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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157495
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】光送信機及び光集積回路
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/54 20130101AFI20241030BHJP
【FI】
H04B10/54
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114367
(22)【出願日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】112115417
(32)【優先日】2023-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】504429600
【氏名又は名称】緯創資通股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WISTRON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呂政鴻
(72)【発明者】
【氏名】盧冠甫
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA51
5K102AH02
5K102AH24
5K102AH26
5K102PH01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】帯域幅を広くし、良好な高周波信号品質を維持できる光送信機及び光集積回路を提供する。
【解決手段】光送信機において、リング光変調器24は、基板22上に位置し、一組の電気接点244、246を含み、一組の入力パッド23a、23bが一組の電気接点244、246に電気的に接続され、変調インピーダンス値を備え、マッチング回路26は一組の電気接点244、246の間に電気的に接続される。一組の回路基板ボンディングワイヤ30a、30bは一組の信号出力部14a、14bと一組の入力パッド23a、23bに電気的に接続され、マッチング回路26と一組の回路基板ボンディングワイヤ30a、30bはマッチングインピーダンス値を備え、マッチングインピーダンス値は変調インピーダンス値に実質的にマッチングする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、光集積回路と、一組の回路基板ボンディングワイヤとを備えた光送信機であって、
前記回路基板は送信回路を含み、前記送信回路は一組の信号出力部を含み、
前記光集積回路は、基板と、リング光変調器と、マッチング回路とを含み、
前記基板は一組の入力パッドを備え、
前記リング光変調器は前記基板上に位置し、前記リング光変調器は一組の電気接点を含み、前記一組の入力パッドは前記一組の電気接点に電気的に接続され、前記リング光変調器は変調インピーダンス値を備え、前記マッチング回路は前記一組の電気接点の間に電気的に接続され、
前記一組の回路基板ボンディングワイヤは前記一組の信号出力部と前記一組の入力パッドに電気的に接続され、
前記マッチング回路と前記一組の回路基板ボンディングワイヤはマッチングインピーダンス値を備え、前記マッチングインピーダンス値は前記変調インピーダンス値に実質的にマッチングする
ことを特徴とする光送信機。
【請求項2】
前記マッチング回路はマッチング抵抗と一組の基板ボンディングワイヤを含み、前記マッチング抵抗は前記一組の基板ボンディングワイヤにより前記一組の電気接点の間に電気的に接続され、前記一組の基板ボンディングワイヤ、前記マッチング抵抗、及び前記一組の回路基板ボンディングワイヤは前記マッチングインピーダンス値を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の光送信機。
【請求項3】
前記一組の信号出力部はS信号出力部とG信号出力部を含み、前記一組の入力バッドはS入力パッドとG入力パッドを含み、
前記一組の電気接点はS電気接点とG電気接点を含み、前記一組の回路基板ボンディングワイヤはS回路基板ボンディングワイヤとG回路基板ボンディングワイヤを含み、前記S回路基板ボンディングワイヤと前記G回路基板ボンディングワイヤは、前記S信号出力部と前記G信号出力部を、それぞれ前記S入力パッドと前記G入力パッドに電気的に接続し、
前記S入力パッドと前記G入力パッドはそれぞれ前記S電気接点と前記G電気接点にそれぞれ電気的に接続され、前記マッチング回路の両端は前記S電気接点と前記G電気接点にそれぞれ電気的に接続される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信機。
【請求項4】
前記送信回路はパルス振幅変調回路、駆動回路、及び一組の信号入力部を含み、
前記パルス振幅変調回路は前記一組の信号入力部からの入力信号を変調信号に変調し、前記駆動回路は前記変調信号を駆動信号に変換する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信機。
【請求項5】
基板と、リング光変調器と、マッチング回路を備えた光集積回路において、
前記基板は一組の入力パッドを備え、
前記リング光変調器は前記基板上に位置し、前記リング光変調器は密閉型導波管、指向性ライトガイド、及び一組の電気接点を含み、
前記密閉型導波管は前記指向性ライトガイドに互いに隣り合い、前記一組の入力パッドは前記一組の電気接点に電気的に接続され、前記リング光変調器は変調インピーダンス値を具備し、
前記マッチング回路は前記一組の電気接点の間に電気的に接続され、前記マッチング回路はマッチング抵抗値を備え、前記マッチング抵抗値は前記変調インピーダンス値に実質的にマッチングする
ことを特徴とする光集積回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光送信機及び光集積回路に関し、特に、統合されたシリコンフォトニクスコンポーネントの光送信機及び光集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバー通信には通常光を送信する送信機と光を受信する受信機が必要となる。光送信機(発光体、optical transmitter)には通常、レーザー等の発光素子が含まれる。また、近年は技術の進歩に伴い、一部の光の送信機には光集積回路等のシリコンフォトニックコンポーネントが使用され始めてきている。光集積回路を備えた光の送信機は、通常、電気信号処理部と光集積回路部を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、光集積回路を備えた光の送信器を設計する場合、設計者(例えば発明者)は、高周波信号を電気信号処理部分から光集積回路部分に送信するときに、共振の発生を削減し、システムの帯域幅を広くする等の措置を施した良好な高周波信号品質を維持できることを保証する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した問題に鑑みて本発明は以下の構成を備える。
【0005】
回路基板と、光集積回路と、一組の回路基板ボンディングワイヤとを備えた光送信機であって、
前記回路基板は送信回路を含み、前記送信回路は一組の信号出力部を含み、
前記光集積回路は、基板と、リング光変調器と、マッチング回路とを含み、
前記基板は一組の入力パッドを備え、
前記リング光変調器は前記基板上に位置し、前記リング光変調器は一組の電気接点を含み、前記一組の入力パッドは前記一組の電気接点に電気的に接続され、前記リング光変調器は変調インピーダンス値を備え、前記マッチング回路は前記一組の電気接点の間に電気的に接続され、
前記一組の回路基板ボンディングワイヤは前記一組の信号出力部と前記一組の入力パッドに電気的に接続され、
前記マッチング回路と前記一組の回路基板ボンディングワイヤはマッチングインピーダンス値を備え、前記マッチングインピーダンス値は前記変調インピーダンス値に実質的にマッチングする
ことを特徴とする光送信機。
【0006】
また、前記マッチング回路はマッチング抵抗と一組の基板ボンディングワイヤを含み、前記マッチング抵抗は前記一組の基板ボンディングワイヤにより前記一組の電気接点の間に電気的に接続され、前記一組の基板ボンディングワイヤ、前記マッチング抵抗、及び前記一組の回路基板ボンディングワイヤは前記マッチングインピーダンス値を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の光送信機。
【0007】
また、前記一組の信号出力部はS信号出力部とG信号出力部を含み、前記一組の入力バッドはS入力パッドとG入力パッドを含み、
前記一組の電気接点はS電気接点とG電気接点を含み、前記一組の回路基板ボンディングワイヤはS回路基板ボンディングワイヤとG回路基板ボンディングワイヤを含み、前記S回路基板ボンディングワイヤと前記G回路基板ボンディングワイヤは、前記S信号出力部と前記G信号出力部を、それぞれ前記S入力パッドと前記G入力パッドに電気的に接続し、
前記S入力パッドと前記G入力パッドはそれぞれ前記S電気接点と前記G電気接点にそれぞれ電気的に接続され、前記マッチング抵抗の両端は前記S電気接点と前記G電気接点 にそれぞれ電気的に接続される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信機。
【0008】
また、前記送信回路はパルス振幅変調回路、駆動回路、及び一組の信号入力部を含み、
前記パルス振幅変調回路は前記一組の信号入力部からの入力信号を変調信号に変調し、前記駆動回路は前記変調信号を駆動信号に変換する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信機。
【0009】
更に、基板と、リング光変調器と、マッチング回路を備えた光集積回路において、
前記基板は一組の入力パッドを備え、
前記リング光変調器は前記基板上に位置し、前記リング光変調器は密閉型導波管、指向性ライトガイド、及び一組の電気接点を含み、
前記密閉型導波管は前記指向性ライトガイドに互いに隣り合い、前記一組の入力パッドは前記一組の電気接点に電気的に接続され、前記リング光変調器は変調インピーダンス値を具備し、
前記マッチング回路は前記一組の電気接点の間に電気的に接続され、前記マッチング回路はマッチング抵抗値を備え、前記マッチング抵抗値は前記変調インピーダンス値に実質的にマッチングする
ことを特徴とする光集積回路。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成によれば、本発明の光送信機又は光集積回路は、光送信機又は光集積回路のマッチングインピーダンス値が変調器のインピーダンス値と整合するので、光送信機又は光集積回路は、共振を抑制する効果とシステム帯域幅を増加させる効果の少なくとも1つを奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の光送信機の斜視図である。
図2】本発明の光集積回路の等価回路の概略図である。
図3A図1の実施形態における表1のグループAのパラメータに対応する光集積回路の周波数応答の概略図である。
図3B図1の実施形態における表1のグループBのパラメータに対応する光集積回路の周波数応答の概略図である。
図3C図1の実施形態における表1のグループCのパラメータに対応する光集積回路の周波数応答の概略図である。
図4A図1の実施形態におけるリング光変調器自体の周波数応答の概略図である。
図4B図1の実施形態における基板ボンディングワイヤのない光集積回路の周波数応答の概略図である。
図4C図1の実施形態の光集積回路の周波数応答の概略図である。
図5】本発明の実施形態による光集積回路の概略上面図である。
図6】本発明の実施形態による光送信機の概略上面図である。
図7A図2の実施形態におけるマッチング回路のない光集積回路の周波数応答の概略図である。
図7B図6の実施形態における光集積回路(マッチング回路はマッチング抵抗を含む)の周波数応答の概略図である。
図7C図2の実施形態の光集積回路(マッチング回路はマッチング抵抗および基板ボンディングワイヤを含む)の周波数応答の概略図である。
図8】本発明の実施形態による光送信機の概略上面図である。
図9】本発明の実施形態による光送信機の概略上面図である。
図10】本発明の実施形態による光集積回路の概略上面図である。
図11】本発明の実施形態による光集積回路の概略上面図である。
図12図2の実施形態の光集積回路の周波数応答の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して説明する。ここで、図1は本発明の光送信機の斜視図である。光送信機(optical transmitter)は回路基板10、光集積回路20、回路基板ボンディングワイヤ30a、30b(PCB bond wire)を含む。
【0013】
回路基板10は送信回路12を含み、更に、一組の信号出力部14a、14bを有する。 光集積回路20は、基板22、リング光変調器24、及びマッチング回路(整合回路)26を含む。基板22は一組の入力パッド23a、23bを有する。
【0014】
リング光変調器24は基板22上に配置され、一組の電気接点244、246を含む。入力パッド23a、23bは、リング光変調器24の電気接点244、246に電気的に接続されている。
【0015】
リング光変調器24は変調器インピーダンス値を有する。回路基板ボンディングワイヤ30a、30bは、信号出力部14a、14b及び入力パッド23a、23bに電気的に接続されている。光集積回路20のマッチング回路26は、リング光変調器24の電気接点244と電気接点246に電気的に接続されている。
【0016】
マッチング回路26と回路基板ボンディングワイヤ30a、30bはマッチングインピーダンス値を有し、そのマッチングインピーダンス値は変調器インピーダンス値と実質的に一致(マッチング)する。本実施形態では、マッチング回路26は、リング光変調器24の電気接点244、246の間に電気的に接続される。
【0017】
このため、光集積回路20に並列に接続されたマッチング回路26と、変調器インピーダンス値とマッチングするマッチングインピーダンス値に基づくので、マッチング回路26は、共振の発生を抑制する機能を有し、回路基板10の信号出力部14a、14bからの出力信号は、回路基板ボンディングワイヤ30a、30b、入力パッド23a、23bを通過して、リング光変調器24に入力したとき、所定の帯域幅内では、信号の品質に影響を与える可能性のある反射が発生しにくい。
【0018】
本実施形態では、前述の「マッチング回路26と回路基板ボンディングワイヤ30a、30bがマッチングインピーダンス値を有する」とは、「マッチング回路26と回路基板ボンディングワイヤ30a、30bが共同してマッチングインピーダンス値を形成する」ことを意味する。
【0019】
本実施形態では、回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値は0.1から3ナノヘンリー(nH)であり、回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのうちの1つの長さは50から3000ミクロン(μm)であり、回路基板ボンディングワイヤ30a、30bの直径の1つは0.5から2ミル(mil)である。
【0020】
本実施形態では、マッチング回路26は、マッチング抵抗器260と基板ボンディングワイヤ28a、28b(substrate bond wire)を含み、マッチング抵抗器260は、基板ボンディングワイヤ28a、28bを介して電気接点244、246の間に電気的に接続される。回路基板ボンディングワイヤ30a、30b、基板ボンディングワイヤ28a、28b、及びマッチング抵抗器260は、マッチングインピーダンス値(整合インピーダンス値)を形成する(図2を参照するが、詳しくは後述する)。
【0021】
基板ボンディングワイヤ28a、28bは、ワイヤボンディングによってマッチング抵抗器260の両端と電気接点244、246にそれぞれ電気的に接続することができる。本実施形態では、基板ボンディングワイヤ28a、28bのうちの1つの直径は0.5~2ミル(mil)であり、基板ボンディングワイヤ28a、28bのうちの1つの長さは50~3000マイクロメートル(μm)である。
【0022】
マッチング抵抗260の抵抗値は10~1000オーム(ohm)である。マッチング抵抗器260は、集積回路プロセスによって設計並びに製造されるシート抵抗器(図1に示すsheet resistance)、又は単一のチップ抵抗器或いは同じ効果を達成できる他の抵抗器であっても良い。
【0023】
前述の光送信機は、光電気トランシーバー(opto-electrical transceiver)、スモールフォームファクタープラガブルトランシーバー(small form factor pluggable transceiver)、クワッドスモールファクタープラガブル-倍密度(quad small factor pluggable-double density, QSFP-DD)、及びオクタルスモールフォームファクター (octal small form factor, OSFP) 等に適用できるが、これらには限定されない。
【0024】
前述の回路基板10は、光集積回路20に送信される信号を提供するために使用される。例えば、送信回路12は、一組の信号入力部15a、15bを介して信号を受信し、送信回路12によって処理した後、信号出力部14a、14bから光集積回路20に送信する(詳細は後述する)。
【0025】
本実施形態では、リング光変調器24は、密封型導波管240と指向性ライトガイド242を含む。密封型導波管240は、指向性ライトガイド242に隣接している。密封型導波管240は、リング導波管(ring waveguide)等の閉ループである。
【0026】
上述の指向性ライトガイド242は、方向性を伝播する信号用の光導波路(directional coupler)であり、曲面方向性結合器(curved directional coupler, CDC;又はbus waveguide)や直線方向性結合器(straight directional coupler,SDC)が挙げられる。
【0027】
上述の密封型導波管240が指向性ライトガイド242に隣接しているとは、密封型導波管240と指向性ライトガイド242との間の距離が、両者が光結合効果を生じさせるのに十分であることを意味する。つまり、この距離は、光を指向性ライトガイド242から密封型導波管240に結合するのに十分な距離である。
【0028】
前述の電気接点244、246は、通常、リング光変調器24のPN接合に接続される。電気信号が電気接点244、246を介してPN接合に入力された後、PN接合に印加されるバイアス電圧が変更される。
【0029】
これにより、密封型導波管240内の等価屈折率を入力電気信号と共に変化させ、指向性ライトガイド242から密封型導波管240に結合される光エネルギーの強度又は位相を変化させて、リング光変調器24から出力される光の振幅の大きさを改変して、光を変調する効果を達成する。また、PN接合のP+ドープ領域は信号に電気的に接続され、PN接合のN+ドープ領域は接地される。
【0030】
前述のマッチング回路26は、電気接点244、246の間に電気的に接続されており、これには限定されないが、図1図6に加えて図8乃至図9等の様々な実装形態が存在する。
【0031】
本実施形態では、一組の信号出力部14a、14bの数、一組の入力パッド23a、23bの数、一組の電気接点244、246の数、および一組の回路基板ボンディングワイヤ30a、30bの数は、2つ、3つ、又はそれ以上でも差し支えない。
【0032】
電気的な接続関係は、1対1の電気的な接続関係である。図1の実施形態を例に挙げると、一組の信号出力部14a、14bは、S信号出力部14aとG信号出力部14bとを含む。
【0033】
一組の入力パッド23a、23bは、S入力パッド23aとG入力パッド23bを含み、一組の電気接点244、246は、S電気接点244とG電気接点246を含む。また、一組の回路基板ボンディングワイヤ30a、30bは、S回路基板ボンディングワイヤ30aとG回路基板ボンディングワイヤ30bとを含む。
【0034】
S回路基板ボンディングワイヤ30a及びG回路基板ボンディングワイヤ30bは、それぞれS信号出力部14a及びG信号出力部14bをS入力パッド23a及びG入力パッド23bに電気的に接続すると共に、S入力パッド23a及びG入力パッド23bは、それぞれS電気接点244及びG電気接点246に電気的に接続されている。
【0035】
マッチング抵抗器260の両端は、それぞれS電気接点244及びG電気接点246に電気的に接続される。詳細には、図1図2を参照されたいが、図1のマッチング抵抗器260の両端は、基板ボンディングワイヤ28a、28bによって電気接点244、246の間に電気的に接続されており、回路基板ボンディングワイヤ30a、30b、基板ボンディングワイヤ28a、28b、及びマッチング抵抗260はマッチングインピーダンス値(整合インピーダンス値)を形成する
【0036】
そこで、リング光変調器24に対してマッチング抵抗260を並列に接続することにより、S信号出力部14a及びG信号出力部14bは反射が少ない状況下にてリング光変調器24に入力することができる。
【0037】
本実施形態では、S信号出力部14a、S回路基板ボンディングワイヤ30a、S入力パッド23a、及びS電気接点244は、駆動信号(内容は後述する)を送信するために使用され、リング光変調器24のP+ドープ領域に電気的に接続される。
【0038】
これにより、G信号出力部14b、G回路基板ボンディングワイヤ30b、G入力パッド23b、及びG電気接点246は、接地信号を送信するために使用され、リング光変調器24のN+ドープ領域に電気的に接続される。
【0039】
具体的には、上記各構成要素間の電気的な接続関係により、前記マッチングインピーダンス値がリング光変調器24の変調器インピーダンス値と一致(マッチング)し、高周波信号がリング光変調器24に入力される際に生成される界面インピーダンスの不連続性によって引き起こされる反射摩耗が低減され、回路基板10をリング光変調器24に接続する際に生じやすい周波数応答のばらつきを補償する。
【0040】
本実施形態では、マッチングインピーダンス値は10から1000オーム(ohm)である。ただし、マッチングインピーダンス値は、実際の実装の全体的なインピーダンスに基づいて設計できる。たとえば、マッチングインピーダンス値は、必要な周波数応答の平坦性、帯域幅の値、又はシステムチャネル全体の高周波損失の補償の程度に基づいて設計できる。
【0041】
マッチングインピーダンスについて図2を参照して説明する。ここで、図2は本発明の光集積回路の等価回路の概略図である。
【0042】
図2は、回路基板10のS信号出力部14aからの信号が、S回路基板ボンディングワイヤ30a、S入力パッド23a及びS電気接点244を介してリング光変調器24に至ることを示しており、G信号出力部14b、G基板ボンディングワイヤ30b、G入力パッド23b、及びG電気接点246はグランドの等価回路図である。
【0043】
図からわかるように、マッチングインピーダンス値(図1の実施形態では、回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値、基板ボンディングワイヤ28a、28bのインダクタンス値、及びマッチング抵抗器260の抵抗値によって形成されるマッチングインピーダンス値を示す)がリング光変調器24の変調器インピーダンス値と整合できる場合、信号の反射を大幅に低減し、高周波信号の伝送の安定性を向上させることができる。
【0044】
リング光変調器24に基づく変調器のインピーダンス値は、設計時に直ちに決定することはできないので、本実施形態の光送信機は、適切な設計によりインピーダンス値(すなわち、回路基板用ボンディングワイヤ30a、30bの線径および長さ、基板用ボンディングワイヤ28a、28bの線径と長さ、及びマッチング抵抗260の抵抗値)を整合させることができる。
【0045】
対応する実験を行うことにより、より良好なマッチング抵抗器260の抵抗値、基板ボンディングワイヤ28a、28bのインダクタンス値、及び回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値を得ることができる。
【0046】
ここで、基板ボンディングワイヤ28a、28bのインダクタンス値及び回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値は、ワイヤ径(ワイヤの直径、ワイヤ直径、又は線径ともいう場合がある)および/またはワイヤ長(ワイヤの長さ)を調整することによって得ることができる。
【0047】
図2からわかるように、好ましい実施形態は次のとおりである。すなわち、基板ボンディングワイヤ28a、28bの直径と長さ、マッチング抵抗260の抵抗値、及び回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値は、リング光変調器24の変調器インピーダンス値にマッチング(整合)している。
【0048】
以下の表1は、異なる回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値、マッチング抵抗器260の抵抗値、及び基板ボンディングワイヤ28a、28bのインダクタンス値をそれぞれ調整することによって帯域幅を最適化する方法を示す。図3A図3B図3Cを併せて説明する。
【0049】
図3A図3B及び図3Cは、それぞれ図1及び図2の表1のグループA、グループB、及びグループCのパラメータに対応する光集積回路の周波数応答の概略図である。図3A図3Cの横軸は周波数(frequency)であり、単位はGHz(ギガヘルツ)であり、縦軸は応答(Response)であり、単位はdB(デシベル)である。
【0050】
この図から、光集積回路20が異なる設計パラメータのセットに対応し、異なる周波数帯域で平坦な周波数応答を有する3dB帯域幅を得ることができることが分かる。
【表1】
【0051】
次に、図4A図4B及び図4Cを参照すると、図4Aは、図1の実施形態におけるリング光変調器自体の周波数応答の概略図である。すなわち、図1図2では、回路基板ボンディングワイヤ30a、30b、基板ボンディングワイヤ28a、28b、及びマッチング抵抗器260が除去されており、リング光変調器24自体の周波数応答図である。
【0052】
ここで、図4Bは、図1の実施形態における回路基板ボンディングワイヤ30a、30bを含み、基板ボンディングワイヤ28a、28b、及びマッチング抵抗器260を含まない光集積回路20の周波数応答の概略図である。図4C図1の実施形態の光集積回路の周波数応答の概略図である。
【0053】
図4Bから、リング光変調器24(光集積回路20)は、組み立てと接合後に25GHz付近の共振による周波数応答の明らかな突出した現象を有することが分かる。
【0054】
図4Cを参照して説明する。図4Cでは、光集積回路20は、適切なマッチング抵抗器260、回路基板ボンディングワイヤ30a、30b、及び基板ボンディングワイヤ28a、28bを備え、前述の共振問題が解決されて周波数応答が平坦化される。
【0055】
引き続き図1を参照すると、本実施形態では、送信回路12は、パルス振幅変調回路16、駆動回路18、及び一組の信号入力部15a、15b(図1はパルス振幅変調回路16と駆動回路18をそれぞれ2つのブロックで示している)を含む。
【0056】
パルス振幅変調回路16は、信号入力部15a、15bからの入力信号を、システム要件に応じて変調信号に変換し、駆動回路18は変調信号を駆動信号に変換して信号出力部14a、14bを介して光集積回路20に出力する。
【0057】
本実施形態では、パルス振幅変調回路16は、入力信号を4次パルス振幅変調信号に変調する4次パルス振幅変調器(Pulse Amplitude Modulation 4-level, PAM4)である。
【0058】
図5を参照して説明する。ここで、図5は本発明の本実施形態による光集積回路の概略上面図である。光集積回路20mは、基板22と、リング光変調器24と、複数のインピーダンスパッド27a、27b、27c、27d(それぞれ、第1組目のインピーダンスパッド27a、27bと第2組目のインピーダンスパッド27c、27dという)を備える。
【0059】
インピーダンスパッド27a、27b、27c、27dは、リング光変調器24の横に配置されている。本実施形態では、各組のインピーダンスパッド27a、27b、27c、27dは、リング光変調器24の電気接点244、246から実質的に同じ距離にある。
【0060】
例えば、第1組目(第1グループ)のS抵抗パッド27aとS電気接点244との間の距離は、第1組目のG抵抗パッド27bとG電気接点246との間の距離と同じであり、第2組目のS抵抗パッド27cとS電気接点244との間の距離は、第2組目のG抵抗パッド27dとG電気接点246との間の距離と同じである。
【0061】
光集積回路20mは、リング光変調器24の変調器インピーダンス値が不明な場合に、適切なマッチングインピーダンス値と対応する基板ボンディングワイヤ28a、28bをテストするために使用することができる。
【0062】
具体的には、設計者は、各組のインピーダンスパッド27a、27b、27c、27d上に異なるマッチング抵抗器260を構成し、異なるワイヤ直径と長さの基板ボンディングワイヤ28a、28bを使用して、異なるマッチング回路26と対応するマッチングインピーダンス値を得ることができる。そして、その周波数応答図に基づいて、適切なマッチングインピーダンス値と、対応する基板ボンディングワイヤ28a、28bのワイヤの直径と長さを決定する。
【0063】
上述のインピーダンスパッド27a、27b、27c、27dのグループの数(組数)は、必要に応じて調整することができるが、例えば、光集積回路20mは、3つのグループのインピーダンスパッド27a、27b、27c、27d、27e、27fを含む。しかしこれに限定されるものではなく、抵抗パッド27a、27b、27c、27d、27e、27fのグループの数は4グループ以上であってもよい。
【0064】
図6を参照して説明する。ここで、図6は本発明の実施形態による光送信機の概略上面図である。
【0065】
本実施形態では、光送信機は、回路基板10、光集積回路20及び回路基板ボンディングワイヤ30a、30bを含む。回路基板10は、送信回路12を含み、一組の信号出力部14a、14bを有する。光集積回路20は、基板22、リング光変調器24、及びマッチング回路26を含む。
【0066】
基板22は、一組の入力パッド23a、23bを有する。リング光変調器24は基板22上に配置され、密閉型導波管240、指向性ライトガイド242及び一組の電気接点244、246を含む。密閉型導波管240は、指向性ライトガイド242に隣接している。
【0067】
入力パッド23a、23bは、リング光変調器24の電気接点244、246に電気的に接続されている。リング光変調器24は変調器インピーダンス値を有する。回路基板ボンディングワイヤ30a、30bは、信号出力部14a、14bと入力パッド23a、23bに電気的に接続されている。
【0068】
光集積回路20のマッチング回路26は、リング光変調器24の電気接点244、246に電気的に接続されている。マッチング回路26と回路基板ボンディングワイヤ30a、30bはマッチングインピーダンス値を有しており、このマッチングインピーダンス値は変調器のインピーダンス値とマッチング(整合)している。
【0069】
本実施形態は、入力信号がGSG(Ground-Signal-Ground)方式の光送信機に適用することができる。図から明らかないように、図6の実施形態のマッチング回路26はマッチング抵抗器260であり、マッチング抵抗器260の両端は電気接点244、246の間に直接的且つ電気的に接続されている。
【0070】
図7A図7Cを参照して説明する。ここで、図7A図2の実施形態におけるマッチング回路のない光集積回路の周波数応答の概略図である。また、図7B図6の実施形態における光集積回路(マッチング回路はマッチング抵抗を含む)の周波数応答の概略図である。更に、図7C図2の実施形態の光集積回路(マッチング回路はマッチング抵抗と基板ボンディングワイヤを含む)の周波数応答の概略図である。
【0071】
図7Aから、マッチング回路26がない光集積回路20は共振を起こし、周波数応答が不均一になり、周波数30GHzで凸部が生じることが分かる。
【0072】
図7Bに示す光集積回路20のマッチング回路26は、マッチング抵抗260のみを備えており、マッチング抵抗260は共振を抑制する効果があるため、周波数応答は30GHzにおいて突出がない。しかしながら、光集積回路20の3dB帯域幅は影響を受けて減少してしまう。
【0073】
図7Cに示す光集積回路20のマッチング回路26は、マッチング抵抗260と基板ボンディングワイヤ28a、28bとを含む。光集積回路20の帯域幅は30GHz付近で増加しないだけでなく、(図7Bでは減少してしまっていた)3dB帯域幅も増加する。
【0074】
このため、マッチング回路26がマッチング抵抗260と基板ボンディングワイヤ28a、28bとを含む実施形態では、光集積回路20は、共振を抑制する効果を有するだけでなく、システムの帯域幅を広くする効果も有する。
【0075】
図8を参照して説明する。図8は、本発明の実施形態による光送信機の概略上面図である。図8の実施形態の光送信機は、回路基板10、光集積回路20、及び一組の回路基板ボンディングワイヤ30a、30b、30cを含む。
【0076】
回路基板10は、一組の信号出力部14a、14b、14cを含む。 光集積回路20は、基板22、リング光変調器24、及びマッチング回路26を含む。基板22は一組の入力パッド23a、23b、23cを含む。
【0077】
マッチング回路26は、第1のマッチング抵抗器260と第2のマッチング抵抗器262を含む。リング光変調器24は、密閉型導波管240、指向性ライトガイド242、および一組の電気接点244、246、248を含む。
【0078】
回路基板ボンディングワイヤ30a、30b、30cには、S回路基板ボンディングワイヤ30a、第1のG回路基板ボンディングワイヤ30b、第2のG回路基板ボンディングワイヤ30cが含まれる。
【0079】
信号出力部14a、14b、14cは、S信号出力部14a、第1のG信号出力部14b、第2のG信号出力部14cを含む。入力パッド23a、23b、23cは、S入力パッド23a、第1のG入力パッド23b、第2のG入力パッド23cを含む。
【0080】
電気接点244、246、248は、S電気接点244、第1のG電気接点246、及び第2のG電気接点248を含む。
【0081】
S回路基板ボンディングワイヤ30a、第1のG回路基板ボンディングワイヤ30b、第2のG回路基板ボンディングワイヤ30cは、S信号出力部14a、第1のG信号出力部14b、第2のG信号出力部14cを、パッド23a、第1のG入力パッド23b、及び第2のG入力パッド23cにそれぞれ電気的に接続する。
【0082】
S入力パッド23a、第1のG入力パッド23b、第2のG入力パッド23cは、それぞれS電気接点244、第1のG電気接点246及び第2のG電気接点248に電気的に接続されている。
【0083】
第1のマッチング抵抗器260の両端は、それぞれS電気接点244と第1のG電気接点246に電気的に接続されており、第2のマッチング抵抗器262の2つの端子は、それぞれS電気接点244と第2のG電気接点248に電気的に接続される。
【0084】
図8の実施形態では、第1のマッチング抵抗器260の両端は、S電気接点244と第1のG電気接点246にそれぞれ直接的に、且つ、電気的に接続されている。第2のマッチング抵抗器262の両端は、S電気接点244と第2のG電気接点248にそれぞれ直接的に、且つ、電気的に接続される。
【0085】
このため、第1のマッチング抵抗器260、第2のマッチング抵抗器262、及び回路基板ボンディングワイヤ30a、30b、30cはマッチングインピーダンス値を有する。マッチングインピーダンス値は変調器のインピーダンスとほぼ一致するため、マッチング回路26は共振を抑制する効果がある。
【0086】
図9の実施形態では、第1のマッチング抵抗器260の両端は、それぞれS電気接点244と第1のG電気接点246に間接的かつ電気的に接続されており、第2のマッチング抵抗器262の両端は、それぞれS電気接点244と第2のG電気接点248に間接的かつ電気的に接続される。
【0087】
本実施形態では、マッチング回路26は、一組の基板ボンディングワイヤ28a、28b、28cを含み、基板ボンディングワイヤ28a、28b、28cはS基板ボンディングワイヤ28a、第1のG基板ボンディングワイヤ28b、及び第2のG基板ボンディングワイヤ28cを含む。
【0088】
S基板ボンディングワイヤ28aと第1のG基板ボンディングワイヤ28bは、第1マッチング抵抗器260の両端を、S電気接点244と第1のG電気接点246にそれぞれ電気的に接続する。
【0089】
S基板ボンディングワイヤ28aと第2のG基板ボンディングワイヤ28cは、第2のマッチング抵抗器262の両端をS電気接点244と第2のG電気接点248にそれぞれ電気的に接続する。
【0090】
このため、第1のマッチング抵抗器260、第2のマッチング抵抗器262、基板ボンディングワイヤ28a、28b、28c及び回路基板ボンディングワイヤ30a、30b、30cはマッチングインピーダンス値を有する。マッチングインピーダンスが変調器インピーダンスに実質的にマッチングする(「整合する」という意味でも使う。)ので、マッチング回路26は、共振を抑制でき、システムの帯域幅を増加させる(広くとる)ことができる。
【0091】
図10を参照して説明する。ここで、図10は本発明の実施形態による光集積回路の概略上面図である。
【0092】
光集積回路20nは、基板22と、リング光変調器24と、複数のインピーダンスパッド27a、27b、27c、27d、27e、27f(それぞれ、第1のグループ(第1組目)のインピーダンスパッド27a、27b、27c、及び第2のグループのインピーダンスパッド27d、27e、27fとも呼ぶ)を含み、これらのインピーダンスパッド27a、27b、27c、27d、27e、27fは、リング光変調器24の横に配置される。
【0093】
一組のインピーダンスパッド27a、27b、27cは、第1のマッチング抵抗器260と第2のマッチング抵抗器262により構成され得る。
【0094】
本実施形態では、各組(各グループ)のインピーダンスパッド27a、27b、27c、27d、27e、27fは、リング光変調器24の電気接点244、246、248から実質的に同じ距離にある。この部分は図5の説明と同様であるため、ここでは繰り返さない。
【0095】
光集積回路20nは、リング光変調器24の変調器インピーダンス値が不明な場合に、適切なマッチングインピーダンス値と対応する基板ボンディングワイヤ28a、28b、28c(図10には図示せず、図8を参照されたい)をテストするために使用することができる。
【0096】
具体的には、設計者は、インピーダンスパッド27a、27b、27c、27d、27e、27fの各グループ上に異なるマッチング抵抗器260を構成し、異なるワイヤ直径および長さの基板ボンディングワイヤ28a、28b、28cを使用することがで、異なるマッチング回路26と対応するマッチングインピーダンス値を取得し、併せて、周波数応答図に基づいて、適切なマッチングインピーダンス値と、基板ボンディングワイヤ28a、28b、28cの対応するワイヤ直径と長さを決定する。
【0097】
上述の抵抗パッド27a、27b、27c、27d、27e、27fのグループの数(組数)は、必要に応じて調整することができるが、例えば、光集積回路20nは、3つのグループのインピーダンスパッド27a、27b、27c、27d、27e、27f、27g、27h、27iを含むことができる。
【0098】
しかしながら、これには限定されず、インピーダンスパッドのグループの数は27a、27b、27c、27d、27e、27f、27g、27h、27i等の4つ以上であっても良い。
【0099】
次に、図11を参照して説明する。図11は本発明の実施形態による光集積回路の概略上面図である。光集積回路20pは、基板22と、リング光変調器24と、複数のインピーダンスパッド27a、27b、27c、27d、27e、27f、27g、27h、27i、27j、27k、27l(以下、それぞれ、第1組目のインピーダンスパッド27a、27b、第2組目のインピーダンスパッド27c、27d等と呼ぶことがある)とを含む。
【0100】
一対の抵抗パッド27a、27bは、マッチング抵抗器260を用いて構成され得る。光集積回路20pは、リング光変調器24の変調器インピーダンス値が不明な場合に、適切なマッチングインピーダンス値と対応する基板ボンディングワイヤ28a、28b、28a’、28b’をテストするために使用することができる。
【0101】
具体的には、設計者は、各組のインピーダンスパッド27a、27b、27c、27d、27e、27f、27g、27h、27i、27j、27k、及び27l上に異なるマッチング抵抗器260を構成し、異なるワイヤ直径と長さを有する基板を使用することができ、ボンディングワイヤ28a、28b、28a’、28b’、異なるマッチング回路26と対応する整合インピーダンス値を取得し、周波数応答図に基づいて、適切な整合インピーダンス値と、対応する基板ボンディングワイヤ28a、28b、28a’、28b’のワイヤ直径と長さを決定することができる。
【0102】
上述の抵抗パッド27a、27b、27c、27d、27e、27f、27g、27h、27i、27j、27k、27lのグループの数(組数)は、必要に応じて調整することができ、例えば、これらに限定されないが、3つのグループ、4つのグループ、5つのグループ、6つのグループ、又はそれ以上のグループとしても良い。
【0103】
表2は、平坦(フラット)な周波数応答の3dB帯域幅が26GHzで、異なるワイヤ直径とワイヤ長で構成されたインダクタンス値と対応するインピーダンス特性を示したものである。設計者は、信号品質(共振を抑制し帯域幅を広くする)を最適化するために、表2に基づいてリング光変調器24の必要な特性を調整し、適合させることができる。
【0104】
以下の表には、3つの同じワイヤボンディングの高さ(200、300、400um)とその対応するワイヤ長(570、641、722um)があり、異なるワイヤの直径(0.5、1、2mil)に対応するように、異なるインピーダンス特性を取得し、インピーダンス特性の実部をRで表示し、虚部をXとして表示し、各組の線径、線の高さ、線の長さに対応するインピーダンス特性はR+J*Xとなる。
【表2】
【0105】
次に、図12を参照して説明する。ここで、図12図2の実施形態の光集積回路の周波数応答の概略図である。
【0106】
この図は、図1の実施形態と図2の等価回路図に基づいており、回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値が固定され、マッチング抵抗器260が固定される前は、ピーキングインダクタンス(inductive peaking)方式が使用され、基板ボンディングワイヤ28a、28bの所望のインダクタンス値を得る。
【0107】
周波数応答曲線m1、m2、m3、m4、及びm5は、それぞれ異なる基板ボンディングワイヤ28a、28bのパラメータに対応する。対応する基板ボンディングワイヤ28a、28bのインダクタンス値は、それぞれ、0.3nH、0.6nH、0.9nH、1.2nH、1.5nH(ナノヘンリー)である。
【0108】
この図から、m1周波数応答曲線の3dB帯域幅は約39GHzであることがわかる (図ではマークb1の位置)。周波数応答曲線m2の3dB帯域幅は約49GHzである (図ではマークb2の位置)。したがって、周波数応答曲線m2の3dB帯域幅は、周波数応答曲線m1に比べて約10GHz増加する。
【0109】
また、高周波応答を考慮すると、30GHzでの応答を比較すると、周波数応答曲線m2の30GHzでの応答は-0.6dB(図では周波数応答曲線m2の位置にマーク)程度となり、30GHzでの周波数応答曲線m5の応答は約 2.25 dB(図では周波数応答曲線m5の位置にマーク) である。
【0110】
このため、基板ボンディングワイヤ28a、28bのインダクタンス値が1.5nHの場合、30GHzにおける周波数応答は約2.85dB(2.25-(-0.6)=2.85)向上する。
【0111】
したがって、より大きなインダクタンス値を有する基板ボンディングワイヤ28a、28bを配置することによって、高周波におけるシステムチャネルの過度の損失を回避することができ、高周波応答損失が予め補償されて平坦な周波数応答が維持される。このため、図12の実験結果で示すように、所望の共振抑制効果とシステムの帯域幅の増加効果が得られる。
【0112】
再び図1を参照して説明する。本発明の実施形態では更に光集積回路20を提供する。光集積回路20は、回路基板10と電気的に接続される前の電子部品である。光集積回路20は、基板22、リング光変調器24、及びマッチング回路26を備える。
【0113】
基板22は、一組の入力パッド23a、23bを有する。リング光変調器24は基板22上に配置され、密閉型導波管240、指向性ライトガイド242、及び一組の電気接点244、246を含む。
【0114】
密閉型導波管240は、指向性ライトガイド242に隣接している。 入力パッド23a、23bは、リング光変調器24の電気接点244、246に電気的に接続されている。リング光変調器24は変調器インピーダンス値を有する。マッチング回路26は、リング光変調器24の電気接点244、246に電気的に接続される。
【0115】
マッチング回路26は、変調器のインピーダンスと実質的に整合する整合インピーダンスを有する。本実施形態では、マッチング回路26は、リング光変調器24の電気接点244、246の間に電気的に接続される。
【0116】
本実施形態の光集積回路20は、回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値を考慮していない。マッチング回路26のマッチングインピーダンス値は、変調器のインピーダンス値に直接マッチングされる。ただし、回路基板10がマッチングされていない場合であっても、本実施形態の光集積回路20は、共振を抑制し、システム帯域幅を増加させるという良好な効果を得ることができる。
【0117】
また、本実施形態の光集積回路20は、所定の仕様(規格)の回路基板10に適合させることもできる。回路基板10の所定の仕様は、例えば、特定のインピーダンスを有する一組の回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値、例えば、表1に示すような特定の回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値である。
【0118】
すなわち、本実施形態の光集積回路20を販売する際に、設計仕様をユーザに提供することができ、ユーザが最適なインピーダンスマッチングモードで設計することを容易にすることができる。
【0119】
また、本実施形態の光集積回路20は、比較的良く見受けられる回路基板ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値で設計することもできる。
【0120】
すなわち、より一般的な回路基板用ボンディングワイヤ30a、30bのインダクタンス値の平均値、中央値等は、回路基板用ボンディングワイヤ30a、30bの平均インダクタンス値(又は中央値インダクタンス値)とマッチング回路26とにより形成されるマッチングインピーダンス値を用いて、マッチングインピーダンス値を変調器インピーダンス値にマッチング(整合)する。
【0121】
このようにしても、光集積回路20は、共振を抑制し、システムの帯域幅を増加させるという良好な効果を得ることができる。
【0122】
本実施形態では、図1に示すように、前述のマッチング回路26は、マッチング抵抗器260と、一組の基板ボンディングワイヤ28a、28bを含む。マッチング抵抗器260は、基板ボンディングワイヤ28a、28bを介して電気接点244、246の間に電気的に接続される。基板ボンディングワイヤ28a、28bの抵抗値とマッチング抵抗器260はマッチングインピーダンス値を形成する。
【0123】
本実施形態では、図6に示すように、前述のマッチング回路26はマッチング抵抗器260を含み、マッチング抵抗器260の両端は電気接点244、246の間に直接的に、且つ電気的に接続され、マッチング抵抗器260の抵抗値はマッチングインピーダンス値を形成する。
【0124】
本発明の実施形態では、入力パッド23a、23bは、S入力パッド23a、及びG入力パッド23bを含み、電気接点244、246は、S電気接点244及びG電気接点246を含む。S入力パッド23a及びG入力パッド23bは、それぞれS電気接点244とG電気接点246に電気的に接続されており、マッチング回路26は、S電気接点244とG電気接点246との間に電気的に接続される。
【0125】
本実施形態では、マッチングインピーダンス値は10から1000オーム(ohm)である。
【0126】
図8の実施形態の光集積回路20は、基板22、リング光変調器24、及びマッチング回路26を含む。基板22は、一組の入力パッド23a、23b、23cを含む。
【0127】
マッチング回路26は、第1のマッチング抵抗器260と第2のマッチング抵抗器262を含む。リング光変調器24は、密閉型導波管240、指向性ライトガイド242、及び一組の電気接点244、246、248を含む。
【0128】
入力パッド23a、23b、23cは、S入力パッド23a、第1のG入力パッド23b、第2のG入力パッド23cを含む。電気接点244、246、248は、S電気接点244、第1のG電気接点246、と第2のG電気接点248を含む。
【0129】
S入力パッド23a、第1のG入力パッド23b、第2のG入力パッド23cは、それぞれS電気接点244、第1のG電気接点246、及び第2のG電気接点248に電気的に接続されている。
【0130】
第1のマッチング抵抗器260の両端は、それぞれS電気接点244と第1のG電気接点246に電気的に接続されており、第2のマッチング抵抗器262の両端は、それぞれS電気接点244と第2のG電気接点248に電気的に接続される。
【0131】
本実施形態では、第1のマッチング抵抗器260の両端は、S電気接点244と第1のG電気接点246に直接的に且つ電気的に接続され、第2のマッチング抵抗器262の両端は、S電気接点244と第2のG電気接点248に直接的に且つ電気的に接続される。
【0132】
本実施形態では、マッチング回路は更に一組の基板ボンディングワイヤ28a、28b、28cを含む。基板ボンディングワイヤ28a、28b、28cは、S基板ボンディングワイヤ28a、第1のG基板ボンディングワイヤ28b、及び第2のG基板ボンディングワイヤ28cを含む。
【0133】
S基板ボンディングワイヤ28aと第1のG基板ボンディングワイヤ28bは、第1のマッチング抵抗器260の両端をそれぞれS電気接点244と第1のG電気接点246に電気的に接続する。S基板ボンディングワイヤ28aと第2Gの基板ボンディングワイヤ28cは、それぞれ第2のマッチング抵抗器262の両端をS電気接点244と第2のG電気接点248に電気的に接続する。
【0134】
以上のように、本発明の実施形態では、光送信機または光集積回路のマッチングインピーダンス値が変調器のインピーダンス値と整合するので、光送信機又は光集積回路は、共振を抑制する効果とシステム帯域幅を増加させる効果の少なくとも1つを奏する。
【符号の説明】
【0135】
10 回路基板
12 送信回路
14a、14b、14c 信号出力部
15a、15b 信号入力部
16 パルス振幅変調回路
18 駆動回路
20、20m、20n、20p 光集積回路
22 基板
23a、23b、23c 入力パッド
24 リング光変調器
240 密閉型導波管
242 指向性ライトガイド
244、246、248 電気接点
26 マッチング回路
260、262 マッチング抵抗
27a、27b、 27c、 27d、 27e、 27f インピーダンスパッド
27g、 27h、 27i、 27j、 27k、 27l インピーダンスパッド
28a、28b、28c、28a’ 、 28b’ 基板ボンディングワイヤ
30a、30b、 30c 回路基板ボンディングワイヤ
m1、 m2、 m3、 m4、 m5 周波数応答曲線
b1、b2 周波数応答曲線の3dB帯域幅

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12