で置換されている。
【0037】
化合物(D)は、6員含窒素複素芳香環(P)を1つ又は2つ以上有していてもよい。また、6員含窒素複素芳香環(P)は、例えば芳香族炭素環、芳香族複素環等の他の環と縮環してもよい。
【0038】
6員含窒素複素芳香環(P)における環構成原子としての窒素原子の数は、1~4個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましく、1個又は2個であることがさらに好ましい。
【0039】
6員含窒素複素芳香環(P)としては、例えば
1個の窒素原子を有する6員環として、ピリジン環等が挙げられ、
2個の窒素原子を有する6員環として、ピラジン環(1,4-ジアジン環)、ピリミジン環(1,3-ジアジン環)、ピリダジン環(1,2-ジアジン環)等のジアジン環などが挙げられ、
3個の窒素原子を有する6員環として、1,3,5-トリアジン環等のトリアジン環などが挙げられ、
4個の窒素原子を有する6員環として、1,2,3,4-テトラジン環等のテトラジン環などが挙げられる。
【0040】
6員含窒素複素芳香環(P)が他の環と縮環して形成してもよい環としては、例えば、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、ナフチリジン環、ブテリジン環、アクリジン環、フェナジン環、ペリミジン環、フェナントロリン環等が挙げられる。
【0041】
6員含窒素複素芳香環(P)は、1~3個の窒素原子を有する6員環を含むことが好ましく、1個又は2個の窒素原子を有する6員環を含むことがより好ましく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環及びピリダジン環からなる群より選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましく、ピリジン環及びピラジン環の少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
【0042】
「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。有機基(Q)は、6員含窒素複素芳香環(P)の炭素原子に結合する水素原子を置換する基である。つまり、有機基(Q)は、6員含窒素複素芳香環(P)の炭素原子に結合する基である。
【0043】
有機基(Q)は、通常1価の基であるが、2価以上の基であってもよい。有機基(Q)が2価以上の基である場合、6員含窒素複素芳香環(P)の2個以上の炭素原子に結合することができる。有機基(Q)の炭素数は、例えば1~30の整数であり、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0044】
有機基(Q)としては、例えばヒドロキシアルキル基、エポキシ基を含む基、エステル結合を含む基、エーテル結合を含む基、アルキル基等が挙げられる。「エポキシ基」は、3員環であるオキシラニル基、及び4員環であるオキセタニル基を含む。「エステル結合」とは、-C(=O)-O-を意味する。エーテル結合とは、-O-(酸素原子)を意味する。
【0045】
ヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基中のアルキル基の炭素数は、1~10の整数であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
【0046】
エポキシ基を含む基としては、例えば、グリシジル基、エポキシエチル基、エポキシプロピル基等のエポキシアルキル基などが挙げられる。エポキシアルキル基中のアルキル基の炭素数は、1~10の整数であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
【0047】
エステル結合を含む基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等のアシル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルエチル基等のアルコキシカルボニルアルキル基、ホルミルメチル基、アセチルエチル基、プロピオニルプロピル基等のアシルアルキル基などが挙げられる。エステル結合を含む基中のアルコキシ基及びアルキル基の炭素数の合計は、1~10の整数であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
【0048】
エーテル結合を含む基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、メトキシメチル基、エトキシエチル基、プロポキシプロピル基等のアルコキシアルキル基などが挙げられる。エーテル結合を含む基中のアルコキシ基及びアルキル基の炭素数の合計は、1~10の整数であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
【0049】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等のプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~4であることがさらに好ましく、3又は4であることが特に好ましい。
【0050】
有機基(Q)は、ヒドロキシアルキル基、エポキシ基を含む基、エステル結合を含む基、エーテル結合を含む基及びアルキル基からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、ヒドロキシアルキル基、エステル結合を含む基及びアルキル基からなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、ヒドロキシエチル基、オクチルオキシカルボニル基及びプロピル基からなる群より選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
【0051】
化合物(D)としては、例えば下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0052】
【化1】
【0053】
式(1)中、Arは、6員含窒素複素芳香環(P)を含む化合物からn個の水素原子を除いたn価の基である。Rは、有機基(Q)である。nは、1以上の整数である。
【0054】
Arで表されるn価の基としては、例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ナフチリジン、ブテリジン、アクリジン、フェナジン、ペリミジン及びフェナントロリンからn個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0055】
で表される有機基(Q)としては、例えばヒドロキシアルキル基、エポキシ基を含む基、エステル結合を含む基、エーテル結合を含む基、アルキル基等であって、炭素数が1~20のもの等が挙げられる。
【0056】
nとしては、例えば、10以下であり、1以上5以下が好ましく、1以上3以下であることがより好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。
【0057】
化合物(D)としては、例えば
ヒドロキシアルキル基を有する化合物として、2-ピリジンエタノール、2-ピリジンプロパノール、2-ピラジンエタノール、2-ピラジンプロパノール等が挙げられ、
エポキシ基を含む基を有する化合物として、2-グリシジルピリジン、2-エポキシエチルピリジン、2-グリシジルピラジン、2-エポキシエチルピラジン等が挙げられ、
エステル結合を含む基を有する化合物として、n-オクチルニコチネート、n-プロピルニコチネート等が挙げられ。
エーテル結合を含む基を有する化合物として、2-エトキシピリジン、2-プロポキシピリジン、2-エトキシピラジン、2-プロポキシピラジン等が挙げられ、
アルキル基を有する化合物として、2-プロピルピリジン、2-ブチルピリジン、2-プロピルピラジン、2-ブチルピリジン等が挙げられる。
【0058】
化合物(D)の分子量は10万以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)の粘度をより低減することができる。化合物(D)の分子量は1万以下であることがより好ましく、5000以下であることがさらに好ましく、1000以下であることが特に好ましい。化合物(D)の分子量の下限は特に限定されないが、例えば100以上である。化合物(D)が異なる分子量の化合物の混合物である場合、化合物(D)の分子量とは、例えば、数平均分子量を意味する。分子量が10万を超える化合物(D)としては、有機基(Q)が、例えば、ポリオキシアルキレン鎖であるもの又はくし形構造を有するもの等が挙げられる。
【0059】
化合物(D)の含有量は、組成物(X)全体に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.25質量%以上であることがさらに好ましく、0.3質量%以上であることが特に好ましい。化合物(D)の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。化合物(D)の含有量を前記範囲とすることで、組成物(X)の粘度をより低減することができる。
【0060】
化合物(D)の含有量は、炭素材料(C)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがさらに好ましい。化合物(D)の含有量の上限は特に限定されないが、例えば、20質量部以下であり、5質量部以下であることが好ましい。
【0061】
[無機充填材(E)]
無機充填材(E)は、無機材料製のフィラーである。
【0062】
無機充填材(E)の材質としては、例えば、アルミナ、球状シリカ、結晶シリカ、溶融シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミなどの無機化合物、銅、銀、アルミニウム等の金属などが挙げられる。無機充填材(E)は予め後述のカップリング剤等の各種表面処理剤を用いて表面処理されていてもよい。
【0063】
無機充填材(E)の体積平均粒径としては、例えば、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.2μm以上7μmであることがより好ましい。無機充填材(E)の体積平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定された体積基準の粒度分布において、小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)として測定することができる。
【0064】
無機充填材(E)として、体積平均粒径が互いに異なる2種以上を用いてもよい。この場合、一方の体積平均粒径は、例えば0.1μm以上0.8μm以下であり、他方の体積平均粒径は、例えば0.8μm以上10μm以下である。
【0065】
無機充填材(E)の含有量は、組成物(X)全体に対して、30質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましい。無機充填材(E)の含有量は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
【0066】
[分散剤]
分散剤(F)は、無機充填材(E)の分散性を高めることができる成分である。
【0067】
分散剤(F)としては、例えば、各種の界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。この中で、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0068】
分散剤(F)の含有量は、組成物(X)全体に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。分散剤(F)の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0069】
[その他の成分]
その他の成分としては、例えば、溶媒、カップリング剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、イオントラップ剤、顔料、着色剤、低応力化剤、粘着付与剤、シリコーン可撓剤などが挙げられる。
【0070】
組成物(X)は、その他の成分として、通常、溶媒を含有しない。組成物(X)は、溶媒を含有しないことにより、塗布後の乾燥工程が不要になる。
【0071】
カップリング剤は、無機充填材(E)と、エポキシ化合物(A)及び硬化剤(B)との親和性を向上させうる。カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等が挙げられる。シランカップリングとしては、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のグリシドキシシラン;N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;アルキルシラン;ウレイドシラン;ビニルシランなどが挙げられる。
【0072】
離型剤としては、例えばカルナバワックス、ステアリン酸、モンタン酸、カルボキシル基含有ポリオレフィン、エステルワックス、酸化ポリエチレン、金属石鹸等が挙げられる。
【0073】
難燃剤としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、赤リン等が挙げられる。
【0074】
着色剤としては、例えばカーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、フタロシアニン、ペリレンブラック等が挙げられる。
【0075】
低応力化剤としては、例えばシリコーンエラストマー、シリコーンレジン、シリコーンオイル、ブタジエン系ゴム等が挙げられる。ブタジエン系ゴムとしては、例えばアクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0076】
組成物(X)がその他の成分を含有する場合、その他の成分の含有量は、組成物(X)全体に対して、例えば0.01質量%以上1質量%以下である。
【0077】
組成物(X)は、例えば、放熱シート等を形成するために好適に用いることができ、特に、電気・電子部品を被覆するシート等の形成用に好適である。
【0078】
<組成物の製造方法>
組成物(X)は、例えば組成物(X)の構成成分を混合することにより調製することができる。より具体的には、例えばエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、炭素材料(C)及び化合物(D)を含む原料を、ミキサー、ブレンダー等で十分均一になるまで混合し、続いて、熱ロール、ニーダー等の混錬機により加熱されている状態で溶融混合してから、室温に冷却する。これにより得られた混合物を公知の手段で粉砕することで、粉体状の組成物(X)を製造することができる。組成物(X)は粉体状でなくてもよく、例えばタブレット状であってもよい。タブレット状である場合の組成物(X)は成形条件に適した寸法と質量とを有することが好ましい。
【0079】
<特性>
組成物(X)は、25℃で液状であることが好ましい。組成物(X)は、常温で液状であることで、対象物に塗布することが可能になる。「液状である」とは、E型粘度計を用い、0.3rpm、200sの測定条件で得られた粘度の測定値が、例えば、3000Pa・s以下であることを意味する。
【0080】
組成物(X)の粘度は、2200Pa・s以下であることが好ましく、2100Pa・s以下であることがより好ましく、2000Pa・s以下であることがさらに好ましく、1900Pa・s以下であることが特に好ましい。
【0081】
組成物(X)の放熱性は、熱伝導率(W/mK)及び/又は熱抵抗(K/W)により評価することができる。
【0082】
(まとめ)
上記実施形態から明らかなように、本開示は以下の態様を含む。
【0083】
第1の態様に係る放熱樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、炭素材料(C)と、含窒素複素芳香環化合物(D)とを含有する。前記含窒素複素芳香環化合物(D)が、6員含窒素複素芳香環を含み、前記6員含窒素複素芳香環の炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが有機基で置換されている。
【0084】
第1の態様によれば、放熱樹脂組成物の放熱性を維持しつつ、粘度を低減することができる。
【0085】
第2の態様に係る放熱樹脂組成物では、第1の態様において、前記炭素材料(C)が、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ及び炭素繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含み、前記炭素材料(C)の含有量が、前記放熱樹脂組成物に対して、20体積%以上である。
【0086】
第2の態様によれば、放熱樹脂組成物の粘度をより低減することができる。
【0087】
第3の態様に係る放熱樹脂組成物では、第1又は第2の態様において、前記含窒素複素芳香環化合物(D)の前記有機基が、ヒドロキシアルキル基、エポキシ基を含む基、エステル結合を含む基、エーテル結合を含む基及びアルキル基からなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0088】
第3の態様によれば、放熱樹脂組成物の粘度をより低減することができる。
【0089】
第4の態様に係る放熱樹脂組成物では、第1から第3のいずれか一の態様において、前記含窒素複素芳香環化合物(D)の含有量が、前記放熱樹脂組成物に対して、0.1質量%以上20質量%以下である。
【0090】
第4の態様によれば、放熱樹脂組成物の粘度をより低減することができる。
【0091】
第5の態様に係る放熱樹脂組成物では、第1から第4のいずれか一の態様において、前記含窒素複素芳香環化合物(D)の分子量が10万以下である。
【0092】
第5の態様によれば、放熱樹脂組成物の粘度をより低減することができる。
【0093】
第6の態様に係る放熱樹脂組成物では、第1から第5のいずれか一の態様において、前記含窒素複素芳香環化合物(D)の前記6員含窒素複素芳香環が、ピリジン環及びピラジン環の少なくとも一方を含む。
【0094】
第6の態様によれば、放熱樹脂組成物の粘度をより低減することができる。
【実施例0095】
以下、本開示を実施例によってさらに詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0096】
1.放熱樹脂組成物の調製
表1に示す原料を配合し、株式会社シンキー製の自転・公転ミキサー「あわとり練太郎ARV-310」で1000rpm、1分間の条件で混合分散することにより、ペースト状の放熱樹脂組成物を得た。表1の(C)成分における「体積%」は、放熱樹脂組成物100体積%に対する体積割合を示す。なお、原料の詳細は下記の通りである。
((A)成分)
-エポキシ化合物1:芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製の「アデカレジンEP-3950S」、粘度:650mPa・s(25℃)、エポキシ当量95g/eq)
((B)成分)
-硬化剤1:イミダゾール系硬化剤(2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業社製の「2E4MZ」))
((C)成分)
-炭素材料1:球状グラファイト(伊藤黒鉛工業社製の「SG-BL40」)
((D)成分)
-A:2-ピリジンエタノール
-B:n-オクチルニコチネート
-C:2-プロピルピラジン
-a:2-フェノキシエタノール
-b:4-フェノキシ酪酸エチル
-c:シランカップリング剤(信越化学工業社製の「KBM-403」)
-d:CLARIANT「TS-160」
-e:ノナン酸
-f:1,3-プロパンジオール
-g:1-ヘプタノール
((D)成分のA~C及びa、b、e~gは、東京化成工業社製の試薬である。)
((E)成分)
-無機充填材1:Al(住友化学社製の「AA2」、D50:2μm)
-無機充填材2:Al(住友化学社製の「AAO3」、D50:0.4μm)
((F)成分)
-分散剤1:無機フィラー用分散剤(ビックケミー社製の「BYK-W9010」)
【0097】
2.評価
(1)粘度
前記調製した放熱樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製、型番RC-215)を使用して、回転数0.3rpm、200sの条件で測定した。
放熱樹脂組成物の粘度は、下記基準により評価することができる。
A(良好):25℃における粘度が2200Pa・s以下である。
B(不良):25℃における粘度が2200Pa・s超である。
【0098】
(2)放熱性
前記調製した放熱樹脂組成物の放熱性を、ASTM D5470準拠のメンターグラフィック社製のDynTIM Testerのプローブにセットして測定した。具体的には二つのアルミニウム製のプレートで未硬化の放熱樹脂組成物のサンプルを挟み、サンプル厚みが100~400μmになるようにDynTIM Testerで加圧した後、所定の厚みで圧力を0にして熱抵抗(K/W)を測定し、数点の厚みでの熱抵抗の測定値から熱伝導率(W/mK)を算出した。またアルミニウム板とDynTIM Testerのプローブ間には界面熱抵抗を低減するため、放熱グリス(信越化学工業株式会社製「G-779」)を使用した。またこのときの温度勾配は加熱部60℃、冷却部25℃とした。
放熱樹脂組成物の放熱性は、下記基準により評価することができる。
A(良好):熱伝導率が8.0W/mK以上、かつ熱抵抗が0.90K/W以下である。
B(不良):熱伝導率が8.0W/mK未満、又は熱抵抗が0.90K/W超である。
【0099】
以上の評価の結果を、下記表1に示す。表1の比較例6における熱抵抗及び熱伝導率の「-」は、放熱樹脂組成物の粘度が高過ぎるため、放熱性の評価ができなかったことを示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1の結果から明らかなように、実施例の放熱樹脂組成物は、良好な放熱性を維持しつつ、粘度を低減することができる。比較例の放熱樹脂組成物は、粘度を低減することができていない。