(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157410
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
H01S5/183
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071762
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 匠
(72)【発明者】
【氏名】牧野 智大
(72)【発明者】
【氏名】濱口 達史
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AC03
5F173AC13
5F173AC26
5F173AC36
5F173AC46
5F173AC48
5F173AC52
5F173AR13
5F173AR46
(57)【要約】
【課題】半導体発光素子の発光部に応力が作用しても、当該発光部から所望のレーザ光を安定的に出射させるのに有利な技術を提供する。
【解決手段】半導体発光素子は、第1分布ブラッグ反射鏡及び第2分布ブラッグ反射鏡と、第1分布ブラッグ反射鏡と第2分布ブラッグ反射鏡との間に位置する半導体層及び活性層とを有し、レーザを発振する発光部と、発光部に応力を加える応力印加部と、を備え、第1分布ブラッグ反射鏡は、発光部から出射するレーザが通過するレーザ通過部を有し、第2分布ブラッグ反射鏡は、第1分布ブラッグ反射鏡から見て凹状を成す凹状反射部を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1分布ブラッグ反射鏡及び第2分布ブラッグ反射鏡と、前記第1分布ブラッグ反射鏡と前記第2分布ブラッグ反射鏡との間に位置する半導体層及び活性層とを有し、レーザ光を発振する発光部と、
前記発光部に応力を加える応力印加部と、を備え、
前記第2分布ブラッグ反射鏡は、前記第1分布ブラッグ反射鏡から見て凹状を成す凹状反射部を有する、
半導体発光素子。
【請求項2】
前記発光部は、50μm以下の共振器長を有する
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記発光部は、前記第1分布ブラッグ反射鏡、前記活性層、前記半導体層及び前記第2分布ブラッグ反射鏡が並べられる積層方向に関し、60μm以下の厚みを有する
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記応力印加部は、前記第1分布ブラッグ反射鏡に取り付けられる
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記応力印加部は、前記第2分布ブラッグ反射鏡に取り付けられる
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記応力印加部は、圧電体を含み、前記圧電体に印加される電圧に応じた応力を前記発光部に加える
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記応力印加部は、前記発光部の通電のための電気回路から独立した電気回路によって通電される
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記発光部及び前記応力印加部は、共通の電気回路によって通電される
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記発光部は、
共通の電気回路が接続される第1共通電極及び第2共通電極と、
前記第1共通電極及び前記第2共通電極に電気的に接続される接続体と、
を有し、
前記接続体は、前記応力印加部を含む
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記第1分布ブラッグ反射鏡は、前記発光部から出射する前記レーザ光の透過を許容するレーザ光透過部を有し、
前記発光部からの前記レーザ光の出射方向に沿って見て、前記レーザ光透過部は、前記第1共通電極と前記第2共通電極との間に位置する
請求項9に記載の半導体発光素子。
【請求項11】
前記応力印加部は、MEMS構造体を有する
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項12】
前記MEMS構造体は、
第1MEMS電極及び第2MEMS電極と、
前記発光部に取り付けられ、前記第1MEMS電極及び前記第2MEMS電極を介して印加される電圧に応じて変形する応力印加層と、を有し、
前記発光部には、前記応力印加層の変形に応じた応力が加えられる
請求項11に記載の半導体発光素子。
【請求項13】
前記第1MEMS電極及び前記第2MEMS電極は、エアギャップを介して対向し、
前記応力印加層は、前記第1MEMS電極に取り付けられる
請求項12に記載の半導体発光素子。
【請求項14】
前記応力印加部は、前記半導体層よりも大きな熱膨張率を有する熱変形部を有する
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項15】
前記熱変形部の熱膨張率は、前記第1分布ブラッグ反射鏡、前記半導体層及び前記第2分布ブラッグ反射鏡が並べられる積層方向に関する前記熱変形部の中心を基準に、前記積層方向に非対称である
請求項14に記載の半導体発光素子。
【請求項16】
前記応力印加部は、照射される光に応じて変形する光変形部を有する
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項17】
前記光変形部は、アゾベンゼンを含有する樹脂を含む
請求項16に記載の半導体発光素子。
【請求項18】
前記樹脂は、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂である
請求項17に記載の半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を発振する半導体発光素子として、分布ブラッグ反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflector)を利用した半導体発光素子が知られている。
【0003】
例えば特許文献1が開示するDBRタイプの面発光型レーザ装置では、レーザ光の発振波長を変化させるために、加振部材によって、活性層及び当該活性層を挟む部材に高周波振動が印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する面発光型レーザ装置のように半導体発光素子の活性層に応力が作用する場合、半導体発光素子に歪みが生じる。
【0006】
特に、ファブリペロー型半導体発光素子のように反射鏡を利用してレーザ光発振を行う半導体発光素子に対し、応力が作用すると、反射鏡に歪みが生じることがある。この場合、反射鏡でのレーザ光反射が適切に行われず、レーザ光の出力の大きさや出射角が意図せずに変動し、半導体発光素子から所望のレーザ光を安定的に出射させることができないことがある。
【0007】
本開示は、半導体発光素子の発光部に応力が作用しても、当該発光部から所望のレーザ光を安定的に出射させるのに有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、第1分布ブラッグ反射鏡及び第2分布ブラッグ反射鏡と、第1分布ブラッグ反射鏡と第2分布ブラッグ反射鏡との間に位置する半導体層及び活性層とを有し、レーザ光を発振する発光部と、発光部に応力を加える応力印加部と、を備え、第2分布ブラッグ反射鏡は、第1分布ブラッグ反射鏡から見て凹状を成す凹状反射部を有する、半導体発光素子に関する。
【0009】
発光部は、50μm以下の共振器長を有してもよい。
【0010】
発光部は、第1分布ブラッグ反射鏡、活性層、半導体層及び第2分布ブラッグ反射鏡が並べられる積層方向に関し、60μm以下の厚みを有してもよい。
【0011】
応力印加部は、第1分布ブラッグ反射鏡に取り付けられてもよい。
【0012】
応力印加部は、第2分布ブラッグ反射鏡に取り付けられてもよい。
【0013】
応力印加部は、圧電体を含み、圧電体に印加される電圧に応じた応力を発光部に加えてもよい。
【0014】
応力印加部は、発光部の通電のための電気回路から独立した電気回路によって通電されてもよい。
【0015】
発光部及び応力印加部は、共通の電気回路によって通電されてもよい。
【0016】
発光部は、共通の電気回路が接続される第1共通電極及び第2共通電極と、第1共通電極及び第2共通電極に電気的に接続される接続体と、を有してもよく、接続体は、応力印加部を含んでもよい。
【0017】
前記第1分布ブラッグ反射鏡は、前記発光部から出射する前記レーザ光の透過を許容するレーザ光透過部を有し、
発光部からのレーザ光の出射方向に沿って見て、レーザ光透過部は、第1共通電極と第2共通電極との間に位置してもよい。
【0018】
応力印加部は、MEMS構造体を有してもよい。
【0019】
MEMS構造体は、第1MEMS電極及び第2MEMS電極と、発光部に取り付けられ、第1MEMS電極及び第2MEMS電極を介して印加される電圧に応じて変形する応力印加層と、を有し、発光部には、応力印加層の変形に応じた応力が加えられてもよい。
【0020】
第1MEMS電極及び第2MEMS電極は、エアギャップを介して対向してもよく、応力印加層は、第1MEMS電極に取り付けられてもよい。
【0021】
応力印加部は、半導体層よりも大きな熱膨張率を有する熱変形部を有してもよい。
【0022】
熱変形部の熱膨張率は、第1分布ブラッグ反射鏡、半導体層及び第2分布ブラッグ反射鏡が並べられる積層方向に関する熱変形部の中心を基準に、積層方向に非対称であってもよい。
【0023】
応力印加部は、照射される光に応じて変形する光変形部を有してもよい。
【0024】
光変形部は、アゾベンゼンを含有する樹脂を含んでもよい。
【0025】
樹脂は、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1Aは、半導体発光素子の一例の概略構成を示す断面図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aに示す半導体発光素子において、応力印加部から発光部に外向きの力(すなわち膨張力)が加えられる場合を示す断面図である。
【
図1C】
図1Cは、
図1Aに示す半導体発光素子において、応力印加部から発光部に内向きの力(すなわち収縮力)が加えられる場合を示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、VCSELタイプの発光部の一例を示す断面図であり、特に第2DBRが凹面型DBRとして構成される場合を示す。
【
図2B】
図2Bは、VCSELタイプの発光部の一例を示す断面図であり、特に第2DBRが凹面型DBRとして構成される場合を示す。
【
図3A】
図3Aは、VCSELタイプの発光部の一例を示す断面図であり、特に第2DBRが平面型DBRとして構成される場合を示す。
【
図3B】
図3Bは、VCSELタイプの発光部の一例を示す断面図であり、特に第2DBRが平面型DBRとして構成される場合を示す。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態の半導体発光素子の一例の概略構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4Bに示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図4Bに示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された他の例を示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、
図4Cに示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された一例を示し、半導体発光素子の上面図である。
【
図7B】
図7Bは、
図4Cに示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された一例を示し、半導体発光素子の断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の半導体発光素子の一例の概略構成を示す断面図である。
【
図9A】
図9Aは、
図8に示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された一例を示す断面図である。
【
図9B】
図9Bは、
図8に示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された一例を示す断面図である。
【
図10A】
図10Aは、
図8に示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された他の例を示す断面図である。
【
図10B】
図10Bは、
図8に示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された他の例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態の半導体発光素子の一例の概略構成を示す断面図である。
【
図12A】
図12Aは、
図11に示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された一例を示す断面図である。
【
図12B】
図12Bは、
図11に示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された他の例を示す断面図である。
【
図13A】
図13Aは、第3実施形態の半導体発光素子の他の例の概略構成を示す断面図である。
【
図13B】
図13Bは、第3実施形態の半導体発光素子の他の例の概略構成を示す断面図である。
【
図14】
図14は、応力印加部の積層方向の厚み位置と、熱膨張率との間の関係例を示す図である。
【
図15】
図15は、
図13Aに示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された一例を示す断面図である。
【
図16】
図16は、
図13Aに示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された他の例を示す断面図である。
【
図17】
図17は、
図13Aに示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された他の例を示す断面図である。
【
図18】
図18は、
図13Aに示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された他の例を示す断面図である。
【
図19】
図19は、第4実施形態の半導体発光素子の一例の概略構成を示す断面図である。
【
図20】
図20は、アゾベンゼンの光異方化反応を説明する図面である。
【
図21】
図21は、光変形部を構成しうる樹脂の一例を示す化学式であり、特にアゾベンゼン骨格を有する樹脂の一例を示す。
【
図22】
図22は、
図19に示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された一例を示す断面図である。
【
図23】
図23は、
図19に示す半導体発光素子がVCSELタイプの発光部に応用された他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を例示的に示す。
【0028】
図1Aは、半導体発光素子10の一例の概略構成を示す断面図である。
図1Bは、
図1Aに示す半導体発光素子10において、応力印加部12から発光部11に外向きの力(すなわち膨張力)が加えられる場合を示す断面図である。
図1Cは、
図1Aに示す半導体発光素子10において、応力印加部12から発光部11に内向きの力(すなわち収縮力)が加えられる場合を示す断面図である。
【0029】
図1Aに示す半導体発光素子10は、レーザ光を発振する発光部11と、発光部11に応力を加える応力印加部12とを備える。
【0030】
発光部11は、第1DBR21及び第2DBR22と、第1DBR21と第2DBR22との間に位置する半導体層23及び活性層24と、を有する。活性層24は半導体層23によって挟まれており、活性層24及び半導体層23は積層構造体25を構成する。
【0031】
応力印加部12は、エネルギーが供給されることによって、発光部11の積層構造体25(すなわち半導体層23及び活性層24)よりも大きな寸法変化を示し、その結果、活性層24に応力が加えられる。
【0032】
応力印加部12に供給されるエネルギーの形態は限定されない。例えば、後述されるような電気エネルギー、熱エネルギー或いは光エネルギーが応力印加部12に与えられることによって、応力印加部12は発光部11(特に活性層24)に応力をもたらしてもよい。
【0033】
発光部11において発振されるレーザ光の偏光状態は、活性層24にかかる応力に応じて変わる。そのため応力印加部12によって発光部11に加えられる応力をコントロールすることで、発光部11で発振されるレーザ光の偏光状態を、動的にコントロールできる。例えば
図1Bに示すように、応力印加部12に供給されるエネルギーをコントロールして応力印加部12を意図的に膨張変形させることで、応力印加部12に取り付けられる発光部11の活性層24に、膨張方向に働く応力を加えることができる。一方、
図1Cに示すように、応力印加部12に供給されるエネルギーをコントロールして応力印加部12を意図的に収縮変形させることで、応力印加部12に取り付けられる発光部11の活性層24に、収縮方向に働く応力を加えることができる。
【0034】
このように応力印加部12に供給されるエネルギーを能動的にコントロールすることで、発光部11から出射されるレーザ光の出力や出射角を大幅に変動させることなく、当該レーザ光の偏光状態を所望の状態に動的に変えられる。なお本開示の技術は、応力印加部12に供給されるエネルギーが能動的にコントロールされる場合だけではなく、応力印加部12に供給されるエネルギーが能動的にはコントロールされない場合にも適用可能である。
【0035】
図1A~
図1Cに示す例では、発光部11とは別体の応力印加部12が発光部11に取り付けられているが、発光部11の内部に応力印加部12が設けられてもよい。すなわち発光部11を構成する要素の一部が、応力印加部12として設けられてもよい。この場合にも、応力印加部12として設けられる発光部11の一部要素にエネルギーが加えられることで、発光部11の活性層24に応力を加えることができる。
【0036】
次に、半導体発光素子10の発光部11が、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)として構成される例について説明する。
【0037】
図2A及び
図2Bは、VCSELタイプの発光部11の一例を示す断面図であり、特に第2DBR22が凹面型DBRとして構成される場合を示す。
図3A及び
図3Bは、VCSELタイプの発光部11の一例を示す断面図であり、特に第2DBR22が平面型DBRとして構成される場合を示す。
図2A及び
図3Aは積層構造体25に応力が加えられていない状態を示し、
図2B及び
図3Bは積層構造体25に応力が加えられている状態を示す。
【0038】
図2A~
図3Bに示す発光部11は、第2DBR22(特に光反射面の形状)以外の構成は、互いに同じである。すなわち発光部11は、上述の第1DBR21、第2DBR22及び積層構造体25(すなわち半導体層23及び活性層24)に加え、p型半導体層電極31、n型半導体層電極32、絶縁層33、透明導電膜34及び高電気抵抗領域35を有する。
【0039】
p型半導体層電極31及びn型半導体層電極32は、発光部11の駆動源である電気回路が接続され、レーザ光発振のための電流を積層構造体25(特に活性層24)に注入するための電極として設けられる。p型半導体層電極31及びn型半導体層電極32は、任意の導電材料によって構成可能であり、典型的には金属によって構成される。
【0040】
p型半導体層電極31は、半導体層23及び活性層24の一部範囲のみを覆うように設けられ、発光部11のうちのp型半導体層に電気的に接続される。p型半導体層電極31の一部分は、第1DBR21が有する貫通孔を介して外部に露出し、当該露出部分に電気回路が接続される。p型半導体層電極31の他の部分は、第1DBR21により覆われ、外部に露出しない。
【0041】
p型半導体層電極31は、第1DBR21(特に後述のレーザ光透過部21a)が存在する貫通孔を有する。レーザ光Lは、p型半導体層電極31の当該貫通孔(厳密には、当該貫通孔内の第1DBR21(レーザ光透過部21a))を通って、発光部11から出射する。
【0042】
n型半導体層電極32は、半導体層23及び活性層24の一部範囲のみを覆うように設けられ、発光部11のうちのn型半導体層に接続される。n型半導体層電極32は、第1DBR21が有する貫通孔を介して外部に露出し、当該露出部分に電気回路が接続される。n型半導体層電極32は、半導体層23(特に活性層24と第2DBR22との間に位置する半導体層23)に接触し、且つ、絶縁層33によって周囲が包囲される。
【0043】
絶縁層33は、電気を通しにくい不導体(例えばSiO2)により構成される。絶縁層33は、n型半導体層電極32が配置される貫通孔と、透明導電膜34が配置される貫通孔とを有する。積層方向Dtに関し、絶縁層33の一方側(
図2A~
図3Bの上側)に第1DBR21及びp型半導体層電極31が設けられ、絶縁層33の他方側(
図2A~
図3Bの下側)に高電気抵抗領域35、積層構造体25及び第2DBR22が設けられる。
【0044】
ここで言う積層方向Dtは、第1DBR21、半導体層23、活性層24及び第2DBR22が並べられる方向(
図2A~
図3Bの上下方向)を意味する。本例において、積層方向Dtは、第1DBR21と第2DBR22との間におけるレーザ光の反射方向に一致し、発光部11からのレーザ光Lの出射方向にも一致する。
【0045】
透明導電膜34は、可視光(特に発光部11から出射するレーザ光L)を透過可能であり且つ導電性を有する任意の材料(例えばITO:Indium Tin Oxide)により構成される。透明導電膜34は、p型半導体層電極31及び半導体層23(特に第1DBR21と活性層24との間に位置する半導体層23)に接触するように設けられ、p型半導体層電極31と半導体層23との間の電流の流れを確保する。
【0046】
高電気抵抗領域35は、隣接する半導体層23及び活性層24よりも大きな電気抵抗を有する領域であり、半導体層23及び活性層24に比べて電気が流れにくい領域である。高電気抵抗領域35は、任意の構成を有することができ、例えば半導体層23にイオン(例えばボロン(B))が打ち込まれたイオンインプランテーション領域によって構成可能である。
【0047】
高電気抵抗領域35は、半導体層23を部分的に覆うように設けられる。すなわち高電気抵抗領域35は、半導体層23及び活性層24の一部分(特に透明導電膜34の少なくとも一部と積層方向Dtに対面する部分)を覆わないように設けられる。これにより、透明導電膜34に対する半導体層23の接触状態が確保され、透明導電膜34と半導体層23(ひいては活性層24)との間における電流の流れが確保される。
【0048】
第1DBR21、第2DBR22、半導体層23及び活性層24も任意の材料で構成可能である。一例として、第1DBR21及び第2DBR22は、Ti2O5/SiO2多層膜によって構成可能であり、半導体層23はGaN(窒化ガリウム)などの半導体材料によって構成可能である。
【0049】
上述の構成を有する発光部11は、第1DBR21と半導体層23との間において、p型半導体層電極31、絶縁層33、高電気抵抗領域35、活性層24及び高電気抵抗領域35が積層方向Dtに順次積層される箇所を有する。また発光部11は、第1DBR21と半導体層23との間において、絶縁層33、高電気抵抗領域35、活性層24及び高電気抵抗領域35が積層方向Dtに順次積層される箇所を有する。
【0050】
第1DBR21は、発光部11から出射するレーザ光L(すなわち所望の特定の波長を有するレーザ光L)の透過を許容するレーザ光透過部21aを有する。
【0051】
図2A及び
図2Bに示す発光部11では、第2DBR22が、第1DBR21から見て凹状を成す凹状反射部22aを有する。凹状反射部22a(特に半導体層23に接して境界面を成す反射表面)の少なくとも一部の法線方向は、第1DBR21のレーザ光透過部21aに向けられる。
【0052】
レーザ光透過部21a、p型半導体層電極31の貫通孔、透明導電膜34、半導体層23及び活性層24のうち高電気抵抗領域35によって覆われない部分、及び凹状反射部22aは、積層方向Dtに延びる同一直線上に配置され、レーザ光Lの導波路を構成する。
【0053】
第2DBR22を
図2A及び
図2Bに示すような凹面型DBRとして構成することは、発光部11(例えば積層構造体25)に歪みが生じうる状況下において、適切な光の反射特性を確保するのに有利である。
【0054】
すなわち
図2Bに示すように、積層構造体25(半導体層23及び活性層24)に応力がかかって歪む場合、第2DBR22も同様に歪むが、凹状反射部22aは、引き続き、第1DBR21のレーザ光透過部21aに向けられた状態を維持しやすい。そのため凹状反射部22aは、積層構造体25が歪んでも、レーザ光を、第1DBR21と第2DBR22との間で導波路に沿って安定的に往復伝播させるように働き、活性層24のうちの高電気抵抗領域35によって覆われない部分に効果的に集光させる。
【0055】
このように積層構造体25及び第2DBR22に歪みが生じた状態であっても、レーザ光は第1DBR21及び第2DBR22によって適切に繰り返し反射され、所望の波長のレーザ光Lが発光部11から出射する。
【0056】
一方、
図3A及び
図3Bに示す例では、第2DBR22が第1DBR21から見て平坦形状を成し、第2DBR22の反射面(平坦状反射部22b)は平坦状に延びる。そのため
図3Bに示すように、積層構造体25及び第2DBR22に生じる歪みに応じて、第2DBR22の反射面の向きが変わる。その場合、レーザ光は、第2DBR22の反射面における反射によって、第1DBR21のレーザ光透過部21aから外れた部分に向けられやすい。
【0057】
このように平面型DBRとして構成される第2DBR22(
図3A及び
図3B参照)を半導体発光素子10が具備する場合、積層構造体25及び第2DBR22が応力によって歪むと、発光部11からのレーザ光Lの出力及び出射角が意図せずに変動しやすい。したがって第2DBR22を平面型DBRとして構成することは、発光部11(例えば積層構造体25)に歪みが生じうる状況下において、適切な光の反射特性を確保するのに不利である。
【0058】
なお発光部11からのレーザ光Lの出射特性は、発光部11の厚み(すなわち積層方向Dtのサイズ)が小さいほど、積層構造体25にかかる応力によってより大きな影響を受ける傾向がある。
【0059】
例えば、発光部11が、積層方向Dtに関し、60μm以下の積層方向厚みT1(すなわちチップ厚み、素子厚み)を有する場合に、より効果的に、凹状反射部22aによってもたらされるレーザ光Lの安定的な出射特性の利益を享受しやすい。また発光部11が50μm以下の共振器長T2を有する場合に、凹状反射部22aによってもたらされるレーザ光Lの安定的な出射特性の利益を享受しやすい。
【0060】
ここで言う積層方向厚みT1は、積層方向Dtに関する発光部11の最も大きなサイズを有する部分の長さである。
図2A~
図3Bに示す発光部11では、第1DBR21の最外面(上面)と第2DBR22の最外面(
図2A及び
図2Bに示す例では凹状反射部22aの最外面(下面))との間の積層方向Dtの距離が、積層方向厚みT1となる。
【0061】
一方、共振器長T2は、発光部11における光の反射部間距離である。
図2A~
図3Bに示す発光部11では、第1DBR21のうちの積層構造体25側の面(下面)と第2DBR22(
図2A及び
図2Bに示す例では凹状反射部22a)のうちの積層構造体25側の面(上面)との間の積層方向Dtの距離が、共振器長T2となる。
【0062】
なお、応力印加部12によって発光部11に加えられる応力に起因する半導体発光素子10の寸法変化は、任意の方法で測定可能である。例えば物理的研磨処理や化学的エッチング処理によって半導体発光素子10の一部が除去された状態で、半導体発光素子10の寸法変化が測定されてもよい。また応力印加部12に対してエネルギーが供給されている状態及び供給されていない状態の両方に関し、撮像を行って半導体発光素子10の画像を取得し、これらの画像を解析することで半導体発光素子10の寸法変化が導出されてもよい。
【0063】
次に、半導体発光素子10のより具体的な実施形態について説明する。
【0064】
[第1実施形態]
図4Aは、第1実施形態の半導体発光素子10の一例の概略構成を示す断面図である。
【0065】
図4Aに示す半導体発光素子10は、上述の
図1Aに示す半導体発光素子10と同様の構成を有するが、応力印加部12が圧電効果を示す圧電体41を含む。圧電体41は、印加される電圧に応じた応力を発光部11に加える。
【0066】
圧電体41は、印加電圧に応じた寸法変化を示す任意の圧電材料により構成可能である。例えばSiO2及びPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの無機材料やPLA(ポリ乳酸)及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの有機材料を、圧電体41は含んでいてもよい。これらの圧電材料は、比較的安価であり、所望の厚みを有する圧電体41(応力印加部12)の構成材料として好適に用いられうる。
【0067】
圧電体41に供給される電気エネルギーは、発光部11に電気エネルギーを供給する電気回路とは別の電気回路から圧電体41に供給されてもよいし、同じ電気回路から圧電体41に供給されてもよい。
【0068】
図4Bは、
図4Aに示す例の半導体発光素子10の一形態を示す断面図である。
【0069】
図4Bに示す半導体発光素子10は、互いに別個の電気回路として設けられる発光用電気回路45及び応力印加用電気回路46を備える。発光用電気回路45は、レーザ光の発振のために発光部11に電気エネルギーを供給するための電気回路である。応力印加用電気回路46は、応力印加部12の圧電体41に電気エネルギーを供給するための電気回路である。
【0070】
発光部11は、発光用電気回路45の電極45b、45cに電気的に接続され、電源45aからの電流が供給される。応力印加部12の圧電体41は、応力印加用電気回路46の電極46b、46cに電気的に接続され、電源46aからの電流が供給される。
【0071】
このように応力印加部12は、発光部11(特に活性層24)の通電のための発光用電気回路45から独立した応力印加用電気回路46によって、通電されてもよい。
【0072】
図4Cは、
図4Aに示す例の半導体発光素子10の他の形態を示す断面図である。
【0073】
図4Cに示す半導体発光素子10は、発光部11及び応力印加部12によって共用される電気回路として設けられる共通電気回路47を備える。すなわち共通電気回路47は、レーザ光の発振のために発光部11に電気エネルギーを供給するための電気回路であるとともに、応力印加部12の圧電体41に電気エネルギーを供給するための電気回路でもある。
【0074】
図4Cに示す共通電気回路47は、発光部11及び応力印加部12の両方に電気的にて接続される電極47b、47cを有し、電源47aからの電流が当該電極47b、47cを介して発光部11及び応力印加部12の両方に供給される。
【0075】
このように発光部11及び応力印加部12は、共通電気回路47によって通電されてもよい。
【0076】
図5は、
図4Bに示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された一例を示す断面図である。
【0077】
図5に示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12は、発光部11の第2DBR22に取り付けられる。すなわち、第1DBR21によって構成されるレーザ光の出射面とは反対側の面(すなわち第2DBR22によって構成される面)に、応力印加部12の圧電体41が設置される。
【0078】
発光用電気回路45は、発光部11のp型半導体層電極31及びn型半導体層電極32に接続され、発光用電気回路45の電源45aからの電流がp型半導体層電極31及びn型半導体層電極32を介して半導体層23及び活性層24に供給される。
【0079】
応力印加用電気回路46の電源46aは、電極46b、46cを介して圧電体41(応力印加部12)に電気的に接続され、電源46aからの電流が電極46b、46cを介して圧電体41に供給される。
【0080】
このように
図5に示す半導体発光素子10では、VCSELタイプの発光部11の活性層24に電流を注入するための発光用電気回路45から独立した応力印加用電気回路46が、圧電体41(応力印加部12)のために設けられる。なお
図5に示す発光用電気回路45はオンオフ切り替え可能なスイッチ45dを有し、応力印加用電気回路46はオンオフ切り替え可能なスイッチ46dを有する。
【0081】
図6は、
図4Bに示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された他の例を示す断面図である。
【0082】
図6に示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12(圧電体41)は、発光部11の第1DBR21に取り付けられる。すなわち、レーザ光の出射面(すなわち第1DBR21によって構成される面)に、応力印加部12の圧電体41が設置される。
【0083】
圧電体41は、レーザ光通過部41aを構成する貫通孔を有する。圧電体41のレーザ光通過部41aは、第1DBR21のレーザ光透過部21aと積層方向Dtに向かい合って位置する。すなわちレーザ光通過部41a、レーザ光透過部21a、p型半導体層電極31の貫通孔、透明導電膜34、半導体層23及び活性層24のうち高電気抵抗領域35によって覆われない部分、及び凹状反射部22aは、積層方向Dtに延びる同一直線上に配置され、レーザ光Lの導波路を構成する。
【0084】
このように圧電体41がレーザ光通過部41aを有するため、レーザ光の出射面に応力印加部12(圧電体41)が設けられていても、発光部11からレーザ光を適切に出射させることができる。なお
図6に示す例では貫通孔によってレーザ光通過部41aが構成されるが、レーザ光が透過可能な有体物によってレーザ光通過部41aの一部又は全部が構成されてもよい。
【0085】
図7A及び
図7Bは、
図4Cに示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された一例を示し、
図7Aは半導体発光素子10の上面図であり、
図7Bは半導体発光素子10の断面図である。
【0086】
本例の半導体発光素子10では、発光部11の絶縁層33が、圧電体41を含み、応力印加部12として働く。
【0087】
すなわち発光部11のp型半導体層電極31(第1共通電極)及びn型半導体層電極32(第2共通電極)には、共通電気回路47(
図7A及び
図7Bでは図示省略;
図4C参照)が接続される。そして「p型半導体層電極31及びn型半導体層電極32に電気的に接続される接続体」である絶縁層33が、応力印加部12の圧電体41を含む。
【0088】
p型半導体層電極31は、透明導電膜34と、絶縁層33に含まれる圧電体41とに接続される。したがってp型半導体層電極31及びn型半導体層電極32は、透明導電膜34、半導体層23及び活性層24を介して互いに電気的に導通されるとともに、絶縁層33に含まれる圧電体41を介して互いに電気的に導通される。
【0089】
このように共通電気回路47は、圧電体41(応力印加部12)及び活性層24(発光部11)によって共用される。
【0090】
なお本例のp型半導体層電極31及びn型半導体層電極32は、
図7Aに示すように、発光部11の四角形(正方形)の平面形状の対角線DL上に、透明導電膜34及びレーザ光透過部21aを挟むように位置する。このように発光部11からのレーザ光の出射方向に沿って見て、発光部11におけるレーザ光の導波路が、p型半導体層電極31(第1共通電極)とn型半導体層電極32(第2共通電極)との間に位置することで、活性層24に効率的に応力を加えることができる。
【0091】
[第2実施形態]
本実施形態において、上述の第1実施形態と同一又は対応の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0092】
図8は、第2実施形態の半導体発光素子10の一例の概略構成を示す断面図である。
【0093】
図8に示す半導体発光素子10は、上述の
図1Aに示す半導体発光素子10と同様の構成を有するが、応力印加部12がMEMS構造体51を有する。
【0094】
MEMS構造体51は、任意の構造を有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)である。MEMS構造体51の駆動のために駆動源からMEMS構造体51に供給されるエネルギーの形態も限定されず、例えば静電力を用いる静電MEMSによってMEMS構造体51が構成されてもよい。
【0095】
図9A及び
図9Bは、
図8に示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された一例を示す断面図である。
図9Aは、MEMS構造体51に電力を供給するMEMS用電気回路52がオフの状態の一例を示し、
図9Bは、MEMS構造体51に電力を供給するMEMS用電気回路52がオンの状態の一例を示す。
【0096】
図9A及び
図9Bに示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12は発光部11に取り付けられる。すなわち、第1DBR21によって構成されるレーザ光の出射面とは反対側の面(すなわち第2DBR22によって構成される面)に、応力印加部12のMEMS構造体51が設置される。
【0097】
本例においても発光用電気回路45(
図9A及び
図9Bでは図示省略;
図4B参照)が、発光部11のp型半導体層電極31及びn型半導体層電極32に接続される。また発光用電気回路45とは別個の電気回路として設けられるMEMS用電気回路52が、MEMS構造体51(特に第1MEMS電極53及び第2MEMS電極54)に対して電気的に接続される。
【0098】
MEMS構造体51は、第1MEMS電極53と、第2MEMS電極54と、応力印加層として働く実装基板57とを有する。
【0099】
第1MEMS電極53及び第2MEMS電極54は、電気的絶縁性を有するスペーサー56を介して互いに取り付けられ、エアギャップ55を介して互いに対向する。
【0100】
第1MEMS電極53は、実装基板57に取り付けられ、第1MEMS電極53及び第2MEMS電極54に印加される電圧に応じて変形する。実装基板57は、第1MEMS電極53に取り付けられるとともに、接続層50を介して発光部11(特に第2DBR22)に取り付けられ、第1MEMS電極53とともに変形する。その結果、発光部11には第1MEMS電極53及び実装基板57の変形に応じた応力が加えられる。
【0101】
第2MEMS電極54は、実装基板57よりも大きな曲げ剛性を有する支持基板58に取り付けられ、支持基板58により支持されつつ平板形状を維持する。
【0102】
本例ではMEMS用電気回路52がオン状態にされると、
図9Bに示すように第1MEMS電極53がプラスに帯電し且つ第2MEMS電極54がマイナスに帯電する。その結果、第1MEMS電極53及び第2MEMS電極54には静電力(特に引力)が作用し、第1MEMS電極53が第2MEMS電極54側に凸状に湾曲し、発光部11(特に活性層24)には応力が加えられる。
【0103】
このように本例の半導体発光素子10では、発光部11の活性層24に電流を注入するための発光用電気回路45(
図9A及び
図9Bでは省略)から独立したMEMS用電気回路52が、MEMS構造体51(応力印加部12)の駆動のために設けられる。
【0104】
図10A及び
図10Bは、
図8に示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された他の例を示す断面図である。
【0105】
図10A及び
図10Bに示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12は発光部11(特に第1DBR21)に取り付けられる。すなわちレーザ光の出射面(すなわち第1DBR21によって構成される面)に、応力印加部12のMEMS構造体51が、接続層50を介して設置される。
【0106】
MEMS構造体51は、レーザ光通過部59を構成する貫通孔を有する。MEMS構造体51のレーザ光通過部59は、第1DBR21のレーザ光透過部21aと積層方向Dtに向かい合って位置する。すなわちレーザ光通過部59、レーザ光透過部21a、p型半導体層電極31の貫通孔、透明導電膜34、半導体層23及び活性層24のうち高電気抵抗領域35によって覆われない部分、及び凹状反射部22aは、積層方向Dtに延びる同一直線上に配置され、レーザ光Lの導波路を構成する。
【0107】
このようにMEMS構造体51がレーザ光通過部59を有するため、レーザ光の出射面に応力印加部12(MEMS構造体51)が設けられても、発光部11からレーザ光を適切に出射させることができる。なお
図10A及び
図10Bに示す例では貫通孔によってレーザ光通過部59が構成されるが、レーザ光が透過可能な有体物によってレーザ光通過部59の一部又は全部が構成されてもよい。
【0108】
上述の例(特に
図9B及び
図10B参照)では、MEMS用電気回路52がオン状態にされると、第1MEMS電極53及び第2MEMS電極54が互いに逆の極性に帯電するが、第1MEMS電極53及び第2MEMS電極54が互いに同じ極性に帯電してもよい。
【0109】
すなわちMEMS用電気回路52がオン状態にされることで、第1MEMS電極53及び第2MEMS電極54の両方が、プラスに帯電してもよいし或いはマイナスに帯電してもよい。このような場合、第1MEMS電極53及び第2MEMS電極54には静電力(特に斥力)が作用し、第1MEMS電極53が発光部11側に凸状に湾曲し、発光部11(特に活性層24)には応力が加えられる。
【0110】
[第3実施形態]
本実施形態において、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同一又は対応の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0111】
図11は、第3実施形態の半導体発光素子10の一例の概略構成を示す断面図である。
【0112】
図11に示す半導体発光素子10は、上述の
図1Aに示す半導体発光素子10と同様の構成を有するが、応力印加部12が熱変形部61を有する。
【0113】
熱変形部61は、半導体層23及び活性層24よりも熱膨張係数が高い材料により構成され、半導体層23及び活性層24よりも大きな熱膨張率を有する。例えば半導体層23がGaNによって構成される場合、熱変形部61を構成する材料として、GaAs、Al2O3、Ni、Au或いはCu等の無機材料や、ポリイミド樹脂或いはエポキシ樹脂等の有機材料が使われてもよい。このような熱変形部61(応力印加部12)に熱エネルギーが与えられることによって、発光部11(特に活性層24)に応力が加えられる。
【0114】
なお、そのような熱エネルギーは、能動的に熱変形部61に与えられてもよいし、受動的に熱変形部61に与えられてもよい。すなわち熱変形部61は、専用の加熱デバイス69によって熱エネルギーが与えられてもよいし、レーザ光の発振に起因して発光部11で生じる熱エネルギーが与えられてもよい。
【0115】
図12Aは、
図11に示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された一例を示す断面図である。
【0116】
図12Aに示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12は発光部11(特に第2DBR22)に取り付けられる。すなわち、第1DBR21によって構成されるレーザ光の出射面とは反対側の面(すなわち第2DBR22によって構成される面)に、応力印加部12の熱変形部61が設置される。
【0117】
本例においても発光用電気回路45(
図12Aでは図示省略;
図4B参照)が、発光部11のp型半導体層電極31及びn型半導体層電極32に接続される。
【0118】
図12Aに示す熱変形部61は、第2DBR22の全体を覆い、第2DBR22の外面の全体に熱変形部61が取り付けられる。そのため与えられる熱エネルギー応じて熱変形部61が膨張する場合、発光部11(特に第2DBR22、半導体層23及び活性層24)には外向きの応力(膨張力)が加えられる。
【0119】
図12Bは、
図11に示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された他の例を示す断面図である。
【0120】
図12Bに示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12は発光部11(特に第1DBR21)に取り付けられる。すなわち、レーザ光の出射面(すなわち第1DBR21によって構成される面)に、応力印加部12の熱変形部61が設置される。
【0121】
本例においても発光用電気回路45(
図12Bでは図示省略;
図4B参照)が、発光部11のp型半導体層電極31及びn型半導体層電極32に接続される。
【0122】
図12Bに示す熱変形部61は、第1DBR21の一部のみを覆い、第1DBR21の外面(
図12Bの上面)は、熱変形部61が取り付けられる部分と、熱変形部61が取り付けられる部分間に位置する熱変形部61が取り付けられない部分と、を有する。
【0123】
特に本例の熱変形部61は、レーザ光通過部62を構成する貫通孔を有する。熱変形部61のレーザ光通過部62は、第1DBR21のレーザ光透過部21aと積層方向Dtに向かい合って位置する。すなわちレーザ光通過部62、レーザ光透過部21a、p型半導体層電極31の貫通孔、透明導電膜34、半導体層23及び活性層24のうち高電気抵抗領域35によって覆われない部分、及び凹状反射部22aは、積層方向Dtに延びる同一直線上に配置され、レーザ光Lの導波路を構成する。
【0124】
このように熱変形部61がレーザ光通過部62を有するため、レーザ光の出射面に応力印加部12(熱変形部61)が設けられていても、発光部11からレーザ光を適切に出射させることができる。なお
図12Bに示す例では貫通孔によってレーザ光通過部62が構成されるが、レーザ光が透過可能な有体物によってレーザ光通過部62の一部又は全部が構成されてもよい。
【0125】
このような熱変形部61が、与えられる熱エネルギー応じて膨張する場合、発光部11(特に、活性層24のうち、第1DBR21と第2DBR22との間で反射を繰り返すレーザ光が通過する導波路上の部分)には内向きの応力(圧縮力)が加えられる。
【0126】
図13A及び
図13Bは、第3実施形態の半導体発光素子10の他の例の概略構成を示す断面図である。
【0127】
本例の応力印加部12が有する熱変形部61の熱膨張率は、積層方向Dtに関する熱変形部61の中心(厚み中央Ct)を基準に、積層方向Dtに非対称である。
【0128】
例えば熱変形部61の熱膨張率が熱変形部61の炭素濃度に応じて定まる場合、熱変形部61の積層方向Dtにおける炭素濃度を、厚み中央Ctに関して非対称とすることで、熱変形部61の熱膨張率が積層方向Dtに非対称となる。
【0129】
なお
図13A及び
図13Bにおいて応力印加部12(熱変形部61)の塗りつぶし濃度が積層方向Dtに変化し、塗りつぶし濃度が薄い部分(白色に近い部分)ほど炭素濃度が薄く、塗りつぶし濃度が濃い部分(黒色に近い部分)ほど炭素濃度が濃い。
【0130】
図14は、応力印加部12の積層方向Dtの厚み位置と、熱膨張率との間の関係例を示す図である。
【0131】
図14の(a)に示す例の応力印加部12は、積層方向Dtの厚み位置によらず一定の熱膨張率を有し、厚み中央Ctを基準に積層方向Dtに関して対称的な熱膨張率を有する。また
図14の(b)に示す例の応力印加部12では、相対的に大きな熱膨張率を示す部分と、相対的に小さな熱膨張率を示す部分とが、積層方向Dtに交互に繰り返され、厚み中央Ctを基準に積層方向Dtに関して対称的な熱膨張率を有する。
【0132】
一方、
図14の(c)に示す例の応力印加部12では、相対的に大きな熱膨張率を示す部分と、相対的に小さな熱膨張率を示す部分とが、積層方向Dtに交互に繰り返され、厚み中央Ctを基準に積層方向Dtに関して非対称的な熱膨張率を有する。また
図14の(d)に示す例の応力印加部12は、積層方向Dtに比例的に変化する熱膨張率を有し、厚み中央Ctを基準に積層方向Dtに関して非対称的な熱膨張率を有する。
【0133】
図15は、
図13Aに示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された一例を示す断面図である。
【0134】
図15に示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12は発光部11(特に第2DBR22)に取り付けられる。すなわち、第1DBR21によって構成されるレーザ光の出射面とは反対側の面(すなわち第2DBR22によって構成される面)に、応力印加部12の熱変形部61が設置される。
【0135】
本例の応力印加部12の熱変形部61は、熱膨張率が互いに異なる有機層63及び無機層64を含む多層膜構造を有し、有機層63及び無機層64が積層方向Dtに交互に繰り返し配置される。
【0136】
特に本例の熱変形部61の熱膨張率は、積層方向Dtに関する熱変形部61の中心(厚み中央Ct)を基準に、積層方向Dtに非対称である(
図14の(c)参照)。
図15に示す例では、中央の有機層63が厚み中央Ctに対応する位置に設けられるが、当該中央の有機層63の積層方向Dtに関する中心を厚み中央Ctからずらすことで、熱変形部61の熱膨張率の積層方向Dtに関する非対称性が実現されている。
【0137】
このように多層膜構造の熱変形部61の積層方向Dtに関する膜厚分布を、厚み中央Ctを基準に非対称的にすることで、熱変形部61の熱膨張率の積層方向Dtに関する非対称性を実現できる。
【0138】
図16は、
図13Aに示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された他の例を示す断面図である。
【0139】
図16に示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12は発光部11(特に第2DBR22)に取り付けられる。すなわち、第1DBR21によって構成されるレーザ光の出射面とは反対側の面(すなわち第2DBR22によって構成される面)に、応力印加部12の熱変形部61が設置される。
【0140】
本例の応力印加部12の熱変形部61は、有機層63と、当該有機層63中に分散された炭素65とを含み、特に熱変形部61の熱膨張率に影響する炭素原子濃度が、積層方向Dtに関して不均一であり、厚み中央Ctに関して非対称的である(
図14の(d)参照)。
【0141】
なお熱変形部61は、炭素65に加え又は炭素65の代わりに、熱膨張率に影響する他の物質(例えば無機粒子)を含んでいてもよく、当該他の物質の濃度が積層方向Dtに関して不均一であり、厚み中央Ctに関して非対称的であってもよい。
【0142】
図17は、
図13Aに示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された他の例を示す断面図である。
【0143】
図17に示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12は発光部11(特に第1DBR21)に取り付けられる。すなわち、レーザ光の出射面(すなわち第1DBR21によって構成される面)に、応力印加部12の熱変形部61が設置される。
【0144】
本例の応力印加部12の熱変形部61は、上述の
図15に示す例と同様に、熱膨張率が互いに異なる有機層63及び無機層64を含む多層膜構造を有し、有機層63及び無機層64が積層方向Dtに交互に繰り返し配置される。特に本例の熱変形部61の熱膨張率は、積層方向Dtに関する熱変形部61の中心(厚み中央Ct)を基準に、積層方向Dtに非対称である。
【0145】
このように本例においても、多層膜構造の熱変形部61の積層方向Dtに関する膜厚分布を、厚み中央Ctを基準に非対称的にすることで、熱変形部61の熱膨張率の積層方向Dtに関する非対称性を実現できる。
【0146】
特に本例の熱変形部61は、レーザ光通過部62を構成する貫通孔を有する。熱変形部61のレーザ光通過部62は、第1DBR21のレーザ光透過部21aと積層方向Dtに向かい合って位置する。すなわちレーザ光通過部62、レーザ光透過部21a、p型半導体層電極31の貫通孔、透明導電膜34、半導体層23及び活性層24のうち高電気抵抗領域35によって覆われない部分、及び凹状反射部22aは、積層方向Dtに延びる同一直線上に配置され、レーザ光Lの導波路を構成する。
【0147】
このように熱変形部61がレーザ光通過部62を有するため、レーザ光の出射面に応力印加部12(熱変形部61)が設けられていても、発光部11からレーザ光を適切に出射させることができる。なお
図17に示す例では貫通孔によってレーザ光通過部62が構成されるが、レーザ光が透過可能な有体物によってレーザ光通過部62の一部又は全部が構成されてもよい。
【0148】
図18は、
図13Aに示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された他の例を示す断面図である。
【0149】
図18に示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12は発光部11(特に第1DBR21)に取り付けられる。すなわち、レーザ光の出射面(すなわち第1DBR21によって構成される面)に、応力印加部12の熱変形部61が設置される。
【0150】
本例の応力印加部12の熱変形部61は、上述の
図16に示す例と同様に、有機層63と、当該有機層63中に分散された炭素65とを含み、特に熱変形部61の熱膨張率に影響する炭素原子濃度が、積層方向Dtに関して不均一であり、厚み中央Ctに関して非対称的である。
【0151】
なお熱変形部61は、炭素65に加え又は炭素65の代わりに、熱膨張率に影響する他の物質(例えば無機粒子)を含んでいてもよく、当該他の物質の濃度が積層方向Dtに関して不均一であり、厚み中央Ctに関して非対称的であってもよい。
【0152】
また本例の熱変形部61には、上述の
図17に示す例と同様に、レーザ光通過部62を構成する貫通孔が、第1DBR21のレーザ光透過部21aと積層方向Dtに向かい合って位置するように設けられる。
【0153】
[第4実施形態]
本実施形態において、上述の第1~第3実施形態と同一又は対応の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0154】
図19は、第4実施形態の半導体発光素子10の一例の概略構成を示す断面図である。
【0155】
図19に示す半導体発光素子10は、上述の
図1Aに示す半導体発光素子10と同様の構成を有するが、応力印加部12が光変形部71を有する。光変形部71は、対応の波長を有する光が照射されることで変形し、当該変形に応じた応力を発光部11に加えることができる。
【0156】
そのような光(光エネルギー)は、能動的に光変形部71に与えられてもよいし、受動的に光変形部71に与えられてもよい。例えば光変形部71は、専用の光照射デバイス79によって光エネルギーが与えられてもよい。
【0157】
光変形部71を構成可能な材料は限定されず、光変形部71を変形させる光の種類(波長等)も限定されない。一例として、光変形部71は、光異方化反応を示すアゾベンゼンを含有する樹脂を含んでいてもよい。
【0158】
図20は、アゾベンゼンの光異方化反応を説明する図面である。
図21は、光変形部71を構成しうる樹脂の一例を示す化学式であり、特にアゾベンゼン骨格を有する樹脂の一例を示す。
【0159】
一般にアゾベンゼンは、
図20に示すように、紫外光が照射されるとトランス体からシス体に異方化され、可視光(例えば青色光)が照射されるとシス体からトランス体に異方化され、当該異方化によって物理的に変形する。
【0160】
図21において「R」はエポキシ樹脂主骨格を表し、「OH」は水酸基を表し、「N」は窒素原子を表し、「H」は水素原子を表す。すなわち
図21に示す樹脂は、アゾベンゼン骨格、エポキシ樹脂主骨格、エポキシ基、アミノ基及び結合部を含む。
【0161】
このように光変形部71は、ポリイミド樹脂若しくはエポキシ樹脂にアゾベンゼン骨格が化学的に結合した樹脂によって構成可能であり、光(例えば紫外光)が照射された際の変形を利用して、発光部11(特に活性層24)に応力を加えることができる。
【0162】
図22は、
図19に示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された一例を示す断面図である。
【0163】
図22に示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12は発光部11(特に第2DBR22)に取り付けられる。すなわち、第1DBR21によって構成されるレーザ光の出射面とは反対側の面(すなわち第2DBR22によって構成される面)に、応力印加部12の光変形部71が設置される。
【0164】
本例においても発光用電気回路45(
図22では図示省略;
図4B参照)が、発光部11のp型半導体層電極31及びn型半導体層電極32に接続される。
【0165】
図22に示す光変形部71は、第2DBR22の全体を覆い、第2DBR22の外面の全体に光変形部71が取り付けられる。このような光変形部71に対応の光(例えば紫外線)を照射することによって、能動的に光変形部71を変形させて、能動的に発光部11(特に活性層24)に応力を加えることができる。
【0166】
図23は、
図19に示す半導体発光素子10がVCSELタイプの発光部11に応用された他の例を示す断面図である。
【0167】
図23に示す半導体発光素子10において、発光部11は、上述の
図2Aに示す発光部11と同じ構造を有し、応力印加部12は発光部11(特に第1DBR21)に取り付けられる。すなわち、レーザ光の出射面(すなわち第1DBR21によって構成される面)に、応力印加部12の光変形部71が設置される。
【0168】
本例においても発光用電気回路45(
図23では図示省略;
図4B参照)が、発光部11のp型半導体層電極31及びn型半導体層電極32に接続される。
【0169】
図23に示す光変形部71は、第1DBR21の一部のみを覆い、第1DBR21の外面(
図23の上面)は、光変形部71が取り付けられる部分と、光変形部71が取り付けられる部分間に位置する光変形部71が取り付けられない部分と、を有する。
【0170】
特に本例の光変形部71は、レーザ光通過部72を構成する貫通孔を有する。光変形部71のレーザ光通過部72は、第1DBR21のレーザ光透過部21aと積層方向Dtに向かい合って位置する。すなわちレーザ光通過部72、レーザ光透過部21a、p型半導体層電極31の貫通孔、透明導電膜34、半導体層23及び活性層24のうち高電気抵抗領域35によって覆われない部分、及び凹状反射部22aは、積層方向Dtに延びる同一直線上に配置され、レーザ光Lの導波路を構成する。
【0171】
このように光変形部71がレーザ光通過部72を有するため、レーザ光の出射面に応力印加部12(光変形部71)が設けられていても、発光部11からレーザ光を適切に出射させることができる。なお
図23に示す例では貫通孔によってレーザ光通過部72が構成されるが、レーザ光が透過可能な有体物によってレーザ光通過部72の一部又は全部が構成されてもよい。
【0172】
このような光変形部71に対応の光(例えば紫外線)を照射することによって、能動的に光変形部71を変形させて、能動的に発光部11(特に活性層24)に応力を加えることができる。
【0173】
[変形例]
上述の例では、主として第2DBR22が凹面型DBRとして構成される例について説明したが、第2DBR22と共に又は第2DBR22の代わりに、第1DBR21が凹面型DBとして構成されてもよい。すなわち第1DBR21のレーザ光透過部21aが、第2DBR22から見て凹状を成す凹状反射部によって構成されてもよい。レーザ光透過部21aのそのような凹状反射部(特に半導体層23に接して境界面を成す反射表面)の少なくとも一部の法線方向は、第2DBR22(例えば凹状反射部22a)に向けられる。
【0174】
本明細書で開示されている実施形態及び変形例はすべての点で例示に過ぎず限定的には解釈されないことに留意されるべきである。上述の実施形態及び変形例は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態での省略、置換及び変更が可能である。例えば上述の実施形態及び変形例が全体的に又は部分的に組み合わされてもよく、また上述以外の実施形態が上述の実施形態又は変形例と組み合わされてもよい。また、本明細書に記載された本開示の効果は例示に過ぎず、その他の効果がもたらされてもよい。
【0175】
上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の装置を製造する方法或いは使用する方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【0176】
[付記]
本開示技術は、以下の構成もとりうる。
【0177】
[構成1]
第1分布ブラッグ反射鏡及び第2分布ブラッグ反射鏡と、前記第1分布ブラッグ反射鏡と前記第2分布ブラッグ反射鏡との間に位置する半導体層及び活性層とを有し、レーザ光を発振する発光部と、
前記発光部に応力を加える応力印加部と、を備え、
前記第2分布ブラッグ反射鏡は、前記第1分布ブラッグ反射鏡から見て凹状を成す凹状反射部を有する、
半導体発光素子。
【0178】
[構成2]
前記発光部は、50μm以下の共振器長を有する
構成1に記載の半導体発光素子。
【0179】
[構成3]
前記発光部は、前記第1分布ブラッグ反射鏡、前記活性層、前記半導体層及び前記第2分布ブラッグ反射鏡が並べられる積層方向に関し、60μm以下の厚みを有する
構成1又は2に記載の半導体発光素子。
【0180】
[構成4]
前記応力印加部は、前記第1分布ブラッグ反射鏡に取り付けられる
構成1~3のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0181】
[構成5]
前記応力印加部は、前記第2分布ブラッグ反射鏡に取り付けられる
構成1~4のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0182】
[構成6]
前記応力印加部は、圧電体を含み、前記圧電体に印加される電圧に応じた応力を前記発光部に加える
構成1~5のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0183】
[構成7]
前記応力印加部は、前記発光部の通電のための電気回路から独立した電気回路によって通電される
構成1~6のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0184】
[構成8]
前記発光部及び前記応力印加部は、共通の電気回路によって通電される
構成1~7のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0185】
[構成9]
前記発光部は、
共通の電気回路が接続される第1共通電極及び第2共通電極と、
前記第1共通電極及び前記第2共通電極に電気的に接続される接続体と、
を有し、
前記接続体は、前記応力印加部を含む
構成1~8のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0186】
[構成10]
前記第1分布ブラッグ反射鏡は、前記発光部から出射する前記レーザ光の透過を許容するレーザ光透過部を有し、
前記発光部からの前記レーザ光の出射方向に沿って見て、前記レーザ光透過部は、前記第1共通電極と前記第2共通電極との間に位置する
構成9に記載の半導体発光素子。
【0187】
[構成11]
前記応力印加部は、MEMS構造体を有する
構成1~10のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0188】
[構成12]
前記MEMS構造体は、
第1MEMS電極及び第2MEMS電極と、
前記発光部に取り付けられ、前記第1MEMS電極及び前記第2MEMS電極を介して印加される電圧に応じて変形する応力印加層と、を有し、
前記発光部には、前記応力印加層の変形に応じた応力が加えられる
構成11に記載の半導体発光素子。
【0189】
[構成13]
前記第1MEMS電極及び前記第2MEMS電極は、エアギャップを介して対向し、
前記応力印加層は、前記第1MEMS電極に取り付けられる
構成12に記載の半導体発光素子。
【0190】
[構成14]
前記応力印加部は、前記半導体層よりも大きな熱膨張率を有する熱変形部を有する
構成1~13のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0191】
[構成15]
前記熱変形部の熱膨張率は、前記第1分布ブラッグ反射鏡、前記半導体層及び前記第2分布ブラッグ反射鏡が並べられる積層方向に関する前記熱変形部の中心を基準に、前記積層方向に非対称である
構成14に記載の半導体発光素子。
【0192】
[構成16]
前記応力印加部は、照射される光に応じて変形する光変形部を有する
構成1~15のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0193】
[構成17]
前記光変形部は、アゾベンゼンを含有する樹脂を含む
構成16に記載の半導体発光素子。
【0194】
[構成18]
前記樹脂は、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂である
構成17に記載の半導体発光素子。
【符号の説明】
【0195】
10 半導体発光素子、11 発光部、12 応力印加部、21 第1DBR、21a レーザ光透過部、22 第2DBR、22a 凹状反射部、22b 平坦状反射部、23 半導体層、24 活性層、25 積層構造体、31 p型半導体層電極、32 n型半導体層電極、33 絶縁層、34 透明導電膜、35 高電気抵抗領域、41 圧電体、41a レーザ光通過部、45 発光用電気回路、45a 電源、45b 電極、45c 電極、45d スイッチ、46 応力印加用電気回路、46a 電源、46b 電極、46c 電極、46d スイッチ、47 共通電気回路、47a 電源、47b 電極、47c 電極、50 接続層、51 MEMS構造体、52 MEMS用電気回路、53 第1MEMS電極、54 第2MEMS電極、55 エアギャップ、56 スペーサー、57 実装基板、58 支持基板、59 レーザ光通過部、61 熱変形部、62 レーザ光通過部、63 有機層、64 無機層、65 炭素、69 加熱デバイス、71 光変形部、72 レーザ光通過部、79 光照射デバイス、Ct 厚み中央、DL 対角線、Dt 積層方向、L レーザ光、T1 積層方向厚み、T2 共振器長