(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157441
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】電子機器用筐体、装置、及び電子機器用筐体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20241030BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241030BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L25/04 C
H05K7/20 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071812
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】中井戸 宙
(72)【発明者】
【氏名】岡坂 周
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322AA06
5E322AA10
5E322AA11
5E322AB11
5E322DA04
5E322FA05
5F136DA21
5F136DA27
5F136EA12
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】冷却効率を向上できる電子機器用筐体、装置、及び電子機器用筐体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の電子機器用筐体100は、基盤部10と、第1金属部材20と、第2金属部材30と、を備えている。基盤部10は、水路としての溝部11を有する。第1金属部材20は、溝部11を覆い、溝部11とは逆側の面に電子機器が設けられる。第2金属部材30は、基盤部10と第1金属部材20との間に設けられている。第2金属部材30は、第1金属部材20と接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路としての溝部を有する基盤部と、
前記溝部を覆い、前記溝部とは逆側の面に電子機器が設けられる第1金属部材と、
前記基盤部と前記第1金属部材との間に設けられている第2金属部材と、を備え、
前記第2金属部材は、前記第1金属部材と接合されている、電子機器用筐体。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器用筐体において、
前記基盤部は、樹脂組成物で構成されている、電子機器用筐体。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器用筐体において、
前記樹脂組成物は、フェノール樹脂を含む、電子機器用筐体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電子機器用筐体において、
前記第2金属部材は、前記基盤部と一体成型される際のインサート部材である、電子機器用筐体。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器用筐体において、
前記溝部が伸びる方向に直交する断面で見た場合に、前記第2金属部材は、前記溝部の両側面それぞれの少なくとも上部に位置しており、
前記第2金属部材は、前記断面で見た場合に、前記第2金属部材の厚み方向に対して前記溝部の幅が広がる方向に斜めに傾斜したテーパ形状を有する、電子機器用筐体。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器用筐体において、
前記第2金属部材は、溶融して前記第1金属部材と接合されている、電子機器用筐体。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器用筐体において、
前記溝部が伸びる方向に直交する断面で見た場合に、前記第2金属部材は、前記第2金属部材の厚み方向に突出する凸部を含んでおり、
前記溝部の幅方向において、前記凸部は、前記溝部の外側に設けられており、
前記幅方向において、前記第1金属部材は、前記凸部の内側に設けられている、電子機器用筐体。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器用筐体において、
前記水路の平面形状はU字状であり、
前記第2金属部材はU字状の形状を有し、
前記第2金属部材は、U字部分のうち一方向に伸びる部分同士を連結する連結部を有している、電子機器用筐体。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器用筐体において、
前記第1金属部材は、主成分が銅又はアルミであり、
前記第2金属部材は、主成分が銅又はアルミである、電子機器用筐体。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器用筐体を備える、装置。
【請求項11】
水路としての溝部を有する基盤部と、インサート部材としての第2金属部材を一体成型する工程と、
前記溝部を覆い、前記溝部とは逆側の面に電子機器が設けられる第1金属部材を前記第2金属部材に取り付ける工程と、
前記第2金属部材と、前記第1金属部材とを接合する工程と、を備える、電子機器用筐体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用筐体、装置、及び電子機器用筐体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一方の面にインバータ回路が取り付けられ樹脂組成物で構成されるベース部と、当該ベース部を覆うカバー部と、を備えるインバータケースが開示されている。
【0003】
特許文献2には、最外の金属層による遮炎効果と空気層による断熱効果で、耐火性能を高め、樹脂層の少なくとも2方向の補強形状により剛性を高めた、ケース構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022―143711号公報
【特許文献2】国際公開2022/202167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、近年、パワーデバイスなどの電子機器を冷却するために水冷方式が用いられている。
【0006】
上記特許文献1に記載の水路蓋部25は樹脂製であるため、水路蓋部25の上にパワーデバイスなどの電子機器を乗せても、金属と比較すると冷却性能は劣る。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、冷却効率を向上できる電子機器用筐体、装置、及び電子機器用筐体の製造方法を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0009】
1.
水路としての溝部を有する基盤部と、
前記溝部を覆い、前記溝部とは逆側の面に電子機器が設けられる第1金属部材と、
前記基盤部と前記第1金属部材との間に設けられている第2金属部材と、を備え、
前記第2金属部材は、前記第1金属部材と接合されている、電子機器用筐体。
2.
1.に記載の電子機器用筐体において、
前記基盤部は、樹脂組成物で構成されている、電子機器用筐体。
3.
2.に記載の電子機器用筐体において、
前記樹脂組成物は、フェノール樹脂を含む、電子機器用筐体。
4.
2.又は3.に記載の電子機器用筐体において、
前記第2金属部材は、前記基盤部と一体成型される際のインサート部材である、電子機器用筐体。
5.
4.に記載の電子機器用筐体において、
前記溝部が伸びる方向に直交する断面で見た場合に、前記第2金属部材は、前記溝部の両側面それぞれの少なくとも上部に位置しており、
前記第2金属部材は、前記断面で見た場合に、前記第2金属部材の厚み方向に対して前記溝部の幅が広がる方向に斜めに傾斜したテーパ形状を有する、電子機器用筐体。
6.
1.から5.のいずれか1項に記載の電子機器用筐体において、
前記第2金属部材は、溶融して前記第1金属部材と接合されている、電子機器用筐体。
7.
1.から6.のいずれか1項に記載の電子機器用筐体において、
前記溝部が伸びる方向に直交する断面で見た場合に、前記第2金属部材は、前記第2金属部材の厚み方向に突出する凸部を含んでおり、
前記溝部の幅方向において、前記凸部は、前記溝部の外側に設けられており、
前記幅方向において、前記第1金属部材は、前記凸部の内側に設けられている、電子機器用筐体。
8.
1.から7.のいずれか1項に記載の電子機器用筐体において、
前記水路の平面形状はU字状であり、
前記第2金属部材はU字状の形状を有し、
前記第2金属部材は、U字部分のうち一方向に伸びる部分同士を連結する連結部を有している、電子機器用筐体。
9.
1.から8.のいずれか1項に記載の電子機器用筐体において、
前記第1金属部材は、主成分が銅又はアルミであり、
前記第2金属部材は、主成分が銅又はアルミである、電子機器用筐体。
10.
1.から9.のいずれか1項に記載の電子機器用筐体を備える、装置。
11.
水路としての溝部を有する基盤部と、インサート部材としての第2金属部材を一体成型する工程と、
前記溝部を覆い、前記溝部とは逆側の面に電子機器が設けられる第1金属部材を前記第2金属部材に取り付ける工程と、
前記第2金属部材と、前記第1金属部材とを接合する工程と、を備える、電子機器用筐体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷却効率を向上できる電子機器用筐体、装置、及び電子機器用筐体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の電子機器用筐体の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すI-I線に沿う電子機器用筐体の概略断面図である。
【
図3】第1金属部材を外した状態の電子機器用筐体の概略斜視図である。
【
図5】電子機器用筐体の製造方法を示すフロー図である。
【
図6】基盤部と第2金属部材とを一体成型する際の金型の概略断面図である。
【
図7】
図6の金型が開く様子を示す概略断面図である。
【
図8】第1金属部材を第2金属部材に取り付ける際の様子を示す概略断面図である。
【
図9】電子機器用筐体の変形例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0013】
[実施形態]
図1は、実施形態の電子機器用筐体100の概略斜視図である。
図2は、
図1に示すI-I線に沿う電子機器用筐体100の概略断面図である。
図1及び
図2を用いて、電子機器用筐体100について説明する。
【0014】
(基盤部10)
電子機器用筐体100は、基盤部10と、第1金属部材20と、第2金属部材30とを備えている。基盤部10は、水路としての溝部11を有する。実施形態において、例えば、
図1中のA方向から水を流すと、U字状の溝部11を通ってB方向から水が流れ出る。このように水を循環させて電子機器40(後述する)を冷却する。電子機器用筐体100は、図示しないが、基盤部10の全体を覆う蓋部を備えていてもよい。
図2に示す溝部11は、底面11aと側面11bとを有している。
【0015】
DR1は、溝部11の深さ方向である。DR2は、溝部11の幅方向である。DR3は、DR1及びDR2と直交する方向であって、溝部11が伸びる奥行方向である。
【0016】
基盤部10は、電子機器などを乗せ置くための基盤となるものである。基盤部10は、樹脂組成物で構成されている。樹脂組成物は、フェノール樹脂を含む。実施形態において、基盤部10は、熱硬化性樹脂の硬化物で形成される。具体的には、熱硬化性樹脂として、例えばフェノール樹脂組成物やエポキシ樹脂組成物が挙げられ、硬化剤や無機充填剤等が適宜含有される。
【0017】
フェノール樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0018】
エポキシ樹脂としては、一分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。
エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンのような芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂;アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂;フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、またはビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ-アジペイド等の脂環式エポキシ等の脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。
エポキシ樹脂を含む場合、芳香族環にグリシジルエーテル構造あるいはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むものが、耐熱性、機械特性、および耐湿性の観点から好ましい。
【0019】
硬化剤は、熱硬化性樹脂に好ましい態様として含まれるエポキシ樹脂が選択される場合に、三次元架橋させるために用いられるものである。硬化剤としては、特に限定されないが、例えばフェノール樹脂を用いることができる。このようなフェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではない。
フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物、ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0020】
無機充填剤としては、ケース材に用いられる樹脂組成物の技術分野で一般的に用いられる無機充填剤(フィラーや強化繊維)を使用することができる。無機充填剤としては、例えば溶融破砕シリカ及び溶融球状シリカ等の溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、クレイ、マイカ、ロックウール、ウォラストナイト、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスファイバー、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、セルロース、アラミド、木材、フェノール樹脂成形材料やエポキシ樹脂成形材料の硬化物を粉砕した粉砕粉等が挙げられる。この中でも、ガラスパウダー、ガラスファイバー、及びガラスビーズ等のガラスが好ましく、特に強度においては、ガラスファイバーがより好ましい。また、この中でも、炭酸カルシウムがコストの面で好ましい。無機充填剤としては、一種で使用しても良いし、または二種以上を併用してもよい。
【0021】
基盤部10を樹脂製とすることで、電子機器用筐体100の軽量化を実現できる。また、樹脂製であることで、成形性・加工性が優れているため設計の自由度が大幅に高まるとともに、振動を吸収し、騒音を低下させることができる。
【0022】
(第1金属部材20)
第1金属部材20は、板状の形状を有している。第1金属部材20は、溝部11を覆っている。実施形態において、第1金属部材20は、溝部11を覆う蓋の役割を果たしている。第1金属部材20は、表面21と裏面22を有している。表面21は、溝部11とは逆側を向く面である。裏面22は、溝部11を向く面である。表面21には、電子機器40が設けられている。実施形態において、表面21には、複数の電子機器40が載せ置かれている。電子機器40は、例えばパワーデバイスである。第1金属部材20は、主成分が銅又はアルミである。第1金属部材20は、第2金属部材30(後述する)に載せ置かれている。
【0023】
(第2金属部材30)
第2金属部材30は、基盤部10と一体成型される際のインサート部材である。第2金属部材30は、基盤部10と第1金属部材20との間に設けられている。第2金属部材30は、第1金属部材20と接合されている。第2金属部材30は、溶融して第1金属部材20と接合されている。第2金属部材30と第1金属部材20との接合方法は、超音波溶着や摩擦攪拌接合などである。第2金属部材30は、主成分が銅又はアルミである。
【0024】
第2金属部材30は、溝部11の側面11bの少なくとも一部を担っている。
図2に示すように、溝部11が伸びる方向(奥行方向DR3)に直交する断面(
図2に示すI-I断面)で見た場合に、第2金属部材30は、溝部11の両側面11bそれぞれの少なくとも上部に位置している。第2金属部材30は、当該断面で見た場合に、第2金属部材30の厚み方向(深さ方向DR1)に対して溝部11の幅が広がる方向(幅方向DR2)に斜めに傾斜したテーパ形状を有する(
図2のテーパ部36)。
【0025】
当該断面で見た場合に、第2金属部材30は、第2金属部材30の厚み方向(深さ方向DR1)に突出する凸部31を含んでいる。凸部31は、上方向(表面21が向く方向)に突出している。溝部11の幅方向DR2において、凸部31は、溝部11(側面11b)の外側に設けられている。凸部31は、溝部11を挟んで設けられている。実施形態において、凸部31の高さ(
図2中のt)は、3[mm]程度である。
【0026】
また、幅方向DR2において、第1金属部材20は、凸部31の内側に設けられている。幅方向DR2における第1金属部材20の端部23は、幅方向DR2において溝部11の外側に設けられている。
【0027】
実施形態において、第2金属部材30は、基盤部10の表面に対し、深さ方向DR1に3[mm]程度窪んでいる(
図2中のd)。また、実施形態において、幅方向DR2における基盤部10と第2金属部材30との片側の界面(接合面)の長さ(
図2中のb)は、12[mm]程度である。
【0028】
(溝部11)
図3は、第1金属部材20を外した状態の電子機器用筐体100の概略斜視図である。
図4は、
図3に示す電子機器用筐体100の平面図である。
図3及び
図4を用いて、溝部11、及び第2金属部材30について説明する。
【0029】
溝部11(水路)の平面形状はU字状である。溝部11は、平面視において、U字状の形状を有している。
【0030】
第2金属部材30はU字状の形状を有している。第2金属部材30は、第1延在部33、及び第2延在部34を有している。第1延在部33、及び第2延在部34は、第2金属部材30のU字部分のうち一方向(奥行方向DR3)に伸びる部分である。
【0031】
第2金属部材30は、さらに接続部35を有している。接続部35は、第1延在部33、と第2延在部34とを繋ぐ部分である。実施形態において、接続部35は、幅方向DR2に伸びる部分である。
【0032】
第2金属部材30は、さらに連結部32を有している。連結部32は、第1延在部33、及び第2延在部34の間に設けられている。連結部32は、第2金属部材30のU字部分のうち一方向に伸びる部分同士(第1延在部33、及び第2延在部34)を連結する部分である。連結部32は、第1延在部33の接続部35とは反対側の端部33aと、第2延在部34の接続部35とは反対側の端部34aとを連結する部分である。
【0033】
(電子機器用筐体100の製造方法)
図5は、電子機器用筐体100の製造方法を示すフロー図である。
図5を用いて、電子機器用筐体100の製造方法について説明する。実施形態の電子機器用筐体100の製造方法は、成型工程S100と、取付工程S200と、接合工程S300と、を備えている。実施形態において、電子機器用筐体100の製造方法は、上記工程をこの順で実施する。これらを連続的に実施してもよく、公知の他の工程を、これらの工程の前後に行ってもよい。
【0034】
図6は、基盤部10と第2金属部材30とを一体成型する際の金型50の概略断面図である。
図7は、
図6の金型50が開く様子を示す概略断面図である。
図6及び
図7を用いて、金型50について説明する。
図5に示す成型工程S100は、基盤部10と、インサート部材としての第2金属部材30とを一体成型する工程である。
【0035】
金型50は、上型51と下型52とを有している。実施形態において、上型51は、深さ方向DR1において、下型52から離れる方向に移動する。実施形態において、下型52は固定されていてもよい。金型50には、成型前の基盤部10及び第2金属部材30を充填する成型空間53が形成されている。
【0036】
実施形態において、上型51は、深さ方向DR1に対して、幅方向DR2に斜めに傾斜したテーパ形状のテーパ部51aを有する。これにより、成型後の基盤部10及び第2金属部材30から上型51を離しやすくなる。
【0037】
図8は、第1金属部材20を第2金属部材30に取り付ける際の様子を示す概略断面図である。取付工程S200は、第1金属部材20を第2金属部材30に取り付ける工程である。成型工程S100の後、一体成型された基盤部10及び第2金属部材30を金型50から取り出し、第1金属部材20を第2金属部材30に載せ置く(
図8中の矢印A)。
【0038】
第1金属部材20を第2金属部材30に載せ置いた後(取付工程S200の後)、接合工程S300において、第2金属部材30と、第1金属部材20とを熱で溶融して接合する。そして、接合工程S300の後、電子機器40が第1金属部材20の上に載せ置かれる。このようにして、電子機器用筐体100が製造される。
【0039】
(作用効果)
以上実施形態によれば、電子機器用筐体100は、水路としての溝部11を有する基盤部10と、第1金属部材20と、第2金属部材30と、を備えており、第2金属部材30は、第1金属部材20と接合されている。
【0040】
電子機器40を乗せ置く部材として第1金属部材20を用いることにより、樹脂と比較して熱伝導率が大きいため、パワーデバイスなどの電子機器を効果的に冷却することができる。すなわち、電子機器40の冷却効率を向上できる。
【0041】
また、第2金属部材30と第1金属部材20との金属同士を接合することにより、水漏れを効果的に抑制することができる。さらに、水漏れを抑制するための構造として、ビスやパッキンを用いなくても良いため、部品点数を削減することができる。
【0042】
さらに、基盤部10は、樹脂組成物で構成されている。これにより、電子機器用筐体100を軽量化することができる。
【0043】
さらに、樹脂組成物は、フェノール樹脂を含む。実施形態において、電子機器用筐体100の製造工程において、基盤部10と第2金属部材30との界面(接合面)に200~400℃の温度上昇が生じる。基盤部10が樹脂組成物としてフェノール樹脂を含むことより、基盤部10の耐熱性が向上する。したがって、電子機器用筐体100を製造する際の温度に耐えることが可能となる。
【0044】
さらに、第2金属部材30は、基盤部10と一体成型される際のインサート部材である。第2金属部材30と基盤部10とを一体成型することにより、第2金属部材30と基盤部10との接合面(接触面)からの水漏れを効果的に抑制することができる。
【0045】
さらに、第2金属部材30は、
図2に示す断面で見た場合に、第2金属部材30の厚み方向に対して溝部11の幅が広がる方向に斜めに傾斜したテーパ形状を有する。これにより、上型51を第2金属部材30及び基盤部10から抜きやすくなる。
【0046】
さらに、第2金属部材30は、溶融して第1金属部材20と接合されている。第2金属部材30と第1金属部材20とが熱溶着していることにより、第2金属部材30と第1金属部材20との接合面(接触面)からの水漏れを効果的に抑制することができる。
【0047】
さらに、
図2に示す断面で見た場合に、第2金属部材30は、第2金属部材30の厚み方向に突出する凸部31を含んでいる。これにより、第1金属部材20を第2金属部材30に載せ置きやすくなる。
【0048】
さらに、第2金属部材30は、U字部分のうち一方向に伸びる部分同士を連結する連結部32を有している。これにより、第2金属部材30の強度が向上する。
【0049】
第1金属部材20は、主成分が銅又はアルミであり、第2金属部材30は、主成分が銅又はアルミである。融点が適切な材料を選定することにより、第1金属部材20と第2金属部材30とを効果的に接合することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0051】
実施形態において、第2金属部材30は、凸部31を含んでいたが、凸部31はなくてもよい。
【0052】
(変形例)
図9は、電子機器用筐体100の変形例の概略断面図である。第2金属部材30の底部37は、溝部11の底面11aと連続していてもよい。すなわち、第2金属部材30の底部37は、溝部11の底面11aと同一面上に設けられていてもよい。変形例において、第2金属部材30は、溝部11の側面11bの全てを担っていてもよい。
【0053】
(装置)
図示しないが、装置は、電子機器用筐体100を備えていてもよい。装置は、パワーデバイス、半導体チップなど複数の電子機器を備えている。装置は、例えば、インバータである。
【符号の説明】
【0054】
10 基盤部
11 溝部
11a 底面
11b 側面
11b 両側面
20 第1金属部材
21 表面
22 裏面
23 端部
30 第2金属部材
31 凸部
32 連結部
33 テーパ部
33 第1延在部
33a 端部
34 第2延在部
34 底部
34a 端部
35 接続部
40 電子機器
50 金型
51 上型
51a テーパ部
52 下型
53 成型空間
100 電子機器用筐体
DR1 深さ方向
DR2 幅方向
DR3 奥行方向