(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157450
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の製造方法及び製造支援装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20241030BHJP
【FI】
H01M10/0587
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071832
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 恒良
(72)【発明者】
【氏名】泉本 貴昭
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ28
5H029CJ30
5H029DJ13
5H029HJ00
(57)【要約】
【課題】所望性能のリチウムイオン二次電池を安定して製造することができるリチウムイオン二次電池の製造方法と、その製造を支援するための製造支援装置とを提供する。
【解決手段】正極板の複数の製造ロット及び負極板の複数の製造ロットについて、各製造ロットの製造データを取得するステップと、取得した製造データから各製造ロットの液流れ量を推定するステップと、推定された各製造ロットの液流れ量を用いて、電極体を形成する正極板の製造ロットと負極板の製造ロットとのペアであって、負極板の製造ロットの液流れ量の正極板の製造ロットの液流れ量に対する比である液流れ比率が予め定めた閾値以下であるペアを抽出するステップと、抽出された正極板の製造ロットと負極板の製造ロットのペアから電極体を形成するステップと、を含むリチウムイオン二次電池の製造方法とする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板の複数の製造ロット及び負極板の複数の製造ロットについて、各製造ロットの製造データを取得するステップと、
取得した前記製造データから各製造ロットの液流れ量を推定するステップと、
推定された各製造ロットの液流れ量を用いて、電極体を形成する前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットとのペアであって、前記負極板の製造ロットの液流れ量の前記正極板の製造ロットの液流れ量に対する比である液流れ比率が予め定めた閾値以下であるペアを抽出するステップと、
抽出された前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットのペアから前記電極体を形成するステップと、
を含むリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記予め定めた閾値は、電池性能に基づいて予め定められている、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記電池性能が、ハイレート充放電に伴う内部抵抗の上昇を抑制する性能である、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記液流れ比率の前記予め定めた閾値が、1.5~3.0の範囲にある、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記推定するステップは、前記液流れ量を目的変数とし前記製造データの項目を説明変数とする重回帰式を用いて、前記製造データから各製造ロットの液流れ量を推定する、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記重回帰式は、前記正極板及び前記負極板の各々について用意される、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記負極板に対する前記重回帰式の説明変数となる前記製造データの項目は、負極活物質の平均粒径、負極用ペーストの塗工面の種類、負極用ペーストの目付量、負極用ペーストに含まれる各材料の比率、負極用ペーストの粘度、及びプレス後の負極板の厚みからなる群から選択される1つ以上の項目である、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記正極板に対する前記重回帰式の説明変数となる前記製造データの項目は、正極活物質の粒子形状、正極活物質の粒子の比表面積、正極用ペーストの塗工面、正極用ペーストの目付量、正極用ペーストに含まれる各材料の比率、正極用ペーストの粘度、及びプレス後の正極板の合材密度からなる群から選択される1つ以上の項目である、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記重回帰式の決定係数は、0.7以上とする、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項10】
リチウムイオン二次電池の製造を支援する製造支援装置であって、
正極板の複数の製造ロット及び負極板の複数の製造ロットについて、各製造ロットの製造データを取得する取得部と、
前記取得部で取得した前記製造データから各製造ロットの液流れ量を推定する推定部と、
前記推定部で推定された各製造ロットの液流れ量を用いて、電極体を形成する前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットとのペアであって、前記負極板の製造ロットの液流れ量の前記正極板の製造ロットの液流れ量に対する比である液流れ比率が予め定めた閾値以下であるペアを抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出された前記液流れ比率が予め定めた閾値以下であるペアを出力する出力部と、
を備える製造支援装置。
【請求項11】
前記抽出部は、前記液流れ比率が予め定めた閾値より大きいペアの個数が予め定めた個数以下である、前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットとのペアの集合を、組合せ候補として求め、
前記出力部は、前記抽出部で得られた前記組合せ候補を出力する、
請求項10に記載の製造支援装置。
【請求項12】
前記抽出部は、
正極板の複数の製造ロット及び負極板の複数の製造ロットについて、
前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットの全部のペアの前記液流れ比率を算出し、
前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットとのペアの集合である全部の組合せを求め、
前記全部の組合せから前記液流れ比率が前記予め定めた閾値より大きいペアの個数が予め定めた個数を超える組合せを除外し、
残った組合せを前記組合せ候補とする、
請求項11に記載の製造支援装置。
【請求項13】
前記推定部は、前記液流れ量を目的変数とし前記製造データの項目を説明変数とする予め記憶しておいた重回帰式を用いて、前記製造データから各製造ロットの液流れ量を推定する、請求項10に記載の製造支援装置。
【請求項14】
前記重回帰式は、前記正極板及び前記負極板の各々について予め記憶されている、請求項13に記載の製造支援装置。
【請求項15】
前記出力部は、抽出結果を表示部に表示させる、請求項10に記載の製造支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法及び製造支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池では、大電流でのハイレート充放電が繰り返し行われると、局所的に内部抵抗が増加することが知られている。内部抵抗の増加は、以下のようなメカニズムで発生すると考えられている。まず、ハイレート充放電により電極体の体積が変化する。この電極体の体積変化により、電極体からの電解液の流出、電極体への電解液の再流入等の電解液の流れが発生する。この電解液の流れにより、電極体内部の塩濃度に偏りが生じ、内部抵抗が局所的に増加する。
【0003】
内部抵抗の増加は、電池性能の低下につながる。このため、内部抵抗の増加を抑制するための手法が種々提案されている。例えば、特許文献1には、負極合材層と、セパレータを挟んで負極合材層と対向する正極合材層と、電解液と、を備え、負極合材層は、中空シリカ粒子を3質量%以上7質量%以下含み、中空シリカ粒子の平均粒子径は、50nm以上110nm以下であり、負極合材層の平均細孔径は、正極合材層の平均細孔径の1.0倍以上1.83倍以下である、リチウムイオン二次電池が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、負極合材層内に中空シリカを含有することで、負極の平均細孔径を正極の平均細孔径に近づけ、正負極の電解液の浸透速度の差を小さくすることでハイレート充放電に伴う内部抵抗の上昇を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、正極及び負極の製造工程では、製造ばらつきを避けることができない。製造ばらつきにより、負極の平均細孔径と正極の平均細孔径との比率が変動し得る。このため、狙いの平均細孔径の比率の範囲に収まらない正極と負極から製造された電極体では、ハイレート充放電に伴う内部抵抗の上昇が抑制できない可能性もある。
【0007】
また、電解液の流れ特性は、多くの電池性能に影響を与える。したがって、電解液の流れ特性の影響を受ける他の性能についても同様に制御する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、所望性能のリチウムイオン二次電池を安定して製造することができる、リチウムイオン二次電池の製造方法と、その製造を支援するための製造支援装置と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1態様に係るリチウムイオン二次電池の製造方法は、正極板の複数の製造ロット及び負極板の複数の製造ロットについて、各製造ロットの製造データを取得するステップと、取得した前記製造データから各製造ロットの液流れ量を推定するステップと、推定された各製造ロットの液流れ量を用いて、電極体を形成する前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットとのペアであって、前記負極板の製造ロットの液流れ量の前記正極板の製造ロットの液流れ量に対する比である液流れ比率が予め定めた閾値以下であるペアを抽出するステップと、抽出された前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットのペアから前記電極体を形成するステップと、を含む。
【0010】
本開示の第2態様に係る製造支援装置は、リチウムイオン二次電池の製造を支援する製造支援装置であって、正極板の複数の製造ロット及び負極板の複数の製造ロットについて、各製造ロットの製造データを取得する取得部と、前記取得部で取得した前記製造データから各製造ロットの液流れ量を推定する推定部と、前記推定部で推定された各製造ロットの液流れ量を用いて、電極体を形成する前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットとのペアであって、前記負極板の製造ロットの液流れ量の前記正極板の製造ロットの液流れ量に対する比である液流れ比率が予め定めた閾値以下であるペアの集合を、組合せ候補として抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出された前記組合せ候補を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所望性能のリチウムイオン二次電池を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電極体の構成の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】(A)及び(B)は液流れ量の測定方法の一例を説明するための模式図である。
【
図5】液流れ量の推定値と実測値の相関性を示すグラフである。
【
図6】液流れ比率とハイレート抵抗変化率との関係を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施形態による効果を示す模式図である。
【
図8】製造支援装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】製造支援装置の制御部の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図10】製造支援プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】液流れ量算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】組合せ結果の表示画面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0014】
<リチウムイオン二次電池の構成>
まず、リチウムイオン二次電池の構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、リチウムイオン二次電池10は、扁平角型のセル電池として構成されている。リチウムイオン二次電池10は、上側に開口した角型の電池ケース20と、蓋体30とを備えている。蓋体30は、溶接等により電池ケース20に接合されている。電池ケース20及び蓋体30の材料としては、アルミニウムやアルミニウム合金等が使用される。
【0015】
電池ケース20の内部には、捲回型の電極体40と電解液22とが収容されている。電極体40は、
図2に示すように、正極板42、負極板44、及びセパレータ46で構成された極板群である。正極板42、負極板44、及びセパレータ46の各々は、長尺状のシート部材である。なお、正極板42及び負極板44を、電極板と総称する場合がある。
【0016】
正極板42は、正極集電体42Aと、端部を除いて正極集電体42Aの片面又は両面に形成された正極活物質層42Bとを備えている。負極板44は、負極集電体44Aと、端部を除いて負極集電体44Aの片面又は両面に形成された負極活物質層44Bとを備えている。電解液22、正極板42、負極板44、及びセパレータ46の材料については後述する。
【0017】
正極板42と負極板44とはセパレータ46を介して積層されて、各々の長手方向に沿って捲回されている。電極体40の捲回方向と直交する巻軸方向の一方の端部には、正極集電体42A(すなわち、正極活物質層42Bが形成されていない部分)が露出している。また、電極体40の巻軸方向の他方の端部には、負極集電体44A(すなわち、負極活物質層44Bが形成されていない部分)が露出している。
【0018】
蓋体30には、電力の充放電に使用する正極端子32Pと負極端子32Nとが設けられている。正極端子32Pは、正極集電板38Pに接合されており、正極集電板38Pは、正極板42の正極集電体42Aに接合されている。負極端子32Nは、負極集電板38Nに接合されており、負極集電板38Nは、負極板44の負極集電体44Aに接合されている。また、蓋体30には、電池内の内圧が所定の圧力を超えると開放される安全弁34と、電解液を注入するための注液口36とが設けられている。正極端子32P、負極端子32N、正極集電板38P、及び負極集電板38Nの材料としては、アルミニウムやアルミニウム合金等が使用される。
【0019】
正極板42の正極集電体42Aとしては、例えばアルミニウム箔等が使用される。正極活物質層42Bは、例えば、正極活物質、導電材、及びバインダを含む。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)等を用いることができる。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等を用いることができる。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を用いることができる。
【0020】
負極板44の負極集電体44Aとしては、例えば銅箔等が使用される。負極活物質層44Bは、例えば、負極活物質、バインダ、及び増粘剤を含む。負極活物質としては、例えば、黒鉛(グラファイト)等からなる粉末状の炭素材料を用いてもよい。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンラバー(SBR)等を用いることができる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を用いることができる。
【0021】
電解液22は、非水溶媒に支持塩を含有させた溶液である。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を用いることができる。支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiI等のリチウム塩を用いることができる。
【0022】
セパレータ46は、正極板42と負極板44との間を絶縁すると共に、電解液22を透過させる多孔質の絶縁膜である。セパレータ46としては、多孔性ポリエチレン膜や多孔性ポリプロピレン膜等の多孔性ポリオレフィン膜を用いることができる。
【0023】
<リチウムイオン二次電池の製造方法>
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
図3は本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0024】
図3に示すように、まず、正極材料及び負極材料を準備する(S10)。次に、混錬工程を行う(S12)。混錬工程では、正極材料及び負極材料の各々について、活物質、導電材、バインダ等を混合して、正極用ペーストと負極用ペーストとを作成する。このような混合物は「合材」とも呼ばれる。
【0025】
次に、塗工工程を行う(S14)。塗工工程では、アルミニウム箔からなる正極集電体42Aの片面又は両面に正極用ペーストを塗布して乾燥し、正極活物質層42Bを形成する。これにより正極板42が得られる。同様に、銅箔からなる負極集電体44Aの片面又は両面に負極用ペーストを塗布して乾燥し、負極活物質層44Bを形成する。これにより負極板44が得られる。
【0026】
次に、プレス工程を行う(S16)。プレス工程では、正極板42と負極板44の各々をプレスして所定の厚みに調整する。この後、正極板42と負極板44を所定の大きさにカットする。
【0027】
次に、電極ペア決定工程を行う(S18)。S10~S16の工程を経た、複数製造ロットの正極板42と複数製造ロットの負極板44とが得られている。電極ペア決定工程では、複数製造ロットの正極板42と複数製造ロットの負極板44とが、電極体を形成するために2個ずつペアにされ、複数のペアからなる正極板42の製造ロットと負極板44の製造ロットの組合せが決定される。
【0028】
次に、電極体形成工程を行う(S20)。電極体形成工程では、所定の大きさに切り揃えた正極板42と負極板44を、セパレータ46を介して交互に積層して電極体40を形成する。正極板42、負極板44、及びセパレータ46が相互に圧接されて、所望の形状に整形される。
【0029】
次に、セル組立工程を行う(S22)。セル組立工程では、以下のようにして電池セルを組み立てる。電極体40の正極集電体42Aに正極集電板38Pを溶接し、負極集電体44Aに負極集電板38Nを溶接する。正極集電板38P及び負極集電板38Nが取り付けられた電極体40を、電池ケース20に収納する。電池ケース20と蓋体30とを溶接により接合する。この段階では、まだ蓋体30の注液口36は開放されている。
【0030】
次に、セル乾燥工程を行う(S24)。セル乾燥工程では、加熱により電極体40の水分が除去される。次に、電解液注入/気密封止工程を行う(S26)。この工程では、電解液22を電池ケース20内に充填し、その後、注液口36を気密封止する。これにより、リチウムイオン二次電池10が得られる。
【0031】
次に、活性化工程を行う(S28)。活性化工程では、リチウムイオン二次電池10に対して初充電を行い、続いて高温化で一定時間保存する高温エージング処理を行う。最後に、検査工程を行う(S30)。検査工程では、リチウムイオン二次電池10に対して各種検査を行い、製造工程は終了する。
【0032】
<電極ペア決定>
本実施形態では、正極板42及び負極板44の各製造ロットの液流れ量を推定し、推定した液流れ量の比率が予め定めた閾値以下となるように、正極板42の製造ロットと負極板44の製造ロットの組合せ(すなわち、電極ペア)を決定する。各製造ロットの液流れ量を、製造工程で得られた種々の製造データから推定することで、製造ばらつきを液流れ量に反映させる。そして、液流れ量の比率が閾値以下となるように電極ペアを決定することで、製造ばらつきに拘わらず、所望性能のリチウムイオン二次電池を安定して製造することができるようになる。以下、電極ペアの決定方法を具体的に説明する。
【0033】
(液流れ量)
液流れ量とは、電極体からの電解液の流出と電極体への電解液の流入とを含む電解液の流れの量を表す指標である。液流れ量の実測値は、例えば、以下のようにして測定することができる。まず、
図4(A)に示すように、円筒状の巻き芯に52に電極板(ここでは、正極板42とする。)とセパレータ46とを巻き付けて測定サンプル50を作製する。巻き芯52の開口端部はゴム栓56で塞ぐ。次に、
図4(B)に示すように、測定サンプル50を測定ケース54に収容する。Oリング58を用いて測定サンプル50と測定ケース54との隙間から電解液が漏れないようにする。
【0034】
次に、測定ケース54に電解液を注入し、測定サンプル50に電解液を含浸させる。含浸後に、所定の圧力を印加し、測定サンプル50から流出する単位時間当たりの電解液の量を測定する。圧力値を種々変更して、単位時間当たりの電解液の流出量を測定する。そして、圧力に対する単位時間当たりの電解液の流出量を表す直線を求め、この直線の傾きを「液流れ量」とする。この方法で求めた液流れ量の単位は、例えば「g/kPa」である。
【0035】
(液流れ量の推定値)
本実施形態では、液流れ量の推定値を求める。以下では、液流れ量の実測値を「液流れ量(実測値)」と表し、液流れ量の推定値を「液流れ量(推定値)」と表す。液流れ量(推定値)は、正極と負極の各々について用意された推定式を用いて算出される。推定式は、目的変数を液流れ量(推定値)とし、説明変数を製造工程で得られた製造データの各項目とする重回帰式である。製造工程で得られた製造データには、製造条件を表すデータと物性データとが含まれる。
【0036】
負極用の推定式に使用される製造データとしては、負極活物質の平均粒径(D50)、負極用ペーストの塗工面、目付量、プレス後の厚み等を用いることができる。正極用の推定式に使用される製造データとしては、正極活物質の粒子形状や比表面積、正極用ペーストの塗工面、目付量、プレス後の合材密度等を用いることができる。その他の製造データとしては、合材に含まれる各材料の混合比率、ペーストの粘度等がある。
【0037】
複数のサンプルについて、液流れ量(実測値)と製造データとを取得し、これらのデータを用いて重回帰式をフィッティングして、重回帰式の定数と偏回帰係数とを求める。偏回帰係数は、各説明変数に対する感度を表している。一般に、重回帰式のフィッティングには、説明変数の個数の約10倍のサンプル数が必要である。フィッティングにより定数と偏回帰係数が決定された重回帰式を、推定式として使用する。この推定式に製造データを代入することで、液流れ量(推定値)が算出される。
【0038】
また、液流れ量(推定値)と液流れ量(実測値)との相関性を求めて、推定式の妥当性を検証してもよい。
図5に示すように、相関性は、液流れ量(推定値)と液流れ量(実測値)との重相関係数Rの二乗である決定係数R
2で表すことができる。決定係数R
2は1に近いほど相関性が高い。決定係数R
2が0.5以上であれば十分な相関性を有していると言うことができ、推定式は妥当であると判断される。液流れ量(推定値)の信頼性の観点から、決定係数R
2は0.7以上が好ましい。決定係数R
2が0.5未満の場合には、サンプル数を増やしてフィッティングをやり直す、説明変数を見直す等により、推定式を再設定することが好ましい。
【0039】
(液流れ比率と閾値判定)
液流れ比率とは、正極板42の液流れ量(推定値)に対する負極板44の液流れ量(推定値)の比率である。従来、正極板42の液流れ量と負極板44の液流れ量とを等しくすることが好ましいと考えられていた。しかしながら、実際には、負極板44の液流れ量が正極板42の液流れ量より多くなるように設計されるのが一般的である。このため、実際には、液流れ比率は1より大きくなる。
【0040】
本実施形態では、性能上許容可能な範囲に基づいて、液流れ比率の上限閾値を柔軟に設定する。例えば、ハイレート充放電に伴う内部抵抗の上昇度合い(すなわち「ハイレート抵抗変化率」)を考慮して、液流れ比率の上限閾値を決定する。例えば、
図6に示すように、液流れ比率の実測値とハイレート抵抗変化率の実測値との対応関係(
図6の点線で表す直線)を用いて、ハイレート抵抗変化率の許容上限値に対応する液流れ比率の値を上限閾値とする。
【0041】
例えば、実線で示すように、ハイレート抵抗変化率の許容上限値がaであれば、液流れ比率の閾値は2.00となる。また、点線で示すように、ハイレート抵抗変化率の許容上限値がbであれば、液流れ比率の閾値は2.65となる。そして、正極板42の液流れ量(推定値)に対する負極板44の液流れ量(推定値)の比率が閾値以下となるように、電極ペアを決定する。液流れ比率の閾値は、1.5~3.0の範囲が好ましく、2.0~2.5の範囲がより好ましい。
【0042】
この結果、
図7に示すように、液流れ量が大きい正極板42の製造ロットは、同様に液流れ量が大きい負極板44の製造ロットとペアにされる。液流れ量が中程度の正極板42の製造ロットは、同様に液流れ量が中程度の負極板44の製造ロットとペアにされる。液流れ量が小さい正極板42の製造ロットは、液流れ量が小さい負極板44の製造ロットとペアにされる。このように、本実施形態では、製造ばらつきに拘わらず、液流れ比率を略一定にすることができ、所望の性能のリチウムイオン二次電池を安定して製造することができる。
【0043】
また、例えば、各電極板の液流れ量が目標値となるように製造する場合、製造ばらつきにより目標値から大きく外れる規格外の電極板が発生する可能性がある。従来であれば、規格外の電極板は廃棄されることになる。これに対して、本実施形態では、規格外の電極板であっても、電極ペアを形成することが可能であれば、電極体40の形成に使用することができる。このように、本実施形態では、電極板の廃棄量を低減することができる。
【0044】
上述した電極ペア決定工程は、コンピュータを備える製造支援装置を使用して行われる。このため、以下では、製造支援装置の構成と、製造支援装置において製造支援処理を実行するための製造支援プログラムと、について説明する。
【0045】
<製造支援装置>
まず、製造支援装置の電気的構成について説明する。
図8は製造支援装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、製造支援装置60は、制御部62、表示部76、入力部78、通信部80、及び記憶部82を備えている。制御部62は、コンピュータ等の情報処理装置であり、装置全体の制御と各種演算とを行う。
【0046】
制御部62は、CPU(中央処理装置; Central Processing Unit)64、ROM(Read Only Memory)66、RAM(Random Access Memory)68、不揮発性のメモリ70、及び入出力部(I/O)72を備えている。CPU64、ROM66、RAM68、メモリ70、及びI/O72の各々は、バス74を介して互いに接続されている。CPU64は、記憶装置に記憶されたプログラムを読み出し、RAM68をワークエリアとして使用してプログラムを実行する。
【0047】
表示部76、入力部78、通信部80、及び記憶部82の各々は、I/O72に接続されている。表示部76は、ディスプレイ等の表示装置である。入力部78は、キーボード、マウス、タッチ入力装置等の入力装置である。通信部80は、通信回線に接続するための通信インターフェイス(I/F)である。記憶部82は、ハードディスク等の外部記憶装置である。本実施形態では、後述する「製造支援プログラム」や各種データが、記憶部82に記憶されている。記憶部82に記憶される各種データには、液流れ量の推定式や液流れ比率の閾値等が含まれる。
【0048】
次に、制御部62の機能的な構成について説明する。
図9は製造支援装置60の制御部62の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、制御部62は、正極板の複数の製造ロット及び負極板の複数の製造ロットについて、各製造ロットの製造データを取得する取得部90と、取得部90で取得した製造データから各製造ロットの液流れ量を推定する推定部92と、推定部92で推定された各製造ロットの液流れ量を用いて、電極体を形成する正極板の製造ロットと負極板の製造ロットとのペアであって、負極板の製造ロットの液流れ量の正極板の製造ロットの液流れ量に対する比である液流れ比率が予め定めた閾値以下であるペアを抽出する抽出部94と、抽出部94で抽出された液流れ比率が予め定めた閾値以下であるペアを出力する出力部96と、を備えている。これらの各機能部は、後述する「製造支援プログラム」が、制御部62のCPU64によって実行されることで実現される。
【0049】
<製造支援プログラム>
次に、製造支援処理を実行するための「製造支援プログラム」について説明する。
図10は製造支援プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。「製造支援プログラム」は、制御部62のCPU64によって実行される。「製造支援プログラム」は、入力部78の操作により、製造データが入力され、表示部76に表示された受付画面(図示せず)を介して組合せ候補の抽出が指示された場合に開始される。
【0050】
なお、フローチャートでは、製造支援装置60の各部以外の符号を省略する。また、正極板42の製造ロットを「正極ロット」と略称し、負極板44の製造ロットを「負極ロット」と略称する。
【0051】
まず、ステップS100で、CPU64は製造データを取得する。正極ロットと負極ロットのすべてのサンプルについての製造データが取得され、RAM68に一時的に記憶される。次に、ステップS102で、CPU64は「液流れ量推定処理」を実行する。
【0052】
ここで、
図11を参照して「液流れ量推定処理」について説明する。
まず、ステップS200で、CPU64は、1つのサンプルを選択する。次に、ステップS202で、CPU64は、選択されたサンプルが正極ロットか否かを判断する。選択されたサンプルが正極ロットの場合はステップS204に進む。次に、ステップS204で、CPU64は、正極用の推定式を記憶部82から読み出す。一方、選択されたサンプルが負極ロットの場合はステップS206に進む。次に、ステップS206で、CPU64は、負極用の推定式を記憶部82から読み出す。
【0053】
次に、ステップS208で、CPU64は、選択されたサンプルの製造データを取得する。次に、ステップS210で、CPU64は、サンプルの製造データと推定式とを用いて、サンプルの液流れ量(推定値)を算出する。次に、ステップS212で、CPU64は、次のサンプルがあるか否かを判断する。次のサンプルがある場合は、ステップS200に戻る。一方、次のサンプルが無い場合は、ルーチンを終了する。すなわち、すべてのサンプルについて液流れ量(推定値)が算出されるまで、ステップS200~ステップS212までの処理が繰り返し行われる。
【0054】
図10の説明に戻る。次に、ステップS104で、CPU64は、正極ロットと負極ロットのすべての電極ペアの液流れ比率を算出する。次に、ステップS106で、CPU64は、正極ロットと負極ロットのすべての組合せを取得する。次に、ステップS108で、CPU64は、液流れ比率が閾値より大きい電極ペアを含む組合せを除外する。次に、ステップS110で、CPU64は、正極ロットと負極ロットの残った組合せを、組合せ候補として表示部76に表示する。
【0055】
ここで、ステップS104~S110を、具体例を用いて説明する。ここでは、正極ロットA、B、Cと負極ロットD、E、Fとの組合せを求める例について説明する。この場合、すべての電極ペアは(A,D)、(A,E)、(A,F)、(B,D)、(B,E)、(B,F)、(C,D)、(C,E)、(C,F)の9組である。各電極ペアについて液流れ比率が算出される。
【0056】
そして、正極ロットと負極ロットのすべての組合せは、以下の6通りとなる。
組合せ1:[(A,D)、(B,E)、(C,F)]
組合せ2:[(A,D)、(B,F)、(C,E)]
組合せ3:[(A,E)、(B,D)、(C,F)]
組合せ4:[(A,E)、(B,F)、(C,D)]
組合せ5:[(A,F)、(B,D)、(C,E)]
組合せ6:[(A,F)、(B,E)、(C,D)]
【0057】
例えば、正極ロットBと負極ロットFの電極ペアの液流れ比率が閾値より大きい場合、電極ペア(B,F)を含む組合せ2と組合せ4とが除外される。この結果、組合せ1、組合せ3、組合せ5、及び組合せ6が、組合せ候補として表示部76に表示される。
【0058】
図12は組合せ結果の表示画面の一例を示す模式図である。組合せ結果の表示画面100には、候補となる組合せ102
1~102
Nが表示される。例えば、組合せ102
1~102
Nの各々について、各組合せを識別する識別番号、含まれる電極ペア、電極ペアの液流れ比率等を表示してもよい。或いは、液流れ比率に代えて又は液流れ比率に加えて、対応するハイレート抵抗変化率を表示してもよい。
【0059】
また、表示画面100は、印刷出力やデータダウンロードを指示する出力ボタン104、データの並べ替えを指示する並べ替え指示ボタン106を含んでいてもよい。データの並べ替えは、液流れ比率の代表値(標準偏差、平均値、最大値、最小値)に基づいて行われてもよい。以下では、液流れ比率の標準偏差に基づいてデータを並べ替える例について説明する。
【0060】
図10の説明に戻る。次に、ステップS112で、CPU64は、入力部78及び表示部76を介して並べ替えが指示されたか否かを判断する。並べ替えが指示された場合は、ステップS114に進む。一方、並べ替えが指示されていない場合は、ルーチンを終了する。次に、ステップS114で、CPU64は、正極ロットと負極ロットの残った組合せについて、液流れ比率の標準偏差を算出する。次に、ステップS116で、CPU64は、正極ロットと負極ロットの残った組合せを、標準偏差の昇順に並べ替えて表示部76に表示し、ルーチンを終了する。
【0061】
以上の通り、本実施形態によれば、正極ロット及び負極ロットの液流れ量(推定値)を、製造工程で得られた種々の製造データから推定するので、製造ばらつきを液流れ量(推定値)に反映させることができる。そして、液流れ比率が閾値以下となるように電極ペアを決定するので、製造ばらつきに拘わらず、液流れ比率を略一定にすることができ、所望の性能のリチウムイオン二次電池を安定して製造することができる。
【0062】
また、本実施形態では、液流れ量が大きい又は小さい電極板であっても、電極ペアを形成することが可能であれば、電極体の形成に使用することができる。また、電極ペアを形成することができなかったサンプルを、次の計算に使用することも可能である。また、液流れ比率に対して性能上許容可能な範囲に基づいて上限閾値を柔軟に設定するので、正極ロットの液流れ量と負極ロットの液流れ量とを一致させる場合に比べて、各電極板の製造条件を緩和することができると共に、電極ペアを決定する際の要件も緩和することができる。これらにより、電極板の廃棄量を低減することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、液流れ量の推定、液流れ比率の算出、及び正極ロットと負極ロットの組合せ候補の抽出・出力をすべてコンピュータで行うことができる。また、製造データは製造工程で得られた値であり、新たに測定する必要はない。このため、液流れ量の実測値を測定し、正極ロットと負極ロットの組合せをユーザが試行錯誤で決定する場合に比べて、ユーザの手間を軽減することができる。また、サンプル数の増加にも容易に対応することができる。
【0064】
<変形例>
上記実施形態で説明したリチウムイオン二次電池の製造方法及び製造支援装置の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【0065】
本開示のリチウムイオン二次電池の製造方法及び製造支援装置は、リチウムイオン二次電池の構成に拘わらず適用できるものである。例えば、上記の実施形態では、捲回型の電極体を例示したが、電極体の形態は捲回型には限定されない。例えば、電極体は、積層型の電極体としてもよい。また、上記の実施形態では、扁平角型のリチウムイオン二次電池を例示したが、リチウムイオン二次電池の形状は扁平角型には限定されない。例えば、リチウムイオン二次電池を円筒形状としてもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、ハイレート抵抗変化率の許容上限値に対応する液流れ比率の値を、液流れ比率の上限閾値としたが、所望性能は、ハイレート充放電に伴う内部抵抗の上昇の抑制性能には限定されない。例えば、電解液の流れ特性の影響を受ける他の性能(電池の抵抗や出力)との関係で、液流れ比率の閾値を設定してもよい。また、複数の性能との関係で、液流れ比率の閾値を設定してもよい。
【0067】
また、上記の実施形態では、液流れ比率が閾値より大きい電極ペアを含まない、正極ロットと負極ロットの組合せを、組合せ候補として抽出・表示する例について説明したが、抽出・表示の方法はこれには限定されない。例えば、液流れ比率が閾値以下の電極ペアを抽出・表示してもよい。また、計算量を減らすために、液流れ比率が閾値より大きい電極ペアを含まない組合せが1つでも見つかった時点で計算を終了し、結果を出力してもよい。また、液流れ比率が予め定めた閾値より大きいペアの個数が予め定めた個数以下である組合せを、組合せ候補として抽出・表示してもよい。
【0068】
[付記]なお、以上の実施形態の説明に関して、更に以下の付記を開示する。
本開示の態様1は、正極板の複数の製造ロット及び負極板の複数の製造ロットについて、各製造ロットの製造データを取得するステップと、取得した前記製造データから各製造ロットの液流れ量を推定するステップと、推定された各製造ロットの液流れ量を用いて、電極体を形成する前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットとのペアであって、前記負極板の製造ロットの液流れ量の前記正極板の製造ロットの液流れ量に対する比である液流れ比率が予め定めた閾値以下であるペアを抽出するステップと、抽出された前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットのペアから前記電極体を形成するステップと、を含むリチウムイオン二次電池の製造方法である。
本開示の態様2は、前記予め定めた閾値は、電池性能に基づいて予め定められている、態様1のリチウムイオン二次電池の製造方法である。
本開示の態様3は、前記電池性能が、ハイレート充放電に伴う内部抵抗の上昇を抑制する性能である、態様2のリチウムイオン二次電池の製造方法である。
本開示の態様4は、前記液流れ比率の前記予め定めた閾値が、1.5~3.0の範囲にある、態様1から態様3までのいずれか1つのリチウムイオン二次電池の製造方法である。
本開示の態様5は、前記推定するステップは、前記液流れ量を目的変数とし前記製造データの項目を説明変数とする重回帰式を用いて、前記製造データから各製造ロットの液流れ量を推定する、態様1から態様4までのいずれか1つのリチウムイオン二次電池の製造方法である。
本開示の態様6は、前記重回帰式は、前記正極板及び前記負極板の各々について用意される、態様5のリチウムイオン二次電池の製造方法である。
本開示の態様7は、前記負極板に対する前記重回帰式の説明変数となる前記製造データの項目は、負極活物質の平均粒径、負極用ペーストの塗工面の種類、負極用ペーストの目付量、負極用ペーストに含まれる各材料の比率、負極用ペーストの粘度、及びプレス後の負極板の厚みからなる群から選択される1つ以上の項目である、態様5又は態様6のリチウムイオン二次電池の製造方法である。
本開示の態様8は、前記正極板に対する前記重回帰式の説明変数となる前記製造データの項目は、正極活物質の粒子形状、正極活物質の粒子の比表面積、正極用ペーストの塗工面、正極用ペーストの目付量、正極用ペーストに含まれる各材料の比率、正極用ペーストの粘度、及びプレス後の正極板の合材密度からなる群から選択される1つ以上の項目である、態様5から態様7までのいずれか1つのリチウムイオン二次電池の製造方法である。
本開示の態様9は、前記重回帰式の決定係数は、0.7以上とする、態様5から態様8までのいずれか1つのリチウムイオン二次電池の製造方法である。
本開示の態様10は、リチウムイオン二次電池の製造を支援する製造支援装置であって、正極板の複数の製造ロット及び負極板の複数の製造ロットについて、各製造ロットの製造データを取得する取得部と、前記取得部で取得した前記製造データから各製造ロットの液流れ量を推定する推定部と、前記推定部で推定された各製造ロットの液流れ量を用いて、電極体を形成する前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットとのペアであって、前記負極板の製造ロットの液流れ量の前記正極板の製造ロットの液流れ量に対する比である液流れ比率が予め定めた閾値以下であるペアを抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出された前記液流れ比率が予め定めた閾値以下であるペアを出力する出力部と、を備える製造支援装置である。
本開示の態様11は、前記抽出部は、前記液流れ比率が予め定めた閾値より大きいペアの個数が予め定めた個数以下である、前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットとのペアの集合を、組合せ候補として求め、前記出力部は、前記抽出部で得られた前記組合せ候補を出力する、態様10の製造支援装置である。
本開示の態様12は、前記抽出部は、正極板の複数の製造ロット及び負極板の複数の製造ロットについて、前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットの全部のペアの前記液流れ比率を算出し、前記正極板の製造ロットと前記負極板の製造ロットとのペアの集合である全部の組合せを求め、前記全部の組合せから前記液流れ比率が前記予め定めた閾値より大きいペアの個数が予め定めた個数を超える組合せを除外し、残った組合せを前記組合せ候補とする、態様11の製造支援装置である。
本開示の態様13は、前記推定部は、前記液流れ量を目的変数とし前記製造データの項目を説明変数とする予め記憶しておいた重回帰式を用いて、前記製造データから各製造ロットの液流れ量を推定する、態様10から態様12までのいずれか1つの製造支援装置である。
本開示の態様14は、前記重回帰式は、前記正極板及び前記負極板の各々について予め記憶されている、態様13の製造支援装置である。
本開示の態様15は、前記出力部は、抽出結果を表示部に表示させる、態様10から態様14までのいずれか1つの製造支援装置である。
【符号の説明】
【0069】
10 リチウムイオン二次電池
20 電池ケース
22 電解液
30 蓋体
32N 負極端子
32P 正極端子
34 安全弁
36 注液口
38N 負極集電板
38P 正極集電板
40 電極体
42 正極板
42A 正極集電体
42B 正極活物質層
44 負極板
44A 負極集電体
44B 負極活物質層
46 セパレータ
50 測定サンプル
52 巻き芯
54 測定ケース
56 ゴム栓
58 Oリング
60 製造支援装置
62 制御部
64 CPU
66 ROM
68 RAM
70 メモリ
72 入出力部
74 バス
76 表示部
78 入力部
80 通信部
82 記憶部
100 表示画面
104 出力ボタン
106 指示ボタン