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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157466
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】活線判定装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/15 20060101AFI20241030BHJP
   G01R 31/08 20200101ALI20241030BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20241030BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20241030BHJP
【FI】
G01R19/15
G01R31/08
H02G1/02
G01R31/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071857
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000207089
【氏名又は名称】大電株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520307713
【氏名又は名称】関西電力送配電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 将人
(72)【発明者】
【氏名】倉永 裕司
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 拓人
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 淳
(72)【発明者】
【氏名】蒲ケ原 健
(72)【発明者】
【氏名】坂本 康
(72)【発明者】
【氏名】砂原 智徳
【テーマコード(参考)】
2G014
2G033
2G035
5G352
【Fターム(参考)】
2G014AA12
2G014AB33
2G014AC18
2G033AA02
2G033AD21
2G033AE07
2G033AF01
2G033AF03
2G033AG12
2G033AG14
2G035AB07
2G035AC13
2G035AC16
2G035AD18
2G035AD22
2G035AD23
2G035AD55
5G352AM01
(57)【要約】
【課題】電線・ケーブルの線路状態の活線をスキルレスかつ高精度で判定可能な活線判定装置を提供する。
【解決手段】活線判定装置は、3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定装置において、前記3相ケーブルを構成する各ケーブル間の位相差を検出する位相差検出手段と、前記各ケーブル間の位相差の総和を算出する総和算出手段と、前記位相差の総和が360度の前後所定範囲内か否かの位相閾値に基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定手段と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定装置において、
前記3相ケーブルを構成する各ケーブル間の位相差を検出する位相差検出手段と、
前記各ケーブル間の位相差の総和を算出する総和算出手段と、
前記位相差の総和が360度の前後所定範囲内か否かの位相閾値に基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定手段と、を備えることを特徴とする
活線判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の活線判定装置において、
前記活線判定手段が、複数の前記位相閾値に基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を多段階に判定することを特徴とする
活線判定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の活線判定装置において、
前記3相ケーブルの電流値を測定する電流値測定手段を備え、
前記活線判定手段が、前記電流値が電流閾値を超えているか否かにも基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定することを特徴とする
活線判定装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の活線判定装置において、
前記位相差検出手段が、コイルから構成されることを特徴とする
活線判定装置。
【請求項5】
3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定方法において、
前記3相ケーブルを構成する各ケーブル間の位相差を検出する位相差検出工程と、
前記各ケーブル間の位相差の総和を算出する総和算出工程と、
前記位相差の総和が360度の前後所定範囲内か否かの位相閾値に基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定工程と、を含むことを特徴とする
活線判定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の活線判定方法において、
前記活線判定工程が、複数の前記位相閾値を用いて、当該位相閾値のうち小さい閾値から大きい閾値の順に、前記3相ケーブルの線路状態の活線を多段階に判定することを特徴とする
活線判定方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の活線判定方法において、
前記3相ケーブルの電流値を測定する電流値測定工程を含み、
前記活線判定工程が、前記電流値が電流閾値を超えているか否かにも基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定することを特徴とする
活線判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線・ケーブルの活線であるか否かの線路状態を判定する活線判定装置に関し、特に、簡易かつ高精度に電線・ケーブルの線路状態を判定可能な活線判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の電線・ケーブルの張り替えや系統変更に伴う電線・ケーブルの切断時に、当該電線・ケーブルが活線であるか停止線であるかの線路状態を事前に安全に確認するため電線・ケーブルの活線判定装置が用いられている。
【0003】
電線・ケーブルの活線判定について、従来、電線・ケーブル切断点明示を行う箇所にサーチコイルを用いて、負荷電流により発生する磁界を利用して線路状態の活線判定が行われている(例えば、特許文献1、2参照)。サーチコイルを用いての線路状態の活線判定が不確定な場合には、専門的知識のある立会者の立会いのもとで、停止線の有無が判定(活線判定)されている。
【0004】
しかし、サーチコイルの検知では、作業者の知覚を頼りとして、イヤホンからなる音や針の振れ幅を作業者が検知することによって、線路状態の活線を判定するため、その活線判定の精度は作業者に左右され、判定誤差が生じやすい。また、サーチコイルの特性上、他の活線ケーブルによる誘導電流が発生しているような場合には、正確な測定が困難となる。この場合、活線か停止線かを確実に判定するには、サーチコイルによる検出のみでは十分ではなく、サーチコイルとは別途の装置を用意して信号電流を流す方法もあるが、このような信号電流は発電所などの線路状態が分かるような場所から印加させる必要があるため、手間がかかる等不便な点も多い。
【0005】
また、停電線路の有無を判定する立会者は、停電線路判断についての豊富な経験や熟練度等の高度なスキルが要求される。そのため、人手による作業のため測定誤差が必然的に生じ、活線判定の品質が立会者いかんによって不均一化しやすい。立会省略による業務効率化の観点からも、立会者に拠らないスキルレスかつ高い精度で停電線路を確認できるような装置が切望されている。
【0006】
例えば、従来の活線判定装置としては、クロスボンド接地方式(単心ケーブルでシースを接続し3区間毎に接地を行う方式)を有する長距離地中送電ケーブルの事故区間判別方法という、活線判定とは異なる目的ではあるが、電線・ケーブルの終端部の各相の接地線及び絶縁接続箱のクロスボンド線に貫通型CTを配置し、これらの2次巻線側出力をギャップ付鉄心を有する光磁界センサに集め、3相の電流の合計、即ち零相分に比例した光信号出力を得、隣り合う光磁界センサの光出力信号と位相差及び大きさを比較し事故の有無を判定する電線・ケーブルの事故区間判別方法がある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭59-170273号公報
【特許文献2】特開平6-160441号公報
【特許文献3】特開平5-34402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の活線判定装置としては、活線判定とは異なる目的や課題であり分野も異なってはいるが、例えば、上記特許文献3のように、クロスボンドを有する長距離地中送電ケーブルの事故区間判別方法として光磁界センサなる装置を用いるものもあるが、この光磁界センサの構成及び検出メカニズム等の詳細な構成要件について開示されておらず、概念的なものにとどまっており、具体的な実用化まで至っていない。また、上記特許文献1に記載されているように、光磁界センサは高価である(段落[0003])ことから、コスト面からも実用化までの途は遠い。
【0009】
このように、従来の活線判定装置では、高品質な活線判定が望まれているが、電線・ケーブルの線路状態の活線判定をスキルレスかつ高精度で可能とするものはこれまでのところ見当たらない。
【0010】
本発明は、前記課題を解消するためになされたものであり、電線・ケーブルの線路状態の活線判定をスキルレスかつ高精度で判定する活線判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に開示する活線判定装置は、3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定装置において、前記3相ケーブルを構成する各ケーブル間の位相差を検出する位相差検出手段と、前記各ケーブル間の位相差の総和を算出する総和算出手段と、前記位相差の総和が360度の前後所定範囲内か否かの位相閾値に基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定手段と、を備えるものである。このように、前記3相ケーブルを構成する各ケーブル間の位相差を検出する位相差検出手段と、前記各ケーブル間の位相差の総和を算出する総和算出手段と、前記位相差の総和が360度の前後所定範囲内か否かの位相閾値に基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定手段と、を備えることから、前記各ケーブル間の位相差の総和を基にして前記3相ケーブルの線路状態が簡易に判定されることとなり、従来のサーチコイル等の技術と比較して数値で判定結果が出るため、作業者によらない判断が容易に可能となり、電線・ケーブルの線路状態を簡素な手法により、安定して検出可能となる。
【0012】
また、本願に開示する活線判定装置は、必要に応じて、前記活線判定手段が、複数の前記位相閾値に基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を多段階に判定するものである。このように、前記活線判定手段が、複数の前記位相閾値に基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を多段階に判定することから、複数の前記位相閾値により前記3相ケーブルの線路状態の活線判定誤差が抑制されることとなり、電線・ケーブルの線路状態を簡素な手法により高精度に検出可能となる。
【0013】
また、本願に開示する活線判定装置は、必要に応じて、前記3相ケーブルの電流値を測定する電流値測定手段を備え、前記活線判定手段が、前記電流値が電流閾値を超えているか否かにも基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定するものである。このように、前記3相ケーブルの電流値を測定する電流値測定手段を備え、前記活線判定手段が、前記電流値が電流閾値を超えているか否かにも基づいて、前記3相ケーブルの線路状態を判定することから、前記位相閾値のみならず前記電流閾値を用いて前記3相ケーブルの線路状態が判定されることとなり、電線・ケーブルの線路状態を簡素な手法により高精度に検出可能となる。
【0014】
また、本願に開示する活線判定装置は、必要に応じて、前記位相差検出手段が、コイルから構成されるものである。このように、前記位相差検出手段が、コイルから構成されることから、簡便な装置構成で電線・ケーブルの位相差を容易に検出できることとなり、電線・ケーブルの線路状態を簡素な手法により安定して検出可能となる。また、測定作業は、電流の向きに注意してコイルをケーブルに取り付けるだけでよく、従来のサーチコイルのみを用いた場合と異なり測定結果が数値で表示されるため、慣れない作業者でも簡単に測定及び活線判定することが可能となり、作業者によらないスキルレスな判断が可能となる。また、測定環境についても多数の回線が輻輳している場所でも安定した数値が出るため、外部磁界の影響を気にせずに作業することが可能となる。
【0015】
また、本願に開示する活線判定方法は、3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定方法において、前記3相ケーブルを構成する各ケーブル間の位相差を検出する位相差検出工程と、前記各ケーブル間の位相差の総和を算出する総和算出工程と、前記位相差の総和が360度の前後所定範囲内か否かの位相閾値に基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定工程と、を含むものである。このように、前記3相ケーブルを構成する各ケーブル間の位相差を検出する位相差検出工程と、前記各ケーブル間の位相差の総和を算出する総和算出工程と、前記位相差の総和が360度の前後所定範囲内か否かの位相閾値に基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定工程と、を含むことから、前記各ケーブル間の位相差の総和を基にして前記3相ケーブルの線路状態が簡易に判定されることとなり、従来のサーチコイル等の技術と比較して数値で判定結果が出るため、作業者によらない判断が容易に可能となり、電線・ケーブルの線路状態を簡素な手法により、安定して検出可能となる。
【0016】
また、本願に開示する活線判定方法は、必要に応じて、前記活線判定工程が、複数の前記位相閾値を用いて、当該位相閾値のうち小さい閾値から大きい閾値の順に、前記3相ケーブルの線路状態の活線を多段階に判定するものである。このように、前記活線判定工程が、複数の前記位相閾値を用いて、当該位相閾値のうち小さい閾値から大きい閾値の順に、前記3相ケーブルの線路状態の活線を多段階に判定することから、初期の絞り込みを行って線路状態の活線を判定した後に、誤差によるばらつきを考慮して線路状態の活線が判定され、前記3相ケーブルの線路状態の活線の判定誤差が抑制されて判定精度が高精度化されることとなり、電線・ケーブルの線路状態を簡素な手法により、より高精度に検出可能となる。
【0017】
また、本願に開示する活線判定方法は、必要に応じて、前記3相ケーブルの電流値を測定する電流値測定工程を含み、前記活線判定工程が、前記電流値が電流閾値を超えているか否かにも基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定するものである。このように、前記3相ケーブルの電流値を測定する電流値測定工程を含み、前記活線判定工程が、前記電流値が電流閾値を超えているか否かにも基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定することから、前記位相閾値のみならず前記電流閾値を用いて前記3相ケーブルの線路状態の活線が判定されることとなり、電線・ケーブルの線路状態を簡素な手法により、より高精度に検出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る活線判定装置の構成を表すブロック図を示す。
図2】本発明の第1の実施形態に係る活線判定装置の測定例を表す説明図を示す。
図3】本発明の第1の実施形態に係る活線判定装置の構成を表すブロック図を示す。
図4】本発明の第1の実施形態に係る活線判定装置の測定例を表す説明図を示す。
図5】本発明の第1の実施形態に係る活線判定装置のフローチャートを示す。
図6】本発明の第2の実施形態に係る活線判定装置の構成を表すブロック図を示す。
図7】本発明の第2の実施形態に係る活線判定装置の判定チャート図を示す。
図8】本発明の第2の実施形態に係る活線判定装置の構成を表すブロック図を示す。
図9】本発明の第3の実施形態に係る活線判定装置の位相図を示す。
図10】本発明の第3の実施形態に係る活線判定装置の位相図を示す。
図11】本発明のその他の実施形態に係る活線判定装置の多段階の位相閾値を表す説明図を示す。
図12】本発明の実施例1に係る活線判定装置の3相の位相図を示す。
図13】本発明の実施例1に係る活線判定装置の3相の位相図を示す。
図14】本発明の実施例1に係る活線判定装置の3相の位相差総和値の分布図を示す。
図15】本発明の実施例2に係る活線判定装置について3相の波形を合成した位相図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
本願の第1の実施形態に係る活線判定装置は、図1に示すように、3相ケーブルである電線・ケーブル300(電線・ケーブル300a、300b、及び300cから構成される)の線路状態の活線を判定する活線判定装置において、この3相ケーブルを構成する各電線・ケーブル300間の位相差を検出する位相差検出手段1と、この各ケーブル間の位相差の総和を算出する総和算出手段2と、この位相差の総和が360度の前後所定範囲内か否かの位相閾値に基づいて、この3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定手段3と、を備える構成である。
【0020】
第1の実施形態に係る活線判定装置の対象となるケーブルの種類は、特に限定されず、図1に示すように、電力を供給する電源部100から、電力が供給される負荷200までの区間に配設された電線・ケーブル300の活線判定が可能である。
【0021】
この位相差検出手段1は、特に限定されないが、コイルを用いて、各ケーブルの電流波形を検出可能である。
【0022】
このようなコイルとしては、特に限定されないが、例えば、電流プローブの1種であるロゴスキコイルが挙げられる。ロゴスキコイルは、環状の芯材に導線を巻きつけて形成されたものであり、時々刻々の電流変化に応じた磁気を検出することで容易に電流位相差を算出することが可能である。また、電線・ケーブル300を覆う形で測定するため外部磁界の影響を受けにくい。同時に、非接触の電流センサとしての用途も可能となる。また、空芯コアであることから一般的にCT(カレントトランス)よりも柔軟性があるため様々な電線・ケーブルに容易に設置でき、測定可能な電流値の範囲が広いといった利点もある。
【0023】
かくして、この位相差検出手段1は、図1に示すように、各ケーブルの電流波形を検出するコイル11(第1のコイル11a、第2のコイル11b、第3のコイル11c)と、検出された位相の波形を整形する波形整形部12と、各ケーブル間の位相差を演算する位相差演算部13と、から構成することができる。
【0024】
この位相差検出手段1のコイル11の構成としては、図2に示すように、第1のコイル11aと第2のコイル11bと第3のコイル11cとの3つを使用することで、この3相ケーブルの3相間の位相差を電流波形から同時に検出することができる。また、この3相ケーブルを構成する3つのケーブルの各々に1対1で対応して3つのコイル11が使用されることで、3相の位相差が一括で測定されるので、この位相差検出手段1により検出される位相差をその検出の都度メモリに保持することを要しないという利点もあり、作業の簡素化、作業時間の短縮、測定精度の上昇が実現できる。
【0025】
このように、この位相差検出手段1が、コイル11から構成されることで、簡便な装置構成で電線・ケーブル300の位相差を容易に検出できることとなり、電線・ケーブル300の線路状態を簡素な手法により安定して検出可能となる。
【0026】
この総和算出手段2は、図1に示すように、この位相差演算部13により演算された3相ケーブルの各位相差の加算処理を行う位相差加算部22から構成され、この各ケーブル間の位相差の総和を算出する。
【0027】
この活線判定手段3は、この算出された位相差の総和が360度の前後所定範囲内か否かの位相閾値に基づいて、この3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定部31と、この位相差検出手段1、総和算出手段2、及び活線判定手段3によって得られた検知結果(電流値32a、位相差32b、位相差総和32c、判定結果32d)を画面に出力する出力部32から構成される。
【0028】
なお、本実施形態は、コイルの台数について、上記の3つのコイル11を必要とする構成に限定されるものではない。例えば、図3に示すように、第1のコイル11a及び第2のコイル11bの2つのコイル11から構成することも可能である。この場合、この総和算出手段2は、この位相差検出手段1により検出された位相差をメモリに保持する位相差保持部21を備える。第1のコイル11aと第2のコイル11bの2つを使用することで、図4に示すように、この3相ケーブルの各相関ずつの位相差を2回又は3回で測定して検出できる。このようにコイル11の台数が少ない場合には、コイル11の台数に関するコストや、故障した際の交換等の維持コストを抑制できる利点がある。
【0029】
以下、図5のフローチャートを用いて、第1の実施形態に係る活線判定装置を用いた活線判定方法について示す。
【0030】
まず、この電線・ケーブル300の各線路にコイル11を固定(クランプ固定)する(S0)。この位相差検出手段1が、このコイル11を用いて、電線・ケーブル300から発生している磁界に基づいて電流値を算出する(S1)。これにより、この位相差検出手段1が、電線・ケーブル300から電気的入力を受け付ける。この波形整形部12が、得られた入力波形をローパスフィルタを用いて滑らかな波形に整形する(S2)。
【0031】
整形された波形に基づいて、この位相差演算部13が、各ケーブル間の位相差を演算する(S3)。この位相差保持部21は、この位相差検出手段1により検出された位相差を保持し、位相差加算部22は、この位相差保持部21により保持された3相ケーブルの各位相差を加算し、この各電線・ケーブル300間の位相差の総和を算出する(S4)。
【0032】
例えば、この3相ケーブルを構成する3つの電線・ケーブル300間の各位相差について、電線・ケーブル300aと300bの位相差が110度、電線・ケーブル300bと300cの位相差が120度、電線・ケーブル300cと300aの位相差が130度の場合には、位相差の総和は、110度と120度と130度の合計値360度として算出される。
【0033】
次に、この活線判定部31は、この位相差の総和が360度の前後所定範囲内か否かの位相閾値に基づいて、この3相ケーブルの線路状態の活線を判定する(S5)。
【0034】
この位相閾値は、特に範囲は限定されないが、360度近傍に設定される。例えば、360度±20度(すなわち340度~380度)や、360度±15度(すなわち345度~375度)と設定することができる。
【0035】
このように、この位相閾値が、上述の360度近傍に設定されることから、上述の360度近傍という判定精度の高い閾値を用いて判定結果がシンプルに数値として出るため、作業者のスキルや習熟度に依存しない高精度な判断が容易に可能となり、電線・ケーブル300の線路状態を簡素な手法により安定して検出可能となる。
【0036】
この位相差の合計が上記の位相閾値に基づいて容易に判別できるという優れた効果は、公知の検出装置では到底得られないものである。例えば、公知の検出装置として、地絡電流を検知する零相変流器(ZCT)が挙げられる。しかし、仮に零相変流器(ZCT)を用いて活線判定を行おうとした場合には、そもそも原理的に活線と停止線の判別を行うこと自体が困難である(後述の実施例参照)。
【0037】
第1の実施形態に係る活線判定装置では、測定対象のケーブルが活線の場合、誘導性または容量性の負荷が接続されているかケーブルが周囲の誘導の影響を受けていると各相間の位相差は120度とは差異がある値となるが、3相間の値を合計すると位相閾値である360度近傍となる。停止線の場合は3相間の位相差の合計値が不規則な値又は周囲の誘導の影響により位相閾値である360度近傍とは差異のある値になるが、この場合でも、従来では行えなかった活線と停止線の判別が可能となる。
【0038】
以上の線路状態の活線の判断に基づいて、出力部32は、上記S5で活線と判定された場合には、活線状態の旨の画像表示を出力する(S6)。上記S5で活線と判定されなかった場合には、実施した活線判定が初回か2回目かを判定する(S7)。初回の活線判定のため、再度、この電線・ケーブル300の各線路にコイル11が適切に固定(クランプ固定)されているかのクランプ状態の確認を行う(S9)。その後、再度、上記S0~S5のフローに戻って、線路状態の活線の判断に基づいて、出力部32は、上記S5で活線と判定された場合には、活線状態の旨の画像表示を出力する(S6)。上記S5で活線と判定されなかった場合には、活線判定が初回か2回目かを判定する(S7)。2回目の活線判定のため、活線状態ではない状態と判断してアラーム出力を行う(S9)。この再度の活線判定によって、クランプ固定の状態も考慮して、活線判定の判定精度を一段と向上させることが可能となる。
【0039】
このように、この3相ケーブルを構成する各ケーブル間の位相差を検出する位相差検出手段1と、この各ケーブル間の位相差の総和を算出する総和算出手段2と、この位相差の総和が予め定められた総和値の前後所定範囲内か否かの位相閾値に基づいて、この3相ケーブルの線路状態の活線を判定する活線判定手段3と、を備えることから、この各ケーブル間の位相差の総和を基にしてこの3相ケーブルの線路状態が簡易に判定されることとなり、従来のサーチコイル等の技術と比較して数値で判定結果が出るため、作業者によらない判断が容易に可能となり、電線・ケーブル300の線路状態を簡素な手法により、安定して検出可能となる。
【0040】
なお、上記では、コイル11を使用して、電線・ケーブル300の2相又は3相の複数相に対して測定したが、この形態に限定されず、コイル11を使用して、電線・ケーブル300の1相を3回測定し、位相差を算出することで活線判定することも可能である。
【0041】
(第2の実施形態)
本願の第2の実施形態に係る活線判定装置は、上記第1の実施形態と同様に、前記位相差検出手段1と、前記総和算出手段2と、前記活線判定手段3と、を備え、さらに、図6に示すように、前記3相ケーブルの電流値を測定する電流値測定手段4を備え、前記活線判定手段3が、前記電流値が電流閾値を超えているか否かにも基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定するものである。
【0042】
この電流値測定手段4は、3相ケーブルである電線・ケーブル300の電流値を検出する電流値検出コイル41(第1の電流値検出コイル41a、第2の電流値検出コイル41b、及び第3の電流値検出コイル41c)と、この電流値検出コイル41により検出された電線・ケーブル300の電流値を測定する電流値測定部42と、から構成される。
【0043】
この電流値検出コイル41は、特に限定されないが、例えば、電流プローブの1種であるロゴスキコイルが挙げられる。すなわち、物理的に1つのロゴスキコイルを用いることによって、上述のコイル11と、この電流値検出コイル41と、を機能的に兼用することができる。
【0044】
この活線判定部31は、例えば、図7に示すように、各位相差の総和と測定された電流値に基づく判定チャート図に従うことができる。この判定チャート図では、先ず電流値と位相差の両方に基づいて判定を行う(判定1)。次に、判定1の結果に応じて、位相差総和値が位相閾値に含まれているか否かの判定を行う(判定2)。
【0045】
例えば、図7に従えば、先ず電流値が10[A]以上かつ位相差120±10[度]以内であるかの条件で判定を行い(判定1)、この判定1の条件に適合する場合には、そのまま(判定2による判定は不要で)、線路状態が活線(活線(1))と判定される。この判定1の条件に適合しない場合には、電流値が10[A]以上かつ位相差120±10[度]以外であるかの条件で判定を行う(判定1)。この判定1の条件に適合する場合には、次に、位相差総和が360±15[度]以内の場合かどうかの判定を行い(判定2)、この判定2の条件に適合する場合には、線路状態が活線(活線(2))と判定される。
【0046】
他方、状況に応じて、電流値が10[A]未満かつ位相差120±10[度]以外であるかの条件で判定を行い(判定1)、この判定1の条件に適合する場合には、次に、位相差総和が360±15[度]以外の場合かどうかの判定を行い(判定2)、この判定2の条件に適合する場合には、停止線状態(停止線(1))と判定される。なお、要精査と判定された場合には、例えば、立会い等により、さらなる追加確認が必要であることが示される。このように、要精査と判定される場合が限定されることから、従来のように立会者を必須とする手法よりも、立会者を必要とするケースが最小限化されることとなり、スキルレスかつ高い精度で停電線路を確認できる。
【0047】
この判定チャート図に従うことにより、図7に示される線路状態の活線と停止線(例えば上述の活線(2)と停止線(1))の違いを明確に判別することが可能となり、高精度な活線判定を行うことができる。
【0048】
なお、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、コイルの台数について、上記の3つのコイル11を必要とする構成に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、第1のコイル11a及び第2のコイル11bの2つのコイル11から構成することも可能である。この場合、電流値検出コイル41も、コイル11の台数と連動して、第1の電流値検出コイル41a、及び第2の電流値検出コイル41bの2つから構成される。また、この総和算出手段2は、この位相差検出手段1により検出された位相差をメモリに保持する位相差保持部21を備える。このようにコイル11及び電流値検出コイル41の台数が少ない場合には、コイル11及び電流値検出コイル41の台数・維持に係るコストを抑制できる利点がある。
【0049】
このように、この3相ケーブルの電流値を測定する電流値測定手段4を備え、この活線判定手段3が、この電流値が電流閾値を超えているか否かにも基づいて、この3相ケーブルの線路状態の活線を判定することから、この位相閾値のみならずこの電流閾値を用いてこの3相ケーブルの線路状態の活線が多層的に判定されることとなり、電線・ケーブル300の線路状態を簡素な手法により、より高精度に検出可能となる。
【0050】
なお、上記各実施形態に係る活線判定装置における、前記位相差検出手段1と、前記総和算出手段2と、前記活線判定手段3と、前記3相ケーブルの線路状態の活線を判定する具体的な計算方法の一例を以下に示す。
【0051】
(1)測定回数を2回とした場合(コイル11の数は2台)
3相ケーブルをA相、B相、C相と区別して定義すると、まずはA相、B相のゼロクロス点(+から-又は、-から+に遷移する点)の時間差(-になった場合はそのまま-にする)とそれぞれの波形周期を測定する。
【0052】
A相とC相のゼロクロス点の時間差とそれぞれの波形周期を測定する。時間差が短い順番に並べ、進んでいる波形から順番に第1相、第2相、第3相とする。図9に示すように、第1相を基準とし、第2相と第1相の時間差T21、第3相と第2相の時間差T32、第3相と第1相の時間差T31を求める。
【0053】
図10に示すように、第1相の周期からT31を減算し、T31’を求める。T21、T32、T31’を加算し、位相に変換するとその値が位相差の合計値となる。
【0054】
例えば、A相とB相のゼロクロス点の時間差を0.02秒、A相をC相のゼロクロス点の時間差を0.08秒、3相の周期を1/60(60Hz)とすると、波形を時間差が短い順番に並べると、第1相がA相、第2相がB相、第3相がC相となるため、T21、T31、T32、を求めると以下のようになる。
T21=0.02秒
T31=0.08秒
T32=T31-T21=0.06 秒
【0055】
上記よりT31’は以下のようになる。
T31’= 1/60 - 0.08
=-38/600秒
【0056】
よって T21、T32、T31’の時間差の合計Tは、以下のようになる。
T=0.02 + 0.06 - 38/600= 1/60秒
【0057】
従って、位相差の合計δは以下のように算出される。
δ= 時間差の合計/周期 × 360度=(1/60)/(1/60)× 360 =360度
【0058】
なお、上記のコイル台数及び測定回数に限定されない。例えば、以下のコイル台数及び測定回数の場合も適用可能である。
【0059】
(2)測定回数を3回とした場合(コイル11の数は1台)
1.A相の波形のゼロクロス点及び周期を測定する。
2.B相の波形のゼロクロス点、周期及び A相との時間差を測定する。
3.C相の波形のゼロクロス点、周期及び A相との時間差を測定する。
4.時間差が短い順番に並べ、進んでいる波形から順番に第1相、第2相、第3相とする。
5.第1相を基準とし、第2相と第1相の時間差 T21、第3相と第2相の時間差 T32、第3相と第1相の時間差T31を求める。
6.第1相の周期からT31を減算し、T31’を求める。
7.T21、T32、T31’を加算し、位相に変換するとその値が位相差の合計値となる。
【0060】
(その他の実施形態)
本願のその他の実施形態に係る活線判定装置は、上記第1の実施形態と同様に、前記位相差検出手段1と、前記総和算出手段2と、前記活線判定手段3と、を備え、さらに、図11に示すように、前記活線判定手段3が、複数の前記位相閾値に基づいて、前記3相ケーブルの線路状態の活線を多段階に判定するものである。
【0061】
この活線判定手段3による多段階判定としては、例えば、2つの位相閾値を用いた2段階の判定や、3つの位相閾値を用いた3段階の判定を行うことが可能である。
【0062】
例えば、図11(a)に示すように、位相閾値をL度近傍(例えば360度近傍)とした2段階判定の一例としては、この活線判定手段3は、1回目の位相閾値をL度±M度(例えば360度±15度)と設定して3相ケーブルの線路状態の活線を判定する。これにより図11(a)中の地点Pは線路状態が活線と判定される。
【0063】
その後に、図11(b)に示すように、この活線判定手段3は、2回目の位相閾値をL度±N度(例えば360度±20度)と設定して3相ケーブルの線路状態の活線を判定する。これにより図11(b)中の地点Qは、最初の1回目の活線判定では、誤差が生じて線路状態が活線と判定されなかったとしても、再度の2回目の活線判定では、修正されて、線路状態が活線と判定される。また、図11中の地点Rは、1回目及び2回目の活線判定のいずれにおいても、線路状態が活線と判定されないことから、2重の判定機会を受けて、停止線状態であることが確実に判定される。
【0064】
また、例えば、位相閾値を360度近傍とした3段階判定の一例としては、この活線判定手段3は、1回目の位相閾値を360度±10度と設定して3相ケーブルの線路状態の活線を判定する。その後に、この活線判定手段3は、2回目の位相閾値を360度±15度と設定して3相ケーブルの線路状態の活線を判定する。さらに、この活線判定手段3は、3回目の位相閾値を360度±20度と設定して3相ケーブルの線路状態の活線を判定する。このように、位相閾値を徐々に大きくして設定することがより好適である。
【0065】
このように、この活線判定手段3が、複数のこの位相閾値に基づいて、この3相ケーブルの線路状態の活線を多段階に判定することから、複数のこの位相閾値によりこの3相ケーブルの線路状態の活線の判定誤差が抑制されることとなり、電線・ケーブル300の線路状態を簡素な手法により、より高精度に検出可能となる。
【0066】
特に、この活線判定手段3が、複数のこの位相閾値を用いて、この位相閾値のうち小さい閾値から大きい閾値の順に、この3相ケーブルの線路状態の活線を多段階に判定する場合には、初期の絞り込みを行って線路状態の活線を判定した後に、誤差によるばらつきを考慮して線路状態の活線が判定され、この3相ケーブルの線路状態の活線の判定誤差が抑制されて判定精度が高精度化されることとなり、電線・ケーブル300の線路状態を簡素な手法により、より高精度に検出可能となる。
【0067】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
スキルレスかつ高精度で停電線路を判別可能な活線判定装置を作製した。また、活線判定装置を活線や停止線が混在する複数の現場で検証した。
【0069】
(1)活線判定装置の製作
以下の電流プローブ2台と表示装置1台を接続して取り付けるだけで各電流値及び位相差を測定できるという簡素な活線判定装置を製作した。
電流プローブ
・センサ部:ロゴスキコイル
表示装置
・表示内容:入力2系統の電流値、入力2系統間の電流位相
【0070】
(2)活線判定
実際の送電ケーブルを測定して得られたデータから単相毎の電流値と位相を確認した結果を図12及び図13に示す。測定環境の商用周波数は60Hzとした。活線判定を行う際、ケーブルに一定以上の電流が流れていれば位相差を測定する前に活線と判別できる。そこでまず初めに、電流値を測定できる機器(例:ロゴスキコイル)を用いて電流値を測定した。その値が閾値を超えていた場合は活線と判定する(ここでは閾値を10Aとする)。閾値を下回った場合は3相のケーブルの位相差を各相間ずつないし3相間同時に測定し、その測定結果をローパスフィルタにかけて、フィルタ後の位相差を合計した。図12及び図13から得られた結果を以下の表に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
活線の場合は、例えばA相とB相、B相とC相、C相とA相それぞれの位相差が約120度となり、合計すると360度近傍となった。これは測定対象のケーブルが接続された誘導性または容量性負荷や周囲の活線ケーブルによる誘導の影響を受け、それぞれの位相差が120度付近に該当しない場合でも同様であった。
【0074】
停止線の場合は、大半の場合は位相表示がやや不安定になることを確認した。これは、完全に電流がゼロ又は測定された誘導電流が60Hzではないことが原因と考えられた。いずれにせよ、活線では位相の測定ができない事例は無かったため、位相が不安定の場合は停止線と判断することが可能であった。
【0075】
以上の結果から、線路状態が活線の場合でも120度から40度以上の位相ズレを生じている線路があったが、各相の位相差の合計値としては360度付近に集約されることが確認された。
【0076】
一方、停止線においてはそもそも位相差が検出されない、又は検出されたとしても合計が360度から大きく乖離する場合があることが確認された。この理由として、活線では線路の誘導性または容量性負荷の影響が大きく特定の相が進む又は遅れているだけで各位相の和は制御されている一方で、停止線では各相とも制御されていない誘導電流の影響が大きいことによる違いが考えられる。
【0077】
従って、上述した第2の実施形態に係る活線判定装置に示した図7の判定チャート図に従って、各位相差の合計を確認することで、従来技術では困難な活線(2)と停止線(1)の違いが新たに判別可能となり、高精度で活線判定が行えることが確認された。
【0078】
これまで得られたデータより、図7の判定チャート図に従って、各閾値を電流10A以上、位相差120±10度以内、位相差総和360±15度以内に設定すると図14の位相差総和閾値で表された。図14の結果を以下の表に示す。得られた結果から、実際の線路状態と判定結果を比較することにより、誤判定なく活線判定できることを確認した。
【0079】
【表3】
【0080】
(実施例2)
上記の実施例1に係る活線判定装置と、従来品である零相変流器(ZCT)を用いる場合の違いを確認した。なお、前提として、零相変流器(ZCT)は、位相ではなく3相の時時刻刻の変化を測定して地絡電流の検出を行っていることから、本発明と原理が異なっているため単純な比較対象ではないが、念のために、違いの確認を行ったものである。
【0081】
零相変流器(ZCT)は3相の電流値を合計して地絡電流を検知する機器であり、図15(a)のような3相の位相差がほぼ120度となっている業現場の電線・ケーブルの場合は、A~C相の合成波形に示されるように、地絡電流が発生していない正常な線路(ただし、活線か停止線か判別不能)と判別できる場合もあった。
【0082】
しかし、図15(b)のような負荷変動などで波形が乱れている作業現場の電線・ケーブルの場合は、電流の合計値が0[A]ではなく変動していたことから地絡電流と区別ができなかったため、異常が発生していると誤検知した。これに対して、上記の実施例1に係る活線判定装置は、活線として負荷変動などにより波形に乱れが生じている場合であっても、位相差の合計が360度付近になるか否かで判断可能であったことから、電流値の合計が0でなくても問題なく活線と判別が可能となった。
【0083】
また、停止線に関しては電流値が基本的に0[A]になるため、零相変流器(ZCT)の場合では活線と停止線の判別が困難となるが、上記の実施例1に係る活線判定装置では、位相差の合計が360度付近か否かで容易に判別することができる。さらに、零相変流器(ZCT)自体は電流を相ごとに測定する機能を有していないのに対して、上記の実施例1に係る活線判定装置では、個別に電流値を測定できるため電流値も考慮しての活線判定も可能となる(上述の第2の実施形態参照)という点で有利である。
【符号の説明】
【0084】
100 電源部
200 負荷
300 電線・ケーブル
300a 電線・ケーブル
300b 電線・ケーブル
300c 電線・ケーブル
1 位相差検出手段
11 コイル
11a 第1のコイル
11b 第2のコイル
11c 第3のコイル
12 波形整形部
13 位相差演算部
2 総和算出手段
21 位相差保持部
22 位相差加算部
3 活線判定手段
31 活線判定部
32 出力部
32a 電流値
32b 位相差
32c 位相差総和
32d 判定結果
4 電流値測定手段
41 電流値検出コイル
41a 第1の電流値検出コイル
41b 第2の電流値検出コイル
41c 第3の電流値検出コイル
42 電流値測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15