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  • 特開-コーティング剤及び樹脂部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157456
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】コーティング剤及び樹脂部材
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/07 20060101AFI20241030BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20241030BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241030BHJP
【FI】
C09D183/07
C09D4/02
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071841
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 咲也子
(72)【発明者】
【氏名】宗像 秀典
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DL101
4J038FA111
4J038KA04
4J038NA11
4J038PA17
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】樹脂からなる基材との密着性に優れ、かつ、傷に対する耐久性の高いコーティング膜を簡素な作業により形成することができるコーティング剤、及びこのコーティング剤から形成されたコーティング膜を有する樹脂部材を提供する。
【解決手段】コーティング剤は、下記組成式で表されるTa構造単位及びTc構造単位を備えたシルセスキオキサンと、(メタ)アクリレート(ただし、シルセスキオキサンを除く)と、を含む膜形成成分と、膜硬化成分と、を含む。シルセスキオキサン中におけるTa構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対するTa構造単位の含有量のモル比率が0モル%超え45モル%以下である。シルセスキオキサンの重量平均分子量が2,000以上である。
Ta構造単位:(RSiO3/2
Tc構造単位:(RSiO3/2
(ただし、Rは(メタ)アクリロイル基であり、Rは1価の炭化水素基である。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式(1)で表されるTa構造単位と、下記組成式(2)で表されるTc構造単位とを備えたシルセスキオキサンと、
(メタ)アクリレート(ただし、前記シルセスキオキサンを除く)と、を含む膜形成成分と、
紫外光が照射された場合に塩基及びラジカルを発生させることができるように構成された膜硬化成分と、を含み、
前記シルセスキオキサン中における前記Ta構造単位の含有量と前記Tc構造単位の含有量との合計に対する前記Ta構造単位の含有量のモル比率が0モル%超え45モル%以下であり、
前記シルセスキオキサンの重量平均分子量が2,000以上である、コーティング剤。
(RSiO3/2) ・・・(1)
(RSiO3/2) ・・・(2)
(ただし、前記組成式(1)におけるRはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、前記組成式(2)におけるRは1価の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記シルセスキオキサン中における前記Ta構造単位の含有量と前記Tc構造単位の含有量との合計に対する前記Ta構造単位の含有量のモル比率が20モル%以上45モル%以下である、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
前記シルセスキオキサンの重量平均分子量が2,000以上15,000以下である、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項4】
前記シルセスキオキサンは、さらに、下記組成式(3)で表されるQ構造単位を含んでおり、前記シルセスキオキサン中における前記Ta構造単位の含有量と前記Tc構造単位の含有量と前記Q構造単位の含有量との合計に対する前記Q構造単位の含有量のモル比率が0モル%超え25モル%以下である、請求項1に記載のコーティング剤。
(SiO4/2) ・・・(3)
【請求項5】
前記シルセスキオキサンの含有量が前記(メタ)アクリレート100質量部に対して30質量部以上150質量部以下である、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項6】
前記膜硬化成分は、紫外光を照射した際に塩基及びラジカルの両方を発生させることができるように構成された光塩基発生剤を含んでいる、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項7】
前記膜硬化成分は、紫外光を照射した際に塩基を発生させることができるように構成された光塩基発生剤と、紫外光を照射した際にラジカルを発生させることができるように構成された光ラジカル重合開始剤を含んでいる、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項8】
前記(メタ)アクリレートはイソシアヌル環を有している、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項9】
樹脂からなる基材と、
前記基材上に形成されたコーティング膜と、を有する樹脂部材であって、
前記コーティング膜が請求項1~8のいずれか1項に記載のコーティング剤の硬化物から構成されており、
前記コーティング膜は、前記樹脂部材の表面に露出した表面層と、
前記表面層と前記基材との間に介在する内層とを有しており、
前記表面層におけるSi原子の平均濃度が前記内層におけるSi原子の平均濃度よりも高い、樹脂部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤及び樹脂部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や鉄道等の車両を構成する部品には、鋼やアルミニウム、ガラス等の無機材料が使用されてきた。近年では、車両の軽量化を目的として、無機材料からなる部品から、プラスチック等の有機材料からなる部品への置き換えが進んでいる。しかし、有機材料は、無機材料に比べて軽量である反面、軟らかく、傷がつきやすい。
【0003】
そこで、有機材料からなる部品の傷に対する耐久性を向上させるために、部品の表面に硬い皮膜を形成する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、樹脂製基材と、樹脂製基材の表面に形成されたプライマー層と、プライマー層の上に形成されたハードコート層とを有する被覆部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-240294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の被覆部材のように、プライマー層とハードコート層との2層構造からなる皮膜を形成するに当たっては、樹脂製基材上にプライマーを塗布する工程、プライマーを乾燥させてプライマー層を形成する工程、プライマー層上にコーティング剤を塗布する工程及びコーティング剤を硬化させてハードコート層を形成する工程を順次行う必要がある。そのため、皮膜の形成作業が煩雑になるとともに、皮膜の形成作業に要するコストの増大を招いている。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、樹脂からなる基材との密着性に優れ、かつ、傷に対する耐久性の高いコーティング膜を簡素な作業により形成することができるコーティング剤、及びこのコーティング剤から形成されたコーティング膜を有する樹脂部材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、下記組成式(1)で表されるTa構造単位と、下記組成式(2)で表されるTc構造単位とを備えたシルセスキオキサンと、
(メタ)アクリレート(ただし、前記シルセスキオキサンを除く)と、を含む膜形成成分と、
紫外光が照射された場合に塩基及びラジカルを発生させることができるように構成された膜硬化成分と、を含み、
前記シルセスキオキサン中における前記Ta構造単位の含有量と前記Tc構造単位の含有量との合計に対する前記Ta構造単位の含有量のモル比率が0モル%超え45モル%以下であり、
前記シルセスキオキサンの重量平均分子量が2,000以上である、コーティング剤にある。
(RSiO3/2) ・・・(1)
(RSiO3/2) ・・・(2)
【0008】
ただし、前記組成式(1)におけるRはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、前記組成式(2)におけるRは1価の炭化水素基である。
【0009】
また、本発明の他の態様は、樹脂からなる基材と、
前記基材上に形成されたコーティング膜と、を有する樹脂部材であって、
前記コーティング膜が前記の態様のコーティング剤の硬化物から構成されており、
前記コーティング膜は、前記樹脂部材の表面に露出した表面層と、前記表面層と前記基材との間に介在する内層とを有しており、前記表面層におけるSi原子の平均濃度が前記内層におけるSi原子の平均濃度よりも高い、樹脂部材にある。
【発明の効果】
【0010】
前記コーティング剤における膜形成成分は、前記特定のシルセスキオキサンと、(メタ)アクリレートと、を含んでいる。また、前記コーティング剤における膜硬化成分は、紫外光が照射された場合に塩基及びラジカルを発生させることができるように構成されている。かかるコーティング剤に紫外光を照射すると、膜硬化成分から塩基とラジカルとが発生する。膜硬化成分から発生した塩基は、ゾルゲル反応によってシルセスキオキサンを縮合させることができる。また、膜硬化成分から発生したラジカルは、ラジカル重合によって(メタ)アクリレート及びシルセスキオキサンを重合させることができる。
【0011】
従って、前記コーティング剤に紫外光を照射することにより、ゾルゲル反応とラジカル重合とを並行して進行させることができる。その結果、コーティング膜の表面にシルセスキオキサンに由来する無機成分を偏析させ、傷に対する耐久性を向上させるとともに、コーティング膜における基材の近傍に有機成分を偏析させ、基材との密着性を向上させることができる。また、前記コーティング剤は、基材にコーティング剤を塗布した後紫外光を照射するという簡素な作業により、樹脂からなる基材との密着性に優れ、かつ、傷に対する耐久性の高いコーティング膜を形成することができる。
【0012】
以上のように、前記の態様によれば、樹脂からなる基材との密着性に優れ、かつ、傷に対する耐久性の高いコーティング膜を簡素な作業により形成することができるコーティング剤、及びこのコーティング剤から形成されたコーティング膜を有する樹脂部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実験例1における、コーティング剤A1を用いて作製されたテストピースのSi原子のマッピング像である。
図2図2は、実験例1における、コーティング剤A2を用いて作製されたテストピースのSi原子のマッピング像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(コーティング剤)
前記コーティング剤は、硬化することによってコーティング膜を形成する膜形成成分と、膜形成成分を硬化させるための膜硬化成分とを有している。以下、前記コーティング材中に含まれる各成分の構成を説明する。
【0015】
〔膜形成成分〕
膜形成成分には、シルセスキオキサンと、(メタ)アクリレートと、が含まれている。
【0016】
・シルセスキオキサン
膜形成成分中に含まれるシルセスキオキサンは、下記組成式(1)で表されるTa構造単位と、下記組成式(2)で表されるTc構造単位とを有している。
(RSiO3/2) ・・・(1)
(RSiO3/2) ・・・(2)
【0017】
ただし、前記組成式(1)におけるRはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、前記組成式(2)におけるRは1価の炭化水素基である。前記組成式(2)におけるRは、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等であってもよい。前述した効果をより確実に得る観点からは、前記組成式(2)におけるRは、1価の飽和炭化水素基であることが好ましく、炭素数18以下の飽和炭化水素基であることがより好ましく、メチル基またはエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0018】
前記シルセスキオキサンにおけるSi原子の一部には、水酸基(-OH)やアルコキシ基(-OR)が結合している。そのため、前記シルセスキオキサンは、膜硬化成分から発生した塩基によって縮合し、コーティング膜中に無機成分を形成することができる。また、シルセスキオキサン中の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリレート中の(メタ)アクリロイル基とともに膜硬化成分から発生したラジカルによって重合することができる。
【0019】
前記シルセスキオキサン中におけるTa構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対するTa構造単位の含有量のモル比率は0モル%超え45モル%以下である。また、前記シルセスキオキサンの重量平均分子量は2,000以上である。前記シルセスキオキサン中におけるTa構造単位の含有量を前記特定の範囲とし、かつ、シルセスキオキサンの重量平均分子量を前記特定の範囲とすることにより、硬化後のコーティング膜の表面にシルセスキオキサンに由来する無機成分を偏析させることができる。その結果、コーティング膜の表面に無機成分を主成分とする表面層を形成するとともに、表面層と基材との間に有機成分を主成分とする内層を形成することができる。このような2層構造を有するコーティング膜は、樹脂からなる基材との密着性及び傷に対する耐久性に優れている。
【0020】
シルセスキオキサン中におけるTa構造単位の含有量がTa構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対して45モル%よりも多い場合には、硬化後のコーティング膜において、無機成分がコーティング膜の全体に均一に分布しやすくなり、傷に対する耐久性の低下を招くおそれがある。また、この場合には、コーティング膜の表面にしわが発生しやすくなり、コーティング膜を形成した樹脂部材の外観の悪化を招くおそれがある。これらの問題を回避する観点から、シルセスキオキサン中におけるTa構造単位の含有量はTa構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対して45モル%以下とする。
【0021】
シルセスキオキサン中におけるTa構造単位の含有量は、Ta構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対して5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましく、20モル%以上であることが特に好ましく、25モル%以上であることが最も好ましい。この場合には、コーティング膜の耐摩耗性をより向上させることができる。
【0022】
シルセスキオキサン中におけるTa構造単位の含有量の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述したTa構造単位の含有量の上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、シルセスキオキサン中におけるTa構造単位の含有量の好ましい範囲は、Ta構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対して5モル%以上45モル%以下であってもよく、10モル%以上45モル%以下であってもよく、15モル%以上45モル%以下であってもよく、20モル%以上45モル%以下であってもよく、25モル%以上45モル%以下であってもよい。
【0023】
シルセスキオキサンの重量平均分子量が2,000未満の場合には、硬化後のコーティング膜において、無機成分がコーティング膜の全体に均一に分布しやすくなり、傷に対する耐久性の低下を招くおそれがある。また、この場合には、コーティング膜の耐摩耗性の低下を招くおそれもある。シルセスキオキサンの重量平均分子量を2,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは3,000以上、さらに好ましくは3,500以上、特に好ましくは4,000以上とすることにより、これらの問題を容易に回避することができる。
【0024】
一方、シルセスキオキサンの重量平均分子量が過度に大きくなると、コーティング剤の粘度が過度に上昇し、コーティング剤を塗布する作業における作業性の悪化を招くおそれがある。かかる問題を回避する観点から、シルセスキオキサンの重量平均分子量は、25,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましく、15,000以下であることがさらに好ましく、13,000以下であることが特に好ましい。
【0025】
シルセスキオキサンの重量平均分子量の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述したシルセスキオキサンの重量平均分子量の上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、シルセスキオキサンの重量平均分子量の好ましい範囲は、2,000以上25,000以下であってもよく、2,000以上20,000以下であってもよく、2,500以上15,000以下であってもよく、3,000以上15,000以下であってもよく、4,000以上15,000以下であってもよく、4,000以上13,000以下であってもよい。
【0026】
シルセスキオキサンは、さらに、下記組成式(3)で表されるQ構造単位を含んでいてもよい。この場合、シルセスキオキサン中におけるTa構造単位の含有量とTc構造単位の含有量とQ構造単位の含有量との合計に対するQ構造単位の含有量のモル比率は0モル%超え25モル%以下であることが好ましい。
(SiO4/2) ・・・(3)
【0027】
シルセスキオキサン中にQ構造単位を導入することにより、コーティング膜の耐摩耗性をより向上させることができる。コーティング膜の耐摩耗性を高める観点からは、シルセスキオキサン中におけるQ構造単位の含有量は、Ta構造単位の含有量とTc構造単位の含有量とQ構造単位の含有量との合計に対して1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、3モル%以上であることがさらに好ましい。
【0028】
一方、シルセスキオキサン中におけるQ構造単位の含有量が過度に多くなると、コーティング膜中にシルセスキオキサンの凝集体が生じやすくなり、コーティング膜の外観の悪化や耐摩耗性の低下などを招くおそれがある。シルセスキオキサン中におけるQ構造単位の含有量を、Ta構造単位の含有量とTc構造単位の含有量とQ構造単位の含有量との合計に対して好ましくは25モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下、特に好ましくは10モル%以下、最も好ましくは8モル%以下とすることにより、これらの問題を容易に回避することができる。
【0029】
シルセスキオキサン中におけるQ構造単位の含有量の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述したQ構造単位の含有量の上限と下限とを任意に組み合わせることができる。例えば、シルセスキオキサン中におけるQ構造単位の含有量の好ましい範囲は、Ta構造単位の含有量とTc構造単位の含有量とQ構造単位の含有量との合計に対して1モル%以上20モル%以下であってもよく、1モル%以上15モル%以下であってもよく、2モル%以上10モル%以下であってもよく、2モル%以上8モル%以下であってもよく、3モル%以上8モル%以下であってもよい。
【0030】
コーティング剤中におけるシルセスキオキサンの含有量は、(メタ)アクリレート100質量部に対して30質量部以上150質量部以下であることが好ましく、40質量部以上125質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。この場合には、無機成分による硬さ向上の効果と有機成分による密着性向上及び柔軟性向上の効果とをよりバランス良く得ることができる。
【0031】
前記コーティング剤に用いられるシルセスキオキサンは、例えば、Ta構造単位となる(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランと、Tc構造単位となるアルキルトリアルコキシシランと、を含む複数のアルコキシシランを縮合させることにより得られる。
【0032】
Ta構造単位となる(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどを使用することができる。これらの(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランは、単独でシルセスキオキサンの合成に使用されてもよい。また、2種類以上の(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランを併用してシルセスキオキサンの合成を行うこともできる。
【0033】
Tc構造単位となるアルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシランなどを使用することができる。これらのアルキルトリアルコキシシランは、単独でシルセスキオキサンの合成に使用されてもよい。また、2種類以上のアルキルトリアルコキシシランを併用してシルセスキオキサンの合成を行うこともできる。
【0034】
シルセスキオキサンにQ構造単位を導入する場合には、前述したトリアルコキシシランに加えて、テトラアルコキシシランを用いてシルセスキオキサンの合成を行えばよい。Q構造単位となるテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを使用することができる。これらのテトラアルコキシシランは、単独でシルセスキオキサンの合成に使用されてもよい。また、2種類以上のテトラアルコキシシランを併用してシルセスキオキサンの合成を行うこともできる。
【0035】
アルコキシシランを用いてシルセスキオキサンの合成する際の反応条件等は特に限定されることはなく、公知の方法によりアルコキシシランを縮合させればよい。
【0036】
・(メタ)アクリレート
本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルをいう。ただし、前記シルセスキオキサンは(メタ)アクリレートからは除外される。膜形成成分中に含まれる(メタ)アクリレートは、膜硬化成分から発生したラジカルによってラジカル重合し、コーティング膜中に有機成分を形成することができる。また、(メタ)アクリレートは、シルセスキオキサンに含まれる(メタ)アクリロイル基と反応し、シルセスキオキサンに結合することができる。
【0037】
前記コーティング剤中に(メタ)アクリレートを配合することにより、コーティング膜に有機成分を主成分とする内層を形成することができる。その結果、基材とコーティング膜との密着性をより向上させることができる。
【0038】
膜形成成分中には、アクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される1種類の(メタ)アクリレートが含まれていてもよく、2種類以上の(メタ)アクリレートが含まれていてもよい。膜形成成分中に含まれる(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、1-メチルエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸モノエステル;1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ジエステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリロイル基を3つ以上備えた(メタ)アクリル酸エステル等を使用することができる。また、(メタ)アクリレートは、上述した化合物のモノマーであってもよいし、予め複数個のモノマーを重合させたオリゴマーであってもよい。
【0039】
(メタ)アクリレートは、1分子当たり3個以上の(メタ)アクリロイル基を有していることが好ましい。この場合には、(メタ)アクリレートに由来する構造単位とシルセスキオキサンに由来する構造単位とを網目状に重合させることができる。その結果、コーティング膜の硬さをより硬くし、傷に対する耐久性をより向上させることができる。また、耐候性をより向上させる観点からは、(メタ)アクリレートは、イソシアヌル環を有していることが好ましい。
【0040】
〔膜硬化成分〕
前記コーティング剤中には、膜形成成分の硬化反応を進行させるための膜硬化成分が含まれている。膜硬化成分は、紫外光を照射した際に、塩基とラジカルとの両方を発生させることができるように構成されている。例えば、膜硬化成分には、紫外光を照射した際に塩基とラジカルとの両方を発生させることができるように構成された光塩基発生剤が含まれていてもよい。また、膜硬化成分には、紫外光を照射した際に塩基を発生させることができるように構成された光塩基発生剤と、紫外光を照射した際にラジカルを発生させることができるように構成された光ラジカル重合開始剤との両方が含まれていてもよい。
【0041】
・光塩基発生剤
光塩基発生剤は、紫外光を照射した際に、少なくとも塩基を発生させることができるように構成されていればよい。すなわち、光塩基発生剤としては、紫外光を照射した際に塩基のみを発生させる化合物を使用することができる。また、光塩基発生剤としては、紫外光を照射した際に塩基とラジカルとの両方を発生させる化合物を使用することもできる。
【0042】
より具体的には、光塩基発生剤としては、分子構造中に、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アントラキノン環、キサンテン環、チオキサンテン環等の芳香族環を含み、紫外光を吸収する紫外光吸収部と、第一級~第三級のアミノ基、第四級アンモニウムカチオン、カルバモイル基、カルバメート結合、イミノ結合、窒素を含む複素環等の、紫外光吸収部から脱離した際に塩基となる構造単位を含み、紫外光吸収部に結合した塩基部とを有する化合物を使用することができる。
【0043】
このような化合物としては、例えば、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム=n-ブチルトリフェニルボラート、(Z)-{[ビス(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}-N-シクロヘキシル(シクロヘキシルアミノ)メタンイミニウム=テトラキス(3-フルオロフェニル)ボラート、1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム=2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート、N,N-ジエチルカルバミン酸9-アントリルメチル、(E)-1-ピペリジノ-3-(2-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オン、イミダゾール-1-カルボン酸1-(アントラキノン-2-イル)エチル、4-(メタクリロイルオキシ)ピペリジン-1-カルボン酸(2-ニトロフェニル)メチル、シクロヘキシルカルバミン酸1,2-ビス(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチル、シクロヘキシルカルバミン酸2-ニトロベンジル、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、アセトフェノン O-ベンゾイルオキシム、2-(ピペリジン-1-カルボニル)ベンズアルデヒド、ニフェジピン等が挙げられる。光塩基発生剤は、これらの中でも、シクロヘキシルカルバミン酸1,2-ビス(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチル、シクロヘキシルカルバミン酸2-ニトロベンジル、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン及び2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンからなる群より選択される1種以上の化合物であることが好ましい。
【0044】
・光ラジカル重合開始剤
膜硬化成分には、光ラジカル重合開始剤が含まれていてもよい。光ラジカル重合開始剤は、コーティング剤に紫外光を照射した際にラジカルを発生させることができるように構成されている。コーティング剤中に光ラジカル重合開始剤を配合することにより、膜形成成分のラジカル重合を進行させ、コーティング膜中に有機成分を形成することができる。
【0045】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ケトエステル系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、ベンゾイン化合物、チタノセン系化合物、アセトフェノン/ベンゾフェノンハイブリッド系光開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤およびカンファーキノン等を使用することができる。
【0046】
アセトフェノン系化合物としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパノン}および2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0047】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンおよび4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルファイド等が挙げられる。α-ケトエステル系化合物としては、例えば、メチルベンゾイルフォルメート、オキシフェニル酢酸の2-(2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステルおよびオキシフェニル酢酸の2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステル等が挙げられる。
【0048】
フォスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。アセトフェノン/ベンゾフェノンハイブリッド系光開始剤としては、例えば、1-〔4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルフィニル)プロパン-1-オン等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-〔4-(フェニルチオ)〕-1,2-オクタンジオン等が挙げられる。
【0049】
光ラジカル重合開始剤としては、これらの化合物から選択された1種の化合物を使用してもよいし、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0050】
コーティング剤中の膜硬化成分の含有量や、光塩基発生剤と光ラジカル重合開始剤との比率等は、膜硬化成分の構成等に応じて適宜設定すればよい。例えば、コーティング剤中の膜硬化成分の含有量は、膜形成成分100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の範囲から適宜設定することができる。
【0051】
〔その他の添加剤〕
前記コーティング剤中には、膜形成成分及び膜硬化成分の他に、コーティング剤の硬化を損なわない範囲で、コーティング剤用として公知の添加剤が含まれていてもよい。例えば、前記コーティング剤中には、添加剤として、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の、コーティング膜の劣化を抑制するための添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤を使用することにより、コーティング膜の耐候性を向上させる効果を期待することができる。
【0052】
また、前記コーティング剤中には、添加剤として、レベリング剤、脱泡剤等の表面調整剤が含まれていてもよい。これらの添加剤を使用することにより、基材上にコーティング剤を塗布した際に、コーティング剤の厚みを均一にすることができる。その結果、コーティング膜を備えた樹脂部材の傷に対する耐久性をより向上させる効果を期待することができる。
【0053】
(樹脂部材)
前記コーティング剤を樹脂からなる基材上に塗布した後、硬化させることにより樹脂部材を得ることができる。このようにして得られる樹脂部材は、
樹脂からなる基材と、
前記基材上に形成されたコーティング膜と、を有しており、
前記コーティング膜が前記コーティング剤の硬化物から構成されている。
また、前記コーティング膜は、前記樹脂部材の表面に露出した表面層と、
前記表面層と前記基材との間に介在する内層とを有しており、
前記表面層におけるSi原子の平均濃度が前記内層におけるSi原子の平均濃度よりも高い。
【0054】
前記コーティング膜は、前記コーティング剤の硬化物から構成されているため、主にシルセスキオキサンに由来する表面層と、主に(メタ)アクリレートに由来する内層とを有している。それ故、前記樹脂部材は、傷に対する耐久性に優れている。また、前記コーティング膜は、基材との密着性にも優れている。
【0055】
前記コーティング剤を硬化させてなるコーティング膜は透明であるため、例えば、窓用透明部材、即ち無機材料からなる窓ガラスの代替となる部材の表面に前記コーティング剤を適用することにより、無機材料からなるガラスに比べて軽量な窓用透明部材を得ることができる。
【0056】
また、例えば、ボディパネルの表面に前記コーティング剤を適用することにより、ボディパネルの表面にクリヤーコート層を形成することができる。更に、必要に応じて前記コーティング剤中に顔料等の着色剤を添加し、コーティング膜を着色することも可能である。
【0057】
前記樹脂部材において、基材を構成する樹脂は、樹脂部材の用途に合わせて適宜選択することができる。例えば、樹脂部材を窓用透明部材として使用する場合には、基材にポリカーボネート樹脂を採用することができる。ポリカーボネート樹脂は、耐候性、強度、透明性等の、窓用透明部材に要求される諸特性に優れている。そのため、ポリカーボネート樹脂からなる基材上に透明な前記コーティング膜を形成することにより、窓用透明部材として好適な樹脂部材を得ることができる。
【0058】
前記樹脂部材は、例えば、樹脂からなる基材を準備する準備工程と、
基材の表面上に前記コーティング剤を塗布する塗布工程と、
前記コーティング剤に紫外光を照射することにより、基材の表面上に前記コーティング剤の硬化物からなるコーティング膜を形成する硬化工程と、
を有する製造方法により、製造することができる。
【0059】
前記製造方法において、塗布工程でのコーティング剤の塗布には、スプレーコーター、フローコーター、スピンコーター、ディップコーター、バーコーター、アプリケーター等の公知の塗布装置の中から、所望する膜厚や機材の形状等に応じて適切な装置を選択して使用することができる。
【0060】
塗布工程の後、必要に応じてコーティング剤を加熱して乾燥させる工程を行ってもよい。
【0061】
硬化工程での紫外光の照射には、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、エキシマランプ等の、紫外光を発生可能な公知の光源の中から、膜硬化成分の吸収波長や必要な光量等に応じて適切な光源を選択して使用することができる。また、硬化工程においては、大気雰囲気中で紫外光を照射してもよいし、窒素雰囲気中で紫外光を照射してもよい。必要に応じてコーティング剤を加熱し、反応を促進させつつ紫外光を照射することもできる。
【0062】
また、硬化工程の後、必要に応じてコーティング膜を加熱し、硬化を促進させる工程を行ってもよい。
【実施例0063】
前記コーティング剤の実施例について説明する。本例のコーティング剤は、下記組成式(1)で表されるTa構造単位と、下記組成式(2)で表されるTc構造単位とを備えたシルセスキオキサンと、(メタ)アクリレート(ただし、前記シルセスキオキサンを除く)と、を含む膜形成成分と、紫外光が照射された場合に塩基及びラジカルを発生させることができるように構成された膜硬化成分と、を含んでいる。また、シルセスキオキサン中におけるTa構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対するTa構造単位の含有量のモル比率が0モル%超え45モル%以下であり、シルセスキオキサンの重量平均分子量が2,000以上である。
(RSiO3/2) ・・・(1)
(RSiO3/2) ・・・(2)
【0064】
ただし、前記組成式(1)におけるRはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、前記組成式(2)におけるRは1価の炭化水素基である。
【0065】
本例において使用したシルセスキオキサンは以下の通りである。
【0066】
・シルセスキオキサン
アルキルトリアルコキシシランと、(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランとを含む複数の種類のアルコキシシランを公知の方法で縮合させることにより表1~表2に示すシルセスキオキサンA1~A12を合成した。本例において用いた(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランは、具体的にはメタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(MAcSi(OEt))またはメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MAcSi(OMe))のいずれかである。また、本例において用いたアルキルトリアルコキシシランは、具体的にはメチルトリエトキシシラン(MeSi(OEt))である。また、本例において用いたテトラアルコキシシランは、具体的にはテトラエトキシシラン(Si(OEt))である。
【0067】
(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランは、シルセスキオキサンにおけるTa構造単位となる。従って、表1及び表2の「Ta構造単位」欄には、シルセスキオキサンの合成に用いた(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランのモル比率を記載した。同様に、表1及び表2の「Tc構造単位」欄には、シルセスキオキサンにおいてTc構造単位となるアルキルトリアルコキシシランのモル比率を記載し、「Q構造単位」欄には、シルセスキオキサンにおいてQ構造単位となるテトラアルコキシシランのモル比率を記載した。また、表1の「Ta/(Ta+Tc)」欄には、Ta構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対する前記Ta構造単位の含有量のモル比率を記載し、「Q/(Ta+Tc+Q)」欄には、Ta構造単位の含有量とTc構造単位の含有量とQ構造単位の含有量との合計に対するQ構造単位の含有量のモル比率を記載した。
【0068】
また、表1及び表2の「重量平均分子量」欄には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより得られる、ポリエチレン換算の重量平均分子量を記載した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
(実験例1)
本例においては、互いに重量平均分子量の異なるシルセスキオキサンを用い、表3に示す3種類のコーティング剤(コーティング剤B1~B3)を作製した。本例のコーティング剤は、100質量部の(メタ)アクリレートと、75質量部のシルセスキオキサンと、を含む膜形成成分と、3質量部の光塩基発生剤を含む膜硬化成分と、膜形成成分及び膜硬化成分を溶解する溶媒と、を有している。
【0072】
本例において用いた(メタ)アクリレートは、具体的には、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレートを含む混合物(東亞合成株式会社製「M-315」)である。本例において用いたシルセスキオキサンは、表3に示すように、シルセスキオキサンA1~A3のうちいずれか1種のシルセスキオキサンである。本例において用いた光塩基発生剤は、1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム=2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナートである。
【0073】
本例においては、前述した化合物を溶媒に溶解させることにより、表3に示すコーティング剤B1~B3を作製した。
【0074】
次に、ポリカーボネート樹脂からなる厚み5mmの基材を準備し、基材の表面にバーコーターを用いてコーティング剤B1~B3のうちいずれか1種のコーティング剤を塗布した。基材上にコーティング剤を塗布した後、100℃の温度に設定した熱風乾燥炉を用い、基材を3分間加熱してプリベークを行った。
【0075】
プリベークの後、コーティング剤に紫外光を照射することにより、基材の表面上にコーティング剤の硬化物からなるコーティング膜を形成する硬化工程を実施した。本例では、紫外光の照射を窒素雰囲気中で行った。また、紫外光の光源としては、高圧水銀灯を使用した。紫外光の照度は250mW/cm2とし、露光量は2500mJ/cm2とした。
【0076】
紫外光の照射を行った後、130℃の温度に設定した熱風乾燥炉を用い、コーティング膜を10分間加熱してポストベークを行った。以上により、テストピースを得た。得られたテストピースは、無色透明であった。また、基材上に形成されたコーティング膜の厚みは約50μmであった。
【0077】
以上により得られたテストピースを用い、コーティング膜の層構造、外観及び耐摩耗性の評価を行った。
【0078】
〔コーティング膜の層構造〕
テストピースの断面を露出させた後、走査型二次電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)によりテストピースの断面におけるSi原子のマッピング像を取得した。そして、Si原子のマッピング像に基づき、コーティング膜の層構造が、表面層と内層とに分離した層分離構造または単一の層からなる単層構造のいずれの構造であるかを判断した。一例として、図1にコーティング剤B1を用いて作製したテストピース1aの断面を示す。また、図2にコーティング剤B2を用いて作製したテストピース1bの断面を示す。なお、図1及び図2において明るく表示されている領域はSi原子の濃度が高い領域である。
【0079】
図1に示すように、コーティング剤B1の硬化物からなるコーティング膜2aは、テストピース1aの表面10に露出し、比較的明るく表示された表面層21と、表面層21と基材3との間に介在し、表面層21よりも暗く表示された内層22とを有している。図1によれば、コーティング膜2aにおいては、表面層21と内層22とが明瞭に分離していることが理解できる。さらに、表面層21は内層22よりも明るく表示されており、表面層21におけるSi原子の平均濃度は内層におけるSi原子の平均濃度よりも高くなっている。これらの結果から、コーティング剤B1の硬化物からなるコーティング膜2aは、表面層21と内層22との2つの層に層分離した構造を有していることが理解できる。
【0080】
一方、図2に示すように、コーティング剤B2の硬化物からなるコーティング膜2bは、単一の層から構成されている。また、図2によれば、基材3との境界から表面10までの全体が均一な明るさで表示されており、コーティング膜2bの全体にSi原子が分布していることが理解できる。これらの結果から、コーティング剤B1の硬化物からなるコーティング膜は、単一の層から構成されていることが理解できる。
【0081】
このようにしてSi原子のマッピング像に基づいて判断した層構造を表3の「層構造」欄に記載した。
【0082】
〔外観〕
コーティング膜の外観を目視により評価した。コーティング膜が透明であり、その表面が平滑である場合には表3の「外観」欄に「Good」と記載し、コーティング膜が不透明である、または表面にしわ等の凹凸がある場合には「Poor」と記載した。
【0083】
〔耐摩耗性〕
テーバー式摩耗試験機を用いてコーティング膜の摩耗試験を行い、摩耗試験後のヘイズ値の増加量ΔH(単位:%)に基づいて耐摩耗性の評価を行った。より具体的には、摩耗試験前のテストピースのヘイズ値を測定した後、テーバー式摩耗試験機にテストピースを取り付けた。そして、摩耗輪によりテストピースのコーティング膜を摩耗させることにより、摩耗試験を行った。なお、本例におけるテーバー式摩耗試験機の摩耗輪はCS-10Fである。また、摩耗試験における荷重は500gfとし、回転数は1000回とする。
【0084】
前述の条件で摩耗試験を行った後、ヘイズメーターを用いて試験後のテストピースのヘイズ値を測定した。そして、試験後のテストピースのヘイズ値から試験前のテストピースのヘイズ値を差し引いた値をヘイズ値の増加量とした。表3の「耐摩耗性」欄に、各コーティング剤を用いて得られたコーティング膜のヘイズ値の増加量ΔH(単位:%)を示す。
【0085】
【表3】
【0086】
コーティング剤B1及びコーティング剤B3の膜形成成分には、(メタ)アクリレートと、シルセスキオキサンとが含まれている。また、表3に示すように、これらのコーティング剤に用いられたシルセスキオキサンの重量平均分子量及びTa構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対するTa構造単位の含有量のモル比率はいずれも前記特定の範囲内である。それ故、コーティング剤B1及びコーティング剤B3を用いて形成されたコーティング膜は、表面層と内層との2層からなる構造を有しており、傷に対する耐久性に優れている。また、これらのコーティング剤を用いて形成されたコーティング膜は、良好な外観を有すると共に、耐摩耗性にも優れている。
【0087】
一方、コーティング剤B2には、重量平均分子量が前記特定の範囲よりも小さいシルセスキオキサンA2が用いられている。そのため、コーティング剤B2を用いて形成されたコーティング膜は、無機成分が均一に分布した単一の層から構成されており、傷に対する耐久性に劣っている。
【0088】
(実験例2)
本例では、互いにTa構造単位の含有量が異なるシルセスキオキサンを用い、表4に示す4種のコーティング剤(コーティング剤C1~C4)を作製した。コーティング剤C1~C4の具体的な構成は、表4に示すように、コーティング剤の作製にシルセスキオキサンA4~A7のうちいずれかのシルセスキオキサンを用いた点、及び膜硬化成分中に、さらに2質量部の光ラジカル重合開始剤が含まれている点以外は、実験例1のコーティング剤と同様である。なお、本例において用いた光ラジカル重合開始剤は、Omnirad819及びOmnirad754(いずれもIGM Resins B.V.社製)である。「Omnirad」はIGM Group B.V.社の登録商標である。
【0089】
このようにして作製したコーティング剤を用い、実験例1と同様の方法によりコーティング膜の層構造、外観及び耐摩耗性の評価を行った。これらの結果は表4に示す通りである。なお、本例のコーティング剤は、膜硬化成分中に光ラジカル重合開始剤が含まれている点で、実験例1のコーティング剤とは異なっている。また、摩耗試験により得られるヘイズ値の増加量ΔHの値は、摩耗試験に用いる摩耗輪の状態にも大きく影響を受ける。本例の摩耗試験において用いた摩耗輪の状態は、実験例1の摩耗試験において用いた摩耗輪の状態とは異なっている。これらの理由により、本例において得られたヘイズ値の増加量ΔHの値を、実験例1において得られたΔHの値と直接比較することはできない。
【0090】
【表4】
【0091】
表4に示すように、コーティング剤C3及びコーティング剤C4に用いられたシルセスキオキサンの重量平均分子量及びTa構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対するTa構造単位の含有量のモル比率はいずれも前記特定の範囲内である。それ故、コーティング剤C3及びコーティング剤C4を用いて形成されたコーティング膜は、表面層と内層との2層からなる構造を有しており、傷に対する耐久性に優れている。また、これらのコーティング剤を用いて形成されたコーティング膜は、良好な外観を有している。これらのコーティング剤の中でも、コーティング剤C3は、Ta構造単位の含有量が適度に多いため、コーティング剤C4に比べてコーティング膜の耐摩耗性をより向上させることができた。
【0092】
一方、コーティング剤C1及びコーティング剤C2には、Ta構造単位の含有量が過度に多いシルセスキオキサンが用いられている。そのため、これらのコーティング剤を用いて形成されたコーティング膜は、無機成分が均一に分布した単一の層から構成されており、傷に対する耐久性に劣っている。また、これらのコーティング剤を用いて形成されたコーティング膜は、表面にしわが生じ、外観が不良となった。なお、コーティング剤C1及びコーティング剤C2を用いて形成されたコーティング膜は、表面にしわが生じたため、摩耗試験後のヘイズ値の増加量ΔHを平滑な表面を有するコーティング膜におけるΔHと比較することができない。そのため、コーティング剤C1及びコーティング剤C2における「耐摩耗性」欄には「評価不能」と記載した。
【0093】
(実験例3)
本例では、互いにQ構造単位の含有量が異なるシルセスキオキサンを用い、表5に示す3種のコーティング剤(コーティング剤D1~D3)を作製した。コーティング剤D1~D3の具体的な構成は、表5に示すように、コーティング剤の作製にシルセスキオキサンA3、A8、A11のうちいずれかのシルセスキオキサンを用いた以外は実験例1のコーティング剤と同様である。
【0094】
このようにして作製したコーティング剤を用い、実験例1と同様の方法によりコーティング膜の層構造、外観及び耐摩耗性の評価を行った。これらの結果は表5に示す通りである。なお、実験例2と同様の理由により、本例において得られたヘイズ値の増加量ΔHの値を他の実験例において得られたΔHの値と直接比較することはできない。
【0095】
【表5】
【0096】
表5に示すように、コーティング剤D1及びコーティング剤D3に用いられたシルセスキオキサンの重量平均分子量及びTa構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対するTa構造単位の含有量のモル比率はいずれも前記特定の範囲内である。それ故、コーティング剤D1及びコーティング剤D3を用いて形成されたコーティング膜は、表面層と内層との2層からなる構造を有しており、傷に対する耐久性に優れている。また、これらのコーティング剤を用いて形成されたコーティング膜は、良好な外観を有している。これらのコーティング剤の中でも、コーティング剤D3は、Q構造単位の含有量が前記特定の範囲内であるため、Q構造単位を含まないコーティング剤D1に比べてコーティング膜の耐摩耗性をより向上させることができた。
【0097】
一方、コーティング剤D2には、Q構造単位の含有量が過度に多いシルセスキオキサンA8が用いられている。そのため、コーティング剤D2を用いて形成されたコーティング膜には無機成分の凝集体が形成され、不透明な外観を有していた。また、コーティング剤D2を用いて形成されたコーティング膜には無機成分の凝集体が形成されたため、コーティング剤D2を用いて形成されたコーティング膜のヘイズ値の増加量ΔHを、平滑な表面を有するコーティング膜におけるヘイズ値の増加量ΔHと比較することができない。そのため、コーティング剤D2における「耐摩耗性」欄には「評価不能」と記載した。
【0098】
(実験例4)
本例では、Q構造単位を含み、かつ、互いにTa構造単位の含有量が異なるシルセスキオキサンを用い、表6に示す4種のコーティング剤(コーティング剤E1~E4)を作製した。コーティング剤E1~E4の具体的な構成は、表6に示すように、コーティング剤の作製にシルセスキオキサンA9~A12のうちいずれかのシルセスキオキサンを用いた以外は実験例2のコーティング剤と同様である。
【0099】
このようにして作製したコーティング剤を用い、実験例1と同様の方法によりコーティング膜の層構造、外観及び耐摩耗性の評価を行った。これらの結果は表6に示す通りである。なお、実験例2と同様の理由により、本例において得られたヘイズ値の増加量ΔHの値を他の実験例において得られたΔHの値と直接比較することはできない。
【0100】
【表6】
【0101】
表6に示すように、コーティング剤E2~E4に用いられたシルセスキオキサンの重量平均分子量及びTa構造単位の含有量とTc構造単位の含有量との合計に対するTa構造単位の含有量のモル比率はいずれも前記特定の範囲内である。それ故、コーティング剤E2~E4を用いて形成されたコーティング膜は、表面層と内層との2層からなる構造を有しており、傷に対する耐久性に優れている。また、これらのコーティング剤を用いて形成されたコーティング膜は、良好な外観を有している。これらのコーティング剤の中でも、コーティング剤E2及びコーティング剤E3は、Ta構造単位の含有量が適度に多いため、Ta構造単位の含有量が少ないコーティング剤E4に比べてコーティング膜の耐摩耗性をより向上させることができた。
【0102】
一方、コーティング剤E1には、Ta構造単位の含有量が過度に多いシルセスキオキサンが用いられている。そのため、コーティング剤E1を用いて形成されたコーティング膜は、単一の層から構成されており、傷に対する耐久性に劣っている。また、コーティング剤E1を用いて形成されたコーティング膜は、表面にしわが生じ、外観が不良となった。さらに、コーティング剤E1を用いて形成されたコーティング膜は、表面にしわが生じたため、摩耗試験後のヘイズ値の増加量ΔHを平滑な表面を有するコーティング膜におけるΔHと比較することができない。そのため、コーティング剤E1における「耐摩耗性」欄には「評価不能」と記載した。
【0103】
以上、実験例1~4に基づいて本発明に係るコーティング剤及び樹脂部材の態様を説明したが、本発明に係るコーティング剤及び樹脂部材の具体的な態様は実験例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【0104】
例えば、本発明に係るコーティング剤は、以下の〔1〕~〔8〕に示す態様を取り得る。
【0105】
〔1〕下記組成式(1)で表されるTa構造単位と、下記組成式(2)で表されるTc構造単位とを備えたシルセスキオキサンと、
(メタ)アクリレート(ただし、前記シルセスキオキサンを除く)と、を含む膜形成成分と、
紫外光が照射された場合に塩基及びラジカルを発生させることができるように構成された膜硬化成分と、を含み、
前記シルセスキオキサン中における前記Ta構造単位の含有量と前記Tc構造単位の含有量との合計に対する前記Ta構造単位の含有量のモル比率が0モル%超え45モル%以下であり、
前記シルセスキオキサンの重量平均分子量が2,000以上である、コーティング剤。
(RSiO3/2) ・・・(1)
(RSiO3/2) ・・・(2)
(ただし、前記組成式(1)におけるRはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、前記組成式(2)におけるRは1価の炭化水素基である。)
【0106】
〔2〕前記シルセスキオキサン中における前記Ta構造単位の含有量と前記Tc構造単位の含有量との合計に対する前記Ta構造単位の含有量のモル比率が20モル%以上45モル%以下である、〔1〕に記載のコーティング剤。
〔3〕前記シルセスキオキサンの重量平均分子量が2,000以上15,000以下である、〔1〕または〔2〕に記載のコーティング剤。
【0107】
〔4〕前記シルセスキオキサンは、さらに、下記組成式(3)で表されるQ構造単位を含んでおり、前記シルセスキオキサン中における前記Ta構造単位の含有量と前記Tc構造単位の含有量と前記Q構造単位の含有量との合計に対する前記Q構造単位の含有量のモル比率が0モル%超え25モル%以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載のコーティング剤。
(SiO4/2) ・・・(3)
〔5〕前記シルセスキオキサンの含有量が前記(メタ)アクリレート100質量部に対して30質量部以上150質量部以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載のコーティング剤。
【0108】
〔6〕前記膜硬化成分は、紫外光を照射した際に塩基及びラジカルの両方を発生させることができるように構成された光塩基発生剤を含んでいる、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載のコーティング剤。
〔7〕前記膜硬化成分は、紫外光を照射した際に塩基を発生させることができるように構成された光塩基発生剤と、紫外光を照射した際にラジカルを発生させることができるように構成された光ラジカル重合開始剤を含んでいる、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載のコーティング剤。
〔8〕前記(メタ)アクリレートはイソシアヌル環を有している、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載のコーティング剤。
【0109】
また、本発明に係る樹脂部材は、以下の〔9〕に示す態様を取り得る。
【0110】
〔9〕樹脂からなる基材と、
前記基材上に形成されたコーティング膜と、を有する樹脂部材であって、
前記コーティング膜が〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載のコーティング剤の硬化物から構成されており、
前記コーティング膜は、前記樹脂部材の表面に露出した表面層と、
前記表面層と前記基材との間に介在する内層とを有しており、
前記表面層におけるSi原子の平均濃度が前記内層におけるSi原子の平均濃度よりも高い、樹脂部材。
【符号の説明】
【0111】
1a テストピース
2a コーティング膜
21 表面層
22 内層
3 基材
図1
図2