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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157437
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 7/02 20060101AFI20241030BHJP
   E04H 1/02 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
E04B7/02 521Z
E04H1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071806
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】舛田 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 正彦
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA15
(57)【要約】
【課題】構造物が障害物とならない広い屋根裏空間を確保することができる寄棟屋根小屋組構造の建物を提供する。
【解決手段】建物100は、棟木1と、上面視において、棟木1を囲うようにして配列された4つ以上の母屋梁2と、それぞれの母屋梁2を母屋束20を介して支持するR階床Fと、下端側をR階床Fに支持され、上端側を母屋梁2に支持された隅木3と、を備え、母屋梁2、母屋束20及びR階床Fは、母屋梁2の延在方向に沿う水平力に抵抗する構面を構成している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棟木と、
上面視において、前記棟木を囲うようにして配列された4つ以上の母屋梁と、
それぞれの前記母屋梁を母屋束を介して支持するR階床と、
下端側を前記R階床に支持され、上端側を前記母屋梁に支持された隅木又は谷木と、を備え、
前記母屋梁、前記母屋束及び前記R階床は、前記母屋梁の延在方向に沿う水平力に抵抗する構面を構成している建物。
【請求項2】
一対の前記隅木又は前記谷木の上端が、前記棟木の一方の端部に連結されている請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記棟木は、前記隅木又は前記谷木に支持されている請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
前記隅木又は前記谷木は、R階床の外周部で支持されている請求項3に記載の建物。
【請求項5】
前記隅木又は前記谷木は、前記R階床の外周部に配置されており前記R階床を構成する床梁で支持されている請求項4に記載の建物。
【請求項6】
前記母屋梁は、環状に配列されている請求項5に記載の建物。
【請求項7】
前記隅木又は前記谷木は、隣接する一対の前記母屋梁が交差する隅部で支持されている請求項6に記載の建物。
【請求項8】
前記構面は、前記母屋梁、前記母屋束及び前記R階床に形成された方杖架構、ブレース架構又はトラス架構である請求項1又は2に記載の建物。
【請求項9】
前記構面は、ラーメン架構である請求項1又は2に記載の建物。
【請求項10】
前記隅木又は前記谷木は、前記棟木又は前記母屋梁と接合金物によって接合されており、
前記接合金物は、前記棟木又は前記母屋梁に固定される基部と、前記前記隅木又は前記谷木の底面を支持する板面とを有する請求項1又は2に記載の建物。
【請求項11】
前記隅木又は前記谷木は、延在方向に沿う断面の形状がT字形状の鋼材を含む請求項1又は2に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の寄せ棟小屋組工法(寄棟屋根小屋組構造)が記載されている。この建物の寄せ棟小屋組工法では、平面枠状に形成される敷げたと、この敷げたで囲まれた内側の中央部で敷げたよりも高い位置に配置される水平のむな木と、むな木の端部と敷げたの各コーナの間に傾斜状に配置されるすみ合掌に、それぞれH型鋼を用い、むな木と敷げたの間で両者の平行する部分に敷げた側が下がる傾斜状に配置される合掌と、この合掌及びすみ合掌の上に架渡して配置する母屋に溝型鋼を用い、敷げたとむな木を建物躯体上に配置した後、むな木の端部とすみ合掌の上端及び、このすみ合掌の下端と敷げたのそれぞれの結合を、互に結合せんとする両H型鋼のウェブにわたって重ねる金属板製の接続金物と、この重なり部分を締結するボルト、ナットを用いて結合し、むな木と合掌の上端及び、合掌の下端と敷げたの結合及び、合掌とすみ合掌に対する母屋の固定に、螺軸の上端にプレートを固定した結合金具を用い、むな木、敷げた、合掌及びすみ合掌の上面に螺軸とナットで結合金具を取付け、この結合金具とボルト、ナットでむな木と敷げた間に合掌と、合掌及びすみ合掌の上に母屋を締結している。この寄せ棟小屋組工法では、むな木は敷げたの長さ方向よりも短いH型鋼を用い、両端部又は一端側に妻を形成するようになっており、ろくばり等の上に立設した真づかや隅真づか等で下部が支持固定され、敷げたよりも高い位置に水平に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-211525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に例示されるような、従来の工法によって組み立てられる寄棟屋根小屋組構造の建物では、構造物が障害物とならない広い屋根裏空間を確保できない場合があった。例えば特許文献1に例示される建物では、屋根裏空間における、R階床面上の中央部、すなわち、屋根裏空間における天井高が確保できる領域に真づかが配置されており、この真づかが屋根裏空間において障害物となっている。そのため、構造物が障害物とならない広い屋根裏空間を確保できない。
【0005】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、構造物が障害物とならない広い屋根裏空間を確保することができる寄棟屋根小屋組構造の建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る建物は、
棟木と、
上面視において、前記棟木を囲うようにして配列された4つ以上の母屋梁と、
それぞれの前記母屋梁を母屋束を介して支持するR階床と、
下端側を前記R階床に支持され、上端側を前記母屋梁に支持された隅木又は谷木と、を備え、
前記母屋梁、前記母屋束及び前記R階床は、前記母屋梁の延在方向に沿う水平力に抵抗する構面を構成している。
【0007】
本発明に係る建物は、更に、
一対の前記隅木又は前記谷木の上端が、前記棟木の一方の端部に連結されてもよい。
【0008】
本発明に係る建物は、更に、
前記棟木は、前記隅木又は前記谷木に支持されてもよい。
【0009】
本発明に係る建物は、更に、
前記隅木又は前記谷木は、R階床の外周部で支持されてもよい。
【0010】
本発明に係る建物は、更に、
前記隅木又は前記谷木は、前記R階床の外周部に配置されており前記R階床を構成する床梁で支持されてもよい。
【0011】
本発明に係る建物は、更に、
前記母屋梁は、環状に配列されてもよい。
【0012】
本発明に係る建物は、更に、
前記隅木又は前記谷木は、隣接する一対の前記母屋梁が交差する隅部で支持されてもよい。
【0013】
本発明に係る建物は、更に、
前記構面は、前記母屋梁、前記母屋束及び前記R階床に形成された方杖架構、ブレース架構又はトラス架構であってよい。
【0014】
本発明に係る建物は、更に、
前記構面は、ラーメン架構であってよい。
【0015】
本発明に係る建物は、更に、
前記隅木又は前記谷木は、前記棟木又は前記母屋梁と接合金物によって接合されており、
前記接合金物は、前記棟木又は前記母屋梁に固定される基部と、前記前記隅木又は前記谷木の底面を支持する板面とを有してよい。
【0016】
本発明に係る建物は、更に、
前記隅木又は前記谷木は、延在方向に沿う断面の形状がT字形状の鋼材を含んでよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、構造物が障害物とならない広い屋根裏空間を確保することができる寄棟屋根小屋組構造の建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る建物を斜め上から見た斜視図である。
図2】本実施形態に係る建物の屋根部分の構造の説明図である。
図3】本実施形態に係る建物の上面図である。
図4】母屋梁、母屋束及びR階床の床梁の支持関係を示す斜視図である。
図5】第一接合金物の斜視図である。
図6】第二接合金物の斜視図である。
図7】屋根パネルを斜め下から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る建物について説明する。
【0020】
図1から図3には、本実施形態に係る建物100を示している。図1には、建物100の斜視図を示している。図2には、建物100の屋根部分の構造の説明図を示している。図3には、建物100の上面図を示している。まず、建物100の概要を説明する。
【0021】
図に示すように、建物100は、棟木1と、上面視において、棟木1を囲うようにして配列された4つ以上の母屋梁2と、それぞれの前記母屋梁2を母屋束20を介して支持するR階床Fと、下端側をR階床Fに支持され、上端側を母屋梁2に支持された隅木3と、を備え、母屋梁2、母屋束20及びR階床Fは、母屋梁2の延在方向に沿う水平力に抵抗する構面を構成している。なお、本実施形態において、鉛直方向は上下方向と同じであり、鉛直方向における下又は上を、以下、単に下又は上と称する。
【0022】
以下、建物100について詳述する。
【0023】
建物100は、図1に示すように、寄棟屋根小屋組構造である。建物100の具体例は、鉄骨造の骨組みを有する複数階建ての住宅である。建物100には、複数の居室が形成されてよい。建物100は、鉄筋コンクリート造の基礎と、柱や梁などの骨組部材で構成された骨組架構と、壁や床などを形成するパネルとを有し、基礎に固定された上部構造体とで構成されてよい。建物100の骨組部材やパネルは、予め規格化(標準化)されたものとすることができる。この場合、骨組部材などを予め工場にて製造して建築現場に搬入し、建物100を組み立てることができる。
【0024】
建物100は、棟木1と、上面視において、棟木1を囲うようにして配列された4つ以上の母屋梁2と、それぞれの母屋梁2を母屋束20を介して支持するR階床Fと、下端側をR階床Fに支持され、上端側を母屋梁2に支持された隅木3と、隅木3に固定される複数枚の屋根パネル7と、R階床Fを下方から支持する下部躯体Aと、を備えてよい。なお、図1では、複数枚の屋根パネル7の一部(図1では、2枚のみ)を図示している。
【0025】
棟木1は、建物100の屋根の最も高い位置に架けられた横架材である。棟木1は、後述するように、隅木3に支持されており、棟束(真束)や筋交いで支持されることが必須ではない。棟木1は、H鋼のような鉄骨であってよい。
【0026】
R階床Fは、外周部を囲うように配置された外周部床梁4(以下、床梁4と称する場合がある)と、外周部床梁4で囲われた領域内に掛け渡された内側部床梁5(以下、床梁5と称する場合がある)と、外周部床梁4又は内側部床梁5に支持された床板45とを含む。R階床Fは、建物100の基礎や基礎上に構築された柱などを含む下部躯体Aに支持されている。R階床Fは、床梁4,5により、水平方向に沿う力(水平力)に対して補剛された剛床として構成されてよい。建物100では、上面視において、棟木1を囲うようにして4つ以上(図1では一例として4つ)の外周部床梁4が環状に配列されている(図3参照)。外周部床梁4は、下部躯体Aの柱に支持された、いわゆる桁梁である。
【0027】
母屋梁2は、建物100の屋根において、棟木1よりも低い位置に配置され、R階床Fに支持された横架材である。母屋梁2は、H鋼のような鉄骨であってよい。建物100では、上面視において、棟木1を囲うようにして4つ以上(図1では一例として4つ)の母屋梁2が環状に配列されている(図3参照)。図1では、母屋梁2である母屋21~24が、この順に、環状に配列されている場合を例示している。
【0028】
本実施形態では、母屋21,23は、棟木1と平行に配置されている。母屋22,24は棟木1と直交する方向に沿って配置されている。母屋21~24は、上面視で、棟木1と外周部床梁4との間に配置されている。母屋21~24は、上面視で、棟木1と離間している。母屋21~24は、上面視で、外周部床梁4と離間している。
【0029】
母屋梁2は、R階床Fの床梁5に支持され、鉛直方向に延在するように立設された母屋束20を介して床梁5に支持されている。すなわち、母屋梁2に加えられた鉛直方向に沿う力は、R階床Fの床梁5で支持される。
【0030】
母屋梁2、母屋束20及びR階床Fは、母屋梁2の延在方向に沿う水平力に抵抗する構面を構成していることが好ましい。図1図4に示す例では、母屋梁2、母屋束20及びR階床Fの床梁5が上記構面を形成している。この構面は、方杖架構、ブレース架構、トラス架構又はラーメン架構であってよい。なお、図4は、母屋梁2、母屋束20及びR階床Fの床梁5の支持関係を説明するための斜視図である。
【0031】
図1図4では、母屋梁2、母屋束20及びR階床Fの床梁5が形成する構面が、方杖29を含む方杖架構である場合を例示している。すなわち、この構面は、母屋梁2と母屋束20とに固定され、上記構面に平行、且つ、斜め方向に延在するように掛け渡された斜材である方杖29が配置されて、方杖架構を構成し、母屋梁2の延在方向に沿う水平力に抵抗する構面となっている。
【0032】
図1に示す例では、環状に配列された4つ母屋梁2のそれぞれに、それぞれの母屋梁2の延在方向に沿う水平力に抵抗する構面が形成されている。これにより、建物100では、水平方向に沿ういずれの方向に対する力についても、環状に形成されたこれら母屋梁2が抗することができるようになっている。
【0033】
母屋梁2は、後述するように、隅木3の下面を支持している。
【0034】
隅木3は、屋根の勾配に沿って配置された、屋根パネル7を支持する長尺状の構造材である。隅木3は、建物100の屋根の傾斜部分において、山となる部分に沿って配置される。なお、建物100の屋根の傾斜部分において、山となる部分に沿って配置される場合は、隅木3に代えて、谷木が配置される。以下の説明において、隅木3の説明は、隅木3を谷木に置き換えた場合、谷木について同じである。
【0035】
隅木3は、上面視で、母屋梁2に対して交差(例えば、45°交差)するように配置される。隅木3は、その延在方向に沿って見た断面の形状がT字形状の鋼材であるCT形鋼を含む。本実施形態では、隅木3がCT形鋼である場合を例示している。建物100において隅木3は、そのウェブ3aがフランジ3bの上面から上方に延出するように配置されている。
【0036】
隅木3は、母屋梁2で支持されている。また、隅木3は、R階床Fの外周部に配置されている床梁4で支持されてよい。隅木3は、母屋梁2及び床梁4とで支持されてよい。
【0037】
隅木3は、これを支持する束を必須としない。これにより建物100の屋根裏空間を、束のような構造物に障害されない広い空間として確保することができるようになる。
【0038】
さて、建物100では、上述のように、水平方向に沿ういずれの方向に対する力についても環状に形成されており、上述の構面を構成する母屋梁2が抗することができる構造となっている。このような構造に加え、隅木3を母屋梁2にて支持する構造とすることにより、棟木1、母屋梁2又は隅木3に対して上下方向に沿う力(鉛直力)によって開こうとする力(スラスト)や水平力が加わった場合、これらを母屋梁2の位置で処理できるため、建物100では、その屋根裏空間に、その空間利用を阻害する隅木3の筋交いや束(以下、束等と記載する)のような構造物の配置を必要とせず、もしくは、配置する束等の本数を削減することができる。これにより建物100の屋根裏空間を、束等のような構造物に障害されない広い空間として確保することができるようになる。
【0039】
図1では、隅木3が、隣接する一対の母屋梁2,2が交差する隅部で支持されている場合を示している。また、隅木3が、母屋梁2で支持されている部分よりも下端側の部分を床梁4で支持されている場合を示している。
【0040】
隅木3は、棟木1を支持している。建物100では、棟木1が複数の隅木3のみで支持されてよい。詳述すると、棟木1は、これを支持する棟束や筋交い(以下、同様に束等と記載する)を必須としない。棟木1が上述の構面を構成する母屋梁2に支持された複数の隅木3で支持されることで、棟木1は、これを支持する束等の本数を削減されてよく、また、これを支持する束等を有しなくてもよい。棟木1が棟束のような束等を要さず、もしくは、束等で支持される場合であっても束等の本数を削減することができるため、建物100の屋根裏空間を、束等のような構造物に障害されない広い空間として確保することができるようになる。すなわち、建物100では広い屋根裏空間を確保することができる。
【0041】
図2に示すように、隅木3では、CT形鋼のウェブ3aが下面側、フランジ3b上面側となる状態で、母屋梁2や床梁4に支持されている。すなわち、隅木3のCT形鋼のウェブ3aは、フランジ3bの上面から上方に延出するように配置されている。なお、図2は、建物100の屋根部分の構造を説明するための、隅木3の延在方向に沿って見た隅木3と屋根パネル7,7との断面(図1のII‐II断面)の模式図である。
【0042】
隅木3は、上端側で、棟木1を支持している。本実施形態では、一対の隅木3,3の上端が、棟木1の、延在方向における一方の端部に連結されて、棟木1の一方の端部を支持している。また、棟木1の一方の端部を支持している一対の隅木3,3とは別の一対の隅木3,3の上端が、棟木1の他方の端部に連結されて、棟木1の他方の端部を支持している。
【0043】
図1に示す例では、一対の隅木3,3である隅木31,34が、棟木1の一方の端部を支持しており、別の一対の隅木3,3である隅木32,33が、棟木1の他方の端部を支持している。このように、棟木1は、一例として4本の隅木3で支持されている。なお、隅木3は、上述のごとく、床梁4や、母屋梁2に支持されている。また、母屋梁2は床梁5に支持されている。すなわち、棟木1は、隅木3を介してR階床Fに支持されているのである。
【0044】
建物100では、隅木31,34及び棟木1の一方の端部が立体トラスを構築している。また、隅木32,33及び棟木1の他方の端部が立体トラスを構築している。これら隅木3と棟木1の端部とで構成される立体トラスにより、建物100は、水平力に対して強固に抗することができる。
【0045】
隅木3は、棟木1、母屋梁2及び床梁4と接合金物によって接合されて、棟木1を支持し、また、母屋梁2と床梁4との少なくとも一方に支持されてよい。これにより、棟木1や隅木3に対して加わった上下方向に沿う力は、隅木3から母屋梁2を手へ床梁5、又は、隅木3から床梁4、すなわち、隅木3からR階床Fへ伝達されるようになる。
【0046】
図5には、隅木3と棟木1とを接合する第一接合金物61を示している。第一接合金物61は、棟木1の延在方向における端部に固定される基部61aと、隅木3の底面(フランジ3bの下面)を支持する板面を有する板部61bとを有してよい。図5では、基部61a上に固定された角柱部61cの隣接する2つの側面にそれぞれ板部61b,61bが、基部61aから離れるにつれて下方に傾斜するように固定されている。これにより、第一接合金物61は、隅木3が棟木1の端部を支持し、且つ、隅木3における、棟木1の端部から斜め下方向に傾斜して延在する配置を実現する。フランジ3bと板部61bとは、1本以上のボルトを用いた接合とされてよい。また、棟木1と基部61aとも、1本以上のボルトを用いた接合とされてよい。
【0047】
図6には、隅木3と棟木1と床梁4とを接合する第二接合金物62を示している。第二接合金物62は、床梁4の延在方向における端部に固定される基部62aと、隅木3の底面(フランジ3bの下面)を支持する板面を有する板部62bとを有してよい。図6では、第二接合金物62が更に、基部62aの側部から延出し、板部62bの下面と直角に交差する支持板部62cを更に有する場合を例示して示している。板部62bは、基部62aから離れるにつれて下方に傾斜するように基部62aに固定されている。これにより、第二接合金物62は、隅木3が床梁4の端部に支持され、且つ、隅木3における、斜め下方向に傾斜して延在する配置を実現する。基部62aは、床梁4,4が交差する隅部であって、R階床F(床梁4)の外側部で支持されてよい。なお、本実施形態における外側とは、図1に示す建物100の上面視における外側のことを言う。フランジ3bと板部62bとは、1本以上のボルトを用いた接合とされてよい。また、床梁4と基部62aとも、1本以上のボルトを用いた接合とされてよい。
【0048】
母屋梁2と隅木3とは、図示は省略するが、第二接合金物62又はこれと同様の接合金物を用いて接合してよい。すなわち、母屋梁2と隅木3とを接合する接合金物は、母屋梁2の延在方向における端部に固定される基部と、隅木3の底面(フランジ3bの下面)を支持する板面を有する板部とを有してよい。母屋梁2と隅木3とを接合する接合金物は、母屋梁2,2が交差する隅部であって、母屋梁2の外側部で支持されてよい。
【0049】
図1図2に示す屋根パネル7は、建物100の屋根を構成するユニットである。屋根パネル7は、建物100を構築する場合に、建物100を構築する工事現場以外の場所、例えば、工場で、予め組み立ててよい。屋根パネル7は、予め組み立てた後、建物100を構築する工事現場へ移送し、建物100の構築に用いてよい。建物100において、屋根パネル7は、隅木3に固定される。
【0050】
図7には、屋根パネル7の具体例の一例を示している。図7は、屋根パネル7を斜め下から見た斜視図である。
【0051】
屋根パネル7は、野地板70aや垂木70bなどを含み、建物100の上部の蓋となる屋根板部70と、屋根板部70の上部側における下面部にあらかじめ固定されており、建物100を構築する際に隅木3に固定される固定具Lとを有する。屋根パネル7は、屋根板部70の下部側に鼻隠し70cを有してよい。建物100の屋根は、複数の屋根パネル7が隣接して配置された状態で構成されてよい。なお、垂木70bは、屋根パネル7において、野地板70aを支持する長尺状の部材である。垂木70bは、建物100において、母屋梁2と床梁4とのみで支持されてよい。
【0052】
固定具Lは、屋根板部70の外周部に沿って配設される長尺状の部材であってよい。固定具Lは、図2に示すように屋根パネル7が隅木3に固定された場合に、隅木3に沿う位置となる屋根板部70の外周部に配置される。すなわち、固定具Lは、屋根パネル7が隅木3に固定された場合、その長手方向が隅木3に沿って延在する配置となる。
【0053】
固定具Lは、屋根板部70の下方に延出する固定板部72有してよい。固定板部72は、隅木3のウェブ3aの側面に固定されてよい。つまり、固定板部72は、隅木3のウェブ3aに板面を沿わせた配置となる。固定板部72をウェブ3aの側面に固定する接合状態とすることで、屋根パネル7と隅木3との上下方向における距離が近くなり、建物100における、屋根面の高さを抑制、すなわち、R階床Fからの屋根の高さを低く抑えることができる。
【0054】
建物100では、R階床Fからの屋根の高さを低く抑えることができるため、上面視における、屋根の面積(建物100の面積)を小さくすることができる。これにより、建物100の構築に必要な土地の面積が小さくて済む。すなわち、建物100は、敷地対応力が高くなる。また、上面視における、屋根の面積(建物100の面積)を小さくすることができるため、屋根の構築コストを削減することができる。
【0055】
建物100では、R階床Fからの屋根の高さを低く抑えることができるため、鼻隠し70cの高さを低くすることができる。これにより建物100の意匠性が高まる。
【0056】
建物100では、R階床Fからの屋根の高さを低く抑えることができるため、屋根の庇の出幅(建物100の側壁から鼻隠し70cまでの距離)を短くすることができる。これにより、床梁4に加わる屋根の庇を支持するための負荷を軽減することができるため、床梁4のコストダウンが可能となる。
【0057】
固定板部72のウェブ3aへの固定は、ボルトBで行ってよく、例えば、固定板部72とウェブ3aとを貫通するボルト固定としてよい。固定板部72がウェブ3aの側面に固定されることで、屋根パネル7は、隅木3に固定される。
【0058】
本実施形態では、固定具Lは、屋根板部70の下面に沿って屋根板部70に固定される支持板部71と、支持板部71から屋根板部70の下方に延出する、上述の固定板部72と、固定板部72の先端部から屋根板部70の面内方向における内側に屈曲して延出する載置板部73とを有してよい。支持板部71と固定板部72と載置板部73とは、長尺状の板材に長手方向に沿う折目部を2カ所設けて、隅木3の延在方向に沿って見た断面が角張ったU字形状となるように曲げ加工などして一体成型されたものであってよい。
【0059】
固定具Lでは、支持板部71が板面を屋根板部70の下面に沿わせて固定されることで、屋根板部70に対して頑丈に固定される。
【0060】
固定具Lでは、屋根パネル7を隅木3上に載置して固定する際に、載置板部73がフランジ3bの上面に載置される。これにより、屋根パネル7を隅木3上に載置して固定する作業が行いやすくなる。
【0061】
図1図2に示すように、隅木3のウェブ3a(図2参照)の両側面に、それぞれ別の屋根パネル7,7が固定されてよい。図1図2では、建物100が、第一の屋根パネル7である第一パネル7Aと、第一パネル7Aに隣接して配置される第二の屋根パネル7である第二パネル7Bとを有する場合を示している。この場合、図2に示すように、第一パネル7Aと第二パネル7Bとが隣接する突き合せ部Cでは、屋根の上面側の形状が、隅木3の延在方向に沿う峰となる。すなわち、突き合わせ部Cでは、屋根の外側面が凸形状となる。突き合せ部Cでは、第一パネル7Aの固定板部72は、ウェブ3aの第一の側面に固定される。また、第二パネル7Bの固定板部72は、第一パネル7Aが固定されたウェブ3aの第二の側面に固定される。
【0062】
以上のようにして、屋根面の高さを抑制した寄棟屋根小屋組構造の建物を提供することができる。
【0063】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、屋根パネル7が隅木3で支持されている場合を例示して説明した。しかし、屋根パネル7は、隅木3と谷木、又は谷木のみで支持されてもよい。
【0064】
(2)上記実施形態では、隅木3が4つの場合を説明した。しかし、隅木3及び谷木は、5つ以上であってもよい。
【0065】
(3)上記実施形態では、すべての(4つの)隅木3が床梁4に支持されている場合を説明した。しかし、建物100は、これが備える隅木3又は谷木のうち、少なくとも母屋梁2に支持され、床梁4に支持されていない隅木3又は谷木を備えてもよい。
【0066】
(4)上記実施形態では、隅木3のウェブ3aの両側面に、それぞれ別の屋根パネル7,7が固定される場合、その突き合わせ部Cでは、屋根の上面側の形状が、隅木3の延在方向に沿う峰となる場合を説明した。しかし、隅木3に代えて谷木のウェブの両側面にそれぞれ別の屋根パネル7,7が固定される場合、その突き合わせ部Cでは、屋根の上面側の形状が、谷木の延在方向に沿う谷となる。
【0067】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、建物に適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 :棟木
100 :建物
2 :母屋梁
20 :母屋束
21 :母屋
22 :母屋
23 :母屋
24 :母屋
29 :方杖
3 :隅木
31 :隅木
32 :隅木
33 :隅木
34 :隅木
3a :ウェブ
3b :フランジ
4 :外周部床梁(床梁)
45 :床板
5 :内側部床梁(床梁)
61 :第一接合金物
61a :基部
61b :板部
61c :角柱部
62 :第二接合金物
62a :基部
62b :板部
62c :支持板部
7 :屋根パネル
70 :屋根板部
70a :野地板
70b :垂木
71 :支持板部
72 :固定板部
73 :載置板部
7A :第一パネル
7B :第二パネル
A :下部躯体
B :ボルト
C :突き合わせ部
F :階床
L :固定具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7