(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157469
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体モジュール、およびリードフレーム
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20241030BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20241030BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241030BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20241030BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20241030BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241030BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20241030BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241030BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H01L29/78 655F
H01L23/48 G
H01L27/04 F
H01L21/90 S
H01L21/88 Z
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L29/91 L
H01L29/91 E
H01L29/78 657D
H01L29/78 652N
H01L29/78 652P
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071867
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲野 逸人
【テーマコード(参考)】
5F033
5F038
5F048
【Fターム(参考)】
5F033HH07
5F033HH08
5F033RR22
5F033UU03
5F033VV01
5F033VV06
5F033VV07
5F033XX31
5F038AZ08
5F038BE07
5F038BH16
5F038BH20
5F038CA10
5F038DT12
5F048AA07
5F048AB10
5F048AC01
5F048AC06
5F048AC07
5F048AC10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】はんだ飛散の防止効果を得る半導体装置、半導体モジュール、およびリードフレームを提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体チップ40の上方に設けられた温度センス部と、温度センス部とアノードパッド174及びカソードパッド176とにそれぞれ電気的に接続された温度センス配線部(アノード配線およびカソード配線)と、温度センス部の上方に設けられた温度センス保護膜150-4および温度センス配線部の上方に設けられた第1配線保護膜150-7を有する保護膜と、を備える。第1配線保護膜150-7は、温度センス保護膜150-4に隣接する第1領域R1と、第1領域R1よりも温度センス保護膜150-4から離間して設けられ、第1領域R1よりも幅が狭い第2領域R2と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上方に設けられた温度センス部と、
前記温度センス部と電気的に接続された温度センス配線部と、
前記温度センス部の上方に設けられた温度センス保護膜および前記温度センス配線部の上方に設けられた第1配線保護膜を有する保護膜と、
を備え、
前記第1配線保護膜は、
前記温度センス保護膜に隣接する第1領域と、
前記第1領域よりも前記温度センス保護膜から離間して設けられ、前記第1領域よりも幅が狭い第2領域と
を有する、半導体装置。
【請求項2】
前記第1配線保護膜の幅は、前記温度センス保護膜から離れるに従い漸減する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1配線保護膜は、上面視で台形である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1配線保護膜は、上面視で階段状である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2領域の幅は、5μm以上、500μm以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記温度センス配線部の延伸方向における前記第2領域の長さは、500μm以上、5000μm以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記保護膜は、前記温度センス保護膜から、前記第1配線保護膜の延伸方向と異なる方向に延伸する第2配線保護膜を有する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基板の上方に設けられたゲート配線部を備え、
前記第2配線保護膜は、前記ゲート配線部の上方に設けられている
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2配線保護膜は、前記第1領域および前記第2領域を有する
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記温度センス部は、上面視で、前記半導体基板の中央に設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体基板の外周領域に、前記温度センス配線部と電気的に接続された温度センスパッド部を備える
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記温度センス配線部は、カソード配線部と、アノード配線部とを有する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置との接合面に凹部を有するリードフレームと、
前記リードフレームと前記半導体装置とを接合するためのはんだ部と、
を備え、
前記リードフレームは、前記凹部が前記第1配線保護膜に対応するように、前記半導体装置上に配置されている
半導体モジュール。
【請求項14】
前記凹部が前記第1配線保護膜の前記第2領域に対応して設けられている
請求項13に記載の半導体モジュール。
【請求項15】
前記凹部は、前記リードフレームの端部に設けられ、
前記凹部において、前記リードフレームと前記第1配線保護膜との間に、前記はんだ部から延伸して設けられたはんだブリッジを備える
請求項13に記載の半導体モジュール。
【請求項16】
前記はんだブリッジの厚みは、20μm以上、500μm以下である
請求項15に記載の半導体モジュール。
【請求項17】
前記接合面は、
前記半導体装置と接合するための主面部と、
前記主面部の端部に設けられた前記凹部と、
を有し、
前記リードフレームは、前記主面部が前記第1配線保護膜と接するように、前記半導体装置上に配置されている
請求項15に記載の半導体モジュール。
【請求項18】
前記凹部の上端の幅は、100μm以上、500μm以下である
請求項13に記載の半導体モジュール。
【請求項19】
はんだ部を介して半導体装置に接合される接合面を有するリードフレームであって、
前記接合面は、
前記半導体装置と接合するための主面部と、
前記主面部の端部に設けられた凹部と、
を有する
リードフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体モジュール、およびリードフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体素子の上に形成された電極と板状のリードフレームとがはんだで接続された半導体モジュールが記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 国際公開第2020/067059号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体素子の上に形成された電極と板状のリードフレームとをはんだ付けする際に、はんだの一部が飛散し、半導体素子の上に形成されたワイヤ配線用電極に付着するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体基板の上方に設けられた温度センス部と、前記温度センス部と電気的に接続された温度センス配線部と、前記温度センス部の上方に設けられた温度センス保護膜および前記温度センス配線部の上方に設けられた第1配線保護膜を有する保護膜と、を備え、前記第1配線保護膜は、前記温度センス保護膜に隣接する第1領域と、前記第1領域よりも前記温度センス保護膜から離間して設けられ、前記第1領域よりも幅が狭い第2領域とを有する半導体装置を提供する。
【0005】
前記第1配線保護膜の幅は、前記温度センス保護膜から離れるに従い漸減してよい。
【0006】
前記第1配線保護膜は、上面視で台形であってよい。
【0007】
前記第1配線保護膜は、上面視で階段状であってよい。
【0008】
前記第2領域の幅は、5μm以上、500μm以下であってよい。
【0009】
前記温度センス配線部の延伸方向における前記第2領域の長さは、500μm以上、5000μm以下であってよい。
【0010】
前記保護膜は、前記温度センス保護膜から、前記第1配線保護膜の延伸方向と異なる方向に延伸する第2配線保護膜を有してよい。
【0011】
半導体装置は、前記半導体基板の上方に設けられたゲート配線部を備え、前記第2配線保護膜は、前記ゲート配線部の上方に設けられていてよい。
【0012】
前記第2配線保護膜は、前記第1領域および前記第2領域を有してよい。
【0013】
前記温度センス部は、上面視で、前記半導体基板の中央に設けられていてよい。
【0014】
半導体装置は、前記半導体基板の外周領域に、前記温度センス配線部と電気的に接続された温度センスパッド部を備えてよい。
【0015】
前記温度センス配線部は、カソード配線部と、アノード配線部とを有してよい。
【0016】
本発明の第2の態様においては、第1の態様のいずれか1つに係る半導体装置と、前記半導体装置との接合面に凹部を有するリードフレームと、前記リードフレームと前記半導体装置とを接合するためのはんだ部と、を備え、前記リードフレームは、前記凹部が前記第1配線保護膜に対応するように、前記半導体装置上に配置されている半導体モジュールを提供する。
【0017】
前記凹部が前記第1配線保護膜の前記第2領域に対応して設けられていてよい。
【0018】
前記凹部は、前記リードフレームの端部に設けられてよく、半導体装置は、前記凹部において、前記リードフレームと前記第1配線保護膜との間に、前記はんだ部から延伸して設けられたはんだブリッジを備えてよい。
【0019】
前記はんだブリッジの厚みは、20μm以上、500μm以下であってよい。
【0020】
前記接合面は、前記半導体装置と接合するための主面部と、前記主面部の端部に設けられた前記凹部と、を有し、前記リードフレームは、前記主面部が前記第1配線保護膜と接するように、前記半導体装置上に配置されている。
【0021】
前記凹部の上端の幅は、100μm以上、500μm以下であってよい。
【0022】
本発明の第3の態様においては、はんだ部を介して半導体装置に接合される接合面を有するリードフレームであって、前記接合面は、前記半導体装置と接合するための主面部と、
前記主面部の端部に設けられた凹部と、を有するリードフレームを提供する。
【0023】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例に係る半導体モジュール100の一例を示す概略図である。
【
図2】実施例に係る半導体チップ40の上面図の一例である。
【
図3】実施例に係る半導体チップ40の上面図の一例である。
【
図4】
図3に示す保護膜150-7の拡大図の一例である。
【
図5】実施例に係る半導体チップ40の上面図の一例である。
【
図6A】半導体モジュール100の保護膜150-4における断面図の一例である。
【
図6B】半導体モジュール100の保護膜150-7における断面図の一例である。
【
図6C】半導体モジュール100の保護膜150-7における断面図の一例である。
【
図7】比較例に係る半導体チップ40の上面図の一例を示す図である。
【
図8】実施例に係る半導体チップ40の上面図の他の一例である。
【
図9C】半導体モジュール100の保護膜150-7における断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、又、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、1つの図面において、同一の機能、構成を有する要素については、代表して符合を付し、その他については符合を省略する場合がある。
【0026】
本明細書においては半導体チップの深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体モジュールの実装時における方向に限定されない。
【0027】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0028】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0029】
図1は、実施例に係る半導体モジュール100の一例を示す概略図である。半導体モジュール100は、インバータ等の電力変換装置として機能してよい。半導体モジュール100は、1つ以上の絶縁基板21を備える。絶縁基板21のいずれか一方の面には、所定の回路パターン26が設けられ、絶縁基板21の他方の面には、冷却器20が設けられている。回路パターン26は、銅板またはアルミニウム板、あるいはこれらの材料にめっきを施した板を、窒化ケイ素セラミックスや窒化アルミニウムセラミックス等の絶縁基板21に直接接合あるいはろう材層を介して接合することで、構成されてよい。
【0030】
回路パターン26には、1つ以上の半導体チップ40が載置される。半導体チップ40は、半導体装置の一例である。
図1の例では、1つの半導体チップ40が載置される。はんだ部30は、半導体チップ40を回路パターン26に接合する。半導体チップ40は、絶縁基板21を囲む樹脂ケース10や樹脂ケース10に充填される封止樹脂12といった樹脂パッケージにより保護される。なお、樹脂ケース10を設けず、封止樹脂12によるトランスファーモールド等で半導体チップ40等を保護してもよい。
【0031】
半導体チップ40は、IGBT、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードおよびこれらを組み合わせたRC(Reverse Conducting)-IGBT、並びにMOSトランジスタ等を含んでよい。半導体チップ40は、動作状態に応じて発熱量が変化する。例えばRC-IGBTにおいて、IGBTがオンしている状態と、IGBTがオフしてFWDに電流が流れている状態とで、通電箇所が異なるため発熱量が変化する。このため、半導体チップ40は、スイッチング時に温度上昇および温度低下が発生する。
【0032】
本例の半導体チップ40は、上面および下面に電極(例えば、エミッタ電極とコレクタ電極)が形成された縦型のチップである。半導体チップ40は、下面に形成された電極により回路パターン26と接続され、上面に形成された電極により配線部材と接続される。なお、半導体チップ40は縦型のチップに限定されない。半導体チップ40は、回路パターン26と接続される電極を上面に有していてもよい。
【0033】
樹脂ケース10は、半導体チップ40を収容する空間94を囲むように設けられている。絶縁基板21は、樹脂ケース10の下方に設けられている。なお、空間94は、絶縁基板21の上方の領域でかつ樹脂ケース10に囲まれる領域であってよい。
【0034】
本例において、樹脂ケース10は、射出成形により形成可能な熱硬化型樹脂、または、UV成形により形成可能な紫外線硬化型樹脂等の樹脂により成形される。当該樹脂は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂およびアクリル樹脂等から選択される1又は複数の高分子材料を含んでよい。
【0035】
冷却器20は、内部に水等の冷媒を含む。冷却器20は、絶縁基板21等を介して、半導体チップ40を冷却する。また、冷却器20と絶縁基板21の間には、放熱板が設けられていてもよい。冷却器20は、当該放熱板を介して、半導体チップ40を冷却してもよい。
【0036】
半導体チップ40は、その上面が接合部材であるはんだ部32を介して配線部材と接続される。本例の配線部材は、リードフレーム60である。リードフレーム60は、銅またはアルミニウム等の金属材料で形成された部材である。リードフレーム60は、ニッケル等により表面の少なくとも一部がメッキされていてもよい。また、リードフレーム60は、樹脂等により表面の少なくとも一部がコーティングされていてもよい。リードフレーム60は、板状の部分を有してよい。板状とは、対向して配置された2つの主面の面積が、他の面の面積よりも大きい形状を指す。リードフレーム60は、少なくとも、半導体チップ40と接続する部分が板状であってよい。リードフレーム60は、1枚の金属板を折り曲げることで、形成されてよい。
【0037】
リードフレーム60は、半導体チップ40と、回路パターン26とを電気的に接続する。リードフレーム60には、主電流が流れてよい。ここで、主電流とは、半導体チップ40に流れる電流のうち、最大の電流である。本例のリードフレーム60は、チップ接続部62、架橋部64、回路パターン接続部66および足部68を含む。チップ接続部62は、半導体チップ40の上面と接続する部分である。半導体チップ40の上面と接続するチップ接続部62の下面を、接合面と称することがある。回路パターン接続部66は、回路パターン26の上面に接続される部分である。チップ接続部62および回路パターン接続部66は、XY面とほぼ平行な板状の部分であってよい。従って、チップ接続部62および回路パターン接続部66は、半導体チップ40の上面とほぼ平行な板状の部分であってよい。なお、ほぼ平行とは、例えば、2つの部材のなす角度が10度以下の状態を指す。
【0038】
足部68は、Z軸方向に延伸する部分である。架橋部64は、足部68を介して、チップ接続部62および回路パターン接続部66を接続する。架橋部64は、回路パターン26等の導電部材から離れて配置されている。本例の架橋部64は、回路パターン26等の上方に配置されており、チップ接続部62から回路パターン接続部66まで、回路パターン26等を跨ぐように設けられている。
【0039】
本例において、封止樹脂12は、樹脂ケース10の内部に設けられている。封止樹脂12は、半導体チップ40、並びに、配線部材としてのリードフレーム60を封止する。つまり封止樹脂12は、半導体チップ40およびリードフレーム60が露出しないように、半導体チップ40およびリードフレーム60の全体を覆っている。封止樹脂12により、半導体チップ40およびリードフレーム60を保護できる。
【0040】
はんだ部32は、半導体チップ40の上面とリードフレーム60のチップ接続部62の下面との間に設けられ、半導体チップ40およびチップ接続部62を機械的かつ電気的に接続する。はんだ部32は、フィレット部33を有する。フィレット部33は、はんだ部32の端部に設けられた、裾広がりの形をした部分である。フィレット部33は、上面視において(
図5参照)、チップ接続部62と重ならないはんだ部32の部分であってよい。本例において、はんだ部32は、鉛フリーはんだが用いられる。鉛フリーはんだは、例えば、錫-銀-銅からなる合金、錫-亜鉛-ビスマスからなる合金、錫-銅からなる合金、錫-銀-インジウム-ビスマスからなる合金のうち少なくともいずれかの合金を主成分とする。また、このような接合部材として、はんだ部32に代わり、金属焼結体を用いてもよい。金属焼結体は、銀、金、ニッケル、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。
【0041】
図2は、実施例に係る半導体チップ40の上面図の一例である。半導体チップ40は、半導体基板110を備える。半導体基板110は、シリコンまたは化合物半導体等の半導体材料で形成された基板である。半導体基板110は、上面視において端辺102を有する。本例の半導体基板110は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺102を有する。
図1においては、互いに向かい合う1組の端辺102-1および端辺102-2を示している。
図1においては、端辺102-1および端辺102-2と平行な方向をX軸方向、端辺102-1および端辺102-2と垂直な方向をY軸方向とする。
【0042】
半導体基板110には活性部120が設けられている。本例では、半導体基板110には活性部120-1および活性部120-2が設けられている。活性部120は、半導体チップ40をオン状態に制御した場合に半導体基板110の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。したがって、
図2中のウェル領域の間の領域を活性部120としてよい。活性部120には、IGBT等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部が設けられていてよい。活性部120は、FWD等のダイオード素子を含むダイオード部が設けられていてもよい。活性部120は、トランジスタ部およびダイオード部の少なくとも一方が設けられた領域であってよい。活性部120は、上面視において上面主電極と重なる領域であってもよい。上面主電極は、半導体基板110の上面の上方に配置された電極のうち、上面視における面積が最大の電極であってよい。上面主電極は、トランジスタ部のエミッタ領域またはソース領域と電気的に接続されてよく、ダイオード部のアノード領域と電気的に接続されてよい。
図2の例では、エミッタ電極52が上面主電極である。
【0043】
半導体基板110には、P型のウェル領域が設けられている。ウェル領域は、トランジスタ部のベース領域、または、ダイオード部のアノード領域よりも高濃度のP型領域である。ベース領域は、ゲート電極と対向して配置され、ゲート電極に所定のゲート電圧が印加された場合に、ゲート電極と対向する部分にチャネルが形成されるP型領域である。半導体チップ40は、第1ウェル領域111および第2ウェル領域112を有する。第1ウェル領域111および第2ウェル領域112は、上面視において活性部120を挟んで配置されている。第1ウェル領域111および第2ウェル領域112は、予め定められた方向(
図2ではY軸方向)において、活性部120を挟んで配置されている。2つのウェル領域が活性部120を挟むとは、上面視において2つのウェル領域を結ぶいずれかの直線が、活性部120を通過することを指す。
【0044】
第1ウェル領域111は、端辺102-1の近傍に配置されてよい。つまり、第1ウェル領域111と端辺102-1との距離は、第1ウェル領域111と端辺102-2との距離よりも小さい。第2ウェル領域112は、端辺102-2の近傍に配置されてよい。つまり、第2ウェル領域112と端辺102-2との距離は、第2ウェル領域112と端辺102-1との距離よりも小さい。
【0045】
本例の第1ウェル領域111は、Y軸方向において、活性部120と、端辺102-1との間に配置されている。第1ウェル領域111と端辺102-1との間には、活性部120が設けられていない。つまり第1ウェル領域111は、活性部120のY軸方向における端部と、端辺102-1との間に配置されている。
【0046】
本例の第2ウェル領域112は、Y軸方向において、活性部120と、端辺102-2との間に配置されている。第2ウェル領域112と端辺102-2との間には、活性部120が設けられていない。つまり第2ウェル領域112は、活性部120のY軸方向における端部と、端辺102-2との間に配置されている。
【0047】
第1ウェル領域111および第2ウェル領域112は、X軸方向において、端辺102-1および端辺102-2の中央位置Xcを含む範囲に設けられてよい。第1ウェル領域111は、X軸方向において活性部120に挟まれていてよい。第2ウェル領域112は、X軸方向において活性部120に挟まれていてよい。第2ウェル領域112は、第1ウェル領域111よりも、X軸方向において広い範囲に設けられてよい。
【0048】
半導体チップ40は、上面視において活性部120を囲んで配置された周辺ウェル領域113を有してよい。周辺ウェル領域113は、半導体基板110の各端辺と平行に設けられてよい。本例の周辺ウェル領域113は、上面視において、活性部120を囲む環状の領域である。周辺ウェル領域113は、各端辺と垂直な方向における幅が一定であってよい。
【0049】
本例の第1ウェル領域111および第2ウェル領域112は、周辺ウェル領域113よりも、半導体チップ40の中央側に突出している。他の例では、第1ウェル領域111および第2ウェル領域112の少なくとも一方は、周辺ウェル領域113と、半導体基板110の端辺102との間に配置されていてもよい。この場合、第1ウェル領域111および第2ウェル領域112は、周辺ウェル領域113から、端辺102側に突出する。
【0050】
半導体チップ40は、上面視において活性部120を分割する分割ウェル領域114を有してよい。分割ウェル領域114を含むウェル領域により、活性部120は、活性部120-1および活性部120-2に分割されてよい。分割ウェル領域114は、予め定められたウェル長手方向に長手を有している。分割ウェル領域114は、ウェル長手方向に延伸して半導体チップ40を横断する。分割ウェル領域114のウェル長手方向はY軸方向である。
【0051】
分割ウェル領域114は、第1ウェル領域111と、第2ウェル領域112との間に設けられてよい。分割ウェル領域114の長手方向の一端は第1ウェル領域111に接続され、他の一端は第2ウェル領域112に接続されてよい。分割ウェル領域114は、半導体チップ40の中央と重なる領域に設けられてよい。
【0052】
分割ウェル領域114は、上面視においてウェル長手方向と垂直な方向(本例ではX軸方向)の幅が、他の部分よりも広い幅広部115を有してよい。幅広部115も、第1ウェル領域111と、第2ウェル領域112との間に設けられている。幅広部115は、半導体チップ40の中央と重なる領域に設けられてよい。幅広部115は、分割ウェル領域114のウェル長手方向における中央を含む領域に配置されてよい。
【0053】
本例の半導体チップ40は、ゲートパッド50、電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176等のパッド電極を有する。ゲートパッド50は、第1ウェル領域111の上方に配置される第1のパッド領域の一例である。電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176は、第2ウェル領域112の上方に配置される第2のパッド領域の一例である。
【0054】
温度センス部178は、ポリシリコン等の半導体材料で形成されたPN接合ダイオードである。温度センス部178は、上面視で、半導体基板110の中央に設けられている。つまり、温度センス部178は、幅広部115の上方に配置されている。つまり、温度センス部178の少なくとも一部と、幅広部115の少なくとも一部とが重なっている。本例の温度センス部178は、上面視における半分以上の領域が、幅広部115と重なっている。温度センス部178は、全体が幅広部115と重なっていてもよい。
【0055】
幅広部115には、活性部120が設けられていない。半導体チップ40の活性部を集積化すると、活性部に設けられたスイッチング素子からの発熱により、上面視で、半導体チップ40の中央部が加熱されやすくなる。温度センス部178を半導体チップ40中央の幅広部115に設けることにより、半導体チップ40が通常動作温度範囲を超えて過熱することを防止することができる。
【0056】
エミッタ電極52および各パッド電極は、アルミニウム等の金属を含む電極である。エミッタ電極52および各パッド電極と、半導体基板110との間には層間絶縁膜38が設けられている。エミッタ電極52および各パッド電極と、半導体基板110とは、層間絶縁膜38に設けられたコンタクトホールを介して接続する。
図2においては、層間絶縁膜38およびコンタクトホールを省略している。
【0057】
エミッタ電極52は、活性部120の上方に配置されている。エミッタ電極52は、上述したコンタクトホールを介して活性部120と接続されている。エミッタ電極52の上面には、配線部材が接続され、所定のエミッタ電圧が印加される。エミッタ電極52および各パッド電極は、上面視において互いに分離して設けられている。各パッド電極の上面には、ワイヤ等が接続される。エミッタ電極52は、活性部120-1および活性部120-2のそれぞれに対して設けられてよい。
【0058】
ゲートパッド50には、所定のゲート電圧が印加される。ゲートパッド50に印加されたゲート電圧は、後述するゲートランナー等によって、活性部120のトランジスタ部に供給される。ゲートパッド50は、第1ウェル領域111の上方に配置されている。つまり、ゲートパッド50の少なくとも一部と、第1ウェル領域111の少なくとも一部とが重なっている。本例のゲートパッド50は、上面視における半分以上の領域が、第1ウェル領域111と重なっている。ゲートパッド50は、全体が第1ウェル領域111と重なっていてもよい。本例のゲートパッド50は、半導体チップ40の端辺102-1の近傍に配置されてよい。つまり、ゲートパッド50は、エミッタ電極52と半導体チップ40の端辺102-1との間に配置され、ゲートパッド50と端辺102-1との間にはエミッタ電極52が配置されていない。ゲートパッド50は、半導体チップ40の端辺102-1のX軸方向における中央位置Xcを含む領域に配置されてよい。
【0059】
電流検出パッド172は、電流検出部(不図示)と接続されており、電流検出部に流れる電流を検出する。アノードパッド174は、アノード配線180を介して温度センス部178のアノード領域に接続されている。カソードパッド176は、カソード配線182を介して温度センス部178のカソード領域に接続されている。アノードパッド174およびカソードパッド176は、温度センスパッド部の一例であり、アノード配線180およびカソード配線182は、温度センス配線部の一例である。
【0060】
電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176は、第2ウェル領域112の上方に配置されている。電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176の各パッド電極について、パッド電極の少なくとも一部と、第2ウェル領域112の少なくとも一部とが重なっている。本例の電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176は、上面視における半分以上の領域が、第2ウェル領域112と重なっている。電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176は、全体が第2ウェル領域112と重なっていてもよい。
【0061】
本例の電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176の各パッド電極は、半導体チップ40の端辺102-2の近傍に配置されてよい。つまり、電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176の各パッド電極は、エミッタ電極52と半導体チップ40の端辺102-2との間に配置され、各パッド電極と端辺102-2との間にはエミッタ電極52が配置されていない。さらに、各パッド電極は、半導体チップ40の端辺102-2のX軸方向における中央位置Xcを含む領域に配置されてよい。
【0062】
本例のゲートパッド50と、電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176の各パッド電極とは、半導体チップ40の向い合う端辺102-1、102-2にそれぞれ配置され、分割ウェル領域114を介して対向して配置されていてよい。
【0063】
図2においては、ゲートランナー48を破線で示している。ゲートランナー48は、不純物が添加されたポリシリコン、または、金属等の導電材料で形成された配線である。ゲートランナー48は、ゲートパッド50に印加されたゲート電圧を、活性部120に設けられたトランジスタ部に供給する。ゲートランナー48は、ウェル領域の上方に配置されてよい。ゲートランナー48は、ゲート配線部の一例である。
【0064】
半導体チップ40は、上面視において活性部120を囲んで配置されたゲートランナー48-3を有してよい。ゲートランナー48-3は、周辺ウェル領域113の上方に配置されてよい。
【0065】
半導体チップ40は、上面視において第1ウェル領域111の少なくとも一部の領域を囲むゲートランナー48-1を有してよい。ゲートランナー48-1は、上面視において第1ウェル領域111の端辺に沿って配置されてよい。ゲートランナー48-1は、第1ウェル領域111の各端辺と平行な部分を有してよい。
【0066】
半導体チップ40は、上面視において第2ウェル領域112の少なくとも一部の領域を囲むゲートランナー48-2を有してよい。ゲートランナー48-2は、上面視において第2ウェル領域112の端辺に沿って配置されてよい。ゲートランナー48-2は、第2ウェル領域112の各端辺と平行な部分を有してよい。
【0067】
半導体チップ40は、上面視において分割ウェル領域114の上方に配置されたゲートランナー48-4を有してよい。半導体チップ40は、上面視において幅広部115の少なくとも一部の領域を囲むゲートランナー48-5を有してよい。ゲートランナー48-5は、上面視において幅広部115の端辺に沿って配置されてよい。ゲートランナー48-5は、幅広部115の各端辺と平行な部分を有してよい。ゲートランナー48-4およびゲートランナー48-5は、上面視において活性部120を分割してよい。
【0068】
半導体チップ40は、周辺ウェル領域113と、半導体基板110の端辺との間に、エッジ終端構造部を備えてもよい。エッジ終端構造部は、半導体基板110の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えば、活性部120を囲んで環状に設けられたガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0069】
図3は、実施例に係る半導体チップ40の上面図の一例である。半導体チップ40は、保護膜150を備える。
図3においては、保護膜150が配置される領域を、斜線のハッチングで示している。保護膜150は、エミッタ電極52の上方、および、半導体基板110の上方に設けられてよい。保護膜150は、エミッタ電極52の上面に接していてよい。保護膜150を設けることにより、半導体チップ40の上面を保護することができる。保護膜150は、一例として、ポリイミド膜である。
【0070】
半導体チップ40は、第1ウェル領域111を覆う保護膜150-1を有してよい。保護膜150-1は、ゲートパッド50の上面の一部を露出させてよい。これにより、ゲートパッド50の上面にワイヤ等を接続できる。
【0071】
半導体チップ40は、第2ウェル領域112を覆う保護膜150-2を有してよい。保護膜150-2は、電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176の上面の一部を露出させてよい。これにより、電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176の上面にワイヤ等を接続できる。
【0072】
半導体チップ40は、周辺ウェル領域113を覆う保護膜150-3を有してよい。保護膜150-3は、周辺ウェル領域113の全体を覆っていてよい。保護膜150-3は、周辺保護膜の一例である。半導体チップ40は、半導体基板110の上面を分割する保護膜150-5および保護膜150-6を有してよい。保護膜150-5および保護膜150-6は、半導体基板110の上面を、X軸方向に横切って設けられてよい。本例では、保護膜150-5が保護膜150-2と接続し、保護膜150-6が保護膜150-1と接続して設けられている。
【0073】
半導体チップ40は、分割ウェル領域114を覆う保護膜150-4、保護膜150-7および保護膜150-8を有してよい。保護膜150-4、保護膜150-7および保護膜150-8により、分割ウェル領域114の全体が覆われていてよい。本例では、保護膜150-4が、幅広部115の全体を覆っており、保護膜150-7が、幅広部115と保護膜150-5との間の分割ウェル領域114を覆い、保護膜150-8が、幅広部115と保護膜150-6との間の分割ウェル領域114を覆っている。
【0074】
保護膜150-4は、温度センス保護膜の一例であり、保護膜150-7は、第1配線保護膜の一例であり、保護膜150-8は、第2配線保護膜の一例である。つまり、保護膜150-4は、温度センス部178の上方に設けられ、保護膜150-7は、温度センス配線部(アノード配線180およびカソード配線182)の上方に設けられ、保護膜150-8は、ゲートランナー48-4の上方に設けられている。保護膜150-7は、温度センス配線部およびゲートランナー48-4の上方に設けられていてもよい。
【0075】
保護膜150-7および保護膜150-8は、保護膜150-4から異なる方向に延伸している。本例では、保護膜150-7は、保護膜150-4から+Y軸方向に延伸して保護膜150-5に接続し、保護膜150-8は、保護膜150-4から-Y軸方向に延伸して保護膜150-1に接続している。
【0076】
保護膜150は、エミッタ電極52の上面の一部を露出させている。これにより、エミッタ電極52の上面に、ワイヤ等を容易に接続できる。
【0077】
図4は、
図3に示す保護膜150-7の拡大図の一例である。本例の保護膜150-7は、保護膜150-4に隣接する第1領域R1と、第1領域R1よりも保護膜150-4から離間して設けられ、第1領域R1よりも幅が狭い第2領域R2とを有する。第2領域R2は、保護膜150-5に隣接する。ここで、幅とは、保護膜150-7の延伸方向に直交する方向(本例ではX軸方向)における距離を指す。
【0078】
本例の保護膜150-7の幅は、保護膜150-4から離れるに従い漸減する。本例の保護膜150-7は、上面視で台形である。あるいは、保護膜150-7は、テーパ状であってもよい。第1領域R1の保護膜150-4側の端部の幅W1は、保護膜150-4の幅W0以下であってよい。第1領域R1および第2領域R2の境界の幅W2は、温度センス配線部の幅以上であり、かつ、保護膜150-4の幅W0よりも小さい。幅W1は、20μm以上、500μm以下であり、幅W2は、10μm以上、500μm以下である。
【0079】
第1領域R1の幅は、20μm以上、500μm以下であり、第2領域R2の幅は、5μm以上、500μm以下である。Y軸方向において、第1領域R1の長さL1は、300μm以上、3000μm以下であり、第2領域R2の長さL2は、500μm以上、5000μm以下である。
【0080】
同様に、保護膜150-8の幅も、保護膜150-4から離れるに従い漸減する。本例の保護膜150-8は、保護膜150-4に隣接する第1領域R1と、第1領域R1よりも保護膜150-4から離間して設けられ、第1領域R1よりも幅が狭い第2領域R2とを有する。保護膜150-8の第2領域R2は、保護膜150-6に隣接する。
【0081】
図5は、実施例に係る半導体チップ40の上面図の一例である。
図5においては、半導体チップ40におけるはんだ部32(
図5中ではフィレット部33)およびリードフレーム60のチップ接続部62の配置の一例を示している。
図5では、チップ接続部62と重なる保護膜150を点線で示している。
【0082】
チップ接続部62は、上面視において端辺を有する。本例のチップ接続部62は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺を有する。一つの端辺は、上面視において同一の直線上に配置された辺である。
図1においては、互いに向かい合う1組の第1端辺104および第2端辺106を示している。チップ接続部62の第1端辺104は、ゲートパッド50と対向している。第1端辺104は、チップ接続部62の端辺のうち、ゲートパッド50に最も近い端辺である。チップ接続部62の第2端辺106は、電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176と対向している。第2端辺106は、第1端辺104とは逆側の端辺である。第2端辺106は、チップ接続部62の端辺のうち、電流検出パッド172、アノードパッド174およびカソードパッド176のいずれかと最も近い端辺であってよい。
【0083】
半導体チップ40にリードフレーム60をはんだ部32を介して接続する場合、保護膜150-4、保護膜150-7および保護膜150-8の一部とリードフレーム60のチップ接続部62が接触する。保護膜150にポリイミド膜等の非金属を使用した場合、保護膜150ははんだ濡れ性が低いため、保護膜150とチップ接続部62との間に空気等のボイドが発生してしまう。保護膜150とチップ接続部62との間にボイドが存在すると、熱処理装置にて減圧処理を実施する場合等において、はんだ飛散が発生してしまう。はんだがパッド電極上に飛散すると、パッド電極とワイヤ等との接続信頼性が低下する。また、はんだ飛散によってパッド領域とエミッタ電極52とが接続してしまう場合もある。
【0084】
本例の保護膜150-7および保護膜150-8は、第1領域R1よりも幅が狭い第2領域R2を有する。本例の第2領域R2は、保護膜150-2および保護膜150-1に隣接する。フィレット部33の下方には、第2領域R2の少なくとも一部が設けられている。
【0085】
上述したように、保護膜150ははんだ濡れ性が低いため、保護膜150-4上にはんだ部32が設けられていない。同様に、保護膜150-7および保護膜150-8の第1領域R1上にも、フィレット部33は設けられていない。
【0086】
これに対し、第1領域R1よりも幅が狭い保護膜150-7および保護膜150-8の第2領域R2の上方には、フィレット部33から延伸するはんだブリッジ36が設けられている。本例の第2領域R2は、はんだブリッジ36が形成される領域である。本例のはんだブリッジ36は、Y軸方向におけるフィレット部33の端部に設けられている。他の例では、はんだブリッジ36は、保護膜150-7および保護膜150-8の第2領域R2の延伸方向(Y軸方向)に沿って、フィレット部33の端部からはんだ部32まで延伸して設けられてよい。
【0087】
はんだブリッジ36は、半導体チップ40にはんだ部32を介してチップ接続部62を接続するときに、保護膜150上に残存したはんだから形成される。はんだブリッジ36は、熱処理時に保護膜150-4側から飛散するはんだを阻止し、パッド電極上に飛散することを防止する。このため、これらのパッド電極とワイヤとの接続信頼性を維持でき、また、電流検出パッド172、アノードパッド174またはカソードパッド176とエミッタ電極52が接続してしまう不良が発生しにくくなる。はんだブリッジ36の厚みは、20μm以上、500μm以下であってよい。ここで、厚みとは、半導体基板110の深さ方向(Z軸方向)における、上端と下端との間の距離を指す。
【0088】
図6Aは、半導体モジュール100の保護膜150-4における断面図の一例である。
図6Aは、保護膜150-4、チップ接続部62、はんだ部32、エミッタ電極52、温度センス部178およびゲートランナー48-4を通るXZ面である。
【0089】
温度センス部178は、半導体基板110の上方に層間絶縁膜38を介して設けられた多結晶シリコンによるPN接合ダイオードを有する。ゲートランナー48-4は、PN接合ダイオード近傍で分岐し、PN接合ダイオードを囲むように延伸する。これにより、ゲートランナー48-4は、温度センス部178との絶縁を確保する。
【0090】
本例のゲートランナー48-4は、ゲート電極と電気的に接続されたポリシリコン配線46と、ポリシリコン配線46の上方を延伸し、コンタクトホールを介してポリシリコン配線46と電気的に接続された金属配線47とを有する。他の例では、ゲートランナー48-4は、ポリシリコン配線46または金属配線47のいずれか一方のみを有してもよい。
【0091】
本例の保護膜150-4は、温度センス部178および金属配線47の上方に設けられている。保護膜150-4およびエミッタ電極52の上方には、チップ接続部62が設けられている。エミッタ電極52ははんだ部32を介してチップ接続部62と電気的に接続されている。これに対し、チップ接続部62と保護膜150-4との間にはんだ部32が設けられておらず、保護膜150-4の上面は、チップ接続部62の下面に直接接している。これは、保護膜150-4がはんだ濡れ性の低いポリイミド等で形成されていることによる。ただし、保護膜150-4とチップ接続部62との間に空気等のボイドが発生することがある。
【0092】
図6Bは、半導体モジュール100の保護膜150-7における断面図の一例である。
図6Bは、保護膜150-7の第1領域R1、チップ接続部62、はんだ部32、エミッタ電極52、アノード配線180、カソード配線182、およびゲートランナー48-4を通るXZ面である。なお、保護膜150-8の第1領域R1を通るXZ面は、アノード配線180およびカソード配線182を含まない点を除き、保護膜150-7の第1領域R1を通るXZ面と共通するので、図示を省略する。
【0093】
本例の保護膜150-7は、アノード配線180、カソード配線182、およびゲートランナー48-4の上方に設けられている。保護膜150-7の幅は、保護膜150-4から離れるに従い漸減する。第1領域R1の幅は、保護膜150-4の幅以下である。保護膜150-7およびエミッタ電極52の上方には、チップ接続部62が設けられている。第1領域R1では、チップ接続部62と保護膜150-7との間にはんだ部32が設けられておらず、保護膜150-7の上面は、チップ接続部62の下面に直接接している。従って、保護膜150-4と同様に、保護膜150-7とチップ接続部62との間に空気等のボイドが発生することがある。
【0094】
図6Cは、半導体モジュール100の保護膜150-7における断面図の一例である。
図6Cは、保護膜150-7の第2領域R2、フィレット部33、エミッタ電極52、アノード配線180、カソード配線182、およびゲートランナー48-4を通るXZ面である。なお、保護膜150-8の第2領域R2を通るXZ面は、アノード配線180およびカソード配線182を含まない点を除き、保護膜150-7の第2領域R2を通るXZ面と共通するので、図示を省略する。
【0095】
第2領域R2の幅は、第1領域R1の幅よりも狭い。第2領域R2では、保護膜150-7の上方に、フィレット部33から延伸するはんだブリッジ36が設けられている。本例のはんだブリッジ36は、Y軸方向におけるフィレット部33の端部に設けられている。はんだブリッジ36の厚みは、20μm以上、500μm以下であってよい。なお、はんだブリッジ36は、第2領域R2の延伸方向(Y軸方向)に沿って、フィレット部33の端部からはんだ部32まで延伸して設けられてもよい。この場合、はんだブリッジ36は、チップ接続部62の下面と保護膜150-7の上面との間に設けられる。
【0096】
図7は、比較例に係る半導体チップ40の上面図の一例を示す図である。ここでは、実施例に係る半導体チップ40と共通する部材には同じ符号を付し、説明を省略する。比較例に係る保護膜150-7および保護膜150-8は、一定の幅を有している。
【0097】
保護膜150にポリイミド膜等の非金属を使用した場合、保護膜150ははんだ濡れ性が低いため、保護膜150とチップ接続部62との間に空気等のボイド34が発生することがある。さらに、保護膜150とチップ接続部62との間に、少量のはんだが残存することがある。特に、半導体チップ40の中央において、相対的に大きい面積を有する保護膜150-4上に、ボイド34が発生するとともに、はんだが残存する可能性がある。
【0098】
保護膜150-4上にボイド34が存在したまま、熱処理装置にて減圧処理を実施すると、ボイド34が破裂し、保護膜150上に残存するはんだを飛散させる。はんだ飛散35は、保護膜150-4に接続された保護膜150-7および保護膜150-8上を伝搬して、保護膜150-2および保護膜150-1に到達する。この結果、
図7の比較例では、はんだ飛散35を介して、ゲートパッド50とエミッタ電極52とが接続し、アノードパッド174とエミッタ電極52とが接続している。つまり、はんだ飛散35によってパッド領域とエミッタ電極52が接続し、不良が発生するおそれがある。
【0099】
これに対し、実施例に係る半導体チップ40によれば、保護膜150-7および保護膜150-8の第2領域R2の上方に設けられたはんだブリッジ36が、はんだ飛散35を阻止することができる。
【0100】
なお、比較例に係る保護膜150-7および保護膜150-8の幅を細くすることにより、これらの上方にはんだブリッジ36を形成することも考えられる。しかしながら、保護膜150-7および保護膜150-8の全体が一定幅で細くなると、はんだブリッジ36が形成される領域を制御することが難しく、保護膜150-7および保護膜150-8に沿って複数のランダムな位置に、はんだブリッジ36が形成されることがある。この場合、破裂したボイド34が、ランダムに形成されたはんだブリッジ36を吹き飛ばし、結果的にはんだ飛散35が発生するおそれがある。
【0101】
これに対し、実施例に係る半導体チップ40によれば、保護膜150-7および保護膜150-8の第2領域R2は、保護膜150-4から離間し、保護膜150-2および保護膜150-1に隣接している。これにより、はんだブリッジ36が保護膜150-4から離間した位置で形成されるように制御することができ、はんだ飛散35が保護膜150-2および保護膜150-1に到達することを防止することができる。
【0102】
図8は、実施例に係る半導体チップ40の上面図の他の一例である。ここでは、実施例に係る半導体チップ40と共通する部材には同じ符号を付し、説明を省略する。本例の保護膜150-7および保護膜150-8は、上面視で階段状である。つまり、本例の保護膜150-7および保護膜150-8の幅は、保護膜150-4から離れるに従い、階段状に漸減する。
【0103】
このように保護膜150-7および保護膜150-8を階段状にすることにより、第2領域R2においてはんだブリッジ36が形成される位置を容易に制御することができる。なお、第1領域R1および第2領域R2のそれぞれの幅および長さは、前述の実施例で説明した数値範囲とすることにより、前述したはんだ飛散の防止効果を得ることができる。
【0104】
図9Aは、チップ接続部62の下面図の一例である。
図9Bは、チップ接続部62の断面図の一例である。本例のチップ接続部62は、半導体チップ40との接合面である下面に、半導体装置と接合するための主面部65と、主面部65の端部に設けられた凹部67とを有してよい。
図9Bは、凹部67を通るXZ面である。
【0105】
凹部67は、保護膜150-7に対応するように設けられている。つまり、凹部67はチップ接続部62の第2端辺106において、保護膜150-7の第2領域R2と重なる位置に設けられている。主面部65は、保護膜150と接している。複数の凹部67が、保護膜150-7および保護膜150-8に対応するように設けられてよい。この場合、凹部67は、チップ接続部62の第1端辺104および第2端辺106の対向する位置に設けられる。
【0106】
凹部67のY軸方向における長さL
Rは、100μm以上、2000μm以下である。
図9Bにおいて、凹部67は矩形断面を有するものとして示されているが、これに限定されない。凹部67の上端の幅W
Rは、下端の幅よりも狭くてよい。幅W
Rは、100μm以上、500μm以下である。
【0107】
図9Cは、半導体モジュール100の保護膜150-7における断面図の一例である。
図9Cは、保護膜150-7の第2領域R2、チップ接続部62、はんだ部32、エミッタ電極52、アノード配線180、カソード配線182、およびゲートランナー48-4を通るXZ面である。本例のチップ接続部62は、接合面に主面部65および凹部67を有する。なお、保護膜150-8の第2領域R2を通るXZ面は、アノード配線180およびカソード配線182を含まない点を除き、保護膜150-7の第2領域R2を通るXZ面と共通するので、図示を省略する。
【0108】
本例の主面部65は、保護膜150-7の上面と接している。本例の凹部67内には、チップ接続部62と保護膜150-7との間に、はんだ部32から延伸するはんだブリッジ36が設けられている。はんだブリッジ36の厚みTSは、20μm以上、500μm以下である。凹部67を設けることにより、半導体チップ40にはんだ部32を介してチップ接続部62を接続するときに、凹部67内にはんだ部32が容易に延伸し、チップ接続部62と保護膜150-7との間にはんだブリッジ36が形成される。これにより、前述の実施例と同様に、はんだ飛散を防止する効果が得られる。
【0109】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0110】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0111】
10・・・樹脂ケース、12・・・封止樹脂、20・・・冷却器、21・・・絶縁基板、26・・・回路パターン、30・・・はんだ部、32・・・はんだ部、33・・・フィレット部、34・・・ボイド、35・・・はんだ飛散、36・・・はんだブリッジ、40・・・半導体チップ、38・・・層間絶縁膜、46・・・ポリシリコン配線、47・・・金属配線、48・・・ゲートランナー、50・・・ゲートパッド、52・・・エミッタ電極、60・・・リードフレーム、62・・・チップ接続部、64・・・架橋部、65・・・主面部、66・・・回路パターン接続部、67・・・凹部、68・・・足部、94・・・空間、100・・・半導体モジュール、102・・・端辺、104・・・第1端辺、106・・・第2端辺、110・・・半導体基板、111・・・第1ウェル領域、112・・・第2ウェル領域、113・・・周辺ウェル領域、114・・・分割ウェル領域、115・・・幅広部、120・・・活性部、150・・・保護膜、172・・・電流検出パッド、174・・・アノードパッド、176・・・カソードパッド、178・・・温度センス部、180・・・アノード配線、182・・・カソード配線