(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157414
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】セルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法および成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 9/06 20060101AFI20241030BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20241030BHJP
B29B 15/08 20060101ALI20241030BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20241030BHJP
B29K 105/12 20060101ALN20241030BHJP
B29K 1/00 20060101ALN20241030BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
B29B9/06
C08J3/20 Z CEP
B29B15/08
B29C45/00
B29K105:12
B29K1:00
B29K23:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071767
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敬子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 みづき
(72)【発明者】
【氏名】梶田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】山口 彩樹子
【テーマコード(参考)】
4F070
4F072
4F201
4F206
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AA13
4F070AA15
4F070AB11
4F070FA05
4F070FA06
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4F072AA02
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4F072AH23
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4F072AL16
4F201AA01
4F201AA04
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4F201AG14
4F201AR01
4F201AR09
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4F201BC01
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4F201BC37
4F201BD04
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4F201BL37
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4F206AH31
4F206AH33
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4F206AR12
4F206AR15
4F206JA03
4F206JA04
4F206JA07
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】より生産性に優れたセルロース繊維含有樹脂ペレット製造方法であって、該ペレットから曲げに対する剛性および耐衝撃性に優れた成形体が得られるセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法、並びに該ペレットを成形して得られる成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】セルロース繊維含有樹脂シートをスクリュー型混練機で溶融混練し、セルロース繊維含有樹脂ペレットを製造する方法であって、スクリュー型混練機の投入口面積に対するセルロース繊維含有樹脂シートの断面積の割合(セルロース繊維含有樹脂シートの断面積/スクリュー型混練機の投入口面積)が0.065以下である、セルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維含有樹脂シートをスクリュー型混練機で溶融混練し、セルロース繊維含有樹脂ペレットを製造する方法であって、
スクリュー型混練機の投入口面積に対するセルロース繊維含有樹脂シートの断面積の割合(セルロース繊維含有樹脂シートの断面積/スクリュー型混練機の投入口面積)が0.065以下である、
セルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
スクリュー型混練機のスクリュー径(mm)に対するセルロース繊維含有樹脂シートの断面積(cm2)の割合(セルロース繊維含有樹脂シートの断面積(cm2)/スクリュー径(mm))が0.100以下である、請求項1に記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
【請求項3】
スクリュー型混練機のスクリューの周速度(m/min)に対する吐出速度(kg/h)の比(吐出速度/周速度)が0.50以上である、請求項1に記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
【請求項4】
セルロース繊維含有樹脂ペレット中のセルロース繊維の含有量が10質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
【請求項5】
セルロース繊維含有樹脂シートが以下の工程1および工程2を含む製造方法によって製造される、請求項1に記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
工程1:セルロース繊維および樹脂Aを含有する繊維集合体を乾式抄紙にて製造する繊維集合体製造工程
工程2:前記繊維集合体を圧縮してセルロース繊維含有樹脂シートを製造するセルロース繊維含有樹脂シート製造工程
【請求項6】
前記樹脂Aが樹脂繊維を含む、請求項5に記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
【請求項7】
セルロース繊維含有樹脂シートの第1の方向の引張強度をTとし、第1の方向と直交する方向である第2の方向の引張強度をYとしたとき、T/Yが0.5以上1.5以下である、請求項1に記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
【請求項8】
セルロース繊維含有樹脂シートの嵩比重が0.10g/mL以上0.60g/mL以下である、請求項1に記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法によりセルロース繊維含有樹脂ペレットを製造する工程、および
前記セルロース繊維含有樹脂ペレットを成形する工程を有する、
成形体の製造方法。
【請求項10】
前記成形する工程が、セルロース繊維含有樹脂ペレットを射出成形する工程である、請求項9に記載の成形体の製造方法。
【請求項11】
得られる成形体の密度が0.8g/cm3以上1.5g/cm3以下である、請求項9に記載の成形体の製造方法。
【請求項12】
得られる成形体の厚みが2mm以上である、請求項9に記載の成形体の製造方法。
【請求項13】
得られる成形体のJIS K 7171:2016に準拠して測定した曲げ弾性率が1.5GPa以上である、請求項9に記載の成形体の製造方法。
【請求項14】
得られる成形体のJIS K 7111-1:2012に準拠して測定したシャルピー衝撃強度が2.0kJ/m2以上である、請求項9に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法および該ペレットを使用した成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含む不織布(繊維強化プラスチック成形体用シートともいう)から成形された繊維強化プラスチック成形体は、既にスポーツ、レジャー用品、航空機用材料、電子機器部材など様々な分野で用いられている。繊維強化プラスチック成形体においてマトリックスとなる樹脂には、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が用いられているが、近年は熱可塑性樹脂を用いた繊維強化プラスチック成形体の開発が進められている。
【0003】
強化繊維には、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等が用いられている。このような強化繊維は、繊維強化プラスチック成形体の強度を高める働きをする。このような成形加工品を廃棄する場合には、埋立処分したり、焼却処分することが行われているが、上記のような強化繊維を使用した成形加工品は埋め立て後の生分解性が低く、焼却処理時には焼却炉等にかかる負荷が大きいという問題がある。
【0004】
このため、近年は、強化繊維としてパルプ繊維を用いることが提案されている(例えば、特許文献1~3)。特許文献1および2では、パルプ繊維と熱可塑性樹脂を含むスラリーを抄紙し、成形した抄造成形中間品を加熱加圧成形することで成形品を得ている。特許文献3では、パルプ繊維と熱可塑性樹脂を含むスラリーからペレットを形成し、このペレットを射出成形することにより成形品を製造することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-322699号公報
【特許文献2】特開平6-346399号公報
【特許文献3】特開平6-345944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より生産性に優れたセルロース繊維含有樹脂ペレット製造方法であって、該ペレットから曲げに対する剛性および耐衝撃性に優れた成形体が得られるセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法、並びに該ペレットを成形して得られる成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、セルロース繊維含有樹脂シートをスクリュー型混練機で溶融混練して、セルロース繊維含有樹脂ペレットを製造する工程を有するセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法において、スクリュー型混練機の投入口面積に対するセルロース繊維含有シートの断面積の割合を特定の値以下とすることにより、生産性に優れると共に、得られたセルロース繊維含有樹脂ペレットから曲げに対する剛性および耐衝撃性に優れる成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の<1>~<14>に関する。
<1> セルロース繊維含有樹脂シートをスクリュー型混練機で溶融混練し、セルロース繊維含有樹脂ペレットを製造する方法であって、スクリュー型混練機の投入口面積に対するセルロース繊維含有樹脂シートの断面積の割合(セルロース繊維含有樹脂シートの断面積/スクリュー型混練機の投入口面積)が0.065以下である、セルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
<2> スクリュー型混練機のスクリュー径(mm)に対するセルロース繊維含有樹脂シートの断面積(cm2)の割合(セルロース繊維含有樹脂シートの断面積(cm2)/スクリュー径(mm))が0.100以下である、<1>に記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
<3> スクリュー型混練機のスクリューの周速度(m/min)に対する吐出速度(kg/h)の比(吐出速度/周速度)が0.50以上である、<1>または<2>に記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
<4> セルロース繊維含有樹脂ペレット中のセルロース繊維の含有量が10質量%以上90質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
<5> セルロース繊維含有樹脂シートが以下の工程1および工程2を含む製造方法によって製造される、<1>~<4>のいずれか1つに記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
工程1:セルロース繊維および樹脂Aを含有する繊維集合体を乾式抄紙にて製造する繊維集合体製造工程
工程2:前記繊維集合体を圧縮してセルロース繊維含有樹脂シートを製造するセルロース繊維含有樹脂シート製造工程
<6> 前記樹脂Aが樹脂繊維を含む、<5>に記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
<7> セルロース繊維含有樹脂シートの第1の方向の引張強度をTとし、第1の方向と直交する方向である第2の方向の引張強度をYとしたとき、T/Yが0.5以上1.5以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
<8> セルロース繊維含有樹脂シートの嵩比重が0.10g/mL以上0.60g/mL以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の方法によりセルロース繊維含有樹脂ペレットを製造する工程、および前記セルロース繊維含有樹脂ペレットを成形する工程を有する、成形体の製造方法。
<10> 前記成形する工程が、セルロース繊維含有樹脂ペレットを射出成形する工程である、<9>に記載の成形体の製造方法。
<11> 得られる成形体の密度が0.8g/cm3以上1.5g/cm3以下である、<9>または<10>に記載の成形体の製造方法。
<12> 得られる成形体の厚みが2mm以上である、<9>~<11>のいずれか1つに記載の成形体の製造方法。
<13> 得られる成形体のJIS K 7171:2016に準拠して測定した曲げ弾性率が1.5GPa以上である、<9>~<12>のいずれか1つに記載の成形体の製造方法。
<14> 得られる成形体のJIS K 7111-1:2012に準拠して測定したシャルピー衝撃強度が2.0kJ/m2以上である、<9>~<13>のいずれか1つに記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より生産性に優れたセルロース繊維含有樹脂ペレット製造方法であって、該ペレットから曲げに対する剛性および耐衝撃性に優れた成形体が得られるセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法、並びに該ペレットを成形して得られる成形体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例で用いたウェブ形成装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[セルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法]
本実施形態のセルロース繊維含有樹脂ペレット(以下、単に「ペレット」ともいう)の製造方法は、セルロース繊維含有樹脂シート(以下、単に「シート」ともいう)をスクリュー型混練機で溶融混練し、セルロース繊維含有樹脂ペレットを製造する方法であって、スクリュー型混練機の投入口面積に対するセルロース繊維含有樹脂シートの断面積の割合(セルロース繊維含有樹脂シートの断面積/スクリュー型混練機の投入口面積)が0.065以下である。
本発明の製造方法は、従来の方法に比べ、より生産性に優れる。さらに、該ペレットから得られた成形体は、曲げに対する剛性および耐衝撃性に優れる。
【0011】
上記の効果が得られる詳細な機構であるが、一部は以下のように考えられる。
溶融混練工程において、セルロース繊維および樹脂成分を供給して溶融混練する場合には、セルロース繊維が親水的であるのに対して、一般的に樹脂成分は疎水的であることから、セルロース繊維の凝集が生じ、セルロース繊維の樹脂成分中での分散性が良好ではない。また、高いせん断力を与える必要があるため、セルロース繊維の切断が生じたり、微細繊維が生じたりする。このようにして得られたペレットから得られた成形体は、曲げに対する剛性および耐衝撃性に劣るものと考えられる。
本発明者らは、上記の問題を解決するために、検討を行っており、PCT/JP2022/040342において記載したように、予めパルプ繊維等のセルロース繊維および樹脂成分(樹脂A)を含有する繊維集合体を乾式抄紙にて製造し、これを圧縮してシート状にした繊維集合体シートを溶融混練することで、ペレットを製造し、これを成形して成形体を製造することが記載されている。前記PCT/JP2022/040342の実施例では、溶融混練機に供給するに際し、溶融混練機に供給可能な大きさに裁断して溶融混練機に供給している。しかし、裁断した原料を供給する場合には、原料が嵩高く、また、溶融混練機内のスクリューへの食い込みが困難であることから、生産性が低いことを見出した。
本発明者らは、溶融混練機にシート状の原料をそのまま供給することで、一度溶融混練機のスクリューに食い込むと、連続的にシートが供給されるために、ペレットの生産性が極めて向上すると考え、鋭意検討した結果、スクリュー型混練機の投入口面積に対するセルロース繊維含有樹脂シートの断面積の割合を0.065以下とすることにより、スクリューへの食い込み、スクリュー型混練機への連続供給が可能であることを見出した。
また、上記のように、連続的にシート状の原料を供給することで得られたペレットを用いて製造された成形体は、裁断した原料を供給することで得られたペレットと同様に、曲げに対する剛性および耐衝撃性に優れるものであり、さらに、シート状の原料を供給することで、裁断した原料を供給した場合に比べ、より曲げに対する剛性および耐衝撃性に優れることを見出した。これは、混練機への供給がスムーズに行われることで、混練機内部の滞留時間が減り、セルロース繊維が熱を受ける時間が減るため、セルロース繊維の切断や熱劣化が抑制された結果であると考えられる。
なお、本発明の効果が得られる機構は、上述のものに限定されるものではない。
以下、本発明についてさらに詳述する。
【0012】
<ペレットを製造する工程>
本実施形態のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法は、セルロース繊維含有樹脂シートをスクリュー型混練機で溶融混練して、ペレットを製造する工程を有する。
【0013】
(セルロース繊維樹脂含有シートの断面積/スクリュー型混練機の投入口面積)
本実施形態において、スクリュー型混練機の投入口面積に対するセルロース繊維含有樹脂シートの断面積の割合(セルロース繊維含有樹脂シートの断面積(cm2)/スクリュー型混練機の投入口面積(cm2))が0.065以下である。上記の割合を0.065以下とすることにより、セルロース繊維含有樹脂シートが混練機のスクリューに食い込みやすくなり、連続的にセルロース繊維含有樹脂シートを混練機に供給することができる。
上記割合は、好ましくは0.063以下、より好ましくは0.061以下、さらに好ましくは0.060以下であり、そして、下限は特に限定されないが、生産性の観点から、好ましくは0.010以上、より好ましくは0.020以上、さらに好ましくは0.030以上である。
セルロース繊維含有樹脂シートの断面積は、前記シートの幅および厚みから算出される。シートの幅および厚みは、実施例に記載の方法により測定される。
また、スクリュー型混練機の投入口面積は、ノギス等により測定すればよい。
【0014】
上述したセルロース繊維含有樹脂シートの断面積(cm2)およびスクリュー型混練機の投入口面積(cm2)は、使用する混練機のスケールにより大きく変化しうるが、例えば、セルロース繊維含有樹脂シートの断面積(cm2)は、好ましくは0.5cm2以上、より好ましくは1.0cm2以上であり、そして、好ましくは100cm2以下、より好ましくは50cm2以下である。
また、スクリュー型混練機の投入口面積(cm2)は、例えば、好ましくは5cm2以上、より好ましくは10cm2以上であり、そして、好ましくは30000cm2以下、より好ましくは10000cm2以下、さらに好ましくは5000cm2以下である。
【0015】
本実施形態において、スクリュー型混練機のスクリュー径(mm)に対するセルロース繊維含有樹脂シートの断面積(cm2)の割合(セルロース繊維含有樹脂シート/スクリュー径)は、好ましくは0.100以下である。上記割合が0.100以下であると、セルロース繊維含有樹脂シートが混練機のスクリューに食い込みやすくなり、連続的にセルロース繊維含有樹脂シートを混練機に供給することができるので、好ましい。
上記割合は、より好ましくは0.090以下、さらに好ましくは0.085以下、さらに好ましくは0.085以下であり、そして、下限は特に限定されないが、生産性の観点から、好ましくは0.010以上、より好ましくは0.020以上、さらに好ましくは0.030以上である。
【0016】
上述したスクリュー型混練機のスクリュー径(mm)は、使用する混練機のスケールにより大きく変化しうるが、例えば、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、さらに好ましくは30mm以上であり、そして、好ましくは500mm以下、より好ましくは300mm以下、さらに好ましくは150mm以下である。
スクリュー径(mm)は、混練機の製造社から開示されている場合が多く、メーカー値を採用してもよい。また、ノギス等により実測してもよい。
【0017】
本実施形態において、スクリュー型混練機のスクリューの周速度(m/min)に対する吐出速度(kg/h)の比(吐出速度/周速度)は、好ましくは0.50以上である。上記周速度に対する吐出速度が0.50以上であることにより、生産性が高く、必要以上のせん断によるセルロース繊維の切断や微細化が抑制されるので、好ましい。
前記周速度に対する吐出速度の比は、より好ましくは0.60以上、さらに好ましくは0.70以上、よりさらに好ましくは0.80以上、特に好ましくは0.90以上であり、上限は特に限定されないが、製造容易性の観点から、好ましくは3.00以下、より好ましくは2.50以下、さらに好ましくは2.00以下である。
【0018】
スクリュー型混練機のスクリューの周速度(m/min)は、例えば、生産性の観点から好ましくは0.3m/min以上、より好ましくは1.0m/min以上、さらに好ましくは3m/min以上であり、せん断熱を抑える観点から、好ましくは500m/min以下、より好ましくは300m/min以下、さらに好ましくは100m/min以下である。
スクリューの周速度(m/min)は、混練機の操業時に適宜設定すればよい。
また、吐出速度(kg/h)は、使用する混練機のスケールにより大きく変化しうるが、生産性の観点から、好ましくは1kg/h以上、より好ましくは3kg/h以上、さらに好ましくは5kg/h以上であり、そして、上限は特に限定されないが、製造容易性の観点から、好ましくは1000kg/h以下である。
【0019】
<セルロース繊維含有樹脂シート>
本実施形態のペレットの製造方法は、セルロース繊維含有樹脂シートをスクリュー型混練機で溶融混練して、ペレットを製造する工程を有する。なお、本実施形態において、前記セルロース繊維含有樹脂シートは、シート状のままでスクリュー型混練機の原料投入口から供給される。
該セルロース繊維含有樹脂シートは、セルロース繊維に加えて、樹脂成分(樹脂A)を含む。樹脂Aは、熱可塑性樹脂であることが好ましく、繊維状の樹脂(樹脂繊維)を含むことが好ましい。
セルロース繊維含有樹脂シートは、いずれの方法により得られたものでもよいが、下記工程1および工程2によって製造されたものであることが好ましい。
工程1:セルロース繊維および樹脂Aを含有する繊維集合体を乾式抄紙にて製造する繊維集合体製造工程
工程2:前記繊維集合体を圧縮してセルロース繊維含有樹脂シートを製造するセルロース繊維含有樹脂シート製造工程
以下、本実施形態において好ましい、上記工程1および工程2を含むセルロース繊維含有樹脂シートの製造方法について詳述する。
【0020】
(工程1)
工程1は、セルロース繊維および樹脂Aを含有する繊維集合体を乾式抄紙にて製造する繊維集合体製造工程である。
【0021】
〔セルロース繊維〕
セルロース繊維としては、その製法および種類等に特に限定はない。セルロース繊維としては、パルプ繊維が好ましく、例えば、広葉樹および/または針葉樹のクラフトパルプのような化学パルプ、SGP、RGP、BCTMPおよびCTMP等の機械パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプ、並びにケナフ、ジュート、バガス、竹、藁、麻等の非木材パルプであってもよい。また、ECFパルプ、TCFパルプ等の塩素フリーパルプを用いることができる。
なお、セルロース繊維として、パルプ繊維が好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、紙粉、木粉などを使用してもよい。
【0022】
上記パルプ繊維の中でも、クラフトパルプ繊維、特に、繊維長の長い針葉樹クラフトパルプ繊維(NBKP)は、得られる成形体の曲げ弾性率および耐衝撃性により優れるため、セルロース繊維として好適に用いられる。
【0023】
セルロース繊維の平均繊維長は、得られる成形体の曲げ弾性率および耐衝撃性を向上させる観点、繊維集合体の製造容易性の観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上であり、そして、好ましくは50mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下、よりさらに好ましくは2.5mm以下である。
セルロース繊維の平均繊維長は、実施例に記載の方法により測定される。
【0024】
セルロース繊維の平均繊維幅は、得られる成形体の曲げに対する剛性および耐衝撃性を向上させる観点、繊維集合体の製造容易性の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、よりさらに好ましくは15μm以上であり、そして、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下、よりさらに好ましくは50μm以下である。
セルロース繊維の平均繊維幅は、実施例に記載の方法により測定される。
【0025】
本実施形態において、繊維集合体をエアレイド法により形成する場合は、セルロース繊維は、例えば解繊ドライパルプの形態であることができる。
【0026】
セルロース繊維は、得られる成形体の耐衝撃性を向上させる観点から未叩解のセルロース繊維であることが好ましい。
成形体において、耐衝撃性の発現には、衝撃を与えた際に、セルロース繊維が樹脂から適切に引き抜かれる必要があり、そのためには、微細繊維比率が低い、未叩解セルロース繊維であることが好ましく、未叩解パルプ繊維であることがより好ましい。
また、セルロース繊維の微細繊維比率は、上述の観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下であり、下限は特に限定されない。
セルロース繊維の微細繊維比率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0027】
セルロース繊維含有樹脂シート中のセルロース繊維の含有量は、曲げ弾性率および耐衝撃性に優れる成形体を得る観点、並びにセルロース繊維含有樹脂シートの生産性および製造容易性の観点から、好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、そして、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは75質量%以下である。
【0028】
〔樹脂A〕
樹脂Aの成分としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)、アクリロニトリル・スチレン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンサクシネートおよびポリ乳酸が例示される。また、後述する〔その他の成分〕に記載された滑剤、可塑剤、核剤、難燃剤、帯電防止剤、填料および製紙薬品に例示された樹脂、または、エラストマーを使用してもよい。すなわち、樹脂Aは、成形体に含まれる樹脂成分を意味する。
なお、後述する成形体の製造方法に示すように、本実施形態の成形体は、セルロース繊維と、樹脂Aとを含むセルロース繊維集合体を乾式抄紙にて製造後、圧縮してセルロース繊維含有樹脂シートを製造する工程を経て製造することが好ましい。すなわち、少なくとも樹脂Aは、セルロース繊維集合体に配合されることが好ましい。なお、成形体の製造において、さらに樹脂を添加したり、エラストマーを添加してもよい。
【0029】
本発明において、繊維集合体に含有させる樹脂Aとしては、繊維、粉末、顆粒、ペレットのいずれも使用することができる。これらの中でも、後述する工程1における抄紙容易性の観点から、繊維集合体に含有させる樹脂Aは、繊維または粉末であることが好ましく、繊維であることがより好ましい。すなわち、繊維集合体に含有させる樹脂Aは樹脂繊維または樹脂粉末を含むことが好ましく、樹脂繊維を含むことがより好ましく、樹脂繊維であることがさらに好ましい。
繊維集合体に含有させる樹脂Aの繊維としては、ポリオレフィン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリカーボネート繊維およびポリ乳酸繊維が好ましく例示される。
繊維集合体に含有させる樹脂Aの粉末、顆粒、およびペレットの成分としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリスチレン、ABS、アクリロニトリル・スチレン、ポリアセタールおよびポリブチレンサクシネートが好ましく例示される。特に、樹脂Aの粉末としては、ポリオレフィン粉末、ポリスチレン粉末、ABS粉末、アクリロニトリル・スチレン粉末、ポリアセタール粉末およびポリブチレンサクシネート粉末が好ましく例示される。なお、前記ポリオレフィンとしては、下記に示されるポリオレフィン繊維においてポリオレフィンの具体的な例示物と同様のものが挙げられる。
これらの中でも、繊維集合体に含有させる樹脂Aとしては、ポリオレフィン繊維が好ましい。
なお、繊維集合体に含有させる樹脂Aは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。一例を挙げると、樹脂Aとして、ポリ乳酸繊維とポリブチレンサクシネート粉末の2種を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
-ポリオレフィン繊維-
本実施形態において、繊維集合体に含有させる樹脂Aとしてポリオレフィン繊維を使用する場合、そのポリオレフィン繊維を構成するポリオレフィンとしては特に限定されず、ポリオレフィン(未変性ポリオレフィン)および変性ポリオレフィンが例示される。
ポリオレフィン繊維を構成するポリオレフィンの融点は、成形容易性の観点、セルロース繊維の劣化を抑制する観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは180℃以下であり、そして、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。
【0031】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体(プロピレン-エチレン共重合物ともいう)が例示され、ポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましい。
また、変性ポリオレフィンにおいて、ポリオレフィンの変性方法としては、酸変性、塩素化等が例示され、これらの中でも、セルロース繊維との親和性を向上させる観点から、酸変性であることが好ましい。
酸変性ポリオレフィンの酸変性に使用する酸変性成分は、不飽和カルボン酸成分であることが好ましい。不飽和カルボン酸成分としては、不飽和カルボン酸およびその酸無水物に由来する成分である。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸成分は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸から選択される少なくとも1種であることが好ましく、マレイン酸および無水マレイン酸から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。マレイン酸および無水マレイン酸の少なくとも1つにより変性されたポリオレフィンを、マレイン酸変性ポリオレフィンともいう。
酸変性ポリオレフィンとしては、マレイン酸変性ポリオレフィンであることが好ましく、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレンであることがより好ましい。なお、酸変性ポリオレフィンは、少なくとも一部が酸変性されていればよい。
【0032】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、少なくとも一部がマレイン酸変性されたポリエチレンおよび少なくとも一部がマレイン酸変性されたポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
得られる成形体の曲げ弾性率を向上させる観点からは、ポリオレフィンとして酸変性ポリオレフィンを含有することが好ましく、ポリオレフィンが少なくとも一部がマレイン酸変性されたポリエチレンおよび少なくとも一部がマレイン酸変性されたポリプロピレンの少なくとも1つを含有することがより好ましく、少なくとも一部がマレイン酸変性されたポリエチレンを含有することがさらに好ましい。
また、得られる成形体の耐衝撃性を向上させる観点からは、酸変性ポリオレフィンを含有しないことが好ましく、ポリオレフィンがポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン-プロピレン共重合体のみを含有することがより好ましい。
ポリオレフィン繊維は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ポリオレフィン繊維は、2つ以上のポリオレフィンからなる複合繊維であってもよく、分割繊維、海島繊維、芯鞘繊維、貼り合わせ繊維などが例示され、これらの中でも、曲げに対する剛性および耐衝撃性に優れる成形体を得る観点から、芯鞘繊維が好ましい。芯鞘繊維である場合、同心断面構造や、偏心断面構造の繊維が使用されるが、同心断面構造の繊維が好ましい。同心断面構造の繊維を使用することで、より均一な繊維集合体が得られるので好ましい。
【0034】
ポリオレフィン繊維の繊維長は、均一な繊維集合体を得る観点、繊維集合体の製造容易性の観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上、さらに好ましくは3.0mm以上であり、そして、好ましくは50mm以下、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
ポリオレフィン繊維の繊維長は、実施例に記載の方法により測定される。
【0035】
ポリオレフィン繊維の繊維径は、均一な繊維集合体を得る観点、繊維集合体の製造容易性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
ポリオレフィン繊維の繊維径は、実施例に記載の方法により測定される。
【0036】
ポリオレフィン繊維の繊度は、均一な繊維集合体を得る観点、繊維集合体の製造容易性の観点から、好ましくは0.01dtex以上、より好ましくは0.1dtex以上、さらに好ましくは1dtex以上であり、そして、好ましくは100dtex以下、より好ましくは50dtex以下、さらに好ましくは10dtex以下である。
【0037】
繊維集合体に含有させる樹脂Aがポリオレフィン繊維である場合、繊維集合体中のポリオレフィン繊維の含有量は、曲げに対する剛性および耐衝撃性に優れる成形体を得る観点から、好ましくは90質量%以下であり、生産性および製造容易性の観点から、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下であり、バイオマス化度および生産性の観点から、よりさらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは45質量%以下である。また、同様の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは25質量%以上である。
なお、ポリオレフィン繊維を2種以上使用する場合には、上記の含有量はポリオレフィン繊維の合計含有量を意味する。
【0038】
樹脂Aがポリオレフィン繊維以外の繊維である場合、その前記繊維の好ましい繊維長、繊維径、繊度および含有量は、それぞれ、ポリオレフィン繊維の好ましい繊維長、繊維径、繊度および含有量と同様である。
また、樹脂Aが粉末、顆粒、またはペレットである場合、その前記粉末、顆粒、ペレットの好ましい含有量は、前記ポリオレフィン繊維の好ましい含有量と同様である。また、樹脂Aが粉末、顆粒、またはペレットである場合、その前記粉末、顆粒、またはペレットの粒径は、特に限定されない。
【0039】
〔その他の成分〕
本実施形態の繊維集合体中の樹脂Aがポリオレフィン繊維である場合、その繊維集合体は、上述したセルロース繊維およびポリオレフィン繊維に加え、その他成分を含有していてもよい。その他の成分としては、後述するエラストマーやバインダー成分が挙げられる。
バインダー成分を含有する場合、バインダー成分の含有量は、繊維集合体の全質量に対して好ましくは0.1質量%以上40質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、よりさらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。バインダー成分の含有量を上記範囲内とすることにより、成形体を製造する際の、ハンドリング性等を向上させることができる。
バインダー成分としては、各種デンプン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、各種澱粉、セルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が使用できる。
【0040】
繊維集合体は、さらに、填料や製紙薬品を含有していてもよい。
填料としては、例えばカオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイトおよびスメクタイト等の鉱物顔料、並びにポリスチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂および塩化ビニリデン系樹脂等の有機顔料が挙げられる。
製紙薬品としては、紙力増強剤、歩留向上剤、濾水性向上剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド等が挙げられる。さらに湿潤紙力増強剤も併用可能であり、例えばポリアミド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド-ポリアミン-エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂等が挙げられる。
【0041】
繊維集合体は、さらに、脂肪酸金属塩を含有していてもよい。脂肪酸金属塩は、脂肪族カルボン酸の金属塩であることが好ましく、該脂肪族カルボン酸としては、炭素数12以上24以下の飽和脂肪族カルボン酸または不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸が例示される。
金属塩を形成する金属元素としては、ナトリウム、カリウムなどの第1族元素(アルカリ金属);カルシウム、マグネシウム、バリウムなどの第2族元素(アルカリ土類金属);亜鉛、アルミニウムなどの第3族元素が例示され、好ましくはカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムである。
脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウムなどが例示される。
これらの中でも、曲げに対する剛性および耐衝撃性に優れる観点から、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、またはラウリン酸カルシウムが好ましく、ステアリン酸カルシウムがより好ましい。
成形体中の脂肪酸金属塩の含有量は、曲げに対する剛性および耐衝撃性の観点から、0.1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上であり、そして、好ましくは9質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、よりさらに好ましくは6質量%以下である。
【0042】
その他の成分を含有する場合、セルロース繊維およびポリオレフィン繊維を除くその他の成分の含有量は、繊維集合体の全質量に対して好ましくは0.1質量%以上40質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、よりさらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0043】
〔繊維集合体製造工程〕
次に、繊維集合体の製造工程について述べる。
以下の繊維集合体の製造工程の説明では、樹脂Aにとして、好ましいとされるポリオレフィン繊維を使用したものとして説明する。樹脂Aとして、ポリオレフィン繊維以外の樹脂を使用する場合、ポリオレフィン繊維に代えて前記使用する樹脂に読み替えるものとし、それ以外の説明は同様である。なお、樹脂Aは、後述の通り、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
本実施形態の工程1の繊維集合体の製造工程では、セルロース繊維および樹脂Aを乾式抄紙にて製造する。
繊維集合体の製造工程は、セルロース繊維と、ポリオレフィン繊維とを空気中で混合し、堆積させる工程を含むことが好ましい。すなわち、本実施形態の繊維集合体は、乾式不織布であることが好ましい。
【0045】
乾式抄紙法を用いて繊維集合体を製造する際には、エアレイド法を採用することが好ましい。エアレイド法は、空気中で解繊したポリオレフィン繊維およびセルロース繊維を気流中で均一に混合した原料繊維などを含む気流を、下側にサクションボックスを備えたメッシュ状無端ベルト上に吐出してエアレイドウェブを形成する方法である。すなわち、エアレイド法は、セルロース繊維と、ポリオレフィン繊維とを空気中で混合し、堆積させる工程を含む方法である。エアレイド法においては、必要に応じて上記の操作を複数回繰り返してもよい。
【0046】
上記方法で形成されたウェブは、以下に示すような繊維結合工程によってシート化される。繊維結合工程としては、例えば、ニードルパンチ法のようにウェブ面に垂直方向に針を通すことによりポリオレフィン繊維やセルロース繊維を互いに交絡させてシートを形成する方法がある。このような結合工程は、カーディング法によるウェブ形成方法と組み合わせて好ましく用いられる。また、繊維結合工程では、加熱により乾式法ウェブに配合された熱融着性接着剤を融着させて原料繊維を結合する工程(サーマルボンド法)、得られた乾式法ウェブに接着剤を付与して原料繊維を結合する工程(ケミカルボンド法)、あるいはサーマルボンド法とケミカルボンド法を組み合わせた方法(マルチボンド法)を採用することができる。
【0047】
サーマルボンド法においては、熱融着性接着剤の融点よりも20℃以上高い温度で加熱をすることが好ましい。加熱処理としては、熱風処理、および熱風処理後の低圧による熱圧処理が挙げられる。
【0048】
サーマルボンド法やマルチボンド法が採用される場合には、粒子状あるいは繊維状の熱融着性接着剤が使用されることが好ましい。熱融着性接着剤は、上述したポリオレフィン繊維またはバインダー成分であってもよい。
粒子状の熱融着性接着剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル低融点ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリアミド、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの熱融着性の樹脂粒子が用いられる。
繊維状の熱融着性接着剤としては、低融点ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、などのポリエステル、低融点ポリアミド、アクリル樹脂、酢酸ビニル(PVAc)の樹脂類が用いられる。
また、熱融着性合成繊維としては、融点の異なる2種類の樹脂を複合化させて得られ、繊維の表面のみが溶融する芯鞘型構造の熱融着性複合合成繊維も好ましく用いることができる。芯鞘型構造の熱融着性複合合成繊維は、融点の高い樹脂からなる芯の外周上に、融点の低い樹脂からなる鞘が形成された構造を有する。具体的には、融点が異なる2種の樹脂を組み合わせた形態(PET/PET複合繊維、PE/PET複合繊維、MAPE/PP複合繊維、PP/PET複合繊維、PE/PP複合繊維、PVAc/PET複合樹脂)が挙げられる。
【0049】
また、繊維の結合にケミカルボンド法が用いられる場合、繊維同士を固着させるためにバインダー成分が添加されることが好ましい。バインダー成分としては、必要に応じて適宜選択可能であり、例えば、デンプン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸ソーダ等の溶液タイプのバインダーや、ポリアクリル酸エステル、アクリルスチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリルニトリルブタジエン共重合体、メチルメタアクリレートブタジエン共重合体、尿素-メラミン樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂等のエマルジョンタイプのバインダー等が使用可能である。また、上述したバインダー成分を使用することも好ましい。なお、上記のバインダーとしては、繊維、粉体、顆粒状、溶液あるいはエマルジョンなど、種々の形態のものを用いることができ、2種以上を併用することもできる。
【0050】
上述したような乾式抄紙法で製造された繊維集合体は、繊維集合体を構成する各繊維が、長手方向、幅方向および厚み方向にランダムに3次元配向されている。このため、本実施形態においては、繊維集合体の第1の方向の引張強度と、第2の方向の引張強度が同程度の値となる。すなわち、本実施形態では、平面方向における等方性に優れた繊維集合体が得られる。
【0051】
なお、繊維集合体の製造工程においては、成形性を阻害しない任意のシートを繊維集合体に積層して積層シートを製造してもよい。例えば、繊維集合体の表面や、繊維集合体を積層する際にシート間に任意のシートを積層することができる。積層する任意のシートとしては、ティシュや不織布などのシートを用いることができる。これら任意のシートは、製造工程における繊維集合体やセルロース繊維含有樹脂シートの表面性の向上、生産性の向上、その他機能の付与を目的として積層される。
【0052】
(工程2)
工程2は、工程1で得られた繊維集合体を圧縮してセルロース繊維含有樹脂シートを製造するセルロース繊維含有樹脂シート製造工程である。工程1で得られた繊維集合体を圧縮することで、シート状のセルロース繊維含有樹脂シートが得られる。
なお、上記の圧縮は、加熱処理と同時に行ってもよく、加熱処理の後に行ってもよい。
【0053】
繊維集合体の圧縮は、繊維集合体をロールプレスにより加圧処理することで得ることができる。なお、ロールプレス処理において、同時に加熱を行い、加熱加圧処理としてもよい。ロールプレス処理は金属ロールや樹脂ロールで加圧することで、得られるセルロース繊維含有樹脂シートの密度を任意にコントロールすることができる。具体的には、ロールプレス処理を行うロールを任意の個数、任意の温度およびクリアランスに設定し、シートを加熱、加圧することで任意の密度のセルロース繊維含有樹脂シートを得ることができる。複数のロールを通過させて、所望の密度まで圧縮してもよい。
【0054】
繊維集合体の圧縮は、熱プレスによる加圧処理によっても得ることができる。適切な大きさに切り出した繊維集合体、もしくは上記ロールプレス処理を行ったセルロース繊維含有樹脂シートをオートクレーブ法や金型プレス法によって加圧処理をすることで、得られるセルロース繊維含有樹脂シートの密度を任意にコントロールすることができる。温度を100℃以上となるように加熱し、かつ、2MPa以上となるように加圧することで、ロールプレスによる加圧処理よりも高密度なセルロース繊維含有樹脂シートを得ることができる。
なお、上記の加熱加圧条件を得る前に、予備プレス工程を有していてもよく、所望の加熱条件にて、より低い圧力にて予備プレスを行った後に、圧力を上げて、熱プレスによる加圧処理を行うことも好ましい。
【0055】
熱プレスによる加圧処理工程はスタンピング成形法であってもよい。スタンピング成形法は、予め繊維集合体を加熱し、ポリオレフィンを溶融、軟化させた状態で、成形型の内部に配置し、次いで型を閉じて型締を行い、その後加圧冷却する方法である。加熱には、遠赤外線ヒーター、加熱板、高温オーブン、誘電加熱などの加熱装置を用いることができる。
【0056】
熱プレスによる加圧処理工程は、真空成形法であってもよい。真空成形法は、繊維集合体と、金型との間を真空状態にすることにより、繊維集合体と金型との密着性を高め成形性を高めることができる。真空成形は上述したスタンピング成形法の型締工程で行われることが好ましい。具体的には、繊維集合体を加熱し、ポリオレフィンを溶融、軟化させた状態で、成形型の内部に配置し、次いで型を閉じて型締を行う工程において、真空成形を行う。真空成形においては、成形型側から真空吸入を行う。真空成形における成形圧は通常1.0kg/cm2以下で行い、0.1秒以上60秒以下程度で成形を行う。
【0057】
熱プレスによる加圧処理工程は、圧空成形法であってもよい。圧空成形法は、繊維集合体に圧縮空気を吹き付けることにより型に密着させ、繊維集合体と金型との密着性を高めることができる。圧空成形は上述したスタンピング成形法の型締工程で行われることが好ましい。具体的には、繊維集合体を加熱し、ポリオレフィンを溶融、軟化させた状態で、成形型に配置し、次いで繊維集合体側から圧縮空気を吹き付けることにより成形を行う。圧空成形は、3kg/cm2以上8kg/cm2以下の圧縮空気圧で行うことが多く、0.1秒以上60秒以上で成形を行うことが好ましい。
【0058】
繊維集合体の圧縮は、スーパーカレンダー処理によっても得ることができる。
上記スーパーカレンダー処理においては、繊維集合体を、加熱したローラの間をニップ圧を印加しながら通すことにより成形する。使用するローラの加熱温度としては、ポリオレフィン繊維の融点に対して、好ましくは10℃以上高い温度、より好ましくは20℃以上高い温度、さらに好ましくは30℃以上高い温度であり、そして、ポリオレフィン繊維の融点に対して、好ましくは100℃高い温度以下、より好ましくは90℃高い温度以下、さらに好ましくは80℃高い温度以下である。
またニップ圧は、好ましくは100kg/cm以上、より好ましくは150kg/cm以上、さらに好ましくは200kg/cm以上であり、そして、好ましくは450kg/cm以下、より好ましくは400kg/cm以下、さらに好ましくは350kg/cm以下である。また、ニップ段数は好ましくは1段以上、より好ましくは3段以上、さらに好ましくは5段以上であり、そして好ましくは20段以下、より好ましくは18段以下、さらに好ましくは16段以下である。
なお、繊維集合体を圧縮して、セルロース繊維含有樹脂シートを製造するに際し、所望のセルロース繊維含有樹脂シートの厚み等に応じて、適宜、セルロース繊維含有樹脂シートを複数積層して圧縮を行ってもよい。
【0059】
本実施形態のセルロース繊維含有樹脂シートは、第1の方向の引張強度をTとし、第1の方向と直交する方向である第2の方向の引張強度をYとしたとき、T/Yが0.5以上1.5以下であることが好ましい。前記T/Yを0.5以上1.5以下とすることにより、セルロース繊維含有樹脂シートを構成する繊維が、極めて均一に混合しているために、曲げに対する剛性および強度に加えて、耐衝撃性にも優れる成形体が得られるので好ましい。
T/Yは、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.70以上、さらに好ましくは0.80以上、よりさらに好ましくは0.85以上であり、そして、好ましくは1.40以下、より好ましくは1.30以下、さらに好ましくは1.20以下、よりさらに好ましくは1.15以下である。
セルロース繊維含有樹脂シートの第1の方向は、セルロース繊維含有樹脂シートの平面方向における任意の1方向である。但し、セルロース繊維含有樹脂シートに含まれる繊維が平面方向のいずれかの方向に配向している場合は、その配向方向を第1の方向とする。また、繊維集合体の乾式抄紙での製造工程における流れ方向が分かる場合は、その流れ方向を第1の方向とする。繊維集合体の製造工程における流れ方向が分かる場合は、製造工程における流れ方向を、第1の方向(MD方向)といい、得られた繊維集合体およびセルロース繊維含有樹脂シートにおける流れ方向をT目ということもある。
繊維集合体の第2の方向は、繊維集合体の平面方向における1方向であって、第1の方向に直交する方向である。繊維集合体の製造工程における流れ方向が分かる場合は、製造工程における流れ方向に直交する方向を、第2の方向(CD方向)といい、得られた繊維集合体およびセルロース繊維含有樹脂シートにおける第2の方向をY目いうこともある。
セルロース繊維含有樹脂シートの第1の方向と第2の方向の引張強度の測定は、JIS P 8113:2006に準じて測定する。各方向の引張強度は、引張試験機として、株式会社エー・アンド・デイ製のテンシロンを用いて15±0.1mm×180±1mmの短冊片を20±5mm/分の速度で測定した値である。
【0060】
本実施形態において、セルロース繊維含有樹脂シートは、少なくともセルロース繊維および樹脂A(好ましくはポリオレフィン繊維)を混合した後、乾式抄紙したものであり、シート状である。乾式抄紙を行った後の綿状の繊維集合体(以下、綿状繊維集合体ともいう)をプレス処理したシートであり、各種の嵩比重(密度)であってよい。
スクリュー型混練機に供するセルロース繊維含有樹脂シートの嵩比重は、工程2における圧縮の容易性、その後の溶融混練の容易性や、溶融混練機に供給するために切断する場合の切断容易性等の観点から、好ましくは0.10g/mL以上、より好ましくは0.15g/mL以上であり、そして、好ましくは0.60g/mL以下、より好ましくは0.50g/mL以下、さらに好ましくは0.40g/mL以下である。
セルロース繊維含有樹脂シートの嵩比重は、実施例に記載の方法により測定される。
【0061】
(ペレットを製造する工程)
本実施形態のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法は、セルロース繊維含有樹脂シートをスクリュー型混練機で溶融混練して、ペレットを製造する工程を有する。
ここで、溶融混練機への供給は、セルロース繊維含有樹脂シートをシート状のままで行う。このとき、スクリュー型混練機の投入口面積に対するセルロース繊維含有樹脂シートの断面積の割合を所望の範囲とする観点から、必要に応じて、セルロース繊維含有シートを幅が所望の範囲となるように切断してもよい。また、混練機の投入口が複数ある場合、複数の投入口から供給してもよい。
【0062】
ペレットを製造する方法は特に限定されず、セルロース繊維含有樹脂シートを供給してスクリュー型混練機で溶融混練すればよく、特に限定されない。
スクリュー型混練機としては、一軸スクリュー型混練機、二軸スクリュー型混練機が例示され、混練効率の観点から、二軸スクリュー型混練機であることが好ましい。
セルロース繊維含有樹脂シートをスクリュー型混練機に供給して溶融混練した後、
(1)ストランド状に押出し、冷却固化させ、セルロース含有樹脂ペレットを得る方法、
(2)溶融混練物をそのまま、もしくはシート状に引き伸ばしたのちに冷却固化させ、破砕機で破砕し、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得る方法、
(3)棒状または筒状に押出し冷却して、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得る方法、
(4)Tダイより押出し、シート状またはフィルム状のセルロース繊維含有樹脂を得た後、切断または破砕して、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得る方法、または
(5)押出した直後の溶融混練物を、空気中または水中において回転刃で切断し、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得る方法、
などが例示される。
得られるペレットの大きさは特に限定されないが、射出成形機への投入しやすさの観点から1~10mmであることが好ましい。
【0063】
溶融混練温度(バレル設定温度)は特に限定されないが、溶融混練物の温度(実際に得られた混練物の温度、樹脂温度)がポリオレフィンの融点に対して5℃以上高い温度となるようにバレル設定温度を調整することが好ましく、10℃以上高い温度であることがより好ましく、15℃以上高い温度以上であることがさらに好ましく、そして、セルロース繊維の劣化の観点から、ポリオレフィンの融点に対して100℃以上高い温度以下であることが好ましく、90℃高い温度以下であることがより好ましく、80℃高い温度以下であることがさらに好ましい。
溶融混練物の温度は、溶融混練時に生じるせん断熱によって、溶融混練温度(バレル設定温度)よりも高くなる。すなわち溶融混練時の各種の条件、例えば、溶融混練温度(バレル設定温度)、排出速度、回転数、溶融混練機のスクリュー設計によって変化する。実施例に記載の方法の場合、溶融混練物の温度は、溶融混練温度(バレル設定温度)よりも20~40℃程度高くなるため、好ましい溶融混練物の温度よりも溶融混練温度(バレル設定温度)は20~40℃程度低くなる。
【0064】
溶融混練時の各種の条件、例えば、排出速度、回転数は、公知の手法に従って調整すればよい。なお、上述したスクリューの周速度に対する吐出速度(排出速度)が所望の範囲となるように、適宜、調整することが好ましい。
溶融混練に使用する装置が二軸押出機である場合は、スクリュー設計はできるだけ練り力を弱くした設定が望ましい。本発明では予め繊維集合体シート中にセルロース繊維と樹脂Aとが均一に分散しており、高いせん断力を与えずに溶融混練しても、繊維集合体シートでのセルロース繊維の分散状態がそのまま維持され、セルロース繊維の分散性に優れたペレットが得られるためである。そのため、練り力が弱いことでセルロース繊維の切断を避けることができる。
具体的にはニーディングパーツはRタイプのニーディングパーツを主に用い、LタイプやNタイプのニーディングパーツの個数はRタイプのニーディングパーツの個数と同じまたはそれ以下であることが好ましく、Rタイプのニーディングパーツの個数よりも少ないことがより好ましい。繊維集合体シートの裁断チップのみを用いて溶融混練をする場合には、LタイプやNタイプのニーディングパーツを用いずにRタイプのニーディングパーツのみから構成してもよい。
ニーディングパーツはスクリュー全体を10パートに分割した内、5パート以下とすることが好ましく、3パート以下とすることがより好ましい。繊維集合体シートの裁断チップのみを用いて溶融混練をする場合には、ニーディングパーツを1パートのみにしてもよい。
【0065】
なお、溶融混練において、セルロース繊維含有樹脂シートと共に、さらに樹脂成分を配合して溶融混練してもよく、樹脂成分としては、上述した樹脂Aで挙げた樹脂成分、および後述するエラストマーが例示され、ポリオレフィン樹脂および後述するエラストマーが好ましい。溶融混練において、樹脂Aおよびエラストマーから選択される少なくとも1つを配合することにより、耐衝撃性により優れた成形体が得られるので好ましい。
すなわち、得られたセルロース繊維含有樹脂ペレットは、セルロース繊維含有樹脂シートに由来する成分に加えて、溶融混練において配合した成分を含有してもよい。
溶融混練において配合してもよいエラストマーとは、弾性変形を示す高分子化合物を表し、熱を加えると軟化して流動性を示し、冷却するとゴム状に戻る性質をもった物質のことを指す。
エラストマーは具体的にはハードセグメントとソフトセグメントの2つのポリマーからなる構造を有しており、ハードセグメントが架橋点の役割を果たし、ソフトセグメントがゴム弾性を示すことで、弾性を生じる。そのため、常温ではハードセグメントが集合して疑似架橋状態を形成しゴム様の物性を示すが、高温では溶融して架橋点の働きを失い塑性変形が可能となる。
ハードセグメントのポリマーと、ソフトセグメントのポリマーの組み合わせによって、ポリスチレン系、オレフィン/アルケン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリアクリル系エラストマー、シリコーン系、ポリイミド系などに分類される。また、同じ系の中でも、ハードセグメントとソフトセグメントの比率や分子量によって特性が異なってくる。
例えばポリスチレン系であると、ハードセグメントにスチレン、ソフトセグメントにブタジエンを用いたものがある。このとき、スチレン量が多いと高硬度となり、ポリスチレンやポリフェニレンエーテルとの相溶性が向上し、スチレン量が少ないと低硬度で柔軟性が高くポリオレフィンとの相溶性が向上する。また、分子量が高いと温度特性や機械特性が向上し、分子量が低いと加工性や透明性が向上する。ポリスチレン系エラストマーとしては、旭化成株式会社製のタフテックシリーズが例示される。
例えばオレフィン/アルケン系である、エチレン、プロピレン、1-ブテンを組み合わせたものがある。この時の組み合わせや比率により密度や弾性率、融点を変化させることができる。また樹脂と混合した際の構造も異なり、海島状に分散する場合や相溶する場合などがある。オレフィン/アルケン系エラストマーとしては、三井化学株式会社製のタフマーシリーズが例示される。
これらの中でも、耐衝撃性等の観点から、ポリスチレン系エラストマーおよびオレフィン/アルケン系エラストマーが好ましい。
エラストマーとしては、例えば、再表2020/080328号公報の段落0043~0065に記載の各種エラストマーが例示される。
エラストマーの添加方法は特に限定されず、セルロース繊維含有樹脂シートの溶融混練時にセルロース繊維含有樹脂シートと合わせて供給して溶融混練することが好ましい。
【0066】
セルロース繊維含有樹脂ペレットが前記エラストマーを含有する場合、そのエラストマーの含有量は、曲げ弾性率を向上させる観点から、樹脂Aとエラストマーの合計質量に対して、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下、よりさらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。また、前記エラストマーを含有する場合、そのエラストマーの含有量は、耐衝撃性を向上させる観点から、樹脂Aとエラストマーの合計質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、よりさらに好ましくは12質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。
【0067】
本実施形態において、セルロース繊維含有樹脂ペレット中のセルロース繊維の含有量は、曲げ弾性率および耐衝撃性に優れた成形体を得る観点から、好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、そして、より好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0068】
<用途>
本実施形態のセルロース繊維含有樹脂ペレットは、各種成形用の樹脂ペレットとして好適に使用される。
【0069】
[成形体の製造方法]
本実施形態の成形体の製造方法は、上述したセルロース繊維含有樹脂ペレットを製造する工程、および前記セルロース繊維含有樹脂ペレットを成形する工程を有する。
なお、成形する工程には、各種の成形方法が採用され、例えば、射出成形(例えば射出圧縮成形(プレスインジェクション、ホットフロースタンピング成形、ガス射出圧縮成形)、ガス射出成形、および超高速射出成形)、各種押出成形(コールドランナー方式またはホットランナー方式)、圧縮(プレス)成形、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、各種異形押出成形(例えば二色成形およびサンドイッチ成形)等を例示できる。例えば、シート、フィルム、繊維等の成形には種々の押出成形が好適である。シートまたはフィルムの成形にはインフレーション法、カレンダー法、キャスティング法等も用いることができる。さらに、特定の延伸操作をかけてもよい。また、回転成形またはブロー成形等により中空成形品とすることも可能である。
また、複数の成形工程を組み合わせてもよく、複数の工程を同時に実施し、一工程としてもよい。例えば、セルロース繊維含有樹脂ペレットをシート状にして、熱プレス成形することにより成形体を得たり、セルロース繊維含有樹脂ペレットをシート状にしてスーパーカレンダー処理により成形体を得たりしてもよい。また、シート状に成形した後、真空成形、圧空成形等により成形してもよい。
これらの中でも、射出成形が好ましく例示される。
【0070】
成形する工程が射出成形する工程である場合、射出成形する工程では、例えば、公知の射出成形機を用いて、上述したセルロース繊維含有樹脂ペレットを溶融混練し、溶融した混合物を、金型内に射出することにより成形する。溶融混練する際には、公知の混練機を使用すればよく、例えば、一軸混練機、二軸混練機が例示される。
公知の射出成形機としては、例えば、スクリュー式射出成形機、スクリュープリプラ式射出成形機、プランジャープリプラ式射出成形機、プランジャー式射出成形機などが挙げられる。また、駆動方式として、油圧式、電動式、油圧電動ハイブリッド式等が例示される。
【0071】
射出成形の温度条件は、ペレットが含有する樹脂の種類に応じて適宜決定され、射出成形機のシリンダー温度を、用いる樹脂の流動開始温度より0~100℃高い温度に設定することが好ましい。
金型の温度は、用いる樹脂の冷却速度と生産性の点から、適宜選択すればよく、例えばポリオレフィンの場合には、室温(例えば23℃)から120℃の範囲に設定することが好ましい。
その他射出条件として、スクリュー回転数、背圧、射出速度、保圧、保圧時間などを適宜調節すればよい。
【0072】
本実施形態のセルロース繊維含有樹脂ペレットは、成形時に他の樹脂、例えばエラストマーを添加して溶融混練することで、エラストマー等の他の樹脂を含有していてもよい。
また、成形体の製造工程において、射出成形時にセルロース繊維含有樹脂ペレットに加えて、他の樹脂、各種添加剤、各種添加剤を含有するマスターバッチ等を添加してもよい。
添加剤としては、通常、樹脂組成物に用いられる添加剤が挙げられる。このような添加剤としては、例えば安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、滑剤、離型剤などが挙げられる。
安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなどが挙げられる。
着色剤としては、ニトロシンなどの染料、および硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなどの顔料を含む材料が挙げられる。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、モンタン酸等の脂肪酸、それらのアミド、それらのエステル、それらの多価アルコールとのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。
【0073】
<成形体の特性>
本実施形態において、得られる成形体の密度は、好ましくは0.5g/cm3以上、より好ましくは0.8g/cm3以上、さらに好ましくは0.95g/cm3以上、よりさらに好ましくは1.0g/cm3以上である。また、成形体の密度は、好ましくは2.0g/cm3以下、より好ましくは1.5g/cm3以下、さらに好ましくは1.2g/cm3以下である。
【0074】
成形体の厚みは、特に限定されないが、0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上であり、そして、好ましくは200mm以下、より好ましくは100mm以下、さらに好ましくは50mm以下、よりさらに好ましくは20mm以下、特に好ましくは10mm以下である。
なお、成形体の厚みを2mm以上とすることにより、耐衝撃性が要求される用途に好適に使用可能できるため、成形体の厚みは2mm以上であることが特に好適である。
【0075】
本実施形態の成形体は、高い曲げ弾性率を有することが好ましく、成形体が高い曲げ弾性率を有することで、曲げに対する剛性に優れた成形体となるので好ましい。成形体の曲げ弾性率は、好ましくは1.5GPa以上、より好ましくは2.0GPa以上、さらに好ましくは2.5GPa以上、よりさらに好ましくは3.0GPa以上、さらに一層好ましくは3.0GPa以上である。上限は特に限定されないが、製造容易性の観点から、好ましくは10GPa以下である。
成形体の曲げ弾性率は、JIS K 7171:2016に準拠して測定される。
【0076】
本実施形態の成形体は、高い曲げ強度を有することが好ましく、成形体が高い曲げ強度を有することで、剛性に優れた成形体となるので好ましい。成形体の曲げ強度は、好ましくは20MPa以上、より好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは35MPa以上である。上限は特に限定されないが、製造容易性の観点から、好ましくは100MPa以下である。
成形体の曲げ強度は、JIS K 7171:2016に準拠して測定される。
【0077】
本実施形態の成形体は、高いシャルピー衝撃強度を有することが好ましく、厚み4mmの成形体のシャルピー衝撃強度は、好ましくは1.5kJ/m2以上、より好ましくは2.0kJ/m2以上、さらに好ましくは3.0kJ/m2以上、よりさらに好ましくは4.0kJ/m2以上である。上限は特に限定されないが、製造容易性の観点から、好ましくは100kJ/m2以下である。
なお、シャルピー衝撃強度は、数値が大きい程、耐衝撃性に優れることを意味する。
シャルピー衝撃強度は、JIS K 7111-1:2012に準じて測定され、詳細には、実施例に記載の方法により測定される。
【0078】
(用途)
本実施形態の成形体の製造方法で得られる成形体は、電機電子機器、OA機器、家電機器、土木建築、自動車、航空機の部品、構造部品および筐体、容器(例えば、食品容器、薬品包装容器、化粧品包装容器、医療機器包装容器)、家具、日用雑貨、医療用具などに好ましく用いられる。
これらの中でも、耐衝撃性が要求される用途に好適であり、例えば、土木建築、自動車または航空機の部品、構造部品、および筐体として好適である。
【実施例0079】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0080】
(実施例1)
<繊維集合体の作製>
NBKPを、旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して、解繊ドライパルプを得た。解繊機での処理風速は45m/分であり、装置内に設けたバッフルにより乱流とした。得られた解繊ドライパルプの平均繊維長は2.38mmであり、平均繊維幅は34.3μmであり、微細繊維比率は11.4%であった。
次いで、得られた解繊ドライパルプと、ポリプロピレン繊維(融点160℃、繊度6.6dtex、繊維長5mm、繊維径30μm、「PP繊維」ともいう)と、ポリエチレン/ポリプロピレン複合芯鞘繊維(芯部融点160℃、鞘部融点110℃、繊度1.7dtex、繊維長5mm、繊維径15μm、芯部直径10.6μm、芯部質量/鞘部質量=1/1、「PE/PP複合繊維」ともいう)とを、30/55/15の割合(質量比)で空気流により均一に混合して繊維混合物を得た。
【0081】
次いで、
図1に示すウェブ形成装置1を用い、繊維混合物からエアレイドウェブを形成した。具体的には、コンベア10に装着されて走行する透気性無端ベルト20の上に、第1のキャリアシート供給手段40によって、第1のキャリアシート41を繰り出した。実施例1では、第1のキャリアシート41として、ティッシュ(坪量14g/m
2)を使用した。また、この時、横幅は1200mmであった。なお、「坪量」はJIS P8124:2011に記載の「紙及び板紙-坪量の測定方法」に従って測定した。
【0082】
サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、第1のキャリアシート41の上に、繊維混合物供給手段30から空気流と共に繊維混合物を落下堆積させ、綿状の繊維集合体を得た。その際、エアレイドウェブ部分の設定坪量が400g/m2となるように、繊維混合物を供給した。
次いで、第2のキャリアシート供給手段50によって、第1のキャリアシート41上の綿状の繊維集合体の上に、第2のキャリアシート51を積層して、エアレイドウェブを含有する繊維集合体を得た。実施例1では、第2のキャリアシート51として、ティッシュ(坪量14g/m2)を使用した。つまり、実施例1においては、第1のキャリアシート41と第2のキャリアシート51に、同一のシートを用いた。
【0083】
<セルロース繊維含有樹脂シートの作製>
得られたエアレイドウェブを含有する繊維集合体を、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、温度140℃で熱風処理した。その後、ロールプレス処理によって嵩比重が0.3g/mLとなるように密度を調整し、第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートを剥離せずに、坪量416g/m2のセルロース繊維含有樹脂シートを得た。前記セルロース繊維含有樹脂シートのT/Yは0.88、嵩比重は0.32g/mL、厚みは1.3mmであった。
前記セルロース繊維含有樹脂シートを、スリッター機を用いてスリットし、幅150mmとした。
【0084】
<セルロース繊維含有樹脂ペレットの作製>
前記セルロース繊維含有樹脂シートを二軸混練押出機(株式会社芝浦機械製、TEM-37SX、スクリュー径37mm)の根元に設けられた、断面積57cm2の開口部へ投入した。混練温度を165℃、回転数を70rpm(周速度8.1m/min)として溶融混練分散した。混練に用いたスクリューは、Rタイプのニーディングパーツを使用し、その他は全て送りねじで構成される弱練り構成とした。4mmφのダイスから吐出させたストランドを空冷により冷却後、ペレタイザーで切断し、長さ3mmのセルロース繊維含有樹脂ペレットを得た。後述する方法により測定した混練物の吐出速度は9.7kg/hであった。
【0085】
(実施例2)
実施例1の<セルロース繊維含有樹脂ペレットの作製>において、回転数を300rpm(周速度34.9m/min)に変更した以外は実施例1と同様にして、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得た。混練物の吐出速度は47.3kg/hであった。
【0086】
(実施例3)
実施例1の<セルロース繊維含有樹脂ペレットの作製>において、回転数を500rpm(周速度58.1m/min)に変更した以外は実施例1と同様にして、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得た。混練物の吐出速度は78.6kg/hであった。
【0087】
(実施例4)
実施例1の<セルロース繊維含有樹脂シートの作製>において、幅を200mmとした以外は実施例1と同様にして、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得た。混練物の吐出速度は11.7kg/hであった。
【0088】
(実施例5)
実施例1の<セルロース繊維含有樹脂シートの作製>において、幅を100mmとし、<セルロース繊維含有樹脂ペレットの作製>においてシートの投入部を押出機中盤に設けられた断面積22cm2のベント口とした以外は実施例1と同様にして、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得た。混練物の吐出速度は7.5kg/hであった。
【0089】
(実施例6)
実施例1の<繊維集合体の作製>において、繊維混合物を50/35/15の割合(質量比)に変更した以外は実施例4と同様にして、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得た。前記セルロース繊維含有樹脂シートの坪量は411g/m2、T/Yは0.88、嵩比重は0.29g/mL、厚みは1.44mmであった。混練物の吐出速度は13.8kg/hだった。
【0090】
(比較例1)
実施例1の<セルロース繊維含有樹脂シートの作製>において、セルロース繊維含有樹脂シートをシュレッダー(アイリスオーヤマ株式会社製、AFS100M)で細断し、4mm×13mm程度のプレス細断チップを得て、二軸押出機にプレス細断チップを投入したこと以外は実施例1と同様にして、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得た。混練物の吐出速度は3.8kg/hだった。
【0091】
(比較例2)
回転数を300rpm(周速度34.9m/min)に変更した以外は比較例1と同様にして、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得た。混練物の吐出速度は12.5kg/hだった。
【0092】
(比較例3)
回転数を500rpm(周速度58.1m/min)に変更した以外は比較例1と同様にして、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得た。混練物の吐出速度は24.8kg/hだった。
【0093】
(比較例4)
実施例1の<セルロース繊維含有樹脂シートの作製>において、幅を300mmとした以外は実施例1と同様にして、セルロース繊維含有樹脂ペレットを得ようとしたが、前記セルロース繊維含有樹脂シートが混練機のスクリューに食い込まれずにセルロース繊維含有樹脂ペレットが得られなかった。
【0094】
[測定・評価方法]
(ポリオレフィン繊維の繊維長・繊維径の測定方法)
無作為に選択したポリオレフィン繊維20本を光学顕微鏡で観察し、繊維長および繊維径を測定した。
【0095】
(パルプ繊維(セルロース繊維)の平均繊維長・平均繊維径・微細繊維比率の測定方法)
ISO16065-2に準じ、繊維画像解析装置(バルメット株式会社製、Valmet FS5)によってパルプ繊維の平均繊維長および平均繊維径を測定した。また、測定された長さ加重平均繊維長分布における0.1mm以下の微細繊維の割合を微細繊維比率とした。
【0096】
(ポリオレフィン繊維の融点の測定方法)
ポリオレフィン繊維の融点は、ポリオレフィン繊維のカタログ値等がある場合には、カタログ値を採用してもよい。本実施例ではカタログ値を採用した。
カタログ値がない場合は、以下の方法にて測定することが可能である。
ポリオレフィン繊維を5mg切り出し、示差走査熱量計(DSC)にてポリオレフィン繊維の融点を測定する。融点はパーキン・エルマー社製のDiamond DSCを用いて窒素雰囲気下で30℃から280℃まで20℃/分で昇温して測定する。
【0097】
(セルロース繊維含有樹脂シートの嵩比重の測定方法)
セルロース繊維含有樹脂シートの嵩比重は、50mm角のシートを23℃、50%RH条件下で24時間調湿した後、シートの厚みおよび質量を測定することにより算出した。シートの厚みは、デジタルシックネスゲージ(株式会社尾崎製作所製、DG-127)で測定した。
【0098】
(T/Yの測定方法)
得られたセルロース繊維含有樹脂シートの繊維集合体製造工程における流れ方向(コンベア10の走行方向)を第1の方向、第1の方向に直交する方向を第2の方向とし、JIS P 8113:2006に準じて引張強さ(単位はN/m)を測定した。各方向の引張強度は、この引張強さを試験片の厚みで除し、引張強度(単位はMPa)を算出した。引張試験機として、株式会社エー・アンド・デイ製のテンシロンを用いて15mm×180mmの短冊片を20mm/分の速度で測定した。
【0099】
(混練物の吐出速度の測定)
混練物の吐出速度は、3分間に二軸押出機のダイスから吐出された混練物の質量を測定することで、1時間当たりの吐出量を求めた。2回測定した平均値を吐出速度とした。
【0100】
<評価>
得られたセルロース繊維含有樹脂ペレットについて、下記の方法により成形体を取得し、密度、曲げ弾性率、曲げ強度、および耐衝撃性を測定した。結果を表2に示す。
(ペレットの成形)
前記ペレットを用いてJIS K 7139:2009に規定のタイプA1多目的試験片を、成形温度170℃、金型温度40℃、射出速度10mm/secの条件で射出成形し、厚さ4mmの成形体を得た。
【0101】
(成形品の密度の測定方法)
得られた成形品(成形体)を長さ80mm×幅10mmの短冊状試験片に切削した。短冊状試験片の厚みを定圧厚さ測定器(株式会社テクロック製、型番PG-02J)で測定し、短冊状試験片の体積を算出した。さらに、短冊状試験片の質量を測定することにより密度を算出した。
【0102】
(成形品の曲げ弾性率および曲げ強度の測定方法)
得られた成形品(成形体)を長さ80mm×幅10mmの短冊状試験片に切削し、JIS K 7171:2016に準じて、3点曲げ試験を実施した。得られる曲げ弾性率および曲げ強度は、数値が大きいほどそれぞれ、曲げに対する剛性および強度に優れると評価した。
【0103】
(成形品の耐衝撃性の測定方法)
得られた成形品(成形体)を長さ80mm×幅10mmの短冊状試験片に切削し、JIS K 7111-1:2012に準じて、ノッチ付きシャルピー衝撃試験(打撃方向:エッジワイズ)を実施した。得られるシャルピー衝撃強度は、数値が大きいほど耐衝撃性が良好で、衝撃に対して強いと評価した。
【0104】
【0105】
【0106】
表1に示すように、回転数を高くすると吐出量が増える。生産性の高さは同一の回転数での吐出量で評価できるが、回転数当たりの吐出量(スクリューの周速度(m/min)に対する吐出速度(kg/h)の比(吐出速度/周速度))を考慮することで、異なる回転数同士でも生産性を比較することが可能である。実施例1~6に示すように、本発明のセルロース繊維含有ペレットは吐出速度/周速度が大きく、高い生産性を有している。
また、表2に示すように、本発明のセルロース繊維含有ペレットを用いて作製された成形体は曲げに対する剛性および強度、並びに耐衝撃性に優れるものであった。
本実施形態のセルロース繊維含有樹脂ペレットの製造方法によれば、生産性が高く、さらに、該ペレットから、曲げ弾性率(曲げに対する剛性)、曲げ強度(曲げに対する強度)および耐衝撃性に優れた成形体が得られる。