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特開2024-157388床版切断分離システム、及びコンクリート床版と主桁の切断分離方法
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  • 特開-床版切断分離システム、及びコンクリート床版と主桁の切断分離方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157388
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】床版切断分離システム、及びコンクリート床版と主桁の切断分離方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20241030BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20241030BHJP
   B28D 1/08 20060101ALI20241030BHJP
   B28D 7/02 20060101ALI20241030BHJP
   B23D 57/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D22/00 A
B28D1/08
B28D7/02
B23D57/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071724
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】508036743
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジ
(71)【出願人】
【識別番号】593184363
【氏名又は名称】コンクリートコーリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丈達 康太
(72)【発明者】
【氏名】青木 峻二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖司
(72)【発明者】
【氏名】白水 晃生
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 浩太
(72)【発明者】
【氏名】梶原 英男
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴士
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 光
【テーマコード(参考)】
2D059
3C040
3C069
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG39
2D059GG41
3C040AA19
3C040DD28
3C040GG16
3C040JJ01
3C069AA01
3C069BA06
3C069BB03
3C069BC04
3C069CA07
3C069DA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】既設床版下の狭隘な作業空間を有効に活用し、効率よくコンクリート床版と主桁とを切断分離することである。
【解決手段】橋梁のコンクリート床版と主桁との接合部に切断面を形成する床版切断分離システムであって、前記主桁を挟んで対をなし、前記コンクリート床版の下方で前記主桁に沿って移動する移動装置と、該移動装置各々に設けられる従動プーリと、該従動プーリに掛け回されるワイヤーソーと、を含む切断装置を備え、前記従動プーリが、前記切断面と交差する方向に回転する立設姿勢で設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁のコンクリート床版と主桁との接合部に切断面を形成する床版切断分離システムであって、
前記主桁を挟んで対をなし、前記コンクリート床版の下方で前記主桁に沿って移動する移動装置と、
該移動装置各々に設けられる従動プーリと、
該従動プーリに掛け回されるワイヤーソーと、を含む切断装置を備え、
前記従動プーリが、前記切断面と交差する方向に回転する立設姿勢で設けられていることを特徴とする床版切断分離システム。
【請求項2】
請求項1に記載の床版切断分離システムにおいて、
前記移動装置に対する前記従動プーリの高さが、調整自在であることを特徴とする床版切断分離システム。
【請求項3】
請求項1に記載の床版切断分離システムにおいて、
延在方向に走行するワイヤーソーの前記主桁を挟んだ下流側に位置する前記移動装置に、
前記接合部から前記ワイヤーソーに伴って排出される切断屑を回収する集塵装置が設けられていることを特徴とする床版切断分離システム。
【請求項4】
請求項1に記載の床版切断分離システムにおいて、
前記従動プーリが、回転方向と交差する方向に揺動可能に設けられていることを特徴とする床版切断分離システム。
【請求項5】
請求項4に記載の床版切断分離システムにおいて、
前記切断装置に、揺動する前記従動プーリの揺動範囲を制御する揺動制御機構が設けられていることを特徴とする床版切断分離システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の床版切断分離システムを用いたコンクリート床版と主桁の切断分離方法であって、
前記ワイヤーソーを、延在方向に走行させつつ前記主桁の延伸方向に移動させ、前記接合部に前記主桁と略平行な切断面を形成することを特徴とするコンクリート床版と主桁の切断分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床版と主桁との接合部を切断分離する際に用いる床版切断分離システム、及び床版切断分離システムを用いたコンクリート床版と主桁の切断分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の床版更新工事は、劣化した既設床版を耐久性の高い新たな床版へ取替える作業であり、この作業中には交通を遮断せざるを得ない。このため、一般車両の通行止めや種々の通行規制等の工事交通規制を伴うが、既存交通にできる限り影響を与えないよう、工事交通規制の時間を最小にする必要がある。
【0003】
しかし、新たな床版に取替える作業では、既設床版を主桁から撤去しなければならず、撤去作業には多大な作業時間を要する。そこで発明者らは、特許文献1で示すように、工事交通規制時間を最小にするべく、工事交通規制の開始とともに既設床版の切断を開始できるように、床版下の狭隘な作業空間に切断装置をすべて配置する工法を開発した。
【0004】
特許文献1の切断装置は、ワイヤーソーを用いて、既設のコンクリート床版と主桁との接合部であるハンチ部に主桁の上面と平行な切断面を形成する装置である。具体的には、主桁を挟んだ両側に略水平方向に回転する従動プーリを配置し、これにワイヤーソーを掛け回す。また、既設桁と従動プーリとの間にそれぞれ、主桁と平行な回転軸を有するガイドローラを対をなして設け、ガイドローラにワイヤーソーを接触させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-034231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、既設桁と従動プーリとの間でガイドローラーを利用してワイヤーソーの走行方向を転換させることができる。これにより、ガイドローラーの高さ位置を切断面の形成予定高さに配置すれば、これより低い位置に従動プーリを支持する切断装置を配置しても、ワイヤーソーを切断面の形成予定高さに対応させることが可能となる。
【0007】
したがって、切断面の形成予定高さがコンクリート床版の下面に近接する場合であっても、切断装置とコンクリート床版の下面との干渉を回避することができる。ところが、ワイヤーソーの走行速度とガイドローラーの回転速度は、必ずしも一定とならず、ワイヤーソーが接触することにより生じるガイドローラー表面の摩耗が、不均一となるおそれがある。
【0008】
この場合、ガイドローラーの表面に有意な不陸が生じて、ワイヤーソーにブレが発生するだけでなく、ワイヤーソーのブレに起因して切断面に凹凸が形成されるなどの不具合が生じやすい。したがって、表面に有意な不陸が生じる前にガイドローラーの交換が必要になるなど、作業効率や作業精度に課題を生じていた。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、コンクリート床版下の狭隘な作業空間を有効に活用し、効率よくコンクリート床版と主桁とを切断分離することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明の床版切断分離システムは、橋梁のコンクリート床版と主桁との接合部に切断面を形成する床版切断分離システムであって、前記主桁を挟んで対をなし、前記コンクリート床版の下方で前記主桁に沿って移動する移動装置と、該移動装置各々に設けられる従動プーリと、該従動プーリに掛け回されるワイヤーソーと、を含む切断装置を備え、前記従動プーリが、前記切断面と交差する方向に回転する立設姿勢で設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の床版切断分離システムは、前記移動装置に対する前記従動プーリの高さが、調整自在であることを特徴とする。
【0012】
本発明の床版切断分離システムは、延在方向に走行するワイヤーソーの前記主桁を挟んだ下流側に位置する前記移動装置に、前記接合部から前記ワイヤーソーに伴って排出される切断屑を回収する集塵装置が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の床版切断分離システムは、前記従動プーリが、回転方向と交差する方向に揺動可能に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の床版切断分離システムは、前記切断装置に、揺動する前記従動プーリの揺動範囲を制御する揺動制御機構が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明のコンクリート床版と主桁の切断分離方法は、本発明の床版切断分離システムを用いたコンクリート床版と主桁の切断分離方法であって、前記ワイヤーソーを、延在方向に走行させつつ前記主桁の延伸方向に移動させ、前記接合部に前記主桁と略平行な切断面を形成することを特徴とする。
【0016】
本発明の床版切断分離システム及びコンクリート床版と主桁の切断分離方法によれば、ワイヤーソーが掛回される従動プーリが、切断面と交差する方向に回転する立設姿勢で設けられている。したがって、従動プーリの天端が移動装置の最上部分となるよう、移動装置に対して従動プーリを設置することができる。また、従動プーリの天端を切断面の形成予定高さに合わせることで、この高さにワイヤーソーを配置することができる。
【0017】
これにより、接合部が低く切断面の形成予定高さがコンクリート床版の下面に近接した位置にある場合や、コンクリート床版が傾斜している場合であっても、移動装置と床版下面との間で干渉を生じることがない。このため、従来技術のようにガイドローラーを設ける、もしくは、コンクリート床版の下面をはつって移動装置の配置空間を確保するといった、移動装置と床版下面との干渉を回避するための設備や作業を省略できる。
【0018】
このように、ワイヤーソーが掛回される従動プーリを、切断面と交差する方向に回転する立設姿勢に設けることで、コンクリート床版下の狭隘な作業空間を有効に活用し、効率よくコンクリート床版と主桁とを切断分離することが可能となる。
【0019】
さらに、移動装置に対する従動プーリの高さを調整自在にすれば、移動装置の高さ位置を一定に維持したまま、切断面の形成予定高さにワイヤーソーを配置することも可能となり、切断面を形成する際に実施する位置調整作業の簡略化を図ることが可能となる。
【0020】
また、従動プーリを立設姿勢に設けることで、切断面を形成した際に生じる切断屑は、接合部からワイヤーソーに伴って排出されたのち、従動プーリを介してワイヤーソーが方向転換する近傍で、放物線を描くようにして落下する。したがって、延在方向に走行するワイヤーソーの主桁を挟んだ下流側に位置する移動装置に、集塵装置を配置することで、この放物線を描くようにして落下する切断屑を回収でき、集塵効果を大幅に向上することが可能となる。
【0021】
加えて、従動プーリを、回転方向と交差する方向に揺動可能に設け、また、揺動範囲を制御する揺動制御機構を設ける。これにより、延在方向に走行するワイヤーソーを接合部に押し当てながら切断面の形成範囲を広げていく過程で、接合部の硬さが変化した場合にも、従動プーリがこれに対応して揺動し、ワイヤーソーに過大な張力が作用する現象を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ワイヤーソーが掛回される従動プーリを、切断面と交差する方向に回転する立設姿勢とすることで、コンクリート床版下の狭隘な作業空間を有効に活用し、効率よくコンクリート床版と主桁とを切断分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態における第1及び第2フロント支持装置(移動装置)を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における床版切断システム全体を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における第1フロント支持装置及び第1リア支持装置を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における第1及び第2リア支持装置を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における第1及び第2中間支持装置を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における駆動機構及びストレージ機構を含む案内機構を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における従動プーリの揺動制御機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、道路橋の床版更新工事で実施する作業工程の一つである既設のコンクリート床版と主桁とを切断分離する作業を、ワイヤーソーを備える床版切断分離システムを用いて実施するものである。以下に、コンクリート床版と主桁の接合部を、押し切り方式で切断分離する場合を事例に挙げ、床版切断分離システム及びコンクリート床版と主桁の切断分離方法の詳細を、図1図7を参照しつつ、以下に説明する。
【0025】
なお、本実施の形態において、鉛直方向は主桁のウェブと平行な方向(切断面と直交する方向)をいい、水平方向は主桁の上フランジと平行な方向(切断面と平行な方向)をいう。
【0026】
≪≪床版取替え工事の概略≫≫
橋梁400は、図1で示すように、鋼製の主桁401と主桁401上に設置されたコンクリート床版402とを有し、コンクリート床版402の下面には主桁401との接合部となるハンチ部404が形成されている。また、ハンチ部404には、主桁401の上部フランジに所定の間隔で設置された頭部付きスタッド4011が、埋設されている。頭部付きスタッド4011は、コンクリート床版402の略水平方向(主に橋軸方向)のずれ止めとして機能する部材である。
【0027】
上記のコンクリート床版402と鋼製の主桁401とが一体となった合成構造の橋梁400において、床版取替え工事を実施する場合には、まず、切断装置100に備えたワイヤーソー10を利用して、ハンチ部404に切断面403を形成する。
【0028】
具体的には、ハンチ部404を橋軸直交方向に貫通させたワイヤーソー10を延在方向に走行させつつ、切断装置100を構成する第1及び第2フロント支持装置40a、40bを主桁401に沿って移動させる。第1及び第2フロント支持装置40a、40bの詳細は後述するが、ワイヤーソー10が掛回される第1~第4従動プーリ41~44を備えている。これにより、ワイヤーソー10はハンチ部404内で、切断面403の形成予定位置に押し当てられつつ、主桁401に沿って橋軸方向に移動する。
【0029】
すると、ハンチ部404にはワイヤーソー10により、図2で示すような切断面403が形成され、主桁401とコンクリート床版402とは切断分離される。こののち、主桁401と切断分離されたコンクリート床版402を撤去し、主桁401の上フランジ上面にケレン作業等の下処理を行ったのち、主桁401上に新設床版を設置する。
【0030】
上記の手順でハンチ部404に切断面403を形成し、主桁401とコンクリート床版402とを切断分離する作業は、切断装置100を含む床版切断分離システムSを利用して実施する。
【0031】
≪≪床版切断分離システム≫≫
床版切断分離システムSは、図2で示すように、ワイヤーソー10を備える切断装置100と、集塵装置200と、揺動制御機構300とを備える。なお、床版切断分離システムSは、切断装置100のみでも使用可能である。
【0032】
≪≪切断装置≫≫
切断装置100は、図2で示すように、ダイヤモンドソーワイヤーをエンドレス状に加工したワイヤーソー10と、ワイヤーソー10が掛回される複数の従動プーリを支持する第1及び第2フロント支持装置40a、40bと、第1及び第2中間支持装置80a、80bと、第1及び第2リア支持装置50a、50bと、を備える。
【0033】
上記の支持装置各々に支持される従動プーリは、第1~第4従動プーリ41~44、第5~第8従動プーリ81~84、及び第9~第12従動プーリ51~54の12台である。いずれも切断面403と交差する方向(直交する方向を含む)に回転する立設姿勢で、支持装置に設置されている。そして、ワイヤーソー10は、第2及び第3従動プーリ42、43間と、第10及び第11従動プーリ52、53間において、ハンチ部404を貫通している。
【0034】
また、切断装置100は、駆動機構20、ストレージ機構30、及び張力調整機構90と、これらが設置されるとともに各機構へワイヤーソー10を案内する案内機構70とを備える。さらに、切断装置100は、前述の各支持装置が設置される走行レール60を、主桁401を挟んで対をなして備えている。
【0035】
≪走行レール≫
一対の走行レール60はともに、図2及び図3で示すように、主桁401に沿って延在するガイド部61と、ガイド部61を支持するガイド支持具62とを備える。ガイド支持具62は、コンクリート床版402の下面に対して着脱自在に設置され、ガイド部61を吊持する。また、ガイド支持具62は、ガイド部61に対してスライド自在に設置され、ガイド部61は、ガイド支持具62に対して高さ方向に移動自在に設置される。
【0036】
このガイド部61に沿って、第1及び第2フロント支持装置40a、40bは移動する。また、このガイド部61に、第1及び第2リア支持装置50a、50bと第1及び第2中間支持装置80a、80bが支持されている。
【0037】
≪第1及び第2フロント支持装置(移動装置)≫
図1及び図2で示すように、第1フロント支持装置40aは、第1及び第2従動プーリ41、42を支持する装置であり、第2フロント支持装置40bは、第3及び第4従動プーリ43、44を支持する装置である。
【0038】
第1及び第4従動プーリ41、44は、主桁401と平行な方向に向けられて、鉛直回転するよう配置される。一方、第2及び第3従動プーリ42、43は、主桁401の延在方向と交差する範囲内で水平方向に揺動しつつ、鉛直回転するよう配置される。そして、第1及び第2フロント支持装置40a、40bはともに、上記の従動プーリを支持するプーリ架台45と、移動体46と、送り装置47とを備える。
【0039】
移動体46は、ガイド部61に沿って走行する例えばピニオンなどであり、送り装置47は、移動体46を駆動する駆動機構である。プーリ架台45は、これら移動体46及び送り装置47により、ガイド部61に沿って移動する。
【0040】
このプーリ架台45について、第1フロント支持装置40aを参照して説明すると、図1及び図3で示すように、走行レール60のガイド部61を囲うように配置される架台本体451と、この架台本体451の側面に設置される支柱452とを備えている。また、支柱452には、下プーリ支持具453と上プーリ支持具454が、対をなして取り付けられている。
【0041】
下プーリ支持具453は、下側に位置する第1従動プーリ41を吊り下げる態様で支持する。また、上プーリ支持具454は、上側に位置する第2従動プーリ42をプーリ軸支持金具455を介して支持する。これら上下に位置する下プーリ支持具453と上プーリ支持具454は、ともにワイヤーソー10が貫通する円筒部を、同軸に設けられている。
【0042】
これにより、下側の第1従動プーリ41に掛け回されたワイヤーソー10は、下プーリ支持具453及び上プーリ支持具454の円筒部を貫通したのち、上側の第2従動プーリ42に掛け回される。また、円筒部を貫通するワイヤーソー10は、この円筒部の軸線上に配置されている。この円筒部の軸線まわりに(つまり、ワイヤーソー10を中心軸として)、上側の第2従動プーリ42が揺動するよう、プーリ軸支持金具455が上プーリ支持具454に設けられている。
【0043】
さらに、プーリ軸支持金具455は、上プーリ支持具454に対する取付位置が、高さ方向に変更可能に構成されている。したがって、第2従動プーリ42は、プーリ架台45に対する高さ位置が調整自在となっている。
【0044】
上記の構成は、第2フロント支持装置40bも同様である。図1で示すように、下プーリ支持具453は、下側に位置する第4従動プーリ44を吊り下げる態様で支持する。また、上プーリ支持具454は、上側に位置する第3従動プーリ43をプーリ軸支持金具455を介して支持する。そして、上側の第3従動プーリ43に掛け回されたワイヤーソー10は、上プーリ支持具454及び下プーリ支持具453の円筒部を貫通したのち、下側の第4従動プーリ44に掛け回される。
【0045】
また、円筒部を貫通するワイヤーソー10は、これら円筒部の軸線上に配置されている。この円筒部の軸線まわりに(つまり、ワイヤーソー10を中心軸として)上側の第3従動プーリ43が揺動するよう、プーリ軸支持金具455が上プーリ支持具454に設けられている。そして、上プーリ支持具454に対するプーリ軸支持金具455の取付高さの変更により、第3従動プーリ43は、プーリ架台45に対する高さ位置が調整自在となっている。
【0046】
上記の構成を有する第1及び第2フロント支持装置40a、40bの最上部は、第2及び第3従動プーリ42、43の天端となる。そして、第2及び第3従動プーリ42、43の天端を切断面403の形成予定高さに合わせることで、この高さにワイヤーソー10を配置できる。
【0047】
したがって、ハンチ部404が切断面403の形成予定高さがコンクリート床版402の下面に近接した位置にある場合やコンクリート床版402が傾斜している場合であっても、第1及び第2フロント支持装置40a、40bとコンクリート床版402の下面との干渉が生じることがない。このため、干渉を避けるための設備や作業を省略でき、作業性を大幅に向上することが可能となる。
【0048】
また、第2及び第3従動プーリ42、43の高さが調整自在であるため、第1及び第2フロント支持装置40a、40bの高さ位置を一定に維持したまま、切断面403の形成予定高さにワイヤーソー10を配置することも可能である。したがって、切断面403を形成する際に実施する、位置調整作業の簡略化を図ることが可能となる。
【0049】
また、延在方向に走行するワイヤーソー10をハンチ部404に押し当てながら切断面403の形成範囲を広げていく過程で、ハンチ部404の硬さが変化した場合に、第2及び第3従動プーリ42、43がこれに対応して揺動する。これにより、ワイヤーソー10に過大な張力が作用する現象を抑制することが可能となる。
【0050】
≪第1及び第2リア支持装置≫
図2及び図4で示すように、第1リア支持装置50aは、第11及び第12従動プーリ53、54を支持する装置であり、第2リア支持装置50bは、第9及び第10従動プーリ51、52を支持する装置である。
【0051】
第9及び第12従動プーリ51、54は、主桁401と平行な方向を向けられて、鉛直回転するよう配置される。一方、第10及び第11従動プーリ52、53は、主桁401の延在方向と直交する方向に向けられて、鉛直回転するよう配置される。そして、第1及び第2リア支持装置50a、50bはともに、上記の従動プーリを支持するプーリ架台55と、移動体56とを備える。
【0052】
移動体56は、ガイド部61に沿って走行する例えばピニオンなどであり、プーリ架台55は、移動体56によって支持されるだけでなくガイド部61に沿って移動可能となっている。なお、移動体56は必ずしも設けなくてもよく、また、設ける場合には、移動体56に駆動部を設ける構成としてもよい。
【0053】
プーリ架台55について、第2リア支持装置50bを参照して説明すると、図4で示すように、走行レール60のガイド部61を囲うように配置される架台本体551と、この架台本体551の側面に設置される支柱552とを備える。また、支柱552には、下プーリ支持具553と上プーリ支持具554が対をなして取り付けられている。
【0054】
下プーリ支持具553は、下側に位置する第9従動プーリ51を吊り下げる態様で支持する。また、上プーリ支持具554は、上側に位置する第10従動プーリ52を、プーリ軸支持金具555を介して支持する。
【0055】
これら上下に位置する下プーリ支持具553と上プーリ支持具554は、ともにワイヤーソー10が貫通する円筒部を同軸に設けられている。これにより、下側の第9従動プーリ51に掛け回されたワイヤーソー10は、下プーリ支持具553及び上プーリ支持具554の円筒部を貫通したのち、上側の第10従動プーリ52に掛け回される。
【0056】
また、円筒部を貫通するワイヤーソー10は、これら円筒部の軸線上に配置されている。さらに、プーリ軸支持金具555は、上プーリ支持具554に対する取付位置が、高さ方向に変更可能に構成されている。したがって、第10従動プーリ52は、プーリ架台55に対する高さ位置が調整自在となっている。
【0057】
上記の構成は、第1リア支持装置50aも同様である。つまり、図3及び図4で示すように、下プーリ支持具553は、下側に位置する第12従動プーリ54を吊り下げる態様で支持する。また、上プーリ支持具554は、上側に位置する第11従動プーリ53を、プーリ軸支持金具555を介して支持する。そして、上側の第11従動プーリ53に掛け回されたワイヤーソー10は、上プーリ支持具554及び下プーリ支持具553の円筒部を貫通したのち、下側の第12従動プーリ54に掛け回される。
【0058】
また、円筒部を貫通するワイヤーソー10は、これら円筒部の軸線上に配置されている。さらに、プーリ軸支持金具555は、上プーリ支持具554に対する取付位置が、高さ方向に変更可能に構成されている。したがって、第11従動プーリ53は、プーリ架台55に対する高さ位置が調整自在となっている。
【0059】
上記の構成を有する第1及び第2リア支持装置50a、50bの最上部は、第10及び第11従動プーリ52、53の天端となる。そして、第10及び第11従動プーリ52、53の天端を切断面403の形成予定高さに合わせることで、この高さにワイヤーソー10を配置できる。また、第10及び第11従動プーリ52、53の高さが調整自在であるため、第1及び第2リア支持装置50a、50bの高さ位置を一定に維持したまま、切断面403の形成予定高さにワイヤーソー10を配置することも可能である。
【0060】
≪第1及び第2中間支持装置≫
図2及び図5で示すように、第1中間支持装置80aは、第5及び第6従動プーリ81、82を支持する装置であり、第2中間支持装置80bは、第7及び第8従動プーリ83、84を支持する装置である。
【0061】
第5及び第8従動プーリ81、84は、主桁401と平行な方向に向けられて、鉛直回転するよう配置される。一方、第6及び第7従動プーリ82、83は、主桁401の延在方向と交差する方向に向けられて、鉛直回転するよう配置される。そして、本実施の形態では、第1及び第2中間支持装置80a、80bが支柱852を備え、この支柱852が、第2リア支持装置50bを構成するプーリ架台55に設置されている場合を例示している。
【0062】
支柱852について、第1中間支持装置80aを参照して説明すると、第2リア支持装置50bのプーリ架台55に支柱852が設けられており、支柱852に、下プーリ支持具853と上プーリ支持具854が対をなして取り付けられている。
【0063】
下プーリ支持具853は、下側に位置する第5従動プーリ81を吊り下げる態様で支持する。また、上プーリ支持具854は、上側に位置する第6従動プーリ82を、プーリ軸支持金具855を介して支持する。これら上下に位置する下プーリ支持具853と上プーリ支持具854は、ともにワイヤーソー10が貫通する円筒部を同軸に設けられている。
【0064】
これにより、下側の第5従動プーリ81に掛け回されたワイヤーソー10は、下プーリ支持具853及び上プーリ支持具854の円筒部を貫通したのち、上側の第6従動プーリ82に掛け回される。また、円筒部を貫通するワイヤーソー10は、これら円筒部の軸線上に配置されている。
【0065】
さらに、プーリ軸支持金具855は、上プーリ支持具854に対する取付位置が、高さ方向に変更可能に構成されている。したがって、第6従動プーリ82は、プーリ架台85に対する高さ位置が調整自在となっている。
【0066】
上記の構成は、第2中間支持装置80bも同様である。図5で示すように、下プーリ支持具853は、下側に位置する第8従動プーリ84を吊り下げる態様で支持する。また、上プーリ支持具854は、上側に位置する第7従動プーリ83を、プーリ軸支持金具855を介して支持する。そして、上側の第7従動プーリ83に掛け回されたワイヤーソー10は、上プーリ支持具854及び下プーリ支持具853の円筒部を貫通したのち、下側の第8従動プーリ84に掛け回される。
【0067】
また、円筒部を貫通するワイヤーソー10は、これら円筒部の軸線上に配置されている。さらに、プーリ軸支持金具855は、上プーリ支持具854に対する取付位置が、高さ方向に変更可能に構成されている。したがって、第7従動プーリ83は、プーリ架台55に対する高さ位置が調整自在となっている。
【0068】
上記の構成を有する第1及び第2中間支持装置80a、80bの最上部は、第6及び第7従動プーリ82、83の天端となる。図2で示すように、これら第1中間支持装置80aと第2中間支持装置80bとの間で、ワイヤーソー10は、駆動機構20、ストレージ機構30、張力調整機構90、及び案内機構70に設けられている各種プーリに掛け回されている。
【0069】
≪駆動機構≫
駆動機構20は、ワイヤーソー10に一定の緊張力と高速回転力を付与するものであり、図6で示すように、立設姿勢のプーリガイド22と、プーリガイド22に沿って昇降する昇降装置23とを備え、プーリガイド22はその下端部に、支持設備221が設置されている。この支持設備221を介してプーリガイド22は、コンクリート床版402と分離させる予定の主桁401と隣接する主桁401’に支持させている。
【0070】
また、昇降装置23には、図2及び図6で示すように、ワイヤーソー10を回転させる駆動プーリ21と、駆動プーリ21を駆動する駆動部24が設置されている。駆動プーリ21は、昇降装置23に水平軸を介して設置され、水平軸周りに鉛直回転することで、掛回されたワイヤーソー10に高速回転力を付与する。さらに、昇降装置23を介してプーリガイド22に沿って昇降することで、ワイヤーソー10に張力を付与する
【0071】
≪ストレージ機構≫
ストレージ機構30は、ワイヤーソー10の余長部を一定の緊張力が作用した状態に保持しつつ収納する。また、ハンチ部404の切断作業が進行し、第1及び第2フロント支持装置40a、40bが前進した際に、ワイヤーソー10を段階的に繰り出す機構である。
【0072】
これらの機能を有していれば、いずれの構造を有するものを採用してもよい。図6では、ストレージ機構30として鉛直方向に回転する第1~第3ガイドプーリ32~34を備えた立設姿勢のプーリホルダー31を採用している。また、プーリホルダー31はその下端部に、支持設備311が設置されている。この支持設備311を介してプーリホルダー31を、主桁401’に支持させている。
【0073】
≪張力調整機構≫
張力調整機構90は、ワイヤーソー10に切断面403を形成可能な程度の張力を調整付与する装置であり、駆動機構20だけでは不足する分の張力をワイヤーソー10に付与する。
【0074】
その構造はいずれでもよいが、図6で示すように、鉛直方向に回転するテンションプーリ92と、その昇降を案内する立設姿勢のプーリガイド91と、を備える。プーリガイド91もその下端部に、支持設備911が設置されており、この支持設備911を介してプーリガイド91を、主桁401’に支持させている。
【0075】
≪案内機構≫
案内機構70は、図6で示すように、梁状の連結部材76を備え、駆動機構20のプーリホルダー31、ストレージ機構30のプーリガイド22、及び張力調整機構90のプーリガイド91各々の上部近傍を連結するように設けられている。
【0076】
また、連結部材76には、ワイヤーソー10が掛回される第1~第5案内プーリ71~75が設置されている。いずれも鉛直方向に回転するプーリであり、図2で示すように、第1案内プーリ71は、第1中間支持装置80aに設けた第6従動プーリ82と平面視で直線を形成する。第5案内プーリ75は、第2中間支持装置80bに設けた第7従動プーリ83と平面視で直線を形成する。
【0077】
そして、図2及び図6で示すように、第1案内プーリ71は、第1中間支持装置80aが支持する第6従動プーリ82を経由したワイヤーソー10を方向転換させて、張力調整機構90のテンションプーリ92に案内する。第2及び第3案内プーリ72、73は、テンションプーリ92を経由したワイヤーソー10を方向転換させて、駆動機構20の駆動プーリ21に案内する。
【0078】
第4案内プーリ74は、駆動プーリ21を経由したワイヤーソー10を方向転換させて、ストレージ機構30の第1ガイドプーリ32に案内する。そして、第5案内プーリ75は、ストレージ機構30の第1~第3ガイドプーリ32~34を経由したワイヤーソー10を方向転換させて、第2中間支持装置80bが支持する第7従動プーリ83に案内する。
【0079】
上記のとおり、切断装置100においてワイヤーソー10は、図2で示すように、第1~第4従動プーリ41~44を掛け回されたのち、第5~6従動プーリ81、82を経由して、案内機構70、張力調整機構90、駆動機構20及びストレージ機構30の各種プーリに掛け回される。こののち、第7~8従動プーリ83,84を経由して、第9~第12従動プーリ51~54に掛け回されて、第1従動プーリ41に案内される。
【0080】
この状態で駆動機構20を稼働すると、ワイヤーソー10が延在方向に周回走行する。図2では、平面視で反時計回りに走行する場合を例示している。また、第1及び第2フロント支持装置40a、40bがワイヤーソー10をハンチ部404に押し付ける方向へ移動する。これによりワイヤーソー10は、主桁401の上フランジに平行な切断面403を、ハンチ部404に形成していく。
【0081】
≪≪集塵装置≫≫
集塵装置200は、図1及び図2で示すように、延在方向に走行するワイヤーソー10の主桁401を挟んだ下流側に位置する第2フロント支持装置40bに設けられている。
【0082】
その構造は、ワイヤーソー10でハンチ部404に切断面403を形成した際に発生し、ワイヤーソー10とともにハンチ部404から排出された切断屑Wを回収できればいずれのものも採用できる。図1及び図2では、集塵口を備える集塵カバー210、吸引ホース220、及び吸引装置(図示せず)を備える装置を例示している。
【0083】
集塵カバー210は、プーリ軸支持金具455に取り付けられて、第3従動プーリ43の一部分を覆うように設置されている。その設置位置は、第3従動プーリ43において少なくとも、ワイヤーソー10の延在方向を、水平方向から鉛直方向に方向転換する部分を覆う位置であればよい。また、吸引ホース220は、集塵カバー210に形成されている集塵口と吸引装置(図示せず)とを連結する。吸引ホース220及び吸引装置はともに、集塵カバー210内に負圧を発生させることができれば、その形状や性能はいずれでもよい。
【0084】
このような構成により集塵装置200は、ワイヤーソー10に伴ってハンチ部404から排出された切断屑Wを、効率よく捉えて回収することができる。これは、第3従動プーリ43が鉛直方向に回転する立設姿勢のプーリ―であることに起因する。例えば、ワイヤーソー10が水平方向に回転する従動プーリを介して方向転換する場合、切断屑Wは水平方向に放射するようにして排出されることとなる。
【0085】
ところが、第3従動プーリ43は、鉛直方向に回転する。このため、ワイヤーソー10が第3従動プーリ43を介して走行方向を水平方向から鉛直方向に方向転換すると、ワイヤーソー10に伴って排出された切断屑Wは、このワイヤーソー10の方向転換部で、下方側に向けて放物線を描くように落下する。集塵装置200は、この放物線を描くようにして落下する切断屑Wを効率よく捉えて、回収する。したがって、集塵効果を大幅に向上することが可能となる。
【0086】
≪≪揺動制御機構≫≫
揺動制御機構300は、図2を参照しつつ≪第1及び第2フロント支持装置(移動装置)≫で説明したように、主桁401の延在方向と交差する範囲内で水平方向に揺動する第2及び第3従動プーリ42、43の揺動範囲を制御する機構である。
【0087】
その構成はいずれでもよいが、本実施の形態では、第2及び第3従動プーリ42、43が、主桁401の延在方向と平行な向きとなる手前で、第1及び第2フロント支持装置40a、40bの移動を一時停止させる機能を有する。これにより、揺動する第2及び第3従動プーリ42、43が、主桁401と平行な方向に向く挙動を制御する。
【0088】
第2及び第3従動プーリ42、43はともに、同様の揺動制御機構300を設けるため、第2従動プーリ43を参照して、揺動制御機構300を説明すると、次のとおりである。図7(a)で示すように、揺動制御機構300は、スイッチボックス310と、接触型スイッチ320と、ストッパ330とを備える。
【0089】
スイッチボックス310は、支柱452に支持されており、送り装置47に無線もしくは有線で接続されている。送り装置47は前述したように、第1フロント支持装置40aのプーリ架台45を、走行レール60のガイド部61に沿って走行させる移動体46の駆動部である。
【0090】
接触型スイッチ320は、スイッチボックス310に備えられており、支柱452からプーリ軸支持金具455に向けて張り出すように配置されている。そして、ストッパ330は、プーリ軸支持金具455に設けられており、支柱452側に張り出すように配置されている。ストッパ330と接触型スイッチ320は、第2従動プーリ42が揺動し、主桁401と平行な方向に向く手前で、両者が接触する位置にあらかじめ設置しておく。
【0091】
これにより、図7(b)で示すように両者が接触すると、スイッチボックス310から停止信号が送り装置47に送信され、移動している第1フロント支持装置40aが一時停止する。これにより、第2従動プーリ42が主桁401と平行な方向への揺動しようとする挙動が、抑制される。
【0092】
≪≪床版切断分離システムを用いたコンクリート床版と主桁の切断分離方法≫≫
上記の切断装置100、集塵装置200、及び揺動制御機構300を備えた床版切断分離システムSを用いて、ハンチ部404に切断面403を形成し、コンクリート床版402と主桁401を切断分離する手順を、次に説明する。
【0093】
≪事前準備≫
まず、図1図6で示すように、コンクリート床版402の下面側に、上記の床版切断分離システムSを設置する。図2では、ハンチ部404に既設の切断面403が存在することから、ワイヤーソー10をこの切断面403を利用してハンチ部404に貫通させ、第1及び第2リア支持装置50a、50b、第1及び第2フロント支持装置40a、40b、ストレージ機構30、駆動機構20、及び張力調整機構90に備えた各々の各種プーリに掛回す。
【0094】
このとき、第1及び第2フロント支持装置40a、40bでは、上プーリ支持具454に対するプーリ軸支持金具455の取付高さを調整し、第2及び第3従動プーリ42、43の高さ位置を切断面403の形成位置に対応させる。つまり、第2及び第3従動プーリ42、43の間に位置するワイヤーソー10が、切断面403と同一高さとなるように、高さ位置を調整する。
【0095】
同様の作業を、第1及び第2リア支持装置50a、50bについても行い、第10及び第11従動プーリ52、53の間に位置するワイヤーソー10が、切断面403と同一高さとなるように、高さ位置を調整する。
【0096】
また、第1及び第2中間支持装置80a、80bは、図2で示すように、第6従動プーリ82が案内機構70に設けた第1案内プーリ71と平面視で直線を形成し、第7従動プーリ83が案内機構70に設けた第5案内プーリ75と平面視で直線を形成する位置に配置されるよう、第6及び第7従動プーリ82、83の位置及び角度を調整する。
【0097】
≪切断面形成作業≫
上記の事前準備が終了したのち、切断装置100の駆動機構20を作動させ、ワイヤーソー10を延在方向に周回走行させる。また、第1及び第2フロント支持装置40a、40bの移動を開始し、ワイヤーソー10を主桁401に沿ってハンチ部404に押し付ける方向に移動させる。これにより、ワイヤーソー10はハンチ部404内で切断面403の形成し、その範囲を主桁401の延在方向に広げていく。
【0098】
切断面403の形成に伴って、ハンチ部404におけるワイヤーソー10の下流側から、ワイヤーソー10とともに切断屑Wが排出される。しかし、図1及び図2を参照しつつ≪≪集塵装置≫≫で述べたように、切断屑Wは、第3従動プーリ43付近で下方側に向けて放物線を描いて落下するから、第2フロント支持装置40bに設けた集塵装置200を利用して、落下する切断屑Wを捉えて回収する。
【0099】
また、ワイヤーソー10及び第1及び第2フロント支持装置40a、40bの稼働中、例えばハンチ部404に硬い部分がある場合、ワイヤーソー10が切断面403を形成する速度と、第1及び第2フロント支持装置40a、40bが移動する速度との間に差異が生じる。すると、第2及び第3従動プーリ42、43は、主桁401と平行な方向に向けて移動するが、平行となる手前で、図7(a)を参照しつつ≪≪揺動制御機構≫≫で説明したように、揺動制御機構300のストッパ330が接触型スイッチ320に接触する。
【0100】
これにより、移動していた第1及び第2フロント支持装置40a、40bは、一時停止する。このとき、ワイヤーソー10はハンチ部404に強く押し当てられた状態にある。したがって、ワイヤーソー10を延在方向に周回走行する動作を継続することで、図7(c)で示すように、切断面403を形成しながら、第2従動プーリ42は主桁401と直交する方向に向けて揺動を開始する。
【0101】
こうして、ストッパ330と接触型スイッチ320は、再度非接触となる。これに伴い、スイッチボックス310から送り装置47に送信された停止信号が解除されると、第1及び第2フロント支持装置40a、40bは移動を再開する。
【0102】
このような動作を繰り返し、床版切断分離システムSは、ハンチ部404内で切断面403の形成範囲を広げながら前進していく。
【0103】
本発明によれば、第1及び第2フロント支持装置40a、40bの最上部は、第2及び第3従動プーリ42、43の天端となる。そして、第2及び第3従動プーリ42、43の天端を切断面403の形成予定高さに合わせることで、この高さにワイヤーソー10を配置できる。これにより、コンクリート床版402と第1及び第2フロント支持装置40a、40bとの干渉を回避しつつ、コンクリート床版402下の狭隘な作業空間を有効に活用し、切断面403を形成できる。
【0104】
これは、第1及び第2リア支持装置50a、50bについても同様であり、最上部は、第10及び第11従動プーリ52、53の天端となる。そして、第10及び第11従動プーリ52、53の天端を切断面403の形成予定高さに合わせることで、この高さにワイヤーソー10を配置できる。
【0105】
本発明の切断装置、床版切断分離システム、及びコンクリート床版と主桁の切断分離方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0106】
例えば、第2及び第3従動プーリ42、43の高さ調整は、上プーリ支持具454に対するプーリ軸支持金具455の取付高さの変更により行う構成とした。しかし、必ずしもこれに限定するものではなく、例えば、支柱452に対する上プーリ支持具454の位置変更により高さ調整可能としてもよい。これは、第6及び第7、第10及び第11従動プーリ82~83、52~53についても同様である。
【0107】
また、床版切断分離システムSは、第2及び第3従動プーリ42~43は高さを一定にしたまま、第1及び第2フロント支持装置40a、40bを主桁401に沿って移動させてもよいし、高さを変更しながら移動させてもよい。これにより、切断面403は、主桁401の上フランジに平行な平面だけでなく、主桁401の延在方向に連続する波形面や傾斜面など、様々な形状に形成することができる。
【0108】
さらに、本実施の形態では、第2リア支持装置50bのプーリ架台55をガイド部61に沿って延長し、これに第1及び第2中間支持装置80a、80bを支持させる構成とした。しかし、第1及び第2中間支持装置80a、80bに、別途プーリ架台を設ける構造としてもよい。
【0109】
また、本実施の形態では、案内機構70を切断分離予定の主桁401に隣接する主桁401’を利用して支持する構造を例示したが、これに限定するものではない。例えば、コンクリート床版402の下面に吊り下げるなど、切断面403の形成位置に隣接して配置できればいずれに支持させてもよい。
【符号の説明】
【0110】
100 切断装置
10 ワイヤーソー
20 駆動機構
21 駆動プーリ
22 プーリガイド
221 支持機構
23 昇降装置
24 駆動部
30 ストレージ機構
31 プーリホルダー
311 支持機構
32~34 第1~第3ガイドプーリ
40a 第1フロント支持装置(移動装置)
40b 第2フロント支持装置(移動装置)
41~44 第1~第4従動プーリ
45 プーリ架台
451 架台本体
452 支柱
453 下プーリ支持具
454 上プーリ支持具
46 移動体
47 送り装置
50a 第1リア支持装置
50b 第2リア支持装置
51~54 第9~第12従動プーリ
55 プーリ架台
551 架台本体
552 支柱
553 下プーリ支持具
554 上プーリ支持具
56 移動体
60 走行レール
61 ガイド部
62 ガイド支持具
70 案内機構
71~75 第1~第5案内プーリ
76 連結部材
80a 第1中間支持装置
80b 第2中間支持装置
81~84 第9~第12従動プーリ
852 支柱
853 下プーリ支持具
854 上プーリ支持具
90 張力調整機構
91 プーリガイド
911 支持機構
92 テンションプーリ
200 集塵装置
210 集塵カバー
220 吸引ホース
300 揺動制御機構
310 スイッチボックス
320 接触型スイッチ
330 ストッパ
400 橋梁
401 主桁
401’ 主桁
4011 頭部付きスタッド
402 コンクリート床版
403 切断面
404 ハンチ部(接合部)
S 床版切断分離システム
W 切断屑
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7