(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157463
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/16 20060101AFI20241030BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C08F2/16
C08F20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071851
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 友孝
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA08
4J011KA02
4J011KA04
4J011KA06
4J011KA10
4J011KB13
4J011KB14
4J011KB19
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4J011KB29
4J100AB02S
4J100AJ02S
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100AL09T
4J100CA03
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA20
4J100FA34
4J100JA01
(57)【要約】
【課題】粒子のサイズを小さくできる、粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】粒子の製造方法は、工程(1)と、工程(2)と、工程(3)と、を備える。工程(1)では、水性媒体中、界面活性剤の不存在下で、親水性の第1重合性ビニルモノマーを重合させて第1シード粒子を生成する。工程(2)では、水性媒体中、界面活性剤の存在下で、第1シード粒子をシードとして、第2重合性ビニルモノマーを重合させて第2シード粒子を生成する。工程(3)では、水性媒体中、第2シード粒子をシードとして、第3重合性ビニルモノマーを重合させて、粒子を製造する。第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第1重合性ビニルモノマーの配合割合が9質量%以下である。第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第2重合性ビニルモノマーの配合割合が10質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中、界面活性剤の不存在下で、親水性の第1重合性ビニルモノマーを重合させて第1シード粒子を生成する工程(1)と、
前記水性媒体中、界面活性剤の存在下で、前記第1シード粒子をシードとして、第2重合性ビニルモノマーを重合させて第2シード粒子を生成する工程(2)と、
前記水性媒体中、前記第2シード粒子をシードとして、第3重合性ビニルモノマーを重合させて、粒子を製造する工程(3)と、を備え、
前記第1重合性ビニルモノマーと前記第2重合性ビニルモノマーと前記第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する前記第1重合性ビニルモノマーの配合割合が9質量%以下であり、
前記第1重合性ビニルモノマーと前記第2重合性ビニルモノマーと前記第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する前記第2重合性ビニルモノマーの配合割合が10質量%以下である、粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第1重合性ビニルモノマーは、親水性基含有(メタ)アクリル酸エステル、および/または、(メタ)アクリル酸を含む、請求項1に記載の粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第1重合性ビニルモノマーと前記第2重合性ビニルモノマーと前記第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する前記第1重合性ビニルモノマーの配合割合は、7.0質量%以下である、請求項1または請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第1重合性ビニルモノマーと前記第2重合性ビニルモノマーと前記第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する前記第3重合性ビニルモノマーの配合割合は、80質量%以上である、請求項1または請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項5】
前記水性媒体100質量部に対する前記界面活性剤の配合割合は、1.0質量部以下である、請求項1または請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項6】
前記界面活性剤は、反応性界面活性剤を含む、請求項1または請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項7】
前記界面活性剤は、非反応性界面活性剤を含み、
前記非反応性界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤を含有する、請求項1または請求項2に記載の粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性媒体中、界面活性剤の不存在下で、親水性の第1重合性ビニルモノマーを重合させてシード粒子を生成する工程と、水性媒体中、界面活性剤の存在下で、シード粒子をシードとして、第2重合性ビニルモノマーを重合させて粒子を製造する工程と、を備える、粒子の製造方法が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造される粒子の用途および目的に応じて、粒子のサイズを小さくしたいという要求がある。例えば、粒子を塗料に配合する場合において、上記した要求は、スプレー塗装において塗料をノズルで吐出するときに、ノズルの目詰まりを抑制するために、粒子のサイズを小さくすることを含む。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の製造方法では、上記した要求を満足できないという不具合がある。
【0006】
本発明は、粒子のサイズを小さくできる、粒子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、水性媒体中、界面活性剤の不存在下で、親水性の第1重合性ビニルモノマーを重合させて第1シード粒子を生成する工程(1)と、前記水性媒体中、界面活性剤の存在下で、前記第1シード粒子をシードとして、第2重合性ビニルモノマーを重合させて第2シード粒子を生成する工程(2)と、前記水性媒体中、前記第2シード粒子をシードとして、第3重合性ビニルモノマーを重合させて、粒子を製造する工程(3)と、を備え、前記第1重合性ビニルモノマーと前記第2重合性ビニルモノマーと前記第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する前記第1重合性ビニルモノマーの配合割合が9質量%以下であり、前記第1重合性ビニルモノマーと前記第2重合性ビニルモノマーと前記第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する前記第2重合性ビニルモノマーの配合割合が10質量%以下である、粒子の製造方法を含む。
【0008】
本発明[2]は、前記第1重合性ビニルモノマーは、親水性基含有(メタ)アクリル酸エステル、および/または、(メタ)アクリル酸を含む、[1]に記載の粒子の製造方法を含む。
【0009】
本発明[3]は、前記第1重合性ビニルモノマーと前記第2重合性ビニルモノマーと前記第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する前記第1重合性ビニルモノマーの配合割合は、7.0質量%以下である、[1]または[2]に記載の粒子の製造方法を含む。
【0010】
本発明[4]は、前記第1重合性ビニルモノマーと前記第2重合性ビニルモノマーと前記第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する前記第3重合性ビニルモノマーの配合割合は、80質量%以上である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の粒子の製造方法を含む。
【0011】
本発明[5]は、前記水性媒体100質量部に対する前記界面活性剤は、1.0質量部以下である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の粒子の製造方法を含む。
【0012】
本発明[6]は、前記界面活性剤は、反応性界面活性剤を含む、[1]から[5]のいずれか一項に記載の粒子の製造方法を含む。
【0013】
本発明[7]は、前記界面活性剤は、非反応性界面活性剤を含み、前記非反応性界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤を含有する、[1]から[5]のいずれか一項に記載の粒子の製造方法を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粒子の製造方法では、工程(1)において、水性媒体中、界面活性剤の不存在下で、親水性の第1重合性ビニルモノマーを重合させ、さらに、第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第1重合性ビニルモノマーの配合割合が9質量%以下と少なく、第2重合性ビニルモノマーの配合割合が10質量%以下と少ない。そのため、第1シード粒子および第2シード粒子のそれぞれのサイズを小さくでき、そのため、粒子のサイズを小さくできる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
粒子の製造方法は、工程(1)と、工程(2)と、工程(3)と、を備える。工程(1)と、工程(2)と、工程(3)とは、この順で順に実施される。工程(1)では、第1重合性ビニルモノマーを重合させる。工程(2)では、第2重合性ビニルモノマーを重合させる。工程(3)では、第3重合性ビニルモノマーを重合させる。
【0016】
1. 粒子の製造方法
工程(1)では、水性媒体中、界面活性剤の不存在下で、親水性の第1重合性ビニルモノマーを重合させて第1シード粒子を生成する。
【0017】
1.1.1 水性媒体
水性媒体としては、例えば、水、および、水と水溶性有機物との水混合溶媒が挙げられる。水溶性有機物としては、例えば、アルコールおよびケトンが挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノールおよびエタノールが挙げられる。ケトンとしては、例えば、アセトンが挙げられる。水性媒体として、好ましくは、水が挙げられる。
【0018】
1.1.2 界面活性剤
本発明では、工程(1)において、界面活性剤が存在しない。具体的には、水性媒体中に、界面活性剤が存在しない。後述する第1分散液は、界面活性剤を含有しない。界面活性剤は、乳化剤を含む。従って、工程(1)は、無乳化重合(またはソープフリー重合)と称呼される。
【0019】
なお、工程(1)において、第1重合性ビニルモノマーを化学的に乳化させない程度に、界面活性剤が水性媒体に意図せず混入することは許容される。その場合には、水性媒体100質量部に対する不純物としての界面活性剤の混入割合は、0.01質量部以下、さらには、0.001質量部以下である。
【0020】
1.1.3 第1重合性ビニルモノマー
第1重合性ビニルモノマーは、親水性基を少なくとも1つ分子内に有する。また、第1重合性ビニルモノマーは、例えば、重合性の炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ分子内に有する。第1重合性ビニルモノマーは、好ましくは、1つの親水性基と、1つの炭素-炭素二重結合とを分子内に有する。第1重合性ビニルモノマーは、例えば、水性媒体に分散できる程度の疎水性を有する。第1重合性ビニルモノマーとしては、例えば、親水性基含有(メタ)アクリル酸エステル、および、(メタ)アクリル酸が挙げられる。第1重合性ビニルモノマーとして、ポリ(オキシアルキレン)(メタ)アクリレートを挙げることもできる。これらは、単独使用または複数併用できる。
【0021】
親水性基としては、例えば、ヒドロキシル基、または、スルホン酸基またはその塩が挙げられる。塩としては、例えば、アンモニウム塩、および、アルカリ金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、および、カリウム塩が挙げられる。塩として、好ましくは、アンモニウム塩およびナトリウム塩が挙げられる。
【0022】
親水性基含有(メタ)アクリル酸エステルは、親水性基含有メタクリル酸エステルおよび親水性基含有アクリル酸エステルを含む。以下、(メタ)の用法は、上記と同様である。
【0023】
親水性基含有(メタ)アクリル酸エステルにおいてアルキルエステルを形成するアルキル部分の炭素数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上であり、また、例えば、8以下、好ましくは、6以下、より好ましくは、4以下、さらに好ましくは、3以下である。アルキル部分は、直鎖状または分岐状であり、好ましくは、直鎖状である。
【0024】
親水性基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、好ましくは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキヘプチル、および、(メタ)アクリル酸ヒドロキオクチルが挙げられる。親水性基含有(メタ)アクリル酸エステルとして、好ましくは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルが挙げられ、より好ましくは、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)が挙げられる。
【0025】
(メタ)アクリル酸としては、例えば、メタクリル酸(MAA)、および、アクリル酸(AA)が挙げられる。
【0026】
ポリ(オキシアルキレン)(メタ)アクリレートとしては、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、および、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
第1重合性ビニルモノマーとして、好ましくは、親水性基含有(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸が挙げられ、より好ましくは、親水性基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0028】
1.1.4 第1重合性ビニルモノマーの配合割合
水性媒体100質量部に対する第1重合性ビニルモノマーの配合割合は、例えば、2.5質量部以下、好ましくは、2.0質量部以下、より好ましくは、1.5質量部以下、さらに好ましくは、1.0質量部以下、とりわけ好ましくは、0.8質量部以下、最も好ましくは、0.5質量部以下である。水性媒体100質量部に対する第1重合性ビニルモノマーの配合割合は、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上、さらに好ましくは、0.2質量部以上である。水性媒体100質量部に対する第1重合性ビニルモノマーの配合割合が上記した下限以上であれば、工程(2)において、第2シード粒子を確実に生成でき、ひいては、工程(3)の重合をシード重合とできる量の第2シード粒子を工程(3)に確実に供することができる。第1重合性ビニルモノマーの配合割合が上記した上限以下であれば、第1シード粒子の粗大化を抑制し、第2シード粒子の粗大化を抑制し、ひいては、工程(3)で製造される粒子の粗大化を抑制できる。
【0029】
第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第1重合性ビニルモノマーの配合割合は、9質量%以下である。第1重合性ビニルモノマーの配合割合が9質量%超過であれば、第1シード粒子が粗大となり、そうすると、第2シード粒子も粗大となり、ひいては、工程(3)で製造される粒子が粗大となる。
【0030】
第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第1重合性ビニルモノマーの配合割合は、好ましくは、7質量%以下、より好ましくは、5質量%以下、さらに好ましくは、3質量%以下、とりわけ好ましくは、1質量%以下である。
【0031】
第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第1重合性ビニルモノマーの配合割合は、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、より好ましくは、0.25質量%以上、さらに好ましくは、0.5質量%以上である。第1重合性ビニルモノマーの配合割合が上記した下限以上であれば、工程(2)において、第2シード粒子を確実に生成でき、ひいては、工程(3)の重合をシード重合とできる量の第2シード粒子を工程(3)に確実に供することができる。
【0032】
1.1.5 第1重合性ビニルモノマーの重合
工程(1)では、例えば、重合開始剤の存在下、第1重合性ビニルモノマーを重合させる。
【0033】
重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、および、アゾ化合物が挙げられる。ラジカル重合開始剤として、好ましくは、過硫酸塩が挙げられる。過硫酸塩としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリム、および、過硫酸アンモニウムが挙げられる。過硫酸塩として、好ましくは、過硫酸カリウムが挙げられる。重合開始剤は、例えば、水溶性または油溶性であり、好ましくは、水溶性である。
【0034】
重合開始剤が水溶性であれば、重合開始剤は、水性媒体に配合されて、重合開始剤水溶液が調製される。つまり、重合開始剤水溶液は、水と、重合開始剤と、を含有する。重合開始剤水溶液における重合開始剤の配合割合は、例えば、0.1質量%以上、例えば、10質量%以下である。第1重合性ビニルモノマー100質量部に対する重合開始剤の配合割合は、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、より好ましくは、100質量部以上、であり、また、例えば、1,000質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
【0035】
工程(1)では、例えば、第1重合性ビニルモノマーを、加熱された水性媒体に配合して、第1重合性ビニルモノマーを水性媒体中に分散させる。水性媒体には、重合開始剤が配合されて、加熱された重合開始剤水溶液が調製される。具体的には、まず、水性媒体を加熱し、続いて、加熱された水性媒体に重合開始剤を配合する。水性媒体(重合開始剤水溶液)の加熱温度は、重合開始剤の熱分解が開始する温度およびその温度以上である。また、第1重合性ビニルモノマーの水性媒体中に分散させるには、水性媒体(重合開始剤水溶液)を予め攪拌し、続いて、第1重合性ビニルモノマーを水性媒体(重合開始剤水溶液)に投入する。この際、第1重合性ビニルモノマーの液滴が十分に小さくなるように、水性媒体(重合開始剤水溶液)に十分な剪断力を付与する。体積平均径は、体積基準の平均粒子径を意味する。液滴の体積平均径は、後述するシード粒子の体積平均径と同一である。この例示では、加熱された水性媒体(好ましくは、加熱された重合開始剤水溶液)に、第1重合性ビニルモノマーを一括添加する(一括添加法)。
【0036】
一方、重合開始剤水溶液を加熱しながら、第1重合性ビニルモノマーを連続的に添加することもできる(連続添加法)。
【0037】
また、まず、第1重合性ビニルモノマーを水性媒体(重合開始剤水溶液)中に分散させ、第1分散液を調製し、続いて、第1分散液を加熱することもできる。つまり、まず、第1分散液を調製し、次いで、第1分散液を加熱することもできる(事前水分散法)。
【0038】
さらに、第1重合性ビニルモノマーの一部を水性媒体(重合開始剤水溶液)中に分散させ、第1分散液を調製し、続いて、第1分散液を加熱し、その後、第1重合性ビニルモノマーの残部を第1分散液に投入することもできる(分割添加法)。
【0039】
一括添加法、連続添加法、事前水分散法および分割添加法のうち、一括添加法が好適である。
【0040】
工程(1)によって、第1シード粒子を生成する。第1シード粒子は、水性媒体中で分散している。つまり、水性媒体と、水性媒体に分散する第1シード粒子と、を含む第1シード分散液が調製される。
【0041】
1.1.6 第1シード粒子の物性
第1シード粒子の形状としては、例えば、球形状が挙げられる。球形状は、真球形状および回転楕円形状を含む。
【0042】
第1シード粒子の体積平均径は、例えば、0.1nm以上、好ましくは、0.5nm以上であり、また、例えば、10nm以下、好ましくは、5nm以下である。第1シード粒子の体積平均径が上記した上限以下であれば、粒子の体積平均径を小さくできる。体積平均径が上記した下限以上であれば、微小の粒子核形成を促進できる。
【0043】
1.1.7 第1シード粒子の割合(固形分濃度)
第1シード分散液における第1シード粒子の割合(固形分濃度)は、例えば、2.5質量%以下、好ましくは、2.0質量%以下、より好ましくは、1.5質量%以下、さらに好ましくは、1.0質量%以下、とりわけ好ましくは、0.8質量%以下、最も好ましくは、0.5質量%以下である。第1シード分散液における第1シード粒子の割合(固形分濃度)は、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.05質量%以上、より好ましくは、0.1質量%以上、さらに好ましくは、0.2質量%以上である。
【0044】
1.2 工程(2)
工程(2)では、水性媒体中、界面活性剤の存在下で、第1シード粒子をシードとして、第2重合性ビニルモノマーを重合させて第2シード粒子を生成する。
【0045】
1.2.1 水性媒体
水性媒体は、上記した水性媒体が挙げられる。水性媒体は、工程(1)で生成された第1シード粒子を分散している。第1シード分散液における水性媒体(好ましくは、重合開始剤水溶液)がそのまま工程(2)で用いられる。
【0046】
1.2.2 界面活性剤
界面活性剤としては、非反応性界面活性剤、および、反応性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、単独使用または併用できる。一例として、非反応性界面活性剤の単独使用、または、反応性界面活性剤の単独使用が挙げられる。界面活性剤としては、好ましくは、粒子の体積平均径をより小さくする観点から、反応性界面活性剤が挙げられる。
【0047】
工程(2)において、界面活性剤が存在すると、第2重合性ビニルモノマーの重合において、粗大化し易い傾向があるが、本発明の工程(2)では、工程(1)で生成された第1シード粒子をシードとする第2重合性ビニルモノマーをシード重合するので、上記粗大化を抑制できる。
【0048】
1.2.2.1 非反応性界面活性剤
非反応性界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、および、カチオン性界面活性剤が挙げられる。非反応性界面活性剤は、単独使用または併用できる。非反応性界面活性剤として、好ましくは、ノニオン性界面活性剤、および、アニオン性界面活性剤が挙げられる。非反応性界面活性剤は、好ましくは、単独使用される。一例として、ノニオン性界面活性剤の単独使用、または、アニオン性界面活性剤の単独使用が挙げられる。
【0049】
1.2.2.2 ノニオン性界面活性剤
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルエステルが挙げられ、好ましくは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0050】
1.2.2.3 アニオン性界面活性剤
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、および、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩が挙げられる。アニオン性界面活性剤として、好ましくは、アルキル硫酸塩、および、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩が挙げられる。アルキル硫酸塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリムが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0051】
1.2.2.4 反応性界面活性剤
反応性界面活性剤は、例えば、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンー1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル、α-[2-[(アリルオキシ)-1-(アルキルオキシメチル)]エチル]-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステル、α-[2-[(アリルオキシ)-1-(アルキルオキシメチル)]エチル]-ω-ポリオキシエチレン、アルキルアリルスルホコハク酸、メタクリロイルオキシポリオキシプロピレン硫酸エステル、スチレンスルホン酸、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル、スルホエチルメタクリレート、及びそれらの塩が挙げられる。反応性界面活性剤として、好ましくは、α-[2-[(アリルオキシ)-1-(アルキルオキシメチル)]エチル]-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステル塩、または、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。反応性界面活性剤は、市販品を使用でき、例えば、アデカリアソープシリーズ(ADEKA社製)、アクアロンシリーズ(第一工業製薬社製)、ラテムルシリーズ(KAO社製)、エレミノールシリーズ(三洋化成工業社製)を市販品として使用できる。
【0052】
1.2.3 界面活性剤の配合割合
水性媒体100質量部に対する界面活性剤の配合割合は、例えば、2質量部以下、好ましくは、1質量部以下、より好ましくは、0.5質量部以下である。水性媒体100質量部に対する界面活性剤の配合割合は、例えば、0.0005質量部以上、好ましくは、0.001質量部以上である。界面活性剤の配合割合が上記した上限以下であれば、粒子が包含する界面活性剤の割合を低減でき、例えば、粒子を含む塗料の物性の低下を抑制できる。
【0053】
界面活性剤の配合割合は、界面活性剤の種類および物性に応じて適宜決定することもできる。界面活性剤の配合割合がノニオン性界面活性剤を含む場合には、水性媒体100質量部に対するノニオン性界面活性剤の配合割合は、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、また、例えば、1質量部以下、好ましくは、0.5質量部以下である。なお、ノニオン性界面活性剤の配合割合は、臨界ミセル濃度超過であっても許容される。この場合には、第1シード粒子が存在することによって、ノニオン性界面活性剤の析出を抑制できるので、ノニオン性界面活性剤の配合割合が臨界ミセル濃度を超過することが許容される。つまり、ノニオン性界面活性剤の配合割合は、臨界ミセル濃度を上回ってもよい。
【0054】
他方、界面活性剤がアニオン性界面活性剤を含む場合には、アニオン性界面活性剤の配合割合は、例えば、臨界ミセル濃度以下である。アニオン性界面活性剤の配合割合が臨界ミセル濃度以下であれば、アニオン性界面活性剤同士の会合を抑制して、ミセルの形成を抑制し、第1シード粒子が単独分散できる。
【0055】
具体的には、水性媒体100質量部に対するアニオン性界面活性剤の配合割合は、例えば、0.1質量部以下、好ましくは、0.08質量部以下、より好ましくは、0.05質量部以下、さらに好ましくは、0.04質量部以下である。水性媒体100質量部に対するアニオン性界面活性剤の配合割合は、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上、より好ましくは、0.01質量部以上である。
【0056】
界面活性剤が反応性界面活性剤を含む場合には、水性媒体100質量部に対する反応性界面活性剤の配合割合は、例えば、2質量部以下、好ましくは、1質量部以下、より好ましくは、0.5質量部以下、さらに好ましくは、0.4質量部以下である。水性媒体100質量部に対する反応性界面活性剤の配合割合は、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、0.2質量部以上である。
【0057】
界面活性剤は、例えば、水性媒体に対する第2重合性ビニルモノマーの配合の前に、水性媒体に配合される。具体的には、工程(1)の後の第1シード分散液であって、第2重合性ビニルモノマーが配合される前の第1シード分散液に配合される。
【0058】
なお、界面活性剤および第2重合性ビニルモノマーをともに第1シード分散液に配合することもできる。好ましくは、界面活性剤および第2重合性ビニルモノマーを順に第1シード分散液に対して配合する。これによって、第2重合性ビニルモノマーの重合安定化により小粒子径化できる。
【0059】
1.2.4 第2重合性ビニルモノマー
第2重合性ビニルモノマーは、例えば、重合性の炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ分子内に有する。第2重合性ビニルモノマーは、好ましくは、炭素-炭素二重結合を1つ分子内に有する。第2重合性ビニルモノマーは、例えば、水性媒体に分散できる程度の疎水性を有する。第2重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族ビニルモノマー、および、官能基含有ビニルモノマーが挙げられる。これらは、単独使用または複数併用できる。
【0060】
1.2.4.1 (メタ)アクリル酸エステルモノマー
(メタ)アクリル酸エステルモノマーにおいてエステルを形成するアルキル部分の炭素数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上であり、また、例えば、18以下、好ましくは、10以下、より好ましくは、6以下、さらに好ましくは、4以下である。アルキル部分は、直鎖状または分岐状である。
【0061】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸iso-ノニル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、および、(メタ)アクリル酸n-オクタデシルが挙げられる。これらは、単独使用または複数併用できる。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、および、(メタ)アクリル酸n-ヘキシルが挙げられ、より好ましくは、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル(EA)、および、アクリル酸n-ブチル(BA)が挙げられ、さらに好ましくは、EAが挙げられる。
【0062】
1.2.4.2 芳香族ビニルモノマー
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン(ST)、および、メチルスチレンが挙げられる。芳香族ビニルモノマーとして、好ましくは、STが挙げられる。
【0063】
1.2.4.3 官能基含有ビニルモノマー
官能基含有ビニルモノマーは、好ましくは、芳香族ビニルモノマーとともに、第2重合性ビニルモノマーに含有される。これによって、第2重合性ビニルモノマーは、適度な疎水性を有する。
【0064】
官能基含有ビニルモノマーとして、第1重合性ビニルモノマーで例示したモノマーも挙げられる。官能基含有ビニルモノマーとしては、好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマーが挙げられる。カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸(MAA)を含む。官能基含有モノマーとしては、好ましくは、MAAが挙げられる。
【0065】
第2重合性ビニルモノマーの好適な一例として、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族ビニルモノマー、および、官能基含有ビニルモノマーの併用が挙げられ、さらには、EA、ST、および、MAAの併用が挙げられる。
【0066】
1.2.5 第2重合性ビニルモノマーの配合割合
水性媒体100質量部に対する第2重合性ビニルモノマーの配合割合は、例えば、2質量部以下、好ましくは、1.5質量部以下、より好ましくは、1.0質量部以下であり、また、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上、さらに好ましくは、0.2質量部以上である。
【0067】
第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第2重合性ビニルモノマーの配合割合は、10質量%以下である。第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第2重合性ビニルモノマーの配合割合が10質量%超過であれば、第2シード粒子が粗大となり、ひいては、工程(3)で製造される粒子が粗大となる。
【0068】
第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第2重合性ビニルモノマーの配合割合は、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、3質量%以下、さらに好ましくは、1質量%以下である。第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第2重合性ビニルモノマーの配合割合は、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、より好ましくは、0.3質量%以上、さらに好ましくは、0.5質量%以上である。第2重合性ビニルモノマーの配合割合が上記した下限以上であれば、工程(3)において、第3重合性ビニルモノマーの重合をシード重合とするための第2シード粒子を確実に生成できる。
【0069】
第1重合性ビニルモノマー100質量部に対する第2重合性ビニルモノマーの配合割合は、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、25質量部以上、さらに好ましくは、40質量部以上、とりわけ好ましくは、70質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
【0070】
第2重合性ビニルモノマーにおける(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合割合は、例えば、3質量%以上、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、75質量%以上である。第2重合性ビニルモノマーにおける(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合割合は、例えば、100質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。第2重合性ビニルモノマーの配合割合が上記した下限以上であれば、第2シード粒子の疎水性を高めて、微小の粒子核形成を促進できる。第2重合性ビニルモノマーの配合割合が上記した上限以下であれば、シード粒子の複数成分により分散安定性を高めることができる。
【0071】
第2重合性ビニルモノマーにおける芳香族ビニルモノマーの配合割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、8質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステルモノマー100質量部に対する芳香族ビニルモノマーの配合割合は、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、200質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。芳香族ビニルモノマーの配合割合が上記した下限以上であれば、第2シード粒子の疎水性を高めて、微小の粒子核形成を促進できる。芳香族ビニルモノマーの配合割合が上記した上限以下であれば、第2シード粒子の複数成分により分散安定性を高めることができる。
【0072】
第2重合性ビニルモノマーにおける官能基含有ビニルモノマーの配合割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、8質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステルモノマー100質量部に対する官能基含有ビニルモノマーの配合割合は、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、200質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。芳香族ビニルモノマー100質量部に対する官能基含有ビニルモノマーの配合割合は、例えば、10質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、1,000質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。官能基含有ビニルモノマーの配合割合が上記した下限以上であれば、親水性および極性の向上により分散安定性を高めることができる。官能基含有ビニルモノマーの配合割合が上記した上限以下であれば、第2シード粒子の疎水性を高めて、微小の粒子核形成を促進できる。
【0073】
1.2.6 第2重合性ビニルモノマーの重合
工程(2)では、第1シード分散液(好ましくは、界面活性剤が配合された第1シード分散液)に、第2重合性ビニルモノマーを配合する。
【0074】
例えば、加熱された状態の第1シード分散液に、界面活性剤および第2重合性ビニルモノマーを配合する。この際、第2重合性ビニルモノマーを一括添加または連続添加できる。第2重合性ビニルモノマーの一括添加に代えて、複数回で分割添加もできる。第2重合性ビニルモノマーを連続添加する場合、添加時間は、例えば、1分間以上、12時間以下である。
【0075】
あるいは、まず、第1シード分散液を冷却し、その後、界面活性剤および第2重合性ビニルモノマーを第1シード分散液に分散させて、第2分散液を調製し、その後、第2分散液を加熱する。具体的には、第1分散液の加熱と同じ温度に加熱する。好ましくは、加熱された状態の第1シード分散液に、第2重合性ビニルモノマーを配合する。
【0076】
第2重合性ビニルモノマーの配合として、好ましくは、一括添加である。一括添加では、製造効率を向上できる。
【0077】
必要により、重合開始剤を第1シード分散液または第2分散液に追加してもよい。好ましくは、重合開始剤を第1シード分散液または第2分散液に追加しない。
【0078】
第2重合性ビニルモノマーは、例えば、第1シード粒子に吸収される。なお、界面活性剤が反応性界面活性剤を含む場合には、反応性界面活性剤は、第2重合性ビニルモノマーとともに第1シード粒子に吸収される。
【0079】
上記によって、第1シード粒子をシードとして、第2重合性ビニルモノマーが重合する。これによって、第2シード粒子が製造される。第1シード粒子がわずかに成長して、第2シード粒子となる。例えば、第2シード粒子は、第1重合性ビニルモノマーのポリマー(第1シード粒子)からなるコアと、第2重合性ビニルモノマーのポリマーからなるシェルと、を含んでもよい。つまり、第2シード粒子は、コアシェル構造を有してもよい。なお、第2シード粒子の粗大化は、工程(2)において界面活性剤が存在することによって、抑制される。
【0080】
第2シード粒子は、水性媒体中で分散する。つまり、水性媒体と、水性媒体に分散する第2シード粒子と、を含む第2シード分散液が調製される。
【0081】
1.2.7 第2シード粒子の物性
第2シード粒子の形状は、例えば、第1シード粒子の形状と同一である。
【0082】
第2シード粒子の形状が球形状であれば、第2シード粒子の体積平均径は、例えば、0.2nm以上、好ましくは、1nm以上であり、また、例えば、80nm以下、好ましくは、20nm以下である。第1シード粒子の体積平均径に対する第2シード粒子の体積平均径の比は、例えば、1以上、好ましくは、2以上であり、また、例えば、100以下、好ましくは、40以下である。第2シード粒子の体積平均径および/または比が上記した上限以下であれば、第2シード粒子の体積平均径を小さくできる。第2シード粒子の体積平均径が上記した下限以上であれば、分散安定性を高めることができる。
【0083】
1.2.8 第2シード粒子の割合(固形分濃度)
第2シード分散液における第2シード粒子の割合(固形分濃度)は、例えば、5質量%以下、好ましくは、3質量%以下であり、また、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上である。
【0084】
1.3 工程(3)
工程(3)では、水性媒体中、第2シード粒子をシードとして、第3重合性ビニルモノマーを重合させて、粒子を製造する。
【0085】
1.3.1 水性媒体
水性媒体は、上記した水性媒体が挙げられる。水性媒体は、工程(2)で生成された第2シード粒子を分散している。第2シード分散液における水性媒体(好ましくは、重合開始剤水溶液)がそのまま工程(3)で用いられる。水性媒体は、工程(2)で配合された界面活性剤を含む。
【0086】
1.3.2 第3重合性ビニルモノマー
第3重合性ビニルモノマーは、例えば、重合性の炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ分子内に有する。第3重合性ビニルモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマーとして含有する。
【0087】
1.2.5 第3重合性ビニルモノマーの配合割合
水性媒体100質量部に対する第3重合性ビニルモノマーの配合割合は、例えば、
5質量部以上、好ましくは、15質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下である。
【0088】
第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第3重合性ビニルモノマーの配合割合は、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、より好ましくは、92.5質量%以上、さらに好ましくは、97質量%以上、とりわけ好ましくは、98質量%以上である。第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第3重合性ビニルモノマーの配合割合は、例えば、99.5質量%以下、好ましくは、99質量%以下である。第3重合性ビニルモノマーの配合割合が上記した下限以上であれば、工程(2)で生成された第2シード粒子をシードとして、第3重合性ビニルモノマーをシード重合できる。
【0089】
1.3.3 第3重合性ビニルモノマーの重合
工程(3)では、第2シード分散液に、第3重合性ビニルモノマーを配合する。
【0090】
例えば、加熱された状態の第2シード分散液に、第3重合性ビニルモノマーを配合する。この際、第3重合性ビニルモノマーを一括添加または連続添加できる。第3重合性ビニルモノマーの一括添加に代えて、複数回で分割添加もできる。第3重合性ビニルモノマーを連続添加する場合、添加時間は、例えば、1分間以上、12時間以下である。
【0091】
あるいは、まず、第2シード分散液を冷却し、その後、第3重合性ビニルモノマーを第2シード分散液に分散させて、第3分散液を調製し、その後、第3分散液を加熱する。具体的には、第3分散液の加熱と同じ温度に加熱する。好ましくは、加熱された状態の第2シード分散液に、第3重合性ビニルモノマーを配合する。
【0092】
第3重合性ビニルモノマーの配合として、好ましくは、連続添加である。第3重合性ビニルモノマーを連続添加すれば、第3重合性ビニルモノマーが過多になることに起因して粒子が巨大化することを抑制できる。
【0093】
第3重合性ビニルモノマーは、例えば、第2シード粒子に吸収される。この際、必要により、重合開始剤を第3分散液に追加してもよい。好ましくは、重合開始剤を第3分散液に追加しない。また、例えば、界面活性剤を第3分散液に追加してもよい。好ましくは、界面活性剤を第3分散液に追加しない。
【0094】
これによって、粒子が製造される。第2シード粒子が成長して、粒子となる。
【0095】
粒子は、水性媒体中で分散する。つまり、水性媒体と、水性媒体に分散する粒子と、を含む粒子分散液が製造される。
【0096】
粒子の形状としては、例えば、球形状が挙げられる。球形状は、真球形状および回転楕円形状を含む。
【0097】
粒子の形状が球形状であれば、粒子の平均粒子径は、例えば、100nm以下、好ましくは、95nm以下、より好ましくは、90nm以下、さらに好ましくは、80nm以下、とりわけ好ましくは、70nm以下である。粒子の平均粒子径が上記した上限以下であれば、粒子を含む塗料をノズルで吐出するときに、ノズルの目詰まりを抑制できる。粒子の平均粒子径は、例えば、1nm以上、さらには、10nm以上、20nm以上、30nm以上である。粒子の平均粒子径の求め方は、後の実施例で記載される。
【0098】
その後、必要により、粒子分散液における水性媒体を除去することもできる。
【0099】
2. 粒子の用途
粒子は、例えば、塗料に含有される。具体的には、粒子分散液を塗料に配合する。塗料における粒子の配合割合は、例えば、1質量%以上、50質量%以下である。
【0100】
3. 作用効果
この粒子の製造方法では、工程(1)において、水性媒体中、界面活性剤の不存在下で、親水性の第1重合性ビニルモノマーを重合させ、さらに、第1重合性ビニルモノマーと第2重合性ビニルモノマーと第3重合性ビニルモノマーとの合計に対する第1重合性ビニルモノマーの配合割合が9質量%以下と少なく、第2重合性ビニルモノマーの配合割合が10質量%以下と少ない。そのため、第1シード粒子および第2シード粒子のそれぞれのサイズを小さくでき、そのため、粒子のサイズを小さくできる。
【0101】
そうすると、この粒子を含有する塗料から調製される塗膜は、表面を均一にでき、平滑にできる。塗膜は、塗料を塗布および乾燥して、形成される。
【実施例0102】
以下に、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0103】
まず、実施例および比較例で使用する原料を説明する。
【0104】
HEMA メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(親水性基含有(メタ)アクリル酸エステル)
EA アクリル酸エチル((メタ)アクリル酸エステルモノマー)
MMA メタクリル酸メチル((メタ)アクリル酸エステルモノマー)
BA アクリル酸n-ブチル((メタ)アクリル酸エステルモノマー)
MAA メタクリル酸(官能基含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有ビニルモノマー)
ST スチレン(芳香族ビニルモノマー)
【0105】
ラウリル硫酸ナトリウム (非反応性アニオン性界面活性剤)
ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム (非反応性アニオン性界面活性剤、KAO社製 ラテムルE-118B)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(非反応性ノニオン性界面活性剤、KAO社製 エマルゲン1118S-70)
アデカリアソープ(反応性界面活性剤、ADEKA社製 アデカリアソープSR-10、α-[2-[(アリルオキシ)-1-(アルキルオキシメチル)]エチル]-ω-ポリオキシエチレン硫酸エステル塩)
【0106】
実施例1
工程(1):水を80℃に加熱して攪拌した。続いて、重合開始剤として過硫酸カリウム0.50質量部を水100質量部に対して添加して、80℃の重合開始剤水溶液を調製した。重合開始剤水溶液における過硫酸カリウムの濃度は、0.50質量%であった。
【0107】
上記した重合開始剤水溶液に第1重合性ビニルモノマーとしてのHEMAを一括添加配合して、攪拌した。
【0108】
水100質量部に対する第1重合性ビニルモノマーの配合割合は、0.25質量部であった。第1重合性ビニルモノマー、第2重合性ビニルモノマーおよび第3重合性ビニルモノマーの合計に対する第1重合性ビニルモノマーの配合割合は、0.50質量%であった。第1重合性ビニルモノマー100質量部に対する重合開始剤の配合割合は、200質量部であった。
【0109】
界面活性剤の不存在下で、第1重合性ビニルモノマーが重合して、第1シード粒子を生成した。重合時間は、0.08時間であった。第1シード粒子は、第1シード分散液中で分散していた。
【0110】
工程(2):続いて、80℃の第1シード分散液に対して、界面活性剤を配合して、攪拌した。界面活性剤を第1シード分散液に対して一括添加した。
【0111】
水性媒体100質量部に対する界面活性剤の配合割合は、0.012質量部であった。
【0112】
界面活性剤の存在下で、第1シード分散液の加熱時間は、0.08時間であった。
【0113】
第2分散液の水100質量部に対する第2重合性ビニルモノマーの配合割合は、0.25質量部であった。第2重合性ビニルモノマーは、EA、MMA、および、STを含有しており、第2重合性ビニルモノマーにおけるそれぞれの割合は、90質量%、5質量%、5質量%、および、5質量%であった。上記割合は、表1にも記載される。
【0114】
界面活性剤の存在下で、第1シード粒子をシードとして、第2重合性ビニルモノマーが重合した。第2重合性ビニルモノマーの添加後の重合時間は、0.17時間であった。これによって、第2シード粒子を製造した。
【0115】
工程(3):続いて、80℃の第2シード分散液に対して、第3重合性ビニルモノマーを連続添加して、攪拌した。添加時間は、4時間であった。
【0116】
第3分散液の水100質量部に対する第3重合性ビニルモノマーの配合割合は、33.3質量部であった。第3重合性ビニルモノマーは、MMA、BA、ST、および、MAAを含有しており、第3重合性ビニルモノマーにおけるそれぞれの割合は、79質量%、11質量%、8質量%、および、2質量%であった。上記割合は、表2にも記載される。
【0117】
第2シード粒子をシードとして、第3重合性ビニルモノマーが重合した。添加終了後の重合時間は、1時間であった。これによって、粒子を製造した。
【0118】
工程(3):続いて、第2シード分散液に対して、第3重合性ビニルモノマーを配合して、攪拌した。これによって、第3分散液を調製した。
【0119】
第3分散液の水100質量部に対する第3重合性ビニルモノマーの配合割合は、33.3質量部であった。第3重合性ビニルモノマーは、MMA、BA、ST、および、MAAを含有しており、第3重合性ビニルモノマーにおけるそれぞれの割合は、79質量%、11質量%、8質量%、および、2質量%であった。上記割合は、表2にも記載される。
【0120】
第2シード粒子をシードとして、第3重合性ビニルモノマーが重合した。重合時間は、4時間であった。これによって、粒子を製造した。
【0121】
実施例2から実施例9、および、比較例5
実施例1と同様に処理して、粒子を製造した。但し、第1重合性ビニルモノマーおよび/または界面活性剤の処方を、表3に記載の通りに、変更した。なお、実施例4から実施例9では、反応性界面活性剤を5分かけて添加した。この5分で、反応性界面活性剤は、重合した。
【0122】
比較例1
実施例1と同様に処理して、粒子を製造した。但し、工程(1)を実施しなかった。
【0123】
比較例2
実施例2と同様に処理して、粒子を製造した。但し、工程(1)を実施しなかった。
【0124】
比較例3
実施例3と同様に処理して、粒子を製造した。但し、工程(1)を実施しなかった。
【0125】
比較例4
実施例4と同様に処理して、粒子を製造した。但し、工程(1)を実施しなかった。
【0126】
比較例6
実施例4と同様に処理して、粒子を製造した。但し、工程(1)の前に、界面活性剤を水に配合した。つまり、工程(1)において、界面活性剤の存在下、第1重合性ビニルモノマーを重合した。
【0127】
[評価]
各実施例および各比較例について、以下の事項を評価した。その結果を表3に記載する。
【0128】
<粒子の体積平均径>
粒子の体積平均径を、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて、測定した。粒度分布測定装置として、Nanotrac WAVE II(マイクロトラック・ベル社製)を用いた。
【0129】
【0130】
【0131】