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特開2024-157405プローブポジショナ、及びプローブステーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157405
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】プローブポジショナ、及びプローブステーション
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20241030BHJP
   G01R 1/06 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G01R31/28 K
G01R1/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071757
(22)【出願日】2023-04-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】507266978
【氏名又は名称】株式会社モーデック
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 養一
(72)【発明者】
【氏名】嶌末 政憲
(72)【発明者】
【氏名】島田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】川原 康雄
(72)【発明者】
【氏名】安達 拓也
(72)【発明者】
【氏名】本木 誉人
【テーマコード(参考)】
2G011
2G132
【Fターム(参考)】
2G011AC01
2G011AC06
2G011AC14
2G011AE01
2G011AF07
2G132AA20
2G132AB02
2G132AD02
2G132AF02
2G132AF06
2G132AF08
2G132AL03
2G132AL06
(57)【要約】
【課題】回路特性を正確に測定することが可能な状態を維持しつつ、プローブの向きを変化させる技術を提供する技術を提供すること。
【解決手段】電子回路の回路特性を測定するためのプローブヘッド23を保持するプローブポジショナ2は、第1の導波路41と周波数エクステンダ3とプローブヘッド23とを予め設定された並び方向へ向けて直線状に並べて保持することが可能な保持台部22と、前記並び方向に沿って設定された回転軸周りに前記保持台部22を回転移動させることにより、前記プローブヘッド23に保持されたプローブ24の向きを変化させる回転機構211、212と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路の回路特性を測定するためのプローブを保持するプローブポジショナであって、
予め設定された方向へ向けてプローブの先端を突出させるように保持するプローブヘッドと、
一端が前記プローブに接続される第1の導波路と、前記第1の導波路の他端に接続されるプローブ側コネクタと、第2の導波路を介して外部のネットワークアナライザに接続されるアナライザ側コネクタと、を備え、前記プローブ側コネクタを介して入出力される周波数信号と、前記アナライザ側コネクタを介して入出力される周波数信号との間の周波数変換を行う周波数エクステンダとを、予め設定された並び方向の基端部側から先端部側へ向けて、前記周波数エクステンダ、前記第1の導波路、及び前記プローブヘッドの順に直線状に並べて保持することが可能に構成された保持台部と、
前記並び方向に沿って設定された回転軸周りに前記保持台部を回転移動させることにより、前記プローブヘッドに保持された前記プローブの向きを変化させる回転機構と、を備えたことを特徴とするプローブポジショナ。
【請求項2】
前記プローブは、前記回路特性として、周波数信号の処理を行う前記電子回路のSパラメータの測定を行うためのものであることを特徴とする請求項1に記載のプローブポジショナ。
【請求項3】
前記周波数信号は、67GHzより高い高周波信号であり、前記周波数エクステンダは、前記高周波信号と30GHz以下の周波数信号との間の周波数変換を行うように構成されたものであることを特徴とする請求項2に記載のプローブポジショナ。
【請求項4】
前記第1の導波路、及び前記第2の導波路は、同軸ケーブルにより構成されることを特徴とする請求項1に記載のプローブポジショナ。
【請求項5】
前記回転機構は、その内周面に前記保持台部が取り付けられた環体と、前記環体の周方向に沿って、当該環体を移動自在に保持する本体部と、を備え、前記回転軸は、前記環体の中心軸であることを特徴とする請求項1に記載のプローブポジショナ。
【請求項6】
前記環体の内側領域を介して外部のネットワークアナライザへと前記第2の導波路を引き出すことができるように、前記保持台部は、前記アナライザ側コネクタを前記内側領域に向けた状態で前記周波数エクステンダを保持するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のプローブポジショナ。
【請求項7】
前記回転軸は、水平方向に向けて伸びるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のプローブポジショナ。
【請求項8】
前記保持台部は、共通の前記プローブに接続される前記第1の導波路と前記周波数エクステンダとの組を複数組、保持できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプローブポジショナ。
【請求項9】
前保持台部は、前記第1の導波路と前記周波数エクステンダとの組を、前記回転移動の方向に並べて保持するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載のプローブポジショナ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一つに記載のプローブポジショナと、
前記プローブポジショナに保持されたプローブを用いて前記回路特性の測定が行われる電子回路が形成された構造体を載置するためのステージと、
前記プローブポジショナ及び前記ステージが配置された基台部と、を備えることを特徴とするプローブステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路の回路特性を測定するためのプローブの配置位置を調節する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器などに設けられ、高周波信号の処理を行う電子回路の開発においては、実際に回路を試作してSパラメータなどの回路特性を測定する場合がある。この際、例えばベクトルネットワークアナライザ(VNA)に接続されたプローブを電子回路側の端子に接触させ、所定の周波数の周波数信号を入射して得られた応答に基づき回路特性を特定する。従来、基板の一面のみに回路配線が形成された電子回路の場合には、基板の上面側から端子に向けてプローブを接触させるだけで回路特性を測定することが可能であった。
【0003】
一方、近年、基板の両面や、立体構造物の表面に電子回路を形成する配線技術の開発が進められている(以下、上述の基板や立体構造物をまとめて「構造体」ともいう)。このような構造体に形成された電子回路では、プローブを接触させる端子の配置位置は、単に上面側を向いている場合だけでなく、構造体の側面や下面側など、様々な方向を向いている可能性がある。従って、この場合の回路特性の測定は、端子の配置位置や向きに応じ、プローブを様々な方向へ向けて配置することが必要になる。
【0004】
ところが、例えば67GHzより高い高周波信号を入射して回路特性を測定する場合には、VNAと電子回路の端子との間の伝送路の形状変化の影響を受けて、回路特性の測定結果が変化してしまう場合がある。このため、既述の構造体に形成された電子回路の端子の配置に応じてプローブを様々な方向へ向けると、プローブに接続されている同軸ケーブルが大きく湾曲し、正しい回路特性を測定することが困難となってしまう場合がある。
【0005】
ここで特許文献1には、プローブ保持部の内部に設けた付勢バネ利用して、プローブ保持部からのプローブの突出量を調節することが可能に構成されたプローブポジショナー装置が記載されている。また、特許文献2には、被試験デバイス(DUT)を含む基板を支持するチャックと、DUTに接触するように構成されたプローブを含むアセンブリが取り付けられた2つのマニピュレータとを含み、これらのマニピュレータが取り付けられたプラテンに対し、各マニピュレータが平行移動できるように構成されたプローブシステムが記載されている。
しかしながら、これら特許文献1、2には、正確な回路特性を測定するために、プローブの向きの変更に伴う同軸ケーブルの形状変化を抑制する技術は何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-127154号公報
【特許文献2】特開2021-64804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、回路特性を正確に測定することが可能な状態を維持しつつ、プローブの向きを変化させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプローブポジショナは、電子回路の回路特性を測定するためのプローブを保持するプローブポジショナであって、
予め設定された方向へ向けてプローブの先端を突出させるように保持するプローブヘッドと、
一端が前記プローブに接続される第1の導波路と、前記第1の導波路の他端に接続されるプローブ側コネクタと、第2の導波路を介して外部のネットワークアナライザに接続されるアナライザ側コネクタと、を備え、前記プローブ側コネクタを介して入出力される周波数信号と、前記アナライザ側コネクタを介して入出力される周波数信号との間の周波数変換を行う周波数エクステンダとを、予め設定された並び方向の基端部側から先端部側へ向けて、前記周波数エクステンダ、前記第1の導波路、及び前記プローブヘッドの順に直線状に並べて保持することが可能に構成された保持台部と、
前記並び方向に沿って設定された回転軸周りに前記保持台部を回転移動させることにより、前記プローブヘッドに保持された前記プローブの向きを変化させる回転機構と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記プローブポジショナは、以下の特徴を有していてもよい。
(a)前記プローブは、前記回路特性として、周波数信号の処理を行う前記電子回路のSパラメータの測定を行うためのものであること。このとき、前記周波数信号は、67GHzより高い高周波信号であり、前記周波数エクステンダは、前記高周波信号と30GHz以下の周波数信号との間の周波数変換を行うように構成されたものであること。
(b)前記第1の導波路、及び前記第2の導波路は、同軸ケーブルにより構成されること。
(c)前記回転機構は、その内周面に前記保持台部が取り付けられた環体と、前記環体の周方向に沿って、当該環体を移動自在に保持する本体部と、を備え、前記回転軸は、前記環体の中心軸であること。このとき、前記環体の内側領域を介して外部のネットワークアナライザへと前記第2の導波路を引き出すことができるように、前記保持台部は、前記アナライザ側コネクタを前記内側領域に向けた状態で前記周波数エクステンダを保持するように構成されていること。
(d)前記回転軸は、水平方向に向けて伸びるように設定されていること。
(e)前記保持台部は、共通の前記プローブに接続される前記第1の導波路と前記周波数エクステンダとの組を複数組、保持できるように構成されていること。このとき、前保持台部は、前記第1の導波路と前記周波数エクステンダとの組を、前記回転移動の方向に並べて保持するように構成されていること。
【0010】
また、本発明のプローブステーションは、上述のいずれかのプローブポジショナと、
前記プローブポジショナに保持されたプローブを用いて前記回路特性の測定が行われる電子回路が形成された構造体を載置するためのステージと、
前記プローブポジショナ及び前記ステージが配置された基台部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保持台部に保持され、直線状に並べられた状態の周波数エクステンダ、第1の導波路、及びプローブヘッドを回転機構により一括して回転移動させる。この結果、周波数エクステンダ、第1の導波路、及びプローブヘッドの相対的な位置関係を変えずにプローブヘッドに保持されたプローブの向きを変化させることができるので、第1の導波路を大きく変形させることなく正確な回路特性の測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係るプローブポジショナを備えたプローブステーションの構成例である。
図2A】前記プローブポジショナの第1の正面図である。
図2B】前記プローブポジショナの第2の正面図である。
図3】前記プローブポジショナに支持された周波数エクステンダ、同軸ケーブル及びプローバの平面図である。
図4A】前記プローブポジショナの第1の作用図である。
図4B】前記プローブポジショナの第2の作用図である。
図5】前記プローブポジショナの使用態様の一例である。
図6】第2の実施形態に係るプローブポジショナの側面図である。
図7】第2の実施形態に係るプローブポジショナの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<プローブステーション>
図1には、本発明の実施の形態に係るプローブポジショナ2を備えたプローブステーション1の構成例を示している。例えばプローブステーション1は、ほぼ水平に配置された設置面100を有する基台部と、設置面100上に配置され、回路特性の測定の対象となる電子回路が形成された回路基板Sを載置するためのステージ10と、回路特性の測定を実施するためプローブ24を保持した2台のプローブポジショナ2とを備えている。設置面100に対しては、図1中に示すX-Y-Z方向の座標系が設定されている。
【0014】
プローブ24は、後述する周波数エクステンダ3を介してベクトルネットワークアナライザ(VNA)5に接続されている。そして、電子回路に設けられた所定の端子に各プローブ24(後述のプローブ針241)を接触させて高周波信号を入射することにより、当該電子回路のSパラメータなどの回路特性を測定することができる。本例のプローブステーション1を用いて回路特性の測定が行われる電子回路は、67GHzより高い範囲の周波数信号(例えば100GHz)を処理するように構成されている。
【0015】
例えばステージ10は、回路基板Sを固定する不図示のチャック機構を備えた保持板103と、保持板103を下面側から支持すると共に、Z方向に移動自在に構成された支柱部102と、支柱部102の下端部に設けられ、所定の範囲で保持板103をX方向、Y方向及びZ方向に移動させることが可能なXYZ移動機構101と、を備えている。XYZ移動機構101は、設置面100に固定されている。
【0016】
2台のプローブポジショナ2は、後述するプローブヘッド23をステージ10の配置方向へ向け、且つ、ステージ10を挟んで互いに対向するように配置されている。各プローブポジショナ2は、その全体をX方向及びY方向に移動させることが可能なXY移動機構201の上面に固定配置されている。また各XY移動機構201についても、設置面100に固定されている。
【0017】
ここで一般に、VNA5は67GHz以下の範囲の周波数信号(例えば20GHz)に基づき回路特性の測定を行うように構成されているため、67GHzより高い高周波信号から直接、回路特性を測定することはできない。そこで、既述のプローブ24とVNA5との間には周波数エクステンダ3が設けられている。なお、後述する保持台部22の構造を示すため、図1の左右に図示されている2台のプローブポジショナ2のうち、右側のプローブポジショナ2は周波数エクステンダ3を配置していない状態を示してある。
【0018】
周波数エクステンダ3は、VNA5に入出力される30GHz以下の周波数信号から67GHzより高い周波数信号へのアップコンバージョンを行う不図示の周波数変換器を備える。また周波数エクステンダ3は、プローブ24を接触させた電子回路に入出力される67GHzより高い周波数信号から30GHz以下の周波数信号へのダウンコンバージョンを行う不図示の周波数変換器も備えている。
【0019】
図1に示すように、周波数エクステンダ3はプローブ側コネクタ31とアナライザ側コネクタ32とを備えている。そして、プローブ側コネクタ31とプローブ24とが第1の同軸ケーブル41を介して接続され、アナライザ側コネクタ32とVNA5とが第2の同軸ケーブル42を介して接続される。第1の同軸ケーブル41は本実施の形態の第1の導波路に相当し、第2の同軸ケーブル42は、本実施の形態の第2の導波路に相当している。
【0020】
一方、背景技術にて説明したように、基板の両面や、立体構造物の表面に形成された電子回路の端子の配置位置に応じて、プローブ24やプローブヘッド23の向きのみを変化させると、第1の同軸ケーブル41が大きく湾曲してしまい、正しい回路特性を測定することが困難となってしまう場合がある。電子回路が形成された基板や立体構造物は、本実施の形態の構造体に相当する。
【0021】
そこで、本実施の形態に係るプローブステーション1において、プローブポジショナ2は、周波数エクステンダ3、第1の同軸ケーブル41、及びプローブヘッド23をこの順に直線状に並べて保持することが可能な構成となっている(図1の左側のプローブポジショナ2参照)。そして、これら周波数エクステンダ3、第1の同軸ケーブル41、及びプローブヘッド23をまとめて回転移動させることにより、プローブヘッド23に保持されたプローブ24の向きを変化させることを可能とする構成を備える。
【0022】
<プローブポジショナ>
以下、図2A図2B図3も参照しながら、プローブポジショナ2の構成例について説明する。なお、以下の説明では設置面100に対して設定されている既述のX-Y-Z方向の座標系に加え、プローブポジショナ2に対して各々設定されているX’-Y’-Z’方向の副座標系も参照しながら説明を行う。なお、図2A図2Bは、図1中に一点鎖線で示す位置から矢視した正面図であり、図2Aは周波数エクステンダ3の配置を省略した状態、図2Bは周波数エクステンダ3を配置した状態を示している。また、図3に示す平面図には、回転移動可能に構成された保持台部22について、図1図2A図2Bに示す最下端に配置した状態(以下、「ホームポジション」ともいう)に対応付けて副座標を設定してある。
【0023】
図1図2A図2B図3の各図に示すように、プローブポジショナ2は、周波数エクステンダ3、第1の同軸ケーブル41、及びプローブヘッド23をこの順に直線状に並べて保持する保持台部22を備える。保持台部22は、基台部221と、基台部221に取り付けられ、周波数エクステンダ3を保持する保持トレー222と、同じく基台部221に取り付けられると共に、プローブヘッド23を支持するアーム部223と、を備える。
【0024】
例えば基台部221は、周波数エクステンダ3や保持トレー222、アーム部223を支持可能な強度を有する角棒状の部材により構成されている。基台部221の基端部は、後述する環体212の内周面に取り付けられ、基台部221はプローブステーション1の設置面100に沿った水平方向へ向けて延在するように配置されている。各図に併記したように、プローブポジショナ2に対して設定した副座標系においては、基台部221の延在方向をY’軸に設定し、基台部221の基端部側をY’軸の原点側に対応付けている。
【0025】
基台部221の上面にはアーム部223が設けられている。例えばアーム部223は、複数の角棒状の部材を上下に重ねると共に、これらの部材を長辺の方向に沿ってずらして配置した多段アームとして構成されている。アーム部223は、Y’軸方向に沿って延在するように配置され、その先端部にてプローブヘッド23を片持ち支持している。
【0026】
図1図3に示すようにプローブヘッド23は、細長いブロック状の部材により構成されている。保持台部22の先端部にはプローブ24が保持されている。基台部221をホームポジションに位置させたとき、プローブヘッド23は、予め設定された方向、本例ではY’方向に沿って斜め下方へ向けて突出させるようにプローブ24を保持している。
【0027】
図2Bの拡大図や図3に示すように、プローブ24の先端部には、電子回路側の端子に接触させるためのプローブ針241が設けられている。プローブ24には第1の同軸ケーブル41の外導体に接続される接地用のプローブ針241と、第1の同軸ケーブル41の内芯に接続される高周波信号の授受用のプローブ針241とが2本1組として設けられる。プローブ24は、1組(2本)のプローブ針241を備えた構成としてもよいし、2組(4本)のプローブ針241を備えた構成としてもよい。図2Bの拡大図や図3などには4本のプローブ針241を備えたプローブ24の例を示してある。プローブ24は、プローブヘッド23に対して着脱可能に構成され、プローブ針241の数が異なるプローブ24を取り換えて保持することができる。
【0028】
図1図3に示すように、プローブヘッド23には、プローブ24と第1の同軸ケーブル41とを繋ぐ固定ケーブル231が設けられている。プローブヘッド23には2本の固定ケーブル231が配置されており、4本のプローブ針241を備えたプローブ24を用いる場合には、双方の固定ケーブル231に対して第1の同軸ケーブル41を接続する。一方、プローブ針241が2本のプローブ24を用いる場合には、これら2本のプローブ針241と接続された一方側の固定ケーブル231に対してのみ第1の同軸ケーブル41を接続する。
【0029】
図1図3に示すように、固定ケーブル231は、所定の位置にて屈曲した後、プローブヘッド23の先端部側のプローブ24に接続されている。このとき、固定ケーブル231自体の大きな捻りや湾曲が形成されたり、固定ケーブル231とプローブ24とを接続するコネクタの緩みが生じたりすると、回路特性の測定結果が変化し、正確な測定結果を得られなくなってしまうおそれがある。そこで、安定した回路特性の測定結果を得る観点では、固定ケーブル231を真っ直ぐに配置した場合と比較して、屈曲角は、50°以下の範囲内であることが好ましい。
【0030】
また、プローブ24への接続端部とは反対側の固定ケーブル231の端部には、第1の同軸ケーブル41との接続を行うためのコネクタ232が設けられている。
この他、プローブヘッド23には、プローブ針241を電子回路側の端子に接触させる際に利用するマイクロスコープを設置してもよい。
【0031】
さらに保持台部22には、保持トレー222が設けられている。図2A図3に示すように、例えば保持トレー222は、基台部221の上面側であり、正面から見てアーム部223の左右両側の位置に、各々、1つずつ設けられている。各保持トレー222は、周波数エクステンダ3の平面形状に対応した角型トレーとして構成され、その上面に周波数エクステンダ3を各々1台ずつ保持することができる。
【0032】
例えば周波数エクステンダ3の基部は、保持トレー222の裏面側からネジ止め固定することが可能となっており、後述するように保持台部22を回転移動させても保持トレー222に対して周波数エクステンダ3が保持された状態を維持できる。
また図3に示すように、周波数エクステンダ3はプローブ側コネクタ31を先端部側(プローブヘッド23側)に向け、アナライザ側コネクタ32を基端部側(環体212側)へ向けて保持トレー222上に配置される。
【0033】
以上に説明した構成により、図1図3に示すように、保持台部22は基端部側から先端部側へ向けて、周波数エクステンダ3、第1の同軸ケーブル41及びプローブヘッド23をこの順に直線状に並べて保持することができる。この際、第1の同軸ケーブル41は、周波数エクステンダ3のプローブ側コネクタ31とプローブヘッド23のコネクタ232との間に配置しても、30°よりも大きな屈曲角が形成されない長さ寸法に調節されている。そして既述のように、本例の保持台部22は、プローブ24に接続される周波数エクステンダ3及び第1の同軸ケーブル41の組を複数組、例えば2組、保持できるように構成されている。
【0034】
ここで、既述のように、固定ケーブル231は、屈曲角が50°以下の範囲内となるように配置することが好ましい。また、フレキシブルな第1の同軸ケーブル41の場合は、屈曲角が30°以下の範囲内となるように配置することが好ましい。このような制約条件を満たすように固定ケーブル231や第1の同軸ケーブル41を配置した後、回路特性の測定を開始する前に、校正作業を行う。校正作業においては、校正用の回路の回路特性を測定した結果を用いて、実際の回路特性のずれを解消する補正を行う。そして、校正作業を実施した後は、固定ケーブル231や第1の同軸ケーブル41の配置形状は±1°であっても変化させないことが必要となる。そこで、周波数エクステンダ3、第1の同軸ケーブル41及びプローブヘッド23をまとめて保持した状態で回転移動させることにより、相対的な位置関係を変化させない構成が有効となる。
【0035】
次いで、保持台部22が取り付けられている環体212側の構成について説明する。図1に示すように、XY移動機構201の上面には、正面側から見て角型の本体部211が設けられている。そして正面から見た本体部211の角型の面内に、円環形状の環体212が保持されている(図2A図2B)。図3に模式的に示すように、環体212は回転保持部213を介して本体部211に保持され、水平方向へ向けて伸びる中心軸周りに回転自在に構成されている(図2A図2Bの環体212に併記した回転方向を示す矢印も参照)。以下、環体212の中心軸を回転軸ともいう。また本体部211は、当該本体部211全体がZ方向に移動することもできるように構成されている。
【0036】
回転保持部213は、例えばクロスローラーリング、同リングの固定機構などにより構成されている。また、当該回転保持部213には、不図示の固定機構が設けられており、ホームポジションから所望の回転角度だけを回転させた位置にて停止し、その状態を維持することが可能となっている。回転保持部213の回転角度範囲に特段の限定はないが、以下の説明では、ホームポジションから±90°の範囲で回転可能となっている場合について説明する。回転保持部213の回転は、例えば手動で実施することができる。この際、例えば本体部211に設けられたマイクロメータを用いて、回転保持部213の正確な回転角度の調節を行うこともできる構成としてもよい。本体部211、環体212及び回転保持部213は、本実施の形態の回転機構を構成している。
【0037】
環体212の内側領域212aは空洞となっており、当該環体212の内周面に対して保持台部22の基端部(基台部221の基端部)が取り付けられている。そして、環体212の回転軸は、基端部から先端部へ向かう保持台部22の延在方向に沿った方向となるように設定されている。従って、環体212の回転軸は、保持台部22に保持された周波数エクステンダ3、第1の同軸ケーブル41及びプローブヘッド23の並び方向に沿った方向ともなっている。
【0038】
以上に説明した構成により、環体212の回転に伴って、当該環体212に取り付けられた保持台部22全体を、既述の回転軸周りに回転移動させることが可能となる。そして環体212に保持された保持台部22を正面側から見ると、アーム部223を挟んで配置された2つの保持トレー222は、回転する環体212の接線方向に沿って並べて配置された状態となっている。言い換えると、保持台部22に対して2組設けられた周波数エクステンダ3と第1の同軸ケーブル41との組は、保持台部22の回転移動の方向に並べて保持された状態となっている。
【0039】
さらに図1図3に示すように保持トレー222に保持された周波数エクステンダ3は、アナライザ側コネクタ32を環体212の内側領域212aに向けた状態で保持トレー222に保持されている。この配置により、環体212の内側領域212aを介し、アナライザ側コネクタ32からVNA5へと第2の同軸ケーブル42を引き出すことができる。
【0040】
<プローブポジショナの作用>
以上に説明した構成を備えるプローブポジショナ2の作用について、図4A図4B図5も参照しながら説明する。
まず、図1の右側、及び図2Aに記載のように、周波数エクステンダ3を保持していない状態のプローブポジショナ2について、保持台部22をホームポジションに位置させる。そして、プローブ24に設けられているプローブ針241の組数(2本1組、または4本2組)に対応する台数の周波数エクステンダ3を保持トレー222に配置、固定する。
【0041】
しかる後、周波数エクステンダ3のプローブ側コネクタ31とプローブヘッド23のコネクタ232との間に第1の同軸ケーブル41を接続する。また、周波数エクステンダ3のアナライザ側コネクタ32とVNA5との間に第2の同軸ケーブル42を接続する。既述のようにアナライザ側コネクタ32は環体212の内側領域212aに向けて配置されているので、第1の同軸ケーブル41は当該内側領域212aを介してVNA5側へと引き出される(図1図3)。
【0042】
こうして図1の左側、及び図2Bに記載のように、プローブポジショナ2に周波数エクステンダ3が保持された状態となったら、既述の校正作業を行い、回路特性の測定を開始可能な状態とする。しかる後、プローブ24の先端(プローブ針241)が電子回路の端子に接触可能な方向へと向くように、環体212を用いて保持台部22を回転移動させる。例えば図4Aに示すように、正面から見て反時計回りに環体212を90°回転させると、同図中に拡大併記したように、プローブ24の先端は、水平方向右向きの状態となる。一方、図4Bに示すように、正面から見て時計回りに環体212を90°回転させると、同図中に拡大併記したように、プローブ24の先端は、水平方向左向きの状態となる。
【0043】
これらの動作において、周波数エクステンダ3、第1の同軸ケーブル41、及びプローブヘッド23は、保持台部22に保持された状態で一括して回転移動することになる。このため、プローブヘッド23やプローブ24のみの向きを変更する場合とは異なり、第1の同軸ケーブル41や固定ケーブル231に、大きな湾曲が形成されていない状態(図3も参照)を維持しながらプローブ24の向きを変更することが可能となる。
【0044】
一方、環体212により保持台部22を回転移動させると、アナライザ側コネクタ32とVNA5との間の位置関係が変化することにより、第2の同軸ケーブル42は大きく湾曲したり、湾曲方向が変わったりする場合もある。しかしながら既述のように、第2の同軸ケーブル42を介して送受信される周波数信号は30GHz以下である。従って、67GHzより高い高周波信号と比較して伝送路の形状変化の影響を受けにくく、第2の同軸ケーブル42の形状変化が回路特性の測定結果に与える影響は小さい。
【0045】
こうして、ホームポジションにてプローブ24が垂直下方側を向いた状態から、±90°の範囲内で所望の方向を向くように保持台部22を回転移動させる。また、各2のXY移動機構201、及びステージ10のXYZ移動機構101を調節し、プローブ24を回路基板Sの電子回路に近づけてプローブ針241を端子に接触させる。しかる後、VNA5を作動させて回路特性の測定を行う。
【0046】
例えば図1には、ステージ10の保持板103上に水平に配置された回路基板Sの上面に形成された端子に対してプローブ針241を接触させた、従来の測定姿勢を示している。この場合には、両プローブポジショナ2の保持台部22をホームポジションに位置させ、プローブ24の先端部を下方側へ向けた状態で測定を行う。
【0047】
一方、図5には、回路基板Sの両面に形成された端子に対し、互いに反対方向からプローブ針241を接触させて回路特性の測定を行っている状態を拡大図示してある。図5は、図1に示すステージ10の保持板103を上面側から見た平面図である。保持板103には、設置面100に対して設定されたX-Y-Z座標系に対し、回路基板Sの板面がX-Z平面に沿って垂直に配置されるように、回路基板Sを固定する固定治具104が設けられている。
【0048】
この場合には、図1に向かって右側のプローブポジショナ2では、ホームポジションから時計回りに保持台部22を90°回転移動させる。また、同図に向かって左側のプローブポジショナ2では、ホームポジションから反時計回りに保持台部22を90°回転移動させる。これらの動作により、図5に示すように、2つのプローブ24が回路基板Sを挟んで配置された状態となり、回路基板Sの各面に形成された端子にプローブ針241を接触させ、回路特性の測定を行うことが可能となる。
図1図6を用いて説明した各例の他、平板形状ではない立体構造物の表面に形成された端子に対しても、当該端子へ向けてプローブ24が対向する方向へと保持台部22を回転移動させることにより、回路特性の測定を自由に行うことができる。
【0049】
以上に説明した本実施の形態に係るプローブポジショナ2によれば以下の効果がある。保持台部22に保持され、直線状に並べられた状態の周波数エクステンダ3、第1の同軸ケーブル41、及びプローブヘッド23について、回転機構を構成する環体212により一括して回転移動させる。この結果、周波数エクステンダ3、第1の同軸ケーブル41、及びプローブヘッド23の相対的な位置関係を変えずにプローブヘッド23に保持されたプローブ24の向きを変化させることができるので、第1の同軸ケーブル41を大きく変形させることなく正確な回路特性の測定を行うことが可能となる。
【0050】
<第2の実施形態>
図6図7には、軸受け機構62により回転自在に保持され、水平方向へ向けて延在するように設けられた回転軸61の外周面に保持台部22を取り付けた構成のプローブポジショナ6を示してある。回転軸61及び軸受け機構62は本実施の形態の回転機構を構成する。図6図7において、図1図5を用いて説明した第1の実施形態に係るプローブポジショナ2と共通の構成要素には、これらの図で用いたものと共通の符号を付してある。軸受け機構62は支柱部63によって支持され、支柱部63の下端には、XYステージ601が受けられている。
【0051】
図6図7に示す構成のプローブポジショナ6においても、保持台部22に保持され、直線状に並べられた状態の周波数エクステンダ3、第1の同軸ケーブル41、及びプローブヘッド23を回転軸61により一括して回転移動させることが可能である。従って、第1の実施形態に係るプローブポジショナ2と同様に、が第1の同軸ケーブル41を大きく変形させることなく正確な回路特性の測定を行うことができる。
【0052】
<バリエーション>
ここで、保持台部22が2つの保持トレー222を備えていることは必須の要件ではない。2本1組のプローブ針241を備えたプローブ24専用のプローブポジショナ2、6を構成する場合には、1つの保持トレー222のみを備えた保持台部22を設けてもよい。また、保持台部22に対して周波数エクステンダ3を保持する手法は、保持トレー222を用いる場合に限定されない。例えば、基台部221の側面、周波数エクステンダ3の側面の双方に、互いに接続、切り離し可能な連結機構を設け、この連結機構を介して周波数エクステンダ3の保持を行ってもよい。
【0053】
さらにまた、例えばアーム部223の先端部に設けられたプローブヘッド23や、プローブヘッド23に設けられたプローブ24の向きについて、微調整を行うことが可能なように構成してもよい。この場合には、プローブヘッド23やプローブ24を動かすことによる同軸ケーブル41や固定ケーブル231の屈曲角が既述の制約(フレキシブルな同軸ケーブル41については30°、固定ケーブル231については50°)を超えない範囲で微調整が実施される。
そして、第1、第2の導波路は、同軸ケーブル41、42により構成する場合に限定されない。第1、第2の導波路のいずれか一方、または双方を導波管によって構成してもよい。
【0054】
さらに、上述の各実施形態に係るプローブポジショナ2、6を用いて測定する電子回路の回路特性は、Sパラメータの例に限定されない。例えばシグナルアナライザ、スペクトラムアナライザなど、他の種類のパラメータの測定に用いてもよい。また、回路測定を行うネットワークアナライザは、VNA5の例に限定されず、スカラ型のネットワークアナライザであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
S 回路基板
2 プローブポジショナ
211 本体部
212 環体
213 回転保持部
22 保持台部
23 プローブヘッド
3 周波数エクステンダ
31 プローブ側コネクタ
32 アナライザ側コネクタ
41 第1の同軸ケーブル
42 第2の同軸ケーブル
5 ベクトルネットワークアナライザ(VNA)
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7