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  • 特開-分離装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001575
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】分離装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/04 20230101AFI20231227BHJP
   B01D 3/00 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 3/10 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C02F1/04 D
B01D3/00 A
B01D3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100313
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】506310050
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】内海 洋
【テーマコード(参考)】
4D034
4D076
【Fターム(参考)】
4D034AA26
4D034BA01
4D034CA12
4D076BB13
4D076CA11
4D076CA19
4D076CD03
4D076CD08
4D076CD12
4D076CD22
4D076DA07
4D076DA10
4D076DA28
4D076HA06
4D076JA03
(57)【要約】
【課題】小型で、蒸発成分と非蒸発成分とを効率よく分離可能な分離装置を提供する。
【解決手段】分離装置1は、蒸発成分と非蒸発成分とを含む被処理液2が投入される真空容器3と、真空容器3内の被処理液2を加熱する加熱手段15と、真空容器3に投入され加熱手段15により加熱されている被処理液2を真空容器3内で撹拌する撹拌手段20と、真空容器3内で蒸発した蒸発成分を真空容器3から排出する上部排出口12と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発成分と非蒸発成分とを含む被処理液が投入される真空容器と、
この真空容器内の前記被処理液を加熱する加熱手段と、
前記真空容器に投入され前記加熱手段により加熱されている前記被処理液を前記真空容器内で撹拌する撹拌手段と、
前記真空容器内で蒸発した前記蒸発成分を前記真空容器から排出する排出手段と、
を備えることを特徴とする分離装置。
【請求項2】
真空容器は、断面多角形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項3】
撹拌手段は、真空容器内に配置されたバッフルを有する
ことを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項4】
バッフルは、開口部を備える
ことを特徴とする請求項3記載の分離装置。
【請求項5】
非蒸発成分は、油脂分であり、
加熱手段は、被処理液から分離された前記油脂分を燃焼させて加熱する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の分離装置。
【請求項6】
被処理液は、乳成分を含む
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液の蒸発成分と非蒸発成分とを分離する分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人工乳や代用乳の製造時の廃液、搾乳施設等の洗浄水、あるいは、廃棄乳等には、乳由来の脂肪分等が含まれていることから、環境負荷が高く、その適切な処理が望まれる。
【0003】
例えば、複数の沈殿分離槽及び濃縮貯留槽を経た被処理液を、複数の曝気槽を経由させて放流する分離装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-120959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の分離装置では、多数の槽が必要であり、装置が大規模となるため、設置スペース及び膨大な経費が必要になる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、小型で、蒸発成分と非蒸発成分とを効率よく分離可能な分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の分離装置は、蒸発成分と非蒸発成分とを含む被処理液が投入される真空容器と、この真空容器内の前記被処理液を加熱する加熱手段と、前記真空容器に投入され前記加熱手段により加熱されている前記被処理液を前記真空容器内で撹拌する撹拌手段と、前記真空容器内で蒸発した前記蒸発成分を前記真空容器から排出する排出手段と、を備えるものである。
【0008】
請求項2記載の分離装置は、請求項1記載の分離装置において、真空容器は、断面多角形状に形成されているものである。
【0009】
請求項3記載の分離装置は、請求項1記載の分離装置において、撹拌手段は、真空容器内に配置されたバッフルを有するものである。
【0010】
請求項4記載の分離装置は、請求項3記載の分離装置において、バッフルは、開口部を備えるものである。
【0011】
請求項5記載の分離装置は、請求項1ないし4のいずれか一記載の分離装置において、非蒸発成分は、油脂分であり、加熱手段は、被処理液から分離された真空容器内の前記油脂分を燃焼させて加熱するものである。
【0012】
請求項6記載の分離装置は、請求項1ないし4のいずれか一記載の分離装置において、被処理液は、乳成分を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型で、蒸発成分と非蒸発成分とを効率よく分離可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施の形態に係る分離装置の正面図である。
図2】同上分離装置の側面図である。
図3】同上分離装置の底面図である。
図4】同上分離装置の斜視透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1ないし図4において、1は分離装置を示す。分離装置1は、蒸発成分と非蒸発成分とを含む被処理液2を加熱しつつ撹拌することで、蒸発成分と非蒸発成分とを分離する撹拌型真空分離装置である。本実施の形態において、被処理液2は、家畜用や乳幼児用の人工乳や代用乳の製造時の廃液、搾乳施設等の洗浄水、あるいは、廃棄乳等、乳成分を含む被処理液が好適に用いられる。
【0017】
分離装置1は、真空容器3を備える。真空容器3は、例えば真空ポンプ等の減圧手段によって内部を真空または略真空状態(減圧状態)とすることが可能な密閉容器である。真空容器3は、設置位置に固定される。
【0018】
真空容器3は、耐熱性の金属、例えばステンレス等により形成されている。真空容器3は、縦長の有底筒状に形成されている。好ましくは、真空容器3は、断面多角形状である。本実施の形態において、真空容器3は、断面四角形状に形成されている。真空容器3は、底部5と、底部5の外縁から立ち上がる側面部6と、側面部6の上端部を覆う上面部7と、を有する。図示される例では、底部5は、中央部に向かい下方へと徐々に傾斜している。側面部6は、底部5の各辺から立ち上がっている。上面部7は、側面部6の上端部に連なっている。本実施の形態では、上面部7は、中央部に向かい上方へと徐々に傾斜している。
【0019】
真空容器3には、被処理液2を内部に投入する投入口10が形成されている。投入口10は、真空容器3の上部に位置する。本実施の形態において、投入口10は、真空容器3の上面部7に開口されているが、これに限らず、側面部6の上部寄りの位置に形成されていてもよい。投入口10は、被処理液2の投入後に減圧手段と接続されて減圧の開閉を行う開閉口として用いてもよい。投入口10は、蓋体11により開閉可能に覆われている。
【0020】
また、真空容器3には、内部で分離された蒸発成分を外部に排出する蒸発成分排出手段である上部排出口12が形成されている。上部排出口12は、真空容器3の上部に位置する。上部排出口12は、上面部7に形成されている。好ましくは、上部排出口12は、上面部7の中央部に近接した位置に配置されている。上部排出口12には、好ましくは開閉用のバルブが設置される。上部排出口12には、蒸発成分を真空容器3の外部へと排出するための減圧装置が接続される。なお、上部排出口12には、蒸発成分を冷却して凝縮するための冷却手段または凝縮手段が配置されていてもよい。
【0021】
さらに、真空容器3には、内部で分離された非蒸発成分を排出する非蒸発成分排出手段である下部排出口13が形成されている。下部排出口13は、真空容器3の下部に位置する。下部排出口13は、底部5に形成されている。下部排出口13には、好ましくは開閉用のバルブが設置される。
【0022】
真空容器3内に投入された被処理液2は、加熱手段15により加熱される。加熱手段15は、真空容器3の外部から被処理液2を温めるものである。例えば、加熱手段15は、例えば燃料を燃焼させることにより真空容器3を加熱するものでもよいし、真空容器3の底部5に蛇行等して配置された導水管に湯を循環させる等の構成により加熱してもよい。好ましくは、加熱手段15は、下部排出口13から真空容器3の外部に排出された非蒸発成分である油脂分(脂肪分)を用い、これを燃焼させることにより真空容器3を加熱するように構成されている。
【0023】
真空容器3内に投入され加熱手段15により加熱されている被処理液2は、撹拌手段20により撹拌される。好ましくは、撹拌手段20は、被処理液2を、真空容器3内で乱流を発生させるように撹拌(乱流撹拌)する。
【0024】
撹拌手段20は、真空容器3の軸心に沿って真空容器3内に挿入された軸22を有する。軸22は、上面部7に形成された挿入開口部23から真空容器3内の少なくとも底部5の近傍の位置まで挿入されている。軸22は、ベアリング24等により回転可能に保持されている。軸22と挿入開口部24との隙間は、シールにより密閉されている。軸22には、撹拌翼25が配置されている。撹拌翼25は、真空容器3内の被処理液2に浸漬される位置にある。本実施の形態では、撹拌翼25は、軸22の下端部近傍にある。撹拌翼25の形状は、任意に設定してよい。本実施の形態では、撹拌翼25は、軸22に対して直交する方向に延びる翼状に形成され、軸22の軸方向である上下方向に複数箇所、例えば2か所配置されている。軸22には、この軸22を撹拌翼25とともに回転させるモータ26が減速機や変速機を介して接続されている。
【0025】
また、撹拌手段20は、バッフル(邪魔板)28を有する。バッフル28は、撹拌される被処理液2に上下方向の流れを生じさせ、その温度や濃度等を均一化する機能を有する。バッフル28は、真空容器3の側面部6に沿って配置され、側面部6から真空容器3の中央部に向かって突出している。バッフル28は、側面部6の面方向に対して直交する方向に突出している。バッフル28は、真空容器3の下部寄りに配置されて、少なくとも下部が被処理液2内に浸漬されるようになっている。本実施の形態において、バッフル28は、四角形板状に形成され、側面部6に沿って上下方向に延びている。バッフル28は、撹拌翼25に対し、回転径方向に所定距離離れて位置する。バッフル28の下端部は、撹拌翼25よりも下方に位置し、バッフル28の上端部は、撹拌翼25よりも上方に位置している。
【0026】
図示される例では、バッフル28には、複数の開口部28aが形成されている。開口部28aは、バッフル28を板厚方向に貫通して形成されている。開口部28aは、四角形状に形成され、上下方向に互いに離れて配置されている。
【0027】
好ましくは、バッフル28は、側面部6のそれぞれに配置されている。本実施の形態では、バッフル28は、4つの側面部6にそれぞれ配置されている。
【0028】
そして、分離装置1では、投入口10から被処理液2を真空容器3内に投入し、真空容器3を密閉して真空または略真空となるまで減圧した後、加熱手段15により被処理液2を加熱して温めることで沸点を下げ、その状態で被処理液2を撹拌手段20により撹拌する。加熱手段15は、加熱初期においては、所定の燃料を燃焼させて真空容器3を加熱する。
【0029】
撹拌手段20では、モータ26により軸22とともに撹拌翼25を高速回転させることで、被処理液2の表面が波立つとともに、図1の二点鎖線に示すように、被処理液2が、真空容器3内の中央部と比較して周辺部が側面部6に沿って盛り上がった渦流を形成する。また、真空容器3内の周辺部の被処理液2は、バッフル28に当接して真空容器3の側面部6の位置で上下方向への流れが生じ乱流が大きくなるとともに被処理液2の温度や濃度が均一化され、かつ、被処理液2が開口部28aを通過することで乱流がより大きくなり、表面積がより増加される。
【0030】
そのため、被処理液2は減圧下において、表面積が大幅に拡大された状態で加熱されることにより、水分等の蒸発成分が蒸発する。蒸発した蒸発成分は、真空容器3の上部に移動し、上部排出口12から真空容器3の外部に排出されることで、真空容器3内の被処理液2の水分等の蒸発成分の蒸発が促進される。上部排出口12は、撹拌手段20の軸22に近接した位置、すなわち真空容器3内の被処理液2の渦流の中央部近傍から蒸発成分を排出することで、被処理液2を排出しないようにする。一方、油脂分等の非蒸発成分は、真空容器3の底部5上に堆積するが、真空容器3が加熱手段15により加熱されているため融解して流体状(液体状)となり、下部排出口13から流出して真空容器3の外部に排出可能となる。このように、被処理液2の蒸発成分と非蒸発成分とが分離装置1によって真空分離される。
【0031】
なお、加熱手段15は、真空容器3から排出された非蒸発成分である油脂分が所定量以上となれば、この油脂分を燃焼させることにより真空容器3を加熱するとともに、分離された油脂分を加熱手段15に用いて消費することで、水分等の蒸発成分以外の廃棄物を減ずる。
【0032】
このように、一実施の形態によれば、真空容器3に投入した被処理液2を加熱手段15により加熱しつつ真空容器3内で撹拌手段20により撹拌することで、減圧により沸点を下げた被処理液2の表面積を撹拌手段20によって増加させて、被処理液2の蒸発成分を真空容器3内で効率よく蒸発させるとともに、蒸発した蒸発成分を、上部排出口12を介して真空容器3から排出することで、真空容器3内での蒸発成分の蒸発を促進する。これにより、複数の槽を配置する等の装置の大型化を招くことなく、小型の分離装置1によって、蒸発成分と非蒸発成分とを効率よく分離可能となる。
【0033】
真空容器3が断面多角形状であるため、断面円形状の場合と比較して、撹拌手段20により撹拌される被処理液2が真空容器3の側面部6に沿って供回りしにくく、被処理液2に乱流が生じやすくなる。
【0034】
真空容器3内にバッフル28を配置することで、撹拌手段20により撹拌される被処理液2に乱流が生じやすくなる。しかも、バッフル28に開口部28aを形成することで、撹拌される被処理液2の一部が開口部28aを通過することによって被処理液2に乱流がより生じやすくなる。
【0035】
この結果、被処理液2の表面積をより増加させることができ、蒸発成分をより効果的に蒸発させることができる。
【0036】
また、バッフル28により被処理液2の温度や濃度等が均一化されるので、蒸発成分のより効率的な蒸発を促進できる。
【0037】
また、加熱手段15が、被処理液2から分離された非蒸発成分である油脂分を燃焼させて加熱するため、被処理液2を分離処理するにあたり、分離された非蒸発成分を有効利用して真空容器3を加熱できるとともに、油脂分を燃料として消費し、廃棄物を減らすことができる。
【0038】
そして、乳成分を含む被処理液2を分離装置1によって蒸発成分である水分と非蒸発成分である油脂分(脂肪分)とに分離することで、水分はそのまま河川や海等に流すことができ、油脂分は加熱手段15の他にも燃料等として二次利用が可能である等、環境負荷が大きい乳成分を含む被処理液2を、小型で安価に、かつ、適切に分離処理できる。
【0039】
なお、上記の一実施の形態において、真空容器3の断面形状は、六角形状等、他の任意の多角形状としてよい。
【符号の説明】
【0040】
1 分離装置
2 被処理液
3 真空容器
12 排出手段である上部排出口
15 加熱手段
20 撹拌手段
28 バッフル
28a 開口部
図1
図2
図3
図4