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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157451
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61C 17/00 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
B61C17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071834
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】森 義郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 公寿
(72)【発明者】
【氏名】神田 淳
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 将光
(72)【発明者】
【氏名】園川 理央
(72)【発明者】
【氏名】濱島 豊和
(57)【要約】
【課題】鉄道車両本体の下部の凹状部に配置される冷却部に走行風を流入させ易くすることが可能な鉄道車両を提供する。
【解決手段】この鉄道車両10は、鉄道車両本体11と、鉄道車両本体11に搭載される電力変換部13と、鉄道車両本体11の走行風により電力変換部13を冷却する冷却フィン16と、鉄道車両本体の下部に設けられた上に凸の凹状部15とを備える。凹状部15は、冷却フィン16が配置される平坦部151、および、鉄道車両本体11の走行方向において平坦部151を挟むように配置される一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)を含む。一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)および平坦部151の少なくとも一方は、冷却フィン16に対して走行風の上流側に設けられ、鉄道車両本体側11に凹む凹部Rを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両本体と、
前記鉄道車両本体に搭載される電力変換部と、
前記鉄道車両本体の走行風により前記電力変換部を冷却する冷却部と、
前記冷却部が配置される平坦部、および、前記鉄道車両本体の走行方向において前記平坦部を挟むように配置される一対の傾斜面部を含み、前記鉄道車両本体の下部に設けられた上に凸の凹状部と、を備え、
前記一対の傾斜面部および前記平坦部の少なくとも一方は、前記冷却部に対して走行風の上流側に設けられ、前記鉄道車両本体側に凹む凹部を有する、鉄道車両。
【請求項2】
前記凹部は、走行風の流れ方向の幅が20mm以上40mm以下であって、5mm以上の深さを備えている、請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記凹部は、前記一対の傾斜面部のうち、少なくとも走行風の上流側の前記傾斜面部に設けられている、請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記凹部は、前記一対の傾斜面部の両方に設けられている、請求項3に記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記凹部は、前記一対の傾斜面部のうち、少なくとも走行風の上流側の前記傾斜面部において、枕木方向から見て前記走行方向における中央または中央より前記平坦部側に配置されている、請求項3に記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記凹部は、前記冷却部に設けられる放熱フィンに対して走行風の上流側であって、前記平坦部の端部から20mm以上40mm以下の位置に設けられている、請求項3に記載の鉄道車両。
【請求項7】
前記凹部は、前記傾斜面部で発生する空気の渦の位置に対して走行風の上流側に配置されている、請求項3に記載の鉄道車両。
【請求項8】
前記凹部は、前記傾斜面部から走行風が剥離する位置に対して走行風の上流側に配置されている、請求項3に記載の鉄道車両。
【請求項9】
前記走行風が剥離する位置は、
前記電力変換部に含まれる半導体素子の損失が所定値以上となる前記鉄道車両本体の走行速度において、前記傾斜面部に沿って流れる走行風が、前記傾斜面部から剥離する位置である、請求項8に記載の鉄道車両。
【請求項10】
前記走行風が剥離する位置は、
前記電力変換部に含まれる半導体素子に関連する温度が所定値以上となる前記鉄道車両本体の走行速度において、前記傾斜面部に沿って流れる走行風が、前記傾斜面部から剥離する位置である、請求項8に記載の鉄道車両。
【請求項11】
前記凹部は、前記一対の傾斜面部および前記平坦部の少なくとも一方に一体的に設けられている、請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項12】
前記凹部は、枕木方向に沿って、前記傾斜面部の一端から他端に延びるように形成されている、請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項13】
前記凹部は、前記枕木方向から見て、隅部が丸みを有するように凹むか、または、矩形状に凹むように形成されている、請求項12に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両に関し、特に、走行風により電力変換部を冷却する冷却部を備える鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行風により電力変換部を冷却する冷却部を備える鉄道車両が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の鉄道車両は、電力変換装置(電力変換部)が車両の底部に設置されている。また、電力変換装置は、筐体と、筐体内部に設けられる電力変換装置本体とを含む。また、電力変換装置は、電力変換装置本体を冷却するための冷却部を含む。冷却部は、筐体の外部に露出するように設けられる。また、鉄道車両の底部には、冷却部が配置される上に凸の凹状部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-218000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載されている鉄道車両では、冷却部が上に凸の凹状部に配置されている。この場合、凹状部によって地面と鉄道車両との間の空気が流れる流路が急激に拡大されることに起因して、走行風が凹状部に入りにくく、凹状部の下方を通過するように流れる。そのため、凹状部の内側(鉄道車両本体側)と外側(地面側)との間において、風速差が生じてしまい、空気の淀み(滞留)の要因となる空気の渦が凹状部に生じる。そして、凹状部に渦が生じた場合、走行風が冷却部に流入することが妨げられる。したがって、鉄道車両本体の下部の凹状部に配置される冷却部に走行風を流入させ易くすることが可能な鉄道車両が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、鉄道車両本体の下部の凹状部に配置される冷却部に走行風を流入させ易くすることが可能な鉄道車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による鉄道車両は、鉄道車両本体と、鉄道車両本体に搭載される電力変換部と、鉄道車両本体の走行風により電力変換部を冷却する冷却部と、冷却部が配置される平坦部、および、鉄道車両本体の走行方向において平坦部を挟むように配置される一対の傾斜面部を含み、鉄道車両本体の下部に設けられた上に凸の凹状部と、を備え、一対の傾斜面部および平坦部の少なくとも一方は、冷却部に対して走行風の上流側に設けられ、鉄道車両本体側に凹む凹部を有する。
【0008】
この発明の一の局面による鉄道車両では、上記のように、凹状部は、冷却部が配置される平坦部、および、鉄道車両本体の走行方向において平坦部を挟むように配置される一対の傾斜面部を含む。そして、一対の傾斜面部および平坦部の少なくとも一方は、冷却部に対して走行風の上流側に設けられ、鉄道車両本体側に凹む凹部を有する。ここで、凹状部の壁面近傍の走行風の速度(風速)が、せん断応力により、小さく(遅く)なることに起因して、凹状部の壁面を沿った走行風の流れは、せん断流になる。本願発明者は、一対の傾斜面部および平坦部の少なくとも一方に鉄道車両本体側に凹む凹部を設けることによって、凹部に対応する箇所の走行風の流れが、自由せん断流になることに着目した。そして、本願発明者は、走行風の流れが、せん断流から自由せん断流に変化することより、鉄道車両本体側(凹状部の壁面)への空気の流れが発生して、走行風が鉄道車両本体側に引き寄せられることを見出した。これにより、一対の傾斜面部および平坦部の少なくとも一方が、冷却部に対して走行風の上流側に設けられる凹部を有することによって、走行風を鉄道車両本体側に引き寄せることができる。その結果、鉄道車両本体の下部の凹状部に配置される冷却部に走行風を流入させ易くすることができる。さらに、冷却部による放熱をより効率よく行うことができるので、冷却部の小型化を図ることができる。
【0009】
上記一の局面による冷却装置において、好ましくは、凹部は、走行風の流れ方向の幅が20mm以上40mm以下であって、5mm以上の深さを備えている。このように構成すれば、電力変換部の冷却をより効率よく行うことができる。なお、この効果は、後述する発明者によるシミュレーションにより確認済みである。また、走行風の主流を鉄道車両本体側に引き寄せることと、走行風が凹部に侵入することによる圧力損失とのバランスをとることができる。また、凹部の深さを5mmよりも大きくすると、凹部の加工コストが高くなる。
【0010】
上記一の局面による冷却装置において、好ましくは、凹部は、一対の傾斜面部のうち、少なくとも走行風の上流側の傾斜面部に設けられている。このように構成すれば、走行風の下流側の傾斜面部に凹部を設ける場合に比べて、より効率よく走行風を鉄道車両本体側に引き寄せることができるので、冷却部に走行風をより効率よく流入させることができる。
【0011】
この場合、好ましくは、凹部は、一対の傾斜面部の両方に設けられている。このように構成すれば、鉄道車両本体の進行方向によらず、冷却部の走行風の上流側に凹部を配置することができる。
【0012】
上記凹部が、一対の傾斜面部のうち、少なくとも走行風の上流側の傾斜面部に設けられている構成において、好ましくは、凹部は、一対の傾斜面部のうち、少なくとも走行風の上流側の傾斜面部において、枕木方向から見て走行方向における中央または中央より平坦部側に配置されている。このように構成すれば、冷却部に対して上流側、かつ、傾斜面部の冷却部に近い位置において、走行風を鉄道車両本体側に引き寄せることができるので、より効率よく冷却部に走行風を流入させることができる。
【0013】
上記凹部が、一対の傾斜面部のうち、少なくとも走行風の上流側の傾斜面部に設けられている構成において、好ましくは、凹部は、冷却部に設けられる放熱フィンに対して走行風の上流側であって、平坦部の端部から20mm以上40mm以下の位置に設けられている。このように構成すれば、電力変換部の冷却をより効率よく行うことができる。なお、この効果は、後述する発明者によるシミュレーションにより確認済みである。
【0014】
上記凹部が、一対の傾斜面部のうち、少なくとも走行風の上流側の傾斜面部に設けられている構成において、好ましくは、凹部は、傾斜面部で発生する空気の渦の位置に対して走行風の上流側に配置されている。
【0015】
この場合、好ましくは、走行風が剥離する位置は、電力変換部に含まれる半導体素子の損失が所定値以上となる鉄道車両本体の走行速度において、傾斜面部に沿って流れる走行風が、傾斜面部から剥離する位置である。
【0016】
上記凹部が傾斜面部から走行風が剥離する位置に対して走行風の上流側に配置されている構成において、好ましくは、走行風が剥離する位置は、電力変換部に含まれる半導体素子の損失が所定値以上となる鉄道車両本体の走行速度において、傾斜面部に沿って流れる走行風が、前記傾斜面部から剥離する位置である。
【0017】
上記一の局面による冷却装置において、好ましくは、凹部は、一対の傾斜面部および平坦部の少なくとも一方に一体的に設けられている。このように構成すれば、凹部が、一対の傾斜面部または平坦部とは別個の部材によって設けられる場合に比べて、部品点数の増加を抑制することができる。
【0018】
上記一の局面による冷却装置において、好ましくは、凹部は、枕木方向に沿って、傾斜面部の一端から他端に延びるように形成されている。このように構成すれば、枕木方向に渡って、冷却部に流入する走行風量に偏りが生じるのを抑制することができる。また、凹部が、傾斜面部の一端から他端に延びずに傾斜面部の一端から他端までの途中のみに形成されている場合と比べて、容易に、凹部を形成することができる。
【0019】
この場合、好ましくは、凹部は、枕木方向から見て、隅部が丸みを有するように凹むか、または、矩形状に凹むように形成されている。このように構成すれば、凹部が枕木方向から見て隅部が丸みを有するように凹む場合では、枕木方向から見て矩形状に凹部を凹ませる場合に比べて、凹部をプレス加工などにより容易に形成することができる。また、凹部が枕木方向から見て矩形状に凹む場合、板金などを溶接することにより、矩形状に凹む凹部を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記のように、鉄道車両本体の下部の凹状部に配置される冷却部に走行風を流入させ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態による鉄道車両を示した概略側面図である。
図2図1の凹状部近傍の拡大図である。
図3】一実施形態による凹状部の下方側から見た斜視図である。
図4】凹部近傍の部分拡大図である。
図5】凹部が設けられていない状態における冷却フィンの上流側の走行風の流れを示した図である。
図6】凹部が設けられている状態における冷却フィンの上流側の走行風の流れを示した図である。
図7】凹部が設けられていない状態における走行風の速度(風速)の高さ方向における変化と、凹部が設けられている状態における走行風の速度(風速)の高さ方向における変化との比較を示した図である。
図8】シミュレーション結果に基づく、凹部が設けられていない状態における冷却フィンの下流側の温度上昇と、凹部が設けられている状態における冷却フィンの下流側の温度上昇とを比較したグラフである。
図9】測定値に基づく、凹部が設けられていない状態における冷却フィンの下流側の温度上昇と、凹部が設けられている状態における冷却フィンの下流側の温度上昇とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1図6を参照して、本実施形態による鉄道車両10の構成について説明する。鉄道車両10は、複数の車両が編成された状態で走行する鉄道車両である。
【0024】
(鉄道車両の構成)
鉄道車両10は、図1に示すように、交流電源または直流電源としての架線1から供給される電力により走行するように構成されている。たとえば、鉄道車両10は、在来線の電車や高速鉄道車両である。以下では、鉄道車両10を交流電気車としての高速鉄道車両を例にして説明する。
【0025】
鉄道車両10は、図1に示すように、鉄道車両本体11と、パンタグラフ12と、電力変換部13と、誘導電動機および空調機器などの電気機器14とを備えている。
【0026】
電力変換部13は、鉄道車両本体11に搭載されている。電力変換部13は、鉄道車両本体11の底部11aに設けられている。電力変換部13は、半導体素子などを含むコンバータおよびインバータである。
【0027】
パンタグラフ12は、架線1から電力を受け取る役割を有する。電力変換部13は、図示しない変圧器により変圧されたパンタグラフ12からの交流電圧を、所望の3相交流電圧および周波数に変換して電気機器14などに出力する役割を有する。電力変換部13に含まれる半導体素子は、電力変換動作に伴う電力損失に起因して発熱する。
【0028】
また、鉄道車両10は、鉄道車両本体11の下部に設けられた上に凸の凹状部15を備える。また、鉄道車両10は、凹状部15に配置される複数の板状の冷却フィン16を備える。複数の冷却フィン16の各々は、鉄道車両10の下部から鉄道車両本体11の外部(大気側)に突出するように設けられている。
【0029】
冷却フィン16は、鉄道車両本体11の走行風により電力変換部13に含まれる半導体素子を冷却する。具体的には、冷却フィン16は、電力変換部13に取り付けられる冷却板16a(図2参照)から下方(Z2側)に突出するように設けられている。冷却板16aの他方面(冷却フィン16が取り付けられている面とは反対側の面)には、半導体素子が、半導体素子から発生する熱が冷却板16aに伝わるように、取り付けられている。また、複数の冷却フィン16は、鉄道車両本体11の走行方向(X方向)に沿って延びるとともに枕木方向(Y方向)に間隔を隔てて配置(図3参照)されている。なお、冷却フィン16および冷却板16aは、特許請求の範囲の「冷却部」の一例である。
【0030】
なお、鉄道車両10は、X1方向側およびX2方向側のいずれにも走行可能である。鉄道車両10がX1方向側に走行する場合においては、走行風がX1方向側からX2方向側に流れる。すなわち、鉄道車両10がX1方向側に走行する場合においては、X1方向側が走行風の上流側となり、X2方向側が走行風の下流側となる。また、鉄道車両10がX2向側に走行する場合においては、走行風がX2方向側からX1方向側に流れ、X2方向側が走行風の上流側となり、X1方向側が走行風の下流側となる。
【0031】
(凹状部の構成)
図2に示すように、凹状部15は、冷却フィン16が配置される平坦部151を含む。平坦部151は、X方向において、凹状部15の中央に設けられている。また、凹状部15は、鉄道車両本体11の走行方向において平坦部151を挟むように配置される一対の傾斜面部152を含む。一対の傾斜面部152は、走行方向(X方向)において平坦部151に隣接して配置される。具体的には、平坦部151のX1方向側には、傾斜面部152aが隣接して配置され、平坦部151のX2方向側には、傾斜面部152bが隣接して配置される。なお、平坦部151および傾斜面部152は、金属製である。
【0032】
凹状部15には、鉄道車両本体11側に凹む凹部Rが設けられている。本実施形態では、凹状部15の一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)の各々が、凹部Rを有する。凹部Rは、走行風の流れ方向の幅が20mm以上40mm以下であって、5mm以上の深さを備えている。凹部Rは、冷却フィン16に対して走行風の上流側に設けられている。具体的には、凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)のうち、鉄道車両10がX1方向側に走行する場合における走行風の上流側(X1方向側)に配置される傾斜面部152aに設けられる。また、凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)のうち、鉄道車両10がX2方向側に走行する場合における走行風の上流側(X2方向側)に配置される傾斜面部152bにも設けられる。すなわち、凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)の両方に設けられるとともに、冷却フィン16に対して、走行方向における凹状部15の両側(X1方向側およびX2方向側)に設けられている。そして、凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)の各々に一体的に設けられている。
【0033】
凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)のうち、X1方向側の傾斜面部152aにおいて、枕木方向(Y1方向側)から見て傾斜面部152a側に生じる空気の渦の上流側であって、走行方向(X方向)における中央C1より平坦部151側(X2方向側)に配置されている。また、凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)のうち、X2方向側の傾斜面部152bにおいて、枕木方向(Y1方向側)から見て傾斜面部152b側に生じる空気の渦の上流側であって、走行方向(X方向)における中央C2より平坦部151側(X1方向側)に配置されている。
【0034】
また、凹部Rは、冷却部に設けられる冷却フィン16に対して走行風の上流側であって、平坦部151の端部から20mm以上40mm以下の位置に設けられている。つまり、凹部Rは、平坦部151と傾斜面部152との境界から、X1方向側(またはX2方向側)に、20mm以上40mm以下の距離の分、離間した位置に配置されている。また、20mm以上40mm以下の距離とは、傾斜面部152に沿った距離を意味する。
【0035】
凹部Rは、枕木方向(Y1方向側)から見て、隅部が丸みを有するように凹むように形成されている。具体的には、凹部Rは、枕木方向(Y1方向側)から見て半円状(円弧状)に凹むように形成されている。なお、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)の各々に設けられる凹部Rの形状および配置位置等の特徴点は、互いに同一である。
【0036】
また、鉄道車両10には、X方向において凹状部15と隣接(連続)するように設けられる本体底面部18が設けられている。なお、冷却フィン16の下方側の端部16b(図2参照)は、鉄道車両10の本体底面部18よりも上方側(Z1方向側)に設けられている。
【0037】
図3に示すように、凹部Rは、枕木方向(Y方向)に沿って延びるように形成されている。具体的には、凹部Rは、Y方向に沿って直線状に延びる溝である。
【0038】
(冷却フィンの上流側における走行風の流れ)
冷却フィン16の上流側における走行風の流れ(流線)について、図4図6を参照して説明する。なお、図4図6に示す例では、X1方向側が鉄道車両10の走行方向、かつ、走行風の上流側であり、X2方向側が走行風の下流側である。
【0039】
図4に示すように、凹状部15では、凹部Rの上流側(X1方向側)および下流側(X2方向側)において、走行風の流れが、せん断流になる。具体的には、凹部Rの上流側(X1方向側)および下流側(X2方向側)において、凹状部15の壁面B近傍において、走行風の速度が小さい(遅い)境界層が形成される。すなわち、凹部Rの上流側(X1方向側)および下流側(X2方向側)において、凹状部15の壁面B近傍の走行風(空気)の速度分布は、流れの粘性と主流との相対速度により速度勾配を有する。本実施形態では、傾斜面部152(傾斜面部152a)に凹部Rを設けることにより、凹部Rに対応する箇所の走行風の流れが、自由せん断流に変化する。具体的には、傾斜面部152(傾斜面部152a)に凹部Rを設けることにより、凹部R近傍においては、凹部Rの上流側(X1方向側)および下流側(X2方向側)に比べて、凹状部15の壁面B側における走行風の速度(風速)が大きく(速く)なる。そして、凹状部15の壁面B側における走行風の速度が大きくなることによって、質量保存則に基づいて、凹状部15の壁面Bから離れた領域における風速が小さく(遅く)なる。その結果、凹状部15の壁面B側への空気の流れが生じて、凹状部15の壁面B側(鉄道車両本体11側)に引き寄せられるように、走行風の主流(図4の実線参照)が傾斜面部152(傾斜面部152a)側に移動する。
【0040】
次に、凹部Rが設けられていない場合(図5参照)と、凹部Rが設けられている場合(図6参照)との、冷却フィン16の上流側(X1方向側)における走行風(空気)の流れの比較について説明する。なお、図5および図6の各々では、凹部Rが設けられていない場合における走行風(空気)の流れが破線により示されている。また、図6では、凹部Rが設けられている場合における走行風(空気)の流れが実線により示されている。
【0041】
図5に示す比較例では、地面(図示せず)と鉄道車両本体11との間の空気が流れる流路が凹状部15により急激に拡大されることに起因して、走行風(空気)が凹状部15に入りにくくなる。そのため、走行風の流れ(図5の破線参照)は、鉄道車両本体11側から離れるように、傾斜面部152aおよび平坦部151から地面側(Z2方向側)に離間(剥離)して形成されている。このため、凹状部15の空気の淀み(滞留)に起因する渦V1が、冷却フィン16の上流(X1方向側)の傾斜面部152aと平坦部151との境界近傍に形成される。渦V1は、枕木方向(Y方向)に沿って回転軸が延びるように形成される。そして、渦V1が形成されることによって、冷却フィン16に走行風が流入しにくくなってしまう。
【0042】
一方で、本実施形態のように、凹状部15において渦の上流(走行風の流れの上流)に凹部Rを設けることにより、図6に示すように、冷却フィン16の上流(X1方向側)の傾斜面部152aと平坦部151との境界近傍において、渦V2が形成される領域は、比較例において渦V1(図5参照)が形成される領域に比べて小さくなる。そして、渦V2が形成される領域が縮小して、走行風の流れ(図6の実線参照)が、鉄道車両本体11側に引き寄せられる(近づく)ことによって、冷却フィン16に走行風が流入し易くなる。本実施形態では、傾斜面部152aに凹部Rを設けることによって、渦V2が形成される領域よりも上流側(X1方向側)において、走行風の流れを鉄道車両本体11側に引き寄せることができる。これにより、平坦部151に凹部Rを設ける場合に比べて、走行風の流れを鉄道車両本体11側により効率よく引き寄せることができるので、冷却フィン16に走行風をより効率よく流入させることができる。
【0043】
図7に示すように、凹部Rが凹状部15に設けられている場合(本実施形態)においては、凹部Rが設けられていない場合(比較例)に比べて、冷却フィン16の冷却板16a側(上方側)における走行風の速度(風速)が大きくなる。なお、図7のグラフの縦軸である高さとは、Z方向における位置を意味する。また、図7のグラフの横軸である風速とは、枕木方向(Y方向)の各位置において、走行方向(X方向)に流れる走行風の速度(風速)の平均値を意味する。
【0044】
(シミュレーション結果および温度測定結果)
凹部Rが設けられている場合(本実施形態)の冷却フィン16の下流側における温度上昇を、シミュレーションおよび温度測定によって確認した。図8に示すように、シミュレーションによる解析結果において、凹部Rが設けられていない場合(比較例)よりも、凹部Rが設けられている場合(本実施形態)が、冷却フィン16の下流側における温度上昇が小さいことが確認された。また、温度測定結果(実測値)においても、図9に示すように、凹部Rが設けられていない場合(比較例)よりも、凹部Rが設けられている場合(本実施形態)が、冷却フィン16の下流側における温度上昇が小さいことが確認された。
【0045】
上記のように、シミュレーションによる解析結果(図8参照)、および、温度測定結果(図9参照)のいずれからも、凹状部15の傾斜面部152に凹部Rを設けることによって、走行風が冷却フィン16に効果的に流入して、電力変換部13の冷却をより効率よく行えることが確認された。
【0046】
より詳細なシミュレーションによる解析および評価試験によれば、特に、傾斜面部152上であって、凹部Rの端部と平坦部151の端部との間の距離が20mm以上40mm以下となる位置に凹部Rを設けた場合に、電力変換部13の冷却をより効率よく行えることが確認された。そして、凹部Rの端部が平坦部151の端部から20mmよりも近い位置に凹部Rを設けた場合、冷却フィン16の温度上昇抑制効果が小さくなることが確認された。また、凹部Rの端部が平坦部151の端部から40mmよりも遠い位置に凹部Rを設けた場合も、冷却フィン16の温度上昇抑制効果が小さくなることが確認された。
【0047】
また、より詳細なシミュレーションによる解析および評価試験によれば、走行風が流れる方向における凹部Rの幅が20mm以上40mm以下であって、凹部Rの深さが5mm以上45mm以下の場合に、電力変換部13の冷却をより効率よく行えることが確認された。
【0048】
凹部Rの幅が20mmよりも小さい場合、冷却フィン16の温度上昇抑制効果が小さくなることが確認された。凹部Rの幅が20mmよりも小さい場合、鉄道車両本体11側への走行風の引き寄せ効果が低減するためと考えられる。また、凹部Rの幅が40mmよりも大きい場合も、冷却フィン16の温度上昇抑制効果が小さくなることが確認された。凹部Rの幅が40mmよりも大きくなると、傾斜面部152に沿って流れる走行風と凹部R内に生じる循環風との速度差が小さくなり、走行風の引き寄せ効果が低減すると考えられる。
【0049】
また、凹部Rの深さが5mmよりも小さい場合、鉄道車両本体11側への走行風の引き寄せ効果が低減すると考えられる。一方、凹部Rの深さを5mm以上にすると冷却フィン16の温度上昇抑制効果が向上するが、凹部Rの深さを45mmより大きくしても鉄道車両本体11側への走行風の引き寄せ効果は高まらない。したがって、傾斜面部152を形成する部材の加工性を考慮して、凹部Rの深さを45mmまでとするのが良い。
【0050】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0051】
本実施形態では、上記のように、凹状部15は、冷却フィン16が配置される平坦部151、および、鉄道車両本体11の走行方向(X方向)において平坦部151を挟むように配置される一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)を含む。そして、一対の傾斜面部152は、冷却フィン16に対して走行風の上流側(X1方向側)に設けられ、鉄道車両本体11側(Z1方向側)に凹む凹部Rを有する。これにより、一対の傾斜面部152が、冷却フィン16に対して走行風の上流側(X1方向側)に設けられる凹部Rを有することによって、走行風を鉄道車両本体11側に引き寄せることができる。その結果、鉄道車両本体11の下部の凹状部15に配置される冷却フィン16に走行風を流入させ易くすることができる。さらに、冷却フィン16による放熱をより効率よく行うことができるので、冷却フィン16の小型化を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、凹部Rは、走行風の流れ方向の幅が20mm以上40mm以下であって、5mm以上の深さを備えている。これにより、電力変換部13の冷却をより効率よく行うことができる。また、走行風の主流を鉄道車両本体11側に引き寄せることと、走行風が凹部Rに侵入することによる圧力損失とのバランスをとることができる。また、凹部Rの深さを5mmよりも大きくすると、凹部Rの加工コストが高くなる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)のうち、鉄道車両10がX1方向側に走行する場合における走行風の上流側(X1方向側)の傾斜面部152aに設けられている。これにより、鉄道車両10がX1方向側に走行する場合において、走行風の下流側(X2方向側)の傾斜面部152bに凹部Rを設ける場合に比べて、より効率よく走行風を鉄道車両本体11側に引き寄せることができるので、冷却フィン16に走行風をより効率よく流入させることができる。また、凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)のうち、鉄道車両10がX2方向側に走行する場合における走行風の上流側(X2方向側)の傾斜面部152bに設けられている。これにより、鉄道車両10がX2方向側に走行する場合において、走行風の下流側(X1方向側)の傾斜面部152aに凹部Rを設ける場合に比べて、より効率よく走行風を鉄道車両本体11側に引き寄せることができるので、冷却フィン16に走行風をより効率よく流入させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)の両方に設けられている。これにより、鉄道車両本体11の進行方向によらず、冷却フィン16の走行風の上流側に凹部Rを配置することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)のうち、鉄道車両10がX1方向側に走行する場合における走行風の上流側(X1方向側)の傾斜面部152aにおいて、枕木方向(Y1方向側またはY2方向側)から見て傾斜面部152a側に生じる空気の渦の上流側であって、走行方向(X方向)における中央C1より平坦部151側に配置されている。これにより、鉄道車両10がX1方向側に走行する場合において、冷却フィン16の上流側、かつ、傾斜面部152aの冷却フィン16に近い位置において、走行風を鉄道車両本体11側に引き寄せることができるので、より効率よく冷却フィン16に走行風を流入させることができる。また、凹部Rは、傾斜面部152aおよび152bのうち、鉄道車両10がX2方向側に走行する場合における走行風の上流側(X2方向側)の傾斜面部152bにおいて、枕木方向(Y1方向側またはY2方向側)から見て傾斜面部152b側に生じる空気の渦の上流側であって、走行方向(X方向)における中央C2より平坦部151側に配置されている。これにより、鉄道車両10がX2方向側に走行する場合において、冷却フィン16の上流側、かつ、傾斜面部152bの冷却フィン16に近い位置において、走行風を鉄道車両本体11側に引き寄せることができるので、より効率よく冷却フィン16に走行風を流入させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、凹部Rは、冷却部に設けられる冷却フィン16に対して走行風の上流側であって、平坦部151の端部から20mm以上40mm以下の位置に設けられている。これにより、電力変換部13の冷却をより効率よく行うことができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)の各々に一体的に設けられている。これにより、凹部Rが、傾斜面部152aおよび152bの各々とは別個の部材によって設けられる場合に比べて、部品点数の増加を抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、凹部Rは、枕木方向(Y方向)に沿って、傾斜面部152の一端から他端に延びるように形成されている。これにより、枕木方向(Y方向)に渡って、冷却フィン16に流入する走行風量に偏りが生じるのを抑制することができる。また、凹部Rが、傾斜面部152の一端から他端に延びずに傾斜面部152の一端から他端までの途中のみに形成されている場合と比べて、容易に、凹部Rを形成することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、凹部Rは、枕木方向(Y1方向側またはY2方向側)から見て、隅部が丸みを有するように凹むように形成されている。これにより、枕木方向から見て矩形状に凹部Rを凹ませる場合に比べて、凹部Rをプレス加工などにより容易に形成することができる。
【0060】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0061】
上記実施形態では、凹部Rは、傾斜面部152aおよび152bに1つずつ設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、凹部は、1つの傾斜面部に(2つ以上)複数設けられてもよい。また、凹部は、走行方向において、複数(2つ以上)並ぶように、1つの傾斜面部に複数設けられてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)が、凹部を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、一対の傾斜面部および平坦部の少なくとも一方が、凹部を有していればよい。たとえば、凹状部の平坦部が凹部を有していてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)の両方に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、凹部は、一対の傾斜面部のうち、少なくとも走行風の上流側の傾斜面部に設けられていればよい。すなわち、凹部は、一対の傾斜面部のうち、一方のみに設けられていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、凹部Rは、傾斜面部152aにおいて、枕木方向(Y1方向側またはY2方向側)から見て、中央C1より平坦部151側に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、凹部は、走行風の上流側の傾斜面部において、枕木方向から見て走行方向における中央に配置されていてもよい。また、凹部は、走行風の上流側の傾斜面部において、枕木方向から見て走行方向における中央よりも、走行風の上流側に配置されていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、凹部Rは、一対の傾斜面部152(傾斜面部152aおよび152b)の各々に一体的に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、一対の傾斜面部のうち、一方の傾斜面部において、凹部が一体的に設けられてもよい。また、凹部は、平坦部に一体的に設けられてもよい。また、凹部は、一対の傾斜面部または平坦部とは、別個の部材によって形成されてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、凹部Rは、枕木方向(Y方向)に沿って延びるように形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、凹部は、地面側(Z2方向側)から見て、弓状に形成されてもよい。また、複数(2つ以上)の凹部が、枕木方向に並ぶように設けられてもよい。また、複数(2つ以上)の凹部が、千鳥状(ZIGZAG状)に設けられてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、凹部Rは、枕木方向(Y1方向側またはY2方向側)から見て半円状に凹むように形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、凹部は、枕木方向から見て矩形状に凹むように形成されてもよい。また、凹部Rは、枕木方向から見て、隅部が丸みを有する矩形状に凹むように形成されてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、凹状部15の傾斜面部152a(傾斜面部152b)において、渦の上流側(走行風の上流側)に凹部Rを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。凹状部15の傾斜面部152a(傾斜面部152b)に発生する渦の位置と大きさは、鉄道車両10に設けられた凹状部15の形状や車両速度の影響を受ける。したがって、凹部Rは、電力変換部13に含まれる半導体素子に関連する温度が所定値以上となる鉄道車両10の走行速度において渦が発生する位置よりも上流側(走行風の上流側)に設けられても良い。
【0069】
鉄道車両10の走行速度において渦が発生する位置は、実験やシミュレーションにより求めることができる。半導体素子に関連する温度は、例えば、半導体素子や冷却フィン16と冷却板16aとを含む冷却部の測定温度および推定温度であってよい。半導体素子に関連する温度が所定値以上となる鉄道車両10の走行速度は、例えば、鉄道車両10の走行状態において、半導体素子に関連する温度が最も高くなる車両速度および半導体素子に関連する最も高い温度に対して一定の余裕を持たせた温度になる車両速度であってよい。
【0070】
また、上記実施形態では、凹状部15の傾斜面部152a(傾斜面部152b)において、渦の上流側(走行風の上流側)に凹部Rを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、凹部Rは、渦が発生する位置に代えて、走行風が傾斜面部152a(傾斜面部152b)から剥離する位置よりも上流側(走行風の上流側)に設けられてもよい。走行風が傾斜面部152a(傾斜面部152b)から剥離する位置は、電力変換部13に含まれる半導体素子に関連する温度が所定値以上となる鉄道車両10の走行速度において走行風が傾斜面部152a(傾斜面部152b)から剥離する位置であってよい。
【0071】
鉄道車両10の走行速度において走行風が傾斜面部152a(傾斜面部152b)から剥離する位置は、実験やシミュレーションにより求めることができる。半導体素子に関連する温度、および半導体素子に関連する温度が所定値以上となる鉄道車両10の走行速度は、上記と同様である。
【0072】
また、凹部Rは、電力変換部13に含まれる半導体素子の損失が所定値以上となる鉄道車両10の走行速度のときに流れる走行風が傾斜面部152a(傾斜面部152b)から剥離する位置よりも上流側(走行風の上流側)に設けられてもよい。半導体素子に関連する損失は、例えば、電力変換部13に含まれる個々の半導体素子の損失や電力変換部13に含まれるすべてのまたは一部の半導体素子の損失の合計であってよい。電力変換部13に含まれる半導体素子の損失は、実験やシミュレーションにより求めることができる。
【0073】
傾斜面部152a(傾斜面部152b)において、凹状部15に生じる渦の位置や電力変換部13に含まれる半導体素子に関連する温度および半導体素子関する損失が所定値以上となる鉄道車両10の走行速度のときに流れる走行風が傾斜面部152a(傾斜面部152b)から剥離する位置よりも上流側(走行風の上流側)に凹部Rを設ければ、鉄道車両本体11の下部の凹状部15に配置される冷却部に走行風を流入させ易くすることができ、冷却部の冷却性能を高めることができるとともに、半導体素子の温度上昇を抑制することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、鉄道車両10が在来線の電車や高速鉄道車両である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、鉄道車両は、気動車(エンジンを搭載した列車)であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 鉄道車両
11 鉄道車両本体
13 電力変換部
15 凹状部
16 冷却フィン(冷却部)
16a 冷却板(冷却部)
151 平坦部
152、152a、152b 傾斜面部
C1 中央
C2 中央
R 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9