(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157424
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】作業者の安全教育システム
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20241030BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20241030BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20241030BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
G06Q50/08
G06T19/00 600
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071787
(22)【出願日】2023-04-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(71)【出願人】
【識別番号】517113303
【氏名又は名称】新日本建工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】米谷 雄介
(72)【発明者】
【氏名】植松 祐斗
(72)【発明者】
【氏名】李 セロン
(72)【発明者】
【氏名】後藤田 中
(72)【発明者】
【氏名】神田 亮
(72)【発明者】
【氏名】岡村 真史
【テーマコード(参考)】
5B050
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B050AA03
5B050BA09
5B050BA11
5B050BA13
5B050BA20
5B050CA07
5B050DA07
5B050EA04
5B050EA26
5B050FA02
5B050FA10
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】実際の作業現場に対応した不安全行動を作業者に体験させかつ理解させることができる作業者の安全教育システムを提供する。
【解決手段】 作業現場の作業者の安全教育に使用されるシステムであって、作業現場の画像である作業現場画像を含む確認画像を表示する画像表示部2と、画像表示部2に表示する確認画像を制御する制御部10と、確認画像を確認した入力者が注意情報を入力する入力部3と、を備えており、制御部10は、入力部3から入力された注意情報と、注意情報を入力した入力者に関する情報と、注意情報が入力された際に画像表示部2に表示されている確認画像と、を関連づけて訓練結果情報として記憶部20に記憶させる記憶機能16と、記憶部20に記憶されている訓練結果情報に基づいて、注意情報を確認画像とともに画像表示部2に表示させる確認画像表示機能13と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場の作業者の安全教育に使用されるシステムであって、
作業現場の画像である作業現場画像を含む確認画像を表示する画像表示部と、
該画像表示部に表示する確認画像を制御する制御部と、
前記確認画像を確認した入力者が注意情報を入力する入力部と、を備えており、
前記制御部は、
前記入力部から入力された前記注意情報と、該注意情報を入力した前記入力者に関する情報と、該注意情報が入力された際に前記画像表示部に表示されている前記確認画像と、を関連づけて訓練結果情報として記憶部に記憶させる記憶機能と、
前記記憶部に記憶されている前記訓練結果情報に基づいて、前記注意情報を前記確認画像とともに前記画像表示部に表示させる確認画像表示機能と、を備えている
ことを特徴とする作業者の安全教育システム。
【請求項2】
前記入力部は、
前記入力者が前記注意情報とともに、前記確認画像において不安全行動が発生する可能性がある危険推定場所の情報を入力できる機能を有しており、
前記制御部の記憶機能は、
前記危険推定場所の情報と前記訓練結果情報とを関連付けて記憶する、または、前記危険推定場所の情報を前記訓練結果情報に含めて記憶する機能を有しており、
前記制御部の確認画像表示機能は、
前記訓練結果情報に基づいて前記注意情報を前記確認画像とともに前記画像表示部に表示させる際に、前記確認画像における前記危険推定場所または前記危険推定場所の近傍に前記注意情報を表示させる機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の作業者の安全教育システム。
【請求項3】
前記入力部は、
音声入力機能と、
前記制御部の確認画像表示機能によって前記画像表示部に表示されている前記注意情報、を選択する選択機能と、を有しており、
前記制御部は、
前記入力部の選択機能によって前記注意情報が選択されると、前記入力部の音声入力機能によって入力される音声を、選択されている前記注意情報および該注意情報を選択した選択者に関する情報と関連づけて記憶する音声記憶機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の作業者の安全教育システム。
【請求項4】
前記入力者が、
前記作業現場画像の作業現場において作業を行う作業者および前記作業現場画像における作業を管理する作業管理者であり、
前記制御部の確認画像表示機能は、
前記作業者が入力した注意情報である作業者注意情報と前記作業管理者が入力した注意情報である作業管理者注意情報とが同じ確認画像と関連づけて記憶されている場合において、前記作業者注意情報と前記作業管理者注意情報の両方を、両者が関連づけられている確認画像と同時に前記画像表示部に表示させる機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の作業者の安全教育システム。
【請求項5】
作業者が装着し該作業者が視認する画像を表示する表示部を有する画像表示装置と、
該画像表示装置を装着した作業者が作業体験を行う作業現場を模した体験設備と、を有しており、
前記画像表示装置が、
前記作業者が視認できる領域を撮影する撮影機能を有しており、
前記制御部は、
前記画像表示装置を装着した作業者の動きを検出する検出器と、
該検出器の信号と、前記撮影機能が撮影した前記体験設備の撮影画像と、BIMシステムによって形成された前記体験設備の元となる作業現場の画像であるBIMモデルとに基づいて、MR画像を前記画像表示装置の表示部に表示させる訓練画像制御機能と、を有しており、
前記確認画像表示機能は、
前記MR画像を前記確認画像として前記注意情報とともに前記画像表示部に表示させる機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の作業者の安全教育システム。
【請求項6】
前記体験設備には、
前記体験設備の元となる作業現場において作業者が行う作業に関係する対象物である作業関連物が配置されており、
前記作業関連物のうち前記体験設備に固定されている対象物には、
前記BIMモデルと前記撮影画像との位置合わせに使用される位置合わせマークが設けられている
ことを特徴とする請求項5記載の作業者の安全教育システム。
【請求項7】
作業者が装着し該作業者が視認する画像を表示する表示部を有する画像表示装置を有しており、
前記制御部は、
BIMシステムによって形成された作業者が作業体験を行う作業現場のBIMモデルに基づいて、VR画像を前記画像表示装置の表示部に表示させる訓練画像制御機能を有しており、
前記確認画像表示機能は、
前記VR画像を前記確認画像として前記注意情報とともに前記画像表示部に表示させる機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の作業者の安全教育システム。
【請求項8】
前記入力部は、
前記確認画像において想定される複数の不安全行動を表示する不安全行動テーブルを有しており、
前記入力者が前記不安全行動テーブルから不安全行動を選択する選択入力機能を有しており、
前記制御部は、
前記入力者の情報と、該入力者が入力した不安全行動に関する情報と、前記確認画像と、を利用して、前記入力者を評価する評価機能を有している
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の作業者の安全教育システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の安全教育システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場では、作業者がけが等をする可能性のある作業や環境が存在している。例えば、不慣れな作業を行う場合に、作業者が適切な動きや道具や資材等の適切な取り扱いをしないことによって道具や資材等を損傷したり作業者自身や他の作業者の邪魔になったりけがをさせたりする可能性がある。また、作業現場には様々な器具や道具、資材などが床などに置かれているので、これらの器具などに作業者が接触して転倒したりけがしたりする可能性もある。さらに、床や壁面などが未完成の現場では、完成後の床や壁面などには存在しない孔や突起等が存在している可能性があり、孔に転落したり突起等に接触してけがをしたりする可能性もある。これらのけがなどの原因は、作業者の作業に対する習熟度や作業者の注意力に起因して生じることが多いので、けがなどの災害が生じる原因や何に注意すべきかといったことを作業者に周知して理解させることによってけがなどの災害を軽減できる可能性がある。このため、建設作業では、建設作業の現場で実際に施工作業する前に、会社などにおいて事前の安全教育(送り出し教育)を行い、現場で施工作業に入った後では、現場において現場教育が行われている。
【0003】
ところで、工事現場等で生じる事故や危険を体感する教育施設として、特許文献1に開示されているように、教育施設を建設しその教育施設において事故や危険を体験する技術が開発されている。
しかし、特許文献1の技術では、教育施設を建設する必要があるため、モデルとなる現場において一般的な事故や危険を体験することはできても、実際の現場で生じる事故や危険を体験することはできない。
【0004】
一方、特許文献2には、3Dデータに基づいて作業現場の教育や危険を検出する技術が開示されている。特許文献2の技術では、3Dデータ内において所定場所を選択すると危険情報や不具合画像が表示されるようにしており、その際に現場での確認事項に関する問題が出願されるようになっている。
しかし、特許文献2の技術では、特許文献1の技術に比べて様々な構造の現場への対応は可能であるが、特許文献2の技術も実際の現場における危険情報や不具合を提供するものではない。
【0005】
特許文献3の技術では、BIMによって形成される三次元モデルに基づいて、実際の施工現場と同じ構造物から自動で不安全場所を検出する技術も開発されている。
しかし、特許文献3の技術では、あくまでも構造物に起因する不安全場所を検出するだけであり、実際の作業者の作業に起因する不安全行動を周知させたり教育したりすることはできない。例えば、実際の作業での危険行為や資材・器具等の仮置きなどによる障害物に起因する危険等については周知させたり教育したりすることができない。
【0006】
一方、特許文献4の技術では、現場での作業などに関連する注意事項をBIMに登録されている三次元モデルの部品の属性情報に含ませたり、注意事項登録部に別途記憶させたりしておき、自動巡回体移動体が取得する情報に基づいて作業状況を判断し、作業状況に応じた注意事項を三次元モデル上に表示させる技術が開示されている。そして、三次元モデル上に表示した注意事項を作業前に作業者に確認させることによって、作業者に注意喚起を行うことが開示されている。また、新たに発見された注意事項などを注意事項登録部に記憶させる機能を持たせることも開示されている。
したがって、特許文献4の技術を用いれば、ある程度、作業を行う部品などについて、現場作業で生じる不安全行動や危険を作業者に周知させることができる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-219442号公報
【特許文献2】特開2020-190644号公報
【特許文献3】特開2020-95390号公報
【特許文献4】特開2021―156015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4の技術は、実際の作業現場に対応した注意事項を確認できる点では望ましいが、あくまでも画像上に注意事項が表示されるだけであり、実際に不安全行動が生じる状況などを作業者は十分に理解することはできない。
また、作業者が注意事項を確認したとしても注意事項を理解しているか否かは判断できず、作業者の教育としては十分ではない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、実際の作業現場に対応した不安全行動を作業者に理解させることができる作業者の安全教育システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の作業者の安全教育システムは、作業現場の作業者の安全教育に使用されるシステムであって、作業現場の画像である作業現場画像を含む確認画像を表示する画像表示部と、該画像表示部に表示する確認画像を制御する制御部と、前記確認画像を確認した入力者が注意情報を入力する入力部と、を備えており、前記制御部は、前記入力部から入力された前記注意情報と、該注意情報を入力した前記入力者に関する情報と、該注意情報が入力された際に前記画像表示部に表示されている前記確認画像と、を関連づけて訓練結果情報として記憶部に記憶させる記憶機能と、前記記憶部に記憶されている前記訓練結果情報に基づいて、前記注意情報を前記確認画像とともに前記画像表示部に表示させる確認画像表示機能と、を備えていることを特徴とする。
第2発明の作業者の安全教育システムは、第1発明において、前記入力部は、前記入力者が前記注意情報とともに、前記確認画像において不安全行動が発生する可能性がある危険推定場所の情報を入力できる機能を有しており、前記制御部の記憶機能は、前記危険推定場所の情報と前記訓練結果情報とを関連付けて記憶する、または、前記危険推定場所の情報を前記訓練結果情報に含めて記憶する機能を有しており、前記制御部の確認画像表示機能は、前記訓練結果情報に基づいて前記注意情報を前記確認画像とともに前記画像表示部に表示させる際に、前記確認画像における前記危険推定場所または前記危険推定場所の近傍に前記注意情報を表示させる機能を有していることを特徴とする。
第3発明の作業者の安全教育システムは、第1発明において、前記入力部は、音声入力機能と、前記制御部の確認画像表示機能によって前記画像表示部に表示されている前記注意情報、を選択する選択機能と、を有しており、前記制御部は、前記入力部の選択機能によって前記注意情報が選択されると、前記入力部の音声入力機能によって入力される音声を、選択されている前記注意情報および該注意情報を選択した選択者に関する情報と関連づけて記憶する音声記憶機能を有していることを特徴とする。
第4発明の作業者の安全教育システムは、第1発明において、前記入力者が、前記作業現場画像の作業現場において作業を行う作業者および前記作業現場画像における作業を管理する作業管理者であり、前記制御部の確認画像表示機能は、前記作業者が入力した注意情報である作業者注意情報と前記作業管理者が入力した注意情報である作業管理者注意情報とが同じ確認画像と関連づけて記憶されている場合において、前記作業者注意情報と前記作業管理者注意情報の両方を、両者が関連づけられている確認画像と同時に前記画像表示部に表示させる機能を有していることを特徴とする。
第5発明の作業者の安全教育システムは、第1発明において、作業者が装着し該作業者が視認する画像を表示する表示部を有する画像表示装置と、該画像表示装置を装着した作業者が作業体験を行う作業現場を模した体験設備と、を有しており、前記画像表示装置が、前記作業者が視認できる領域を撮影する撮影機能を有しており、前記制御部は、前記画像表示装置を装着した作業者の動きを検出する検出器と、該検出器の信号と、前記撮影機能が撮影した前記体験設備の撮影画像と、BIMシステムによって形成された前記体験設備の元となる作業現場の画像であるBIMモデルとに基づいて、MR画像を前記画像表示装置の表示部に表示させる訓練画像制御機能と、を有しており、前記確認画像表示機能は、前記MR画像を前記確認画像として前記注意情報とともに前記画像表示部に表示させる機能を有していることを特徴とする。
第6発明の作業者の安全教育システムは、第5発明において、前記体験設備には、前記体験設備の元となる作業現場において作業者が行う作業に関係する対象物である作業関連物が配置されており、前記作業関連物のうち前記体験設備に固定されている対象物には、前記BIMモデルと前記撮影画像との位置合わせに使用される位置合わせマークが設けられていることを特徴とする。
第7発明の作業者の安全教育システムは、第1発明において、作業者が装着し該作業者が視認する画像を表示する表示部を有する画像表示装置を有しており、前記制御部は、BIMシステムによって形成された作業者が作業体験を行う作業現場のBIMモデルに基づいて、VR画像を前記画像表示装置の表示部に表示させる訓練画像制御機能を有しており、前記確認画像表示機能は、前記VR画像を前記確認画像として前記注意情報とともに前記画像表示部に表示させる機能を有していることを特徴とする。
第8発明の作業者の安全教育システムは、第1、第2、第3または第4発明において、前記入力部は、前記確認画像において想定される複数の不安全行動を表示する不安全行動テーブルを有しており、前記入力者が前記不安全行動テーブルから不安全行動を選択する選択入力機能を有しており、前記制御部は、前記入力者の情報と、該入力者が入力した不安全行動に関する情報と、前記確認画像と、を利用して、前記入力者を評価する評価機能を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、教育を受ける作業者が入力者として注意情報を入力すれば、注意情報とともに確認画像が表示されるので、どのような状況を作業者が不安全行動であると判断したかを作業管理者等が理解できる。
第2発明によれば、どのような状況を作業者が不安全行動であると判断したかについて作業管理者等の理解を深めることができる。
第3発明によれば、作業者が不安全行動であると判断した状況を音声入力させることができるので、作業者の不安全行動に対する作業管理者の理解を深めることができる。また、作業管理者等のコメントなどを音声入力すれば、作業者が注意情報とともに確認画像を確認した際に、作業管理者等の考えを理解しやすくなるので、作業者の不安全行動に対する理解を深めることができる。
第4発明によれば、作業者が注意情報とともに確認画像を確認した際に、作業管理者等の考える不安全行動と作業者自身の考える不安全行動との一致点相違点を作業者が容易に認識できるので、作業者の不安全行動に対する理解をより深めることができる。
第5~第7発明によれば、実際の作業現場での作業を作業者が疑似体験でき、疑似体験した際の画像を確認画像として注意情報を入力するので、作業現場における不安全行動を作業者により理解させやすくなる。
第8発明によれば、作業者個々の不安全行動に対する認識や理解度の評価が提示されるので、作業者の不安全行動に対する認識などを客観的に把握でき、各作業者にあった現場教育を行いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の作業者の安全教育システム1の概略ブロック図である。
【
図2】(A)、(B)はBIMモデルの一例を示した図であり、(C)、(D)は体験設備30の一例を示した図である。
【
図3】(A)~(C)は体験作業の状況の一例を示した図であり、(D)~(F)はVR画像の一例を示した図である。
【
図4】本実施形態の作業者の安全教育システム1による体験作業のフローチャートである。
【
図5】体験画像表示機能13によって注意情報を入力するフローチャートである。
【
図6】確認画像表示機能14によって体験画像を確認するフローチャートである。
【
図7】(A)は注意情報として使用するタグの一例を示した図であり、(B)は体験画像に作業者タグが重ねて表示された画像の一例を示した図であり、(C)は体験画像に作業者タグと作業管理者タグが重ねて表示された画像の一例を示した図である。
【
図8】評価機能16によって作成される評価用グラフの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の作業者の安全教育システムは、作業現場などで作業を行う作業者に対して安全教育を行うために使用するシステムであり、作業者の不安全行動に対する認識や理解を深めるために使用されるものである。
【0014】
本実施形態の作業者の安全教育システムによる安全教育を実施するタイミングや実施する場所はとくに限定されない。例えば、作業現場などにおける作業を開始する前に、これから作業を行う作業現場での作業を理解させる教育(いわゆる送り出し教育)や、実際の作業現場において作業が開始した後、作業を行う当日にその日に実施する作業を理解させるための教育(いわゆる現地教育)などに使用することができる。また、送り出し教育や現地教育以外にも、定期的に実施される社内勉強会や建設業協会等で実施される講習会・研修会で行う安全教育に使用することができる。
【0015】
本実施形態の作業者の安全教育システムを使用して安全教育を実施する作業はとくに限定されず、作業現場などで行われる種々の作業の安全教育に採用することができる。例えば、作業現場の壁や天井に石膏ボードを設置する作業(石膏ボード張り作業)や天井工事などの高所作業、鉄パイプ・鉄骨などの資材運搬・受け渡し作業などの種々の作業における安全教育に本実施形態の作業者の安全教育システムを使用することができる。
【0016】
以下の説明では、代表として、本実施形態の作業者の安全教育システムを使用して石膏ボード張り作業の安全教育を実施する場合を説明する。
【0017】
<本実施形態の作業者の安全教育システム1>
図1に示すように、本実施形態の作業者の安全教育システム1は、作業者や作業管理者が確認する画像を表示する画像表示部2と、後述する注意情報等を入力する入力部3と、安全教育を体験する作業者などが装着する画像表示装置5と、画像表示部2、入力部3および画像表示装置5の作動を制御する制御部10と、を備えている。また、本実施形態の作業者の安全教育システム1は、作業者などが安全教育を体験する設備である体験設備30を備えている。
【0018】
<制御部10>
図1に示すように、制御部10は、画像表示部2、入力部3、画像表示装置5との間で信号を送受信可能に有線や無線で接続されている。この制御部10は、体験作業の際に、画像表示部2に表示する画像(確認画像や注意情報等)や画像表示装置5の表示部5aに表示する画像を制御する訓練画像制御機能11を有している。例えば、どの画像をどのタイミングで画像表示部2や画像表示装置5の表示部5aに表示させるかを制御する訓練画像制御機能11を制御部10は有している。
【0019】
制御部10の訓練画像制御機能11は、表示部5aに表示する画像として、MR(Mixed Reality)画像やVR(Virtual Reality)画像を生成する機能を有している。具体的には、制御部10では、Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング、BIM)を実現するソフト(本明細書ではBIMシステムという)によって作成された3Dモデル(以下、BIMモデルという、
図2(A)、(B)参照)の情報に基づいて、VR画像やMR画像を生成する機能を有している。例えば、VR画像であれば、作業現場のBIMモデルをそのままVR画像とすることができるし、BIMモデルに孔や突起など対象構造物の立体的な形状・構造の情報(形状情報)や部材または部品の文字・数字の情報(属性情報)などの修正を加えたものをVR画像とすることができる。また、MR画像であれば、BIMモデルと、後述する画像表示装置5の撮影機能が撮影した画像(撮影画像)と、を重ねあわせた画像をMR画像とすることができるし、BIMモデルと撮影画像の両方またはいずれか一方に形状情報や属性情報などの修正を加えたものを重ねあわせてMR画像とすることができる。
【0020】
なお、制御部10の訓練画像制御機能11がVR画像やMR画像を生成する元となる画像(3Dモデル)は、BIMシステムで作成された画像とすれば、作業者が視認するVR画像やMR画像は、作業体験を実施する実際の作業現場とほぼ同等の状況を再現できる。しかし、VR画像やMR画像を生成する元となる画像(3Dモデル)は、必ずしもBIMシステムで作成された画像としなくてもよい。制御部10の訓練画像制御機能11がVR画像やMR画像を生成した際に、実際の作業現場に近い状況を再現できる画像であればよい。
【0021】
<記憶機能15>
また、制御部10は、画像表示部2に表示した画像や画像表示装置5の表示部5aに表示した画像を、入力部3から入力された情報(注意情報や危険推定場所の情報等)と関連づけて記憶部20に記憶させる記憶機能15を有している。
【0022】
例えば、記憶機能15は、後述するような体験作業を実施した際に、作業体験を実施した作業者と作業体験を実施した日付(体験日)、作業体験の際に画像表示部2に表示した画像、画像表示装置5の表示部5aに表示した画像を、それぞれ関連づけて記憶部20に記憶させる機能を有している。
【0023】
また、記憶機能15は、後述する表示機能12の体験画像表示機能13が、画像表示部2に作業者が作業体験を実施した際の画像(体験画像)を表示している状態において入力部3から情報が入力されると、体験画像と入力部3から入力された情報と、を関連づけて記憶部20に記憶させる機能を有している。
【0024】
そして、記憶機能15は、他の機能や機器からの指令に基づいて、記憶している情報を提供する機能も有している。例えば、表示機能12の体験画像表示機能13や確認画像表示機能14から体験画像を指定して記憶されている情報を読み出す指令が記憶機能15に供給されると、指定された体験画像やその体験画像と関連づけて記憶されている情報を、表示機能12の体験画像表示機能13や確認画像表示機能14に供給する機能を記憶機能15は有している。具体的には、表示機能12の体験画像表示機能13や確認画像表示機能14から作業者の名前やIDと体験作業を実施した日付の情報等が提供されると、対応する体験作業の画像や情報を表示機能12の体験画像表示機能13や確認画像表示機能14に供給する機能を記憶機能15は有している。
【0025】
<体験設備30>
体験設備30は、安全教育を受ける作業者(以下単に作業者という場合がある)がこれから作業を行う作業現場や、作業者が現在作業を行っている作業現場を模した構造を有する設備である。この体験設備30は、作業者が作業を体験する設備であり、作業現場において作業者が行う作業に関係する対象物である作業関連物が配置されている設備である。例えば、
図3に示すような石膏ボード張り作業を行う場合であれば、石膏ボードを設置する壁の下地材の模型(
図2(C)参照)や、下地材に設置する石膏ボード(
図2(D)参照)、石膏ボードを下地材に設置するために使用される電動ドリルなどの工具が作業関連物として体験設備30に配置される。
【0026】
また、体験設備30には、作業者の位置を検出する複数のセンサ31が設けられている。この複数のセンサ31は、作業者を検出する機能を有するものである。このセンサからの信号が制御部10の訓練画像制御機能11に送信されると、訓練画像制御機能11は、センサからの信号を解析して、体験設備30内での作業者の現在の位置や作業者の移動の有無、作業者の移動方向等(以下、これらをまとめて「作業者の状態」という場合がある)を把握することができる。したがって、訓練画像制御機能11は、作業者の状態に合わせたVR画像やMR画像を作成することができる。かかるセンサとしては、赤外線センサや超音波センサ、カメラセンサなどを採用することはできるが、上記目的を達成できるセンサであればよく、とくに限定されない。
【0027】
なお、上述した石膏ボード張り作業の場合であれば、下地材の模型は体験設備30に固定された状態(石膏ボード張り作業を行っても動いたりしない状態)で設置される。一方、石膏ボードや工具は、作業者が手に取って運んだり、下地材の模型に石膏ボードを固定したりできる状態で配置される。
【0028】
また、石膏ボード張り作業が、高い位置に石膏ボードを設置する作業を体験する場合や、天井に石膏ボードを設置する作業を体験する場合には、作業者が載って作業を行う立ち馬や移動式足場、枠組み足場なども体験設備30に固定された状態(石膏ボード張り作業を行っても動いたりしない状態)や移動できる状態で設置される(
図3(A)~(C)参照)。
【0029】
また、体験設備30に固定された状態で設置される作業関連物は、作業者が体験する作業に適したものを設置すればよく、体験設備30に移動可能に配置される作業関連物も、作業者が体験する作業に適した工具等を配置すればよい。
【0030】
<画像表示装置5>
画像表示装置5は、体験設備30において作業者が作業を体験する際に装着するものである。この画像表示装置5は、装着した作業者に画像を視認させる画像を表示する表示部5aを有するものである。より詳しく言えば、画像表示装置5は、画像表示装置5を作業者が装着すると作業者の目の前に配置される表示部5aを有しており、表示部5aに表示される画像(MR画像やVR画像)を作業者に視認させることができるものである。この画像表示装置5は、装着した作業者の顔の向きを検出する機能や視線等を検出する機能を有している。
【0031】
画像表示装置5は、MR画像を表示部5aに表示させる場合には、制御部10がMR画像を形成すれるために必要となる画像(例えば体験設備30の画像)を撮影する撮影機能を有したものを使用する。より詳しく言えば、作業者が画像表示装置5を装着していない状態において、作業者が視認できる領域を撮影する撮影機能を有した画像表示装置5を使用する。例えば、画像表示装置5の前方を撮影するステレオカメラなど有する一般的なヘッドマウントディスプレイを画像表示装置5として使用することができる。
【0032】
なお、画像表示装置5は、作業者が装着して使用できかつ上述した機能を有するものであればよくとくに限定されないが、上述したようなヘッドマウントディスプレイを使用することができる。
【0033】
また、画像表示装置5は、作業者の顔の向きを検出する機能や視線等を検出する機能だけでなく、作業者の移動や姿勢の変化、手などの動きを検出できる機能を有していてもよい。この場合には、上述した体験設備30にセンサ31を設けなくてもよい場合があるし、センサ31を設けてもその数を少なくすることができる可能性がある。作業者の移動や姿勢の変化、手などの動きを検出する場合、画像表示装置5がこれらの動きを検出するセンサを設けて作業者の移動等を検出するようにしてもよいし、制御部10において画像表示装置5が撮影する画像中の手などの画像を解析してこれらの動きを検出するようにしてもよい。もちろん、センサと画像解析の両方を使用して作業者の移動等を検出するようにしてもよい。
【0034】
また、画像表示装置5は、必ずしも画像表示装置5を装着した作業者の顔の向きを検出する機能や作業者の視線を検出する機能を有していなくてもよく、表示部5aに表示された画像(後述するMR画像やVR画像)を作業者に視認させることができるものであればよい。画像表示装置5を装着した作業者の顔の向きを検出する機能を画像表示装置5が有していない場合であれば、作業者の顔の向きを検出するセンサ等を画像表示装置5や作業者の頭などに取り付けて作業者の顔の向きを検出するようにしてもよい。また、作業者の視線を検出する機能は必ずしも設けなくてもよいが、画像表示装置5が作業者の視線を検出する機能を有していれば、表示部5aに表示する画像をより適切な画像とすることができるし、作業者が視認による安全確認を行なっているかなどより正確な作業者の状態の把握ができ、安全管理者の適正な指導に役立てることができる等の点で好ましい。
【0035】
<画像表示部2>
画像表示部2は、一般的なディスプレイ装置であり、制御部10から供給される画像を表示することができるものである。画像表示部2は、制御部10から供給される画像を表示できるものであればよい。例えば、制御部10がノートパソコンのようにディスプレイを有している場合には、制御部10のディスプレイを画像表示部2として使用することができる。また、制御部10がディスプレイを有している場合でも、制御部10のディスプレイとは別に設けたディスプレイ装置(別体ディスプレイ装置)を画像表示部2として使用してもよい。また、画像表示部2は複数設けてもよい。この場合には、制御部10のディスプレイと別体ディスプレイ装置とをいずれも画像表示部2として使用してもよいし、複数の別体ディスプレイ装置を設けて複数の別体ディスプレイ装置だけを画像表示部2として使用してもよい。
【0036】
<入力部3>
入力部3は、種々の情報を入力する機能を有するものであり、入力された情報を制御部10に供給する機能を有している。例えば、本実施形態の作業者の安全教育システム1によって作業体験を実施している作業者の情報や、この作業者の作業体験を監督している者(作業体験の状況を監視している作業管理者等)の情報を入力し、この入力された情報を制御部10に供給する機能を有している。また、後述する注意情報や危険推定場所の情報等を入力する機能を入力部3は有している。そして、上述したように、入力部3から入力された情報は制御部10に送信され、制御部10の記憶機能によって、画像表示部2に表示した画像や画像表示装置5の表示部5aに表示した画像と関連づけて記憶部20に記憶される。
【0037】
なお、入力部3としては、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等を挙げることができるが、作業者や作業管理者等が所定の情報を入力できるものであればよく、とくに限定されない。後述するように音声入力を行う場合であれば、入力部3として、キーボードなどに加えて、音声入力可能な装置(例えばマイクロフォンやマイクロフォンを内蔵している装置等)を使用することもできる。
【0038】
<本実施形態の作業者の安全教育システム1による作業体験>
本実施形態の作業者の安全教育システム1は以上のような構成を有しているので、以下のように作業者に作業体験を実施させることができる(
図4参照)。
以下では、MR画像が画像表示装置5の表示部5aに表示される場合を説明する。
【0039】
まず、作業体験を実施する作業者に関する情報や、作業体験を実施する作業者の作業管理者等の情報を入力部3から入力する。所定の情報の入力が終了すると、作業体験を実施する作業者に画像表示装置5を装着させる。
【0040】
ついで、MR画像において、画像表示装置5の撮影機能が撮影する体験設備30の撮影画像とBIMモデルとが一致するように、MR画像におけるBIMモデルの表示位置を調整する。例えば、体験設備30が壁の下地材に石膏ボード張り作業を体験する設備の場合であれば、撮影画像中の体験設備30の下地材の模型とBIMモデルの下地材とが一致するようにMR画像におけるBIMモデルの表示位置を調整する。
【0041】
なお、この表示位置の調整は、画像表示装置5の撮影機能が体験設備30の下地材の模型を撮影すれば制御部10において自動で調整するようになっていてもよいし、MR画像を確認しながら人が調整してもよい。
【0042】
また、体験設備30の下地材の模型に、位置合わせのため位置合わせマークを設けておけば、制御部10による位置調整を容易かつ自動で行うことができる。例えば、位置合わせマークとしてQRコード(登録商標)を用い、BIMモデルで表現される3次元空間上の座標値(QRコード(登録商標)が設けられている位置の3次元空間上の座標値)等の情報をQRコード(登録商標)に含めておけば、画像表示装置5の撮影機能によってQRコード(登録商標)を撮影するだけで、制御部10による位置調整することが可能になる。
【0043】
制御部10による位置調整が終了すると、作業開始の指令が入力部3から入力され、画像表示装置5の表示部5aに表示されるMR画像の記憶部20への記憶も開始する。すると、作業者は画像表示装置5の表示部5aに表示されるMR画像に基づいて石膏ボード張り作業を実施する(
図3(A)~(C)参照)。このとき、画像表示装置5の表示部5aに表示されるMR画像とMR画像の形成に使用された作業現場のBIMモデル(つまり作業者が視認する領域以外も含む作業現場のBIMモデル)の両方、または、いずれか一方が画像表示部2に表示される。このため、作業管理者等は、作業を体験している作業者の視点や作業現場全体の状況を確認することができる。
【0044】
一連の作業が終了すると、作業終了の指令が入力部3から入力され、体験作業が終了する。すると、制御部10による画像表示装置5の表示部5aへのMR画像の表示やMR画像の記憶部20への記憶も停止する。
【0045】
以上のように、本実施形態の作業者の安全教育システム1を使用すれば、実際の作業現場を再現したMR画像を視認しながら、実際の石膏ボード張り作業を実施できるので、作業者が実際の作業現場で作業を行う場合に近い作業体験をすることができる。すると、実際の作業現場において注意すべきことを作業者に認識させたり、不安全行動に対する作業者の意識を高めたりすることができる。
【0046】
例えば、実際の作業現場では、床に貫通孔がありその貫通孔を避けながら移動しなければならない場合がある。かかる作業現場の作業を体験する場合、MR画像では、実際の作業現場とほぼ同じ状態が再現されているので、体験設備30は貫通孔のない床であっても、MR画像には貫通孔が表示される(
図2(B)のh参照)。したがって、貫通孔の存在を認識しながら作業現場を移動することを作業者に体験させることができる。しかも、実際の作業現場に貫通孔が存在していることを作業者に意識づけすることができるので、実際の作業現場で作業する際に、貫通孔に気付かず落下するなどの災害を防止できる効果が高くなる。なお、貫通孔の位置に足が配置された場合に警告音等を発するようにすれば、作業者に貫通孔の存在を強く意識付けすることができるので、災害を防止できる効果をより高くすることができる。
【0047】
<画像表示装置5の表示部5aにVR画像を表示する場合>
上記例では、画像表示装置5の表示部5aにMR画像を表示する場合を説明したが、画像表示装置5の表示部5aにVR画像(
図3(D)~(F)参照)を表示する場合には、上述したような体験設備30は設けなくてよい。一方、この場合には、作業者は、VR画像として表示された石膏ボードや工具などを、VR画像内に表示された作業者の手によって掴んだり操作したりすることが必要になる。すると、作業者の手とVR画像内の石膏ボードや工具などとの位置を合わせてVR画像内に表示する必要があるので、作業者の手を検出するために、作業者の手の位置や動きを検出するセンサ(例えば、手袋状のセンサ等)を装着する必要がある。
【0048】
<本実施形態の作業者の安全教育システム1による安全確認教育>
上記のように、本実施形態の作業者の安全教育システム1を使用して作業体験を実施すれば、作業者に作業現場の状況や危険な行為などを意識づけすることができる。作業者の意識づけをより強くする、つまり、安全教育の効果を高める上では、作業体験を実施した後、自分の作業体験状況を確認し、その作業において不安全行動の有無を自分でまたは作業管理者とともに検討することが望ましい。
【0049】
そこで、本実施形態の作業者の安全教育システム1では、作業体験を実施した作業者に体験作業の状況を確認させ、かつ、不安全行動の有無を検討させる機能を備えている。
【0050】
<表示機能12>
図1に示すように、本実施形態の作業者の安全教育システム1の制御部10は、作業体験を実施した作業者の作業状況を確認する確認画像等を画像表示部2に表示させる表示機能12を有している。
【0051】
表示機能12は、記憶部20に記憶されている、作業者が作業体験を実施した際のVR画像やMR画像(以下では単に体験画像という)を画像表示部2に表示させる体験画像表示機能13と、体験画像表示機能13によって体験画像が表示されている状態において入力部3から入力された注意情報等と体験画像とを画像表示部2に表示させる確認画像表示機能14と、を有している。
【0052】
<体験画像表示機能13>
体験画像表示機能13は、入力部3から入力される情報に基づいて、画像表示部2に表示させる体験画像を選択し、その体験画像を画像表示部2に表示させる表示機能13aと、体験画像を表示している状態において入力部3から入力される情報と表示されている体験画像とを関連づけて記憶部20に記憶させる情報記憶機能13bと、と有している。
【0053】
表示機能13aは、入力部3から入力される体験作業の情報(作業者の氏名や体験作業の日付等、以下、単に選択情報という場合がある)に基づいて、記憶機能15に対して選択情報を含む画像要求指令を送信する機能を有している。そして、表示機能13aは、画像要求指令に基づいて体験画像や体験画像と関連づけて記憶されている情報(以下、両方を含めて単に体験画像情報という場合がある)が記憶機能15から提供されると、提供される体験画像情報に含まれる体験画像に含まれる複数の画像(フレーム)を連続して画像表示部2に連続して表示させる機能を有している。体験画像は、作業者が体験作業を実施しているときに画像表示装置5の表示部5aに表示されていたMR画像やVR画像であり(
図3(D)~(F)参照)、表示機能13aは、選択された体験画像を画像表示部2に連続して表示させる。
【0054】
なお、以下では、体験画像に含まれる複数の画像(フレーム)を連続して表示させることを、単に、「体験画像を連続して表示させる」という場合がある。
【0055】
情報記憶機能13bは、表示機能13aによって体験画像が表示されている状態において、入力部3から注意情報が入力されると、入力された注意情報を体験画像情報に追加して訓練結果情報として記憶機能15に供給する機能を有している。より具体的には、体験画像において、入力部3から注意情報が入力されたタイミングにおける画像(フレーム)と、注意情報を入力した入力者の情報と、入力された注意情報と、を関連づけて体験画像情報に追加して訓練結果情報として記憶機能15に供給する機能を有している。
【0056】
注意情報とは、作業者が体験画像を確認した際に、不安全行動をしていたと判断した場合や不安全行動が発生する可能性があったと判断した場合に、認識した不安全行動を指定する情報である。注意情報を入力する方法や注意情報を入力する形式はとくに限定されない。テキスト形式で注意情報を自由に記載するようにしてもよいし、あらかじめ定められた文言や記号やマークなど(以下、タグという)からを入力者が認識した不安全行動に該当する注意情報を選択するようにしてもよい。例えば、入力部3に、体験画像において想定される複数の不安全行動を表示するタグを有する不安全行動テーブルを設けておき(
図7(A)参照)、この不安全行動テーブルから適切なタグを選択して注意情報として入力するようにしてもよい。
図7(A)であれば、落下タグ、転倒タグ、衝突タグが不安全行動を表示するタグとして用意されているので、これらのタグから入力者が認識した不安全行動に該当するタグを選択して保存すれば、タグの情報がタグを保存した画像(フレーム)と関連づけて訓練結果情報に記憶される。
【0057】
情報記憶機能13bは、作業者が注意情報を入力する際に、不安全行動が発生する可能性がある危険推定場所の情報を入力できる機能も有している。具体的には、入力部3によって注意情報を入力したのちまたは注意情報を入力する前に、マウス等によって体験画像の危険推定場所やその近傍を選択し、危険推定場所を指定する機能を有している。そして、情報記憶機能13bは、入力された危険推定場所の情報を訓練結果情報に追加して記憶機能15に供給する機能を有している。上述したタグが用意されている場合には、情報記憶機能13bは、選択したタグの画像を危険推定場所に配置することによって、危険推定場所の情報を入力する機能を有していてもよい。
【0058】
なお、情報記憶機能13bは、必ずしも危険推定場所の情報を訓練結果情報に追加した状態で記憶機能15に供給しなくてもよい。この場合には、情報記憶機能13bは、危険推定場所の情報を訓練結果情報の対応する注意情報と関連づける情報(例えば体験画像の対応する画像(フレーム)の情報等)と関連付けて記憶機能15に供給するようにすればよい。
【0059】
また、情報記憶機能13bは、必ずしも危険推定場所の情報を入力するようになっていなくてもよい。しかし、危険推定場所の情報も入力されるようになっていれば、注意情報を入力した入力者が不安全行動と認識した行動などを適切に把握できるし、また、注意情報を入力した入力者が適切に不安全行動を把握できているかについて作業管理者等が評価しやすくなる。
【0060】
<確認画像表示機能14>
確認画像表示機能14は、入力部3から入力される情報に基づいて、画像表示部2に表示させる訓練結果情報を選択し、その訓練結果情報に含まれる体験画像と注意情報とを画像表示部2に表示させる機能を有している。具体的には、確認画像表示機能14では、訓練結果情報に含まれる体験画像の画像(フレーム)を連続して表示し、体験画像において注意情報が入力された画像では体験画像と注意情報とを同時に画像表示部2に表示させる機能を有している。
【0061】
また、訓練結果情報に危険推定場所の情報が入力されている場合には、体験画像において危険推定場所として指定された位置やその近傍に注意情報を表示する、つまり、体験画像と注意情報とを重ねて表示する機能を有している。例えば、注意情報としてタグの情報が訓練結果情報に含まれている場合には、
図7(B)に示すように、不安全行動が発生した(または推定される)画像において、その不安全行動が発生した(発生する可能性がある)位置(危険推定場所)の近傍にタグを表示させる機能を有している。
【0062】
<本実施形態の作業者の安全教育システム1による安全確認教育の例>
本実施形態の作業者の安全教育システム1による安全確認教育の方法を説明する。
【0063】
まず、安全確認教育において注意情報の入力について説明する(
図5参照)。
【0064】
制御部10の表示機能12の体験画像表示機能13を作動させて、安全確認教育を実施する作業体験を選択する。具体的には、体験作業を実施した作業者の名前と体験作業を実施した日付などの選択情報を入力部13から入力する。なお、体験作業を複数の作業者が複数回実施しており、各体験作業にIDが設定されている場合には、IDを入力部13から入力するようにしてもよい。
【0065】
選択情報が入力されると、表示機能12の体験画像表示機能13は選択情報に基づいて画像要求指令を記憶機能15に送信する。すると、記憶機能15は、選択情報に対応する体験画像情報を記憶部20から読みだして体験画像情報を体験画像表示機能13に供給する。
【0066】
体験画像情報が供給されると、体験画像表示機能13の表示機能13aは体験画像を画像表示部2に連続して表示させる。なお、体験画像の表示を開始するタイミングは、体験画像を確認する作業者等の入力者が入力部13を操作して決定してもよいし、選択情報が入力されると一定の時間の後、自動的に体験画像の表示を開始するようにしてもよい。
【0067】
画像表示部2に表示されている体験画像を確認している作業者は、不安全行動が発生しているまたは不安全行動が発生する可能性があると判断した場合には、作業者は入力部3から注意情報(作業者注意情報)を入力する。このとき、不安全行動が発生しているまたは不安全行動が発生する可能性があると判断した画像の状態で体験画像の表示を一旦停止し、注意情報を入力する。例えば、不安全行動テーブルが設けられている場合には、不安全行動テーブルからタグを作業者が認識した不安全行動に該当するタグを選択し、そのタグを不安全行動が発生する可能性がある危険推定場所に配置する。すると、情報記憶機能13bは、一旦停止した状態で表示されている体験画像と、注意情報とを関連づけて記憶する。
【0068】
体験画像の表示が終了すると、情報記憶機能13bは、注意情報が体験画像情報に追加された訓練結果情報を記憶機能15に供給する。すると、記憶機能15は、情報記憶機能13bから供給される訓練結果情報を、訓練結果情報の元となる体験画像情報と関連づけて記憶部20に記憶させる。
【0069】
また、作業管理者も同様の方法で同じ作業体験の体験画像を確認する。すると、同じ体験画像の訓練結果情報には、作業管理者が入力した作業者管理者注意情報も含まれた状態となる。
【0070】
つぎに、安全確認教育における作業者の体験作業の確認について説明する(
図6参照)。
【0071】
作業者注意情報も含まれた訓練結果情報が形成されると表示機能12の確認画像表示機能14を作動させて、確認する訓練結果情報を選択する。訓練結果情報を選択する方法は、体験画像表示機能13と同様の方法で行うことができる。
【0072】
選択情報が入力されると、表示機能12の確認画像表示機能14は選択情報に基づいて画像要求指令を記憶機能15に送信する。すると、記憶機能15は、選択情報に対応する訓練結果情報を記憶部20から読みだして訓練結果情報を確認画像表示機能14に供給する。
【0073】
訓練結果情報が供給されると、確認画像表示機能14は訓練結果情報に含まれている体験画像を画像表示部2に連続して表示させる。なお、体験画像の表示を開始するタイミングは、体験画像表示機能13と同様に、体験画像を確認する作業者等の入力者が入力部13を操作して決定してもよいし、選択情報が入力されると一定の時間の後、自動的に体験画像の表示を開始するようにしてもよい。
【0074】
確認画像表示機能14は、体験画像を連続して表示するが、作業者注意情報と作業者管理者注意情報のいずれかの注意情報が入力されている画像になると、その体験画像で一時停止し、体験画像と注意情報を同時に画像表示部2に表示する。例えば、不安全行動テーブルから選択したタグを危険推定場所に配置して注意情報を入力した場合には、選択したタグを体験画像においてタグを配置した場所に重ねて表示する(
図7(B)参照)。なお、作業者の配置したタグと作業者管理者の配置したタグとが同じ体験画像で同じ位置に配置されている場合や、タグを配置すると体験画像の重要な情報が隠れてしまうような場合には、タグは危険推定場所の近傍に配置される(
図7(C)参照)。
【0075】
ここで、作業者の配置したタグと作業者管理者の配置したタグとが同じ体験画像で同じ位置に配置されている場合であれば(
図7(C)参照)、作業者が適切に不安全行動を認識できていると評価できる。つまり、作業体験を実施した作業者がこの体験画像を確認した場合には、自分の認識が正しいことを確認できるし、この画像を作業管理者が確認した場合には、作業者が適切に不安全行動を認識できていると評価できる。
【0076】
一方、作業者管理者がタグを配置した体験画像に作業者がタグを配置してない場合、また、作業者がタグを配置しているがタグの種類が作業者管理者の配置したタグと異なっていたり同じタグでもタグを配置する位置が間違っていたりする場合には、作業者が不安全行動を認識できていないと評価できる。つまり、作業体験を実施した作業者がこの体験画像を確認した場合には、自分が不安全行動を認識できていないことを理解できるし、この画像を作業管理者が確認した場合には、作業者が不安全行動を認識できていないと評価できる。また、作業者は、作業者管理者がタグを配置した体験画像やタグの種類、タグの配置位置などを確認できるので、不安全行動に対する認識を深めることができる。この画像を作業管理者が確認した場合には、作業者の不安全行動に対する認識を把握することができるし、作業者管理者自身が把握できてない不安全行動を発見できる可能性がある。
【0077】
以上のように、本実施形態の作業者の安全教育システム1による安全確認教育を実施すれば、作業者の不安全行動に対する理解を深めることができるし、作業者および作業者管理者が作業者の不安全行動に対する評価を適切に実施することができる。とくに、作業者は、自分がこれから行う作業現場の画像を利用して自分自身で体験作業を実施した体験画像を確認して不安全行動を把握できるので、作業現場における不安全行動の発生を抑制する効果、つまり、作業者に対する安全教育効果を高めることができる。
【0078】
とくに、体験作業を実施した作業者と体験作業について作業者管理者注意情報を入力した管理者とが一緒に体験画像を確認すれば、作業者注意情報と作業者管理者注意情報の違いを作業者が質問したり作業者管理者が説明したりすることができるので、より作業者の不安全行動に対する認識を深めることができる。
【0079】
<確認画像表示機能14について>
上記例では、確認画像表示機能14は、注意情報が入力された体験画像では画像の表示を一時停止する場合を説明したが、注意情報が入力された画像であっても体験画像を連続して表示するようになっていてもよい。しかし、不安全行動が発生した(または推定される)体験画像では画像を静止画とするようにすれば、不安全行動の状態や注意情報をしっかりと認識できるという点で好ましい。もちろん、注意情報が入力された画像であっても体験画像を連続して表示する場合には、入力部3から一時停止の指令が入力されると画像を一時停止できるようにしておくことができる。
【0080】
確認画像表示機能14は、体験画像を画像表示部2に表示させる場合、作業者注意情報と作業者管理者注意情報とを常に体験画像と合わせて表示するようにしてもよい(
図7(C)参照)。また、入力部13からの表示指令があった場合に、その指令が入力された体験画像に注意情報が入力されていれば注意情報を体験画像と合わせて表示し、注意情報が入力されていなければ何も表示させない(体験画像が表示されたままとする)か、間違いを指摘するマークなどが表示されるようにしてもよい。このようにすれば、体験画像を確認する際に、作業者が毎回不安全行動の発生を検討しかつ不安全行動に対する認識を高める効果を得ることができる。例えば、確認画像表示機能14によって表示される体験画像を作業者が確認した際に、不安全行動の存在などを認識した際に表示指令を入力させ、注意情報が表示されればその不安全行動に対する認識は一定していることを確認できる。また、注意情報が表示されない場合には、不安全行動に対する認識が安定していないことを確認できる。さらに、作業者注意情報は表示されないが作業者管理者注意情報が表示されれば、作業者の不安全行動に対する認識が向上したことを確認できる。
【0081】
また、注意情報は、危険推定場所情報が入力されている場合には、その危険推定場所やその近傍に体験画像に重ねて注意情報を表示してもよいし、別ウインドウなどに注意情報を表示してもよい。また、危険推定場所情報が入力されていない場合には、予め定められたい位置に体験画像と重ねて注意情報を表示してもよいし、別ウインドウなどに注意情報を表示してもよい。
【0082】
<情報追加機能>
確認画像表示機能14は、既に入力されている注意情報に対して、あとから情報を追加する情報追加機能を有していてもよい。かかる機能を有していれば、不安全行動に対する認識をより高めることができる。例えば、作業者が体験画像を確認した際に気が付いたことなどを注意情報に追加して記憶するようにすれば、作業者の意識の変化などを確認することができる。また、作業者と作業管理者とが一緒に体験画像を確認した際に、作業管理者の指摘などを入力するようにすれば、作業者一人で体験画像を確認した際に、作業管理者の指摘を再確認できる。すると、作業管理者がいなくても、作業管理者と一緒に体験画像を確認している場合と同等の教育効果を得ることができる。例えば、作業管理者の指摘としては、なぜ不安全行動となるのか(不安全行動とみなす理由)や不安全行動を避けるにはどのようにすればよかったのかまたどのようにすべきかといった指摘(不安全行動を回避する方法)等を追加情報とすれば、作業者の不安全行動に対する理解を深めることができる。また、作業者のコメントとしては、なぜそのよう行動をとったのか(不安全行動の原因)や不安全行動を避けるにはどのようにすればよかったのかまたどのようにすべきかという問いに対する回答(不安全行動を回避する方法)等を追加情報とすれば、作業者の不安全行動に対する意識を向上させることができる。
【0083】
この場合、注意情報に情報を追加する方法は、キーボードなどで文章として情報を追加するようにしてもよいし、音声情報として情報を追加するようにしてもよい。例えば、入力部13に音声入力機能を設けておき、確認画像表示機能14に注意情報を選択する選択機能14aを設ける。そして、選択機能14aによって注意情報が選択されると、入力部13の音声入力機能によって入力される音声を、選択されている注意情報および注意情報を選択した選択者(つまり入力している入力者)に関する情報と関連づけて記憶する音声記憶機能14bを設ける。すると、体験動画を確認している作業管理者と作業者の注意情報に関する会話等を記憶できるので、会話等を後から確認すれば、作業者一人で体験画像を確認した際に、作業管理者の指摘を再確認できる。すると、作業管理者がいなくても、作業管理者と一緒に体験画像を確認している場合と同等の教育効果を得ることができる。なお、音声記憶機能14bは音声情報をそのまま追加情報として記憶するようにしてもよいし、音声情報を文字情報に変換して記憶するようにしてもよい。
【0084】
<評価機能16>
制御部10は、体験画像に含まれている注意情報に基づいて、作業者の評価を行う評価機能16を有していてもよい。体験動画および注意情報は、体験動画の体験作業を実施した作業者や注意情報を入力した作業者の情報と関連づけて記憶部20に記憶されている。したがって、記憶部20に記憶されている体験動画の情報から、注意情報と作業者の情報とを利用すれば、各作業者の不安全行動に対する認識を客観的に判断することができる。かかる判断が得られれば、各作業者特有の問題点を解消するために、各作業者に適した安全教育を行うことができる。
【0085】
例えば、ある作業者は、落下や転倒についてはその発生の予見や回避が十分にできているが、衝突については十分に予見や回避ができていない場合には、作業者が同時に作業する作業者に対する注意力が低いと判断することができる(
図8(A)参照)。
また、落下についてはその発生の予見や回避が十分にできているが、転倒については十分に予見や回避ができていない場合には、作業者が大きな障害物などについては注意力が十分にあるが、小さい障害物などについては注意力が低いと判断することができる(
図8(A)参照)。
さらに、石膏ボード張り作業であっても、壁張り作業では不安全行動の予見や回避が十分にできているが、天井張り作業では不安全行動の十分に予見や回避ができていない場合には、作業者が天井張り作業が得意ではないと判断することができる(
図8(B)参照)。
【0086】
かかる評価を提示する方法はとくに限定されないが、例えば、
図8に示すようなグラフ等の表として表示すれば、作業者や作業管理者等が容易に作業者の特徴を把握できるし、他の作業者との比較も容易になる。
【0087】
また、注意情報に上述したような音声情報が含まれている場合には、音声情報に含まれる単語などを分析して、各作業者の特性を評価することも可能である。
【0088】
<本実施形態の作業者の安全教育システム1による安全確認教育の他の例>
上記例では、安全確認教育を実施する作業者が作業体験をした際に得られた画像等に基づいて安全確認教育を行った場合を説明したが、本実施形態の作業者の安全教育システム1による安全確認教育に使用する画像(特許請求の範囲にいう確認画像に相当する)は、必ずしも作業体験をした際に得られた画像等に限られない。例えば、BIMシステムなどによって形成された予め準備されているBIMモデルだけを用いて上述したような安全確認教育を実施してもよい。この場合には、作業者の安全教育システム1は、画像表示装置5や体験設備30を有していなくてもよいし、制御部10は、訓練画像制御機能11や、記憶機能15における体験作業で得られる各情報を記憶する機能は有していなくてもよい。つまり、予め準備されているBIMモデルを使用する表示機能12と、体験画像表示機能13と、体験作業で得られる各情報を記憶する機能を有しない記憶機能15と、を有する制御部10と、画像表示部2と、入力部3と、で構成されたシステムを本実施形態の作業者の安全教育システム1としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の作業者の安全教育システムは、作業現場での作業前の送り出し教育や、作業現場での現場教育に使用するシステムに適している。
【符号の説明】
【0090】
1 安全教育システム
2 画像表示部
3 入力部
5 画像表示装置
5a 表示部
10 制御部
11 訓練画像制御機能
12 表示機能
13 体験画像表示機能
13a 表示機能
13b 情報記憶機能
14 確認画像表示機能
14a 選択機能
14b 音声記憶機能
15 記憶機能
16 評価機能
20 記憶部
30 体験設備
31 センサ
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場の作業者の安全教育に使用されるシステムであって、
前記作業者が作業体験を実施する際に装着し作業体験の際に前記作業者が視認する画像を表示する表示部を有する画像表示装置と、
該画像表示装置の表示部に表示させる画像を制御する訓練画像制御機能と、作業体験の際に前記作業者が視認した画像を体験画像として記憶部に記憶させる機能と、該記憶部に記憶されている体験画像を画像表示部に表示させる体験画像表示機能と、を有する制御部と、
前記体験画像が前記画像表示部に表示されている状態において、該体験画像を確認した作業者および/または前記作業現場における作業を管理する作業管理者が入力者として注意情報を入力する入力部と、を備えており、
前記制御部は、
前記入力部から入力された前記注意情報と、該注意情報を入力した前記入力者に関する情報と、該注意情報が入力された際に前記画像表示部に表示されている前記体験画像と、を関連づけて訓練結果情報として記憶部に記憶させる記憶機能と、
前記記憶部に記憶されている前記訓練結果情報に基づいて、前記注意情報を前記体験画像とともに前記画像表示部に表示させる確認画像表示機能と、を備えている
ことを特徴とする作業者の安全教育システム。
【請求項2】
前記入力部は、
前記入力者が前記注意情報とともに、前記体験画像において不安全行動が発生する可能性がある危険推定場所の情報を入力できる機能を有しており、
前記制御部の記憶機能は、
前記危険推定場所の情報と前記訓練結果情報とを関連付けて記憶する、または、前記危険推定場所の情報を前記訓練結果情報に含めて記憶する機能を有しており、
前記制御部の確認画像表示機能は、
前記訓練結果情報に基づいて前記注意情報を前記体験画像とともに前記画像表示部に表示させる際に、前記体験画像における前記危険推定場所または前記危険推定場所の近傍に前記注意情報を表示させる機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の作業者の安全教育システム。
【請求項3】
前記入力部は、
音声入力機能と、
前記制御部の確認画像表示機能によって前記画像表示部に表示されている前記注意情報、を選択する選択機能と、を有しており、
前記制御部は、
前記入力部の選択機能によって前記注意情報が選択されると、前記入力部の音声入力機能によって入力される音声を、選択されている前記注意情報および該注意情報を選択した選択者に関する情報と関連づけて記憶する音声記憶機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の作業者の安全教育システム。
【請求項4】
前記制御部の確認画像表示機能は、
前記作業者が入力した注意情報である作業者注意情報と前記作業管理者が入力した注意情報である作業管理者注意情報とが同じ体験画像と関連づけて記憶されている場合において、前記作業者注意情報と前記作業管理者注意情報の両方を、両者が関連づけられている体験画像と同時に前記画像表示部に表示させる機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の作業者の安全教育システム。
【請求項5】
前記画像表示装置を装着した作業者が作業体験を行う作業現場を模した体験設備を有しており、
前記画像表示装置が、
前記作業者が視認できる領域を撮影する撮影機能を有しており、
前記制御部は、
前記画像表示装置を装着した作業者の動きを検出する検出器と、
該検出器の信号と、前記撮影機能が撮影した前記体験設備の撮影画像と、BIMシステムによって形成された前記体験設備の元となる作業現場の画像であるBIMモデルとに基づいて、MR画像を前記画像表示装置の表示部に表示させる訓練画像制御機能と、を有しており、
前記確認画像表示機能は、
前記MR画像を前記体験画像として前記注意情報とともに前記画像表示部に表示させる機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の作業者の安全教育システム。
【請求項6】
前記体験設備には、
前記体験設備の元となる作業現場において作業者が行う作業に関係する対象物である作業関連物が配置されており、
前記作業関連物のうち前記体験設備に固定されている対象物には、
前記BIMモデルと前記撮影画像との位置合わせに使用される位置合わせマークが設けられている
ことを特徴とする請求項5記載の作業者の安全教育システム。
【請求項7】
作業者が装着し該作業者が視認する画像を表示する表示部を有する画像表示装置を有しており、
前記制御部は、
BIMシステムによって形成された作業者が作業体験を行う作業現場のBIMモデルに基づいて、VR画像を前記画像表示装置の表示部に表示させる訓練画像制御機能を有しており、
前記確認画像表示機能は、
前記VR画像を前記体験画像として前記注意情報とともに前記画像表示部に表示させる機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の作業者の安全教育システム。
【請求項8】
前記入力部は、
前記体験画像において想定される複数の不安全行動を表示する不安全行動テーブルを有しており、
前記入力者が前記不安全行動テーブルから不安全行動を選択する選択入力機能を有しており、
前記制御部は、
前記入力者の情報と、該入力者が入力した不安全行動に関する情報と、前記体験画像と、を利用して、前記入力者を評価する評価機能を有している
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の作業者の安全教育システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
第1発明の作業者の安全教育システムは、作業現場の作業者の安全教育に使用されるシステムであって、前記作業者が作業体験を実施する際に装着し作業体験の際に前記作業者が視認する画像を表示する表示部を有する画像表示装置と、該画像表示装置の表示部に表示させる画像を制御する訓練画像制御機能と、作業体験の際に前記作業者が視認した画像を体験画像として記憶部に記憶させる機能と、該記憶部に記憶されている体験画像を画像表示部に表示させる体験画像表示機能と、を有する制御部と、前記体験画像が前記画像表示部に表示されている状態において、該体験画像を確認した作業者および/または前記作業現場における作業を管理する作業管理者が入力者として注意情報を入力する入力部と、を備えており、前記制御部は、前記入力部から入力された前記注意情報と、該注意情報を入力した前記入力者に関する情報と、該注意情報が入力された際に前記画像表示部に表示されている前記体験画像と、を関連づけて訓練結果情報として記憶部に記憶させる記憶機能と、前記記憶部に記憶されている前記訓練結果情報に基づいて、前記注意情報を前記体験画像とともに前記画像表示部に表示させる確認画像表示機能と、を備えていることを特徴とする。
第2発明の作業者の安全教育システムは、第1発明において、前記入力部は、前記入力者が前記注意情報とともに、前記体験画像において不安全行動が発生する可能性がある危険推定場所の情報を入力できる機能を有しており、前記制御部の記憶機能は、前記危険推定場所の情報と前記訓練結果情報とを関連付けて記憶する、または、前記危険推定場所の情報を前記訓練結果情報に含めて記憶する機能を有しており、前記制御部の確認画像表示機能は、前記訓練結果情報に基づいて前記注意情報を前記体験画像とともに前記画像表示部に表示させる際に、前記体験画像における前記危険推定場所または前記危険推定場所の近傍に前記注意情報を表示させる機能を有していることを特徴とする。
第3発明の作業者の安全教育システムは、第1発明において、前記入力部は、音声入力機能と、前記制御部の確認画像表示機能によって前記画像表示部に表示されている前記注意情報、を選択する選択機能と、を有しており、前記制御部は、前記入力部の選択機能によって前記注意情報が選択されると、前記入力部の音声入力機能によって入力される音声を、選択されている前記注意情報および該注意情報を選択した選択者に関する情報と関連づけて記憶する音声記憶機能を有していることを特徴とする。
第4発明の作業者の安全教育システムは、第1発明において、前記制御部の確認画像表示機能は、前記作業者が入力した注意情報である作業者注意情報と前記作業管理者が入力した注意情報である作業管理者注意情報とが同じ体験画像と関連づけて記憶されている場合において、前記作業者注意情報と前記作業管理者注意情報の両方を、両者が関連づけられている体験画像と同時に前記画像表示部に表示させる機能を有していることを特徴とする。
第5発明の作業者の安全教育システムは、第1発明において、前記画像表示装置を装着した作業者が作業体験を行う作業現場を模した体験設備を有しており、前記画像表示装置が、前記作業者が視認できる領域を撮影する撮影機能を有しており、前記制御部は、前記画像表示装置を装着した作業者の動きを検出する検出器と、該検出器の信号と、前記撮影機能が撮影した前記体験設備の撮影画像と、BIMシステムによって形成された前記体験設備の元となる作業現場の画像であるBIMモデルとに基づいて、MR画像を前記画像表示装置の表示部に表示させる訓練画像制御機能と、を有しており、前記確認画像表示機能は、前記MR画像を前記体験画像として前記注意情報とともに前記画像表示部に表示させる機能を有していることを特徴とする。
第6発明の作業者の安全教育システムは、第5発明において、前記体験設備には、前記体験設備の元となる作業現場において作業者が行う作業に関係する対象物である作業関連物が配置されており、前記作業関連物のうち前記体験設備に固定されている対象物には、前記BIMモデルと前記撮影画像との位置合わせに使用される位置合わせマークが設けられていることを特徴とする。
第7発明の作業者の安全教育システムは、第1発明において、作業者が装着し該作業者が視認する画像を表示する表示部を有する画像表示装置を有しており、前記制御部は、BIMシステムによって形成された作業者が作業体験を行う作業現場のBIMモデルに基づいて、VR画像を前記画像表示装置の表示部に表示させる訓練画像制御機能を有しており、前記確認画像表示機能は、前記VR画像を前記体験画像として前記注意情報とともに前記画像表示部に表示させる機能を有していることを特徴とする。
第8発明の作業者の安全教育システムは、第1、第2、第3または第4発明において、前記入力部は、前記体験画像において想定される複数の不安全行動を表示する不安全行動テーブルを有しており、前記入力者が前記不安全行動テーブルから不安全行動を選択する選択入力機能を有しており、前記制御部は、前記入力者の情報と、該入力者が入力した不安全行動に関する情報と、前記体験画像と、を利用して、前記入力者を評価する評価機能を有していることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
第1発明によれば、作業者は、自分がこれから行う作業現場の画像を利用して自分自身で体験作業を実施した体験画像を確認して不安全行動を把握できるので、作業現場における不安全行動の発生を抑制する効果、つまり、作業者に対する安全教育効果を高めることができる。また、教育を受ける作業者が入力者として注意情報を入力すれば、注意情報とともに体験画像が表示されるので、どのような状況を作業者が不安全行動であると判断したかを作業管理者等が理解できる。
第2発明によれば、どのような状況を作業者が不安全行動であると判断したかについて作業管理者等の理解を深めることができる。
第3発明によれば、作業者が不安全行動であると判断した状況を音声入力させることができるので、作業者の不安全行動に対する作業管理者の理解を深めることができる。また、作業管理者等のコメントなどを音声入力すれば、作業者が注意情報とともに体験画像を確認した際に、作業管理者等の考えを理解しやすくなるので、作業者の不安全行動に対する理解を深めることができる。
第4発明によれば、作業者が注意情報とともに体験画像を確認した際に、作業管理者等の考える不安全行動と作業者自身の考える不安全行動との一致点相違点を作業者が容易に認識できるので、作業者の不安全行動に対する理解をより深めることができる。
第5~第7発明によれば、実際の作業現場での作業を作業者が疑似体験でき、疑似体験した際の画像を体験画像として注意情報を入力するので、作業現場における不安全行動を作業者により理解させやすくなる。
第8発明によれば、作業者個々の不安全行動に対する認識や理解度の評価が提示されるので、作業者の不安全行動に対する認識などを客観的に把握でき、各作業者にあった現場教育を行いやすくなる。