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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157391
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】破損検出機構
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/12 20060101AFI20241030BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241030BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20241030BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20241030BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B24B49/12
H01L21/78 F
B24B27/06 M
B23Q17/09 C
B23Q17/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071728
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】523156361
【氏名又は名称】ファクトリーファイブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 知行
(72)【発明者】
【氏名】横田 満
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C029DD06
3C029DD20
3C034AA19
3C034BB93
3C034CA09
3C034CA22
3C034DD18
3C158AA03
3C158AC02
3C158BA09
3C158CB06
3C158DA17
5F063AA41
5F063AA48
5F063DD20
5F063DE11
5F063DE16
5F063DE23
5F063DE32
(57)【要約】
【課題】従来と比べて検出能力を向上させる。
【解決手段】制御部と、発光部と、投光ファイバと、複数の光ファイバを有する受光ファイバ群と、検出部とを備えて構成される。投光ファイバの出射端と、受光ファイバ群の入射端は、回転ブレードを挟んで、対向する位置に配置されている。発光部は、検査光を出力し、投光ファイバは、発光部から出力される検査光を出射する。受光ファイバ群は、投光ファイバから出射された検査光を受光して、検出部に送る。制御部は、検出部から送られる検出信号に基づいて、回転ブレードの破損を検出する。受光ファイバ群は、第1ファイバ及び第2ファイバを備え、第1ファイバ及び第2ファイバの入射端は、回転ブレードの径方向に沿って配置され、第1ファイバが回転ブレードの外周側に配置され、第2ファイバが回転ブレードの中心側に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシング装置が備える、対向する第1主面及び第2主面を含み、かつ第1主面及び第2主面の平面形状が円形状の平板状体である回転ブレードの破損を検出する破損検出機構であって、
制御部と、発光部と、投光ファイバと、複数の光ファイバを有する受光ファイバ群と、検出部とを備え、
前記投光ファイバの出射端と、前記受光ファイバ群の入射端は、前記回転ブレードを挟んで、対向する位置に配置されており、
前記発光部は、検査光を出力し、
前記投光ファイバは、前記発光部から出力される前記検査光を出射し、
前記受光ファイバ群は、前記投光ファイバから出射された前記検査光を受光して、前記検出部に送り、
前記制御部は、前記検出部から送られる検出信号に基づいて、前記回転ブレードの破損を検出し、
前記受光ファイバ群は、第1ファイバ及び第2ファイバを備え、
前記第1ファイバ及び前記第2ファイバの入射端は、前記回転ブレードの径方向に沿って配置され、
前記第1ファイバが回転ブレードの外周側に配置され、
前記第2ファイバが回転ブレードの中心側に配置される
ことを特徴とする破損検出機構。
【請求項2】
前記検出部は、
第1ファイバから受光した光を、受光量に応じた強度の電気信号に変換して第1アナログ電気信号を生成する、第1受光素子と、
第2ファイバから受光した光を、受光量に応じた強度の電気信号に変換して第2アナログ電気信号を生成する、第2受光素子と、
前記第1アナログ電気信号を、ディジタル信号に変換して、第1ディジタル電気信号を生成する、第1ADCと、
前記第2アナログ電気信号を、ディジタル信号に変換して、第2ディジタル電気信号を生成する、第2ADCと、
前記第1ディジタル電気信号と、前記第2ディジタル電気信号の、排他的論理和を示す排他的論理和信号を生成する、排他的論理和回路と、
前記排他的論理和信号と周期信号との論理積演算を行い、パルス信号を生成する、信号幅パルス変換回路と
を備える請求項1に記載の破損検出機構。
【請求項3】
前記光ファイバ群が、第1~第N(Nは3以上の整数)ファイバを備え、
前記第1~第Nファイバの入射端は、前記回転ブレードの径方向に沿って配置され、
前記第mファイバ(mは2以上N以下の整数)は、前記第m-1ファイバよりも回転ブレードの中心側に配置される
請求項2に記載の破損検出機構。
【請求項4】
切替により選択されるmに対し、
第1受光素子が、第m-1ファイバに入射された光を受光し、
第2受光素子が、第mファイバに入射された光を受光する
請求項3に記載の破損検出機構。
【請求項5】
前記光ファイバ群が、第1~第4ファイバを備え、
前記第3ファイバ及び前記第4ファイバは、前記第1ファイバ及び前記第2ファイバに対して、周方向に隣接する位置に設けられる
請求項2に記載の破損検出機構。
【請求項6】
前記検出部と同じ構成の予備検出部をさらに備え、
前記予備検出部の第1受光素子が、前記第3ファイバに入射された光を受光し、
前記予備検出部の第2受光素子が、前記第4ファイバに入射された光を受光する
請求項5に記載の破損検出機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダイシング装置が備える回転ブレードの破損を検出する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデバイスが形成されたウエハは、例えば、回転ブレードを備えるダイシング装置で切削加工され、各デバイスに対応する複数のチップに分割される。回転ブレードは、円形状であり、回転するスピンドルの先端部分に装着される。回転ブレードの外周部分は、ダイヤモンドなどの砥粒を結合材料で結合して形成された切れ刃となっている。回転ブレードを回転させてウエハに切り込ませることで、ウエハが切削される。
【0003】
回転ブレードは、切削時の負荷によって欠け等の破損が発生することがある。破損した回転ブレードを使用し続けると、切削中に被加工物を破損させる恐れがある。このため、このような回転ブレードの不具合を検出するための機構が必要となる。
【0004】
回転ブレードの破損を検出する機構(破損検出機構)としては、光ファイバを利用する技術がある(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示された破損検出機構は、発光部と接続された光ファイバ(出射側光ファイバ)と、受光部と接続された光ファイバ(入射側光ファイバ)を備える。発光部からの光を出射する出射側光ファイバの出射端と、出射側光ファイバから出射された光が入射する入射側光ファイバの入射端とは、回転ブレードを挟んで、対向して配置される。
【0005】
特許文献1に開示された破損検出機構では、回転ブレードに破損がない場合には、出射側光ファイバから出射される光の少なくとも一部が切れ刃で遮られる。このため、入射側光ファイバに入射され、受光部で受光される光の受光量は小さくなる。一方、回転ブレードに欠け等の破損がある場合には、遮られていた光が入射側光ファイバに到達するため受光量が増大する。受光部は、受光した光を電気信号に変換する。この電気信号を検出し、例えばCPU(Central Processing Unit)で処理することによって、受光量の増大に基づく回転ブレードの破損が検出される。
【0006】
ここで、光ファイバを用いた破損検出機構の特性として、出射側光ファイバの出射端から放出される光は、光ファイバの内面反射を繰り返した結果として、広角な光となって出射される。対応する入射側光ファイバは、出射側光ファイバと同じ外径寸法の光ファイバを用いるので、入射側光ファイバは円錐状に拡散した光のうち、入射端の径分しか受け取ることができない。
【0007】
このため、回転ブレードには広い範囲で光が当たる一方で、入射側光ファイバにはその一部しか入射されない。このため、従来の破損検出機構では、例えば微少な欠け等を検出する場合、検出アンプの利得を上げる必要がある。この結果、利得を上げれば応答周波数が落ちるというアンプ特性に起因して、従来の破損検出機構では、微少な欠け等を高感度で検出することが難しかった。
【0008】
このような状況において、この出願に係る発明者らは、検査光の照射範囲を、回転ブレードの径に沿って細長く絞ることで、検出アンプの利得を上げなくても、十分な強度の検査光を回転ブレードに照射することができる破損検出機構を提案している(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に開示されている破損検出機構では、検出アンプの利得を上げる必要が生じないため、応答周波数の低下が生じず、回転ブレードの破損を高感度で検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-159064号公報
【特許文献2】特開2020-096159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献2に開示されている破損検出機構では、例えば、外形φ56mmのブレードについて、スリットの無いブレードでは、0.5mm程度にまで検出能力が向上している。一方、スリットのあるブレードでは、検出能力の向上は、1mm程度にとどまっている。
【0011】
これは、スリットのあるブレードのスリット付近で破損した場合には、入射側光ファイバに入射される光の強度のみでは、破損を検出できない場合があるためである。この場合は、スリット部分に検査光が照射される際に得られる光パルスのパルス形状の変化に基づいて破損を検出できるが、スリットのないブレードでの検出能力には至らない。
【0012】
そこで、この発明の目的は、従来と比べて検出能力を向上させる、回転ブレードの破損を検出できる破損検出機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、この発明の、ダイシング装置が備える、対向する第1主面及び第2主面を含み、かつ第1主面及び第2主面の平面形状が円形状の平板状体である回転ブレードの破損を検出する破損検出機構は、制御部と、発光部と、投光ファイバと、複数の光ファイバを有する受光ファイバ群と、検出部とを備えて構成される。投光ファイバの出射端と、受光ファイバ群の入射端は、回転ブレードを挟んで、対向する位置に配置されている。発光部は、検査光を出力し、投光ファイバは、発光部から出力される検査光を出射する。受光ファイバ群は、投光ファイバから出射された検査光を受光して、検出部に送る。制御部は、検出部から送られる検出信号に基づいて、回転ブレードの破損を検出する。
【0014】
受光ファイバ群は、第1ファイバ及び第2ファイバを備え、第1ファイバ及び第2ファイバの入射端は、回転ブレードの径方向に沿って配置され、第1ファイバが回転ブレードの外周側に配置され、第2ファイバが回転ブレードの中心側に配置される。
【0015】
この発明の破損検出機構の好適実施形態によれば、検出部は、第1ファイバから受光した光を、受光量に応じた強度の電気信号に変換して第1アナログ電気信号を生成する、第1受光素子と、第2ファイバから受光した光を、受光量に応じた強度の電気信号に変換して第2アナログ電気信号を生成する、第2受光素子と、第1アナログ電気信号を、ディジタル信号に変換して、第1ディジタル電気信号を生成する、第1ADCと、第2アナログ電気信号を、ディジタル信号に変換して、第2ディジタル電気信号を生成する、第2ADCと、第1ディジタル電気信号と、第2ディジタル電気信号の、排他的論理和を示す排他的論理和信号を生成する、排他的論理和回路と、排他的論理和信号と周期信号との論理積演算を行い、パルス信号を生成する、信号幅パルス変換回路とを備える。
【0016】
この発明の破損検出機構の他の好適実施形態によれば、光ファイバ群が、第1~第N(Nは3以上の整数)ファイバを備え、第1~第Nファイバの入射端は、回転ブレードの径方向に沿って配置され、第mファイバ(mは2以上N以下の整数)は、第m-1ファイバよりも回転ブレードの中心側に配置される。
【0017】
さらに、切替により選択されるmに対し、第1受光素子が、第m-1ファイバに入射された光を受光し、第2受光素子が、第mファイバに入射された光を受光するのがよい。
【0018】
この発明の破損検出機構の他の好適実施形態によれば、光ファイバ群が、第1~第4ファイバを備え、第3ファイバ及び第4ファイバは、第1ファイバ、第2ファイバに対して、周方向に隣接する位置に設けられる。
【0019】
さらに、検出部と同じ構成の予備検出部をさらに備え、予備検出部の第1受光素子が、第3ファイバに入射された光を受光し、予備検出部の第2受光素子が、第4ファイバに入射された光を受光するのがよい。
【発明の効果】
【0020】
この発明による破損検出機構では、受光ファイバ群が2以上の光ファイバを備え、それぞれの光ファイバで受光する光を用いることにより、従来と比べて検出能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】破損検出機構を示す概略図である。
図2】破損検出機構が備える受光ファイバ群と、検査対象の回転ブレードとの配置関係を示す概略図である。
図3】破損検出機構が備える検出部の模式図である。
図4】破損検出機構の動作を説明するための模式図(1)である。
図5】破損検出機構の動作を説明するための模式図(2)である。
図6】他の構成例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0023】
(構成)
図1図4を参照して、この発明の破損検出機構の構成について説明する。図1は、破損検出機構を示す概略図である。
【0024】
破損検出機構100は、制御部10、駆動部(DRIVER)20、発光部30、投光ファイバ40、受光ファイバ群70、検出部90を備えて構成される。なお、受光ファイバ群70は、光の伝播方向が互いに平行な、複数の光ファイバで構成される。
【0025】
制御部10は、例えば中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されており、破損検出機構100全体の動作を制御する。制御部10は、例えば、ROM(Read Only Memory)に格納されている所定の制御プログラムを読みだして実行することにより、各種処理を行う。これら処理の結果等は、適宜RAM(Random Access Memory)等の記憶手段に格納される。
【0026】
制御部10は、駆動部20に指示を送ることによって、発光部30からの検査光の出力を制御する。また、制御部10は、検出部90を経て送られる電気信号である検出信号に基づいて、回転ブレード200の破損を検出する。
【0027】
投光ファイバ40は、一端40a側で発光部30と接続されている。また、受光ファイバ群70は、一端70a側で検出部90と接続されている。投光ファイバ40の他端(出射端)40bと、受光ファイバ群70の他端(受光端)70bとは、互いに対向する位置に配置されている。
【0028】
破損検出機構100において、検査対象の回転ブレード200は、投光ファイバ40の他端40bと受光ファイバ群70の他端70bとの間に配置される。回転ブレード200は、対向する第1主面200a及び第2面200bを含み、かつこれら第1主面200a及び第2面200bの平面形状が円形状の平板状体である。
【0029】
回転ブレード200は、ダイシング装置(図示せず)において、スピンドル250の先端部分に装着されている。スピンドル250は、回転ブレード200の第1主面200a又は第2主面200bの一方の側の中心に、これら第1主面200a及び第2主面200bに直交する方向から、回転ブレード200に接続されている。スピンドル250の回転に連動して、回転ブレード200は、スピンドル250との接続部分を回転軸として回転可能となっている。
【0030】
なお、以下の説明では、回転ブレード200の第1主面200a及び第2主面200bに沿った平面をY-Z平面とし、第1主面200a及び第2主面200bに直交する方向をX軸方向とする。また、回転ブレード200がスリットのあるブレードである場合を説明する。
【0031】
駆動部20は、制御部10からの指示に基づき、発光部30に駆動信号を送る。
【0032】
発光部30は、駆動部20から送られる駆動信号に基づき、検査光を出力する。発光部30としては、例えばLD(Laser Diode)等の任意好適な発光素子を用いることができる。
【0033】
発光部30から出力された検査光は、投光ファイバ40を経て、回転ブレード200に出射(投光)される。
【0034】
回転ブレード200に投光された光のうち、回転ブレード200で遮られなかったものは、受光ファイバ群70に送られる。ここでは、複数の光ファイバを備える受光ファイバ群70が、第1ファイバ71及び第2ファイバ72の2本の光ファイバを備える例を説明する。
【0035】
図2は、破損検出機構が備える受光ファイバ群と、検査対象の回転ブレードとの配置関係を示す概略図である。図2は、受光ファイバ群と回転ブレードを、回転ブレードの第1主面側から見た図である。以下の説明において、受光ファイバ群70が備えるファイバの位置は、受光ファイバ群70の他端70bを、回転ブレード250の第1主綿250a側からみたときの、Y-Z平面における位置を指すものとする。
【0036】
受光ファイバ群70の他端70bにおいて、第1ファイバ71及び第2ファイバ72は、それぞれ、回転ブレード200の径方向に沿って配置される。ここでは、第1ファイバ71が回転ブレード200の外周側に配置され、第2ファイバ72が回転ブレード200の中心側に配置されるものとする。また、投光ファイバ40の他端40bは、例えば、Y-Z平面でみたときに、第1ファイバ71及び第2ファイバ72を結ぶ線分の中心に配置される。このように配置すると、投光ファイバ40からの光が回転ブレード200に遮られない場合に、第1ファイバ71と第2ファイバ72とに入力される光が、互いに同程度となる。
【0037】
また、図2に示すように、回転ブレード200がスリットのあるブレードであって、第1ファイバ71及び第2ファイバ72を結ぶ直線が、回転ブレード200のスリット270の中心を通るとき、Y-Z平面において、第2ファイバ72がスリット270に含まれる位置にあるのが良い。
【0038】
また、第1ファイバ71については、少なくとも一部がスリット270に含まれる位置にあるのが良い。第1ファイバ71の全部がスリット270に含まれる位置にある場合は、第1ファイバ71及び第2ファイバ72が、回転ブレード200のスリット270の位置にあるときのみ光が入射される。
【0039】
一方、第1ファイバ71の一部は、回転ブレード200の外周よりも外側にあってもよい。このように配置すると、ブレードの欠けが生じやすい、回転ブレード200の外周付近に、第1ファイバが配置されるので、破損検出にとって都合が良い。また、一部が、回転ブレード200の外側にあることで、第1ファイバ71には、回転ブレード200のスリットの位置によらず、光が入射されるので、破損検出機構が正常に動作していることの確認に用いることができる。
【0040】
図3は、破損検出機構が備える検出部の模式図である。また、図4(A)~(H)は、破損検出機構の動作を説明するための模式図である。図4(A)~(H)は、横軸に時間を取って示している。図4(A)は、受光ファイバ群70が配置された位置の回転ブレード250の形状を示している。図4(B)及び図4(C)は、それぞれ、第1アナログ電気信号及び第2アナログ電気信号を示している。図4(D)及び図4(E)は、それぞれ、第1ディジタル電気信号及び第2ディジタル電気信号を示している。図4(F)は、排他的論理和信号を示している。図4(G)及び図4(H)は、信号幅パルス変換回路の出力を示している。
【0041】
第1ファイバ71及び第2ファイバ72を備える受光ファイバ群70に入力された光は、検出部90に送られる。検出部90は、第1受光素子901及び第2受光素子902、第1アナログ・ディジタル変換器(ADC:Analog Digital Converter)911及び第2ADC912、排他的論理和回路930、信号幅パルス変換回路950を備えて構成される。
【0042】
第1受光素子901及び第2受光素子902は、入力された光を、受光量に応じた強度の電気信号に変換する機能を有する素子であり、例えば、PD(Photo Diode)等の任意好適な受光素子と、必要に応じて増幅素子とを備えて構成される。
【0043】
第1受光素子901は、第1ファイバ71から受光した光を第1アナログ電気信号に変換して、第1ADC911に送る。第2受光素子902は、第2ファイバ72から受光した光を第2アナログ電気信号に変換して、第2ADC912に送る。
【0044】
第1アナログ電気信号(図4(B)参照)及び第2アナログ電気信号(図4(C)参照)は、回転ブレード200のスリット270が、第1ファイバ71及び第2ファイバ72が配置されている箇所を通過する時刻に、同期する。すなわち、第1アナログ電気信号及び第2アナログ電気信号は、外周差によるわずかな違いを除いて、ほぼ完全に同期したアナログ信号である。
【0045】
破損していないスリット(例えば、図4(A)中、Iで示す部分)では、第1アナログ電気信号と、第2アナログ電気信号は、ほぼ同時に立ち上がり、ほぼ同時に立ち下がる。
【0046】
一方、破損しているスリット(例えば、図4(A)中、IIで示す部分)では、第1アナログ電気信号と、第2アナログ電気信号は、破損していないスリットに比べて、第1アナログ電気信号の幅が大きくなる。
【0047】
第1ADC911及び第2ADC912は、入力されたアナログ信号を、ディジタル信号に変換する機能を有する素子であり、ADCとして知られている、任意好適な素子で構成される。なお、第1ADC911及び第2ADC912として、低電圧源920で生成される閾値電圧が入力され、入力されたアナログ信号の電圧が閾値電圧を超えたときに1を出力し、それ以外の時に0を出力するコンパレータを用いてもよい。
【0048】
第1ADC911は、入力された第1アナログ電気信号を第1ディジタル電気信号(図4(D)参照)に変換して、排他的論理和回路930に送る。また、第2ADC912は、入力された第2アナログ電気信号を第2ディジタル電気信号(図4(E)参照)に変換して、排他的論理和回路930に送る。
【0049】
図3では、第1受光素子901で生成された第1アナログ電気信号が、第1ADC911に送られ、第2受光素子902で生成された第2アナログ電気信号が、第2ADC912に送られる例を示しているが、これに限定されない。第1アナログ電気信号及び第2アナログ電気信号を、第1ADC911及び第2ADC912に加えて制御部10に送る構成にしてもよい。制御部10が、第1アナログ電気信号及び第2アナログ電気信号を受け取ることにより、これらのパルス形状から、破損の形状や、破損の原因を解析することが可能になる。
【0050】
排他的論理和回路930は、2つの入力が等しい場合、すなわち、ともに「1」、又は、ともに「0」の場合は、「0」を、排他的論理和信号として出力し、2つの入力が異なっている場合、すなわち、一方が「1」で他方が「0」の場合は、「1」を排他的論理和信号として出力する(図4(F)参照)。
【0051】
破損していないスリットでは、第1ディジタル信号及び第2ディジタル信号がともに「1」となり、排他的論理和信号は「0」となる。一方、スリット以外では、第1ディジタル信号及び第2ディジタル信号がともに「0」となり、排他的論理和信号は「0」となる。
【0052】
これに対し、破損している箇所では、第1ディジタル信号が「1」となり、第2ディジタル信号が「0」となる。従って、破損が大きい場合は、排他的論理和信号が「1」となる部分の幅(以下、排他的論理和信号の幅と称することもある。)が大きくなり、破損が小さい場合は、排他的論理和信号の幅が小さくなる。このように、排他的論理和信号の幅が、破損の周方向の大きさを示す。
【0053】
排他的論理和信号は、信号幅パルス変換回路950に送られる。信号幅パルス変換回路950は、排他的論理和信号の幅に応じた数のパルスに変換する。信号幅パルス変換回路950は、発振器940で生成される周期信号と、排他的論理和回路930で生成される排他的論理和信号の、論理積(AND)をパルス信号(図4(G))として出力する。例えば、スリットにおける第1ディジタル電気信号及び第2ディジタル信号の幅が1μsecに対して、周期信号の周期は50nsecとする。制御部10はこの論理積信号のパルスを計数して、破損検出を行う。
【0054】
スリットにおいて、第1アナログ電気信号と第2アナログ電気信号の立ち上がりと立ち下がりが完全に一致しているならば、回転ブレード200が破損していない場合は、論理積信号のパルスの数は0となる。一方、回転ブレード200において、破損すると、パルスの計数が増える。従って、このパルスの数を監視しておくことで、回転ブレード200の破損を容易に検出することができる。
【0055】
図3では、発振器940で生成される周期信号と、排他的論理和回路930で生成される排他的論理和信号の、論理積(AND)を制御部10に送り、パルスを計数する例を示しているが、これに限定されない。第1ADC911で生成された第1ディジタル信号及び第2ADC912で生成された第2ディジタル信号を、制御部10に送る構成にしてもよい。この場合、制御部10が、第1ディジタル信号(図4(D)参照)及び第2ディジタル信号(図4(E)参照)のパルスを計数できる。
【0056】
ブレードに破損がない場合は、第1ディジタル信号(図4(D)参照)及び第2ディジタル信号(図4(E)参照)のパルスの数と、論理積信号のパルスの数とは、一定の比となる。従って、第1ディジタル信号及び第2ディジタル信号の少なくとも一方と、論理積信号との、パルスの数の比を監視すれば、破損の発生をより容易に検出できる。
【0057】
上述のように、この発明の破損検出装置は、受光ファイバ群として、スリットに対して法線上に配置した第1ファイバ及び第2ファイバを使って、ひとつのパルス信号から周期性と同等の幅信号を持つスリットの信号だけを除去することでブレードの破損を抽出できる。スリットに対して法線上に配置した複数のファイバを用いるのは、ブレードの破損により生じる信号と、スリット部分で生じる信号のいずれもパルス信号であるため、一般的なパルスカウンターでパルス数だけをカウントしたのでは、スリットによる信号かブレードの破損信号かを判別できないことによる。
【0058】
また、抽出されたパルス信号にブレードの破損により生じるパルスの時間幅の1/10~1/20程度の短い周期のパルス信号で論理和を取ることにより、一般的なパルスカウンターでも容易に破損部分だけの信号を取得できる。さらに、ブレードの破損により生じる破損信号と、破損信号より短い周期のパルス信号との論理和を取ることにより、パルス数の多寡で破損信号そのものの幅の大きさも容易に判別できる。
【0059】
また、複数のファイバを群として使用することで、ファイバ位置の前後上下関係から、論理演算をかけることで、目的の信号成分を抜き取り易くしたり、光量を増加させてアンプの利得の影響を受けづらくしたりできる。
【0060】
なお、光軸のずれや、ジッターなどにより、第1ディジタル信号と第2ディジタル信号の立ち上がりと立ち下がりに、わずかなずれが生じ、パルスが発生する場合がある(図4(H)参照)。この場合であっても、一定時間の計数により、破損していない状態でのパルス数を取得しておけば、このパルス数の増加により、破損検出を行うことができる。
【0061】
なお、ここでは、スリットがあるブレードを用いる例を説明したが、スリットがないブレードにも適用できる。
【0062】
図5を参照して、スリットがないブレードにおける破損検出機構の動作を説明する。図5(A)~(F)は破損検出機構の動作を説明するための模式図である。図5(A)~(F)は、横軸に時間を取って示している。図5(A)、図5(C)及び図5(E)は、受光ファイバ群70が配置された位置を通過する回転ブレード250の形状を示している。図5(B)、図5(D)及び図5(E)は、信号幅パルス変換回路950の出力を示している。
【0063】
破損がない場合(図5(A)参照)は、第1ディジタル電気信号及び第2ディジタル電気信号は、つねに「0」となり、論理積信号にパルスが生じない(図5(B)参照)。しかし、外周部に破損が生じる(図5(C)中、IIIで示す部分)と、破損が生じた部分では、第1ディジタル信号が「1」となり、第2ディジタル信号が「0」となる。従って、排他的論理和信号が「1」となり、パルスが発生する(図5(D)参照)。このように、破損の大きさに応じた数のパルスが計数される。
【0064】
同様に、ブレードの摩耗も検出できる。摩耗がない場合(図5(A)参照)は、第1ディジタル電気信号及び第2ディジタル電気信号は、つねに「0」となり、論理積信号にパルスが生じない(図5(B)参照)。しかし、外周部に摩耗が生じる(図5(E)参照)と、摩耗により、第1ディジタル信号が常に「1」となる。このとき、第2ディジタル信号が「0」である。従って、排他的論理和信号が「1」となり、パルスが発生する(図5(F)参照)。このように、摩耗によりパルスが計数される。摩耗により計数されるパルスの数は、周期信号のパルスの数に対応する。
【0065】
また、ここでは、受光ファイバ群70が第1ファイバと第2ファイバの2つのファイバを備える例を説明したが、他の構成例として、受光ファイバ群70が、さらに、1以上のファイバを備えてもよい。
【0066】
図6を参照して、他の構成例を説明する。図6は、他の構成例を説明するための模式図である。
【0067】
図6(A)に示すように、受光ファイバ群70が、第1ファイバ、第2ファイバを結ぶ直線上の、第n-1(nは3以上の整数)ファイバよりも、ブレードの中心側に、第nファイバを備える構成にしてもよい。
【0068】
この場合、先ず、第1ファイバ71及び第2ファイバ72で、破損検出を行う。ここで、第1ディジタル電気信号が、「1」のみを示すようになった場合、ブレードの摩耗が考えられる。その後、第2ファイバ72及び第3ファイバ73を用いて、第1ファイバ71と第2ファイバ72を用いる場合と同じ処理により、破損検出を行う。
【0069】
このように、受光ファイバ群70が、第1ファイバ71及び第2ファイバ72に加えて、第1ファイバ71、第2ファイバ72を結ぶ直線上に、さらに、1以上のファイバを備えることで、ブレードの摩耗検出、及び、摩耗したブレードに対する破損検出が可能になる。
【0070】
また、例えば、受光ファイバ群70が、第1ファイバ71、第2ファイバ72に対して、周方向に隣接する位置に、第3ファイバ73及び第4ファイバ74を備える構成にしてもよい。この構成では、第1ファイバ71及び第2ファイバ72で破損検出を行うとともに、第3ファイバ73及び第4ファイバ74でも、第1ファイバ71及び第2ファイバ72で行われる破損検出と同様の破損検出を行う。
【0071】
第1ファイバ71及び第2ファイバ72での破損検出と、第3ファイバ73及び第4ファイバ74での破損検出の、2系統の破損検出を行うと、第1ファイバ71及び第2ファイバ72における誤検出を確認できる。
【符号の説明】
【0072】
10:制御部
20:駆動部
30:発光部
40:投光ファイバ
70:受光ファイバ群
71:第1ファイバ
72:第2ファイバ
90:検出部
100:破損検出機構
200:回転ブレード
250:スピンドル
901、902:受光素子
911、912:ADC
920:低電圧源
930:排他的論理和回路
940:発振器
950:信号幅パルス返還回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6