(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157411
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】工程設計支援装置、工程設計支援方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20241030BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20241030BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071763
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 紀彦
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA43
3C100AA57
3C100BB13
3C100BB15
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】高品質な製品を製造するための製造工程を短時間で設計する。
【解決手段】工程設計支援装置10は、過去の製造情報を記憶部12に蓄積する製造情報蓄積部101と、蓄積された過去の製造情報を基にして作成された成されたツリー構造に基づいて不適合の発生確率を算出する不適合発生確率算出部103と、不適合の発生確率と損失コストからコストインパクトを算出するコストインパクト算出部104と、コストインパクトが比較的小さい1又は複数の次回の製造工程候補を表示部13に選択可能に表示し、選択を受け付けて、次回の製造工程を設計する製造工程設計部105と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の製造情報を記憶部に蓄積する製造情報蓄積部と、
蓄積された前記過去の製造情報を基にして作成されたツリー構造に基づいて不適合の発生確率を算出する不適合発生確率算出部と、
前記不適合の発生確率と損失コストからコストインパクトを算出するコストインパクト算出部と、
前記コストインパクトが比較的小さい1又は複数の次回の製造工程候補を表示部に選択可能に表示し、選択を受け付けて、次回の製造工程を設計する製造工程設計部と、を備える
ことを特徴とする工程設計支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工程設計支援装置において、
前記製造工程設計部は、前記コストインパクトの小さい順に、前記次回の製造工程候補を並べて表示する
ことを特徴とする工程設計支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の工程設計支援装置において、
さらに、任意の製造工程を入力する製造工程入力部を備え、
前記不適合発生確率算出部は、前記製造工程入力部で入力された入力製造工程に対して、前記不適合の発生確率を算出する
ことを特徴とする工程設計支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の工程設計支援装置において、
前記製造工程設計部は、前記製造工程入力部で入力された入力製造工程に対して、前記コストインパクトの小さい順に、前記次回の製造工程候補を並べて表示する
ことを特徴とする工程設計支援装置。
【請求項5】
請求項3に記載の工程設計支援装置において、
前記不適合発生確率算出部は、前記製造工程入力部で入力された入力製造工程に対して、前記過去の製造情報に含まれる製造工程と前記入力製造工程とを重ね合わせることで、前記製造工程のツリー構造を作成し、作成されたツリー構造から得られる不適合情報により前記不適合の発生確率を算出し、
前記コストインパクト算出部は、前記不適合の発生確率と平均損失コストとを掛け合わせることにより前記コストインパクトを算出する
ことを特徴とする工程設計支援装置。
【請求項6】
蓄積された前記過去の製造情報を基にして作成された成されたツリー構造に基づいて不適合の発生確率を算出する不適合発生確率算出工程と、
前記不適合の発生確率と損失コストからコストインパクトを算出するコストインパクト算出工程と、
前記コストインパクトが比較的小さい1又は複数の次回の製造工程候補を表示部に選択可能に表示し、選択を受け付けて、次回の製造工程を設計する製造工程設計工程と、を含む
ことを特徴とする工程設計支援方法。
【請求項7】
過去の製造情報を蓄積する記憶部を備えるコンピュータを、
蓄積された前記過去の製造情報を基にして作成された成されたツリー構造に基づいて不適合の発生確率を算出する不適合発生確率算出部と、
前記不適合の発生確率と損失コストからコストインパクトを算出するコストインパクト算出部と、
前記コストインパクトが比較的小さい1又は複数の次回の製造工程候補を表示部に選択可能に表示し、選択を受け付けて、次回の製造工程を設計する製造工程設計部として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程設計支援装置、工程設計支援方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造情報を用いて製品の設計を行う際に、過去の実績から機械学習を用いて製品の性能を予測する支援装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、各工程の製造実績データを収集する実績収集部と、製造仕様実績および評価指標実績を格納する記憶部と、製造中の所定工程後に、実績収集部で収集した製造実績データのうち、確定した少なくとも2つ以上の製造実績データを製造仕様の固定値として用いて、当該製品の製造仕様と評価指標とを結びつけた予測モデルに基づき逆解析を行い、評価指標の推定値が所望の値に漸近するように所定工程後にかかる工程の製造仕様を探索する探索処理部と、探索された製造仕様の表示および出力の少なくとも一方を行う出力部と、を有する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術は、製造工程や製造条件を適切に設計することで高品質な製品を得ることについて、十分に考慮されていない。そのため、特許文献1に開示された従来技術は、製造工程や製造条件を適切に設計することで高品質な製品を得ることについて向上の余地があり、高品質な製品を製造するための製造工程を短時間で設計することが望まれている。
【0005】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、高品質な製品を製造するための製造工程を短時間で設計することができる工程設計支援装置、工程設計支援方法、及び、プログラムを提供することを主な目的とする。
【0006】
また、本発明は、特許文献1に開示された従来技術での以下の課題を解決することができる工程設計支援装置、工程設計支援方法、及び、プログラムを提供するものでもある。
【0007】
(1)特許文献1に開示された従来技術は、過去の製品の性能の実績値を用いて回帰曲線やニューラルネットワークなどにより機械学習モデルを作成することで、製造仕様などの性能を予測する。この従来技術は、製品の形態などが決まったとき、その性能を予測するものであり、製品の形態、形状を決定する過程、すなわち製造工程が考慮されていない。通常、製品の最終形状は同じであっても、製造工程の順番や製造条件によっては、疵などの不適合(不具合)が製品に発生し易くなる。すなわち、製造工程や製造条件により不適合の発生頻度が異なる可能性がある。そのため、従来技術には、適切に製造工程や製造条件を設計(設定)しないと、高品質な製品を製造することが困難である、という課題がある。
【0008】
(2)また、特許文献1に開示された従来技術は、発生しうる不適合(不具合)の形態とその対策方法を分類して整理し、不適合が発生したときに対策方法を明示することで、不適合が発生したときの対策を効率よく行う。このような従来技術は、製造工程の設計後の製品を製造したときに発生する不適合(不具合)については効率よく対策を行うことができる。しかしながら、従来技術は、製造工程や製造条件の良し悪しについては考慮されないため、製造工程の設計前の段階では、発生する可能性のある不適合(不具合)については対策を行うことができない。そのため、従来技術は、不適合が発生した場合に、多大な対策工数を要することとなり、製造期間が長期化してしまう、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、工程設計支援装置であって、過去の製造情報を記憶部に蓄積する製造情報蓄積部と、蓄積された前記過去の製造情報を基にして作成されたツリー構造に基づいて不適合の発生確率を算出する不適合発生確率算出部と、前記不適合の発生確率と損失コストからコストインパクトを算出するコストインパクト算出部と、前記コストインパクトが比較的小さい1又は複数の次回の製造工程候補を表示部に選択可能に表示し、選択を受け付けて、次回の製造工程を設計する製造工程設計部と、を備える構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高品質な製品を製造するための製造工程を短時間で設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る工程設計支援装置の構成図である。
【
図2】実施形態に係る工程設計支援装置の第1フェーズの処理手順を示す説明図である。
【
図3】実施形態に係る工程設計支援装置の第2フェーズの処理手順を示す説明図である。
【
図4A】製造情報の一例を示す説明図(1)である。
【
図4B】製造情報の一例を示す説明図(2)である。
【
図4C】製造情報の一例を示す説明図(3)である。
【
図6】製造工程の最初の入力画面の一例を示す説明図である。
【
図7】製造工程のツリー構造の作成の一例を示す説明図(1)である。
【
図8】製造工程のツリー構造の作成の一例を示す説明図(2)である。
【
図9】製造工程のツリー構造の作成の一例を示す説明図(3)である。
【
図10A】不適合の発生確率、損失コスト、コストインパクトを含む不適合情報の一例を示す説明図(1)である。
【
図10B】不適合の発生確率、損失コスト、コストインパクトを含む不適合情報の一例を示す説明図(2)である。
【
図10C】不適合の発生確率、損失コスト、コストインパクトを含む不適合情報の一例を示す説明図(3)である。
【
図11】次回の製造工程候補表示時における製造工程の入力画面の一例を示す説明図である。
【
図12】次回の製造工程候補選択時における製造工程の入力画面の一例を示す説明図である。
【
図13】第2順列の製造工程を軸にして、作成される製造工程のツリー構造の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0013】
<工程設計支援装置の構成>
以下、
図1を参照して、本実施形態に係る工程設計支援装置10の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る工程設計支援装置10の構成図である。本実施形態にでは、工程設計支援装置10は、ユーザ(設計者)が操作するパーソナルコンピュータとして構成されているものとして説明する。しかしながら、工程設計支援装置10は、ネットワーク(図示せず)を介してユーザ(設計者)が操作するパーソナルコンピュータと通信可能に接続されるサーバによって構成することができる。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る工程設計支援装置10は、各種の演算を実行する演算部11と、各種のプログラムやデータを記憶する記憶部12と、データを表示する表示部13と、データを入力する入力部14と、を備える。
【0015】
工程設計支援装置10は、記憶部12に、制御プログラムPrが格納される。制御プログラムPrは、コンピュータを工程設計支援装置10として機能させるためのプログラムである。制御プログラムPrは、例えば、記憶媒体Mdに予め格納されており、記憶媒体Mdから工程設計支援装置10にインストールされる。又は、制御プログラムPrは、図示せぬ配信サーバに格納されており、図示せぬ通信回線を介して図示せぬ配信サーバから工程設計支援装置10にダウンロードされる。記憶媒体Mdは、例えば、USBメモリ等のメモリ部材、DVD等の光学媒体、ハードディスクやSSD(Solid State Drive)等の記憶装置、その他の形態となっている。
【0016】
工程設計支援装置10は、記憶部12に、制御プログラムPrが格納されることにより、演算部11に、製造情報蓄積部101と、製造工程入力部102と、ツリー構造生成部102Aと、不適合発生確率算出部103と、コストインパクト算出部104と、製造工程設計部105と、が構築される。また、記憶部12に、製造情報データベース106と、作業データベース110と、が構築される。
【0017】
製造情報蓄積部101は、過去の製造情報を含む、様々な製造情報を記憶部12の製造情報データベース106に蓄積する機能手段である。製造情報蓄積部101は、製品の製造工程や製造条件、製造した製品の不適合情報などの検査結果、製品の不適合に伴う損失コストなどの製品の製造情報を記憶部12の製造情報データベース106に蓄積する。
【0018】
製造工程入力部102は、任意の製造工程の入力を受け付ける機能手段である。製造工程入力部102は、新たな製造工程が設計される場合に、ユーザ(設計者)の操作により任意の製造工程の入力を受け付ける。
【0019】
ツリー構造生成部102Aは、記憶部12の製造情報データベース106に蓄積された過去の製造情報を基にしてツリー構造を作成する。ツリー構造生成部102Aは、作成したツリー構造を不適合発生確率算出部103に出力したり、記憶部12の製造情報データベース106に蓄積したりする。
【0020】
不適合発生確率算出部103は、不適合の発生確率を算出する機能手段である。不適合発生確率算出部103は、製造工程入力部102で入力された製造工程に対して、記憶部12の製造情報データベース106に蓄積された過去の製造情報を基にして作成されたツリー構造に基づいて不適合(不具合)の発生確率を算出する。その際に、不適合発生確率算出部103は、ツリー構造生成部102Aによって生成されたツリー構造に基づいて不適合(不具合)の発生確率を算出する。また、不適合発生確率算出部103は、ツリー構造生成部102Aもしくは図示せぬ手段によって過去の製造情報を基にして予め作成されて記憶部12の製造情報データベース106に蓄積されたツリー構造に基づいて不適合(不具合)の発生確率を算出することもできる。
【0021】
コストインパクト算出部104は、不適合の発生確率と損失コストからコストインパクト(コストに対する影響度)を算出する機能手段である。コストインパクト算出部104は、不適合発生確率算出部103で作成されたツリー構造に対して検査処理を行うことで1又は複数の製造工程案の損失コスト情報を取得する。そして、コストインパクト算出部104は、取得された損失コスト情報から各製造工程案の不適合の発生確率と損失コストを取得し、製造工程案毎に不適合の発生確率と損失コストとを掛け合わせることで、各製造工程案のコストインパクトを算出する。
【0022】
製造工程設計部105は、次回の製造工程を設計する機能手段である。製造工程設計部105は、コストインパクトが比較的小さい1又は複数の製造工程案を次回の製造工程候補として表示部13に選択可能に表示し、選択を受け付けて、次回の製造工程を設計する。具体的には、製造工程設計部105は、各製造工程案を次回の製造工程候補とし、算出したコストインパクトの小さい順に、製造工程入力部102で入力された製造工程に対応する次回の製造工程候補とコストインパクトを取得する。そして製造工程設計部105は、取得した次回の製造工程候補を製造工程入力画面に選択可能に表示し、ユーザ(設計者)の操作により選択を受け付けて、次回の製造工程を設計する。
【0023】
製造情報データベース106は、様々な製造情報を蓄積する記憶手段である。作業データベース110は、各部で得られたデータを蓄積する記憶手段である。
【0024】
図1に示す例では、製造情報データベース106には、製造工程データベース107と、製造装置データベース108と、検査結果データベース109と、が設けられている。
製造工程データベース107は、過去の製造工程情報を蓄積する。
製造装置データベース108は、過去の製造装置の製造条件を蓄積する。
検査結果データベース109は、過去の検査結果、損失コストを蓄積する。
【0025】
<工程設計支援装置の動作>
以下、
図2及び
図3を参照して、工程設計支援装置10の動作について説明する。
図2は、工程設計支援装置10の第1フェーズの処理手順を示すフローチャートである。
図3は、工程設計支援装置10の第2フェーズの処理手順を示すフローチャートである。
【0026】
本実施形態に係る工程設計支援装置10の処理は、大きく二つに分けられる。
一つ目の処理は、製品の製造工程や製造条件、製造した製品の不適合情報などの検査結果、製品の不適合に伴う損失コストなどの製品の製造情報を蓄積する処理(第1フェーズの処理)である。
二つ目の処理は、蓄積した過去の製造情報を用いて、新たな製造工程(次回の製造工程)を設計する処理(第2フェーズの処理)である。
【0027】
ここでは、機械構造物の製造工程設計を行うものとし、製造情報の蓄積(第1フェーズの処理)から、蓄積した過去の製造情報を用いて、新たな製造工程(次回の製造工程)の設計(第2フェーズの処理)までを説明する。
【0028】
まず、第1フェーズの処理について説明する。
図2に示すように、工程設計支援装置10は、製造情報蓄積部101により、第1フェーズの処理を行う(ステップS100)。第1フェーズの処理(ステップS100)は、主に、製造情報蓄積部101より、製品の製造工程や製造条件、製造した製品の不適合情報などの検査結果、製品の不適合に伴う損失コストなどの製品の製造情報を作業データベース110に蓄積する処理となる。
【0029】
第1フェーズの処理(ステップS100)では、まず、工程設計支援装置10の製造情報蓄積部101は、製品に関する製造工程情報や製造条件等の、製品の製造情報(
図4Aから
図4C参照)を、製造工程データベース107や製造装置データベース108から取得する(ステップS101)。
【0030】
図4A、
図4B、
図4Cは、それぞれ、製造情報の一例を示す説明図である。
図4Aから
図4Cには、一例として3種類の製品の製造情報が示されている。
図4Aに示す例では、製造情報D11aは、製造Noとして「24031」という情報と、製品名として「ケース」という情報と、材質として「AA2024」という情報を含み、製造工程として、焼鈍、圧延、圧延、切削、切削、研削、検査という順番の製造工程情報を含む内容になっている。また、
図4Bに示す例では、製造情報D11bは、製造Noとして「26021」という情報と、製品名として「軸」という情報と、材質として「SUS304」という情報を含み、製造工程として、焼鈍、圧延、切削、切削、切削、研削、検査という順番の製造工程情報を含む内容になっている。また、
図4Cに示す例では、製造情報D11cは、製造Noとして「28428」という情報と、製品名として「ディスク」という情報と、材質として「Ti16」という情報を含み、製造工程として、焼鈍、圧延、切削、検査という順番の製造工程情報を含む内容になっている。
【0031】
図4Aから
図4Cに示すように、各製造情報D11a,D11b,D11cの製造工程には、製造条件が関連付けされる。例えば、
図4Bに示す製造情報D11bでは、1番目の製造工程である「焼鈍」の製造条件として、「BBB℃、B時間(h))」が関連付けされ、3番目の製造工程である「切削」の製造条件として、切削時間X時間(h)が関連付けされている。
【0032】
図2に戻り、ステップS101の後、製造情報蓄積部101は、ステップS101で取得された製品の製造情報の製造工程情報及び製造条件に関連した製品の不適合情報(
図5参照)などの検査結果、製品の不適合に伴う損失コストの情報を、検査結果データベース109から取得する(ステップS102)。
【0033】
図5は、不適合情報の一例を示す説明図である。
図5に示す不適合情報Nd11は、検査処理で不適合と判定された事象の発生モードと不適合に伴う損失コストの対応関係を示している。
図5に示す例では、不適合情報Nd11は、製造Noを表す製造No欄と、不適合種類欄No11を表す不適合種類欄と、損失コスト欄Lc11を表す損失コスト欄と、を含む構成になっている。不適合情報Nd11は、第1行目の製品の製造No「23662」において、検査処理で不適合と判定された事象の発生モードとして「割れ」が発生し、そのときの損失コストとして「###¥」が発生している。また、不適合情報Nd11は、第2行目の製品の製造No「23662」において、さらに発生モードとして「欠損」が発生し、そのときの損失コスト「###¥」が発生している。
【0034】
図2に戻り、ステップS102の後、製造情報蓄積部101は、ステップS101,S102で取得された製造情報や不適合情報を、製造Noを通じて関連付けて作業データベース110に入力する(ステップS103)。
【0035】
なお、過去の製造情報は、製造工程データベース107、製造装置データベース108、検査結果データベース109、作業データベース110に予め蓄積されているものとする。
以上が第1フェーズの処理である。
【0036】
次に第2フェーズの処理について説明する。
図3に示すように、工程設計支援装置10は、製造工程入力部102と不適合発生確率算出部103とコストインパクト算出部104と製造工程設計部105により、第2フェーズの処理を行う(ステップS200)。第2フェーズの処理(ステップS200)は、主に、製造工程入力部102により、新規に製造工程を設計するための任意の製造工程の入力を受け付け、不適合発生確率算出部103により、入力された製造工程の不適合の発生確率を算出し、コストインパクト算出部104により、入力された製造工程のコストインパクトを算出し、製造工程設計部105により、入力された製造工程の次工程の候補と、そのコストインパクトを出力し、製造工程設計部105により、次工程の候補を表示して、選択しながら製造工程設計し、設計した製造工程情報を作業データベース110に入力する処理となる。
【0037】
第2フェーズの処理(ステップS200)では、まず、工程設計支援装置10の製造工程入力部102は、作業データベース110から第1フェーズの処理(
図2のステップS100)で取得した過去の全ての製造情報を取得する(ステップS201)。
【0038】
ステップS201の後、製造工程入力部102は、ユーザ(設計者)の操作により新規に製造工程を設計するための入力画面(
図6参照)を表示部13に表示し(ステップS202)、任意の製造工程の入力を受け付ける。
【0039】
図6は、製造工程の最初の入力画面Im11の一例を示す説明図である。
図6に示す例では、入力画面Im11は、製造Noを表す製造No欄と、製品名を表す製品名欄と、材質を表す材質欄と、ユーザ(設計者)の操作により選択された製造工程を表す選択工程表示欄Spと、次回の製造工程候補を表す工程候補表示欄Cpと、処理の決定ボタンと、処理の取消しボタンと、を含む構成になっている。
図6に示す例では、製品の製造Noとして「24813」という情報と、製品名として「フランジ」という情報と、材質として「SUS304」という情報とが入力画面Im11に入力されている。なお、入力画面Im11は、製造工程設計の最初の入力画面であるため、選択工程表示欄Spと工程候補表示欄Cpとが空白状態になっている。つまり、工程候補表示欄Cpにはまだ次回の製造工程候補が表示されていない状態になっており、また、選択工程表示欄Spにはまだ製造工程が入力されていない状態になっている。
【0040】
図3に戻り、ステップS202の後、不適合発生確率算出部103は、次回の製造工程の不適合の発生確率を算出する(ステップS203)。ここでは、ステップS202で入力された製品名「フランジ」と材質「SUS304」の製品が不適合の発生確率の算出の対象であるものとして説明する。
【0041】
不適合発生確率算出部103は、不適合の発生確率の算出のために、製品名「フランジ」と材質「SUS304」の製品に関する製造情報を取得する。ここでは、初回の製造情報を取得時において、ユーザ(設計者)が工程候補表示欄Cp(
図6参照)に製造工程を入力していない場合を想定して説明する。
【0042】
この場合に、まず、不適合発生確率算出部103は、作業データベース110から、製品名「フランジ」と材質「SUS304」の製品のメイン部分となる製造情報(
図7参照)を取得する。
【0043】
図7は、製造工程のツリー構造の作成の一例を示す説明図である。
図7に示す例では、取得対象である製品名「フランジ」と材質「SUS304」の製品のメイン部分となる製造情報(基本となる製造情報)である製造工程のツリー構造Tr11を示している。
図7に示す例では、ツリー構造Tr11は、第1順列の製造工程が「焼鈍」となっており、第1順列の製造条件が「AAA℃,Ah」となっており、第2順列の製造工程が「圧延」となっており、第2順列の製造条件が「圧延率X1%」となっており、同様に第3順列から第8順列までの製造工程と製造条件とを含む構成になっている。
【0044】
不適合発生確率算出部103は、製品名「フランジ」と材質「SUS304」の製品の製造工程のツリー構造Tr11(
図7参照)において、まず、第1順列の製造工程の製造情報を取得し、さらに、第2順列以降の製造工程の製造情報を取得する。ここで、「第1順列の製造工程」は、1番目(先頭)の製造工程を意味している。また、「第2順列以降の製造工程」は、2番目以降の製造工程を意味している。
【0045】
次に、不適合発生確率算出部103は、メイン部分となる製造情報であるツリー構造Tr11(
図7参照)に付加する他系統の製造情報が作業データベース110に記憶されている場合に、作業データベース110から他系統の製造情報を取得する。ここでは、ツリー構造Tr11(
図7参照)の第1順列の製造工程「焼鈍」と第1順列の製造条件「AAA℃,Ah」に一致するツリー構造Tr12a,Tr13a(
図8及び
図9参照)を、他系統の製造情報として取得する場合を想定して説明する。
【0046】
図88及び
図9は、製造工程のツリー構造の作成の一例を示す説明図である。
図88及び
図9は、他系統の製造情報を取得したときに作成されるツリー構造Tr12,Tr13を示している。
【0047】
図8に示す例では、ツリー構造Tr12は、
図7に示すツリー構造Tr11に、ツリー構造Tr12aが付加された構成になっている。ツリー構造Tr12aは、製品名「フランジ」と材質「SUS304」の製品に関する製造情報であり、第1順列の製造工程「焼鈍」と第1順列の製造条件「AAA℃,Ah」に一致しており、ツリー構造Tr11とは異なる製造工程を含んでいる。
【0048】
不適合発生確率算出部103は、ツリー構造Tr11の第1順列の製造工程「焼鈍」と第1順列の製造条件「AAA℃,Ah」に一致する他系統の製造情報であるツリー構造Tr12aにおいて、作業データベース110から、まず、第1順列の製造工程の製造情報を取得し、さらに、第2順列以降の製造工程の製造情報を取得する。
【0049】
次に、不適合発生確率算出部103は、第1順列の製造工程を軸にして、取得した他系統の製造情報であるツリー構造Tr12a(
図8参照)の製造工程の製造情報と製造条件を、メイン部分となるツリー構造Tr11(
図7参照)の製造工程の製造情報と製造条件に重ね合わせてツリー構造Tr12(
図8参照)を作成する。ツリー構造Tr12a(
図8参照)は、ツリー構造Tr11(
図7参照)に対する付加部分となるツリーである。
【0050】
図8に示す例では、ツリー構造Tr12aは、第1順列と第2順列の製造工程の製造情報と製造条件でツリー構造Tr11と一致し、第3順列以降の製造工程の製造情報と製造条件でツリー構造Tr11と異なる内容になっている。ツリー構造Tr12aは、第1順列の製造工程が軸となり、第1順列と第2順列の製造工程がツリー構造Tr11に統合され、第3順列から第6順列までの製造工程がツリー構造Tr11から分岐した構成になっている。
【0051】
図9に示す例では、ツリー構造Tr13は、
図8に示すツリー構造Tr12に、さらにツリー構造Tr13aが付加された構成になっている。ツリー構造Tr13aは、製品名「フランジ」と材質「SUS304」の製品に関する製造情報であり、第1順列の製造工程「焼鈍」と第1順列の製造条件「AAA℃,Ah」に一致しており、ツリー構造Tr11及びツリー構造Tr12とは異なる製造工程を含んでいる。
【0052】
不適合発生確率算出部103は、ツリー構造Tr11の第1順列の製造工程「焼鈍」と第1順列の製造条件「AAA℃,Ah」に一致する他系統の製造情報であるツリー構造Tr13aにおいて、作業データベース110から、まず、第1順列の製造工程の製造情報を取得し、さらに、第2順列以降の製造工程の製造情報を取得する。
【0053】
次に、不適合発生確率算出部103は、第1順列の製造工程を軸にして、取得した他系統の製造情報であるツリー構造Tr13a(
図9参照)の製造工程の製造情報と製造条件を、ツリー構造Tr11(
図8参照)の製造工程の製造情報と製造条件に重ね合わせてツリー構造Tr13(
図9参照)を作成する。ツリー構造Tr13a(
図9参照)は、ツリー構造Tr11(
図8参照)に対する付加部分となるツリーである。
【0054】
図9に示す例では、第1順列の製造工程の製造情報と製造条件でツリー構造Tr11と一致し、第2順列以降の製造工程の製造情報と製造条件でツリー構造Tr11と異なる内容になっている。ツリー構造Tr13aは、第1順列の製造工程が軸となり、第1順列の製造工程がツリー構造Tr11に統合され、第2順列から第5順列までの製造工程がツリー構造Tr11から分岐した構成になっている。
【0055】
不適合発生確率算出部103は、第1順列の製造工程に一致する全ての製造情報を取得する。そして、不適合発生確率算出部103は、第1順列の製造工程を軸にして、メイン部分となるツリー構造Tr11と付加部分となるツリー構造(
図9に示す例では、ツリー構造Tr12a,Tr13a)とを重ね合わせることで最終的なツリー構造(
図9に示す例では、ツリー構造Tr13)を作成する。
【0056】
作成された最終的なツリー構造(
図9に示す例では、ツリー構造Tr13)の最終順列には、製造工程の不適合の発生確率を算出するための検査処理が設定されている。不適合発生確率算出部103は、ツリー構造Tr13を作成すると、製造工程の不適合の発生確率を算出する。このとき、同じ製造工程や製造条件であっても製造Noが異なる複数の製品が存在するため、不適合発生確率算出部103は、ツリー構造Tr13の最終順列の検査処理において、不適合の発生確率を算出する。
図9に示す例では、不適合発生確率算出部103は、ツリー構造Tr13に含まれるツリー構造Tr11,Tr12a,Tr13aのそれぞれで、不適合の発生確率を算出し、不適合情報Nd21,Nd22,Nd23(
図10Aから
図10C参照)を作成し、作成した不適合情報Nd21,Nd22,Nd23を作業データベース110に記憶する。
【0057】
図10Aから
図10Cは、不適合の発生確率、損失コスト、コストインパクトを含む不適合情報Nd21,Nd22,Nd23の一例を示す例を示す説明図である。ここでは、
図10Aに示す不適合情報Nd21は、
図9のツリー構造Tr13におけるツリー構造T11の製造情報に対応する情報であるものとして説明する。また、
図10Bに示す不適合情報Nd22は、
図9のツリー構造Tr13におけるツリー構造T12aの製造情報に対応する情報であるものとして説明する。また、
図10Cに示す不適合情報Nd23は、
図9のツリー構造Tr13におけるツリー構造T13aの製造情報に対応する情報であるものとして説明する。
【0058】
図10Aから
図10Cに示す例では、不適合情報Nd21,Nd22,Nd23は、列方向に、不適合(不具合)の発生モードを表す不適合種類欄No11と、損失コストを表す損失コスト欄Lc11とを含む構成になっている。また、不適合情報Nd21,Nd22,Nd23は、行方向に、発生確率を表す発生確率欄Op11と、平均損失コストを表す平均損失コスト欄Alc11と、コストインパクトを表すコストインパクト欄Ci11とを含む構成になっている。不適合発生確率算出部103は、発生回数と製造Noの数から発生確率を算出する。例えば、
図10Aに示す不適合情報Nd21において、発生モード「カジリ」を例にすると、発生回数は2回であるので、発生確率は「A%」となっている。
【0059】
図3に戻り、ステップS203の後、コストインパクト算出部104は、次回の製造工程案のコストインパクトを算出する(ステップS204)。コストインパクトは、全工程のコストに占める該当工程のコストの割合を表している。コストインパクトは、値が小さいものが成績の良いものであり、値が大きいものが成績の悪いものである。
【0060】
ステップS204において、まず、コストインパクト算出部104は、ステップS203で取得した製造情報を元に、各発生モードの平均損失コストを算出する。例えば、
図10Aに示す不適合情報Nd21において、発生モード「カジリ」を例にすると、カジリが発生している製造No「32456」と「21222」の損失コストから、それらの平均である平均損失コストを算出する。
図10Aに示す不適合情報Nd21では、平均損失コストが「X1¥」となっている。
【0061】
なお、コストインパクトは、以下の式(1)により算出する。
コストインパクト=(発生確率×平均損失コスト) ……(1)
【0062】
例えば、
図10Aに示す不適合情報Nd21において、発生モード「カジリ」を例にすると、カジリのコストインパクト(CP)は、「発生確率A%×平均損失コストX1¥」から、平均損失コストとして「Y1¥」を算出している。コストインパクト算出部104は、全てのツリーにおいてコストインパクトを算出し、
図10Aから
図10Cに示す不適合情報Nd21,Nd22,Nd23を作成し、作業データベース110に記憶する。
【0063】
図3に戻り、ステップS204の後、製造工程設計部105は、作業データベース110から不適合情報Nd21,Nd22,Nd23を取得し、次回の製造工程候補となる1乃至複数の製造工程案と、そのコストインパクトを取得する(ステップS205)。このとき、製造工程設計部105は、全てのツリーにおいてコストインパクトを取得し、コストインパクトの小さい順にツリーを並べる。次回の製造工程候補は、コストインパクトが最小となるツリーとなる。
【0064】
ステップS205の後、製造工程設計部105は、ステップS205で取得した1又は複数の製造工程案を次回の製造工程候補として表示部13に表示し(
図11参照)、ユーザ(設計者)の操作による選択を受け付けて、次回の製造工程を設計する(ステップS206)。
【0065】
図11は、次回の製造工程候補表示時における製造工程の入力画面Im21の一例を示す説明図である。
図11に示す入力画面Im21は、
図6に示す入力画面Im11と同様の構成になっている。
図11に示す例では、入力画面Im21は、工程候補表示欄Cpに工程候補Cp21が表示された構成になっている。工程候補Cp21は、次回の製造工程候補である。工程候補Cp21は、ステップS205で取得した製造工程や製造条件とコストインパクトを含んでいる。
【0066】
ユーザ(設計者)は、入力部14を操作して、工程候補表示欄Cpに表示された工程候補Cp21の中から任意の製造工程を次回の製造工程候補として選択する。ユーザ(設計者)は、次回の製造工程候補を選択したら、選択した次回の製造工程候補(選択工程Sp22(
図12参照))を選択工程表示欄Spにドラッグ&ドロップなどをすることにより入力する。工程設計支援装置10は、ユーザ(設計者)が決定ボタン(
図12参照))を押下するまで(すなわち、ステップS206aにおいてOKか否かを判定し、OK(“Yes”)と判定されるまで)、
図3に示すステップS203からステップS206の処理を繰り返し行う。
【0067】
図12は、次回の製造工程候補選択時における製造工程の入力画面Im22の一例を示す説明図である。
図12に示す入力画面Im22は、
図6及び
図11に示す入力画面Im11,In21と同様の構成になっている。
図12に示す例では、入力画面Im22は、選択工程表示欄Spに選択工程Sp22が入力された状態になっている。
図12に示す例では、ユーザ(設計者)は、第1順列の「焼鈍」から第2順列の「圧延」までの製造工程を設計した状態になっている。選択工程表示欄Spに入力された選択工程Sp22に含まれる「IC」は、選択工程Sp22(
図12に示す例では、第1順列の「焼鈍」と第2順列の「圧延」)のコストインパクトの合計値である。
図12に示す例では、工程候補表示欄Cpに、第3順列以降の製造工程候補が表示されている。第3順列以降の製造工程候補のコストインパクトの合計値は、第3順列以降の製造工程候補が選択工程表示欄Spに入力されたときに、工程設計支援装置10が
図3に示すステップS203からステップS206の処理を行うことで計算される。
【0068】
工程設計支援装置10は、
図3に示すステップS203からステップS206の処理を行うことにより、第3順列以降の製造工程候補について、
図13に示す製造工程のツリー構造Tr21を作成する。
図13は、第2順列の製造工程を軸にして、作成される製造工程のツリー構造Tr21の一例を示す説明図である。
【0069】
図13に示す例では、工程設計支援装置10は、製品名「フランジ」と材質「SUS304」の製品について、第2順列の製造工程が「圧延」となっており、第2順列の製造条件が「圧延率X%」となって他系統の製造工程の製造情報と製造条件を取得する。そして、工程設計支援装置10は、第2順列の製造工程を軸にして、取得した他系統の製造工程の製造情報と製造条件を、メイン部分となる製造工程の製造情報と製造条件に重ね合わせて次回の製造工程候補のツリー構造を作成する。
図13に示す例では、第2順列の製造工程が「圧延」となっており、第2順列の製造条件が「圧延率X%」となっている製造情報は1つだけである。したがって、重ね合わせ処理の軸となる第2順列の製造工程は、1つだけである。
【0070】
図3に示すステップS204において、工程設計支援装置10は、
図13に示す工程の重ね合わせたツリーに対して、不適合発生確率算出部103により、所定の第1検査処理から第N検査処理までに発生した不適合情報に基づいて不適合の発生確率を算出する。
【0071】
ステップS204の後、
図3に示すステップS205において、工程設計支援装置10は、入力された第2順列の製造工程案を次回の製造工程候補とし、製造工程設計部105により、作業データベース110から、次回の製造工程候補となる1乃至複数の製造工程案とそのコストインパクトを取得する。
【0072】
ステップS205の後、
図3に示すステップS206において、工程設計支援装置10は、ステップS205で取得した1又は複数の第3順列の製造工程案(
図13の点線で囲まれた部分の製造工程案)を次回の製造工程候補として表示部13に表示し(
図11参照)、ユーザ(設計者)の操作による選択を受け付ける。
【0073】
図3に戻り、ステップS206aにおいてOK(“Yes”)と判定された場合(すなわち、ユーザ(設計者)が決定ボタン(
図12参照))を押下した場合)に、設計した製造工程情報を作業データベース110に入力する(ステップS207)。これにより、工程設計支援装置10は、一連のルーチンの処理を終了する。
【0074】
<工程設計支援装置の主な特徴>
(1)
図1に示すように、本実施形態に係る工程設計支援装置10は、製造情報蓄積部101と、不適合発生確率算出部103と、コストインパクト算出部104と、製造工程設計部105と、を備える。製造情報蓄積部101は、過去の製造情報を記憶部12に蓄積する。不適合発生確率算出部103は、蓄積された過去の製造情報を基にして作成されたツリー構造に基づいて不適合の発生確率を算出する。なお、蓄積された過去の製造情報を基にして作成されたツリー構造とは、直前にツリー構造生成部102Aによって生成されたツリー構造と、事前にツリー構造生成部102Aもしくは図示せぬ手段によって作成されて記憶部12の製造情報データベース106に蓄積されたツリー構造の双方を意味する。コストインパクト算出部104は、不適合の発生確率と損失コストからコストインパクトを算出する。製造工程設計部105は、コストインパクトが比較的小さい1又は複数の製造工程案を次回の製造工程候補として表示部に選択可能に表示し、選択を受け付けて、次回の製造工程を設計する。
【0075】
このような本実施形態に係る工程設計支援装置10は、過去の製造情報を基にして作成されたツリー構造に基づいて不適合の発生確率を算出する。そして、本実施形態に係る工程設計支援装置10は、発生確率と損失コストからコストインパクトを算出し、コストインパクトが比較的小さい1又は複数の製造工程案を次回の製造工程候補として表示部に選択可能に表示することで、次回の製造工程候補の選択を受け付けて製造工程の設計を行う。このような本実施形態に係る工程設計支援装置10は、高品質な製品を製造するための製造工程や製造条件を短時間で適切に設計(設定)することができる。そのため、高品質な製品を容易かつ短時間に製造することができる。また、本実施形態に係る工程設計支援装置10は、製造工程の設計前の段階であっても、製造工程や製造条件の良し悪しについて考慮されたツリー構造をユーザ(設計者)に提示することができる。そのため、ユーザ(設計者)は、発生する可能性のある不適合(不具合)について容易に対策を行うことができる。
【0076】
(2)本実施形態に係る工程設計支援装置10において、製造工程設計部105は、コストインパクトの小さい順に、次回の製造工程候補を並べて表示する構成であるとよい。
【0077】
このような本実施形態に係る工程設計支援装置10は、コストインパクトの小さい順に、次回の製造工程候補を並べて表示するため、ユーザ(設計者)に対して最も成績の良い候補から順番に選択し易く誘導することができる。
【0078】
(3)本実施形態に係る工程設計支援装置10において、さらに、任意の製造工程を入力する製造工程入力部102を備え、不適合発生確率算出部103は、製造工程入力部102部で入力された入力製造工程に対して、不適合の発生確率を算出する構成であるとよい。
【0079】
このような本実施形態に係る工程設計支援装置10は、製造工程入力部102部で入力された入力製造工程に対して、不適合の発生確率を対応付けることができる。このような本実施形態に係る工程設計支援装置10は、製造工程の設計前の段階であっても、製造工程や製造条件の良し悪しについて考慮されたツリー構造をユーザ(設計者)に提示することができる。そのため、ユーザ(設計者)は、発生する可能性のある不適合(不具合)について容易に対策を行うことができる。
【0080】
(4)本実施形態に係る工程設計支援装置10において、製造工程設計部105は、製造工程入力部102部で入力された入力製造工程に対して、コストインパクトの小さい順に、次回の製造工程候補を並べて表示する構成であるとよい。
【0081】
このような本実施形態に係る工程設計支援装置10は、コストインパクトの小さい順に、次回の製造工程候補を並べて表示するため、ユーザ(設計者)に対して最も成績の良い候補から順番に選択し易く誘導することができる。
【0082】
(5)本実施形態に係る工程設計支援装置10において、不適合発生確率算出部103は、製造工程入力部102部で入力された入力製造工程に対して、過去の製造情報に含まれる製造工程と入力製造工程とを重ね合わせることで、製造工程のツリー構造を作成し、作成されたツリー構造から得られる不適合情報により不適合の発生確率を算出する構成であるとよい。また、コストインパクト算出部104は、不適合の発生確率と平均損失コストとを掛け合わせることによりコストインパクトを算出する構成であるとよい。
【0083】
このような本実施形態に係る工程設計支援装置10は、不適合の発生確率と平均損失コストとを掛け合わせることによりコストインパクトを算出することができる。
【0084】
(6)
図3に示すように、本実施形態に係る工程設計支援方法は、蓄積された過去の製造情報を基にして作成されたツリー構造に基づいて不適合の発生確率を算出する不適合発生確率算出工程(ステップS203)と、不適合の発生確率と損失コストからコストインパクトを算出するコストインパクト算出工程(ステップS204)と、コストインパクトが比較的小さい1又は複数の製造工程案を次回の製造工程候補として表示部に選択可能に表示し、選択を受け付けて、次回の製造工程を設計する製造工程設計工程(ステップS206)と、を含むとよい。
【0085】
このような本実施形態に係る工程設計支援方法は、高品質な製品を製造するための製造工程や製造条件を短時間で適切に設計(設定)することができる。そのため、高品質な製品を容易かつ短時間に製造することができる。また、本実施形態に係る工程設計支援方法は、製造工程の設計前の段階であっても、製造工程や製造条件の良し悪しについて考慮されたツリー構造をユーザ(設計者)に提示することができる。そのため、ユーザ(設計者)は、発生する可能性のある不適合(不具合)について容易に対策を行うことができる。
【0086】
(7)
図1に示すように、本実施形態に係る制御プログラムPrは、過去の製造情報を記憶部12に蓄積する製造情報蓄積部101を備えるコンピュータを、蓄積された過去の製造情報を基にして作成されたツリー構造に基づいて不適合の発生確率を算出する不適合発生確率算出部103と、不適合の発生確率と損失コストからコストインパクトを算出するコストインパクト算出部104と、コストインパクトが比較的小さい1又は複数の製造工程案を次回の製造工程候補として表示部に選択可能に表示し、選択を受け付けて、次回の製造工程を設計する製造工程設計部105として機能させるプログラムであるとよい。
【0087】
このような本実施形態に係る制御プログラムPrは、本実施形態に係る工程設計支援装置10を実現することができる。
【0088】
以上の通り、本実施形態に係る工程設計支援装置10によれば、高品質な製品を製造するための製造工程を短時間で設計することができる。
【0089】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0090】
例えば、
図1に示す各構成要素は、専用に設計された集積回路で構成することによりハードウェアで実現するようにしてもよい。
【0091】
また、例えば、前記した実施形態では、工程設計支援装置10は、ユーザ(設計者)が操作するパーソナルコンピュータとして構成されている。しかしながら、工程設計支援装置10は、ネットワーク(図示せず)を介してユーザ(設計者)が操作するパーソナルコンピュータと通信可能に接続されるサーバによって構成することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 工程設計支援装置(コンピュータ)
11 演算部
12 記憶部
13 表示部
14 入力部
101 製造情報蓄積部
102 製造工程入力部
102A ツリー構造生成部
103 不適合発生確率算出部
104 コストインパクト算出部
105 製造工程設計部
106 製造情報データベース
107 製造工程データベース
108 製造装置データベース
109 検査結果データベース
110 作業データベース
ALc11 平均損失コスト欄
Ci11 コストインパクト欄
Cp 工程候補表示欄
Cp21 工程候補
D11a,D11b,D11c 製造情報
Im11,Im21,Im22 入力画面
Lc11 損失コスト欄
Md 記憶媒体
Nd11,Nd21,Nd22,Nd23 不適合情報
No11 不適合種類欄
Op11 発生確率欄
Pr 制御プログラム(プログラム)
Sp 選択工程表示欄
Sp22 選択工程
Tr11 ツリー構造(メイン部分となるツリー構造)
Tr12,Tr13,Tr21 ツリー構造
Tr12a,Tr13a ツリー構造(付加部分となるツリー構造)