(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157436
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】オイル状態判定システム、及び、オイル状態の判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/06 20060101AFI20241030BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G01N27/06 Z
G01N27/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071805
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中津 彰
(72)【発明者】
【氏名】夏原 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】徳田 有佑
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AE30
2G060AF07
2G060AG03
2G060EA08
2G060FA01
2G060HC15
2G060KA05
(57)【要約】
【課題】オイルの部分的な交換、又は、オイルの注ぎ足しが行なわれた場合であっても継続してオイル状態を判定可能なオイル状態判定システム、及び、オイル状態の判定方法を提供する。
【解決手段】オイル状態判定システムは、測定部と、判定部とを備える。測定部は、オイルの抵抗値を周期的に測定する。判定部は、抵抗値に基づいてオイルの状態を周期的に判定する。判定部は、抵抗値の極大値を記憶し、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となった場合にオイルの状態が変化したと判定し、抵抗値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上となった場合に極大値を初期化すると共に第1閾値を更新する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルの抵抗値を周期的に測定する測定部と、
前記抵抗値に基づいて前記オイルの状態を周期的に判定する判定部とを備え、
前記判定部は、
前記抵抗値の極大値を記憶し、
前記極大値と前記抵抗値との差分が第1閾値以上となった場合に前記オイルの状態が変化したと判定し、
前記抵抗値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上となった場合に前記極大値を初期化すると共に前記第1閾値を更新する、オイル状態判定システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記変化量が前記第2閾値以上となった場合に、前記変化量に基づいて前記第1閾値を更新する、請求項1に記載のオイル状態判定システム。
【請求項3】
前記判定部によって前記オイルの状態が変化したと判定された場合に前記オイルの交換が必要である旨をユーザに通知する通知部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のオイル状態判定システム。
【請求項4】
前記判定部は、
前記極大値と前記抵抗値との差分が前記第1閾値以上となった場合に、
前記抵抗値の低下が所定期間継続しているときは、前記オイルの状態が変化したと判定する一方、
前記抵抗値の低下が前記所定期間継続していないときは、前記オイルの状態が変化したと判定しない、請求項1又は請求項2に記載のオイル状態判定システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記極大値と前記抵抗値との差分が第1閾値以上となり、かつ、前記抵抗値の変化傾向が反転した場合に前記オイルの状態が変化したと判定する、請求項1又は請求項2に記載のオイル状態判定システム。
【請求項6】
オイルの抵抗値を周期的に測定するステップと、
前記抵抗値に基づいて前記オイルの状態を周期的に判定するステップとを含み、
前記オイルの状態を周期的に判定するステップは、
前記抵抗値の極大値を記憶するステップと、
前記極大値と前記抵抗値との差分が第1閾値以上となった場合に前記オイルの状態が変化したと判定するステップと、
前記抵抗値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上となった場合に前記極大値を初期化すると共に前記第1閾値を更新するステップとを含む、オイル状態の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル状態判定システム、及び、オイル状態の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開昭61-20848号公報(特許文献1)は、潤滑油の劣化度判定装置を開示する。この劣化度判定装置においては、潤滑油と接触する一対の電極に交流電圧が印加され、電極に生じる電流に基づいて潤滑油の劣化度が判定される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルの抵抗値に基づいてオイルの状態を判定する方法が考えられる。しかしながら、オイルの部分的な交換、又は、オイルの注ぎ足しが行なわれると、オイルの抵抗値の推移が変化する。抵抗値の推移が変化すると、オイルの部分的な交換、又は、オイルの注ぎ足しが行なわれる前と同一の基準でオイル状態を適切に判定することができない場合がある。上記特許文献1は、このような問題の解決手段を開示していない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、オイルの部分的な交換、又は、オイルの注ぎ足しが行なわれた場合であっても継続してオイル状態を判定可能なオイル状態判定システム、及び、オイル状態の判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従うオイル状態判定システムは、測定部と、判定部とを備える。測定部は、オイルの抵抗値を周期的に測定する。判定部は、抵抗値に基づいてオイルの状態を周期的に判定する。判定部は、抵抗値の極大値を記憶し、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となった場合にオイルの状態が変化したと判定し、抵抗値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上となった場合に極大値を初期化すると共に第1閾値を更新する。
【0007】
オイルの部分的な交換、又は、オイルの注ぎ足しが行なわれると、オイルの抵抗値が急激に変化し得る。このオイル状態判定システムにおいては、抵抗値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上となった場合に、極大値の初期化及び第1閾値の更新が行なわれる。すなわち、オイルの部分的な交換、又は、オイルの注ぎ足しが行なわれることによって抵抗値が急激に変化すると、オイル状態の判定基準が適切に変更される。したがって、このオイル状態判定システムによれば、オイルの部分的な交換、又は、オイルの注ぎ足しが行なわれたとしても、継続してオイル状態を適切に判定することができる。
【0008】
上記オイル状態判定システムにおいて、判定部は、上記変化量が第2閾値以上となった場合に、上記変化量に基づいて第1閾値を更新してもよい。
【0009】
オイルの部分的な交換、又は、オイルの注ぎ足しが行なわれた場合に、オイルの抵抗値の推移は、オイルの交換量又はオイルの注ぎ足し量に応じて変化する。このオイル状態判定システムによれば、オイルの交換量又はオイルの注ぎ足し量と相関を有する上記変化量に基づいて第1閾値が更新され、オイル状態の判定基準がより適切に変更されるため、オイル状態をより適切に判定することができる。
【0010】
上記オイル状態判定システムは、判定部によってオイルの状態が変化したと判定された場合にオイルの交換が必要である旨をユーザに通知する通知部をさらに備えてもよい。
【0011】
このオイル状態判定システムによれば、オイルの状態が変化したと判定された場合にオイルの交換が必要である旨がユーザに通知されるため、必要なタイミングでオイル交換をユーザに促すことができる。
【0012】
上記オイル状態判定システムにおいて、判定部は、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となった場合に、抵抗値の低下が所定期間継続しているときはオイルの状態が変化したと判定する一方、抵抗値の低下が所定期間継続していないときはオイルの状態が変化したと判定しなくてもよい。
【0013】
オイルの注ぎ足しが行なわれるのに応じてオイルの抵抗値が一旦低下しその後上昇に転じる場合がある。オイルの抵抗値が一旦低下するのに伴い極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となったとしても、その後抵抗値が上昇する場合には、オイルの状態が変化したと判定することが必ずしも適切でない。このオイル状態判定システムによれば、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となった場合であっても抵抗値の低下が所定期間継続していないときはオイルの状態が変化したと判定されないため、上記適切でない事態の発生を抑制することができる。
【0014】
上記オイル状態判定システムにおいて、判定部は、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となり、かつ、抵抗値の変化傾向が反転した場合にオイルの状態が変化したと判定してもよい。
【0015】
本発明の他の局面に従うオイル状態の判定方法は、オイルの抵抗値を周期的に測定するステップと、抵抗値に基づいてオイルの状態を周期的に判定するステップとを含む。オイルの状態を周期的に判定するステップは、抵抗値の極大値を記憶するステップと、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となった場合にオイルの状態が変化したと判定するステップと、抵抗値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上となった場合に極大値を初期化すると共に第1閾値を更新するステップとを含む。
【0016】
このオイル状態の判定方法においては、抵抗値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上となった場合に、極大値の初期化及び第1閾値の更新が行なわれる。すなわち、オイルの部分的な交換、又は、オイルの注ぎ足しが行なわれることによって抵抗値が急激に変化すると、オイル状態の判定基準が適切に変更される。したがって、このオイル状態の判定方法によれば、オイルの部分的な交換、又は、オイルの注ぎ足しが行なわれたとしても、オイル状態を適切に判定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オイルの部分的な交換、又は、オイルの注ぎ足しが行なわれた場合であっても継続してオイル状態を判定可能なオイル状態判定システム、及び、オイル状態の判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】オイル状態判定システムを含むオイルセンサの構成を模式的に示す図である。
【
図2】オイルの抵抗値の時間的変化と燃費の時間的変化との関係の一例を示す図である。
【
図3】オイルの抵抗値の時間的変化とオイルの塩基価の時間的変化との関係の一例を示す図である。
【
図4】オイル状態判定システムにおけるオイル状態の判定基準について説明するための図である。
【
図5】オイルタンク内のオイル量の変化の一例を示す図である。
【
図6】オイル状態判定システムにおけるオイル状態の判定手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図6のステップS140において実行されるオイル状態判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図6のステップS150において実行される初期化処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】第1の他の実施の形態における、オイルの状態変化の判定基準について説明するための図である。
【
図10】第1の他の実施の形態において、
図6のステップS140で実行されるオイル状態判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】第2の他の実施の形態における、オイルの状態変化の判定基準について説明するための図である。
【
図12】停電時にバッテリ駆動することによるメリットの第1の例を説明するための図である。
【
図13】停電時にバッテリ駆動することによるメリットの第2の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施の形態」とも称する。)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図面は、理解の容易のために、適宜対象を省略又は誇張して模式的に描かれている。
【0020】
[1.オイル状態判定システムの構成]
図1は、本実施の形態に従うオイル状態判定システム100を含むオイルセンサ10の構成を模式的に示す図である。オイルセンサ10は、例えば、車両等のオイルタンク20内に取り付けられ、オイルO1の状態(劣化度)を検出するように構成されている。オイルセンサ10は、少なくとも一部分がオイルO1に浸漬された状態でオイルO1の状態を検出する。
【0021】
図1に示されるように、オイルセンサ10は、オイル状態判定システム100と、基板110とを含んでいる。オイルセンサ10の使用時に、基板110は、オイルO1に浸漬される。基板110の形状は、例えば、平面視において略矩形状である。基板110は、基板本体111と、一対の電極112と、温度検出素子113とを含んでいる。基板本体111は、いわゆるフッ素樹脂基板である。フッ素樹脂基板が耐候性及び耐薬性に優れるため、基板本体111を含む基板110は過酷環境での使用に耐え得る。なお、基板本体111は、必ずしもフッ素樹脂基板で構成される必要はないが、例えば、耐薬性に優れた基板で構成されることが好ましい。
【0022】
一対の電極112は、基板本体111上に形成されている。一対の電極112は、オイルO1の電気抵抗値(以下、単に「抵抗値」とも称する。)の測定に用いられる。各電極112は、櫛歯形状を有している。基板110において、一対の電極112は、各電極112の歯部分が交互に位置するように配置されている。一対の電極112は、例えば、基板本体111の一面に形成された導電層をパターニングすることによって形成される。
【0023】
温度検出素子113は、基板本体111上に実装されている。温度検出素子113は、オイルO1の温度測定に用いられる。温度検出素子113は、例えば、測温抵抗体(RTD)、サーミスタ又は熱電対等の電気式の温度センサによって構成される。
【0024】
オイル状態判定システム100は、測定部102と、温度測定部108と、判定部104と、通知部106とを含んでいる。測定部102は、例えば、電源、電流計及び演算回路を含む。測定部102は、一対の電極112間に測定電圧を印加すると共に、一対の電極112を含む回路において生じる電流を測定する。測定部102は、一対の電極112間に印加された電圧、及び、測定された電流に基づいて一対の電極112間の抵抗値(インピーダンス)を検出する。すなわち、測定部102は、一対の電極112間の抵抗値を測定する。一対の電極112の全体がオイルO1に浸漬されている場合には、一対の電極112間の抵抗値がオイルO1の抵抗値とみなされる。本実施の形態において、一対の電極112間に印加される測定電圧は交流電圧である。なお、測定電圧は、必ずしも交流電圧である必要はなく、直流電圧であってもよい。
【0025】
温度測定部108は、例えば、温度検出素子113に測定電圧を印加すると共に温度検出素子113を含む回路において生じる電流を測定する。温度測定部108は、例えば、温度検出素子113に印加された電圧、及び、測定された電流に基づいて温度検出素子113の抵抗値を検出する。すなわち、温度測定部108は、例えば、温度検出素子113の抵抗値を測定する。
【0026】
判定部104は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。判定部104は、温度測定部108によって測定された抵抗値に基づいてオイルO1の温度を測定する。判定部104においては、例えば、温度と抵抗値との関係が予め記憶されている。オイルO1の温度情報がどのように用いられるかについては後程説明する。また、判定部104は、測定部102によって測定された抵抗値に基づいてオイルO1の状態を判定する。判定部104は、例えば、オイルタンク20に収容されているオイルO1の交換が必要であるか否かの判定を行なう。判定部104による判定手順については後程詳しく説明する。
【0027】
通知部106は、例えば、ディスプレイを含む。通知部106は、例えば、判定部104による判定結果を示す画像を表示することによって判定結果をユーザに通知する。オイル状態判定システム100によれば、例えば、オイルO1の交換が必要であると判定された場合にその旨がユーザに通知されるため、必要なタイミングでオイル交換をユーザに促すことができる。
【0028】
[2.オイル状態の判定基準の調整]
図2は、オイルO1の抵抗値の時間的変化と燃費の時間的変化との関係の一例を示す図である。
図2を参照して、横軸はオイルO1の使用時間を示し、一方の縦軸はオイルO1の抵抗値を示し、他方の縦軸は燃費を示す。線L1はオイルO1の抵抗値と使用時間との関係を示し、線L2は燃費と使用時間との関係を示す。なお、オイルO1の使用時間は、オイルO1が実際に使用されている時間である。例えば、オイルO1がエンジンオイルである場合には、エンジンによって車両が走行している時間が使用時間となる。
【0029】
第1期間(時刻t0-t1)においては、オイルO1の抵抗値が上昇している。第1期間における抵抗値の上昇は、例えば、オイルO1に含まれる添加剤の消費(減少)に起因して生じている。
【0030】
第2期間(時刻t1-t2)においては、抵抗値の変化傾向が反転し(上昇から低下に転じ)、抵抗値が低下している。第2期間における抵抗値の低下は、例えば、オイルO1の酸化(酸化生成物の増加)に起因して生じている。
【0031】
第3期間(時刻t2以降)においては、抵抗値の変化傾向が再び反転し(低下から上昇に転じ)、抵抗値が上昇している。第3期間における抵抗値の上昇は、例えば、オイルO1におけるスラッジの増加に起因して生じている。
【0032】
オイルO1の抵抗値と使用時間との間には、このような相関関係が存在する。すなわち、オイルO1が継続的に使用された場合に、オイルO1の抵抗値は、使用時間の経過と共に一旦上昇し、その後上昇から低下に転じ、再び低下から上昇に転じる。例えば、抵抗値が低下から上昇に転じたタイミングでオイルO1の状態が劣化状態に変化したとみなすことが考えられる。すなわち、抵抗値が低下から上昇に転じたタイミングでユーザにオイルO1の交換を促すことが考えられる。
【0033】
図2に示される例では、オイル管理基準値として燃費が採用されており、例えば、燃費がFC1以下になるまでにオイル交換が行なわれることが好ましいとされている。この例では、時刻t3に燃費がFC1以下となっている。一方、オイルO1の抵抗値が低下から上昇に転じるタイミングは時刻t2である。時刻t2は時刻t3よりも早い。この場合には、オイルO1の抵抗値が低下から上昇に転じたタイミング(時刻t2)でユーザにオイルO1の交換が促されても問題ない。
【0034】
図3は、オイルO1の抵抗値の時間的変化とオイルO1の塩基価の時間的変化との関係の一例を示す図である。
図3を参照して、横軸はオイルO1の使用時間を示し、一方の縦軸はオイルO1の抵抗値を示し、他方の縦軸はオイルO1の塩基価を示す。線L3は、オイルO1の塩基価と使用時間との関係を示す。
【0035】
図3に示される例では、オイル管理基準値としてオイルO1の塩基価が採用されており、塩基価がBN1以下になるまでにオイル交換が行なわれることが好ましいとされている。この例では、時刻t10に塩基価がBN1以下になっている。一方、オイルO1の抵抗値が低下から上昇に転じるタイミングは時刻t2である。時刻t2は時刻t10よりも遅い。この場合には、抵抗値が低下から上昇に転じたタイミング(時刻t2)でユーザにオイルO1の交換が促されたとしても、本来の交換タイミング(時刻t10)は既に過ぎている。その結果、例えば、オイルO1を使用する装置の劣化が促進される。
【0036】
本実施の形態に従うオイル状態判定システム100においては、オイルO1の状態変化が、オイルO1の抵抗値が低下から上昇に転じたか否かに基づいて判定されない。オイル状態判定システム100においては、抵抗値の極大値と抵抗値との差分が周期的に検出され、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となった場合にオイルO1の状態が変化した(劣化した)と判定される。第1閾値は、オイルO1の状態変化を判定するための閾値といえる。
【0037】
図4は、オイル状態判定システム100におけるオイル状態の判定基準について説明するための図である。
図4を参照して、横軸はオイルO1の使用時間を示し、縦軸はオイルO1の抵抗値を示す。線L4は、オイルO1の抵抗値と使用時間との関係を示す。
【0038】
時刻t30-t31においては、オイルO1の抵抗値が上昇している。時刻t31においては、抵抗値が極大値R_MAX1となっている。その後、抵抗値の変化傾向が上昇から低下に転じ、時刻t31-t32においては、抵抗値が低下している。極大値R_MAX1と抵抗値との差分が第1閾値以上となると、オイルO1の状態が変化したと判定される。オイル状態判定システム100においては、例えば、オイルO1の種類及び量、並びに、オイル管理基準値として何が採用されているか等に応じて第1閾値が予め調整される。第1閾値が適切に調整されることによって、オイル交換を促す通知が適切なタイミングで発される。
【0039】
この例においては、時刻t32において、極大値R_MAX1と抵抗値との差分が第1閾値以上となっている。時刻t32は、抵抗値が再び上昇に転じる前のタイミングである。時刻t32において、抵抗値が急上昇している。時刻t32において抵抗値が急上昇している理由について次に説明する。
【0040】
図5は、オイルタンク20内のオイル量の変化の一例を示す図である。
図5を参照して、横軸は定期点検回数を示し、縦軸はオイル量を示す。定期点検は、例えば、10000時間に1回行なわれる。時間の経過に伴い、オイルタンク20に収容されているオイルO1の量は減少する。この例においては、1回目、2回目、4回目及び5回目の定期点検においてオイルO1の注ぎ足しが行なわれず、3回目及び6回目の定期点検においてオイルO1の注ぎ足しが行なわれている。
【0041】
再び
図4を参照して、時刻t32においては、オイルO1の注ぎ足し及び部分的な交換の少なくとも一方が行なわれている。オイルO1の部分的な交換とは、オイルタンク20に収容されているオイルO1の一部を新しいオイルO1に入れ替えることをいう。オイルO1の注ぎ足し及び部分的な交換の少なくとも一方が行なわれることによってオイルタンク20内のオイルO1の性質が変化し、オイルO1の抵抗値が急激に変化する。オイルO1の注ぎ足し及び部分的な交換の少なくとも一方が行なわれることによってオイルO1の劣化状態が改善される。
【0042】
時刻t32-t33においては、オイルO1の抵抗値が上昇している。時刻t33においては、オイルO1の抵抗値が極大値R_MAX2となっている。時刻t32において全オイルが交換されているわけではないため、極大値R_MAX2は極大値R_MAX1よりも小さい。その後、抵抗値の変化傾向が上昇から低下に反転し、時刻t33-t34においては、抵抗値が低下している。すなわち、時刻t32においてオイルO1の注ぎ足し及び部分的な交換の少なくとも一方が行なわれることによって、抵抗値の推移が変化している。
【0043】
仮に第1閾値が更新されずに、極大値R_MAX2と抵抗値との差分が第1閾値以上となった場合にオイルO1の状態が変化したと判定されるとする。この場合には、本来時刻t34にはオイル交換を促す通知が発されるべきであったとしても、時刻t34よりもさらに遅いタイミングでオイル交換を促す通知が発される。このように、オイルO1の注ぎ足し及び部分的な交換の少なくとも一方が行なわれた場合に第1閾値が更新されないと、オイル交換を促す通知を適切なタイミングで発することができない場合がある。
【0044】
本実施の形態に従うオイル状態判定システム100においては、オイルO1の抵抗値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上となった場合に、抵抗値の極大値の初期化及び第1閾値の更新が行なわれる。第2閾値は、オイルO1の部分的な交換、又は、オイルO1の注ぎ足しを検出するための閾値といえる。オイルO1の交換及び注ぎ足しは定期的に行なわれることが多い。オイルO1の交換量及び注ぎ足し量に関する所定量(例えば、定期的な交換又は注ぎ足しにおける標準的な交換量又は注ぎ足し量)に応じて第2閾値が調整されることによって、適切なタイミングで極大値の初期化及び第1閾値の更新が行なわれる。
【0045】
すなわち、オイルO1の部分的な交換、又は、オイルO1の注ぎ足しが行なわれることによってオイルタンク20内のオイルO1の抵抗値が急激に変化すると、オイル状態の判定基準が適切に調整される。したがって、オイル状態判定システム100によれば、オイルO1の部分的な交換、又は、オイルO1の注ぎ足しが行なわれたとしても、継続してオイル状態を適切に判定することができる。
【0046】
[3.オイル状態の判定手順]
図6は、オイル状態判定システム100におけるオイル状態の判定手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、オイルセンサ10が作動した状態で、オイル状態判定システム100によって繰り返し実行される。
【0047】
図6を参照して、オイル状態判定システム100の温度測定部108がオイルO1の温度を測定するための値(例えば、温度検出素子113の抵抗値)を検出し、オイル状態判定システム100の判定部104が温度測定部108による検出結果に基づいてオイルO1の温度を測定する(ステップS100)。判定部104は、測定された温度が所定範囲内か否かを判定する(ステップS105)。オイルO1の抵抗値は温度の影響を受けやすいため、オイルO1の温度が考慮されている。温度の所定範囲は、オイルO1の種類に応じて適宜調整されるが、例えば、30℃~50℃である。
【0048】
オイルO1の温度が所定範囲内でないと判定されると(ステップS105においてNO)、判定部104は、再びステップS100の処理を実行する。一方、オイルO1の温度が所定範囲内であると判定されると(ステップS105においてYES)、オイル状態判定システム100の測定部102は、オイルO1の抵抗値R_Nを測定する(ステップS110)。オイル状態判定システム100の判定部104は、今回の周期において測定された抵抗値R_Nと前回の周期において測定された抵抗値R_N-1との差分の絶対値が第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップS115)。
【0049】
ここで、差分の「絶対値」が第2閾値との比較対象になっている理由について説明する。オイルO1の部分的な交換、又は、オイルO1の注ぎ足しが行なわれた場合に、オイルO1の抵抗値が急激に上昇するとは限らない。オイルO1の種類等によっては、オイルO1の部分的な交換、又は、オイルO1の注ぎ足しが行なわれた場合に、オイルO1の抵抗値が急激に低下する場合もある。抵抗値が急激に低下する場合であっても、オイルO1の部分的な交換、又は、オイルO1の注ぎ足しを適切に検出するために、ステップS115においては、差分の「絶対値」が第2閾値との比較対象になっている。
【0050】
ステップS115において、今回の周期において測定された抵抗値R_Nと前回の周期において測定された抵抗値R_N-1との差分の絶対値が第2閾値未満であると判定されると(ステップS115においてNO)、判定部104は、今回の周期において測定された抵抗値R_Nが現在記憶されている極大値R_MAXよりも大きいか否かを判定する(ステップS120)。抵抗値の極大値R_MAXは、例えば、判定部104に記憶されている。今回の周期において測定された抵抗値R_Nが現在記憶されている極大値R_MAXよりも大きいと判定されると(ステップS120においてYES)、判定部104は、今回の周期において測定された抵抗値R_Nを極大値R_MAXとして記憶する(ステップS125)。その後、判定部104は、N=N+1の処理を実行し(ステップS145)、再びステップS110の処理を実行する。
【0051】
一方、ステップS120において、今回の周期において測定された抵抗値R_Nが現在記憶されている極大値R_MAX以下であると判定されると(ステップS120においてNO)、判定部104は、現在記憶されている極大値R_MAXを維持する(ステップS130)。
【0052】
判定部104は、今回の周期において測定された抵抗値R_Nが、前回の周期において測定された抵抗値R_N-1よりも大きいか否かを判定する(ステップS135)。今回の周期において測定された抵抗値R_Nが前回の周期において測定された抵抗値R_N-1よりも大きいと判定されると(ステップS135においてYES)、判定部104は、N=N+1の処理を実行し(ステップS145)、再びステップS100の処理を実行する。
【0053】
一方、ステップS135において、今回の周期において測定された抵抗値R_Nが前回の周期において測定された抵抗値R_N-1以下であると判定されると(ステップS135においてNO)、判定部104は、オイル状態判定処理を実行する(ステップS140)。オイル状態判定処理については、後程詳しく説明する。その後、判定部104は、N=N+1の処理を実行し(ステップS145)、再びステップS100の処理を実行する。
【0054】
ステップS115において、今回の周期において測定された抵抗値R_Nと前回の周期において測定された抵抗値R_N-1との差分の絶対値が第2閾値以上であると判定されると(ステップS115においてYES)、判定部104は、初期化処理を実行する(ステップS150)。初期化処理については後程詳しく説明する。
【0055】
図7は、
図6のステップS140において実行されるオイル状態判定処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、オイル状態判定システム100によって実行される。
【0056】
図7を参照して、オイル状態判定システム100の判定部104は、記憶されている極大値R_MAXと今回の周期において測定された抵抗値R_Nとの差が第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS200)。記憶されている極大値R_MAXと今回の周期において測定された抵抗値R_Nとの差が第1閾値以上であると判定されると(ステップS200においてYES)、判定部104は、オイルO1の状態が変化したと判定し、オイルO1の交換が必要である旨の通知を行なうように通知部106を制御する(ステップS210)。
【0057】
一方、記憶されている極大値R_MAXと今回の周期において測定された抵抗値R_Nとの差が第1閾値未満であると判定されると(ステップS200においてNO)、判定部104は、オイルO1の状態が変化していないと判定し、オイルO1の交換が不要である旨の通知を行なうように通知部106を制御する(ステップS220)。なお、ステップS200においてNOと判定される場合には、オイルO1の交換が不要である旨の通知が必ずしも行なわれなくてもよい。
【0058】
図8は、
図6のステップS150において実行される初期化処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、オイル状態判定システム100によって実行される。
【0059】
図8を参照して、オイル状態判定システム100の判定部104は、極大値R_MAXを初期化する(ステップS300)。すなわち、判定部104は、極大値R_MAX=0の処理を実行する。
【0060】
判定部104は、今回の周期において測定された抵抗値R_Nと前回の周期において測定された抵抗値R_N-1との差分に応じて第1閾値を更新する(ステップS310)。判定部104は、例えば、今回の周期において測定された抵抗値R_Nと前回の周期において測定された抵抗値R_N-1との差分に基づいてオイルO1の交換量等を推定し、推定結果に基づいて第1閾値を更新する。例えば、今回の周期において測定された抵抗値R_Nと前回の周期において測定された抵抗値R_N-1との差分が大きい程、第1閾値は大きい値に更新される。
【0061】
判定部104は、今回の周期において測定された抵抗値R_Nと前回の周期において測定された抵抗値R_N-1との差分に応じて第2閾値を更新する(ステップS320)。判定部104は、例えば、今回の周期において測定された抵抗値R_Nと前回の周期において測定された抵抗値R_N-1との差分が大きい程、第2閾値を大きい値に更新する。
【0062】
このように、オイル状態判定システム100においては、オイルO1の抵抗値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上となった場合に、極大値の初期化及び第1閾値の更新が行なわれる。すなわち、オイルO1の部分的な交換、又は、オイルO1の注ぎ足しが行なわれることによって抵抗値が急激に変化すると、オイル状態の判定基準が適切に変更される。したがって、オイル状態判定システム100によれば、オイルO1の部分的な交換、又は、オイルO1の注ぎ足しが行なわれたとしても、継続してオイル状態を適切に判定することができる。
【0063】
また、オイルO1の部分的な交換、又は、オイルO1の注ぎ足しが行なわれた場合に、オイルO1の抵抗値の推移は、オイルO1の交換量又はオイルO1の注ぎ足し量に応じて変化する。オイル状態判定システム100によれば、オイルO1の交換又は注ぎ足しに起因する抵抗値の変化量に基づいて第1閾値が更新され、オイル状態の判定基準がより適切に変更されるため、オイル状態をより適切に判定することができる。
【0064】
また、オイル状態判定システム100によれば、オイルO1の状態が変化したと判定された場合にオイルO1の交換が必要である旨がユーザに通知されるため、必要なタイミングでオイル交換をユーザに促すことができる。
【0065】
[4.特徴]
以上のように、本実施の形態に従うオイル状態判定システム100においては、オイルO1の抵抗値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上となった場合に、極大値の初期化及び第1閾値の更新が行なわれる。すなわち、オイルO1の部分的な交換、又は、オイルO1の注ぎ足しが行なわれることによって抵抗値が急激に変化すると、オイル状態の判定基準が適切に変更される。したがって、オイル状態判定システム100によれば、オイルO1の部分的な交換、又は、オイルO1の注ぎ足しが行なわれたとしても、継続してオイル状態を適切に判定することができる。
【0066】
[5.他の実施の形態]
上記実施の形態の思想は、以上で説明された実施の形態に限定されない。例えば、いずれかの実施の形態の少なくとも一部の構成と、他のいずれかの実施の形態の少なくとも一部の構成とが組み合わされてもよい。以下、上記実施の形態の思想を適用できる他の実施の形態の一例について説明する。
【0067】
<5-1>
図9は、第1の他の実施の形態における、オイルの状態変化の判定基準を説明するための図である。
図9を参照して、横軸はオイルO1の使用時間を示し、縦軸はオイルO1の抵抗値を示す。線L6は、オイルO1の抵抗値と使用時間との関係を示す。
【0068】
時刻t40-t41においては、オイルO1の抵抗値が上昇している。時刻t41においては、抵抗値が極大値となっている。その後、抵抗値の変化傾向が上昇から低下に転じ、時刻t41-t42においては、抵抗値が低下している。時刻t42においては、例えば、オイルO1の注ぎ足しが行なわれ、抵抗値が急激に低下している。しかしながら、時刻t42において抵抗値の低下量は第2閾値未満である。したがって、極大値の初期化等は行なわれない。時刻t42-t43においては、抵抗値が上昇した後に低下に転じている。
【0069】
時刻t43においては、例えば、オイルO1の注ぎ足しが再び行なわれ、抵抗値が急激に低下している。時刻t43においては、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となっている。しかしながら、時刻t43以降において、抵抗値は上昇する。したがって、時刻t43において、オイルO1が直ちに交換される必要はない。第1の他の実施の形態においては、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となったとしても、仮にその後抵抗値が上昇する場合には、オイルO1の交換が必要である旨の通知が行なわれない。
【0070】
図10は、第1の他の実施の形態において、
図6のステップS140で実行されるオイル状態判定処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、オイル状態判定システム100によって実行される。なお、第1の他の実施の形態においては、
図6のフローチャートに含まれるステップS110の処理が省略され、
図6のフローチャートの処理と並行してオイルO1の抵抗値の測定が行なわれる。抵抗値の測定周期は、
図10のフローチャートに示される処理が実行される周期よりも短い。
【0071】
図10を参照して、オイル状態判定システム100の判定部104は、記憶されている極大値R_MAXと今回の周期において測定された抵抗値R_Nとの差が第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS400)。記憶されている極大値R_MAXと今回の周期において測定された抵抗値R_Nとの差が第1閾値以上であると判定されると(ステップS400においてYES)、判定部104は、抵抗値の低下傾向が所定期間継続しているか否かを判定する(ステップS410)。
【0072】
抵抗値の低下傾向が所定期間継続していると判定されると(ステップS410においてYES)、判定部104は、オイルO1の交換が必要である旨の通知を行なうように通知部106を制御する(ステップS420)。一方、抵抗値の低下傾向が所定期間継続していないと判定されると(ステップS410においてNO)、判定部104は、オイルO1の交換が不要である旨の通知を行なうように通知部106を制御する(ステップS430)。なお、所定期間は、例えば、抵抗値の測定が3回以上行なわれる期間である。
【0073】
上述のように、オイルO1の注ぎ足しが行なわれるのに応じてオイルO1の抵抗値が一旦低下しその後上昇に転じる場合がある。オイルO1の抵抗値が一旦低下するのに伴い極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となったとしても、その後抵抗値が上昇する場合には、オイルO1の状態が変化したと判定することが必ずしも適切でない。第1の他の実施の形態におけるオイル状態判定システム100によれば、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となった場合であっても抵抗値の低下が所定期間継続していないときはオイルO1の状態が変化したと判定されないため、上記適切でない事態の発生を抑制することができる。
【0074】
<5-2>
上記実施の形態においては、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となった場合にオイルO1の状態が変化したと判定された。しかしながら、オイルO1の状態変化の判定基準はこれに限定されない。例えば、極大値と抵抗値との差分が第1閾値以上となり、かつ、抵抗値の変化傾向が低下から上昇に転じた場合にオイルO1の状態が変化したと判定されてもよい。
【0075】
図11は、第2の他の実施の形態における、オイルO1の状態変化の判定基準について説明するための図である。
図11を参照して、横軸はオイルO1の使用時間を示し、縦軸はオイルO1の抵抗値を示す。線L7は、オイルO1の抵抗値と使用時間との関係を示す。
【0076】
時刻t51において抵抗値は極大値となり、時刻t52において抵抗値と極大値との差分が第1閾値以上となる。第2の他の実施の形態においては、時刻t52においてオイルO1の状態が変化したとは判定されない。
【0077】
時刻t53において抵抗値の変化傾向が低下から上昇に転じ、時刻t54において抵抗値の変化傾向が低下から上昇に転じたことが検出される。例えば、時刻t54において、オイルO1の状態が変化したと判定されてもよい。
【0078】
<5-3>
上記実施の形態においては、抵抗値の極大値と現在の抵抗値との差分の閾値として第1閾値のみが設けられた。しかしながら、閾値が段階的に設けられてもよい。閾値が段階的に設けられることで、オイルO1の劣化度を段階的に検出することが可能となる。
【0079】
<5-4>
上記実施の形態において、判定部104は、抵抗値が極大値となった時刻情報、及び、抵抗値が極小値となった時刻情報を記憶してもよい。判定部104は、これらの時刻情報、極大値及び極小値に基づいて抵抗値の変化の傾きを算出し、抵抗値の変化の傾きに基づいてオイルO1の劣化分析を行なってもよい。また、判定部104は、抵抗値の変化傾向が上昇から低下に転じた後に抵抗値の変化の傾きを算出し、抵抗値の変化の傾きに基づいてオイルO1の交換が必要になるタイミングを予測してもよい。予測されたオイルO1の交換が必要になるタイミングが通知部106によって通知されてもよい。
【0080】
<5-5>
上記実施の形態において、オイルO1の交換後における抵抗値の単位時間当たりの変化量、及び、オイルO1の交換後における抵抗値の極大値に基づいてオイルO1の種類が推定されてもよい。
【0081】
<5-6>
上記実施の形態において、オイルO1の抵抗値が急激に変化し、その後抵抗値が一定時間以上変化しない場合に、判定部104は、エラーが生じたと判定すると共に、オイルO1の状態が変化したと判定してもよい。例えば、オイルタンク20内に大量の水分が混入した場合、一対の電極112間において導電性物質に起因するショートが生じた場合、又は、オイルセンサ10が故障した場合に、オイルO1の抵抗値が急激に変化し、その後抵抗値が一定時間以上変化しないといった事態が生じ得る。
【0082】
<5-7>
上記実施の形態において、オイルO1の温度変化が検出された場合に、オイルO1の抵抗値変化が検出されないとき、判定部104は、エラーが生じたと判定すると共に、オイルO1の状態が変化したと判定してもよい。例えば、一対の電極112間において導電性物質に起因するショートが生じた場合、又は、オイルセンサ10が故障した場合に、温度変化が生じてもオイルO1の抵抗値変化が検出されないといった事態が生じ得る。
【0083】
<5-8>
上記実施の形態において、判定部104及び通知部106は、オイルセンサ10に含まれていた。しかしながら、判定部104及び通知部106は、必ずしもオイルセンサ10に含まれていなくてもよい。判定部104及び通知部106の少なくとも一方は、オイルセンサ10を利用する装置に設けられていてもよい。
【0084】
<5-9>
上記実施の形態において、オイルセンサ10への電源供給が停止された場合には、オイルセンサ10への電源供給が再開された後に、電源供給停止前における抵抗値の極大値と現在の抵抗値との差分が算出され、差分が第1閾値以上である場合に
図6のステップS150に示される初期化処理が実行されてもよい。なお、電源供給停止前におけるオイルO1の抵抗値の極大値は、例えば、判定部104に含まれる不揮発性メモリに記憶されている。
【0085】
<5-10>
上記実施の形態において、オイルセンサ10は、さらにバッテリ(電池)を含んでいてもよい。オイルセンサ10は、例えば停電時にバッテリから供給される電力で駆動するように構成されていてもよい。
【0086】
図12は、停電時にバッテリ駆動することによるメリットの第1の例を説明するための図である。
図12を参照して、横軸はオイルO1の使用時間を示し、縦軸はオイルO1の抵抗値を示す。点P1,P2,P4,P5の各々は、系統電源から供給される電力によってオイルセンサ10が駆動している状態で測定された抵抗値に対応している。一方、点P3は、停電時に測定された抵抗値に対応している。例えば、時刻t61において停電状態となり、時刻t62において抵抗値が測定され、時刻t63において系統電源による電力供給が再開されている。このように、停電時にバッテリ駆動することによって、停電時においてもオイルO1の抵抗値を測定することができる。
【0087】
図13は、停電時にバッテリ駆動することによるメリットの第2の例を説明するための図である。
図13を参照して、横軸はオイルO1の使用時間を示し、縦軸はオイルO1の抵抗値を示す。点P10,P11,P13の各々は、系統電源から供給される電力によってオイルセンサ10が駆動している状態で測定された抵抗値に対応している。一方、点P12は、停電時に測定された抵抗値に対応している。例えば、時刻t71において停電状態となり、時刻t72においてオイルO1の抵抗値が測定され、時刻t73において系統電源による電力供給が再開されている。時刻t72における抵抗値は極大値である。このように、停電時にバッテリ駆動することによって、停電時に抵抗値の極大値を測定し損なうという事態の発生を回避することができる。
【0088】
以上、本発明の実施の形態について例示的に説明した。すなわち、例示的な説明のために、詳細な説明及び添付の図面が開示された。よって、詳細な説明及び添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が詳細な説明及び添付の図面に記載されているからといって、それらの必須でない構成要素が必須であると直ちに認定されるべきではない。
【0089】
また、上記実施の形態は、あらゆる点において本発明の例示にすぎない。上記実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能である。すなわち、本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じて具体的構成を適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0090】
10 オイルセンサ、20 オイルタンク、100 オイル状態判定システム、102 測定部、104 判定部、106 通知部、108 温度測定部、110 基板、111 基板本体、112 電極、113 温度検出素子、L1-L7 線、O1 オイル、P1-P5,P10-P13 点。