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特開2024-157491放熱モールディング剤およびこれを利用して形成された放熱フィルム
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  • 特開-放熱モールディング剤およびこれを利用して形成された放熱フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157491
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】放熱モールディング剤およびこれを利用して形成された放熱フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20241030BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241030BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241030BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20241030BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241030BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20241030BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/28
C08K3/36
C08K7/00
C09K5/14 E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023073933
(22)【出願日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】10-2023-0054314
(32)【優先日】2023-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523161181
【氏名又は名称】エルツーワイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】L2Y CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】余學圭
(72)【発明者】
【氏名】許俊
(72)【発明者】
【氏名】金礼一
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP035
4J002CP041
4J002CP044
4J002CP062
4J002CP133
4J002DE146
4J002DF016
4J002DJ016
4J002EX017
4J002EX037
4J002FA016
4J002FA086
4J002FB096
4J002FD016
4J002FD147
4J002FD205
4J002GQ00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優秀な放熱特性を有する放熱モールディング剤および放熱モールディング剤を利用して形成された放熱フィルムを提供する。
【解決手段】第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤を含み、前記第1液型放熱モールディング剤は、第1シリコン樹脂、第1放熱フィラー、架橋剤および第1沈殿防止剤を有し、前記第2液型放熱モールディング剤は、第2シリコン樹脂、第2放熱フィラー、触媒および第2沈殿防止剤を有し、前記第1液型放熱モールディング剤と前記第2液型放熱モールディング剤が混合されて形成されたことを特徴とする放熱モールディング剤。放熱フィラーの表面は疏水性処理され、放熱モールディング剤には沈殿防止剤が導入されることにより、放熱フィラーの混和性が向上して優れた放熱特性が得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤を含み、
前記第1液型放熱モールディング剤は、第1シリコン樹脂、第1放熱フィラー、架橋剤および第1沈殿防止剤を有し、
前記第2液型放熱モールディング剤は、第2シリコン樹脂、第2放熱フィラー、触媒および第2沈殿防止剤を有し、
前記第1液型放熱モールディング剤と前記第2液型放熱モールディング剤が混合されて形成されたことを特徴とする放熱モールディング剤。
【請求項2】
第1放熱フィラーは、3μm~7μmサイズの球状アルミナ、0.1μm~1μmサイズの板状アルミナ、50μm~60μmサイズの第1球状AlN、80μm~100μmサイズの第2球状AlN、0.1μm~0.5μmサイズの板状シリカを含むことを特徴とする請求項1に記載の放熱モールディング剤。
【請求項3】
前記球状アルミナは、前記第1シリコン樹脂対比450wt%~850wt%、前記板状アルミナは、前記第1シリコン樹脂対比10wt%~45wt%、前記第1球状AlNは、前記第1シリコン樹脂対比80wt%~300wt%、前記第2球状AlNは、前記第1シリコン樹脂対比300wt%~550wt%、前記板状シリカは、前記第1シリコン樹脂対比0.1wt%~1wt%含まれることを特徴とする請求項2に記載の放熱モールディング剤。
【請求項4】
前記球状アルミナは、前記第1シリコン樹脂対比750wt%~830wt%、前記板状アルミナは、前記第1シリコン樹脂対比18wt%~45wt%含まれることを特徴とする請求項3に記載の放熱モールディング剤。
【請求項5】
前記沈殿防止剤は、ポリシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の放熱モールディング剤。
【請求項6】
前記架橋剤は、ビニルトリメトキシシランまたはフェニルトリメトキシシランを含むことを特徴とする請求項1に記載の放熱モールディング剤。
【請求項7】
前記架橋剤は、前記放熱フィラーの表面で加水分解によってシラノール基を形成して前記放熱フィラーの表面に吸着することを特徴とする請求項6に記載の放熱モールディング剤。
【請求項8】
前記シラノール基は、以後の硬化工程によって前記放熱フィラーの表面にシロキサン結合を形成することを特徴とする請求項7に記載の放熱モールディング剤。
【請求項9】
前記第2液型放熱モールディング剤が、前記第1液型放熱モールディング剤よりも高い粘度を有し、前記第1液型放熱モールディング剤と前記第2液型放熱モールディング剤との間の粘度の差は、200,000cp以下であることを特徴とする請求項1に記載の放熱モールディング剤。
【請求項10】
前記第1液型放熱モールディング剤は、硬化動作を遅延させるための遅延剤をさらに含み、
前記遅延剤は、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の放熱モールディング剤。
【請求項11】
架橋剤によってシリコン樹脂が硬化した高分子マトリックス;および
前記高分子マトリックス内に分散した放熱フィラーを含み、
前記放熱フィラーは、3μm~7μmサイズの球状アルミナ、0.1μm~1μmサイズの板状アルミナ、50μm~60μmサイズの第1球状AlN、80μm~100μmサイズの第2球状AlN、0.1μm~0.5μmサイズの板状シリカを含むことを特徴とする放熱フィルム。
【請求項12】
前記球状アルミナは、前記第1シリコン樹脂対比450wt%~850wt%、前記板状アルミナは、前記第1シリコン樹脂対比10wt%~45wt%、前記第1球状AlNは、前記第1シリコン樹脂対比80wt%~300wt%、前記第2球状AlNは、前記第1シリコン樹脂対比300wt%~550wt%、前記板状シリカは、前記第1シリコン樹脂対比0.1wt%~1wt%含まれることを特徴とする請求項11に記載の放熱フィルム。
【請求項13】
前記球状アルミナは、前記第1シリコン樹脂対比750wt%~830wt%、前記板状アルミナは、前記第1シリコン樹脂対比18wt%~45wt%含まれることを特徴とする請求項12に記載の放熱フィルム。
【請求項14】
熱伝導度が10.1W/(mK)~10.43W/(mK)の熱伝導度を有することを特徴とする請求項13に記載の放熱フィルム。
【請求項15】
前記架橋剤は、ビニルトリメトキシシランまたはフェニルトリメトキシシランを含むことを特徴とする請求項10に記載の放熱フィルム。
【請求項16】
前記架橋剤は、前記放熱フィラーの表面で加水分解によってシラノール基を形成して前記放熱フィラーの表面に吸着して、前記シラノール基は、以後の硬化工程によって前記放熱フィラーの表面にシロキサン結合を形成することを特徴とする請求項15に記載の放熱フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達性能が改善された放熱モールディング剤およびこれを利用して製造された放熱フィルムに関し、より詳細には放熱特性が向上した放熱モールディング剤および放熱モールディング剤を利用して製作された放熱フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
放熱フィルムは、熱が発生する装置に付着されて外部に熱を伝達する素材である。放熱動作のために熱伝達特性に優れた素材が使用される必要があり、効果的に熱を分散させて、熱の累積を防止する機能が求められる。
【0003】
近年、LED照明、コンピュータ、スマートフォン、およびバッテリーパックにおいては熱発生による様々な問題点が現れる。特に、バッテリーパックから発生する熱は、バッテリーの性能を低下させる一要因になる。二次電池で発生する熱は、熱暴走を起こす。熱衝撃が発生すると、二次電池の内部温度が上昇して、電解質の動作に悪影響を及ぼす。ひどい場合、電解質が気化して、電池の内部圧力が増加して、一定段階をすぎると、電池表面が開放されたり爆発するベンティング(venting)現象が発生する。
【0004】
これを防止するために、バッテリーパックの外観または表面に放熱素材が導入される。放熱素材は、バッテリーパックの表面に付着する必要があり、形状制御性を有する必要がある。即ち、バッテリーパックの多様な形態にもかかわらず、表面に沿って緊密にフィルムの形態で付着する必要がある。従って、高分子マトリックス内に放熱素材が分散した形態である放熱モールディング剤が使用される。
【0005】
放熱モールディング剤は基材上にコーティングされ、硬化工程を通じてフィルムの形態でバッテリーパックに付着する。前記放熱モールディング剤には、熱伝導性樹脂が使用され、熱伝導性樹脂としてはポリウレタンが使用される。
【0006】
韓国登録特許第10-1848895号公報は、多孔性ポリウレタン樹脂を利用し、内部に熱伝導性フィラーを含む放熱複合素材を開示している。熱伝導性フィラーをウレタンモノマーに分散、乾燥および熱圧着を通じてフィルムが製造される。
【0007】
但し、従来の放熱フィルムは、初期に放熱特性が確保されるとしても時間の経過により様々な問題が発生する。
【0008】
第一は、層分離およびcaking現象である。高分子マトリックス内に放熱フィラーが分散したモールディング剤がフィルムの形態で加工されて硬化しても、高分子マトリックスと放熱フィラーが有する比重の差によって高分子マトリックス内の放熱フィラーが分散状態を維持することができず、層で形成される。即ち、分散性が低下した放熱フィラーによって熱放出特性が低下する。また、caking現象は硬化したフィルムが空気との接触によって硬く固まる現象で熱膨張または機械的衝撃により放熱フィルムが基材から剥離される現象が発生する。
【0009】
第二は、過度な荷重による問題である。例えば、車両用バッテリーに放熱フィルムが適用される場合、多数のバッテリーパックに放熱フィルムが形成され、それぞれの放熱フィルムが高い荷重を持てば、車両の燃費が低下する問題が発生する。
【0010】
上述した問題点の中で層分離およびcaking現象は、放熱フィルムの長期安定性を害する原因になる。従って、層分離およびcaking現象を解決できる放熱モールディング剤および放熱モールディング剤が適用された放熱フィルムの開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が達成しようとする第1技術的課題は、放熱特性が改善できる2液型の放熱モールディング剤を提供するところにある。
【0012】
さらに、本発明が達成しようとする第2技術的課題は、前記第1技術的課題の達成を通じて提供される放熱モールディング剤を利用した放熱フィルムを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した第1技術的課題を達成するための本発明は、第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤を含み、前記第1液型放熱モールディング剤は、第1シリコン樹脂、第1放熱フィラー、架橋剤および第1沈殿防止剤を有し、前記第2液型放熱モールディング剤は、第2シリコン樹脂、第2放熱フィラー、触媒および第2沈殿防止剤を有し、前記第1液型放熱モールディング剤と前記第2液型放熱モールディング剤が混合されて形成された放熱モールディング剤を提供する。
【0014】
上述した第2技術的課題を達成するための本発明は、架橋剤によってシリコン樹脂が硬化した高分子マトリックス;および前記高分子マトリックス内に分散した放熱フィラーを含み、前記放熱フィラーは、3μm~7μmサイズの球状アルミナ、0.1μm~1μmサイズの板状アルミナ、50μm~60μmサイズの第1球状AlN、80μm~100μmサイズの第2球状AlN、0.1μm~0.5μmサイズの板状シリカを含むことを特徴とする放熱フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によると、様々なサイズと種類を有する放熱フィラーが導入される。また、放熱フィラーの表面は、架橋剤を通じて疏水性処理され、放熱フィラーは放熱モールディング剤内で斑なく分布される。また、異なる比重を有する放熱フィラーによる層分離現象を防止するために沈殿防止剤が導入されて、沈殿防止剤によって放熱フィラーは斑なく分布される。これにより、高い熱伝導度が確保される。
【0016】
また、液型放熱モールディング剤の間の粘度調節および遅延剤を通じて放熱フィルムのcaking現象は防止され得る。モールディング剤の粘度は、コーティング工程で放熱フィルムの厚さ、表面の平坦度、形状制御に影響を及ぼす。モールディング剤の粘度が低いと、厚さが減少し、表面平坦は改善されるが、形状制御に困難がある。硬化工程で遅延剤が導入されると、局部的な領域から発生し得る速硬化現象が防止され、表面の一部が過度に硬化する現象が防止される。即ち、表面の一部が硬く固まって機械的衝撃に放熱フィルムが破壊されたり剥離されるcaking現象が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の好ましい実施例に係る放熱フィルムの放熱動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、様々な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、特定実施例を図面に例示して本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。各図面を説明しながら類似の参照符号を類似の構成要素について用いた。
【0019】
異なるように定義されない限り、技術的または科学的な用語を含んでここで用いられるすべての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって一般的に理解されるのと同じ意味を有している。一般的に使われる予め定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきで、本出願で明らかに定義しない限り、理想的や過度に形式的な意味と解釈されない。
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明の好ましい実施例をより詳細に説明する。
【実施例0021】
本発明の放熱モールディング剤はシリコン樹脂、架橋剤、触媒、放熱フィラー、沈殿防止剤および遅延剤を有する。
【0022】
前記シリコン樹脂は高分子マトリックスである。
【0023】
前記シリコン樹脂は、下記の化学式1の第1ポリジオルガノシロキサン、下記の化学式2の第2ポリジオルガノシロキサン、下記の化学式3の第1ポリジハイドロゲンシロキサンおよび下記の化学式4の第2ポリジハイドロゲンシロキサンの混合物である。
【0024】
【化1】
【0025】
前記化学式1中、R1は脂肪族不飽和結合を含有しない非置換基であるか、置換された炭化水素が1~5個であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級アルキル基、フェニル基、キシレン基、ベンゼン基などのアリール基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基またはこれらの基の水素原子の一部または全部がハロゲンまたはシアノ基で置換されたクロロメチル基、シアノメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などであり、nは0または正の整数である。
【0026】
前記化学式1の第1ポリジオルガノシロキサンは、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキサングループを遮断されたもので、ジメチルシロキサン、ジメチルシロキサンメチルフェニルシロキサンまたはこられの共重合体であり、常温で粘度が1,000cp~100,000cpであることが好ましい。
【0027】
【化2】
【0028】
前記化学式2中、R1は脂肪族不飽和結合を含まない非置換基であるか、置換された炭化水素数が1~5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級アルキル基、フェニル基、キシレン基、ベンゼン基などのアリール基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基またはこれらの基の水素原子の一部または全部がハロゲン元素またはシアノ基で置換されたクロロメチル基、シアノメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などであり、nは0または正の整数である。
【0029】
前記化学式2の第2ポリジオロガノシロキサンは、分子鎖の両末端がジメチルヒドロキシシロキサン基で遮断され、ジメチルシロキサン、ジメチルシロキサンメチルフェニルシロキサン共重合体またはジメチルシロキサンとメチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体で、不飽和炭化水素基を含まず、常温で粘度が100cp~200,000cpであることが好ましい。
【0030】
【化3】
【0031】
前記化学式3中、R1は、脂肪族不飽和結合を含まない非置換基であるか、置換された炭化水素が1~5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級アルキル基、フェニル基、キシレン基、ベンゼン基などのアリール基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基またはこれらの基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子またはシアノ基で置換されたクロロメチル基、シアノメチル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、nは0または正の整数である。
【0032】
前記化学式3のポリジハイドロゲンシロキサンは、分子鎖の両末端がジメチルハイドロゲンシロキサン基で遮断されたジメチルシロキサン、ジメチルシロキサンメチルフェニルシロキサン共重合体またはジメチルシロキサンとメチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体であり、脂肪族不飽和炭化水素基を含まず、粘度が100cp~100,000cpであることが好ましい。
【0033】
【化4】
【0034】
前記化学式4中、R1およびR4は、脂肪族不飽和結合を含まない非置換基であるか、置換された炭化水素が1~5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級アルキル基、フェニル基、キシレン基、ベンゼン基などのアリール基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基またはこれらの基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子またはシアノ基で置換されたクロロメチル基、シアノメチル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、nおよびmは、0または正の整数である。
【0035】
前記化学式4の第2ポリジハイドロゲンシロキサンは、分子鎖の両末端がトリメチル基シロキサングループで遮断されたジメチルシロキサンおよびメチルハイドロゲンシロキサンの共重合体で、1分子のうちにSi原子と結合する水素原子の数が少なくとも二つであり、常温で粘度が100cp~20,000cpであることが好ましい。
【0036】
シリコン樹脂は、HPDMS(a,w-hydrogen poly(dimethyl-methylphenyl)siloxane)をさらに含むことができる。HPDMSは、放熱モールディング剤の粘度調節用で使用される。
【0037】
前記シリコン樹脂内で、第1ポリジオルガノシロキサンは、15wt%~25wt%、第2ポリジオルガノシロキサンは、20wt%~35wt%、第1ポリジハイドロゲンシロキサンは、40wt%~48wt%、第4ポリジハイドロゲンシロキサンは、0.1wt%~1.5wt%投入される。
【0038】
架橋剤としては、ビニルトリメトキシシラン(vinyltrimethoxy silane,CH=CHSi(OCH)またはフェニルトリメトキシシラン(phenyltrimethoxy silane,CSi(OCH)が使用される。前記架橋剤は、シリコン樹脂を互いに連結してネットワークを形成して、放熱フィラーの表面処理を通じて疏水性特性を有するように改質する。架橋剤によってシリコン樹脂と放熱フィラーとの間に混和性および分散性が向上する。
【0039】
触媒はPtを含み、水和物形態で提供される。使用可能な前記触媒としては、HPtCl・nHO、NaHPtCl・nHO、KHPtCl・nHO、NaPtCl・nHO、KPtCl・nHO、PtCl・nHO、PtCl、NaPtCl・nHO、または、HPtCl・nHOがある。前記触媒は、放熱フィルム形成のための硬化工程において、架橋剤による架橋反応を誘導する。
【0040】
放熱フィラーは、放熱主剤および放熱補助剤を有する。放熱主剤は球状アルミナであり、放熱補助剤は板状アルミナおよび球状AlNを含む。放熱補助剤に球状BNまたは/および板状シリカが追加されてもよい。
【0041】
球状アルミナは、3~7μmのサイズを有し、シリコン樹脂対比450wt%~850wt%で放熱モールディング剤に含まれる。
【0042】
板状アルミナは、0.1μm~1μmのサイズを有し、シリコン樹脂対比10wt%~45wt%の含有量比を有する。また、球状AlNは、2種類のサイズを有して、第1球状AlNは、50~60μmのサイズを有し、シリコン樹脂対比80wt%~300wt%含まれ、第2球状AlNは、80μm~100μmのサイズで第1球状AlNに比べて大きいサイズを有し、300wt%~550wt%の重量比で混合される。板状シリカは、0.1μm~0.5μmサイズを有し、シリコン樹脂対比0.1wt%~1wt%で含まれる。
【0043】
本発明において、球状AlNは、比較的大きいサイズを有し、板状アルミナおよび板状シリカは、小さいサイズを有する。また、放熱主剤である球状アルミナは、中間サイズを有する。実質的に大きいサイズの放熱素材の間に非常に小さいサイズの板状の放熱素材および中間サイズの放熱素材が配置される。これにより、円滑な放熱動作が行われる。
【0044】
また、放熱フィラーは、放熱モールディング剤の粘度とTI(thixotropy index)値に影響を及ぼす。放熱フィラーのサイズが小さいと、粘度とTI値は上昇し、放熱フィラーのサイズが相対的に増加すると、粘度とTI値は下降する。従って、当業者は、放熱フィルム製造工程に適した粘度とTI値を得るために、放熱フィラーそれぞれの重量比を調節することができる。これは、放熱フィラーが有する全体的な表面的に関連する。放熱フィラーの全体表面的が増加すると、粘度とTI値は増加する。
【0045】
本発明において、架橋剤と放熱フィラーとの間の表面反応は、下記の反応式で説明される。
【0046】
[反応式1]
R-Si(OR’)+3HO→R-Si(OH)+3R’OH
【0047】
まず、架橋剤R-Si(OR’)で(R:アルキル基)加水分解が起きて、シラノール基R-Si(OH)は放熱フィラーの表面に吸着する。硬化工程での加熱を通じて下記の反応式2のように放熱フィラーの表面にシロキサン結合が形成されて、固定化される。
【0048】
[反応式2]
R-SiOH+HO-filler→R-Si-O-filler
【0049】
上述した反応式を通じて放熱フィラーの表面は、疏水性に表面処理される。
【0050】
沈殿防止剤は、異なる荷重を有する放熱フィラーが高分子マトリックスであるシリコン樹脂内で沈殿する現象を防止して、攪拌によって放熱モールディング剤内で均等な分散性を有するようにする。
【0051】
沈殿防止剤としては、ポリシロキサンが使用される。沈殿防止剤は、シリコン樹脂対比0.2wt%~0.5wt%が含まれる。前記沈殿防止剤が、設定された範囲未満なら放熱フィラーの一部が沈殿する現象が発生し、設定された範囲を上回ると、シリコン樹脂による接着力が減少して、形成された放熱フィルムが基板から剥離される現象が発生する。
【0052】
遅延剤としては、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン(tetravinyl tetramethyl cyclo tetrasiloxane,[CH(CH=CH)SiO]が使用される。遅延剤によって放熱モールディング剤の硬化は遅延され得る。硬化が速く進行される場合、放熱フィルムの表面の粗さが増加して、放熱フィルム内部の硬化が不完全な状態で表面の硬化が進行されて、フィルム内部の割れが発生する。前記遅延剤は、シリコン樹脂対比0.1wt%~0.6wt%で含まれる。前記遅延剤が、説明された範囲未満なら硬化の遅延が円滑でなく表面粗さが増加する。また、設定された範囲を上回ると、過度な硬化時間により工程の効率性が減少する。
【0053】
上述した組成を有する放熱モールディング剤は2液型で形成される。即ち、第1シリンジおよび第2シリンジが用意され、それぞれのシリンジに放熱モールディング剤が分離して投入される。第1シリンジには第1液型放熱モールディング剤が導入される。前記第1液型放熱モールディング剤は、シリコン樹脂、放熱フィラー、架橋剤、沈殿防止剤、および遅延剤を有する。第2シリンジには第2液型放熱モールディング剤が投入される。第2液型放熱モールディング剤は、シリコン樹脂、放熱フィラー、触媒および沈殿防止剤を含む。2種類のシリンジにシリコン樹脂、放熱フィラーおよび沈殿防止剤は、共通で投入される。沈殿防止剤は、放熱フィラーの均等な分散性を確保するためのものであり、必須的に導入される。
【0054】
また、第1液型放熱モールディング剤は、第2液型放熱モールディング剤に比べて架橋剤および遅延剤を有する。遅延剤は、第2シリンジに投入されてもよいが、第1シリンジで予め架橋剤と混合され、硬化過程で架橋剤の架橋作用を効果的に遅延する。第1シリンジに導入された架橋剤は、放熱フィラーの表面を疏水性化して、以後の2種類の放熱モールディング剤の混合およびコーティング工程で放熱フィラーの層分離現象を防止することができる。
【0055】
また、第2シリンジに触媒が導入される。架橋剤および触媒が異なるシリンジに導入されることにより、それぞれのシリンジ内で硬化動作を発生しないようにする。
【0056】
以後に2種類の放熱モールディング剤は、放熱フィルムの形成のために混合されると、基板に対するコーティング工程が行われる。コーティング工程以後には硬化動作が行われる。
【0057】
本発明において、硬化は熱または光を利用する。熱硬化は80℃~200℃で5分~20分間行われる。それ以外に、熱硬化と光硬化が混合されたハイブリッドタイプの硬化が行われてもよい。例えば、80℃~200℃の条件で近赤外線を照射して硬化が行われてもよい。
【0058】
混合例1:シリコン樹脂の製造
第1ポリジオルガノシロキサン20wt%、第2ポリジオルガノシロキサン30wt%、第1ポリジハイドロゲンシロキサン45.5wt%および第2ポリジハイドロゲンシロキサン0.5wt%を混合してシリコン樹脂を製造する。
【0059】
製造例1:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造1
第1容器に混合例のシリコン樹脂を投入して、球状アルミナは5μmサイズ、板状アルミナは0.5μmサイズ、第1AlNは55μmサイズ、第2AlNは80μmサイズを利用する。
【0060】
球状アルミナは、シリコン樹脂対比500wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比10wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比102.3wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比300wt%混合される。
【0061】
架橋剤であるビニルトリメトキシシランは、シリコン樹脂対比1.58wt%、沈殿防止剤であるポリシロキサンは、シリコン樹脂対比0.348wt%、遅延剤であるテトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンは、シリコン樹脂対比0.4wt%で混合される。
【0062】
第1容器の混合溶液は、適切な手段を利用して攪拌すると、第1液型放熱モールディング剤が製造される。第1液型放熱モールディング剤は、第1シリンジに投入される。
【0063】
第2容器に混合例によって製造されたシリコン樹脂を投入して、球状アルミナは、5μmサイズ、板状アルミナは、0.5μmサイズ、第1AlNは、55μmサイズ、第2AlNは、80μmサイズを利用する。
【0064】
球状アルミナは、シリコン樹脂対比500wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比10wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比102.3wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比300wt%混合される。
【0065】
触媒でHPtCl・nHOがシリコン樹脂対比4.2wt%混合される。
【0066】
第2容器の混合溶液は、適切な手段を利用して攪拌して第2液型放熱モールディング剤を製造する。製造された第2液型放熱モールディング剤は、第2シリンジに投入される。
【0067】
製造例2:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造2
前記製造例1で第1液型および第2液型放熱モールディング剤内で放熱フィラーの含有量比が変更される。第1液型および第2液型内で球状アルミナは、互いに同一にシリンジ内でシリコン樹脂対比450wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比15wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比100wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比350wt%混合されることを除いては、製造例1と組成および含有量は同じである。
【0068】
製造例3:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造3
前記製造例1で第1液型および第2液型放熱モールディング剤内で放熱フィラーの含有量比が変更される。第1液型および第2液型内で球状アルミナは、互いに同一にシリンジ内でシリコン樹脂対比500wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比10wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比102.3wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比500wt%混合されることを除いては、製造例1と組成および含有量は同じである。
【0069】
製造例4:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造4
前記製造例1で第1液型および第2液型放熱モールディング剤内で放熱フィラーの含有量比が変更される。第1液型および第2液型内で球状アルミナは、互いに同一にシリンジ内でシリコン樹脂対比450wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比15wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比100wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比35wt%混合されることを除いては、製造例1と組成および含有量は同じである。
【0070】
製造例5:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造5
前記製造例1で第1液型および第2液型放熱モールディング剤内で放熱フィラーの含有量比が変更される。第1液型および第2液型内で球状アルミナは、互いに同一にシリンジ内でシリコン樹脂対比450wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比10wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比90wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比400wt%混合されることを除いては、製造例1と組成および含有量は同じである。
【0071】
製造例6:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造6
前記製造例2で第1液型および第2液型放熱モールディング剤内で放熱フィラーの含有量比が変更される。第1液型および第2液型内で球状アルミナは、互いに同一にシリンジ内でシリコン樹脂対比500wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比10wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比80wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比500wt%混合されることを除いては、製造例1と組成および含有量は同じである。
【0072】
製造例1~6の第1シリンジと第2シリンジは、分離保管された後、吐出ノズルで混合され、基板上にコーティングされる。コーティング以後、250℃で10分間硬化する。硬化工程が完了した後、製造された放熱フィルムの熱伝導度が測定される。下記の表1に製造例1~製造例6の放熱モールディング剤を利用して製造された放熱フィルムの熱伝導度が開示される。
【0073】
【表1】
【0074】
製造例7:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造-7
前記製造例1で第1液型および第2液型放熱モールディング剤内で放熱フィラーの含有量比が変更される。第1液型および第2液型内で球状アルミナは、互いに同一にシリンジ内でシリコン樹脂対比780wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比20.4wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比100wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比430wt%混合されることを除いては、製造例1と組成および含有量は同じである。
【0075】
製造例8:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造-8
前記製造例1で第1液型および第2液型放熱モールディング剤内で放熱フィラーの含有量比が変更される。第1液型および第2液型内で球状アルミナは、互いに同一にシリンジ内でシリコン樹脂対比800wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比18wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比100wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比450wt%混合されることを除いては、製造例1と組成および含有量は同じである。
【0076】
製造例9:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造-9
前記製造例1で第1液型および第2液型放熱モールディング剤内で放熱フィラーの含有量比が変更される。第1液型および第2液型内で球状アルミナは、互いに同一にシリンジ内でシリコン樹脂対比750wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比20wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比200wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比500wt%混合されることを除いては、製造例1と組成および含有量は同じである。
【0077】
製造例10:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造-10
前記製造例1で第1液型および第2液型放熱モールディング剤内で放熱フィラーの含有量比が変更される。第1液型および第2液型内で球状アルミナは、互いに同一にシリンジ内でシリコン樹脂対比780wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比20.4wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比100wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比430wt%混合されることを除いては、製造例1と組成および含有量は同じである。
【0078】
製造例11:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造-11
前記製造例1で第1液型および第2液型放熱モールディング剤内で放熱フィラーの含有量比が変更される。第1液型および第2液型内で球状アルミナは、互いに同一にシリンジ内でシリコン樹脂対比800wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比30wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比220wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比510wt%混合されることを除いては、製造例1と組成および含有量は同じである。
【0079】
製造例12:第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤の製造-12
前記製造例1で第1液型および第2液型放熱モールディング剤内で放熱フィラーの含有量比が変更される。第1液型および第2液型内で球状アルミナは、互いに同一にシリンジ内でシリコン樹脂対比810wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比45wt%、第1AlNは、シリコン樹脂対比300wt%、第2AlNは、シリコン樹脂対比480wt%混合されることを除いては、製造例1と組成および含有量は同じである。
【0080】
製造例7~12の第1シリンジと第2シリンジは、分離保管された後、吐出ノズルで混合されて、基板上にコーティングされる。コーティング以後250℃で10分間硬化する。硬化工程が完了した後製造された放熱フィルムの熱伝導度が測定される。下記の表2はそれぞれの製造例により製造された放熱フィルムの熱伝導度である。
【0081】
【表2】
【0082】
前記表1および2を比較すると、製造例7~製造例12の放熱フィルムが、10W/(mK)以上の高い熱伝導度を示す。前記表2のデータは、前記表1のデータに比べて球状アルミナの重量比が増加して、板状アルミナの重量比も増加した。
【0083】
製造例において、球状アルミナは、5μmのサイズ、板状アルミナは、0.5μmのサイズを有する。相対的に大きいサイズの球状アルミナの含有量比を増加させながら、最も小さいサイズの板状アルミナの微量増加が、熱伝導度の向上の重要な要素であることが確認される。
【0084】
即ち、球状アルミナは、シリコン樹脂対比750wt%~830wt%、板状アルミナは、シリコン樹脂対比18wt%~45wt%で含まれることが好ましい。
【0085】
また、最も大きいサイズを有する第2AlNの含有量比が変更されても、熱伝導度に大きい影響を及ぼさないことがわかる。熱伝達システム内で最も大きい粒子サイズを有する第2AlNの含有量比が400w%~510wt%に変更されても、熱伝導度に大きい影響を及ぼさない。
【0086】
図1は、本発明の好ましい実施例に係る放熱フィルムの放熱動作を説明するための模式図である。
【0087】
図1を参照すると、基材10上に放熱フィルム300が形成される。放熱フィルム300では、硬化工程を通じて架橋されたシリコン高分子マトリックス200内にフィラー100が配置される。
【0088】
シリコン樹脂由来の高分子マトリックス200は、架橋剤および触媒の作用によって基材10と強い接着力を有する。架橋剤は、シリコン樹脂の間の架橋結合を誘導し、放熱フィラー100の疏水性処理を行う。放熱フィラー100が疏水性処理されることによって、高分子マトリックス200を浸透する水分の影響は最小化される。また、外部水分の遮断等により、放熱フィルム300の長期安定性を保障する。
【0089】
特に、高分子マトリックス200が有する比重は、約1.0程度で、アルミナが有する比重は約4.0である。また、AlNが有する比重は2.8~2.9である。本発明では、放熱モールディング剤に沈殿防止剤が投入される。沈殿防止剤によって放熱フィラー100の種類別比重差で発生する層分離現象は防止される。従って、互いに異なる大きさおよび異なる比重を有する放熱フィラー100が斑なく分散した形態に配置されることができる。
【0090】
また、高分子マトリックス200に比べて高い比重を有するアルミナの含有量は、相対的に減少して、相対的に低い比重を有するAlNの含有量は、大きく増加させる。これにより、沈殿防止剤の微量投入でも層分離現象が防止されることができる。
【0091】
また、素材の種類別熱伝導度を調べると、アルミナは、25W/(mK)、AlNは、270W/(mK)の伝導度を有する。
【0092】
高い熱伝導を有するAlNが、最も大きいサイズを有し、相対的に低い熱伝導度を有するアルミナが、小さいサイズを有する。熱の伝達は、AlNを中心に行われるが、球状AlN120は、球状アルミナ110の間に配置され、球状AlN120の表面の相当部分は球状アルミナ110と接触して放熱動作が行われる。また、球状アルミナ110の間、または球状アルミナ110と球状のAlN120との間には、微量の板状アルミナ130が配置される。板状アルミナ130による熱伝達動作が追加されて、前記板状アルミナ130は、放熱モールディング剤の粘度を上昇させることができるため、粘度調節用でも使用される。
【0093】
本発明では、2液型放熱モールディング剤が製作され、2種類の異なる液型の放熱モールディング剤は、別々のシリンジに保管される。放熱フィルムの形成工程において、互いに異なるシリンジに投入された2種類の放熱モールディング剤は、ノズルで統合されて、吐出されて放熱フィルムとして形成される。
【0094】
第1液型放熱モールディング剤には、遅延剤および架橋剤が追加されるので、第2液型放熱モールディング剤に比べて低い粘度を有する。第1液型放熱モールディング剤は、320,000cp~370,000cpの粘度を有することが好ましく、第2液型放熱モールディング剤は、450,000cp~530,000cpの粘度を有することが好ましい。また、2種類の放熱モールディング剤は、第2液型放熱モールディング剤が高い粘度を有し、相互間に粘度の差は、200,000cp以下であることが好ましい。仮に、200,000cpを上回る粘度の差が発生すると、放熱フィラーの混和性には問題がないが、第1液型放熱モールディング剤内の遅延剤および架橋剤が、混合放熱モールディング剤内で斑なく分散できず、局部的な速硬化現象を引き起こす。従って、一部領域が速く硬化することにより、高分子マトリックス内部に起泡が発生して、過度な収縮により、高分子マトリックスの機械的物性が低下する。
【0095】
上述した本発明によると、様々なサイズと種類を有する放熱フィラーが導入される。また、放熱フィラーの表面は、架橋剤を通じて疏水性処理され、放熱フィラーは、放熱モールディング剤内で斑なく分布される。また、互いに異なる比重を有する放熱フィラーによる層分離現象を防止するために、沈殿防止剤が導入され、沈殿防止剤によって放熱フィラーは斑なく分布される。
【0096】
また、液型放熱モールディング剤の間の粘度調節および遅延剤を通じて放熱フィルムのcaking現象を防止することができる。モールディング剤の粘度は、コーティング工程において放熱フィルムの厚さ、表面の平坦度、形状制御に影響を及ぼす。モールディング剤の粘度が低いと、厚さが減少し、表面平坦度が改善されるが、形状制御に困難がある。硬化工程において遅延剤が導入されると、局部的な領域で発生する速硬化現象が防止され、表面の一部が過度に硬化する現象が防止される。即ち、表面の一部が硬く固まって機械的衝撃により放熱フィルムが破壊されたり剥離されるcaking現象を防止することができる。
【符号の説明】
【0097】
10:基材
100:放熱フィラー
200:高分子マトリックス
300:放熱フィルム
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液型放熱モールディング剤および第2液型放熱モールディング剤を含み、
前記第1液型放熱モールディング剤は、第1シリコン樹脂、第1放熱フィラー、架橋剤、硬化動作を遅延させるための遅延剤および第1沈殿防止剤を有し、
前記第2液型放熱モールディング剤は、第2シリコン樹脂、第2放熱フィラー、触媒および第2沈殿防止剤を有し、
前記第1シリコン樹脂および前記第2シリコン樹脂は同じ組成を有し、前記第1放熱フィラーおよび前記第2放熱フィラーは同じ組成を有し、前記第1沈殿防止剤および前記第2沈殿防止剤は同じ組成を有し、
前記第1シリコン樹脂および前記第2シリコン樹脂はそれぞれ、化学式1の第1ポリジオルガノシロキサン、化学式2の第2ポリジオルガノシロキサン、化学式3の第1ポリジハイドロゲンシロキサンおよび化学式4の第2ポリジハイドロゲンシロキサンの混合物であり、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(前記化学式1~4において、R1およびR4は、脂肪族不飽和結合を含有しない、非置換基であるか置換された1~5個の炭化水素であり、メチル基、エチル基、プロピル基もしくはブチル基である低級アルキル基、フェニル基、キシレン基もしくはベンゼン基であるアリール基、シクロヘキシル基、またはこれらの基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲンもしくはシアノ基で置換された、クロロメチル基、シアノメチル基もしくは3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、nおよびmは0または正の整数である。)
前記架橋剤は、ビニルトリメトキシシランまたはフェニルトリメトキシシランであり、
前記第1放熱フィラーおよび前記第2放熱フィラーはそれぞれ、3μm~7μmサイズの球状アルミナ、0.1μm~1μmサイズの板状アルミナを含み、前記球状アルミナは、前記第1シリコン樹脂または前記第2シリコン樹脂対比750wt%~830wt%含まれ、前記板状アルミナは、前記第1シリコン樹脂または前記第2シリコン樹脂対比18wt%含まれ、
前記第1液型放熱モールディング剤と前記第2液型放熱モールディング剤が混合されて形成されたことを特徴とする放熱モールディング剤。
【請求項2】
第1放熱フィラーまたは第2放熱フィラー、50μm~60μmサイズの第1球状AlN、80μm~100μmサイズの第2球状AlN、0.1μm~0.5μmサイズの板状シリカを含むことを特徴とする請求項1に記載の放熱モールディング剤。
【請求項3】
記第1球状AlNは、前記第1シリコン樹脂対比または前記第2シリコン樹脂対比80wt%~300wt%、前記第2球状AlNは、前記第1シリコン樹脂対比または前記第2シリコン樹脂対比300wt%~550wt%、前記板状シリカは、前記第1シリコン樹脂対比または前記第2シリコン樹脂対比0.1wt%~1wt%含まれることを特徴とする請求項2に記載の放熱モールディング剤。
【請求項4】
前記架橋剤は、前記放熱フィラーの表面で加水分解によってシラノール基を形成して前記放熱フィラーの表面に吸着することを特徴とする請求項に記載の放熱モールディング剤。
【請求項5】
前記シラノール基は、以後の硬化工程によって前記放熱フィラーの表面にシロキサン結合を形成することを特徴とする請求項に記載の放熱モールディング剤。
【請求項6】
前記第2液型放熱モールディング剤が、前記第1液型放熱モールディング剤よりも高い粘度を有し、前記第1液型放熱モールディング剤と前記第2液型放熱モールディング剤との間の粘度の差は、200,000cp以下であることを特徴とする請求項1に記載の放熱モールディング剤。
【請求項7】
前記遅延剤は、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の放熱モールディング剤。
【外国語明細書】