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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157433
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20241030BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20241030BHJP
   H01L 33/46 20100101ALI20241030BHJP
【FI】
H01L33/48
H01L33/08
H01L33/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071800
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五所野尾 浩一
【テーマコード(参考)】
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
5F142AA14
5F142CA11
5F142CB14
5F142CB18
5F142CB22
5F142CB23
5F142DB17
5F142GA02
5F241AA06
5F241AA14
5F241CA40
5F241CB11
5F241CB16
5F241CB27
5F241FF06
(57)【要約】
【課題】モノリシックマイクロLEDであって素子外周部から外部に放射される光の量が低減された発光素子を提供する。
【解決手段】n層と、n層上に位置する活性層と、活性層上に位置するp層とを備えた半導体層を有し、半導体層の一部領域を1ピクセルとして、ピクセルが二次元的に配列されたフリップチップ型のモノリシックマイクロLEDである発光素子において、発光素子の外周に、n層に達する深さであって半導体層をメサ状とする溝が形成され、発光素子の外周に、ピクセルからの光を減衰させる光減衰部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n層と、前記n層上に位置する活性層と、前記活性層上に位置するp層とを備えた半導体層を有し、前記半導体層の一部領域を1ピクセルとして、前記ピクセルが二次元的に配列されたフリップチップ型のモノリシックマイクロLEDである発光素子において、
前記発光素子の外周に、前記n層に達する深さであって前記半導体層をメサ状とする溝が形成され、
前記発光素子の外周に、前記ピクセルからの光を減衰させる光減衰部を有する、発光素子。
【請求項2】
前記光減衰部は、最外周の前記ピクセルから前記溝の上端までの距離を1ピクセルの幅以上とした前記半導体層の領域である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記光減衰部は、最外周の前記ピクセルから前記溝の上端までの距離を1ピクセルの幅の3倍以上とした前記半導体層の領域である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記光減衰部は、前記溝の側面の角度を前記半導体層の主面に対して70°以上とした前記半導体層の領域である、請求項1-3の何れか1項に記載の発光素子。
【請求項5】
前記光減衰部は、前記溝の側面の角度を前記半導体層の主面に対して90°より大きくした前記半導体層の領域である、請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記光減衰部は、前記溝の側面に前記ピクセルからの光の透過を抑制する遮光部を有する、請求項1-3の何れか1項に記載の発光素子。
【請求項7】
前記遮光部は、金属である、請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
前記遮光部は、金属と透明導電膜を交互に積層させた多層膜である、請求項6に記載の発光素子。
【請求項9】
前記遮光部は、n電極である、請求項6に記載の発光素子。
【請求項10】
前記遮光部は、前記溝の側面から上面に連続して設けられている、請求項9に記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの高精細化が求められており、マイクロLEDディスプレイが注目されている。マイクロLEDディスプレイは、1~100μmオーダーの微小なLEDをマトリクス状に配列し、その微小なLEDを1つのサブピクセルとしたディスプレイである。マイクロLEDディスプレイには、マイクロLEDが個々のチップである構造と、1つのチップに複数のマイクロLEDを作製したモノリシック型の構造が知られている。特許文献1には、そのようなモノリシックマイクロLEDが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、紫外LDのリッジ部の側面を逆テーパーにした構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-158179号公報
【特許文献2】特開2022-138095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のモノリシックマイクロLEDでは、活性層から放射された光が素子外周部に形成されたメサ側面で光取り出し側に反射され、素子外周部から外部に放射される。そのため、素子外周部が強く発光しているように見え、ディスプレイに意図しない画像が表示されてしまうことになる。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、モノリシックマイクロLEDであって素子外周部からの光の量が低減された発光素子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
n層と、前記n層上に位置する活性層と、前記活性層上に位置するp層とを備えた半導体層を有し、前記半導体層の一部領域を1ピクセルとして、前記ピクセルが二次元的に配列されたフリップチップ型のモノリシックマイクロLEDである発光素子において、
前記発光素子の外周に、前記n層に達する深さであって前記半導体層をメサ状とする溝が形成され、
前記発光素子の外周に、前記ピクセルからの光を減衰させる光減衰部を有する、発光素子にある。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、光減衰部によって素子外周部に向かう光の量を低減することができる。そのため、モノリシックマイクロLEDであって素子外周部から外部に放射される光の量が低減された発光素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における発光素子の構成を示した断面図であって、基板主面に垂直な断面を示した図。
図2】実施形態1における発光素子を電極側から見た平面図。
図3】サブピクセルのパターンの例を示した図。
図4】実施形態1における発光素子の製造工程を示した図。
図5】実施形態1における発光素子の製造工程を示した図。
図6】実施形態1における発光素子の製造工程を示した図。
図7】実施形態1における発光素子の製造工程を示した図。
図8】実施形態1における発光素子の製造工程を示した図。
図9】実施形態2における発光素子の構成を示した断面図であって、基板主面に垂直な断面を示した図。
図10】実施形態3における発光素子の構成を示した断面図であって、基板主面に垂直な断面を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発光素子は、n層と、n層上に位置する活性層と、活性層上に位置するp層とを備えた半導体層を有し、半導体層の一部領域を1ピクセルとして、ピクセルが二次元的に配列されたフリップチップ型のモノリシックマイクロLEDである。そして、発光素子の外周に、n層に達する深さであって半導体層をメサ状とする溝が形成され、発光素子の外周に、ピクセルからの光を減衰させる光減衰部を有する。
【0011】
光減衰部は、最外周の前記ピクセルから溝の上端までの距離を1ピクセルの幅以上とした半導体層の領域であってもよい。
【0012】
また、光減衰部は、溝の側面の角度を半導体層の主面に対して70°以上とした半導体層の領域であってもよい。
【0013】
また、光減衰部は、溝の側面の角度を半導体層の主面に対して90°より大きくした半導体層の領域であってもよい。
【0014】
また、光減衰部は、溝の側面にピクセルからの光の透過を抑制する遮光部を有していてもよい。
【0015】
遮光部は、金属であってもよい。また、遮光部は、金属と透明導電膜を交互に積層させた多層膜であってもよい。
【0016】
遮光部は、n電極であってもよい。
【0017】
遮光部は、溝の側面から上面に連続して設けられていてもよい。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の発光素子の構成を示した断面図であって、基板主面に垂直な断面を示した図である。図1に示すように、実施形態1の発光素子は、基板10と、n層11と、第1活性層12と、第1中間層13と、第2活性層14と、第2中間層15と、第3活性層16と、保護層17と、p層18と、pコンタクト電極19と、p電極20と、n電極21と、を有している。
【0019】
実施形態1の発光素子は、フリップチップ型のモノリシックマイクロLEDである。赤色、緑色、青色を発光する発光素子構造が2次元的に配列された1チップの素子であり、フリップチップ型である。モノリシックマイクロLEDは、ディスプレイとして利用される。各発光素子構造がディスプレイのサブピクセルであり、赤色、緑色、青色発光の発光素子構造を一まとめにして1ピクセルを構成し、そのピクセルが格子状に配列されて画面を構成している。
【0020】
1.発光素子の構成
基板10は、III族窒化物半導体を成長させる成長基板である。基板10の材料は、サファイア、Si、GaN、ScAlMgOなどである。
【0021】
n層11は、基板10上に位置している。n層11は、n型のIII族窒化物半導体である。たとえばn-GaN、n-AlGaN、n-InGaNなどである。Si濃度は、たとえば1×1018~100×1018cm-3である。
【0022】
第1活性層12は、n層11上に位置している。第1活性層12は、SQWまたはMQW構造の発光層である。発光波長は青色であり、440~480nmである。第1活性層12はAlGaNからなる障壁層とInGaNからなる井戸層を交互に1~9ペア積層させた構造である。より好ましくは1~7ペア、さらに好ましくは1~5ペアである。
【0023】
n層11と第1活性層12の間に、必要に応じてESD層や下地層を設けてもよい。ESD層は、静電耐圧向上のために設ける層である。たとえばノンドープまたは低濃度にSiがドープされたGaN、InGaN、またはAlGaNである。
【0024】
下地層は、超格子構造の半導体層であり、半導体層の格子歪みを緩和するための層である。たとえば、組成の異なるIII族窒化物半導体薄膜(たとえばGaN、InGaN、AlGaNのうち2つ)を交互に積層させたものであり、ペア数はたとえば3~30である。ノンドープでもよいし、Siを1×1017~100×1017cm-3程度ドープしてもよい。また、歪を緩和できるのであれば超格子構造でなくてもよい。第1活性層12とのヘテロ界面で格子定数差が小さくなるような材料であればよく、たとえば、InGaN層、AlInN層、AlGaInN層であってもよい。
【0025】
第1中間層13は、第2活性層14上に位置している。第1中間層13は、第1活性層12からの発光と第2活性層14からの発光とを個別に制御可能とするために設ける層である。また、後述の溝23を形成する際に第1活性層12をエッチングダメージから保護する役割も有する。
【0026】
第1中間層13の材料は、GaNやInGaNである。ノンドープでもよいしn型であってもよい。In組成の異なる複数の層で構成してもよいし、ノンドープ層とn型層の2層としてもよい。
【0027】
第2活性層14は、第1中間層13上に位置している。第2活性層14は、SQWまたはMQW構造の発光層である。発光波長は緑色であり、520~550nmである。第2活性層14はAlGaNからなる障壁層とInGaNからなる井戸層を交互に1~7ペア積層させた構造である。より好ましくは1~5ペア、さらに好ましくは1~3ペアである。また、第1活性層12のペア数と等しいか少ないことが好ましく、少ないことがより好ましい。
【0028】
第2中間層15は、第2活性層14上に位置している。第2中間層15は、第1中間層13と同様の理由により設けられたものであり、第2活性層14からの発光と第3活性層16からの発光とを個別に制御可能とするために設ける層である。また、後述の溝24を形成する際に第2活性層14をエッチングダメージから保護する役割も有する。第2中間層15の材料は第1中間層13と同様であり、同一材料としてもよい。
【0029】
第3活性層16は、第2中間層15上に位置している。第3活性層16は、SQWまたはMQW構造の発光層である。発光波長は赤色であり、600~630nmである。第3活性層16はAlGaNからなる障壁層とInGaNからなる井戸層を交互に1~7ペア積層させた構造である。より好ましくは1~5ペア、さらに好ましくは1~3ペアである。また、第2活性層14のペア数と等しいか少ないことが好ましく、少ないことがより好ましい。
【0030】
保護層17は、第3活性層16上に位置している。保護層17は、活性層を保護するとともに、電子ブロック層としても機能する層である。保護層17は、第3活性層16の井戸層よりもバンドギャップの広い材料であればよく、AlGaN、GaN、InGaNなどである。保護層17の厚さは、2.5~50nmが好ましく、より好ましくは5~25nmである。保護層17に不純物をドープしてもよく、Mgをドープしてもよい。その場合、Mg濃度は1×1018~1000×1018cm-3とするのがよい。
【0031】
保護層17の一部領域はエッチングされ、保護層17からn層11に達する溝22、保護層17から第1中間層13に達する溝23、保護層17から第2中間層15に達する溝24が設けられている。これら溝22~24の平面パターンは後述する。
【0032】
p層18は、保護層17上、溝24により露出した第2中間層15の表面、および溝23により露出した第1中間層13の表面に連続的に設けられている。p層18はp-GaNやp-InGaNである。Mg濃度はたとえば1×1019~1×1021cm-3である。また、p層18はIn組成やMg濃度が異なる複数の層で構成してもよい。
【0033】
p層18と保護層17の間、p層18と溝24により露出した第2中間層15の間、およびp層18と溝23により露出した第1中間層13の間に電子ブロック層を設けてもよい。電子ブロック層は、n層11から注入された電子を第1活性層12、第2活性層14、第3活性層16に効率よく閉じ込めるためにブロックする層である。電子ブロック層はGaNやAlGaNの単層でもよいし、AlGaN、GaN、InGaNのうち2以上を積層させた構造や、組成比のみ替えて積層させた構造であってもよい。また、超格子構造としてもよい。電子ブロック層の厚さは、5~50nmが好ましく、より好ましくは5~25nmである。電子ブロック層のMg濃度は1×1019~100×1019cm-3とするのがよい。
【0034】
pコンタクト電極19は、p層18上であって、保護層17に対向する領域、溝24により露出した第2中間層15に対向する領域、溝23により露出した第1中間層13に対向する領域にそれぞれ分離して設けられている。pコンタクト電極19の材料は、p層18に対して低コンタクト抵抗な材料であり、たとえばAg、Ni/Au、Co/Au、ITO/Ni/Al、Rh、Ru、ITO、IZOなどである。以下、pコンタクト電極19のうち、溝23により露出した第1中間層13に対向する領域に設けられた部分をpコンタクト電極19A、溝24により露出した第2中間層15に対向する領域に設けられた部分をpコンタクト電極19B,保護層17に対向する領域に設けられた部分をpコンタクト電極19Cと呼ぶことにする。
【0035】
実施形態1における発光素子では、第1活性層12のうちpコンタクト電極19Aと対向する領域が青色発光し、第2活性層14のうちpコンタクト電極19Bと対向する領域が緑色発光し、第3活性層16のうちpコンタクト電極19Cと対向する領域が赤色発光する。したがって、pコンタクト電極19A~19Cの平面パターンがサブピクセルの平面パターンとなる。
【0036】
p電極20は、pコンタクト電極19A~19C上にそれぞれ分離して位置している。以下、pコンタクト電極19Aに設けられた部分をp電極20A、pコンタクト電極19Bに設けられた部分をp電極20B、pコンタクト電極19Cに設けられた部分をp電極20Cと呼ぶことにする。p電極20の材料は、たとえばTi/Auであり、n電極21と同一材料とすることができる。
【0037】
n電極21は、溝22によって露出したn層11上に位置している。n電極21の材料は、たとえばTi/Auである。
【0038】
図2は、実施形態1における発光素子を電極側から見た平面図である。図2に示すように、発光素子は平面視で矩形であり、その外周部に矩形のリング状のパターンの溝22が形成されている。図1に示すように、溝22によって半導体層(n層11から保護層17までの積層)はメサ状となっている。そして平面視で溝22の内部に、矩形のリング状のパターンのn電極21が設けられている。
【0039】
溝22の内側には、ピクセルPが正方格子状に配列されている。ピクセルPは、正方形であり、その一片の長さW0をピクセルPの幅とする。なお、ピクセルPは長方形でもよく、その場合には短辺の長さをピクセルの幅W0とする。
【0040】
図1、2に示すように、最外周のピクセルPから溝22までの間に光減衰部25を有している。光減衰部25は、最外周のピクセルPの溝22側端面から溝22の上端(溝22の上面と側面22aが成す角部)まで幅Wの領域(第1光減衰部)と、溝22の側面22aの領域(第2光減衰部、図2では図示を省略している)を有している。第1光減衰部は、p電極20が設けられていない発光しない半導体層の領域である。幅Wは、ピクセルPの幅W0以上となっている。
【0041】
光減衰部25の第1光減衰部は、図1に示すように、溝が設けられていない領域(最上面が保護層17である領域)であってもよいし、溝23や溝24が設けられた領域(第1中間層13や第2中間層15が露出した領域)であってもよい。光減衰部25による光減衰効果をより高めるためには、最上面が保護層17の領域であることが好ましい。
【0042】
溝22の側面22aにおける光の量は、第1活性層12、第2活性層14、および第3活性層16から側面22aまでの距離の2乗に反比例する。そこで実施形態1では、光減衰部25の第1光減衰部を設けることで側面22aに到達するまでの距離を長くしている。これにより側面22aに到達する光の量を十分に低減することができる。その結果、側面22aを透過、あるいは側面22aで反射されて素子外周部から外部へと放射される光の量を低減することができる。
【0043】
光減衰部25の幅Wは、1ピクセルの幅W0の1.5倍以上が好ましい。より好ましくは3倍以上である。素子外周部から外部へと放射される光の量をより低減することができる。また、光減衰部25の幅Wは、1ピクセルの幅W0の10倍以下が好ましい。幅W0が広すぎると、発光しない領域が増え、素子面積が増加してしまうためである。
【0044】
図3は、サブピクセルの平面パターンの一例を示した図である。図3(a)では、4つの正方形のサブピクセルを2×2に配列して1つのピクセルPとしている。2×2のサブピクセルのうち、対角の2つが赤色のサブピクセルで、他の2つが緑色と青色のサブピクセルである。通常、赤色の発光は、青色や緑色に比べて弱いため、赤色のサブピクセルを1つ多くしている。
【0045】
図3(b)では、サブピクセルを長方形とし、3つのサブピクセルをストライプ状に配列して1つのピクセルPとしている。3つのサブピクセルは、それぞれ青色、緑色、赤色のサブピクセルである。図3(b)では各サブピクセルの短辺の長さを揃えているが、色によって変えてもよく、たとえば赤色については、短辺の長さを緑色や青色に比べて長くしてもよい。
【0046】
もちろん、サブピクセルのパターンはこれらに限られず、従来知られている種々のパターンを採用することができる。
【0047】
図3(a)のようにサブピクセルを正方形とする場合には一辺の長さをサブピクセルの幅W1とし、図3(b)のようにサブピクセルを長方形とする場合には短辺の長さをサブピクセルの幅W1とする。各色のサブピクセルでW1が異なる場合には、最も大きい値をW1とする。また、サブピクセルが正方形や長方形以外の形状である場合には、外接円の直径をW1とする。
【0048】
このとき、光減衰部25の幅Wは、サブピクセルの幅W1の3倍以上が好ましい。距離の2乗に反比例して光の量が減衰するため、幅Wを幅W1の3倍とすると、1倍の場合に比べて光の量をおよそ1/10にすることができる。そのため、素子外周部から外部に放射される光の量を十分に低減することができる。より好ましくはサブピクセルの幅W1の5倍以上である。
【0049】
光減衰部25の第2光減衰部において、側面22aの角度θ(基板10の主面に対する角度)は、70°以上とすることが好ましい。ここでθは図1のように回転方向を定める。溝22の側面22aの角度θを70°以上とすることで、側面22aで反射された光のうち、光取り出し側に向かう光が減少する。また、側面22aで反射された光のうち、伝搬方向が基板10主面に対して浅い角度となる光の割合が増え、基板10とn層11の界面で全反射する光の割合が増えるため、光取り出し側から外部に放射される光の量が低減する。その結果、素子外周部から外部へと放射される光の量を低減することができる。
【0050】
溝22の側面22aの角度θは、逆テーパーとなる角度(90°より大きい角度)であることがより好ましい。つまり、基板10主面に平行な面での素子断面積が基板10から離れるにつれて広くなるような傾斜であることが好ましい。側面22aを逆テーパーとすると、側面22aで反射された光のうち光取り出し側に向かう光の割合が減少し、また光取り出し側に向うとしても基板10とn層11の界面での全反射により外部に取り出されない光が多くなる。その結果、素子外周部から外部に取り出される光をより低減することができる。より好ましい側面22aの角度θは100°以上である。
【0051】
側面22aの角度θの上限は特に規定されないが、作製の容易さの点などから、側面22aの角度は135°以下が好ましい。より好ましくは120°以下である。
【0052】
基板10の裏面であって外周部に、実施形態1における発光素子からの光を遮光する遮光部材を配置してもよい。また、後段の光学部材に同様の遮光部材を配置してもよい。これにより、素子外周部の光をさらに低減することができる。このとき、光減衰部25の第1光減衰部に幅Wの広さがあるため、遮光部材の配置にある程度の誤差が許容され、遮光部材の位置合わせが容易となる。
【0053】
以上のように、実施形態1における発光素子は、素子外周部に光減衰部25が設けられているため、素子外周部からの光の放射を低減することができる。そのため、素子外周部が発光しているようには見えず、意図通りの画像を表示させることができる。
【0054】
2.発光素子の製造方法
実施形態1における発光素子の製造方法について、図を参照に説明する。
【0055】
まず、図4に示すように、基板10上に、基板10側から順に、n層11、第1活性層12、第1中間層13、第2活性層14、第2中間層15、第3活性層16、保護層17をMOCVD法によって積層する。
【0056】
次に、図5に示すように、保護層17の一部領域をドライエッチングして、溝23、24を形成する。溝23は第1中間層13が露出するまでエッチングし、溝24は第2中間層15が露出するまでエッチングする。
【0057】
次に、図6に示すように、MOCVD法によって、保護層17の表面、溝24の底面、溝23の底面に連続してp層18を形成する。
【0058】
次に、図7に示すように、p層18の所定領域をドライエッチングして溝22を形成する。溝22は、n層11が露出するまでエッチングする。また、最外周のピクセルから溝22の上端までの幅Wがピクセルの幅W0以上となるように溝22を形成する。溝22の側面22aの角度は、エッチング条件によって制御することができる。そこで、側面22aの角度が70°以上、好ましくは90°よりも大きくなるように(つまり逆テーパーとなるように)溝22をエッチングするとよい。
【0059】
次に、図8に示すように、スパッタや蒸着によって、p層18上であって溝23の領域にpコンタクト電極19A、p層18上であって溝24の領域にpコンタクト電極19B、p層18上であって保護層17の上部に当たる領域にpコンタクト電極19Cを形成する。
【0060】
次に、スパッタや蒸着によって、pコンタクト電極19A~19C上にp電極20A~20Cを形成し、溝22底面に露出するn層11上にn電極21を形成する。p電極20A~20Cとn電極21は同一材料であるため同時に形成することができる。以上によって図1に示す実施形態1における発光素子を製造することができる。
【0061】
(実施形態2)
図9は、実施形態2における発光素子の構成を示した断面図であって、基板主面に垂直な断面を示した図である。図9に示すように、実施形態2における発光素子は、実施形態1における発光素子の光減衰部25を次のように変えたものであり、他の構成は実施形態1と同様である。
【0062】
実施形態2における発光素子では、溝22に替えて溝122を設けている。溝22との違いは、溝122の側面122aの傾斜角度であり、側面122aは逆テーパー、つまり傾斜角度が90°よりも大きい。それ以外は溝22と同様である。
【0063】
また、実施形態2における発光素子では、光減衰部25の第3光減衰部として、側面122aを覆うように遮光部110が設けられている。遮光部110は、側面122aから外部へと放射される光の量を低減し、側面122aでの光の反射を低減するものである。
【0064】
遮光部110は、第1活性層12、第2活性層14、および第3活性層16からの光の透過率が低くなるような構成であればよい。たとえば透過率が50%以下であることが好ましい。また、遮光部110は、第1活性層12、第2活性層14、および第3活性層16からの光の反射率が低くなるような構成が好ましい。要するに、第1活性層12、第2活性層14、および第3活性層16からの光の吸収率が高いことが好ましい。
【0065】
たとえば、遮光部110を金属などの赤、緑、青の波長の光を吸収する材料としてもよい。具体的には、Ti、V、Mo、W、Cr、Ni、Taなどを用いることができる。この場合、遮光部110の厚さは50nm以上が好ましい。吸収率を十分に高めることができる。
【0066】
また、たとえば、金属と透明導電膜が交互に積層された多層膜であって、干渉によって赤、緑、青の波長の光の反射が弱め合うように厚さが設定されたものとしてもよい。このような多層膜を用いれば、干渉による反射の低減だけでなく、金属による吸収も生じさせることができる。多層膜の金属として、Ti、V、Mo、W、Cr、Ni、Taなどを用いることができる。また、透明導電膜として、ITO、IZOなどを用いることができる。このような多層膜とする場合、最初の層、最後の層は金属でも透明導電膜でもよい。
【0067】
遮光部110は必ずしも導電性材料である必要はない。ただし、導電性材料とした場合、溝122の側面122aにおいてp層18とn層11とを電気的に短絡させることができる。そのため、半導体層、特に第1活性層12、第2活性層14、第3活性層16において光が吸収されて電子とホールが発生した際に、電子とホールを遮光部110によって効率的に引き抜くことができる。これにより、電子とホールが再結合して発光してしまうことを抑制できるので、素子外周部から外部へと放射される光の量をさらに低減することができる。電子とホールをより効果的に引き抜くために、溝122の側面122aにおいてp層18とn層11とが逆バイアスとなるように電圧を印加してもよい。
【0068】
遮光部110は、溝122の側面122aだけでなく、底面や上面(保護層17、溝23の底面、あるいは溝24の底面であって溝122近傍の領域)にも連続して設けられていてよい。
【0069】
遮光部110は、スパッタやALDによって形成するとよい。逆テーパーの側面122aを精度よく覆うことができる。特に、多層膜とする場合にALDを用いれば、膜厚を精度よく制御できるので、設計通りの特性を実現することができる。
【0070】
以上、実施形態2における発光素子によれば、遮光部110によって溝122の側面122aからの光の透過を抑制することができ、側面122aに到達した光の一部を吸収することができる。また、側面122aが逆テーパーであるため、側面122aで反射される光の大部分は光取り出し側とは反対側へと反射させることができ、光取り出し側に反射された場合でも基板10の主面に対して角度が小さいため全反射により外部に取り出されない。その結果、素子外周部から外部へと放射される光の量を低減することができる。
【0071】
(実施形態3)
図10は、実施形態3における発光素子の構成を示した断面図であって、基板主面に垂直な断面を示した図である。図10に示すように、実施形態3における発光素子は、n電極222が実施形態2における遮光部110を兼ねるようにしたものであり、他の構成は実施形態2と同様である。
【0072】
n電極222は、図10に示すように、溝122の底面、側面122a、上面に連続して設けられている。n電極222は必ずしも溝122の上面に設ける必要はないが、上面に設けることでp電極20とn電極21の高さを揃えることができ、実施形態3における発光素子の実装基板への実装が容易となる。
【0073】
n電極222は、実施形態1、2における発光素子のn電極21と同一材料とすることができる。n電極222が金属材料であるため、実施形態2における発光素子の遮光部110と同様の機能を発揮する。すなわち、側面122aからの光の透過を抑制することができる。また、側面122aに到達した光の一部を吸収することができる。
【0074】
また、側面122aが逆テーパーであるため、側面122aで反射される光の大部分は光取り出し側とは反対側へと反射させることができ、光取り出し側に反射された場合でも基板10の主面に対して角度が小さいため全反射により外部に取り出されない。その結果、素子外周部から外部へと放射される光の量を低減することができる。
【0075】
また、n電極222は、溝122の側面122aにおいてp層18とn層11とを電気的に短絡させている。そのため、半導体層、特に第1活性層12、第2活性層14、第3活性層16において光が吸収されて電子とホールが発生した際に、電子とホールをn電極222によって効率的に引き抜くことができる。これにより、電子とホールが再結合して発光してしまうことを抑制できるので、素子外周部から外部へと放射される光の量をさらに低減することができる。
【0076】
なお、n電極222からp電極20までは光減衰部25によって十分に長い距離が確保されているため、n電極222によって側面122aでn層11とp層18が電気的に短絡されていても素子動作に影響はない。
【0077】
n電極222は、スパッタで形成するとよい。逆テーパーである溝122の側面122aを精度よく被覆することができる。
【0078】
実施形態3における発光素子によれば、実施形態2における発光素子よりもさらに構造を簡単にすることができる。また、遮光部110を別途設けない分、素子面積をより小さくすることができる。
【0079】
(変形形態)
実施形態1~3は、青色、緑色、赤色の3色のサブピクセルを1ピクセルとするフルカラー表示可能なモノリシックマイクロLEDであるが、本発明はこれに限るものではない。単色のモノリシックマイクロLEDでもよい。また、2色や4色以上のサブピクセルを1ピクセルとするものであってもよい。また、蛍光体や量子ドットなどを用いて波長変換することでフルカラーを実現する方式であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10:基板
11:n層
12:第1活性層
13:第1中間層
14:第2活性層
15:第2中間層
16:第3活性層
17:保護層
18:p層
19、19A~19C:pコンタクト電極
20、20A~20C:p電極
21、222:n電極
22~24:溝
25:光減衰部
110:遮光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10