(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015742
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】捕手用プロテクター
(51)【国際特許分類】
A63B 71/12 20060101AFI20240130BHJP
A41D 13/015 20060101ALI20240130BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20240130BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A63B71/12 A
A41D13/015
A41D13/05 118
A41D13/05 125
A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118018
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 晃輔
(72)【発明者】
【氏名】田島 和弥
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB11
3B011AC01
3B211AA01
3B211AB11
3B211AC01
(57)【要約】
【課題】装着者である捕手が風を感じることができ、暑さを感じにくい捕手用プロテクターを提供する。
【解決手段】捕手用プロテクター100は、捕手の胴体の一部を保護する第1保護部1と、捕手の胴体の他の一部を保護する第2保護部2とを備える。第2保護部は、捕手の胴体と対向する裏面と、裏面とは反対側に位置する表面とを有している。送風機により第2保護部の表面から裏面に向けて風速2.00m/secの風を送ったときに、裏面を通過した風の風速が0.20m/secよりも速い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕手の胴体の一部を保護する第1保護部と、
捕手の胴体の他の一部を保護する第2保護部とを備え、
前記第2保護部は、捕手の胴体と対向する裏面と、前記裏面とは反対側に位置する表面とを有し、
送風機により前記第2保護部の前記表面から前記裏面に向けて風速2.00m/secの風を送ったときに、前記裏面を通過した風の風速が0.20m/secよりも速い、捕手用プロテクター。
【請求項2】
前記第1保護部は、捕手の胸及び前腹を保護するように設けられており、
前記第2保護部は、捕手の脇腹を保護するように設けられている、請求項1に記載の捕手用プロテクター。
【請求項3】
前記第2保護部の前記表面と前記裏面との間には複数の通気路が形成されている、請求項2に記載の捕手用プロテクター。
【請求項4】
前記第2保護部は、互いに立体的に絡み合っている複数の線状体からなる3次元構造体を含み、
前記複数の線状体の各々は、互いに結合している部分と、互いに間隔を空けて配置されている部分とを有しており、
前記複数の通気路の各々は、前記複数の線状体間に形成されている部分を有している、請求項3に記載の捕手用プロテクター。
【請求項5】
JIS L-1096に規定されるフラジール形法に準じて測定される前記3次元構造体の通気度が、第1保護部の通気度よりも高くかつ360cm3/(cm2・sec)よりも高い、請求項4に記載の捕手用プロテクター。
【請求項6】
前記3次元構造体の厚さが、10mm以上40mm以下である、請求項4に記載の捕手用プロテクター。
【請求項7】
前記3次元構造体のClo値が、1.00より小さい、請求項4に記載の捕手用プロテクター。
【請求項8】
前記第2保護部は、前記裏面を有する裏地と、前記表面を有する表地とをさらに含み、
前記複数の通気路の各々は、前記裏地に形成されている部分と、前記表地に形成されている部分とをさらに有している、請求項4に記載の捕手用プロテクター。
【請求項9】
NOCSAEのND200に規定された野球の硬球を用いた衝撃吸収試験方法に準じて、心臓負荷セル上に配置された前記第2保護部に衝撃速度が30mph±3%となる条件で硬球を発射して衝撃を与えたときに、前記心臓負荷セルにて測定される衝撃力が120ibf以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の捕手用プロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕手用プロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-171415号公報(特許文献1)には、捕手の胸に当接する面と胸との間から熱を逃がすためのプロテクターが記載されている。このプロテクターの裏面には、熱気を外部へ排出するための凹溝模様が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のプロテクターでは、装着者である捕手はプロテクターにより覆われている体表面で風を感じることができない。そのため、捕手は暑さを感じやすい。
【0005】
本発明の主たる目的は、装着者である捕手が風を感じることができ、暑さを感じにくい捕手用プロテクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る捕手用プロテクターは、捕手の胴体の一部を保護する第1保護部と、捕手の胴体の他の一部を保護する第2保護部とを備える。第2保護部は、捕手の胴体と対向する裏面と、裏面とは反対側に位置する表面とを有している。送風機により第2保護部の表面から裏面に向けて風速2.00m/secの風を送ったときに、裏面を通過した風の風速が0.20m/secよりも速い。
【0007】
上記捕手用プロテクターでは、第1保護部は、捕手の胸部及び前腹部を保護するように設けられていてもよい。第2保護部は、捕手の脇腹部を保護するように設けられていてもよい。
【0008】
上記捕手用プロテクターでは、第2保護部は、捕手の脇腹部と対向する裏面と、裏面とは反対側に位置する表面とを有していてもよい。第2保護部の表面と裏面との間には、複数の通気路が形成されているのが好ましい。
【0009】
上記捕手用プロテクターでは、好ましくは、第2保護部は、互いに立体的に絡み合っている複数の線状体からなる3次元構造体を含んでいる。好ましくは、複数の線状体の各々は、互いに結合している部分と、互いに間隔を空けて配置されている部分とを有している。好ましくは、複数の通気路の各々は、複数の線状体間に形成されている部分を有している。
【0010】
上記捕手用プロテクターでは、JIS L 1096に規定されるフラジール形法に準じて測定される3次元構造体の通気度が、第1保護部の通気度よりも高くかつ360cm3/(cm2・sec)よりも高いことが好ましい。
【0011】
上記捕手用プロテクターでは、3次元構造体の厚さが、10mm以上40mm以下であってもよい。
【0012】
上記捕手用プロテクターでは、好ましくは、3次元構造体のClo値が、1.00より小さい。
【0013】
上記捕手用プロテクターでは、第2保護部は、裏面を有する裏地と、表面を有する表地とをさらに含んでいてもよい。複数の通気路の各々は、裏地に形成されている部分と、表地に形成されている部分とをさらに有していてもよい。
【0014】
上記捕手用プロテクターでは、NOCSAEのND200に規定された野球の硬球を用いた衝撃吸収試験方法に準じて、心臓負荷セル上に配置された第2保護部に衝撃速度が30mph±3%となる条件で硬球を発射して衝撃を与えたときに、心臓負荷セルにて測定される衝撃力が120ibf以下であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装着者である捕手が風を感じることができ、暑さを感じにくい捕手用プロテクターを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態に係る捕手用プロテクターを示す正面図である。
【
図2】
図1に示される捕手用プロテクターを装着した捕手がブロッキングしている状態を説明するための図である。
【
図3】
図1に示される捕手用プロテクターの第1保護部の一例を説明するための断面図である。
【
図4】
図1に示される捕手用プロテクターの第2保護部の一例を説明するための断面図である。
【
図5】
図4に示される第2保護部の3次元構造体を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
<捕手用プロテクターの構成>
本実施の形態に係る捕手用プロテクターは、野球又はソフトボールの捕手がその上半身に装着するプロテクターである。
図1に示されるように、本実施の形態に係る捕手用プロテクター100は、捕手の胴体を保護する胴部101と、捕手の肩を保護する肩部102とを備える。肩部102は、胴部101と接続されている。胴部101は、捕手の胴体の一部を保護する第1保護部1と、捕手の導体の他の一部を保護する第2保護部2とを備える。
【0018】
図1に示されるように、好ましくは、第1保護部1は捕手の胸及び前腹を保護するように設けられており、第2保護部2は捕手の左右の脇腹を保護するように設けられている。第1保護部1は、捕手の胸又は前腹と対向する裏面と、当該裏面とは反対側に位置する表面とを有している。第2保護部2は、捕手の脇腹と対向する裏面と、当該裏面とは反対側に位置する表面とを有している。捕手用プロテクター100では、第2保護部2の表面と裏面間の通気性が、第1保護部1の表面と裏面間の通気性よりも高い。通気性に関する詳細は、後述する。
【0019】
第1保護部1は、捕手の胸を保護する胸部1Aと、捕手の前腹を保護する前腹部1Bとを含む。第2保護部2は、捕手の左脇腹を保護する第1脇腹部2Aと、右脇腹を保護する第2脇腹部2Bとを含む。第1脇腹部2A及び第2脇腹部2Bは、前腹部1Bを挟むように互いに分離して配置されている。
【0020】
図1に示されるように、捕手用プロテクター100を正面から視たときに、胴部101の左右の各外縁部は、くびれた形状を有している。異なる観点から言えば、胴部101は、上方から下方に向かうにつれて左右の幅が小さくなる上部と、上部の下端に接続されておりかつ上方から下方に向かうにつれて上記幅が大きくなる下部とを有している。胴部101の左右方向の幅が最も小さい部分(上部の下端かつ下部の上端)の左右の外縁部は、くびれの谷部1Cを成している。胴部101のくびれは、胴部101が捕手の両腕の動作を妨げないように設けられている。
【0021】
図1に示されるように、捕手用プロテクター100を正面から視たときに、胴部101の下部は、胸部1Aの左右の各外縁部に沿っておりかつ谷部1Cよりも下方に延びる2本の仮想線L間に位置する中央部分と、各仮想線Lに対して中央部分とは反対側に位置する1対の側方部分とを有している。
【0022】
胸部1Aは、胴部101の上部に含まれている。前腹部1B、第1脇腹部2A、及び第2脇腹部2Bは、胴部101の下部に含まれている。前腹部1Bは、胴部101の下部の中央部分に含まれている。第1脇腹部2A及び第2脇腹部2Bの各々は、胴部101の下部の一対の側方部分に含まれている。
【0023】
図2は、捕手用プロテクター100を装着した捕手が手前でバウンドしたボールを後に逸らさないようにブロッキングしている状態(以下、ブロッキング状態とも記載する)を説明するための図である。
図2に示されるように、ブロッキング状態において、捕手は開いた両膝を地面に着けて腰を浮かすとともに両脇を締め、股下に形成される略三角形状の隙間をキャッチャーミットで塞ぐ態勢をとる。このブロッキング状態において、捕手の両腕は、捕手の左右の脇腹を隠すように配置される。言い換えると、ブロッキング状態において、捕手の両腕は、捕手用プロテクター100の胴部101の中央部分の両側であって、上記一対の側方部分の前方に配置される。つまり、ブロッキング状態において、第2保護部2の第1脇腹部2A及び第2脇腹部2Bは、捕手の両腕によって隠される。
【0024】
前腹部1Bと第1脇腹部2Aとの接続部及び前腹部1Bと第2脇腹部2Bとの接続部の形状及び配置は、上記構成を備えている限りにおいて特に制限されない。例えば、前腹部1Bと第1脇腹部2Aとの接続部及び前腹部1Bと第2脇腹部2Bとの接続部の少なくとも一部は、上記仮想線L上に直線上に配置されている。前腹部1Bと第1脇腹部2Aとの接続部及び前腹部1Bと第2脇腹部2Bとの接続部の全部が、上記仮想線L上に直線上に配置されていてもよい。後者の場合、第1脇腹部2A及び第2脇腹部2Bは、1対の側方部分を成している。
【0025】
第1保護部1及び第2保護部2には、捕手の背中及び腰に渡されるベルトが接続されている。第1脇腹部2Aには、捕手の腰に渡されるベルトの一端が接続されており、第2脇腹部2Bには、当該ベルトの他端が接続されている。
【0026】
<第2保護部の構成>
上述のように、捕手用プロテクター100では、第2保護部2の表面と裏面間の通気性が第1保護部1の表面と裏面間の通気性よりも高い。通気性の1つの指標として、特定の条件下で測定される風速が挙げられる。送風機により第2保護部2の表面20Bから裏面20Aに向けて風速2.00m/secの風を送ったときに、第2保護部2は、当該風を通すように設けられている。好ましくは、第2保護部2の表面20Bから裏面20Aに向けて風速2.00m/secの風を送ったときに、第2保護部2の裏面20Aを通過した風の速度(以下、第2速度とも記載する)は、0.20m/secよりも速い。より好ましくは、第2速度は、0.35m/sec以上である。
【0027】
他方、第1保護部1の表面及び裏面の一方から他方に向けて風速2.00m/secの風を送ったときに、第1保護部1は、当該風を通すように設けられていてもよいし、当該風を通さないように設けられていてもよい。前者の場合、第1保護部1の表面及び裏面の一方から他方に向けて風速2.00m/secの風を送ったときに、第1保護部1の表面及び裏面の他方を通過した風の速度(以下、第1速度とも記載する)は、第2速度よりも遅い。
【0028】
第2保護部2の保温性は、第1保護部1の保温性よりも低い。第2保護部2のClo値は、第1保護部1のClo値よりも小さい。本明細書において、Clo値は、KES-F7サーモラボ(カトーテック(株)製)を用いて、室温20℃、相対湿度が65%RHである環境下で測定・算出される値(単位:clo)である。好ましくは、第2保護部2のClo値は、1.00より小さい。より好ましくは、第2保護部2のClo値は、0.90より小さい。第1保護部1のClo値は、例えば1.00以上である。
【0029】
第2保護部2の衝撃吸収性能は、第1保護部1の衝撃吸収性能よりも低くてもよい。NOCSAEのND200に規定された野球の硬球を用いた衝撃吸収試験方法に準じて、心臓負荷セル上に配置された第2保護部2に衝撃速度が30mph±3%となる条件で硬球を発射して衝撃を与えたときに、心臓負荷セルにて測定される衝撃力(以下、第2衝撃力とも記載する)は、120ibf以下である。NOCSAEのND200に規定された野球の硬球を用いた衝撃吸収試験方法に準じて、心臓負荷セル上に配置された第1保護部1に衝撃速度が30mph±3%となる条件で硬球を発射して衝撃を与えたときに、心臓負荷セルにて測定される衝撃力(以下、第1衝撃力とも記載する)は、90ibf以下である。第2衝撃力は、90ibfよりも大きくてもよい。第2衝撃力は、100ibfよりも大きくてもよく、110ibfよりも大きくてもよい。
【0030】
図3に示されるように、第1保護部1は、捕手の胸又は前腹と対向する裏面10A、及び裏面10Aとは反対側に位置する表面10Bを有している。第1保護部1は、例えばベース部材11、衝撃緩衝材12、裏地13、及び表地14を備える。
【0031】
ベース部材11は、第1保護部1の芯材である。ベース部材11を構成する材料には、布地、革、合成皮革、樹脂など任意の材料を用いることができるが、例えばポリウレタン、ポリプロピレン、又はEVA(Ethylene-Vinyl Acetate)等の発泡樹脂であってもよい。衝撃緩衝材12は、ベース部材11に取り付けられている。衝撃緩衝材12は、衝撃を吸収可能である。衝撃緩衝材12を構成する材料は、例えば発泡樹脂であり、EVAであってもよい。裏地13は、第1保護部1の裏面10Aを有している。表地14は、第1保護部1の表面10Bを有している。第1保護部1は、例えば、裏地13、ベース部材11、衝撃緩衝材12、及び表地14がこの記載順に積層されて成る積層体である。
【0032】
なお、ベース部材11及び衝撃緩衝材12には、上記積層方向にこれらを貫通する少なくとも1つの貫通孔が形成されていてもよい。ベース部材11及び衝撃緩衝材12には、上記貫通孔が形成されていなくてもよい。
【0033】
図4に示されるように、第2保護部2は、捕手の脇腹と対向する裏面20A、及び裏面20Aとは反対側に位置する表面20Bを有している。第2保護部2は、例えばベース部材21、衝撃緩衝材22、裏地23、及び表地24を備える。
【0034】
ベース部材21は、第2保護部2の芯材である。ベース部材21を構成する材料には、布地、革、合成皮革、樹脂など任意の材料を用いることができるが、例えばポリウレタン、ポリプロピレン、又はEVA等の発泡樹脂であってもよい。第2保護部2のベース部材21は、例えば第1保護部1のベース部材11と一体の部材として構成されていてもよい。衝撃緩衝材22は、衝撃を吸収可能である。衝撃緩衝材22の衝撃吸収性能は、衝撃緩衝材12の衝撃吸収性能よりも低い。衝撃緩衝材22の反発性能は、衝撃緩衝材12の反発性能よりも高くてもよい。裏地23は、第2保護部2の裏面20Aを有している。表地24は、第2保護部2の表面20Bを有している。裏地23及び表地24は、一体のカバー部材として構成されていてもよい。第2保護部2は、例えば裏地23、ベース部材21、衝撃緩衝材22、及び表地24がこの記載順に積層されて成る積層体である。
【0035】
第2保護部2の表面20Bと裏面20Aとの間には、複数の通気路が形成されている。言い換えると、第2保護部2の裏地23、ベース部材21、衝撃緩衝材22、及び表地24の各々には、互いに連なる複数の通気路が形成されている。例えば、ベース部材21には、複数の貫通孔が形成されている。
【0036】
JIS規格(JIS L 1096)に規定されるフラジール形法に準じて測定圧力を125Paとして測定される、衝撃緩衝材22の通気度が、360cm3/(cm2・sec)よりも高い。好ましくは、衝撃緩衝材22の上記通気度は、500cm3/(cm2・sec)以上である。ベース部材21、裏地23、及び表地24の各々の上記通気度は、衝撃緩衝材22の通気度よりも低くてもよい。例えば、第2保護部2を構成する各部材のうち表地24の通気度が最も低くてもよく、表地24の通気度は170cm3/(cm2・sec)以上であってもよい。
【0037】
衝撃緩衝材22の表面から裏面に向けて風速1.00m/secの風を送ったときに、衝撃緩衝材22の裏面を通過した風の速度は、0.37m/secよりも速く、より好ましくは0.52m/sec以上である。
【0038】
好ましくは、第2保護部2の衝撃緩衝材22のClo値は、1.00より小さい。より好ましくは、衝撃緩衝材22のClo値は、0.90より小さい。
【0039】
衝撃緩衝材22は、互いに立体的に絡み合っている複数の線状体からなる3次元構造体である。
図5は、3次元構造体の一例を説明するための図である。
図5に示されるように、複数の線状体25の各々は、互いに結合している部分と、互いに間隔を空けて配置されている部分とを有している。衝撃緩衝材22において、複数の通気路26の各々は、複数の線状体25間に形成されている。つまり、第2保護部2に形成されている複数の通気路の各々は、3次元構造体の線状体25間に形成されている部分を有している。各線状体25の外径は、例えば0.1mm以上2.0mm以下である。
【0040】
衝撃緩衝材22の複数の線状体25の各々を構成する材料は、例えば樹脂である。線状体25を構成する材料は、例えばポリエチレン又はポリプロピレンであってもよい。
【0041】
衝撃緩衝材22の目付は、衝撃緩衝材12の目付よりも小さい。衝撃緩衝材12及び衝撃緩衝材22の各々の目付は、JIS規格(JIS L 1096)に規定される標準状態における単位面積当たりの質量A法(JIS法)に準じて測定される衝撃緩衝材22の目付は、当該方法に準じて測定される。衝撃緩衝材22の目付は、例えば1400g/m2以下である。好ましくは、衝撃緩衝材22の目付は、1200g/m2以下である。
【0042】
好ましくは、衝撃緩衝材22の厚さは、10mm以上40mm以下である。
図4に示されるように、衝撃緩衝材22と表地24との間には、隙間が形成されていてもよい。第2保護部2の裏地23、ベース部材21、及び衝撃緩衝材22は、互いに隙間無く積層されていてもよい。
【0043】
<捕手用プロテクターの効果>
捕手用プロテクター100では、送風機により第2保護部2の表面から裏面に向けて風速2.00m/secの風を送ったときに、裏面を通過した風の風速が0.20m/secよりも速い。これにより、捕手用プロテクター100を装着した捕手は、第2保護部2によって保護されている胴体部分において風を感じることができるため、暑さを感じにくい。
【0044】
捕手用プロテクター100では、第1保護部1が捕手の胸及び前腹を保護するように設けられており、第2保護部2が捕手の脇腹を保護するように設けられている。捕手用プロテクター100は捕手に向かうボール(投手が投げたボール又は打者が打ったファウルボール)から捕手を保護するが、捕手の捕球動作時に捕手の脇腹に向かうボールが発生する確率は、捕手の胸又は前腹に向かうボールが発生する確率よりも低い。特に、
図5に示されるブロッキング状態では、捕手の脇腹は両腕によって隠される。そこで、捕手用プロテクター100では、第2保護部2が捕手の脇腹を保護するために要求される衝撃吸収性能を実現しながらも捕手が脇腹に風を感じることができるように、第2保護部2の通気度が上記のように設けられている。捕手用プロテクター100では、第1保護部1は、捕手の胸及び前腹を保護するために、第2保護部2よりも高い衝撃吸収性能を実現するように設けられている。つまり、捕手用プロテクター100は、捕手を保護するために要求される衝撃吸収性能を有しながらも、従来の捕手用プロテクターと比べて高い通気性を有している。
【0045】
捕手用プロテクター100では、第2保護部2の裏面20Aと表面20Bとの間に複数の通気路が形成されている。第2保護部2は、互いに立体的に絡み合っている複数の線状体25からなる3次元構造体を含む。複数の線状体25の各々は、互いに結合している部分と、互いに間隔を空けて配置されている部分とを有している。複数の通気路の各々は、複数の線状体25間に形成されている部分を有している。このような3次元構造体は、衝撃緩衝材12よりも高い通気性を有しながらも、衝撃緩衝材22として捕手の脇腹を保護するために要求される衝撃吸収性能を有し得る。
【0046】
捕手用プロテクター100では、第2保護部2に含まれる各部材に、複数の通気路の各々の一部が形成されているため、第2保護部2に含まれる一部の部材にのみ複数の通気路が形成されている場合と比べて、風が第2保護部2を抜けやすい。
【0047】
捕手用プロテクター100では、第2保護部2の3次元構造体の厚さが10mm以上40mm以下である。3次元構造体の厚さが10mm以上であることにより、3次元構造体の厚さが10mm未満である場合と比べて、第2保護部2の衝撃吸収性能が高められ、第2保護部2が捕手の脇腹を保護する観点で要求される衝撃吸収性能を達成できる。3次元構造体の厚さが30mm以下であることにより、3次元構造体の厚さが30mmよりも厚い場合と比べて、第2保護部2の通気性が高められる。
【0048】
捕手用プロテクター100では、NOCSAEのND200に規定された野球の硬球を用いた衝撃吸収試験方法に準じて、心臓負荷セル上に配置された第2保護部2に衝撃速度が30mph±3%となる条件で硬球を発射して衝撃を与えたときに、心臓負荷セルにて測定される衝撃力が118ibf以下である。このような第2保護部2は、捕手の脇腹への衝撃を緩和する観点で要求される衝撃吸収性能を有している。
【0049】
好ましくは、送風機により第2保護部2の表面20Bから裏面20Aに向けて風速2.00m/secの風を送ったときに、第2保護部2の裏面20Aを通過した風の風速が0.35m/secよりも速い。このようにすれば、捕手用プロテクター100を装着した捕手は、第2保護部2を介してグラウンドに生じた風をより強く感じることができる。
【0050】
捕手用プロテクター100では、衝撃緩衝材22のClo値が、1.00より小さい。そのため、捕手用プロテクター100は熱を逃がしやすく、捕手用プロテクター100を装着した捕手は暑さを感じにくい。
【0051】
捕手用プロテクター100では、JIS L 1096に規定されるフラジール形法に準じて測定される衝撃緩衝材22の通気度が360cm3/(cm2・sec)以上である。そのため、捕手用プロテクター100を装着した捕手は、第2保護部2によって保護されている胴体部分において風を感じやすく、暑さをより感じにくい。より好ましくは、衝撃緩衝材22の上記通気度が、500cm3/(cm2・sec)以上である。
【0052】
上述のように、捕手用プロテクター100では、衝撃緩衝材22の反発性能が、衝撃緩衝材12の反発性能よりも高くてもよい。
図2に示されるブロッキング状態等において、第1保護部1に衝突したボールの跳ね返りを抑制する観点で、第1保護部1の衝撃緩衝材12の反発性能は低い方が好ましい。他方、上記ブロッキング状態において、ボールが第2保護部2に衝突する可能性は非常に低い。そのため、衝撃緩衝材22の反発性能は、衝撃緩衝材12の反発性能よりも高くてもよい。
【0053】
<捕手用プロテクターの変形例>
捕手用プロテクター100において、第2保護部2は、ベース部材21、裏地23及び表地24を含んでいるが、これに限られない。第2保護部2は、衝撃緩衝材22のみにより構成されていてもよい。また、第2保護部2は、衝撃緩衝材22と、衝撃緩衝材22を挟むように配置された裏地23及び表地24により構成されていてもよい。
【0054】
捕手用プロテクター100において、ベース部材21、裏地23、及び表地24の各々は、従来の捕手用プロテクターのそれらと同様の構成を有していてもよい。
【0055】
<捕手用プロテクターに関する評価試験>
以下に、本発明者らが行った捕手用プロテクター100に関する評価試験について説明する。第1に、第2保護部2の衝撃緩衝材22の通気性等を評価した。第2に、第2保護部2の全体の通気性を評価した。
【0056】
<衝撃緩衝材に対する評価試験>
衝撃緩衝材22の候補として試料1~9を準備した。試料1~7は、上述した3次元構造体であって、各線状体を構成する材料及び厚さの少なくともいずれかが互いに異なるものとした。試料1~3の各線状体を構成する材料はポリエチレン、試料4~7の各線状体を構成する材料はポリプロピレンとした。試料1~7の各線状体の外径は0.6mmとした。試料1~7の平面形状及び寸法は、1辺の長さが200mmである正方形状とした。試料1~7の厚さは、10mm~24mmの範囲内において互いに異なるものとした。
【0057】
試料8は、2つの編み地が複数の線状体によって連結されているダブルラッセル構造体とした。試料8の連結糸としての各線状体の外径は0.1mmとした。試料9は、複数の貫通孔が形成されている平板構造体とした。試料9の平板構造体を構成する材料はEVAとした。試料9に形成されている複数の貫通孔の各々の孔径は、3.0mmとした。隣り合う2つの貫通孔の間隔は、8.0mmとした。試料8,9の平面形状及び寸法は、1辺の長さが200mmである正方形状とした。試料8の厚さは、20mmとした。試料9の厚さは、6mmとした。
【0058】
<評価方法>
試料1~9の通気性を評価するために、JIS規格(JIS L 1096)に規定されるフラジール形法に準じて、標準時の試料1~9の通気度を評価した。測定圧力は125Paとした。
【0059】
さらに、試料1~9の通気性を評価するために、送風機により風速1.00m/secの風を試料1~9の各々に送ったときに、試料1~9の各々を通過した風の速度を測定した。送風方向は、試料1~9の各々の厚さ方向とした。
【0060】
試料1~9の保温性を評価するために、KES-F7サーモラボ(カトーテック(株)製)を用いて、室温20℃、相対湿度が65%RHである環境下で、試料1~9の各々のClo値(単位:clo)を測定した。
【0061】
試料2、4~7の目付を、JIS規格(JIS L 1096)に規定される標準状態における単位面積当たりの質量A法(JIS法)に準じて測定した。
【0062】
さらに、厚さが互いに等しい試料7及び試料8と、これらよりも厚みが薄い試料9を用いて、通気性の官能評価を行った。まず、送風機が一定量の送風を行っている状態において、各試料をその表面が送風機を向くように送風路上に配置した。次に、3名の被験者が、各試料の裏面側に手を置き、風を感じる程度を5段階で評価した。5段階評価では、被験者が風を強く感じた場合を4、被験者が十分な風を感じた場合を3、被験者がわずかな風を感じた場合を2、被験者が風をごくわずかにしか感じなかった場合を1、被験者が風を感じない場合を0とした。3名の被験者が評価した値の平均値を、各試料の評価値とした。
【0063】
上記評価試験の評価結果を、表1に示す。
【0064】
【0065】
表1に示されるように、試料1~7の各々の通気性は、試料8,9の各々の通気性よりも高かった。試料1~7の上記通気度は、360cm3/(cm2・sec)よりも高かった。試料1~7にて測定された上記風速は、0.37m/secよりも速かった。試料1~7のClo値は、1.00より小さかった。試料1~7の間では、厚さが薄いほど通気度が高く、目付が小さいほど通気度が高い傾向が確認された。
【0066】
通気度・風速の評価試験では、試料7の通気性は、試料8,9よりも高かったが、試料1~7の中では最も低かった。他方、官能試験において、試料7の通気性は、試料8,9よりも高く、さらには全ての被験者が十分な風を感じられるほどに高いことが確認された。そのため、通気度・風速の評価試験において試料7よりも高い通気性を有していた試料1~6も、官能試験において全ての被験者が十分な風を感じられるほどに高い通気性を有していると推測される。
【0067】
試料1~7の各々の保温性は、試料8,9の各々の保温性よりも低かった。
さらに、試料4,7,8の衝撃吸収性能を、NOCSAEのND200に規定された野球の硬球を用いた衝撃吸収試験方法に準じて、評価した。まず、各試料を、心臓負荷セル上に配置した。次に、心臓負荷セル上に配置された各試料に、衝撃速度が30mph±3%となる条件で硬球を発射して衝撃を与えたときに、心臓負荷セルにて測定される衝定した。
【0068】
試料4の衝撃力は、118.5ibfであった。試料7の衝撃力は、112.1ibfであった。試料8の衝撃力は、118.5ibfであった。この結果から、試料4,7,8が互いに同等の衝撃吸収性能を有していることが確認された。
【0069】
上記の評価試験により、試料1~7の3次元構造体が高い通気性を有することが確認された。その結果、衝撃緩衝材22として試料1~7の3次元構造体を含む第2保護部2の通気性が、試料8又は試料9を含む捕手用プロテクターの通気性よりも高いことが確認された。
【0070】
<第2保護部全体に対する評価試験>
上述した衝撃緩衝材に対する評価試験を受けて、第2保護部の実施例1及び比較例1,2を準備した。
【0071】
実施例1は、裏地としてのメッシュ材(1枚のポリエステルメッシュ)、ベース部材としての試料9、衝撃緩衝材としての試料7、及び表地としてメッシュ材(2枚のポリエステルメッシュを重ねたもの)が積層した積層体とした。比較例1は、裏地としてのメッシュ材、ベース部材としての試料9、衝撃緩衝材としての試料8、及び表地としてメッシュ材(W-Cメッシュ)が積層した積層体とした。比較例2は、裏地としてのメッシュ材、ベース部材としての試料9、衝撃緩衝材としての試料9、及び表地としてメッシュ材(W-Cメッシュ)が積層した積層体とした。実施例1、及び比較例1,2の間で、各部材の厚さは同等とした。
【0072】
<評価方法>
第1に、送風機により風速2.00m/secの風を実施例1、比較例1,2の各々に送ったときに、それぞれを通過した風の速度を測定した。送風方向は、実施例1、比較例1,2の積層方向とした。
【0073】
第2に、送風機が一定量の送風を行っている状態において、実施例1、比較例1,2の各々をその表面が送風機を向くように送風路上に配置した。次に、5名の被験者が、各試料の裏面側に手を置き、風を感じる程度を4段階で評価した。4段階評価では、被験者が十分な風を感じた場合を3、被験者がわずかな風を感じた場合を2、被験者が風をごくわずかにしか感じなかった場合を1、被験者が風を感じない場合を0とした。3名の被験者が評価した値の平均値を、各試料の評価値とした。
【0074】
上記評価試験の評価結果を、表2に示す。
【0075】
【0076】
表2に示されるように、実施例1の通気性は、比較例1,2の各々の通気性よりも高かった。実施例1にて測定された上記風速は、0.20m/secよりも速かった。官能試験において、実施例1の通気性は、比較例1,2よりも高いことが確認された。そのため、通気度・風速の評価試験において試料7よりも高い通気性を有していた試料1~6を備える第2保護部も、官能試験において全ての被験者が十分な風を感じられるほどに高い通気性を有していると推測される。
【0077】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1 第1保護部、1A 胸部、1B 前腹部、1C 谷部、2 第2保護部、2A 第1脇腹部、2B 第2脇腹部、10A,20A 裏面、10B,20B 表面、11,21 ベース部材、12,22 衝撃緩衝材、13,23 裏地、14,24 表地、25 線状体、26 通気路、100 捕手用プロテクター、101 胴部、102 肩部。