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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157423
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】地上装置及び車上装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/14 20060101AFI20241030BHJP
   B61L 19/06 20060101ALI20241030BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B61L23/14 Z
B61L19/06
B60L15/40 G
B60L15/40 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071784
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋一
(72)【発明者】
【氏名】神宮 雅昭
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CA06
5H125CB10
5H125CC05
5H125EE55
5H161AA01
5H161BB02
5H161CC03
5H161CC07
5H161DD21
5H161EE05
5H161EE07
5H161FF01
(57)【要約】
【課題】信号システムにおける走行の安全性を確保しつつ、地上・車上間の通信設備の簡素化を図ることを可能とする技術を実現すること。
【解決手段】列車20は、走行位置を計測し、転てつ機42の外方に定められた列車位置確認区間46内に位置した場合に地上装置10との通信を実行する。地上装置10は、列車20との通信によって列車20が列車位置確認区間に位置することを検出し、且つ、転てつ機42の動作状態に基づく転てつ機42の内方への進行許否が許可である場合に、転てつ機42の内方に位置する走行許容地点44を列車20に通知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転てつ機の外方に列車位置確認区間が定められた軌道を走行する列車に対して、少なくとも前記列車位置確認区間内に設定される走行許容地点の情報を通知するための地上装置であって、
前記列車は、走行位置を計測する位置計測手段と、前記列車位置確認区間内に位置した場合に前記地上装置との通信を実行する通信実行制御手段と、所与の停止点に基づく速度パターンを用いた走行制御を行う走行制御手段と、前記停止点とする前記走行許容地点である設定地点を記憶する設定地点記憶手段と、を備えており、
前記通信実行制御手段による通信に応じて、前記列車が前記列車位置確認区間に位置することを検出する検出手段と、
前記転てつ機の動作状態に基づく前記転てつ機の内方への進行の許否を取得する進行許否取得手段と、
前記検出手段の検出がなされ、且つ、前記進行許否取得手段によって取得された進行許否が許可である場合に、前記転てつ機の内方に位置する前記走行許容地点を前記設定地点として前記設定地点記憶手段に記憶させるための通知を前記列車に行う通知制御手段と、
を備える地上装置。
【請求項2】
前記進行許否取得手段は、前記転てつ機の動作を制御する連動装置と所定の通信を行って前記転てつ機の内方への進行の許否を取得する、
請求項1に記載の地上装置。
【請求項3】
前記進行許否取得手段は、前記転てつ機の動作状態を照査する状態照査手段を有する、
請求項1又は2に記載の地上装置。
【請求項4】
少なくとも転てつ機の外方に定められた列車位置確認区間内に設定される走行許容地点の情報を地上装置から受信する列車の車上装置であって、
走行位置を計測する位置計測手段と、
前記列車位置確認区間内に位置した場合に前記地上装置との通信を実行する通信実行制御手段と、
所与の停止点に基づく速度パターンを用いた走行制御を行う走行制御手段と、
前記停止点とする前記走行許容地点である設定地点を記憶する設定地点記憶手段と、
を備え、
前記通信実行制御手段による前記地上装置との前記通信によって、新たな前記設定地点とする前記転てつ機の内方に位置する前記走行許容地点の情報を受信した場合に、当該新たな設定地点を前記設定地点記憶手段に記憶し、前記走行制御手段が当該新たな設定地点に基づく速度パターンを用いた走行制御を行う、車上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上装置及び車上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道における信号システムでは、地上装置から車上装置へ走行限界地点や停止点等を送信し、車上装置では受信した走行限界地点や停止点等に停止するための速度パターンに従って列車を走行制御する技術が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02-109769号公報
【特許文献2】特開2019-177714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
信号システムでは、安全性の確保のため、進路の開通後、転てつ機の転換方向や鎖錠有無といった動作状態の継続的な確認を目的とした地上・車上間の常時の通信を必要としており、かかる通信設備の維持にコストを要していた。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、信号システムにおける走行の安全性を確保しつつ、地上・車上間の通信設備の簡素化を図ることを可能とする技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、
転てつ機の外方に列車位置確認区間が定められた軌道を走行する列車に対して、少なくとも前記列車位置確認区間内に設定される走行許容地点の情報を通知するための地上装置であって、
前記列車は、走行位置を計測する位置計測手段と、前記列車位置確認区間内に位置した場合に前記地上装置との通信を実行する通信実行制御手段と、所与の停止点に基づく速度パターンを用いた走行制御を行う走行制御手段と、前記停止点とする前記走行許容地点である設定地点を記憶する設定地点記憶手段と、を備えており、
前記通信実行制御手段による通信に応じて、前記列車が前記列車位置確認区間に位置することを検出する検出手段(例えば、図7の検出部102)と、
前記転てつ機の動作状態に基づく前記転てつ機の内方への進行の許否を取得する進行許否取得手段(例えば、図7の進行許否取得部104)と、
前記検出手段の検出がなされ、且つ、前記進行許否取得手段によって取得された進行許否が許可である場合に、前記転てつ機の内方に位置する前記走行許容地点を前記設定地点として前記設定地点記憶手段に記憶させるための通知を前記列車に行う通知制御手段(例えば、図7の通知制御部108)と、
を備える地上装置である。
【0007】
他の発明として、
少なくとも転てつ機の外方に定められた列車位置確認区間内に設定される走行許容地点の情報を地上装置から受信する列車の車上装置であって、
走行位置を計測する位置計測手段(例えば、図7の位置計測部302)と、
前記列車位置確認区間内に位置した場合に前記地上装置との通信を実行する通信実行制御手段(例えば、図7の通信実行制御部304)と、
所与の停止点に基づく速度パターンを用いた走行制御を行う走行制御手段(例えば、図7の走行制御部308)と、
前記停止点とする前記走行許容地点である設定地点を記憶する設定地点記憶手段(例えば、図7の車上記憶部400)と、
を備え、
前記通信実行制御手段による前記地上装置との前記通信によって、新たな前記設定地点とする前記転てつ機の内方に位置する前記走行許容地点の情報を受信した場合に、当該新たな設定地点を前記設定地点記憶手段に記憶し、前記走行制御手段が当該新たな設定地点に基づく速度パターンを用いた走行制御を行う、車上装置を構成してもよい。
【0008】
第1の発明等によれば、信号システムにおける走行の安全性を確保しつつ、地上・車上間の通信設備の簡素化を図ることができる。つまり、列車は所与の停止点に基づく速度パターンを用いた走行制御を行い、地上装置は列車の車上装置に対して停止点となる走行許容地点を通知する。地上装置による走行許容地点の通知は、転てつ機の外方に定められた列車位置確認区間に列車が位置したことが検出され、且つ、当該転てつ機の内方への進行が許可である場合に、当該転てつ機の内方に位置する走行許容地点を通知するものである。言い換えれば、列車が列車位置確認区間に位置しないときは、車上装置と地上装置との間の通信は必要とされない。従って、少なくとも、転てつ機の外方の列車位置確認区間に地上・車上間の通信を可能とするための通信設備を設ければよい。
【0009】
また、列車は、所与の停止点に基づく速度パターンに従って走行制御されるが、転てつ機の内方への進行が許可されない場合には、当該転てつ機の内方の走行許容地点が通知されない。そのため、転てつ機の内方へ進行できずに転てつ機の外方の停止点(走行許容地点)に停止することになる。よって、走行の安全性が確保される。
【0010】
第2の発明は、上述の発明において、
前記進行許否取得手段は、前記転てつ機の動作を制御する連動装置と所定の通信を行って前記転てつ機の内方への進行の許否を取得する、
地上装置である。
【0011】
第2の発明によれば、地上装置は、転てつ機の動作を制御する連動装置と所定の通信を行うことで、転てつ機の内方への進行の許否を取得することができる。
【0012】
第3の発明は、上述の発明において、
前記進行許否取得手段は、前記転てつ機の動作状態を照査する状態照査手段(例えば、図7の状態照査部106)を有する、
地上装置である。
【0013】
第3の発明によれば、地上装置は、転てつ機の転換方向や鎖錠の有無といった動作状態を照査することで、転てつ機の内方への進行の許否を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】信号システムの概略図。
図2】列車が駅間を走行する際の制御手順の説明図。
図3】列車が駅間を走行する際の制御手順の説明図。
図4】列車が駅間を走行する際の制御手順の説明図。
図5】列車が駅間を走行する際の制御手順の説明図。
図6】車上装置及び地上装置が行う処理のフローチャート。
図7】車上装置及び地上装置の機能構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0016】
[概要]
本実施形態は、説明を分かり易くするために、閑散線区や山間部などの線区全体にわたる無線通信網の構築が鉄道運営上、費用対効果の面でコスト的に困難な線区を想定し、かかる線区において走行の安全性を確保しつつ、地上・車上間の通信に係るコストの削減を図った信号システムについての実施形態である。当該線区以外にも本実施形態の技術は適用可能である。
【0017】
[システム構成]
図1は、本実施形態における信号システムの概略を速度パターンとともに示す図である。図1に示すように、本実施形態における信号システム1は、地上装置10と、軌道40を走行する列車20に搭載される車上装置30とを備える。
【0018】
軌道40には、分岐箇所に設けられている転てつ機42の外方に列車位置確認区間46が設定されている。そして、この列車位置確認区間46を通信範囲に含むように無線基地局が設置される等により、地上装置10と当該区間内に位置する列車20の車上装置30との間(地上・車上間)の無線通信が可能となっている。また、列車位置確認区間46内には、列車20が当該転てつ機42の外方に停止する際の速度パターンの停止点となる走行許容地点44が設定されている。なお、図1では、一方向(図1中の右方向)についての列車位置確認区間46及び走行許容地点44を示しているが、進行方向別(上下別)に列車位置確認区間46及び走行許容地点44が設定される。
【0019】
列車20の車上装置30は、例えば、車軸に取り付けられた速度発電機が検出する回転数の計測値をもとに算出したり、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星信号を受信することで、自列車の位置(より詳細には軌道40に沿った位置)を計測することができる。また、車上装置30は、所与の停止点に停止するための速度パターンを生成し、当該速度パターンに従った自列車の走行制御を行う。図2に示す速度パターンは、横軸を速度パターンの下方に示す軌道40の位置とし、縦軸を速度として示しており、走行許容地点44の位置で速度ゼロ、すなわち停止することを示している。
【0020】
車上装置30は、自列車20の位置が列車位置確認区間46内であると判断した場合に、その旨を地上装置10へ無線通信によって通知し、この通知に対して地上装置10から通知された走行許容地点44を、速度パターンの停止点とする走行許容地点である設定地点402(後述の図7参照)として記憶する。そして、記憶した設定地点402(走行許容地点44)のほか、先行列車の位置や次駅の停止位置等から停止点を判断して速度パターンを更新する。
【0021】
地上装置10は、例えば中央指令所に設置され、軌道40を走行する列車20の車上装置30に、当該列車20の進行方向に対する転てつ機42の外方に設定された走行許容地点44の情報を通知する。つまり、地上装置10は、列車位置確認区間46に列車20が位置することを検出すると、該当する転てつ機42の内方への進行の許否(許可するか否か)を取得する。進行が許可ならば、該当する転てつ機42の外方に設定された走行許容地点44の情報を当該列車20の車上装置30へ通知する。列車位置確認区間46に列車20が位置することの検出は、例えば、列車位置確認区間46では地上・車上間の無線通信が可能であるので、列車20の車上装置30から当該列車20の位置の情報が無線通信によって通知されること等によって実現することができる。転てつ機42の内方への進行の許否の取得は、例えば、転てつ機42を制御する連動装置50から取得するとしてもよいし、転てつ機42の動作状態を照査して判断することによって取得するとしてもよい。
【0022】
[制御手順]
図2図5は、列車20が駅間を走行する際の制御手順を説明する図であり、図6は、当該制御手順に係る車上装置30及び地上装置10が行う処理のフローチャートである。ただし、説明の簡明のため、駅間には他の列車は在線していないものとする。
【0023】
図6のフローチャートに沿って制御手順を説明する。先ず、駅出発前に、列車20の車上装置30は、地上装置10に対して、自列車の列車IDや位置等とともに設定地点402とすべき走行許容地点44の要求を通知する(ステップS1)。すると、地上装置10は、通知された列車20の位置や進路等に基づき、列車20が最初に通過予定の転てつ機42の外方に設定された走行許容地点44を判断し(ステップS31)、判断した走行許容地点44を列車20の車上装置30に通知する(ステップS33)。
【0024】
車上装置30は、地上装置10から通知された走行許容地点44を、速度パターンの停止点とする走行許容地点である設定地点402として記憶し(ステップS3)、この設定地点402を停止点とする速度パターンを生成する(ステップS5)。そして、生成した速度パターンに従った自列車の走行制御を開始する(ステップS7)。すなわち、図2に示すように、列車20は、最初に通過予定の転てつ機42の外方に設定されている走行許容地点44を停止点とする速度パターンに従って走行する。
【0025】
次いで、図3に示すように、列車20が転てつ機42に接近して当該転てつ機42の外方に設定されている列車位置確認区間46に到達すると、列車20の車上装置30と地上装置10との間で無線通信が可能となる。車上装置30は、自列車20が列車位置確認区間46に到達したことを判断すると(ステップS9:YES)、自列車が列車位置確認区間46に到達した旨を、無線通信によって地上装置10に通知する(ステップS11)。
【0026】
地上装置10は、当該通知によって列車20が列車位置確認区間46に位置することを検出し(ステップS35)、続いて、該当する転てつ機42への内方への当該列車20の進行を許可するか否か(許否)を取得する(ステップS37)。この許否の取得は、例えば、転てつ機42を制御する連動装置50との通信を行うことで当該連動装置50から取得するとしてもよいし、転てつ機42の転換方向や鎖錠有無といった動作状態を連動装置50或いは当該転てつ機42に対して照査し、その照査結果や当該列車20の進路等から判断することで取得することとしてもよい。
【0027】
列車20の転てつ機42の内方への進行を許可する場合には(ステップS39:YES)、図4に示すように、地上装置10は、列車20が次に通過予定の転てつ機42(例えば、次駅の構内に進入する手前に設けられた転てつ機42)の外方に定められた走行許容地点44を判断し、列車20の車上装置30へ通知する(ステップS41)。車上装置30は、地上装置10から通知された走行許容地点44を設定地点402として更新し(ステップS13)、停止点を判断して新たな速度パターンを生成・更新する(ステップS15)。この速度パターンの更新により、列車20は、転てつ機42を通過してその内方へ進行することができる。
【0028】
一方、列車20の転てつ機42の内方への進行が許可されない場合には、図5に示すように、地上装置10は、列車20の車上装置30に対して何らの通知を行わない。車上装置30は、速度パターンに従った自列車の走行制御を行うので、列車20は、転てつ機42の外方に設定された走行許容地点44で停止することになる。この停止した位置(走行許容地点44)は列車位置確認区間46内であるので、列車位置確認区間46内に位置する旨の断続的な地上装置10への通知を繰り返すことにより、その後に転てつ機42の転換及び鎖錠がなされて当該転てつ機42の内方への進行が許可となる。
【0029】
このように、列車20が次駅に到着するまでの間に通過する転てつ機42それぞれについて、列車位置確認区間46への到達、走行許容地点44の通知、速度パターンの更新が繰り返されることになる。
【0030】
[機能構成]
図7は、車上装置30及び地上装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。図7に示すように、車上装置30は、位置計測部302と、通信実行制御部304と、速度パターン生成部306と、走行制御部308と、車上記憶部400とを有する。
【0031】
位置計測部302は、自列車の走行位置を計測する。例えば、車軸に取り付けられた速度発電機が検出する回転数の計測値をもとに軌道40に沿った走行位置を算出したり、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星信号を受信して得られた位置から軌道40に沿った走行位置を算出することで、自列車の位置を計測することができる。
【0032】
通信実行制御部304は、列車位置確認区間46内に位置した場合に地上装置10との通信を実行する。具体的には、位置計測部302により計測された自列車の位置が、区間設定情報406で定められる列車位置確認区間46内である場合に、その旨を地上装置10へ、自列車に搭載された無線通信装置22による無線通信によって通知する(図6のステップS9~S11)。そして、当該通知に対して地上装置10から通知される走行許容地点44の情報を受信し、受信した走行許容地点44を、速度パターンの停止点とする走行許容地点である設定地点402として、車上記憶部400に記憶する(図6のステップS3,S13)。
【0033】
速度パターン生成部306は、車上記憶部400に記憶されている設定地点402(走行許容地点44)のほか、先行列車の位置や次駅の停止位置等から停止点を判断して速度パターンを生成する(図6のステップS5,S15)。生成した速度パターン404は、車上記憶部400に記憶される。
【0034】
走行制御部308は、速度パターン生成部306によって生成された速度パターンに従った自列車の走行制御を行う。
【0035】
車上記憶部400には、速度パターンの停止点とする走行許容地点である設定地点402と、速度パターン生成部306により生成される速度パターン404とが更新記憶されるとともに、区間設定情報406を記憶されている。区間設定情報406は、軌道40に設定された列車位置確認区間46に関する情報であり、上下別(列車の進行方向別)に、列車位置確認区間それぞれについて開始地点及び終了地点の情報を含んでいる。
【0036】
地上装置10は、検出部102と、進行許否取得部104と、通知制御部108と、地上記憶部200とを有する。
【0037】
検出部102は、車上装置30の通信実行制御部304による通信に応じて、列車20が列車位置確認区間46に位置することを検出する。具体的には、車上装置30から自列車が列車位置確認区間46に位置する旨の通知を受信することで、列車20が列車位置確認区間46に位置することを検出することができる(図6のステップS35)。そして、当該通知に含まれる情報から、列車IDや進行方向を識別するとともに、列車の位置から、軌道データベース210を参照して、何れの転てつ機42の外方に設定された列車位置確認区間46に位置するのかを判断することができる。
【0038】
進行許否取得部104は、転てつ機42の動作状態に基づく転てつ機42の内方への進行の許否を取得する。許否の取得は、転てつ機42の動作を制御する連動装置50と所定の通信を行うことで実現してもよいし、進行許否取得部104が有する状態照査部106が転てつ機42の動作状態を照査し、その結果に基づいて判断することで実現してもよい(図6のステップS37)。
【0039】
通知制御部108は、検出部102の検出がなされ、且つ、進行許否取得部104によって取得された進行許否が許可である場合に、転てつ機42の内方に位置する走行許容地点44を設定地点402として、車上装置30の車上記憶部400に記憶させるための通知を列車20に行う。すなわち、軌道データベース210を参照して、列車20が次に通過予定の転てつ機42の外方に設定された走行許容地点を通知する(図6のステップS39~S41)。
【0040】
地上記憶部200には、軌道データベース210が記憶されている。軌道データベース210は、軌道40に設けられている転てつ機42それぞれについて、上下別(列車の進行方向別)に、外方に設定された列車位置確認区間の開始地点及び終了地点と、走行許容地点とを対応付けたデータを含んでいる。
【0041】
[作用効果]
本実施形態によれば、信号システムにおける走行の安全性を確保しつつ、地上・車上間の通信設備の簡素化を図ることができる。つまり、列車20は所与の停止点に基づく速度パターンを用いた走行制御を行い、地上装置10は列車20の車上装置30に対して停止点となる走行許容地点44を通知する。この走行許容地点44の通知は、転てつ機42の外方に定められた列車位置確認区間46に列車20が位置したことが検出され、且つ、当該転てつ機42の内方への進行が許可である場合に、当該転てつ機42の内方に位置する走行許容地点44を通知する。言い換えれば、列車20が列車位置確認区間46に位置しないときは、車上装置30と地上装置10との間の通信は必要とされない。従って、少なくとも、転てつ機42の外方の列車位置確認区間46について地上・車上間の通信を可能とするための通信設備を設ければよい。
【0042】
また、列車20は、所与の停止点に基づく速度パターンに従って走行制御されるが、転てつ機42の内方への進行が許可されない場合には、当該転てつ機42の内方の走行許容地点44が通知されないので転てつ機42の内方へ進行できずに転てつ機42の外方の停止点(走行許容地点44)に停止することになるので、走行の安全性が確保される。
【0043】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0044】
例えば、転てつ機42の動作状態に基づく転てつ機42の内方への進行が不許可の場合(図5図6のステップS39:NO)、その旨を地上装置10から列車20の車上装置30に通知するようにしてもよい。
【0045】
また、車上装置30において、さらに、転てつ機42それぞれの外方の走行許容地点44の情報を予め記憶しておくようにしてもよい。この場合、地上装置10は次の走行許容地点44の情報を通知せず、現在の走行許容地点44の内方への進行許否を通知するだけでよい。車上装置30は、この通知に応じて記憶している設定地点402を更新して速度パターンを更新する。
【符号の説明】
【0046】
1…信号システム
10…地上装置
102…検出部
104…進行許否取得部
106…状態照査部
108…通知制御部
200…地上記憶部
210…軌道データベース
30…車上装置
302…位置計測部
304…通信実行制御部
306…速度パターン生成部
308…走行制御部
400…車上記憶部
402…設定地点
404…速度パターン
406…区間設定情報
20…列車
22…無線通信装置
40…軌道
42…転てつ機
44…走行許容地点
46…列車位置確認区間
50…連動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7