(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157449
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】塗装構造
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071830
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市村 玲也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智之
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10B
4F100DD01A
4F100DD01B
4F100DD07B
4F100DD08A
4F100DD08B
4F100DD09B
4F100EH46B
4F100GB31
4F100HB21A
4F100HB21B
4F100JK15B
4F100JN21B
4F100JN26B
(57)【要約】
【課題】マスキングをしなくても塗料層表面の意匠を変更する。
【解決手段】塗装構造10では、基材14の基面16にシボ18が設けられており、塗料層20が基面16を被覆している。ここで、一側領域12Aにおけるシボ18の深さが中間領域12Bにおけるシボ18の深さに比し大きくされており、塗料層20の表面では、一側領域12Aにおける一側凹凸22Aの深さが中間領域12Bにおける中間凹凸22Bの深さに比し大きくされている。このため、塗料層20における一側領域12Aの表面と中間領域12Bの表面との意匠を相違させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基面凹凸が設けられる基面が設けられ、前記基面に前記基面凹凸の深さが大きくされる第1領域と前記基面凹凸の深さが小さくされる第2領域とが隣接されて設けられる基材と、
単一の塗料により形成されると共に、前記基面を被覆し、前記第1領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第1凹凸の深さが大きくされると共に、前記第2領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第2凹凸の深さが小さくされる塗料層と、
を備える塗装構造。
【請求項2】
前記基面に前記基面凹凸の深さが前記第1領域より小さくされると共に前記第2領域より大きくされる第3領域が設けられて、前記塗料層の前記第3領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第3凹凸の深さが前記第1凹凸と前記第2凹凸との中間にされる請求項1記載の塗装構造。
【請求項3】
基面凹凸が設けられる基面が設けられ、前記基面に前記基面凹凸の深さが大きくされる第1領域と前記基面凹凸の深さが小さくされる第2領域とが隣接されて設けられる基材と、
単一の塗料により形成されると共に、前記基面を被覆し、前記第1領域に対応する表面に前記基面凹凸に対応する表凹凸が設けられると共に、前記第2領域に対応する表面に前記基面凹凸に対応する前記表凹凸が設けられない塗料層と、
を備える塗装構造。
【請求項4】
基面凹凸が設けられる基面が設けられ、前記基面に前記基面凹凸の間隔が大きくされる第1領域と前記基面凹凸の間隔が小さくされる第2領域とが隣接されて設けられる基材と、
単一の塗料により形成されると共に、前記基面を被覆し、前記第1領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第1凹凸の深さが大きくされると共に、前記第2領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第2凹凸の深さが小さくされる塗料層と、
を備える塗装構造。
【請求項5】
前記基面に前記基面凹凸の間隔が前記第1領域より小さくされると共に前記第2領域より大きくされる第3領域が設けられて、前記塗料層の前記第3領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第3凹凸の深さが前記第1凹凸と前記第2凹凸との中間にされる請求項4記載の塗装構造。
【請求項6】
基面凹凸が設けられる基面が設けられ、前記基面に前記基面凹凸の間隔が大きくされる第1領域と前記基面凹凸の間隔が小さくされる第2領域とが隣接されて設けられる基材と、
単一の塗料により形成されると共に、前記基面を被覆し、前記第1領域に対応する表面に前記基面凹凸に対応する表凹凸が設けられると共に、前記第2領域に対応する表面に前記基面凹凸に対応する前記表凹凸が設けられない塗料層と、
を備える塗装構造。
【請求項7】
前記塗料層が艶消し塗料により形成される請求項1、請求項3、請求項4及び請求項6の何れか1項記載の塗装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材を塗料層が被覆する塗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のフロントバンパでは、樹脂部材の表面に非塗装部と塗装部とが設けられている。
【0003】
ここで、このフロントバンパでは、非塗装部をテープによりマスキングして塗装部を塗装している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、マスキングをしなくても塗料層表面の意匠を変更できる塗装構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の塗装構造は、基面凹凸が設けられる基面が設けられ、前記基面に前記基面凹凸の深さが大きくされる第1領域と前記基面凹凸の深さが小さくされる第2領域とが隣接されて設けられる基材と、単一の塗料により形成されると共に、前記基面を被覆し、前記第1領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第1凹凸の深さが大きくされると共に、前記第2領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第2凹凸の深さが小さくされる塗料層と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様の塗装構造は、本発明の第1態様の塗装構造において、前記基面に前記基面凹凸の深さが前記第1領域より小さくされると共に前記第2領域より大きくされる第3領域が設けられて、前記塗料層の前記第3領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第3凹凸の深さが前記第1凹凸と前記第2凹凸との中間にされる。
【0008】
本発明の第3態様の塗装構造は、基面凹凸が設けられる基面が設けられ、前記基面に前記基面凹凸の深さが大きくされる第1領域と前記基面凹凸の深さが小さくされる第2領域とが隣接されて設けられる基材と、単一の塗料により形成されると共に、前記基面を被覆し、前記第1領域に対応する表面に前記基面凹凸に対応する表凹凸が設けられると共に、前記第2領域に対応する表面に前記基面凹凸に対応する前記表凹凸が設けられない塗料層と、を備える。
【0009】
本発明の第4態様の塗装構造は、基面凹凸が設けられる基面が設けられ、前記基面に前記基面凹凸の間隔が大きくされる第1領域と前記基面凹凸の間隔が小さくされる第2領域とが隣接されて設けられる基材と、単一の塗料により形成されると共に、前記基面を被覆し、前記第1領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第1凹凸の深さが大きくされると共に、前記第2領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第2凹凸の深さが小さくされる塗料層と、を備える。
【0010】
本発明の第5態様の塗装構造は、本発明の第4態様の塗装構造において、前記基面に前記基面凹凸の間隔が前記第1領域より小さくされると共に前記第2領域より大きくされる第3領域が設けられて、前記塗料層の前記第3領域に対応する表面において前記基面凹凸に対応する第3凹凸の深さが前記第1凹凸と前記第2凹凸との中間にされる。
【0011】
本発明の第6態様の塗装構造は、基面凹凸が設けられる基面が設けられ、前記基面に前記基面凹凸の間隔が大きくされる第1領域と前記基面凹凸の間隔が小さくされる第2領域とが隣接されて設けられる基材と、単一の塗料により形成されると共に、前記基面を被覆し、前記第1領域に対応する表面に前記基面凹凸に対応する表凹凸が設けられると共に、前記第2領域に対応する表面に前記基面凹凸に対応する前記表凹凸が設けられない塗料層と、を備える。
【0012】
本発明の第7態様の塗装構造は、本発明の第1態様~第6態様の何れか1つの塗装構造において、前記塗料層が艶消し塗料により形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1態様の塗装構造では、基材の基面に基面凹凸が設けられており、塗料層が、単一の塗料により形成されて、基面を被覆する。
【0014】
ここで、基面の第1領域と第2領域とが隣接されて、基面の第1領域において基面凹凸の深さが大きくされると共に、基面の第2領域において基面凹凸の深さが小さくされており、塗料層では、第1領域に対応する表面において基面凹凸に対応する第1凹凸の深さが大きくされると共に、第2領域に対応する表面において基面凹凸に対応する第2凹凸の深さが小さくされる。このため、塗料層における第1領域に対応する表面と第2領域に対応する表面との意匠を相違させることができ、マスキングをしなくても塗料層表面の意匠を変更できる。
【0015】
本発明の第2態様の塗装構造では、基面の第3領域において基面凹凸の深さが第1領域より小さくされると共に第2領域より大きくされており、塗料層の第3領域に対応する表面において基面凹凸に対応する第3凹凸の深さが第1凹凸と第2凹凸との中間にされる。このため、塗料層における第1領域に対応する表面と第2領域に対応する表面と第3領域に対応する表面との意匠を相違させることができる。
【0016】
本発明の第3態様の塗装構造では、基材の基面に基面凹凸が設けられており、塗料層が、単一の塗料により形成されて、基面を被覆する。
【0017】
ここで、基面の第1領域と第2領域とが隣接されて、基面の第1領域において基面凹凸の深さが大きくされると共に、基面の第2領域において基面凹凸の深さが小さくされており、塗料層では、第1領域に対応する表面に基面凹凸に対応する表凹凸が設けられると共に、第2領域に対応する表面に基面凹凸に対応する表凹凸が設けられない。このため、塗料層における第1領域に対応する表面と第2領域に対応する表面との意匠を相違させることができ、マスキングをしなくても塗料層表面の意匠を変更できる。
【0018】
本発明の第4態様の塗装構造では、基材の基面に基面凹凸が設けられており、塗料層が、単一の塗料により形成されて、基面を被覆する。
【0019】
ここで、基面の第1領域と第2領域とが隣接されて、基面の第1領域において基面凹凸の間隔が大きくされると共に、基面の第2領域において基面凹凸の間隔が小さくされており、塗料層では、第1領域に対応する表面において基面凹凸に対応する第1凹凸の深さが大きくされると共に、第2領域に対応する表面において基面凹凸に対応する第2凹凸の深さが小さくされる。このため、塗料層における第1領域に対応する表面と第2領域に対応する表面との意匠を相違させることができ、マスキングをしなくても塗料層表面の意匠を変更できる。
【0020】
本発明の第5態様の塗装構造では、基面の第3領域において基面凹凸の間隔が第1領域より小さくされると共に第2領域より大きくされており、塗料層の第3領域に対応する表面において基面凹凸に対応する第3凹凸の深さが第1凹凸と第2凹凸との中間にされる。このため、塗料層における第1領域に対応する表面と第2領域に対応する表面と第3領域に対応する表面との意匠を相違させることができる。
【0021】
本発明の第6態様の塗装構造では、基材の基面に基面凹凸が設けられており、塗料層が、単一の塗料により形成されて、基面を被覆する。
【0022】
ここで、基面の第1領域と第2領域とが隣接されて、基面の第1領域において基面凹凸の間隔が大きくされると共に、基面の第2領域において基面凹凸の間隔が小さくされており、塗料層では、第1領域に対応する表面に基面凹凸に対応する表凹凸が設けられると共に、第2領域に対応する表面に基面凹凸に対応する表凹凸が設けられない。このため、塗料層における第1領域に対応する表面と第2領域に対応する表面との意匠を相違させることができ、マスキングをしなくても塗料層表面の意匠を変更できる。
【0023】
本発明の第7態様の塗装構造では、塗料層が艶消し塗料により形成される。このため、塗料層の表面凹凸の深さの相違による塗料層表面の意匠の相違を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係る塗装構造を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、断面図((A)の1B-1B線断面図)である。
【
図2】(A)及び(B)は、本発明の第2実施形態に係る塗装構造を示す図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、断面図((A)の2B-2B線断面図)である。
【
図3】本発明の第1実施形態又は第2実施形態に係る塗装構造においてシボの深さ又は間隔と塗料層表面の光沢度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
図1(A)には、本発明の第1実施形態に係る塗装構造10が平面図にて示されており、
図1(B)には、塗装構造10が断面図(
図1(A)の1B-1B線断面図)にて示されている。
【0026】
本実施形態に係る塗装構造10は、例えば、車両の意匠部材に適用されている。
【0027】
図1の(A)及び(B)に示す如く、塗装構造10には、一側領域12A、中間領域12B、他側領域12C及び追加領域12Dが設けられており、一側領域12Aと中間領域12Bとは隣接され、中間領域12Bと他側領域12Cとは隣接され、他側領域12Cと追加領域12Dとは隣接されている。
【0028】
塗装構造10には、基材14が設けられており、基材14は、例えば樹脂製にされている。基材14の表面は、基面16にされており、基面16には、基面凹凸としてのシボ18が形成されている。
【0029】
基面16は、一側領域12Aにおいて、第1領域としての一側基面領域16Aにされており、一側基面領域16Aでは、同一のシボ18が一様に形成されて、シボ18の深さ(凹部の最低高さ位置から凸部の最高高さ位置までの高さ方向寸法)がα1(例えば50μm)にされると共に、シボ18の間隔(凸部の最高高さ位置間又は凹部の最低高さ位置間の距離)がβにされている。
【0030】
基面16は、中間領域12Bにおいて、第1領域、第2領域又は第3領域としての中間基面領域16Bにされており、中間基面領域16Bでは、同一のシボ18が一様に形成されて、シボ18の深さがα1に比し小さいα2(例えば30μm)にされると共に、シボ18の間隔がβにされている。
【0031】
基面16は、他側領域12Cにおいて、第2領域としての他側基面領域16Cにされており、他側基面領域16Cでは、同一のシボ18が一様に形成されて、シボ18の深さがα2に比し小さいα3(例えば10μm)にされると共に、シボ18の間隔がβにされている。
【0032】
基面16は、追加領域12Dにおいて、追加基面領域16Dにされており、追加基面領域16Dでは、シボ18が形成されていない。
【0033】
以上により、シボ18の深さは、一側基面領域16Aが中間基面領域16Bに比し大きくされると共に、中間基面領域16Bが他側基面領域16Cに比し大きくされている。さらに、シボ18の間隔は、一側基面領域16A、中間基面領域16B及び他側基面領域16Cにおいて、同一にされている。また、シボ18の最高高さ位置は、一側基面領域16A、中間基面領域16B及び他側基面領域16Cにおいて、同一又は略同一にされている。
【0034】
基材14の基面16の表側は、単一(同一)の塗料により塗装されており、基面16の表側は、塗料層20によって被覆されている。塗料層20の塗料は、例えば不透明な艶消し塗料にされており、塗料層20の表面には、表面凹凸22が形成されている。
【0035】
塗料層20の表面には、一側領域12Aにおいて、表面凹凸22(第1凹凸、表凹凸)である同一の一側凹凸22Aが一様に形成されており、一側凹凸22Aは、基材14の基面16における一側基面領域16Aのシボ18に起因して形成されて、当該シボ18に対応する形状(当該シボ18に略沿う形状)にされている。
【0036】
塗料層20の表面には、中間領域12Bにおいて、表面凹凸22(第1凹凸、第2凹凸、第3凹凸、表凹凸)である同一の中間凹凸22Bが一様に形成されており、中間凹凸22Bは、基材14の基面16における中間基面領域16Bのシボ18に起因して形成されて、当該シボ18に対応する形状(当該シボ18に略沿う形状)にされている。
【0037】
塗料層20の表面には、他側領域12Cにおいて、表面凹凸22である略同一の他側凹凸22Cが一様に形成されており、他側凹凸22Cは、基材14の基面16における他側基面領域16Cのシボ18に起因せずに、塗料の粒子により形成されて、当該シボ18に対応しない形状(当該シボ18に沿わない形状)にされている。
【0038】
塗料層20の表面には、追加領域12Dにおいて、表面凹凸22である略同一の追加凹凸22Dが一様に形成されており、追加凹凸22Dは、基材14の基面16における追加基面領域16Dにシボ18が形成されないことで、塗料の粒子により形成されて、他側凹凸22Cと同一の形状にされている。
【0039】
なお、一側凹凸22A及び中間凹凸22Bには、他側凹凸22C及び追加凹凸22Dと同様に、塗料の粒子により形成される凹凸が設けられている。
【0040】
以上により、一側凹凸22Aの深さは、中間凹凸22Bの深さに比し大きくされると共に、中間凹凸22Bの深さは、他側凹凸22C及び追加凹凸22Dの深さに比し大きくされており、表面凹凸22の深さが大きくされるに従い、表面凹凸22の視認性が高くされて、塗料層20表面の光沢度が低くされる。また、一側凹凸22A、中間凹凸22B、他側凹凸22C及び追加凹凸22Dの最高高さ位置は、同一又は略同一にされている。
【0041】
図3に示す如く、基材14の基面16におけるシボ18の深さが所定値未満である場合(他側領域12C及び追加領域12Dの場合)には、塗料層20の表面にシボ18に起因する表面凹凸22が形成されずに、塗料層20表面の光沢度が高くされる。一方、シボ18の深さが所定値以上である場合(一側領域12A及び中間領域12Bの場合)には、塗料層20の表面にシボ18に起因する表面凹凸22が形成されると共に、シボ18の深さが大きくされるに従い表面凹凸22の深さが大きくされて塗料層20表面の光沢度が低くされる。また、塗料層20の塗料の粒径が小さくなるに従い、所定値が小さくされて、塗料層20の表面にシボ18に起因する表面凹凸22が形成され易くなる。なお、塗料層20の塗料の粒径が大きくなるに従い、当該塗料の粒子間の隙間が大きくなって、当該隙間にシボ18が埋まり易くなり、塗料層20の表面にシボ18に起因する表面凹凸22が形成され難くなる。
【0042】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0043】
以上の構成の塗装構造10では、基材14の基面16にシボ18が設けられており、塗料層20が、単一の塗料により形成されて、基面16を被覆している。
【0044】
ここで、一側領域12A(一側基面領域16A)におけるシボ18の深さが中間領域12B(中間基面領域16B)におけるシボ18の深さに比し大きくされており、塗料層20の表面では、一側領域12Aにおけるシボ18に対応する一側凹凸22Aの深さが中間領域12Bにおけるシボ18に対応する中間凹凸22Bの深さに比し大きくされている。このため、一側領域12Aの一側凹凸22Aの視認性が中間領域12Bの中間凹凸22Bの視認性に比し大きくされることで、塗料層20における一側領域12Aの表面と中間領域12Bの表面との意匠を相違させることができ、マスキングをしなくても塗料層20表面の意匠を変更できると共に、複数種類の塗料を使用しなくても塗料層20表面の意匠を変更できて、コストを低減できる。
【0045】
さらに、基材14の基面16における一側基面領域16Aと中間基面領域16Bとが隣接されて、塗料層20の表面における一側凹凸22Aと中間凹凸22Bとが隣接されている。このため、塗料層20における一側領域12Aの表面と中間領域12Bの表面との間に見切り(境界)を設けることができる。しかも、マスキングを使用しない見切りを設けることができるため、基面16にマスキングの外周に沿って凹部を設ける必要をなくすことができ、見切りをシャープにできて、見切りの見栄えを良好にできる。
【0046】
また、中間領域12B(中間基面領域16B)におけるシボ18の深さが他側領域12C(他側基面領域16C)におけるシボ18の深さに比し大きくされており、塗料層20の表面では、中間領域12Bにおけるシボ18に対応する中間凹凸22Bの深さが他側領域12Cにおけるシボ18に対応しない他側凹凸22Cの深さに比し大きくされている。このため、中間領域12Bの中間凹凸22Bの視認性が他側領域12Cの他側凹凸22Cの視認性に比し大きくされることで、塗料層20における中間領域12Bの表面と他側領域12Cの表面との意匠を相違させることができ、マスキングをしなくても塗料層20表面の意匠を変更できると共に、複数種類の塗料を使用しなくても塗料層20表面の意匠を変更できて、コストを低減できる。
【0047】
さらに、基材14の基面16における中間基面領域16Bと他側基面領域16Cとが隣接されて、塗料層20の表面における中間凹凸22Bと他側凹凸22Cとが隣接されている。このため、塗料層20における中間領域12Bの表面と他側領域12Cの表面との間に見切り(境界)を設けることができる。しかも、マスキングを使用しない見切りを設けることができるため、基面16にマスキングの外周に沿って凹部を設ける必要をなくすことができ、見切りをシャープにできて、見切りの見栄えを良好にできる。
【0048】
また、一側領域12A(一側基面領域16A)におけるシボ18の深さが他側領域12C(他側基面領域16C)におけるシボ18の深さに比し大きくされており、塗料層20の表面では、一側領域12Aにおけるシボ18に対応する一側凹凸22Aの深さが他側領域12Cにおけるシボ18に対応しない他側凹凸22Cの深さに比し大きくされている。このため、一側領域12Aの一側凹凸22Aの視認性が他側領域12Cの他側凹凸22Cの視認性に比し大きくされることで、塗料層20における一側領域12Aの表面と他側領域12Cの表面との意匠を相違させることができ、マスキングをしなくても塗料層20表面の意匠を変更できると共に、複数種類の塗料を使用しなくても塗料層20表面の意匠を変更できて、コストを低減できる。
【0049】
さらに、塗料層20が艶消し塗料により形成されている。このため、塗料層20の表面凹凸22の深さの相違による塗料層20表面の意匠の相違を大きくできる。しかも、仮に塗料層20が摩耗等により剥離した場合でも、塗装構造10表面の光沢度が高くなることを基材14の基面16のシボ18により抑制できる。
【0050】
[第2実施形態]
図2(A)には、本発明の第2実施形態に係る塗装構造50が平面図にて示されており、
図2(B)には、塗装構造50が断面図(
図2(A)の2B-2B線断面図)にて示されている。
【0051】
本実施形態に係る塗装構造50は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0052】
図2の(A)及び(B)に示す如く、本実施形態に係る塗装構造50では、基材14の基面16の一側基面領域16Aにおいて、シボ18の深さがα(例えば30μm)にされると共に、シボ18の間隔がβにされている。
【0053】
基材14の基面16の中間基面領域16Bでは、シボ18の深さがαにされると共に、シボ18の間隔がβ/2にされている。
【0054】
基材14の基面16の他側領域12Cでは、シボ18の深さがαにされると共に、シボ18の間隔がβ/4にされている。
【0055】
以上により、シボ18の深さは、一側基面領域16A、中間基面領域16B及び他側基面領域16Cにおいて、同一にされている。さらに、シボ18の間隔は、一側基面領域16Aが中間基面領域16Bに比し大きくされると共に、中間基面領域16Bが他側基面領域16Cに比し大きくされている。また、シボ18の最高高さ位置及び最低高さ位置は、一側基面領域16A、中間基面領域16B及び他側基面領域16Cにおいて、同一又は略同一にされている。
【0056】
塗料層20の表面には、一側領域12Aにおいて、表面凹凸22である同一の一側凹凸22Aが一様に形成されており、一側凹凸22Aは、基材14の基面16における一側基面領域16Aのシボ18に起因して形成されて、当該シボ18に対応する形状(当該シボ18に略沿う形状)にされている。
【0057】
塗料層20の表面には、中間領域12Bにおいて、表面凹凸22である同一の中間凹凸22Bが一様に形成されており、中間凹凸22Bは、基材14の基面16における中間基面領域16Bのシボ18に起因して形成されて、当該シボ18に対応する形状(当該シボ18に略沿う形状)にされている。
【0058】
塗料層20の表面には、他側領域12Cにおいて、表面凹凸22である略同一の他側凹凸22Cが一様に形成されており、他側凹凸22Cは、基材14の基面16における他側基面領域16Cのシボ18に起因せずに、塗料の粒子により形成されて、当該シボ18に対応しない形状(当該シボ18に沿わない形状)にされている。
【0059】
一側凹凸22Aの深さは、中間凹凸22Bの深さに比し大きくされると共に、中間凹凸22Bの深さは、他側凹凸22C及び追加凹凸22Dの深さに比し大きくされている。また、一側凹凸22A、中間凹凸22B、他側凹凸22C及び追加凹凸22Dの最高高さ位置は、同一又は略同一にされている。
【0060】
図3に示す如く、基材14の基面16におけるシボ18の間隔が所定値未満である場合(他側領域12C及び追加領域12Dの場合)には、塗料層20の表面にシボ18に起因する表面凹凸22が形成されずに、塗料層20表面の光沢度が高くされる。一方、シボ18の間隔が所定値以上である場合(一側領域12A及び中間領域12Bの場合)には、塗料層20の表面にシボ18に起因する表面凹凸22が形成されると共に、シボ18の間隔が大きくされるに従い表面凹凸22の深さが大きくされて塗料層20表面の光沢度が低くされる。また、塗料層20の塗料の粒径が小さくなるに従い、所定値が小さくされて、塗料層20の表面にシボ18に起因する表面凹凸22が形成され易くなる。
【0061】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0062】
以上の構成の塗装構造50では、基材14の基面16にシボ18が設けられており、塗料層20が、単一(同一)の塗料により形成されて、基面16を被覆している。
【0063】
ここで、一側領域12A(一側基面領域16A)におけるシボ18の間隔が中間領域12B(中間基面領域16B)におけるシボ18の間隔に比し大きくされており、塗料層20の表面では、一側領域12Aにおけるシボ18に対応する一側凹凸22Aの深さが中間領域12Bにおけるシボ18に対応する中間凹凸22Bの深さに比し大きくされている。このため、一側領域12Aの一側凹凸22Aの視認性が中間領域12Bの中間凹凸22Bの視認性に比し大きくされることで、塗料層20における一側領域12Aの表面と中間領域12Bの表面との意匠を相違させることができ、マスキングをしなくても塗料層20表面の意匠を変更できると共に、複数種類の塗料を使用しなくても塗料層20表面の意匠を変更できて、コストを低減できる。
【0064】
さらに、基材14の基面16における一側基面領域16Aと中間基面領域16Bとが隣接されて、塗料層20の表面における一側凹凸22Aと中間凹凸22Bとが隣接されている。このため、塗料層20における一側領域12Aの表面と中間領域12Bの表面との間に見切り(境界)を設けることができる。しかも、マスキングを使用しない見切りを設けることができるため、基面16にマスキングの外周に沿って凹部を設ける必要をなくすことができ、見切りをシャープにできて、見切りの見栄えを良好にできる。
【0065】
また、中間領域12B(中間基面領域16B)におけるシボ18の間隔が他側領域12C(他側基面領域16C)におけるシボ18の間隔に比し大きくされており、塗料層20の表面では、中間領域12Bにおけるシボ18に対応する中間凹凸22Bの深さが他側領域12Cにおけるシボ18に対応しない他側凹凸22Cの深さに比し大きくされている。このため、中間領域12Bの中間凹凸22Bの視認性が他側領域12Cの他側凹凸22Cの視認性に比し大きくされることで、塗料層20における中間領域12Bの表面と他側領域12Cの表面との意匠を相違させることができ、マスキングをしなくても塗料層20表面の意匠を変更できると共に、複数種類の塗料を使用しなくても塗料層20表面の意匠を変更できて、コストを低減できる。
【0066】
さらに、基材14の基面16における中間基面領域16Bと他側基面領域16Cとが隣接されて、塗料層20の表面における中間凹凸22Bと他側凹凸22Cとが隣接されている。このため、塗料層20における中間領域12Bの表面と他側領域12Cの表面との間に見切り(境界)を設けることができる。しかも、マスキングを使用しない見切りを設けることができるため、基面16にマスキングの外周に沿って凹部を設ける必要をなくすことができ、見切りをシャープにできて、見切りの見栄えを良好にできる。
【0067】
また、一側領域12A(一側基面領域16A)におけるシボ18の間隔が他側領域12C(他側基面領域16C)におけるシボ18の間隔に比し大きくされており、塗料層20の表面では、一側領域12Aにおけるシボ18に対応する一側凹凸22Aの深さが他側領域12Cにおけるシボ18に対応しない他側凹凸22Cの深さに比し大きくされている。このため、一側領域12Aの一側凹凸22Aの視認性が他側領域12Cの他側凹凸22Cの視認性に比し大きくされることで、塗料層20における一側領域12Aの表面と他側領域12Cの表面との意匠を相違させることができ、マスキングをしなくても塗料層20表面の意匠を変更できると共に、複数種類の塗料を使用しなくても塗料層20表面の意匠を変更できて、コストを低減できる。
【0068】
さらに、塗料層20が艶消し塗料により形成されている。このため、塗料層20の表面凹凸22の深さの相違による塗料層20表面の意匠の相違を大きくできる。しかも、仮に塗料層20が摩耗等により剥離した場合でも、塗装構造50表面の光沢度が高くなることを基材14の基面16のシボ18により抑制できる。
【0069】
なお、上記第1実施形態及び第2実施形態において、塗料層20の塗料の粒径を調整する等により、塗料層20の表面に、他側領域12Cにおいて、他側凹凸22Cが、基材14の基面16における他側基面領域16Cのシボ18に起因して形成されて、当該シボ18に対応する形状(当該シボ18に略沿う形状)にされてもよい。このため、塗料層20の表面では、中間領域12Bにおけるシボ18に対応する中間凹凸22Bの深さが他側領域12Cにおけるシボ18に対応する他側凹凸22Cの深さに比し大きくされるのみならず、他側領域12Cにおけるシボ18に対応する他側凹凸22Cの深さが追加領域12Dにおけるシボ18に対応しない追加凹凸22Dの深さに比し大きくされる。これにより、塗料層20における中間領域12Bの表面と他側領域12Cの表面との意匠を相違させることができるのみならず、塗料層20における他側領域12Cの表面と追加領域12Dの表面との意匠を相違させることができる。
【0070】
さらに、上記第1実施形態では、基材14の基面16における一側基面領域16Aと中間基面領域16Bと他側基面領域16Cとでシボ18の深さが相違される。さらに、上記第2実施形態では、基材14の基面16における一側基面領域16Aと中間基面領域16Bと他側基面領域16Cとでシボ18の間隔が相違される。しかしながら、基材14の基面16における一側基面領域16Aと中間基面領域16Bと他側基面領域16Cとでシボ18の深さ及び間隔が相違されてもよい。
【0071】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態において、基材14の基面16における一側基面領域16Aから中間基面領域16Bを介して他側基面領域16Cまでの領域の一部にシボ18が設けられなくてもよい。これにより、塗料層20の表面にシボ18に起因する表面凹凸22が形成されない部分が設けられることで、塗料層20表面の意匠のバリエーションを増加できる。
【0072】
さらに、上記第1実施形態及び第2実施形態では、一側領域12Aと中間領域12Bとが隣接され、中間領域12Bと他側領域12Cとが隣接され、他側領域12Cと追加領域12Dとが隣接される。しかしながら、一側領域12Aと他側領域12Cとが隣接されてもよく、一側領域12Aと追加領域12Dとが隣接されてもよく、中間領域12Bと追加領域12Dとが隣接されてもよい。
【0073】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態において、基材14の基面16のシボ18における凸部の頂部及び凹部の底部の少なくとも一方が平面状にされてもよい。
【0074】
さらに、上記第1実施形態及び第2実施形態では、塗料層20の塗料が不透明にされる。しかしながら、塗料層20の塗料が透明にされてもよい。
【0075】
また、塗料層20の艶消し塗料では、粒径が上記第1実施形態又は第2実施形態より小さな一定値より小さいと、シボ18の深さ又は間隔が小さくなる程、粒子がシボ18の凹部に入り込んで、塗料層20の表面が光を乱反射し光沢度を低くされる一方、シボ18の深さ又は間隔が大きくなる程、塗料がシボ18に追従して、塗料層20の表面が光の乱反射の影響を受け難く光沢度を高くされる。
【符号の説明】
【0076】
10・・・塗装構造、14・・・基材、16・・・基面、16A・・・一側基面領域(第1領域)、16B・・・中間基面領域(第1領域、第2領域、第3領域)、16C・・・他側基面領域(第2領域)、18・・・シボ(基面凹凸)、20・・・塗料層、22A・・・一側凹凸(第1凹凸、表凹凸)、22B・・・中間凹凸(第1凹凸、第2凹凸、第3凹凸、表凹凸)、50・・・塗装構造