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特開2024-157394メタン酸化触媒、メタン酸化触媒の製造方法、および、メタンの分解方法
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  • 特開-メタン酸化触媒、メタン酸化触媒の製造方法、および、メタンの分解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157394
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】メタン酸化触媒、メタン酸化触媒の製造方法、および、メタンの分解方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20241030BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20241030BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20241030BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B01J23/63 A
B01J37/04 102
B01J37/08 ZAB
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071736
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 公一
(72)【発明者】
【氏名】西田 侑介
(72)【発明者】
【氏名】日野 なおえ
(72)【発明者】
【氏名】日数谷 進
(72)【発明者】
【氏名】庄野 恵美
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA18
4D148AB01
4D148BA08X
4D148BA19X
4D148BA28Y
4D148BA30X
4D148BA31X
4D148BA35Y
4D148BA36Y
4D148BA37Y
4D148BA38Y
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BB01
4D148BB02
4D148BB08
4D148DA03
4D148DA11
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA05C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB06C
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC43C
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC72C
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BC75C
4G169CA02
4G169CA07
4G169CA10
4G169CA15
4G169DA06
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169EC25
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB06
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】比較的低温の条件下において、高いメタン分解能を有するメタン酸化触媒、メタン酸化触媒の製造方法、および、メタンの分解方法を提供する。
【解決手段】メタン酸化触媒は、メタンを酸化するための触媒であって、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む触媒担体と、前記触媒担体に担持され、PdおよびPtを含む活性金属とを備える。また、前記触媒担体における、セリアの含有割合が、5質量%以上、15質量%未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンを酸化するための触媒であって、
セリア-ジルコニア複合酸化物を含む触媒担体と、
前記触媒担体に担持され、PdおよびPtを含む活性金属と
を備え、
前記触媒担体における、セリアの含有割合が、5質量%以上、15質量%未満である、メタン酸化触媒。
【請求項2】
前記活性金属における、前記Pdの含有割合が、50質量%以上である、請求項1に記載のメタン酸化触媒。
【請求項3】
前記触媒担体100質量部に対する、前記活性金属の配合量が、5質量部以下である、請求項1に記載のメタン酸化触媒。
【請求項4】
前記触媒担体は、さらに、ジルコニアを含み、
前記ジルコニアは、単斜晶ジルコニア相を含有し、
前記セリア-ジルコニア複合酸化物は、正方晶セリア-ジルコニア相を含有する、請求項1に記載のメタン酸化触媒。
【請求項5】
セリア-ジルコニア複合酸化物を含む触媒担体原料と、PdおよびPtを含む活性金属の溶液とを混合し、スラリーを用意する第1工程と、
前記スラリーを乾燥させて、粉体を得る第2工程と、
前記粉体を400℃以上、600℃以下で焼成し、請求項1~4のいずれか一項に記載のメタン酸化触媒を得る第3工程と
を含み、
前記第1工程において、前記触媒担体原料における、セリアの含有割合が、5質量%以上、15質量%未満である、メタン酸化触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のメタン酸化触媒に対して、メタンを接触させ、酸化させる酸化工程を含み、
前記酸化工程において、酸化温度が450℃以下である、メタンの酸化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン酸化触媒、メタン酸化触媒の製造方法、および、メタンの分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関などから排出される排ガスに含まれる有害物質(例えば、炭化水素、窒素酸化物など)は、大気汚染の原因となる。具体的には、自動車から排出される排ガスには、炭化水素として、プロピレンが多く含まれる。また、天然ガスにより稼働する内燃機関から排出される排ガスには、天然ガスに含まれるメタンの一部が燃焼せず、未燃焼のメタンが含まれる。このような排ガスに含まれる炭化水素を分解するために、排ガスの流れる排気通路に、炭化水素を分解する触媒を配置し、炭化水素を分解する技術が知られている。
【0003】
このような炭化水素分解触媒として、希土類酸化物(例えば、セリア)を15~100重量%含む金属酸化物からなる触媒担体に、活性金属を担持させた炭化水素分解触媒が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1の炭化水素分解触媒は、高活性であり、高温条件(例えば、800℃)下においても、その活性を長期間維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-270882号公報
【0006】
一方、上記したように、天然ガスにより稼働する内燃機関からの排ガスには、未燃焼のメタンが含まれる。メタンは、化学的に安定な構造を有しており、酸化されにくい性質を有する。また、天然ガスにより稼働する内燃機関から排出される排ガスは、比較的低い温度で排出される。そのため、炭化水素分解触媒のうち、メタンを酸化する触媒には、比較的低温の条件下において、高いメタン分解能を有することが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の炭化水素分解触媒は、比較的低温の条件下で、メタン分解能が低いという不具合がある。
【0008】
本発明は、比較的低温の条件下において、高いメタン分解能を有するメタン酸化触媒、メタン酸化触媒の製造方法、および、メタンの分解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、メタンを酸化するための触媒であって、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む触媒担体と、前記触媒担体に担持され、PdおよびPtを含む活性金属とを備え、前記触媒担体における、セリアの含有割合が、5質量%以上、15質量%未満である、メタン酸化触媒を含む。
【0010】
本発明[2]は、前記活性金属における、前記Pdの含有割合が、50質量%以上である、[1]に記載のメタン酸化触媒を含む。
【0011】
本発明[3]は、前記触媒担体100質量部に対する、前記活性金属の配合量が、5質量部以下である、[1]に記載のメタン酸化触媒を含む。
【0012】
本発明[4]は、前記触媒担体は、さらに、ジルコニアを含み、前記ジルコニアは、単斜晶ジルコニア相を含有し、前記セリア-ジルコニア複合酸化物は、正方晶セリア-ジルコニア相を含有する、[1]に記載のメタン酸化触媒を含む。
【0013】
本発明[5]は、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む触媒担体原料と、PdおよびPtを含む活性金属の溶液とを混合し、スラリーを用意する第1工程と、前記スラリーを乾燥させて、粉体を得る第2工程と、前記粉体を400℃以上、600℃以下で焼成し、[1]~[4]のいずれか一項に記載のメタン酸化触媒を得る第3工程とを含み、前記第1工程において、前記触媒担体原料における、セリアの含有割合が、5質量%以上、15質量%未満である、メタン酸化触媒の製造方法を含む。
【0014】
本発明[6]は、[1]~[4]のいずれか一項に記載のメタン酸化触媒に対して、メタンを接触させ、酸化させる酸化工程を含み、前記酸化工程において、酸化温度が450℃以下である、メタンの酸化方法を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明のメタン酸化触媒は、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む触媒担体と、触媒担体に担持され、PdおよびPtを含む活性金属とを備え、触媒担体における、セリアの含有割合が、5質量%以上、15質量%未満である。そのため、比較的低温の条件下において、高いメタン分解能を有する。
【0016】
本発明のメタン酸化触媒の製造方法は、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む触媒担体原料と、PdおよびPtを含む活性金属の溶液とを混合し、スラリーを用意する第1工程と、スラリーを乾燥させて、粉体を得る第2工程と、粉体を400℃以上、600℃以下で焼成し、メタン酸化触媒を得る第3工程とを含み、第1工程において、触媒担体における、セリアの含有割合が、5質量%以上、15質量%未満である。そのため、上記のメタン酸化触媒を効率よく製造できる。
【0017】
本発明のメタンの酸化方法は、上記のメタン酸化触媒に対して、メタンを接触させ、酸化する酸化工程を含み、酸化工程において、酸化温度が450℃以下である。そのため、比較的低温の条件下において、効率よくメタンを酸化できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】各実施例および各比較例に用いた、触媒担体原料のX線回折(XRD)パターンのグラフを示す。
図2】各実施例および各比較例のメタン酸化触媒のX線回折(XRD)パターンのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.メタン酸化触媒
メタン酸化触媒は、メタン含有ガス中のメタン(CH)を酸化し、COとHOとに分解する触媒である。このようなメタン酸化触媒は、例えば、LNG燃料船から排出されるメタン含有ガスとしての排ガスに含まれる、未燃焼のメタンの除去に用いることができ、また、化学プラントの気相反応などのプロセス中で生成されるメタン含有ガスに含まれるメタンの除去に用いることもできる。
【0020】
メタン酸化触媒は、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む触媒担体と、触媒担体に担持され、PdおよびPtを含む活性金属とを備える。
【0021】
<触媒担体>
触媒担体は、後述する活性金属を担持する。
【0022】
触媒担体は、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む。また、触媒担体は、セリア-ジルコニア複合酸化物以外の、他の触媒担体(例えば、ジルコニア、および、後述する粒子成分)を含んでいてもよい。
【0023】
セリア-ジルコニア複合酸化物(CeZr1-X)は、例えば、セリア(CeO)およびジルコニア(ZrO)の固溶体である。なお、Xは、0超過、1未満である。
【0024】
つまり、セリア-ジルコニア複合酸化物の原料としては、例えば、セリアおよびジルコニアが挙げられる。
【0025】
セリア-ジルコニア複合酸化物の原料において、例えば、全てのジルコニアがセリア-ジルコニア複合酸化物を形成してもよく、また、例えば、一部のジルコニアがセリア-ジルコニア複合酸化物を形成せずに単独で存在してもよい。セリア-ジルコニア複合酸化物の原料において、好ましくは、一部のジルコニアがセリア-ジルコニア複合酸化物を形成せずに単独で存在する。
【0026】
セリア-ジルコニア複合酸化物の原料において、例えば、全てのセリアがセリア-ジルコニア複合酸化物を形成してもよく、また、例えば、一部のセリアがセリア-ジルコニア複合酸化物を形成せずに単独で存在してもよい。セリア-ジルコニア複合酸化物の原料において、好ましくは、全てのセリアがセリア-ジルコニア複合酸化物を形成する。
【0027】
すなわち、触媒担体は、好ましくは、ジルコニア、および、セリア-ジルコニア複合酸化物を含み、より好ましくは、ジルコニア、および、セリア-ジルコニア複合酸化物からなる。
【0028】
ジルコニアは、単独で存在する場合には、例えば、単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相を含有し、セリア-ジルコニア複合酸化物は、例えば、正方晶セリア-ジルコニア(t-CeZr1-X)相を含有する。
【0029】
つまり、触媒担体は、好ましくは、単斜晶ジルコニア相と、正方晶セリア-ジルコニア相とをともに含有する。具体的には、触媒担体に含まれる、セリア-ジルコニア複合酸化物を形成しないジルコニアは、単独で単斜晶ジルコニア相を形成し、セリア-ジルコニア複合酸化物は、正方晶セリア-ジルコニア相を形成する。
【0030】
触媒担体が、正方晶セリア-ジルコニア相よりも活性金属担持サイトが活性化されやすい単斜晶ジルコニア相を含有すれば、メタン分解能に優れる。さらに、触媒担体が、正方晶セリア-ジルコニア相を含有すれば、メタン酸化反応に必要な表面酸性度を確保でき、さらに、メタン分解能に優れる。
【0031】
後述するジルコニアおよびセリアの含有割合は、触媒担体において、単独で存在するセリア、単独で存在するジルコニア、および、セリア-ジルコニア複合酸化物を形成しているセリアおよびジルコニアを共に含めた含有割合である。
【0032】
触媒担体において、ジルコニアの含有割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、80質量%以上、さらに好ましくは、85質量%以上、とりわけ好ましくは、89質量%以上、最も好ましくは、90質量%以上、また、例えば、95質量%未満、好ましくは、94質量%以下、より好ましくは、93質量%以下、さらに好ましくは、92質量%以下、とりわけ好ましくは、91質量%以下である。
【0033】
触媒担体において、ジルコニアの含有割合が、上記範囲内であれば、単独で単斜晶ジルコニア相を形成することができる。
【0034】
触媒担体において、セリアの含有割合は、5質量%以上、好ましくは、6質量%以上、より好ましくは、7質量%以上、さらに好ましくは、8質量%以上、とりわけ好ましくは、9質量%以上である。また、触媒担体において、セリアの含有割合は、15質量%未満、好ましくは、14質量%以下、より好ましくは、13質量%以下、さらに好ましくは、12質量%以下、とりわけ好ましくは、11質量%以下、最も好ましくは、10質量%以下である。
【0035】
触媒担体において、セリアの含有割合が、上記範囲内であれば、セリア-ジルコニア複合酸化物を形成しつつ、単斜晶ジルコニア相を形成するためのジルコニアの配合量を確保することができる。ひいては、触媒担体が、単斜晶ジルコニア相と、正方晶セリア-ジルコニア相とをともに含有することができ、比較的低温の条件下において、高いメタン分解能を有する。
【0036】
なお、触媒担体が、単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相と、正方晶セリア-ジルコニア(t-CeZr1-X)相とを含有することは、X線回折(XRD)パターンを測定することによって、確認できる。詳細は、後述する実施例に記載する。
【0037】
下記に、単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相の回折ピークおよび正方晶セリア-ジルコニア(t-CeZr1-X)相の回折ピークの位置(2θの値(θはブラッグ角))を記載する。なお、正方晶セリア-ジルコニア(t-CeZr1-X)相の回折ピークの位置は、Ceの組成、つまり、Xの値によってシフトする。
【0038】
単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相(-111)面の回折ピークの位置としては、例えば、28°≦2θ≦29°であり、正方晶セリア-ジルコニア(t-CeZr1-X)相(101)面の回折ピークの位置としては、例えば、28°≦2θ≦31°である。
【0039】
なお、正方晶セリア-ジルコニア(t-CeZr1-X)相(101)面の回折ピークにおいて、X=0の場合の回折ピーク(t-ZrO相(111)面の回折ピーク)の位置としては、例えば、30°≦2θ≦31°である。
【0040】
また、触媒担体は、上記したように、他の触媒担体として、粒子成分を含んでいてもよい。
【0041】
粒子成分としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、および、ゼオライトが挙げられる。
【0042】
粒子成分は、単独で使用してもよく、2種以上併用することもできる。
【0043】
<活性金属>
活性金属は、触媒担体に担持される。
【0044】
活性金属は、例えば、金属の状態、および、金属酸化物の状態であることが挙げられる。触媒活性の観点から、好ましくは、金属の状態である。
【0045】
活性金属は、PdおよびPtを含む。
【0046】
また、活性金属は、PdおよびPt以外の、他の活性金属を含んでいてもよい。他の活性金属としては、例えば、Ni、Co、Mn、Fe、および、Cuが挙げられる。
【0047】
活性金属は、PdおよびPtを含み、好ましくは、PdおよびPtである。つまり、活性金属は、好ましくは、PdおよびPt以外の、他の活性金属を含まない。なお、下記の活性金属の総量は、活性金属がPdおよびPtである場合、PdおよびPtの合計量である。
【0048】
活性金属における、Pdの含有割合(=Pdの含有量/活性金属の総量×100)は、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは、50質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上、とりわけ好ましくは、75質量%以上、最も好ましくは、80質量%以上、また、例えば、100質量%未満、好ましくは、95質量%以下、より好ましくは、90質量%以下、さらに好ましくは、85質量%以下である。
【0049】
活性金属における、Pdの含有割合が、上記範囲内であれば、メタン酸化触媒は、比較的低温の条件下において、高いメタン分解能を有する。
【0050】
活性金属における、Ptの含有割合(=Pt含有量/活性金属の総量×100)は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、15質量%以上、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下、とりわけ好ましくは、25質量%以下、最も好ましくは、20質量%以下である。
【0051】
活性金属における、Ptの含有割合が、上記範囲内であれば、メタン酸化触媒は、製造コストに優れる。
【0052】
触媒担体100質量部に対する、活性金属の配合量は、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、より好ましくは、3質量部以上、さらに好ましくは、4質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下、より好ましくは、6質量部以下、さらに好ましくは、5質量部以下である。なお、質量部は、触媒担体の配合量に対して、活性金属の配合量の比率を示している。
【0053】
触媒担体100質量部に対する、活性金属の配合量が、上記範囲内であれば、メタン酸化触媒は、製造コストに優れる。
【0054】
触媒担体100質量部に対する、Pdの配合量は、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、2質量部以上、さらに好ましくは、3質量部以上、とりわけ好ましくは、4質量部以上、また、例えば、10質量部未満、好ましくは、8質量部以下、より好ましくは、6質量部以下、さらに好ましくは、5質量部以下である。
【0055】
触媒担体100質量部に対する、Ptの配合量は、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上、より好ましくは、0.5質量部以上、さらに好ましくは、0.8質量部以上、また、例えば、5質量部未満、好ましくは、3質量部以下、より好ましくは、2質量部以下、さらに好ましくは、1質量部以下である。
【0056】
<添加剤>
メタン酸化触媒には、必要に応じて、添加剤を加えることができる。
【0057】
添加剤としては、メタン酸化触媒に通常使用される添加剤であれば、特に限定されず、例えば、希釈成分、および、バインダーなどが挙げられる。
【0058】
希釈成分は、メタン酸化反応にイナート(不活性)な物質であって、メタン酸化触媒に希釈成分を添加することにより、温度制御を容易にすることができる。
【0059】
希釈成分としては、例えば、アルミナ(例えば、α-アルミナ、θ-アルミナ、γ-アルミナなど)、チタニア(例えば、ルチル型チタニア、アナターゼ型チタニアなど)などが挙げられる。
【0060】
希釈成分は、単独で使用してもよく、2種以上併用することもできる。
【0061】
バインダーは、例えば、メタン酸化触媒を流動床型反応装置に用いる場合に、メタン酸化触媒同士を結着させるための結着成分である。
【0062】
バインダーとしては、例えば、ケイ酸塩、チタン酸塩、アルミン酸塩などが挙げられる。
【0063】
バインダーは、単独で使用してもよく、2種以上併用することもできる。
【0064】
なお、希釈成分およびバインダーの添加割合は、メタン酸化触媒の用途などに応じて任意に選択される。
【0065】
2.メタン酸化触媒の製造方法
次に、本発明のメタン酸化触媒の製造方法について説明する。
【0066】
メタン酸化触媒の製造方法としては、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む触媒担体原料と、PdおよびPtを含む活性金属の溶液とを混合し、スラリーを用意する第1工程と、スラリーを乾燥させて、粉体を得る第2工程と、粉体を400℃以上、600℃以下で焼成し、メタン酸化触媒を得る第3工程とを含む。
【0067】
[第1工程]
第1工程では、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む触媒担体原料と、PdおよびPtを含む活性金属の溶液とを混合し、スラリーを用意する。具体的には、PdおよびPtを含む活性金属の溶液(活性金属含有溶液)に、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む粉末状の触媒担体原料を懸濁し、懸濁液を撹拌することで、スラリーを得る。
【0068】
触媒担体原料としては、上記した触媒担体を形成する原料であれば、特に限定されない。触媒担体原料としては、セリア-ジルコニア複合酸化物を含み、好ましくは、ジルコニア、および、セリア-ジルコニア複合酸化物を含み、より好ましくは、ジルコニア、および、セリア-ジルコニア複合酸化物からなる。
【0069】
触媒担体原料において、セリアの含有割合は、上記した触媒担体におけるセリアの含有割合を満たせば、特に限定されない。つまり、触媒担体原料において、セリアの含有割合は、5質量%以上、好ましくは、6質量%以上、より好ましくは、7質量%以上、さらに好ましくは、8質量%以上、とりわけ好ましくは、9質量%以上である。また、触媒担体原料において、セリアの含有割合は、15質量%未満、好ましくは、14質量%以下、より好ましくは、13質量%以下、さらに好ましくは、12質量%以下、とりわけ好ましくは、11質量%以下、最も好ましくは、10質量%以下である。
【0070】
活性金属含有溶液は、例えば、活性金属の塩と溶媒とを含む溶液である。
【0071】
活性金属の塩としては、例えば、活性金属の硝酸塩、活性金属の塩化物、および、活性金属の酢酸塩が挙げられ、好ましくは、活性金属の硝酸塩が挙げられる。
【0072】
活性金属としては、PdおよびPtを含む。また、活性金属としては、PdおよびPt以外の活性金属を含んでもよい。
【0073】
つまり、活性金属の塩としては、例えば、パラジウム塩および白金塩を含む。具体的には、パラジウム塩としては、例えば、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、および、酢酸パラジウムが挙げられ、好ましくは、硝酸パラジウムが挙げられる。また、白金塩としては、例えば、硝酸白金、および、塩化白金が挙げられ、好ましくは、硝酸白金が挙げられる。
【0074】
溶媒としては、活性金属含有溶液として、通常使用されるものであれば、特に限定されず、例えば、イオン交換水、および、超純水が挙げられ、好ましくは、イオン交換水が挙げられる。
【0075】
活性金属含有溶液は、例えば、各活性金属の溶液を混合することで調製してもよく、また、一つの溶媒に各活性金属の塩を加えて調製してもよい。製造性の観点から、好ましくは、各活性金属の溶液を混合して調製する。具体的には、硝酸パラジウム(II)溶液と、テトラアンミン白金(II)硝酸塩溶液と、イオン交換水とを混合して、活性金属含有溶液を調製することができる。
【0076】
上記の活性金属含有溶液に、触媒担体原料を加え、撹拌することにより、スラリーとすることができる。
【0077】
撹拌温度としては、例えば、5℃以上、また、例えば、35℃以下である。
【0078】
撹拌時間は、調製量に応じて、適宜設定することができ、例えば、15時間以上、また、例えば、21時間以下である。
【0079】
このようにして、活性金属と触媒担体とを含むスラリーを得る。
【0080】
[第2工程]
第2工程では、第1工程で得たスラリーを乾燥させて、粉体を得る。
【0081】
乾燥温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上、また、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。
【0082】
乾燥時間は、上記した乾燥温度で、スラリーを乾燥させるために必要な時間を適宜設定することができ、例えば、1時間以上、好ましくは、3時間以上、また、例えば、9時間以下、好ましくは、7時間以下である。
【0083】
[第3工程]
第3工程では、第2工程で得た粉体を400℃以上、600℃以下で焼成し、メタン酸化触媒を得る。
【0084】
焼成方法としては、特に限定されず、所望の触媒が得られる限りにおいて、公知の方法を用いることができる。
【0085】
焼成温度は、400℃以上、好ましくは、450℃以上、より好ましくは、480℃以上である。また、焼成温度は、600℃以下、好ましくは、550℃以下、より好ましくは520℃以下である。
【0086】
焼成時間は、例えば、5時間以上、好ましくは、7時間以上、また、例えば、13時間以下、好ましくは、11時間以下である。
【0087】
得られたメタン酸化触媒は、粉砕してもよい。粉砕方法としては、圧縮粉砕が挙げられる。また、粉砕したメタン酸化触媒を篩分けし、所望サイズのメタン酸化触媒を分取してもよい。さらに、粉砕前または粉砕後のメタン酸化触媒を、所定の形状に圧縮成形してもよい。
【0088】
メタン酸化触媒の形状としては、例えば、球状、ペレット状、タブレット(錠剤)状などが挙げられる。
【0089】
上記した第2工程および第3工程は、球状、ペレット状、タブレット(錠剤)状などの形状のメタン酸化触媒の製造方法を示しているが、メタン酸化触媒の形状は、例えば、板状、および、ハニカム状(モノリス体)であってもよい。
【0090】
板状のメタン酸化触媒としては、例えば、上記した第1工程で得たスラリーを、無機繊維シートに塗布または含浸させた後、乾燥および焼成することで得ることができる。
【0091】
無機繊維シートとしては、例えば、ガラス繊維シート、および、セラミックス繊維シートが挙げられる。
【0092】
乾燥条件および焼成条件は、例えば、上記した第2工程および第3工程に記載した条件が挙げられる。
【0093】
ハニカム状(モノリス体)のメタン酸化触媒としては、例えば、メタン酸化触媒をハニカム構造体の基材材料にコーティングすることで得ることができる。
【0094】
ハニカム構造体の基材材料としては、例えば、無機繊維シート(例えば、ガラス繊維シート、および、セラミックス繊維シート)、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、リン酸チタン、アルミニウムチタネート、ベタライト、スポンジュメン、アルミノシリケート、および、マグネシムシリケートが挙げられる。
【0095】
ハニカム構造体の基材材料であるガラス繊維シートに、コーティングする方法としては、例えば、特許5909436および特許6228727に記載の方法が挙げられる。
【0096】
具体的には、上記した第1工程で得たスラリーを、ガラス繊維シートに、塗布し、次いで、スラリー塗布ガラス繊維シートを波形付与金型と押さえ治具により形付けし、得られた波板状のスラリー塗布ガラス繊維シートを乾燥し、金型から剥離する。乾燥後、波板状のスラリー塗布ガラス繊維シートを焼成し、波板状ガラス繊維シートのメタン酸化触媒を得る。
【0097】
一方、上記した第1工程で得たスラリーを、ガラス繊維シートに、塗布し、形付けしない、平板状のスラリー塗布ガラス繊維シートを乾燥する。乾燥後、平板状のスラリー塗布ガラス繊維シートを焼成し、平板状ガラス繊維シートのメタン酸化触媒を得る。
【0098】
波板状のスラリー塗布ガラス繊維シートおよび平板状のスラリー塗布ガラス繊維シートの乾燥温度は、例えば、100℃以上、また、例えば、200℃以下であり、乾燥時間は、例えば、1時間以上、また、例えば、2時間以下である。
【0099】
波板状のスラリー塗布ガラス繊維シートおよび平板状のスラリー塗布ガラス繊維シートの焼成温度は、例えば、300℃以上、また、例えば、550℃以下であり、焼成時間は、例えば、1時間以上、また、例えば、4時間以下である。
【0100】
次いで、波板状ガラス繊維シートのメタン酸化触媒と平板状ガラス繊維シートのメタン酸化触媒とを積層して、ハニカム状のメタン酸化触媒を得る。
【0101】
以上のようにして、メタン酸化触媒を製造できる。
【0102】
3.メタンの酸化方法(メタン酸化触媒の使用方法)
次に、本発明のメタンの酸化方法について説明する。
【0103】
メタンの酸化方法としては、上記したメタン酸化触媒に対して、メタンを接触させ、酸化させる酸化工程を含み、酸化工程において、酸化温度が450℃以下である。
【0104】
具体的には、メタンの酸化方法としては、上記したメタン酸化触媒を反応器(例えば、固定床反応器)に充填し、反応器供給口からメタン含有ガスを供給することで、メタンとメタン酸化触媒とが接触し、メタンが、COとHOとに酸化される。その後、反応器排出口より、排出される。
【0105】
メタンの酸化触媒の充填量および体積は、用途に応じて、適宜調整することができる。
【0106】
メタンの酸化触媒は、例えば、LNG燃料船から排出されるメタン含有ガスとしての排ガスのメタンの除去に用いられる。このような用途で用いられる場合、メタンの酸化触媒の充填量は、例えば、0.5kg以上、好ましくは、5kg以上、より好ましくは、10kg以上、さらに好ましくは、50kg以上、とりわけ好ましくは、100kg以上、最も好ましくは、150kg以上である。また、メタン酸化触媒の体積は、例えば、0.003m以上、好ましくは、0.01m以上、より好ましくは、0.1m以上、さらに好ましくは、0.5m以上、とりわけ好ましくは、0.8m以上、最も好ましくは、1.0m以上である。
【0107】
メタン酸化触媒の充填量および体積が、上記下限以上であれば、LNG燃料船から排出されるメタン含有ガスとしての排ガスのメタンの除去に用いることができる。
【0108】
メタン酸化触媒は、自動車の排ガス処理に使用される三元触媒と異なり、活性金属中に、PdおよびPtを特定の割合で含む。つまり、他の活性金属(例えば、三元触媒の場合はRh)を含む場合であっても、その含有量が少なく、比較的安価に製造することができる。そのため、メタン酸化触媒をLNG燃料船から排出されるメタン含有ガスとしての排ガスのメタンの除去に用いる場合(メタン酸化触媒の充填量および体積が、大きい場合)であっても、原料の費用を抑えることができる。
【0109】
反応器に供給されるメタン含有ガスは、例えば、CHと、Oと、HOとを含む。また、他の炭化水素およびNを含んでいてもよい。
【0110】
メタン含有ガスにおける、CHの濃度は、特に限定されず、例えば、100ppmv-dry以上、好ましくは、300ppmv-dry以上、より好ましくは、500ppmv-dry以上、さらに好ましくは、800ppmv-dry以上、また、例えば、100000ppmv-dry以下、好ましくは、50000ppmv-dry以下、より好ましくは、30000ppmv-dry以下、さらに好ましくは、10000ppmv-dry以下である。
【0111】
メタン含有ガスにおける、Oの濃度は、例えば、3体積%以上、好ましくは、5体積%以上、より好ましくは、8体積%以上、さらに好ましくは、10体積%以上、また、例えば、30体積%以下、好ましくは、25体積%以下、より好ましくは、20体積%以下、さらに好ましくは、15体積%以下である。
【0112】
メタン含有ガスにおける、HOの濃度は、例えば、1体積%以上、好ましくは、3体積%以上、より好ましくは、5体積%以上、また、例えば、20体積%以下、好ましくは、15体積%以下、より好ましくは、12体積%以下、さらに好ましくは、10体積%以下である。
【0113】
メタン含有ガスの流量としては、特に限定されず、例えば、0.1NL/分以上、好ましくは、0.3NL/分以上、より好ましくは、0.5NL/分以上、また、例えば、10NL/分以下、好ましくは、8NL/分以下、より好ましくは、5NL/分以下である。
【0114】
メタン含有ガスのガス空間速度(GHSV)は、例えば、10,000h-1以上、好ましくは、20,000h-1以上、より好ましくは、30,000h-1以上、また、例えば、100,000h-1以下、好ましくは、90,000h-1以下、より好ましくは、80,000h-1以下である。
【0115】
なお、ガス空間速度(GHSV)は、下記の式で算出することができる。
【0116】
ガス空間速度(GHSV)=ガスの流量(Nm/h)/触媒体積(m
【0117】
メタン酸化触媒に対して、メタンを接触させ、酸化させる酸化工程において、酸化温度は、例えば、200℃以上、好ましくは、250℃以上、より好ましくは、300℃以上、さらに好ましくは、350℃以上、また、例えば、700℃以下、好ましくは、600℃以下、より好ましくは、500℃以下、さらに好ましくは、450℃以下、とりわけ好ましくは、400℃以下である。
【0118】
つまり、上記したメタン酸化触媒は、上記したような比較的低温の条件下においても、メタンを酸化することができる。
【0119】
また、メタン酸化触媒の350℃でのメタン酸化反応における反応速度定数kは、例えば、7,500h-1以上、好ましくは、10,000h-1以上、より好ましくは、12,500h-1以上、さらに好ましくは、50,000h-1以上、とりわけ好ましくは、65,000h-1以上、最も好ましくは、72,000h-1以上である。反応速度定数kが大きいほど、メタン分解能が高くなる。
【0120】
なお、メタン酸化触媒の350℃でのメタン酸化反応における反応速度定数kは、実施例に記載のメタン酸化触媒性能評価の条件および方法により、算出することができる。具体的には、6点の温度における、メタン酸化率(%)を測定し、下記式(1)により、各温度における反応速度定数kを求める。次いで、各温度における反応速度定数kに基づき、アレニウスプロット法によって、メタン酸化反応のアレニウスの式を同定し、350℃における反応速度定数kを求めることができる。
【0121】
k=-GHSV×In(1-メタン酸化率(%)/100) (1)
【0122】
メタン酸化率(%)=(反応器供給口のメタン濃度-反応器排出口のメタン濃度)/(反応器供給口のメタン濃度)×100
【0123】
上記した反応器供給口のメタン濃度は、メタン酸化触媒を充填した反応器に供給するメタンの濃度(メタン酸化触媒に接触する前のメタンの濃度)であり、反応器排出口のメタン濃度は、メタン酸化触媒を充填した反応器から排出されるメタンの濃度(メタン酸化触媒に接触した後のメタンの濃度)である。
【0124】
メタン酸化触媒における、350℃でのメタン酸化率(%)としては、例えば、10%以上、好ましくは、15%以上、より好ましくは、20%以上、さらに好ましくは、50%以上、とりわけ好ましくは、60%以上、最も好ましくは、70%以上である。
【0125】
メタン酸化触媒における、375℃でのメタン酸化率(%)としては、例えば、20%以上、好ましくは、30%以上、より好ましくは、40%以上、さらに好ましくは、80%以上、とりわけ好ましくは、85%以上、最も好ましくは、90%以上である。
【0126】
メタン酸化触媒における、400℃でのメタン酸化率(%)としては、例えば、40%以上、好ましくは、60%以上、より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上、とりわけ好ましくは、90%以上、最も好ましくは、95%以上である。
【0127】
なお、各温度における、メタン酸化率(%)は、実施例に記載のメタン酸化触媒性能評価の条件および方法により、算出する。具体的には、上記した方法で算出した各温度の反応速度定数kと上記式(1)とにより、メタン酸化率(%)を算出する。
【0128】
<作用効果>
本発明のメタン酸化触媒は、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む触媒担体と、触媒担体に担持され、PdおよびPtを含む活性金属とを備え、触媒担体における、セリアの含有割合が、5質量%以上、15質量%未満である。そのため、比較的低温の条件下において、高いメタン分解能を有する。
【0129】
本発明のメタン酸化触媒の製造方法は、上記のメタン酸化触媒を効率よく製造できる。
【0130】
本発明のメタンの酸化方法は、上記のメタン酸化触媒に対して、メタンを接触させ、酸化する酸化工程を含み、酸化工程において、酸化温度が450℃以下である。つまり、比較的低温の条件下において、効率よくメタンを酸化できる。
【実施例0131】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0132】
実施例1
<メタン酸化触媒の調製>
水溶液中のパラジウム(Pd)と白金(Pt)との質量比が、1:1となるように、硝酸パラジウム(II)溶液(商品名:低塩素硝酸Pd溶液、田中貴金属工業社製)と、テトラアンミン白金(II)硝酸塩溶液(商品名:テトラアンミンPt硝酸塩溶液、田中貴金属工業社製)と、イオン交換水とを混合して、水溶液を得た(金属溶液調製工程)。次いで、調製した水溶液に、粉末状の10質量%CeO/ZrO(商品名:Z-3284、第一稀元素化学工業社製)を加えて混合し、スラリーを調製した(スラリー調製工程)。このスラリーにおける10質量%CeO/ZrOの配合量は、活性金属(PdおよびPt)の総量2質量部あたり、100質量部である。なお、上記した10質量%CeO/ZrOは、セリアを10質量%、ジルコニアを90質量%含んでおり、また、図1に示されるX線回折の結果より、単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相と、正方晶セリア-ジルコニア(t-CeZr1-XO2)相とを含有する。つまり、10質量%CeO/ZrOは、単独でジルコニアと、セリア-ジルコニア複合酸化物とを含む。
【0133】
次いで、調製したスラリーを室温で16時間撹拌し、その後、110℃で乾燥して、粉体を得た。この粉体を500℃で9時間焼成し、メタン酸化触媒を得た。次いで、この触媒を圧縮粉砕した後、篩分けにより、粒径16~31メッシュ(0.5~1.00mm)の粉体(メタン酸化触媒)を分取した。以上のようにして、粉末状の実施例1のメタン酸化触媒(触媒担体:10質量%CeO/ZrO、活性金属:1.0質量部Pd+1.0質量部Pt)を作製した。
【0134】
実施例2
金属溶液調製工程において、水溶液中のパラジウム(Pd)と白金(Pt)との質量比が、4:1となるように、硝酸パラジウム(II)溶液(商品名:低塩素硝酸Pd溶液、田中貴金属工業社製)と、テトラアンミン白金(II)硝酸塩溶液(商品名:テトラアンミンPt硝酸塩溶液、田中貴金属工業社製)と、イオン交換水とを混合した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のメタン酸化分解触媒(触媒担体:10質量%CeO/ZrO、活性金属:4.0質量部Pd+1.0質量部Pt)を得た。
【0135】
比較例1
スラリー調製工程において、金属溶液調製工程で調製した水溶液に、粉末状のZrO(商品名:RC-100 酸化ジルコニウム、第一稀元素化学工業社製)を加えて混合し、スラリーを調製した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のメタン酸化分解触媒(触媒担体:ZrO、活性金属:1.0質量部Pd+1.0質量部Pt)を得た。
【0136】
比較例2
スラリー調製工程において、金属溶液調製工程で調製した水溶液に、粉末状の20質量%CeO/ZrO(商品名:Z-3340、第一稀元素化学工業社製)を加えて混合し、スラリーを調製した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のメタン酸化分解触媒(触媒担体:20質量%CeO/ZrO、活性金属:1.0質量部Pd+1.0質量部Pt)を得た。なお、上記した20質量%CeO/ZrOは、セリアを20質量%、ジルコニアを80質量%含んでおり、また、図1に示されるX線回折の結果より、正方晶セリア-ジルコニア(t-CeZr1-XO2)相のみを含有する。つまり、20質量%CeO/ZrOは、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む。
【0137】
比較例3
スラリー調製工程において、金属溶液調製工程で調製した水溶液に、粉末状の70質量%CeO/ZrO(商品名:Z-3341、第一稀元素化学工業社製)を加えて混合し、スラリーを調製した以外は、実施例1と同様にして、比較例3のメタン酸化分解触媒(触媒担体:70質量%CeO/ZrO、活性金属:1.0質量部Pd+1.0質量部Pt)を得た。なお、上記した70質量%CeO/ZrOは、セリアを70質量%、ジルコニアを30質量%含んでおり、また、図1に示されるX線回折の結果より、正方晶セリア-ジルコニア(t-CeZr1-XO2)相のみを含有する。つまり、70質量%CeO/ZrOは、セリア-ジルコニア複合酸化物を含む。
【0138】
比較例4
スラリー調製工程において、金属溶液調製工程で調製した水溶液に、粉末状の20質量%CeO/ZrO(商品名:Z-3340、第一稀元素化学工業社製)を加えて混合し、スラリーを調製した以外は、実施例2と同様にして、比較例4のメタン酸化分解触媒(触媒担体:20質量%CeO/ZrO、活性金属:4.0質量部Pd+1.0質量部Pt)を得た。
【0139】
比較例5
スラリー調製工程において、金属溶液調製工程で調製した水溶液に、粉末状の70質量%CeO/ZrO(商品名:Z-3341、第一稀元素化学工業社製)を加えて混合し、スラリーを調製した以外は、実施例2と同様にして、比較例5のメタン酸化分解触媒(触媒担体:70質量%CeO/ZrO、活性金属:4.0質量部Pd+1.0質量部Pt)を得た。
【0140】
<評価>
[X線回折パターンの評価(触媒担体)]
各実施例および/または各比較例に用いた触媒担体(ZrO、10質量%CeO/ZrO、20質量%CeO/ZrO、および、70質量%CeO/ZrO)の粉末試料について、上記同様に、X線回折(XRD)分析し、単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相のピークにおけるピークトップでの2θと、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物(t-CeZr1-X)相のピークにおけるピークトップでの2θとを測定した。XRDパターンのグラフを、図1に示し、単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相のピークにおけるピークトップでの2θと、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物(t-CeZr1-X)相のピークにおけるピークトップでの2θを、表1に示す。なお、条件は下記の通りとした。
【0141】
{測定条件}
X線源:CuKα線(λ=1.54815Å、Niフィルター、印加電力:40kV、40mA)
走査範囲:5°~90°(2θの範囲)
走査速度:5.0°/分
サンプリング幅:0.01°
発散スリット:0.20mm
発散縦制限スリット:2mm
散乱スリット:2°
受光スリット:0.15mm
オフセット角度:0°
【0142】
なお、解析には、解析ソフトウェア(PDXL 2(Version 2.7.2.0)、Rigaku社製)を用いた。単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相のピークの角度2θは、解析ソフトウェアによって計算されたm-ZrO(-111)面を回折する角度である。また、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物(t-CeZr1-X)相のピークの角度2θは、解析ソフトウェアによって計算されたt-CeZr1-X(101)面を回折する角度である。
【0143】
[X線回折パターンの評価(メタン酸化触媒)]
各実施例および各比較例のメタン酸化触媒の粉末試料について、X線回折(XRD)分析し、単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相のピークにおけるピークトップでの2θ(θはブラッグ角)と、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物(t-CeZr1-X)相のピークにおけるピークトップでの2θとを測定した。測定には、X線回折装置(UitimaIV、Rigaku社製)およびX線検出器(D/teX Ultra、Rigaku社製)を用いて、ブラッグ・ブレンターノ法により結晶構造を解析した。XRDパターンのグラフを、図2に示し、単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相のピークにおけるピークトップでの2θと、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物(t-CeZr1-X)相のピークにおけるピークトップでの2θを、表2に示す。なお、測定に用いた機器、測定条件、解析方法などは、上記したX線回折パターンの評価(触媒担体)と同様である。
【0144】
[メタン酸化触媒性能評価]
各実施例および各比較例のメタン酸化触媒について、メタン酸化試験を実施して、触媒性能として、350℃、375℃、400℃でのメタン酸化率を求めた。
【0145】
具体的には、まず、290℃から460℃までの範囲から選択した6点(30℃~40
℃刻み)の温度ごとに、メタン酸化試験を実施して、メタン酸化率を測定した。
【0146】
メタン酸化試験では、まず、固定床反応器内にメタン酸化触媒(質量:1.0g、体積:1.1mL)を充填し、メタン酸化触媒を充填した反応器を、メタン含有ガスとしての試験ガスの流路の途中に配置した。次いで、試験ガスを所定温度(上記6点の温度)に加熱した後に、反応器供給口から反応器に供給した。試験ガスの組成は下記に示す(なお、反応器供給口のメタン(CH)濃度は、メタン酸化触媒に接触させる前のメタン濃度である。)。また、その他の条件として、反応器内の温度を400℃、試験ガスの流量を1.09NL/分、試験ガスのガス空間速度(GHSV)を59,454h-1とした。なお、ガス空間速度は、試験ガスの流量(Nm/h)を触媒体積(m)で除して算出される。このような条件で固定床反応器を通過し、メタン酸化触媒に接触した後の試験ガスのメタン濃度(反応器排出口のメタン濃度)を測定した。メタン濃度の定量には、熱伝導度検出器(TCD)付のガスクロマトグラフィーシステム(GC-8A、島津製作所製)を使用した。測定条件は下記に示す。そして、反応器供給口のメタン濃度および反応器排出口のメタン濃度から、下記式で表されるメタン酸化率を求めた。
【0147】
{試験ガス組成}
CH濃度:1000ppmv-dry(反応器供給口のメタン濃度)
濃度:12体積%-wet
O濃度:8体積%
濃度:Balance
【0148】
{TCD付のガスクロマトグラフィーシステムの測定条件}
カラム:デュアルパックドカラム「Shincarbon-ST 50/80 mesh」(信和化工製)2.0m×3
キャリアガス:Heガス(流量50NmL/分)
カラム温度:180℃
検出器温度:140℃
【0149】
メタン酸化率(%)=(反応器供給口のメタン濃度-反応器排出口のメタン濃度)/(反応器供給口のメタン濃度)×100
【0150】
次いで、上記式で算出したメタン酸化率を下記の式(1)に代入することにより、上記6点の温度でのメタン酸化反応における反応速度定数k(h-1)を求めた。式(1)中のGHSVは、上記したガス空間速度である。以上のようにして、上記6点の温度での反応速度定数k(h-1)を求めた。
【0151】
k=-GHSV×ln(1-メタン酸化率(%)/100) (1)
【0152】
次いで、上記6点の温度での反応速度定数kに基づき、アレニウスプロット法により、各実施例および各比較例のメタン酸化触媒を用いた場合のメタン酸化反応に関するアレニウスの式を同定し、同式において350℃での反応速度定数k(h-1)を求めた。その結果を、表2に示す。
【0153】
さらに、上記で算出した各実施例および各比較例のメタン酸化触媒を用いた場合のメタン酸化反応に関するアレニウスの式より、375℃、400℃での反応速度定数k(h-1)も求め、350℃、375℃、400℃での反応速度定数k(h-1)と上記式(1)とにより、350℃、375℃、400℃でのメタン酸化率(%)を求めた。その結果を表3に示す。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
<考察>
図1および2に示されるように、実施例1および実施例2のメタン酸化触媒およびその触媒担体(10質量%CeO/ZrO)は、単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相のピーク、および、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物(t-CeZr1-X)相のピークをともに有している。つまり、実施例1および実施例2のメタン酸化触媒における、触媒担体は、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物を形成しつつ、一部のジルコニアが単独で単斜晶ジルコニアを形成していることが示唆された。
【0158】
一方、図1および2に示されるように、比較例1のメタン酸化触媒およびその触媒担体(ZrO)は、単斜晶ジルコニア(m-ZrO)相のピークのみを有している。つまり、比較例1のメタン酸化触媒における、触媒担体は、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物を有していない。
【0159】
また、図1および2に示されるように、比較例2~5のメタン酸化触媒およびその触媒担体(20質量%CeO/ZrOおよび70質量%CeO/ZrO)は、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物(t-CeZr1-X)相のピークのみを有している。つまり、比較例2~5のメタン酸化触媒における、触媒担体は、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物を形成するが、単独で単斜晶ジルコニアを形成していないことが示唆された。なお、比較例2および比較例4のメタン酸化触媒(触媒担体として、20質量%CeO/ZrOを用いた)は、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物(t-CeZr1-X)相のピーク位置が2θ=30°付近に有し、t-ZrOの結晶状態が強く出ていることがわかる。それに対して、比較例3および比較例5のメタン酸化触媒(触媒担体として、70質量%CeO/ZrOを用いた)は、正方晶セリア-ジルコニア複合酸化物(t-CeZr1-X)相のピーク位置が2θ=29°付近に有し、比較例2および比較例4と比べて、c-CeOの結晶状態が強く出ていることがわかる。
図1
図2