(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157401
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2484 20160101AFI20241030BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20241030BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241030BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241030BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20241030BHJP
C25B 9/77 20210101ALI20241030BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20241030BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20241030BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20241030BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241030BHJP
【FI】
H01M8/2484
H01M8/2465
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B9/77
C25B9/60
C25B15/08 302
C25B15/00 302Z
H01M8/12 102A
H01M8/12 101
H01M8/12 102B
H01M8/12 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071751
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 千栄
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021CA08
4K021CA09
4K021DB04
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB46
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA05
5H126AA22
5H126AA26
5H126BB06
5H126CC02
5H126DD05
5H126EE11
5H126EE13
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】反応ガスの利用率を向上させる。
【解決手段】電気化学反応セルスタックは、上流側反応体と、下流側反応体と、連結流路部材とを備える。上流側反応体は、少なくとも1つの上流側素子部と、上流側素子部に面し、入口および出口を有する上流側ガス室とを含む。下流側反応体は、少なくとも1つの下流側素子部と、下流側素子部に面し、入口および出口を有する下流側ガス室とを含む。連結流路部材は、上流側反応体と下流側反応体とに接合材により少なくとも一部が非平行に接合され、上流側ガス室の出口と下流側ガス室の入口とを連結する流路を形成する。連結流路部材における接合材と接する部分の最小厚みに対する最大厚みの比である特定比は、1.0超、10.0以下である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応セルスタックにおいて、
電解質と空気極と燃料極とを有する少なくとも1つの上流側素子部と、前記上流側素子部に面し、入口および出口を有する上流側ガス室と、を含む上流側反応体と、
電解質と空気極と燃料極とを有する少なくとも1つの下流側素子部と、前記下流側素子部に面し、入口および出口を有する下流側ガス室と、を含む下流側反応体と、
前記上流側反応体と前記下流側反応体とに接合材により少なくとも一部が非平行に接合され、前記上流側ガス室の前記出口と前記下流側ガス室の前記入口とを連結する流路を形成する連結流路部材と、
を備え、
前記連結流路部材における前記接合材と接する部分の最小厚みに対する最大厚みの比である特定比は、1.0超、10.0以下である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記特定比は、1.2超、4.5未満である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記接合材を含む第1の断面における前記特定比の値は、前記接合材を含む第2の断面における前記特定比の値と異なる、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記接合材は、前記上流側ガス室の延伸方向に直交する方向において前記連結流路部材と前記上流側反応体または前記下流側反応体との間に配置されており、
前記連結流路部材における前記接合材と接する部分の少なくとも一部の厚みは、前記連結流路部材の先端に近いほど薄い、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記接合材は、前記上流側ガス室の延伸方向に直交する方向において前記連結流路部材と前記上流側反応体または前記下流側反応体との間に配置されており、
前記連結流路部材における前記接合材と接する部分の少なくとも一部の厚みは、前記連結流路部材の先端に近いほど厚い、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記接合材は、前記上流側ガス室の延伸方向において前記連結流路部材と前記上流側反応体または前記下流側反応体との間に配置されており、
前記連結流路部材における前記接合材と接する部分の少なくとも一部の厚みは、前記連結流路部材の外周に近いほど薄い、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の1つとして、固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCは、一般に、所定の方向に並べて配置された複数の素子部(「単セル」とも呼ばれる。)を備える燃料電池スタックの形態で利用される(例えば、特許文献1参照)。各素子部は、電解質と、電解質を挟んで互いに対向する空気極および燃料極とを有する。各素子部の空気極に酸化剤ガスが供給され、燃料極に燃料ガスが供給されると、各素子部において電気化学反応による発電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料電池スタックでは、各素子部の燃料極または空気極に面するガス室に供給された反応ガスは、各素子部における発電に供された後、燃料電池スタックの外部に排出される。そのため、従来の燃料電池スタックでは、反応ガスの利用率について向上の余地がある。
【0005】
このような課題は、水等の電気分解反応を利用して水素等の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の利用形態である電解セルスタックにも共通の課題である。本明細書では、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、上流側反応体と、下流側反応体と、連結流路部材とを備える。上流側反応体は、電解質と空気極と燃料極とを有する少なくとも1つの上流側素子部と、前記上流側素子部に面し、入口および出口を有する上流側ガス室とを含む。下流側反応体は、電解質と空気極と燃料極とを有する少なくとも1つの下流側素子部と、前記下流側素子部に面し、入口および出口を有する下流側ガス室とを含む。連結流路部材は、前記上流側反応体と前記下流側反応体とに接合材により少なくとも一部が非平行に接合され、前記上流側ガス室の前記出口と前記下流側ガス室の前記入口とを連結する流路を形成する。前記連結流路部材における前記接合材と接する部分の最小厚みに対する最大厚みの比である特定比は、1.0超、10.0以下である。
【0009】
このように、本電気化学反応セルスタックは、上流側反応体の上流側ガス室の出口と下流側反応体の下流側ガス室の入口とを連結する流路(以下、「連結流路」という。)を形成する連結流路部材を備える。そのため、上流側反応体の上流側ガス室から排出されたガスを、上記連結流路を介して下流側反応体の下流側ガス室に供給することができ、素子部に供給される反応ガスの利用率を向上させることができる。
【0010】
また、本電気化学反応セルスタックでは、上流側反応体から下流側反応体へのガスの供給を、例えば上流側反応体および/または下流側反応体に該ガスの供給のためのダミーの素子部を設けることなく、上流側反応体および下流側反応体の外部に設けた連結流路部材により形成された上記連結流路を利用して実現することができる。そのため、そのようなダミーの素子部を設けることに起因する電気化学反応セルスタック内のシール性の低下を抑制することができる。
【0011】
さらに、本電気化学反応セルスタックでは、連結流路部材における接合材と接する部分(以下、「接触部」という。)の最小厚みに対する最大厚みの比である特定比は、1.0超、10.0以下である。そのため、連結流路部材の強度低下を抑制しつつ、連結流路部材と接合材との間の接触面積を大きくして接合材による接合強度を向上させることができる。
【0012】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記特定比は、1.2超、4.5未満である構成としてもよい。本構成を採用すれば、連結流路部材の強度低下を効果的に抑制しつつ、連結流路部材と接合材との間の接触面積を大きくして接合材による接合強度を効果的に向上させることができる。
【0013】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記接合材を含む第1の断面における前記特定比の値は、前記接合材を含む第2の断面における前記特定比の値と異なる構成としてもよい。本構成を採用すれば、電気化学反応セルスタックの使用時における各部材の熱膨張差に起因する応力を分散させることができ、連結流路部材と上流側反応体および下流側反応体との間の剥離の発生を抑制することができる。
【0014】
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記接合材は、前記上流側ガス室の延伸方向に直交する方向において前記連結流路部材と前記上流側反応体または前記下流側反応体との間に配置されており、前記連結流路部材における前記接合材と接する部分の少なくとも一部の厚みは、前記連結流路部材の先端に近いほど薄い構成としてもよい。本構成を採用すれば、連結流路部材の接触部と上流側反応体または下流側反応体との間に接合材を容易に配置することができ、接合材の配置不良に起因する接合強度の低下を抑制することができる。
【0015】
(5)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記接合材は、前記上流側ガス室の延伸方向に直交する方向において前記連結流路部材と前記上流側反応体または前記下流側反応体との間に配置されており、前記連結流路部材における前記接合材と接する部分の少なくとも一部の厚みは、前記連結流路部材の先端に近いほど厚い構成としてもよい。本構成を採用すれば、接合材の抜けの発生を抑制することができ、接合材の抜けに起因する接合強度の低下を抑制することができる。
【0016】
(6)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記接合材は、前記上流側ガス室の延伸方向において前記連結流路部材と前記上流側反応体または前記下流側反応体との間に配置されており、前記連結流路部材における前記接合材と接する部分の少なくとも一部の厚みは、前記連結流路部材の外周に近いほど薄い構成としてもよい。本構成を採用すれば、接合材に含まれ得る汚染物質が連結流路部材内の連結流路を流れるガスに混入することを抑制することができ、該ガスの混入に起因する電気化学反応セルスタックの性能低下を抑制することができる。
【0017】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応セルスタック、電気化学反応セルスタックを有するシステム、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
【
図2】
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
【
図3】
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
【
図4】
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
【
図5】
図3に示す断面と同一の位置における4つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
【
図6】
図5のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図
【
図7】
図5のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図
【
図8】
図5のVIII-VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図
【
図9】第1実施形態の変形例における連結流路部材70の構成を示す説明図
【
図10】第1実施形態の変形例における連結流路部材70の構成を示す説明図
【
図11】第2実施形態における燃料電池スタック1100の外観構成を示す説明図
【
図12】第2実施形態における燃料電池スタック1100のXY断面構成を示す説明図
【
図13】マニホールド1002のYZ断面構成を示す説明図
【
図14】マニホールド1002の平面構成を示す説明図
【
図16】単セル1010のXZ断面構成を示す説明図
【
図17】単セル1010のXZ断面構成を示す説明図
【
図18】単セル1010のXZ断面構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、第1実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図4以降についても同様である。
【0020】
燃料電池スタック100は、いわゆる平板型の燃料電池スタックであり、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のターミナルプレート410,420と、一対のエンドプレート104,106とを備える。燃料電池スタック100は、例えば、断熱容器50内に収容されている。燃料電池スタック100は、特許請求の範囲における電気化学反応セルスタックの一例である。
【0021】
燃料電池スタック100を構成する複数の発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のターミナルプレート410,420のうちの一方(以下、「上側ターミナルプレート410」という。)は、燃料電池スタック100を構成する複数の発電単位102からなる集合体(以下、「発電ブロック103」という。)の上側に配置されており、一対のターミナルプレート410,420のうちの他方(以下、「下側ターミナルプレート420」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、絶縁シート510を介して上側ターミナルプレート410の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他方(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、絶縁シート520を介して下側ターミナルプレート420の下側に配置されている。なお、
図1では、一対のターミナルプレート410,420および一対の絶縁シート510,520の図示を省略している。
【0022】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電ブロック103、一対のターミナルプレート410,420、一対の絶縁シート510,520および、一対のエンドプレート104,106)のZ軸回りの外周付近には、上下方向に貫通する複数の孔が形成されている。これらの各層に形成された孔同士が上下方向に連通して、上側エンドプレート104から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0023】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。ボルト22の上側に嵌められたナット24と上側エンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の下側に嵌められたナット24と下側エンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0024】
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視で略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一対のターミナルプレート410,420は、Z軸方向視で略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。上側ターミナルプレート410は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側ターミナルプレート420は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0025】
(発電単位102の構成)
図4は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図5は、
図3に示す断面と同一の位置における4つの発電単位102(積層方向に沿った最上段の発電単位102、中央付近に位置する互いに隣接する2つの発電単位102、および、最下段の発電単位102)のYZ断面構成を示す説明図である。また、
図6は、
図5のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、
図7は、
図5のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、
図8は、
図5のVIII-VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【0026】
図4および
図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。
【0027】
インターコネクタ150は、Z軸方向視で略矩形の平板状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。
【0028】
単セル110は、電解質112と、電解質112を挟んで上下方向に互いに対向する空気極114および燃料極116とを備える。本実施形態では、単セル110は、さらに、電解質112と空気極114との間に配置された中間層180を備える。本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質112、空気極114、中間層180)を支持する燃料極支持形の単セルである。単セル110は、特許請求の範囲における素子部の一例である。
【0029】
電解質112は、略矩形の平板状部材であり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等のイオン伝導性を有する固体酸化物により形成されている。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、略矩形の平板状部材であり、例えば、導電性のペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄酸化物))により形成されている。燃料極116は、略矩形の平板状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)とセラミック粒子からなるサーメットにより形成されている。中間層180は略矩形の平板状部材であり、例えば、SDC、GDC、LDC(ランタンドープセリア)、YDC(イットリウムドープセリア)等のイオン伝導性を有する固体酸化物により形成されている。中間層180は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO3)の層が生成されることを抑制する。
【0030】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質112における上側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質112と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画される。
【0031】
セパレータ120における孔121付近には、ガラスを含む絶縁性のガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110の表面とにわたって配置されている。ガラスシール部125により、単セル110とセパレータ120との間がシールされ、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0032】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。
【0033】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。
【0034】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
【0035】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。本実施形態では、空気極側集電体134(集電体要素135)とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形状の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形状の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の集電体要素135が空気極側集電体134として機能する。空気極側集電体134は、後述のコート136と接合部138を介して、空気極114における中間層180に対向する側とは反対側の表面に接続されている。
【0036】
空気極側集電体134(集電体要素135)の表面は、導電性のコート136によって覆われている。コート136は、例えば、スピネル型酸化物(例えば、Mn1.5Co1.5O4やMnCo2O4、ZnCo2O4、ZnMn2O4、ZnMnCoO4、CuMn2O4)やペロブスカイト型酸化物(例えば、LaSrCoFeO3、LaSrMnO3、LaSrCoO3)により形成されている。
【0037】
空気極114と空気極側集電体134(集電体要素135)とは、導電性を有する接合部138により接合されている。接合部138は、例えば、スピネル型酸化物(例えば、Mn1.5Co1.5O4やMnCo2O4、ZnCo2O4、ZnMn2O4、ZnMnCoO4、CuMn2O4)により形成されている。接合部138により、空気極114と空気極側集電体134とが電気的に接続される。
【0038】
(ガス流路の構成)
燃料電池スタック100には、各発電単位102に反応ガスを供給したり、各発電単位102から反応ガスを排出したりするためのガス流路が形成されている。
【0039】
酸化剤ガスOGについては、燃料電池スタック100の各層を締結するボルト22の軸部の外周面と、ボルト22が挿通された連通孔108の内周面と、の間の空間が、ガス流路として利用される。具体的には、
図1および
図2に示すように、1つのボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間が、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能する。
図4および
図6に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161は、各発電単位102の空気極側フレーム130に形成された酸化剤ガス供給連通孔132を介して、各発電単位102の空気室166と連通している。本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0040】
また、他の1つのボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間が、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。
図4および
図6に示すように、酸化剤ガス排出マニホールド162は、各発電単位102の空気極側フレーム130に形成された酸化剤ガス排出連通孔133を介して、各発電単位102の空気室166と連通している。なお、酸化剤ガス導入マニホールド161および/または酸化剤ガス排出マニホールド162は、ボルト22を挿通するための連通孔108とは独立して形成された連通孔により構成されてもよい。
【0041】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、燃料ガスFGの利用率を高めるために、ある発電単位102において発電反応に利用された後の燃料ガスFG(以下、「燃料中間ガスFMG」という。)を他の発電単位102における発電反応に利用する構成を採用している。すなわち、燃料電池スタック100が備える複数の発電単位102のうち、一部の発電単位102(本実施形態では上側に位置する4つの発電単位102であり、以下「上流側発電単位102U」という。)が、上流側反応体80Uを構成しており、残りの一部の発電単位102(本実施形態では下側に位置する3つの発電単位102であり、以下「下流側発電単位102D」という。)が、下流側反応体80Dを構成している。上流側反応体80Uを構成する各上流側発電単位102Uから排出された燃料中間ガスFMGは、下流側反応体80Dを構成する各下流側発電単位102Dに供給される。上流側発電単位102Uに含まれる単セル110は、特許請求の範囲における上流側素子部の一例であり、下流側発電単位102Dに含まれる単セル110は、特許請求の範囲における下流側素子部の一例である。
【0042】
このような構成を実現するため、
図3,5~8に示すように、燃料電池スタック100には、燃料ガス導入マニホールド171と、燃料ガス排出マニホールド172と、燃料ガス連結流路79とが形成されている。
【0043】
燃料ガス導入マニホールド171は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各上流側発電単位102Uの燃料室176に供給するためのガス流路である。燃料ガス導入マニホールド171は、上側エンドプレート104、絶縁シート510、上側ターミナルプレート410、および、上流側反応体80Uを構成する各上流側発電単位102Uのそれぞれに形成された貫通孔109が互いに連通することにより構成されている。
図5および
図7に示すように、燃料ガス導入マニホールド171は、各上流側発電単位102Uの燃料極側フレーム140に形成された燃料ガス供給連通孔45を介して、各上流側発電単位102Uの燃料室176と連通している。上流側発電単位102Uの燃料室176は、特許請求の範囲における上流側ガス室の一例であり、該燃料室176と連通する燃料ガス供給連通孔45は、特許請求の範囲における上流側ガス室の入口の一例である。
【0044】
燃料ガス排出マニホールド172は、各下流側発電単位102Dの燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出するためのガス流路である。燃料ガス排出マニホールド172は、下側エンドプレート106、絶縁シート520、下側ターミナルプレート420、および、下流側反応体80Dを構成する各下流側発電単位102Dのそれぞれに形成された貫通孔109が互いに連通することにより構成されている。
図5および
図8に示すように、燃料ガス排出マニホールド172は、各下流側発電単位102Dの燃料極側フレーム140に形成された燃料ガス排出連通孔46を介して、各下流側発電単位102Dの燃料室176と連通している。下流側発電単位102Dの燃料室176は、特許請求の範囲における下流側ガス室の一例であり、該燃料室176と連通する燃料ガス排出連通孔46は、特許請求の範囲における下流側ガス室の出口の一例である。
【0045】
なお、本実施形態では、燃料ガス導入マニホールド171と燃料ガス排出マニホールド172とは、上下方向に互いに重なる位置に形成されている。燃料ガス導入マニホールド171と燃料ガス排出マニホールド172とは、上流側反応体80Uと下流側反応体80Dとの境界に位置するインターコネクタ150によって互いに仕切られている。
【0046】
また、燃料ガス連結流路79は、上流側反応体80Uを構成する各上流側発電単位102Uの燃料室176から排出された燃料中間ガスFMGを、下流側反応体80Dを構成する各下流側発電単位102Dの燃料室176に供給するためのガス流路である。燃料ガス連結流路79は、連結流路部材70により形成されている。連結流路部材70は、上流側反応体80Uおよび下流側反応体80Dに対向する側が開口した略直方体状の箱形部材である。連結流路部材70の各部の板厚は、例えば0.1mm~10mm(好ましくは1mm~5mm)であり、連結流路部材70の奥行き(Y軸方向の大きさ)は、例えば5mm~50mmである。連結流路部材70の高さおよび幅(すなわち、Y軸方向視での大きさ)は、発電ブロック103の大きさに合わせて適宜設定される。
【0047】
連結流路部材70は、例えば、金属(例えば、Fe、CrおよびAlを含有するフェライト系ステンレス等)またはセラミックス(例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、カルシア、マグネシア、スピネル酸化物(例えば、MgAl2O4)、各種珪酸塩、ガラスセラミックス等)により形成される。例えば、金属の板材をプレス加工することにより、連結流路部材70を作製することができる。また、例えば、セラミックス焼結体を作製した後に連結流路部材70の形状に加工することにより、あるいは、セラミックスグリーン体を連結流路部材70の形状に加工した後に所定の温度(例えば、1000~1500℃)で焼成することにより、連結流路部材70を作製することができる。連結流路部材70の形成材料の熱伝導率は、1W/m・K以上、200W/m・K以下であることが好ましい。また、燃料電池スタック100の運転中に連結流路部材70にリーク電流が流れることを抑制するために、連結流路部材70の表面は、絶縁性であることが好ましい。連結流路部材70自身が絶縁性材料により形成されていてもよいし、連結流路部材70が絶縁性材料により被覆されていてもよい。
【0048】
連結流路部材70は、接合材60を介して、上流側反応体80Uおよび下流側反応体80Dに取り付けられている。より詳細には、連結流路部材70における発電ブロック103側の端部が、発電ブロック103の端部に外側から被さるように配置されている。接合材60は、上流側反応体80Uの燃料室176の延伸方向(本実施形態ではY軸方向)に直交する方向(本実施形態ではX軸方向またはZ軸方向)において連結流路部材70と上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dとの間に配置されている。接合材60は、例えば、結晶化ガラス、非晶質ガラス、ロウ材、セラミックス等により形成されている。接合材60は、連結流路部材70と上流側反応体80Uおよび下流側反応体80Dとの間をシールして、燃料ガス連結流路79の密閉性を確保している。
【0049】
図7および
図8に示すように、各発電単位102の燃料極側フレーム140には、貫通孔43と、貫通孔43と燃料室176とを連通する第1連通孔41と、貫通孔43と燃料極側フレーム140の外周とを連通する第2連通孔42とが形成されている。連結流路部材70の内部空間である燃料ガス連結流路79は、各上流側発電単位102Uの燃料極側フレーム140に形成された第1連通孔41、第2連通孔42および貫通孔43を介して、各上流側発電単位102Uの燃料室176と連通している。また、燃料ガス連結流路79は、各下流側発電単位102Dの燃料極側フレーム140に形成された第1連通孔41、第2連通孔42および貫通孔43を介して、各下流側発電単位102Dの燃料室176と連通している。このような構成であるため、燃料ガス連結流路79は、各上流側発電単位102Uの燃料室176の出口と各下流側発電単位102Dの燃料室176の入口とを連結し、各上流側発電単位102Uの燃料室176から排出された燃料中間ガスFMGを各下流側発電単位102Dの燃料室176に供給することができる。なお、本実施形態では、空気極側フレーム130において、燃料極側フレーム140の貫通孔43に対応する位置に貫通孔33が形成されている(
図6等参照)。上流側発電単位102Uの燃料室176と連通する第1連通孔41、第2連通孔42および貫通孔43は、特許請求の範囲における上流側ガス室の出口の一例であり、下流側発電単位102Dの燃料室176と連通する第1連通孔41、第2連通孔42および貫通孔43は、特許請求の範囲における下流側ガス室の入口の一例である。
【0050】
図1から
図3に示すように、燃料電池スタック100における各マニホールドの入口および出口の位置には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。
図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0051】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2、
図4および
図6に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、各発電単位102の空気室166に供給される。
【0052】
また、
図3、
図5、
図7および
図8に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各上流側発電単位102Uの燃料ガス供給連通孔45を介して、各上流側発電単位102Uの燃料室176に供給される。なお、燃料ガス導入マニホールド171は、各下流側発電単位102Dの燃料室176には連通していないため、燃料ガス導入マニホールド171から各下流側発電単位102Dの燃料室176に燃料ガスFGが供給されることはない。各上流側発電単位102Uの燃料室176から第1連通孔41、第2連通孔42および貫通孔43を介して燃料ガス連結流路79に排出された燃料中間ガスFMGは、各下流側発電単位102Dの第1連通孔41、第2連通孔42および貫通孔43を介して各下流側発電単位102Dの燃料室176に供給される。
【0053】
各発電単位102において、空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGまたは燃料中間ガスFMGが供給されると、酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGまたは燃料中間ガスFMGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能する一対のターミナルプレート410,420から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。
【0054】
各発電単位102の空気室166から酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、酸化剤ガス排出マニホールド162からガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各下流側発電単位102Dの燃料室176から燃料ガス排出連通孔46を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料ガス排出マニホールド172からガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0055】
A-3.連結流路部材70の詳細構成:
上述したように、連結流路部材70は、接合材60を介して、上流側反応体80Uおよび下流側反応体80Dに接合されている。接合材60は、上流側反応体80Uの燃料室176の延伸方向(本実施形態ではY軸方向)に直交する方向(本実施形態ではX軸方向およびZ軸方向)において連結流路部材70と上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dとの間に配置されている。
【0056】
図5の下部に拡大して示すように、連結流路部材70は、上流側反応体80Uと下流側反応体80Dとに接合材60により少なくとも一部が非平行に接合されている。ここで、連結流路部材70が上流側反応体80Uと下流側反応体80Dとに接合材60により少なくとも一部が非平行に接合されているとは、連結流路部材70における接合材60と接する部分(以下、「接触部74」という。)の接合材60側の表面75の少なくとも一部が、接合材60を介して対向する上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dの表面と非平行である状態で、連結流路部材70と上流側反応体80Uおよび下流側反応体80Dとが接合されていることを意味する。
【0057】
連結流路部材70は上記構成を有するため、連結流路部材70の接触部74の厚みTは一定ではない。ここで、連結流路部材70の接触部74の厚みTは、接合材60を介して連結流路部材70と上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dとが対向する方向における厚みを意味する。本実施形態では、連結流路部材70の接触部74の厚みTは、連結流路部材70の先端に近いほど薄くなっている。すなわち、接触部74の先端における厚みTが最小厚みTminとなり、接触部74の基端における厚みTが最大厚みTmaxとなっている。
【0058】
本実施形態では、連結流路部材70の接触部74の最小厚みTminに対する最大厚みTmaxの比(=Tmax/Tmin)は、1.0超、10.0以下である。以下、上記比(=Tmax/Tmin)を「特定比」という。連結流路部材70の接触部74の厚みTの特定比は、1.2超、4.5未満であることが好ましい。接合材60を含む燃料電池スタック100の第1の断面における特定比の値は、接合材60を含む燃料電池スタック100の第2の断面における特定比の値と異なる。すなわち、特定比は、連結流路部材70の接触部74の全体にわたって一定ではなく、位置によって値が異なっている。
【0059】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、上流側反応体80Uと、下流側反応体80Dと、連結流路部材70とを備える。上流側反応体80Uは、電解質112と空気極114と燃料極116とを有する少なくとも1つの単セル110と、単セル110の燃料極116に面し、入口(燃料ガス供給連通孔45)および出口(第1連通孔41、第2連通孔42および貫通孔43)を有する燃料室176とを含む。下流側反応体80Dは、電解質112と空気極114と燃料極116とを有する少なくとも1つの単セル110と、単セル110の燃料極116に面し、入口(第1連通孔41、第2連通孔42および貫通孔43)および出口(燃料ガス排出連通孔46)を有する燃料室176とを含む。連結流路部材70は、上流側反応体80Uと下流側反応体80Dとに接合材60により少なくとも一部が非平行に接合され、上流側反応体80Uの燃料室176の出口と下流側反応体80Dの燃料室176の入口とを連結する燃料ガス連結流路79を形成する。連結流路部材70における接合材60と接する接触部74の最小厚みTminに対する最大厚みTmaxの比である特定比は、1.0超、10.0以下である。
【0060】
このように、本実施形態の燃料電池スタック100は、上流側反応体80Uの燃料室176の出口と下流側反応体80Dの燃料室176の入口とを連結する燃料ガス連結流路79を形成する連結流路部材70を備える。そのため、上流側反応体80Uの燃料室176から排出された燃料中間ガスFMGを、燃料ガス連結流路79を介して下流側反応体80Dの燃料室176に供給することができ、燃料極116に供給される反応ガスの利用率を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、上流側反応体80Uから下流側反応体80Dへの燃料中間ガスFMGの供給を、例えば燃料中間ガスFMGの供給のためのダミーの発電単位を発電ブロック103のいずれかの位置に設けることなく、発電ブロック103の外部に設けた連結流路部材70により形成された燃料ガス連結流路79を利用して実現することができる。そのため、そのようなダミーの発電単位を設けることに起因する発電ブロック103内のシール性の低下を抑制することができる。
【0062】
さらに、本実施形態の燃料電池スタック100では、連結流路部材70における接合材60と接する接触部74の最小厚みTminに対する最大厚みTmaxの比である特定比は、1.0超、10.0以下である。そのため、連結流路部材70の強度低下を抑制しつつ、連結流路部材70と接合材60との間の接触面積を大きくして接合材60による接合強度を向上させることができる。
【0063】
本実施形態の燃料電池スタック100において、上記特定比は、1.2超、4.5未満であることが好ましい。このような構成とすれば、連結流路部材70の強度低下を効果的に抑制しつつ、連結流路部材70と接合材60との間の接触面積を大きくして接合材60による接合強度を効果的に向上させることができる。
【0064】
本実施形態の燃料電池スタック100では、接合材60は、上流側反応体80Uの燃料室176の延伸方向に直交する方向において連結流路部材70と上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dとの間に配置されており、連結流路部材70の接触部74の少なくとも一部の厚みTは、連結流路部材70の先端に近いほど薄くなっている。そのため、連結流路部材70の接触部74と上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dとの間に接合材60を容易に配置することができ、接合材60の配置不良に起因する接合強度の低下を抑制することができる。
【0065】
本実施形態の燃料電池スタック100では、接合材60を含む燃料電池スタック100の第1の断面における特定比の値は、接合材60を含む燃料電池スタック100の第2の断面における特定比の値と異なっている。そのため、燃料電池スタック100の使用時における各部材の熱膨張差に起因する応力を分散させることができ、連結流路部材70と上流側反応体80Uおよび下流側反応体80Dとの間の剥離の発生を抑制することができる。
【0066】
A-5.第1実施形態の変形例:
図9および
図10は、第1実施形態の変形例における連結流路部材70の構成を示す説明図である。
図9の各欄に示す変形例では、上述した第1実施形態と同様に、接合材60が、上流側反応体80Uの燃料室176の延伸方向に直交する方向において連結流路部材70と上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dとの間に配置されており、連結流路部材70が、上流側反応体80Uと下流側反応体80Dとに接合材60により少なくとも一部が非平行に接合されている。
【0067】
図9のA欄に示す変形例では、連結流路部材70の接触部74の厚みTは、連結流路部材70の先端に近いほど厚くなっている。
【0068】
図9のB欄に示す変形例では、連結流路部材70の接触部74の厚みTは、基端側から先端側に向かって、連結流路部材70の先端に近いほど薄くなり、その後、連結流路部材70の先端に近いほど厚くなっている。
【0069】
図9のC欄に示す変形例では、連結流路部材70の接触部74の厚みTは、基端側から先端側に向かって、一定で推移した後、連結流路部材70の先端に近いほど厚くなり、再び一定で推移した後、連結流路部材70の先端に近いほど薄くなり、その後、先端まで一定となっている。
【0070】
図9のD欄に示す変形例では、連結流路部材70の接触部74の厚みTは、基端側から先端側に向かって、一定で推移した後、連結流路部材70の先端に近いほど薄くなっている。
【0071】
図9のE欄に示す変形例では、連結流路部材70の接触部74の厚みTは、連結流路部材70の先端に近いほど薄くなっている。なお、この変形例では、連結流路部材70における接触部74の基端側に隣接する一部においても、連結流路部材70の先端に近いほど厚みTが薄くなっている。
【0072】
図9の各欄に示す変形例においても、上述した第1実施形態と同様に、連結流路部材70の接触部74の最小厚みTminに対する最大厚みTmaxの比(特定比)を1.0超、10.0以下とすれば、連結流路部材70の強度低下を抑制しつつ、連結流路部材70と接合材60との間の接触面積を大きくして接合材60による接合強度を向上させることができる。
【0073】
また、
図9のB~E欄に示す変形例では、上述した第1実施形態と同様に、連結流路部材70の接触部74の少なくとも一部の厚みTは、連結流路部材70の先端に近いほど薄くなっているため、連結流路部材70の接触部74と上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dとの間に接合材60を容易に配置することができ、接合材60の配置不良に起因する接合強度の低下を抑制することができる。
【0074】
また、
図9のA~C欄に示す変形例では、連結流路部材70の接触部74の少なくとも一部の厚みTは、連結流路部材70の先端に近いほど厚くなっているため、接合材60の抜けの発生を抑制することができ、接合材60の抜けに起因する接合強度の低下を抑制することができる。
【0075】
図10の各欄に示す変形例では、上述した第1実施形態と異なり、接合材60が、上流側反応体80Uの燃料室176の延伸方向において連結流路部材70と上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dとの間に配置されている。連結流路部材70は、上流側反応体80Uと下流側反応体80Dとに接合材60により少なくとも一部が非平行に接合されている。
【0076】
図10のA欄に示す変形例では、連結流路部材70における上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dに近接する部分が外周側に折れ曲がっており、該折れ曲がった部分と上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dとの間に接合材60が配置されている。この変形例では、連結流路部材70の接触部74の厚みTは、連結流路部材70の外周に近いほど薄くなっている。
【0077】
図10のB欄に示す変形例では、連結流路部材70は、
図10のA欄に示す変形例のような折れ曲がった部分を有さない。この変形例でも、連結流路部材70の接触部74の厚みTは、連結流路部材70の外周に近いほど薄くなっている。
【0078】
図10の各欄に示す変形例においても、上述した第1実施形態と同様に、連結流路部材70の接触部74の最小厚みTminに対する最大厚みTmaxの比(特定比)を1.0超、10.0以下とすれば、連結流路部材70の強度低下を抑制しつつ、連結流路部材70と接合材60との間の接触面積を大きくして接合材60による接合強度を向上させることができる。
【0079】
また、
図10の各欄に示す変形例では、連結流路部材70の接触部74の少なくとも一部の厚みTは、連結流路部材70の外周に近いほど薄くなっているため、接合材60に含まれ得る汚染物質が連結流路部材70内の燃料ガス連結流路79を流れるガスに混入することを抑制することができ、該ガスの混入に起因する燃料電池スタック100の性能低下を抑制することができる。
【0080】
B.第2実施形態:
次に、本明細書に開示される技術を平板型以外の燃料電池スタックに適用した第2実施形態について説明する。
図11は、第2実施形態における燃料電池スタック1100の外観構成を示す説明図であり、
図12は、第2実施形態における燃料電池スタック1100のXY断面構成を示す説明図である。
【0081】
第2実施形態の燃料電池スタック1100は、マニホールド1002と、複数の単セル1010とを備える。燃料電池スタック1100は、特許請求の範囲における電気化学反応セルスタックの一例である。
【0082】
図13は、マニホールド1002のYZ断面構成を示す説明図であり、
図14は、マニホールド1002の平面構成を示す説明図である。マニホールド1002は、各単セル1010にガスを供給すると共に、各単セル1010から排出されたガスを回収する装置である。マニホールド1002は、ガス供給室1021とガス回収室1022とを有する。ガス供給室1021の底面には、ガス供給口1211が形成されており、ガス回収室1022の底面には、ガス排出口1221が形成されている。ガス供給室1021には、ガス供給口1211を介して燃料ガスが供給され、ガス回収室1022内のガス(燃料オフガス)は、ガス排出口1221を介してマニホールド1002の外部へ排出される。
【0083】
マニホールド1002は、マニホールド本体部1023と、仕切板1024とを有する。マニホールド本体部1023は、内部に空間を有する略直方体の部材である。マニホールド本体部1023の天板部1231には、マニホールド本体部1023の長手方向(Z軸方向)に沿って並ぶ複数の貫通孔1232が形成されている。各貫通孔1232は、マニホールド本体部1023の幅方向(Y軸方向)に延びている。各貫通孔1232は、ガス供給室1021およびガス回収室1022と連通している。仕切板1024は、マニホールド本体部1023の内部空間をガス供給室1021とガス回収室1022とに区画している。
【0084】
図15は、単セル1010の外観構成を示す斜視図であり、
図16から
図18は、単セル1010のXZ断面構成を示す説明図である。
図16は、単セル1010の長手方向(X軸方向)の中央部付近のXZ断面構成を示しており、
図17は、単セル1010の長手方向における基端側(マニホールド1002側)の端部(以下、「基端部1101」という。)のXZ断面構成を示しており、
図18は、単セル1010の長手方向における先端側の端部(以下、「先端部1102」という。)のXZ断面構成を示している。
図16から
図18では、後述する第1ガス流路1043に沿った単セル1010の断面構成を示しているが、後述する第2ガス流路1044に沿った単セル1010の断面構成も同様である。
【0085】
単セル1010の基端部1101は、マニホールド1002の天板部1231に形成された貫通孔1232に挿入された状態でマニホールド1002に取り付けられている。各単セル1010は、主面同士が対向するように、マニホールド1002の長手方向(Z軸方向)に沿って間隔をあけて並べられている。
【0086】
単セル1010は、支持基板1004と、複数の素子部1005と、連結流路部材1070とを有する。支持基板1004は、略平板状の部材である。支持基板1004は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって形成されている。支持基板1004には、支持基板1004の長手方向(X軸方向)に延びるように支持基板1004を貫通する複数の第1ガス流路1043および複数の第2ガス流路1044が形成されている。各第1ガス流路1043の基端側の開口である入口1401は、マニホールド1002のガス供給室1021と連通しており、各第2ガス流路1044の基端側の開口である出口1404は、マニホールド1002のガス回収室1022と連通している。
【0087】
図12および
図18に示すように、連結流路部材1070は、単セル1010の先端部1102に取り付けられている。連結流路部材1070は、第1ガス流路1043の先端側の開口である出口1402と第2ガス流路1044の先端側の開口である入口1403とを連通する燃料ガス連結流路1079を形成する。連結流路部材1070は、接合材1060を介して、単セル1010の先端部1102に接合されている。連結流路部材1070は、例えば、多孔質材料により形成されており、緻密層1075により覆われている。
【0088】
支持基板1004の第1主面1045aおよび第2主面1045bのそれぞれには、複数の素子部1005が配置されている。支持基板1004における素子部1005が形成されていない部分は、支持基板1004よりも緻密な緻密層1048によって覆われている。支持基板1004の各主面1045a、1045bにおいて、複数の素子部1005は、X軸方向に並べられている。また、支持基板1004の各主面1045a、1045bにおいて、複数の素子部1005のそれぞれは、Y軸方向において第1部分1051と第2部分1052とに仮想的に区画される。X軸方向視でマニホールド1002のガス供給室1021とガス回収室1022との境界と重複する部分を、第1部分1051と第2部分1052との境界部とすることができる。
【0089】
各素子部1005は、燃料極1006と、電解質1007と、空気極1008と、反応防止膜1011とを有する。燃料極1006は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極1006は、燃料極集電部1061と、燃料極活性部1062とを有する。燃料極集電部1061は、支持基板1004に形成された凹部1049内に配置されている。燃料極活性部1062は、燃料極集電部1061の表面上に配置されている。
【0090】
電解質1007は、酸素イオン伝導性を有し、かつ、電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質1007は、燃料極1006上を覆うように配置されている。詳細には、電解質1007は、一のインターコネクタ1009からX軸方向に隣り合う他のインターコネクタ1009まで、X軸方向に延びている。電解質1007は、支持基板1004よりも緻密である。
【0091】
反応防止膜1011は、緻密な材料から構成された焼成体である。反応防止膜1011は、電解質1007を介して燃料極活性部1062と対向するように配置されている。反応防止膜1011は、例えば、電解質1007内のYSZと空気極活性部1081内のSrとが反応して電解質1007と空気極活性部1081との界面に電気抵抗が大きい層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
【0092】
空気極1008は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極1008は、燃料極1006と協働して電解質1007を挟むように配置されている。空気極1008は、空気極活性部1081と空気極集電部1082とを有する。空気極活性部1081は、反応防止膜1011上に配置されている。空気極活性部1081は、酸素イオン伝導性を有する。空気極集電部1082は、空気極活性部1081上に配置されている。
【0093】
インターコネクタ1009は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成された焼成体である。インターコネクタ1009は、燃料極集電部1061の表面上に配置されている。インターコネクタ1009は、X軸方向において隣り合う素子部1005同士を電気的に接続する。より詳細には、インターコネクタ1009は、一方の素子部1005の燃料極集電部1061と、他方の素子部1005の空気極集電部1082とを電気的に接続している。その結果、支持基板1004の第1主面1045aおよび第2主面1045bのそれぞれにおいて、単セル1010の先端部1102から基端部1101まで電気的に直列に接続されている。
【0094】
図17に示すように、支持基板1004の第1主面1045aにおいて最も基端側に配置された素子部1005の空気極集電部1082は、第1主面1045aから第2主面1045bまで連続的に形成されている。この空気極集電部1082によって、第1主面1045aにおいて最も基端側に配置されたインターコネクタ1009と、第2主面1045bにおいて最も基端側に配置された素子部1005の空気極活性部1081とが電気的に接続される。その結果、第1主面1045aにおいて直列的に接続された複数の素子部1005と、第2主面1045bにおいて直列的に接続された複数の素子部1005とが、単セル1010の基端部1101において直列的に接続される。
【0095】
図18に示すように、燃料電池スタック1100は、さらに、集電部材1012を備える。集電部材1012は、隣り合う単セル1010の間に配置されており、隣り合う単セル1010の最も先端側に配置された素子部1005の空気極集電部1082同士を電気的に接続する。集電部材1012は、導電性接合材1103を介して、各素子部1005の空気極集電部1082に接合されている。
【0096】
このような構成の燃料電池スタック1100において、マニホールド1002のガス供給口1211を介してガス供給室1021に燃料ガスが供給されると、燃料ガスは、各単セル1010の支持基板1004に形成された入口1401から第1ガス流路1043内に流れ込む。第1ガス流路1043内を流れる燃料ガスは、多孔質である支持基板1004の内部を通って、各素子部1005の第1部分1051における燃料極1006に供給される。また、各単セル1010において、第1ガス流路1043の出口1402から燃料ガス連結流路1079に排出された燃料ガス(燃料中間ガス)は、支持基板1004に形成された入口1403から第2ガス流路1044内に流れ込む。第2ガス流路1044内を流れる燃料ガスは、多孔質である支持基板1004の内部を通って、各素子部1005の第2部分1052における燃料極1006に供給される。また、燃料電池スタック1100の周辺の空気が酸化剤ガスとして各単セル1010の各素子部1005の空気極1008に供給される。
【0097】
各単セル1010の各素子部1005において、燃料極1006に燃料ガスが供給され、空気極1008に酸化剤ガスが供給されると、燃料ガスおよび酸化剤ガスの電気化学反応による発電が行われる。各単セル1010において、複数の素子部1005は電気的に直列に接続されている。また、隣り合う単セル1010の素子部1005間は、集電部材1012を介して互いに電気的に接続されている。そのため、燃料電池スタック1100の出力端子から各単セル1010の各素子部1005において生成された電気エネルギーが取り出される。
【0098】
各単セル1010の支持基板1004に形成された第2ガス流路1044の出口1404からマニホールド1002のガス回収室1022に排出された燃料オフガスは、ガス排出口1221を介してマニホールド1002の外部に排出される。
【0099】
図12および
図15に示すように、第2実施形態の燃料電池スタック1100において、各単セル1010は、上流側反応体1080Uと、下流側反応体1080Dとを有する。上流側反応体1080Uは、単セル1010における第1部分1051に対応する部分である。上流側反応体1080Uは、少なくとも1つの素子部1005の第1部分1051(上流側素子部)と、該第1部分1051に(支持基板1004の内部気孔を介して)面し、入口1401および出口1402を有する第1ガス流路1043(上流側ガス室)とを含む。下流側反応体1080Dは、少なくとも1つの素子部1005の第2部分1052(下流側素子部)と、該第2部分1052に(支持基板1004の内部気孔を介して)面し、入口1403および出口1404を有する第2ガス流路1044(下流側ガス室)とを含む。また、連結流路部材1070は、上流側反応体80Uと下流側反応体80Dとに取り付けられ、第1ガス流路1043の出口1402と第2ガス流路1044の入口1403とを連結する燃料ガス連結流路1079を形成する。
【0100】
このように、第2実施形態の燃料電池スタック1100は、上流側反応体1080Uの第1ガス流路1043の出口1402と下流側反応体1080Dの第2ガス流路1044の入口1403とを連結する燃料ガス連結流路1079を形成する連結流路部材1070を備えるため、上流側反応体1080Uの第1ガス流路1043から排出された燃料中間ガスを、燃料ガス連結流路1079を介して下流側反応体1080Dの第2ガス流路1044に供給することができ、燃料極1006に供給される反応ガスの利用率を向上させることができる。
【0101】
また、このような構成の燃料電池スタック1100において、第1実施形態の燃料電池スタック100と同様に、連結流路部材1070が上流側反応体1080Uと下流側反応体1080Dとに接合材1060により少なくとも一部が非平行に接合され、連結流路部材1070における接合材1060と接する接触部1074の最小厚みTminに対する最大厚みTmaxの比である特定比が1.0超、10.0以下であると(
図18参照)、連結流路部材1070の強度低下を抑制しつつ、連結流路部材1070と接合材1060との間の接触面積を大きくして接合材1060による接合強度を向上させることができる。
【0102】
C.性能評価:
上述した第1実施形態の燃料電池スタック100と同様の構成の複数のサンプルを作製し、性能評価を行った。より詳細には、連結流路部材70の接触部74の最小厚みTminに対する最大厚みTmaxの比(特定比)が互いに異なる30個のサンプル(サンプルS1~S30)を作製し、各サンプルに対する固着強度試験および熱衝撃試験の結果に基づき総合的に評価を行った。性能評価の結果を表1に示す。
【0103】
【0104】
各サンプルにおいて、上流側反応体80Uおよび下流側反応体80Dを共に1つの発電単位102により構成した。すなわち、各サンプルの燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は合計2個である。サンプルS1-S15では、連結流路部材70の形成材料としてステンレス(Fe,CrおよびAlを含有するステンレス)を用い、プレス加工により連結流路部材70を作製した。サンプルS16-S30では、連結流路部材70の形成材料としてジルコニアを用い、セラミックスグリーン体を連結流路部材70の形状に加工した後、1350℃で焼成することにより、連結流路部材70を作製した。連結流路部材70における接合材60と接する接触部74の厚みTを表1に示す値とし、連結流路部材70内の燃料ガス連結流路79の奥行き(Y軸方向の大きさ)を10mmとし、連結流路部材70の高さ(Z軸方向の大きさ)を5mmとし、連結流路部材70の幅(X軸方向の大きさ)を100mmとした。
【0105】
接合材60の形成材料としてガラスを用いた。ガラス粉末、バインダ、有機溶剤等を混合して接合材用ペーストを作製し、連結流路部材70と上流側反応体80Uおよび下流側反応体80Dとの間に接合材用ペーストを塗布し、850℃で熱処理して接合材60を形成した。
【0106】
各サンプルについて、接合材60による接合強度を調べるために固着強度試験を行った。固着強度試験では、各サンプルに対して2つの被接合部材(連結流路部材70と、上流側反応体80Uまたは下流側反応体80D)を引き剥がす方向の引張力を加え、連結流路部材70と接合材60との界面が剥離した場合に「不良(×)」と判定し、そのような剥離が起こる前に接合材60の内部で破断が発生した場合に「良(△)」と判定し、そのような剥離や破断が起こる前に上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dと接合材60との界面が剥離した場合に「優秀(〇)」と判定した。
【0107】
また、各サンプルについて、部材間の熱膨張差等に起因する接合材60と被接合部材との界面での剥離の発生しにくさを調べるために熱衝撃試験を行った。熱衝撃試験では、各サンプルに対して800℃までの昇温と100℃までの降温との熱サイクルを100回繰り返し与え、連結流路部材70と接合材60との界面が剥離した場合に「不良(×)」と判定し、そのような剥離は起こらなかったが上流側反応体80Uまたは下流側反応体80Dと接合材60との界面が剥離した場合に「良(△)」と判定し、どちらの界面の剥離も発生しなかった場合に「優秀(〇)」と判定した。
【0108】
上述した固着強度試験および熱衝撃試験の結果に基づき、総合評価を行った。具体的には、2つの試験の少なくとも一方において「不良(×)」と判定された場合には、総合評価も「不良(×)」と判定し、2つの試験の両方において「良(△)」と判定された場合には、総合評価も「良(△)」と判定し、2つの試験の一方において「良(△)」と判定され、かつ、他方において「優秀(〇)」と判定された場合には、総合評価「優秀(〇)」と判定し、2つの試験の両方において「優秀(〇)」と判定された場合には、総合評価「極めて優秀(◎)」と判定した。
【0109】
表1に示すように、サンプルS1,S9,S16,S24では、熱衝撃試験において「不良(×)」と判定された結果、総合評価で「不良(×)」と判定された。これらのサンプルでは、連結流路部材70における接合材60と接する接触部74の最小厚みTminに対する最大厚みTmaxの比(特定比)が10.0超である。そのため、これらのサンプルでは、連結流路部材70の接触部74に厚みTが過度に薄い箇所が存在し、連結流路部材70の強度が低くなったために、その形状を維持することができず、連結流路部材70と接合材60との界面で剥離が発生したものと考えられる。
【0110】
また、サンプルS8,S23では、固着強度試験において「不良(×)」と判定された結果、総合評価で「不良(×)」と判定された。これらのサンプルでは、連結流路部材70における接合材60と接する接触部74の最小厚みTminに対する最大厚みTmaxの比(特定比)が1.0以下である。そのため、これらのサンプルでは、連結流路部材70と接合材60との間の接触面積が小さくなり、連結流路部材70と接合材60との界面で剥離が発生したものと考えられる。
【0111】
一方、残りのサンプルでは、2つの試験のいずれにおいても「良(△)」以上と判定された結果、総合評価で「良(△)」以上と判定された。これらのサンプルでは、連結流路部材70における接合材60と接する接触部74の最小厚みTminに対する最大厚みTmaxの比(特定比)が1.0超、10.0以下である。そのため、これらのサンプルでは、連結流路部材70の強度低下が抑制されたと共に、連結流路部材70と接合材60との間の接触面積が大きくなって接合材60による接合強度が向上したものと考えられる。
【0112】
この結果を参照すると、上記特定比が1.0超、10.0以下であれば、連結流路部材70の強度低下を抑制しつつ、連結流路部材70と接合材60との間の接触面積を大きくして接合材60による接合強度を向上させることができると言える。
【0113】
上述した総合評価で「良(△)」以上と判定されたサンプルのうち、サンプルS4,S5,S6,S12,S13,S14,S19,S20,S21,S27,S28,S29では、2つの試験のいずれにおいても「優秀(〇)」と判定された結果、総合評価で「極めて優秀(◎)」と判定された。これらのサンプルでは、連結流路部材70における接合材60と接する接触部74の最小厚みTminに対する最大厚みTmaxの比(特定比)が1.2超、4.5未満である。この結果を参照すると、上記特定比が1.2超、4.5未満であると、連結流路部材70の強度低下を効果的に抑制しつつ、連結流路部材70と接合材60との間の接触面積を大きくして接合材60による接合強度を効果的に向上させることができると言える。
【0114】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0115】
上記実施形態における燃料電池スタックの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記第1実施形態では、上流側反応体80Uが4つの発電単位102から構成されており、下流側反応体80Dが3つの発電単位102から構成されているが、上流側反応体80Uおよび下流側反応体80Dを構成する発電単位102の個数は任意に変更可能である。この点は、第2実施形態においても同様である。
【0116】
上記第1実施形態では、各発電単位102の燃料室176と燃料ガス連結流路79とが、第1連通孔41と第2連通孔42と貫通孔43とを介して連通しているが、貫通孔43が存在せずに、燃料室176と燃料ガス連結流路79とが、第1連通孔41と第2連通孔42とが互いに繋がって構成された単一の連通孔を介して連通していてもよい。また、上記第1実施形態では、空気極側フレーム130における燃料極側フレーム140の貫通孔43に対応する位置に貫通孔33が形成されているが、該貫通孔33が形成されなくてもよい。
【0117】
上記第1実施形態では、連結流路部材70が発電ブロック103を構成する部材に取り付けられているが、連結流路部材70が発電ブロック103の外側に位置する他の部材(例えば、エンドプレート104,106)に取り付けられてもよい。
【0118】
上記第1実施形態では、Z軸方向視でインターコネクタ150が燃料電池スタック100の中央部(単セル110と重なる部分)から外周部(ボルト22により締結される部分)まで延伸しており、ボルト22による締結力が単セル110に伝達される構成であるが、インターコネクタ150が燃料電池スタック100の中央部のみに配置され、外周部に配置された他の部材(例えば、インターコネクタ用セパレータ)によって吊られた構成(すなわち、ボルト22による締結力が単セル110に伝達されない構成)であってもよい。
【0119】
上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0120】
上記実施形態では、燃料電池スタックは、上流側反応体の燃料室の出口と下流側反応体の燃料室の入口とを連結する燃料ガス連結流路を形成する連結流路部材を備えているが、これに代えて、あるいは、これに加えて、上流側反応体の空気室の出口と下流側反応体の空気室の入口とを連結する酸化剤ガス連結流路を形成する連結流路部材を備えていてもよい。この場合において、酸化剤ガス連結流路を形成する連結流路部材が、上記実施形態の燃料ガス連結流路を形成する連結流路部材と同様の構成を備えれば、上記実施形態が奏する効果と同様の効果を奏する。
【0121】
本明細書に開示される技術は、平板型、扁平筒型、円筒形をはじめとする任意の形状の燃料電池スタックに同様に適用可能である。また、本明細書に開示される技術は、SOFCに限らず、他のタイプの燃料電池スタックにも同様に適用可能である。また、本明細書に開示される技術は、燃料電池スタックに限らず、水等の電気分解反応を利用して水素等の生成を行う電解セルの利用形態である電解セルスタックにも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0122】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 33:貫通孔 41:第1連通孔 42:第2連通孔 43:貫通孔 45:燃料ガス供給連通孔 46:燃料ガス排出連通孔 50:断熱容器 60:接合材 70:連結流路部材 74:接触部 75:表面 79:燃料ガス連結流路 80D:下流側反応体 80U:上流側反応体 100:燃料電池スタック 102:発電単位 102D:下流側発電単位 102U:上流側発電単位 103:発電ブロック 104,106:エンドプレート 108:連通孔 109:貫通孔 110:単セル 112:電解質 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 125:ガラスシール部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 135:集電体要素 136:コート 138:接合部 140:燃料極側フレーム 141:孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:中間層 410,420:ターミナルプレート 510,520:絶縁シート 1002:マニホールド 1004:支持基板 1005:素子部 1006:燃料極 1007:電解質 1008:空気極 1009:インターコネクタ 1010:単セル 1011:反応防止膜 1012:集電部材 1021:ガス供給室 1022:ガス回収室 1023:マニホールド本体部 1024:仕切板 1043:第1ガス流路 1044:第2ガス流路 1045a、1045b:主面 1048:緻密層 1049:凹部 1051:第1部分 1052:第2部分 1060:接合材 1061:燃料極集電部 1062:燃料極活性部 1070:連結流路部材 1071:内側角部 1074:接触部 1075:緻密層 1076:内側表面 1079:燃料ガス連結流路 1080D:下流側反応体 1080U:上流側反応体 1081:空気極活性部 1082:空気極集電部 1100:燃料電池スタック 1101:基端部 1102:先端部 1103:導電性接合材 1211:ガス供給口 1221:ガス排出口 1231:天板部 1232:貫通孔 1401:入口 1402:出口 1403:入口 1404:出口