(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015749
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/08 20060101AFI20240130BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A47J27/08 G
A47J27/00 103N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118031
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 康輔
(72)【発明者】
【氏名】樫山 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】飯村 尚之
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055AA08
4B055BA28
4B055CA24
4B055CA25
4B055CA73
4B055CB08
4B055CB09
4B055CB13
4B055CC29
(57)【要約】
【課題】本発明は、構成を簡素化することのできる圧力調整機構を具えた加熱調理器を提供する。
【解決手段】本発明の加熱調理器10は、内鍋と、前記内鍋を収容する調理器本体20と、前記調理器本体を塞ぐ蓋体30と、前記蓋体に装着され、前記内鍋を塞ぐ内蓋40であって、圧力調整孔45が貫通開設された内蓋と、を具え、前記蓋体には、前記圧力調整孔の上側且つ前記圧力調整孔と直交する向きに変位可能に配置され、前記圧力調整孔を開閉する弁体70と、前記弁体に連繋され、前記弁体を変位させる駆動手段60を含む圧力調整機構50と、を有する加熱調理器であって、前記駆動手段は、前記蓋体に固定される固定部61と、前記弁体が係合され、前記弁体の変位方向に移動する可動部65と、を具えるソレノイド60である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内鍋と、
前記内鍋を収容する調理器本体と、
前記調理器本体を塞ぐ蓋体と、
前記蓋体に装着され、前記内鍋を塞ぐ内蓋であって、圧力調整孔が貫通開設された内蓋と、
を具え、
前記蓋体には、前記圧力調整孔の上側且つ前記圧力調整孔と直交する向きに変位可能に配置され、前記圧力調整孔を開閉する弁体と、前記弁体に連繋され、前記弁体を変位させる駆動手段を含む圧力調整機構と、
を有する加熱調理器であって、
前記駆動手段は、前記蓋体に固定される固定部と、前記弁体が係合され、前記弁体の変位方向に移動する可動部と、を具えるソレノイドである、
加熱調理器。
【請求項2】
前記ソレノイドは、通電によって前記固定部から前記可動部が前記圧力調整孔側に移動し、無通電により前記固定部に前記可動部が逆向きに後退するプッシュソレノイドである、
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記可動部は、前記固定部内をスライドする可動鉄心と、前記可動鉄心から前記圧力調整孔方向に延びるプッシュロッドを有し、
前記弁体は、前記プッシュロッドに係合される、
請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記固定部は、前記プッシュロッドが挿通する固定鉄心を有し、
前記固定鉄心と前記可動鉄心との間に、スペーサーを配置している、
請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記ソレノイドと前記弁体は、前記弁体を後退方向に付勢するパッキン部材により連繋されている、
請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記弁体は、前記プッシュロッドが嵌まる筒部を有し、
前記筒部は、前記弁体を下向きに引っ張って、前記パッキン部材が伸びきった状態になっても、前記プッシュロッドから抜けない長さを有する、
請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記ソレノイドは、電力量を調整することで、前記可動部の押し下げ力が可変である、
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を加熱調理する炊飯器などの加熱調理器に関するものであり、より具体的には、内鍋内を高圧にする加圧調理を行なうことができる加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊飯器などの加熱調理器では、食材が投入された内鍋を調理器本体内にセットして蓋体で閉じ、内鍋を加熱する。この加熱の際に、たとえば、特許文献1では、内鍋内を圧力調整機構によって気密に保ち、圧力調理を行なっている。
【0003】
特許文献1の圧力調整機構は、内鍋を塞ぐ内蓋に設けられた圧力調整孔を開放、閉塞する弁体を具える。弁体は、自重によって圧力調整孔を塞ぎ、弁体の側方に設けたソレノイドのロッドを突出させることで、弁体を持ち上げて、圧力調整孔を強制的に開放するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧力調整孔に対して弁体は縦方向に変位するが、ソレノイドのロッドは横方向に動く。このため、弁体の動きを許容、規制するには、運動方向を横方向から縦方向に変換する部材が必要となり、部品点数増や構造の複雑化に繋がる。
【0006】
また、内鍋内の設定圧力は、食材の種類や量、調理プログラムに応じて適宜設定可能とすることが望まれる。しかしながら、弁体の開放と閉塞のみを規制する圧力調整機構では、設定圧力の調整を行なうことが難しい。
【0007】
本発明の目的は、構成を簡素化することのできる圧力調整機構を具えた加熱調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加熱調理器は、
内鍋と、
前記内鍋を収容する調理器本体と、
前記調理器本体を塞ぐ蓋体と、
前記蓋体に装着され、前記内鍋を塞ぐ内蓋であって、圧力調整孔が貫通開設された内蓋と、
を具え、
前記蓋体には、前記圧力調整孔の上側且つ前記圧力調整孔と直交する向きに変位可能に配置され、前記圧力調整孔を開閉する弁体と、前記弁体に連繋され、前記弁体を変位させる駆動手段を含む圧力調整機構と、
を有する加熱調理器であって、
前記駆動手段は、前記蓋体に固定される固定部と、前記弁体が係合され、前記弁体の変位方向に移動する可動部と、を具えるソレノイドである。
【0009】
前記ソレノイドは、通電によって前記固定部から前記可動部が前記圧力調整孔側に移動し、無通電により前記固定部に前記可動部が逆向きに後退するプッシュソレノイドとすることができる。
【0010】
前記可動部は、前記固定部内をスライドする可動鉄心と、前記可動鉄心から前記圧力調整孔方向に延びるプッシュロッドを有し、
前記弁体は、前記プッシュロッドに係合することができる。
【0011】
前記固定部は、前記プッシュロッドが挿通する固定鉄心を有し、
前記固定鉄心と前記可動鉄心との間に、スペーサーを配置することができる。
【0012】
前記ソレノイドと前記弁体は、前記弁体を後退方向に付勢するパッキン部材により連繋することができる。
【0013】
前記弁体は、前記プッシュロッドが嵌まる筒部を有し、
前記筒部は、前記弁体を下向きに引っ張って、前記パッキン部材が伸びきった状態になっても、前記プッシュロッドから抜けない長さを有することが望ましい。
【0014】
前記ソレノイドは、電力量を調整することで、前記可動部の押し下げ力を可変とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の加熱調理器は、弁体の変位方向と、弁体が係合された可動部の移動方向を揃えたことで、運動方向を変換するスライド部材等の部品が不要であり、簡素な構成にすることができる。また、ソレノイドの力を弁体に直接伝えることができ、正確な圧力調整を行なうことができる。さらに、ソレノイドとしてプッシュソレノイドを採用することで、停電時には可動部材の押し下げ力が解除されて、弁体が圧力調整孔を開放するため、停電時の圧力解放のための安全機構を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る炊飯器の斜視図である。
【
図2】
図2は、蓋体を開いた炊飯器の正面図であって、蓋体に内蓋を取り付けた状態を示している。
【
図3】
図3は、蓋体を開いた炊飯器の正面図であって、蓋体から内蓋を取り外した状態を示している。
【
図5】
図5は、蓋体の縦断面図であって、弁体が圧力調整孔を開放している状態を示している。
【
図6】
図6は、圧力調整機構の拡大図であって、弁体が圧力調整孔を開放している状態を示している。
【
図7】
図7は、弁体が圧力調整孔を開放している状態におけるパッキン部材の(a)側面図、(b)断面図及び(c)斜視図である。
【
図8】
図8は、蓋体の縦断面図であって、弁体が圧力調整孔を塞いでいる状態を示している。
【
図9】
図9は、圧力調整機構の拡大図であって、弁体が圧力調整孔を塞いでいる状態を示している。
【
図10】
図10は、弁体が圧力調整孔を塞いだ状態におけるパッキン部材の(a)側面図、(b)断面図及び(c)斜視図である。
【
図11】
図11は、ソレノイドの電圧値と内鍋の圧力値の相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の加熱調理器を炊飯器10に適用した実施形態について説明を行なう。なお、加熱調理器は、圧力鍋や無水鍋等であってもよい。
【0018】
図1は、本実施形態に係る炊飯器10の斜視図、
図2、
図3は、蓋体を開いた状態を示す斜視図である。炊飯器10は、食材が投入される内鍋(図示せず)を収容する調理器本体20と、調理器本体20を塞ぐ蓋体30を具える。
【0019】
調理器本体20は、内鍋の側面や底面と対向する位置にワークコイル等のヒーター(図示せず)が配設されて、内鍋を加熱可能となっている。調理器本体20には、鍋底の温度を測定可能に温度センサーが配置されている。そして、操作スイッチ31の操作に基づいて、制御手段(マイコン)に予め記憶されたプログラムに沿って、たとえばヒーター等の制御を行ない、炊飯、保温等の調理を行なう。
【0020】
内鍋は、炊飯器10に採用される一般的な形態の金属鍋や土鍋を例示でき、食材(炊飯器10の場合は米や水など)を収容する。内鍋の上縁には、外向きにフランジが形成されており、
図2に示す蓋体30の内蓋パッキン42と気密に当接する。
【0021】
蓋体30の上面には、
図1に示すように、炊飯器10を操作する操作スイッチ31と、調理状態(炊飯器10の場合は炊飯、保温状態など)や操作内容、時間等を示す表示部32、内鍋内の蒸気を排出する排気孔37が形成されている。以下、適宜、操作スイッチ31側を「前」と称する。蓋体30は、後端を調理器本体20に開閉可能にヒンジ接続することができ、内蓋40(
図2)を装着した状態で内鍋を塞ぐ。蓋体30は、調理器本体20に対して常時開き方向に付勢されており、調理器本体20の開閉用レバー21を操作することで蓋体30が開き、また、蓋体30を閉じ方向に押さえつけることで閉じ状態で保持する。
【0022】
蓋体30の下面には、
図2や
図4、
図5などに示すように、内蓋40が装着される。内蓋40は、円板状の内蓋プレート41の外周に内鍋のフランジと当接する内蓋パッキン42を取り付けて構成することができる。本実施形態では、
図4に分解して示すように、内蓋40は、内蓋プレート41と内蓋パッキン42、内蓋リング43、カバーパッキン44及び内蓋カバー46から構成しており、負圧弁47と安全弁48が搭載される。
【0023】
内蓋プレート41は、下向きに凹んだ皿状の形態であり、外周に内蓋パッキン42が着脱可能となっている。
【0024】
内蓋プレート41は、内蓋リング43に嵌まっている。内蓋リング43は、前端側と後端側に係止片43a,43bが設けられている。また、蓋体30には、係止片43aを挟むクリップ33と、係止片43bが嵌まる係止受部34が設けられている。そして、
図3に示すように、蓋体30から内蓋40が取り外された状態から、
図2に示すように係止片43bを係止受部34に嵌め、係止片43aをクリップ33に押し込むことで、内蓋40は、蓋体30に装着される。
【0025】
負圧弁47と安全弁48が、樹脂製のカバーパッキン44と、金属製の内蓋カバー46によって内蓋プレート41に取り付けられる。
【0026】
負圧弁47は、内蓋プレート41に開設された負圧弁孔41aを塞ぐように配置される。そして、内鍋内が高圧になったときに負圧弁孔41aを塞ぎ、常圧又は負圧では自重により負圧弁孔41aを開放する。また、安全弁48は、内蓋プレート41に開設された安全弁孔41bを塞ぐように配置され、内鍋内が過剰圧力になったときに安全弁孔41bを開いて、圧力解放する。
【0027】
また、内蓋プレート41には、
図4に示すように、圧力調整孔枠41cが貫通開設されており、カバーパッキン44に圧力調整孔45を設けている。圧力調整孔45は、後述する弁体70と気密に当接できるように、シール性の高いパッキン部材などの弾性部材から形成することができる。
図6に示すように、圧力調整孔枠41cに嵌まる孔筒部45aと、孔筒部45aから上向きにバネ性のある縮径部45bを有している。縮径部45bは、内蓋カバー46に設けられた孔部46aから突出している。
【0028】
蓋体30は、内蓋カバー46の直上に内鍋から圧力調整孔45を通過した蒸気が通る蒸気通路35(
図5に蒸気通路35の一部が示されている)が形成されており、蓋体30の後方側に設けられた調圧空間36に連通している。調圧空間36は、内鍋内から発生するおねば(粘着物)を含む蒸気を冷却し、蒸気とおねばを分離して、蒸気を排気孔37から放出する。蒸気の放出ルートを図中矢印Aで示す。
【0029】
蒸気通路35には、圧力調整孔45の上側に圧力調整機構50が設けられている。圧力調整機構50は、圧力調整孔45を開閉して、内鍋内の圧力状態を調整する。
【0030】
圧力調整機構50は、圧力調整孔45を上側から塞ぐ弁体70と、弁体70を変位させるソレノイド60を具える。ソレノイド60は、本発明の駆動手段である。弁体70は、圧力調整孔45に直交する向き、
図5では、変位方向が上下となるよう移動して、圧力調整孔45を開閉する。また、ソレノイド60は、弁体70を上下方向に変位させる。
【0031】
ソレノイド60は、
図6及び
図9に示すように、固定部61と、固定部61に対して上下に移動可能な可動部65を有する。ソレノイド60は、固定部61がソレノイドケース39に取り付けられ、ソレノイドケース39は、蓋体30に固定されている。
【0032】
ソレノイド60は、プッシュソレノイドを採用することができ、通電によって固定部61から可動部65が弁体70の変位方向に沿う下向きに突出し、無通電により戻しバネ(本実施形態では後述するパッキン部材90)の復元力により可動部65が上向きに後退する構成とすることができる。ソレノイド60への通電及び通電の遮断は、制御手段により行なわれる。
【0033】
固定部61は、
図6に示すように、上記形状の可動部65がスライド可能に嵌まるパイプ部61aが凹設されている。パイプ部61aは、下端に固定部底面61bを有し、固定部底面61bには、プッシュロッド67が嵌まる軸孔61cが形成されている。固定部61は、固定部底面61bから上向きに円錐状に拡径しており、その上部は円筒状形状となっている。固定部底面61bとその上側近傍は、固定鉄心62を構成する。また、パイプ部61aと固定鉄心62を囲むように励磁コイル63が巻回されている。
【0034】
可動部65は、可動鉄心66(プランジャー)の下端からプッシュロッド67を突設して構成することができる。可動鉄心66は、上部が円柱状であって、下部が円錐状に縮径しており、固定部底面61bと対面する可動部下面65aを具える。プッシュロッド67は、可動部下面65aの中央から下向きに突設されている。
【0035】
可動部下面65aと固定部底面61bとの間には、プッシュロッド67が貫通する環状のスペーサー68が配備されている。スペーサー68は、固定部61と可動部65が直接吸着して、設定圧力値にばらつきが生じることを防止する。また、固定部61と可動部65が直接衝突することを防いで、これらの衝突による金属音の発生を抑えることができる。
【0036】
上記構成のソレノイド60は、励磁コイル63に印加する電力量を変化させることで、可動部65が突出する強さを可変とするものを採用することが望ましい。すなわち、電力量を大きくすることで、可動部65の押し下げ力を強くすることができ、下記する弁体70を圧力調整孔45に押し付ける力を大きくできる(後述の
図11参照)。電力量の調整は、制御手段により制御できる。
【0037】
ソレノイド60に取り付けられる弁体70は、
図6に示すように、圧力調整孔45を塞ぐ弁板71と、弁板71から上向きに突設された筒部72を含む。弁板71は、圧力調整孔45と気密に当接可能な大きさ、形状である。筒部72は、プッシュロッド67に覆い被さるように嵌まることで、弁体70がソレノイド60に係合される。筒部72の上端は、外向きに鍔部72aを有する。そして、筒部72の外周には、弁板71の上面と鍔部72aとの間に環状の弁体取付具80が嵌まっている。弁体取付具80は、下面側に円環状の係合溝80aが形成されており、次に説明するパッキン部材90と係合する。また、弁板71の外周縁には、パッキン部材90を保持するリム部72bが上向きに形成されている。
【0038】
弁体70とソレノイド60は、
図6、
図9に示すように、パッキン部材90で気密に接続されている。これにより、ソレノイド60を蒸気通路35から区画することができ、ソレノイド60の蒸気による腐食を防止して、故障を防ぐ。
【0039】
パッキン部材90は、
図6及び
図9、パッキン部材90を単体で示す
図7、
図10のように、弁体70と気密に接続される弁体保持部91と、ソレノイドケース39に気密に接続されるフランジ92を有し、弁体保持部91とフランジ92は蛇腹部93により接続されている。
【0040】
弁体保持部91は、パッキン部材90の下端に設けられ、弁体取付具80を介して弁体70を保持する。弁体保持部91は、内周側に弁体取付具80を包み込む断面略コ字状の保持溝91aが形成されている。また、弁体保持部91の外周は、弁体70のリム部72bの内側に嵌まる大きさである。保持溝91aの下縁内端には、弁体取付具80の係合溝80aと係合する円環状の係合凸部91bが上向きに形成されている。
【0041】
フランジ92は、
図7、
図10に示すように、パッキン部材90の上端に形成された環状の部材である。フランジ92は、
図5に示すように、ソレノイドケース39と、蓋体30に設けられたソレノイド取付枠38に挟持することができる。なお、パッキン部材90は、ソレノイド60の作動により、次に説明する蛇腹部93が伸縮する結果、フランジ92は、ソレノイドケース39とソレノイド取付枠38の間から引っ張られて脱落してしまうことがある。そこで、図示の実施形態では、
図5の丸囲み部の拡大図及び
図7に示すように、フランジ92に抜止め部92aを形成している。抜止め部92aは、たとえば、内周側よりも外周側を厚肉に形成したものを採用できる。抜止め部92aは、上記拡大図に示すように、フランジ92をソレノイドケース39とソレノイド取付枠38の間で挟持したときに、ソレノイド取付枠80の内周に上向きに形成された突条38aと噛合し、パッキン部材90の脱落を防止している。
【0042】
また、パッキン部材90とソレノイドケース39との間から、ソレノイド60内に蒸気が侵入することを防止するため、同じく
図5の丸囲み部の拡大図及び
図7に示すように、フランジ92の上面には三角形のリブ92bを環状に突設している。フランジ92をソレノイドケース39とソレノイド取付枠38の間で挟持したときに、リブ92bは、ソレノイドケース39に当たって圧縮変形し、蒸気の侵入が阻止される。
【0043】
蛇腹部93は、弁体保持部91とフランジ92を気密に連繋する。蛇腹部93は、
図7、
図10に示すように、弁体保持部91から上向きに拡径し、途中に段部が形成されている。蛇腹部93は、バネ性を有し、
図10に示すように蛇腹部93が伸びた状態から、その復元力により、
図7に示すように、弁体保持部91がフランジ92の内側に入るように縮小する。
【0044】
パッキン部材90及び弁体70は、パッキン部材90の蛇腹部93を最も伸びきった状態まで伸ばした状態であっても、弁体70の筒部72は、プッシュロッド67から抜けないように構成する。具体的には、蛇腹部93が延びきった状態で、プッシュロッド67の下端が筒部72に残るように調整する。これにより、何らかの理由により、ユーザーが弁体70を引っ張っても、筒部72がプッシュロッド67から抜けることを防止でき、圧力調整機構50の故障を防止できる。
【0045】
上記構成の圧力調整機構50を具える蓋体30は、
図2に示すように、内蓋40を蓋体30に装着する。これにより、
図5、
図6に示すように、内蓋40の圧力調整孔45は、弁体70と整列する。
【0046】
無負荷の状態、すなわち、ソレノイド60に通電を行なっていない状態では、パッキン部材90の復元力により、
図5及び
図6に示すように弁体70は上方で待機し、圧力調整孔45を開放している。
【0047】
然して、炊飯器10は、以下の要領で使用される。
【0048】
まず、内鍋に食材、たとえば、炊飯の場合は米と水を入れ、調理器本体20にセットし、蓋体30を閉じる。内蓋40は、内蓋パッキン42が内鍋のフランジに気密に当接する。このとき、まだ、ソレノイド60に通電が行なわれていないから、圧力調整孔45は開放状態にある。
【0049】
ユーザーが操作スイッチ31を押下することで、調理プログラムが実行される。たとえば、炊飯の場合、炊飯プログラムが実行される。炊飯プログラムは、その一例として、吸水、昇温、圧力炊飯、炊き上げ工程、追い炊き、蒸らしなどの工程を含むことができる。
【0050】
吸水工程は、米に水分を含ませる工程であり、必要に応じてヒーターを低温で作動させて、温度センサーにより測定される内鍋の温度がたとえば約30℃となるように維持する。そして、続く昇温工程では、ヒーターへの通電量を増して、内鍋を100℃近くまで一気に温度上昇させる。この昇温工程中、内鍋の温度が所定の温度、たとえば約80℃に到達すると、圧力炊飯工程に移る。
【0051】
圧力炊飯工程では、ソレノイド60に通電を行ない、圧力調整孔45を弁体70で塞ぐ。具体的には、固定部61の励磁コイル63に通電を行なうことで、励磁コイル63に磁界が発生し、可動部65の可動鉄心66が磁化され、
図5、
図6の状態から
図8、
図9に示すように、パッキン部材90の付勢力に抗して固定鉄心62側に下降して吸着する。これにより、可動部65のプッシュロッド67に係合されている弁体70は、弁板71が内蓋40の圧力調整孔45を塞ぐ。圧力調整孔45には、バネ性のある樹脂パッキン部材製の縮径部45bが設けられているから、弁板71は、縮径部45bに当たって、圧力調整孔45をより気密に塞ぐことができる。可動部65が固定部61に吸着したとき、可動部下面65aと固定部底面61bとの間にスペーサー68を配置しているから、可動部65と固定部61の衝突による金属音の発生を抑えることができる。
【0052】
弁体70が圧力調整孔45を塞ぐことで、内鍋内は密閉され、内鍋をヒーターによってさらに昇温する結果、食材から発生する蒸気により内鍋内は高圧となる圧力炊飯が行なわれる。内鍋内の設定圧力(最高圧力)は、励磁コイル63に印加される電力量により調整できる。電力量は、たとえば、電圧値、電力値、電流値、通電の有無を調整、或いは、PWM制御等で実行できる。
図11は、一実施例に係るソレノイド60の電圧値と、内鍋の圧力値の関係を示すグラフである。励磁コイル63の印加電圧値は、制御手段により制御することができる。たとえば、圧力炊飯工程における内鍋内の設定圧力は約1.25気圧とすることができる。圧力炊飯工程中に内鍋内が設定圧力を超えると、可動鉄心66の押し下げ力に抗して、弁体70が上向きに移動し、圧力解放されて、設定圧力を維持できる。なお、可動部65と固定部61との間にスペーサー68を配置しているから、可動部下面65aが固定部底面61bに吸着してしまうことはなく、設定した圧力値にバラツキが生じてしまうことを防止できる。
【0053】
圧力炊飯工程が完了すると、ヒーターへの通電量をさらに増して、炊き上げ工程に移行し、内鍋内を沸騰状態で維持する。炊きあげ工程では、内鍋内の水分を十分に蒸発させる。たとえば、内鍋は約260℃まで昇温される。炊き上げ工程中に内鍋内が設定圧力を超えると、ソレノイド60の押し下げ力に抗して、弁体70が上向きに移動し、圧力解放されて、設定圧力が維持される。
【0054】
炊き上げ工程の後、追い炊き工程に移行する。追い炊き工程では、ヒーターへの通電は、間欠的に行なうようにし、内鍋の設定圧力は、圧力炊飯工程、炊き上げ工程よりも一気に下げて(たとえば約1.05気圧)、米の間に残った水分を突沸させると共に、おねばをかき混ぜる。具体的には、制御手段が、ソレノイド60の励磁コイル63に印加する電力量を下げることで、弁体70が上向きに移動し、設定圧力まで圧力解放される。なお、このとき、可動部65と固定部61との間にスペーサー68を配置しているから、可動部65が固定部61に吸着してしまうことはなく、設定した圧力値にバラツキが生じてしまうことを防止できる。
【0055】
このとき、内鍋内の高圧、高温の蒸気やおねばを含む気体は、
図5に矢印Aで示すように圧力調整孔45から蒸気通路35を通過して、調圧空間36に到達する。そして、調圧空間36で、おねばを含む蒸気を冷却し、蒸気とおねばを分離して、蒸気を排気孔37から放出する。
【0056】
このように、本発明では、ソレノイド60への印加電圧を調整することで、内鍋内の設定圧力を容易に調整することができる。
【0057】
追い炊き工程が完了すると、蒸らし工程に移る。蒸らし工程では、必要に応じてヒーターに通電を行なった後、内鍋内の圧力を大気圧に戻す。具体的には、ソレノイド60の励磁コイル63を無通電状態とする。これにより、圧力調整機構50は、パッキン部材90が戻しバネの役割をなして、その復元力により弁体70を可動部65と共に上向きに後退させる。その結果、
図5及び
図6に示すように、弁体70は圧力調整孔45から離れて、圧力調整孔45が開放し、
図5に矢印Aで示すように、内鍋が蒸気通路35、調圧空間36、排気孔37を通じて大気と連通し、大気圧となる。
【0058】
内鍋内の気圧を大気圧に戻した後、所定時間ヒーターを作動させることで、蒸らし工程が完了し、炊飯プログラムが終了する。この後は、適宜ヒーターを作動させて、保温等を行なえばよい。
【0059】
なお、万一、加圧中に、停電、或いは、コンセント抜けなどにより、炊飯器10への通電が遮断された場合には、ソレノイド60への通電も止まる。その結果、圧力調整機構50は、
図5及び
図6に示すように、パッキン部材90の復元力により弁体70を可動部65と共に上向きに後退し、弁体70は圧力調整孔45から離れて、内鍋を大気開放することができる。従って、停電時の圧力解放のための安全機構は不要である。
【0060】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0061】
たとえば、ソレノイド60の復元にパッキン部材90の復元力を利用しているが、別途戻しバネを可動部65に連繋し、戻しバネによりソレノイド60を復元するようにしてもよい。
【0062】
また、ソレノイド60は、プッシュソレノイドに限定されず、プルソレノイド、自己保持型ソレノイド等であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 炊飯器(調理器)
20 調理器本体
30 蓋体
36 調圧空間
40 内蓋
42 内蓋パッキン
45 圧力調整孔
50 圧力調整機構
60 ソレノイド(駆動手段)
61 固定部
65 可動部
68 スペーサー
70 弁体
90 パッキン部材