(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157507
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】改質プロピレン系重合体の製造方法およびそれにより製造された改質プロピレン系重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 255/02 20060101AFI20241030BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20241030BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20241030BHJP
C08F 2/06 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C08F255/02
C08L23/10
C08K5/01
C08F2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184905
(22)【出願日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2023-0053838
(32)【優先日】2023-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ナ スン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク ミュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒョ スン
(72)【発明者】
【氏名】ベク ジュン ウォン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BB121
4J002BB131
4J002EA016
4J002GG02
4J002GH00
4J002GJ01
4J002HA05
4J011HA03
4J011HB13
4J011HB22
4J011XA02
4J026AA13
4J026BA07
4J026BA45
4J026BA46
4J026BA47
4J026DB02
4J026DB15
4J026GA01
4J026GA02
4J026GA06
4J026GA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶液状態でラジカル開始剤を利用して改質プロピレン系重合体を製造する方法および前記方法により製造された改質プロピレン系重合体を提供する。
【解決手段】溶媒にプロピレン重合体、ジエン化合物およびラジカル開始剤を投入して混合物を調製するステップと、前記混合物をラジカル反応させるステップと、を含む、改質プロピレン系重合体の製造方法である。一実施形態による方法によって製造された改質プロピレン系重合体は、キシレン可燃物含有量が少なく、長い長鎖分岐(long chain branched、LCB)を均一に含むので、加工性および生産性が改善される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒にプロピレン重合体、ジエン化合物およびラジカル開始剤を投入して混合物を調製するステップと、
前記混合物をラジカル反応させるステップと、
を含む、改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項2】
前記混合物を調製するステップは、
溶媒にプロピレン重合体を溶解させるステップと、
ジエン化合物およびラジカル開始剤を投入した後、混合するステップと、
を含む、請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記混合物を調製するステップおよびラジカル反応させるステップは、いずれも80~200℃の温度で行われる、請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒は、脂肪族炭化水素化合物および芳香族炭化水素化合物のいずれか1種以上を含むものである、請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記脂肪族炭化水素化合物は、C3-20の脂肪族炭化水素化合物である、請求項4に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項6】
前記芳香族炭化水素化合物はC5-20の芳香族炭化水素化合物である、請求項4に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記ジエン化合物は、投入した前記プロピレン重合体の重量を基準として0.1~20.0重量%で投入されるものである、請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記ジエン化合物は、投入した前記プロピレン重合体の重量を基準として5.0~15.0重量%で投入されるものである、請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項9】
前記ラジカル開始剤と前記ジエン化合物の重量比が1:1~1:50である、請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項10】
前記ラジカル開始剤は、投入した前記プロピレン重合体の重量を基準として0.1~5.0重量%で投入されるものである、請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項11】
前記ジエン化合物は、炭素数2~20を含む化合物である、請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項12】
前記ジエン化合物は、1、3-ブタジエン、1、4-ペンタジエン、1、5-ヘキサジエン、1、6-ヘプタジエン、1、7-オクタジエン、1、8-ノナジエン、1、9-デカジエン、1、10-ウンデカジエン、1、11-ドデカジエン、1、12-トリデカジエン、1、13-テトラデカジエン、クロロプレン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、2、3-ジメチルブタジエン、イソプレンおよびo-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼンおよびp-ジビニルベンゼンからなる群から選択されるいずれか1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項13】
前記ラジカル開始剤は、アシルパーオキシド、アルキルパーオキシド、ヒドロパーオキシド、ヒドロパーオキシド、パーエステルおよびヒドロパーオキシドからなる群から選択されるいずれか1種以上を含むものである、請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項14】
前記改質プロピレン系重合体は、2.0重量%以下のキシレン可溶物を有する、請求項1に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の改質プロピレン系重合体の製造方法により製造された、改質プロピレン系重合体。
【請求項16】
前記改質プロピレン系重合体は、2.0重量%以下のキシレン可溶物を有する、請求項15に記載の改質プロピレン系重合体。
【請求項17】
キシレン可溶物含有量が2.0重量%以下である、改質プロピレン系重合体。
【請求項18】
前記改質プロピレン系重合体は、結晶化温度(Tc)が110~124℃である、請求項17に記載の改質プロピレン系重合体。
【請求項19】
前記改質プロピレン系重合体は、数平均分子量(Mn)が60,000~110,000 g/molである、請求項17に記載の改質プロピレン系重合体。
【請求項20】
前記改質プロピレン系重合体は、180℃で1.0s-1のヘンキー速度(Hencky rate、dε/dt)および1~3のヘンキー歪み(Hencky strain、ε)の範囲で測定された歪み硬化指数(strain hardening index、SHI)が0.2以上であり、前記歪み硬化指数は、下記に示す数式2で定義されるヘンキー歪みの常用対数(log(ε))関数の勾配値(c2)で定義されるものである、請求項17に記載の改質プロピレン系重合体。
[数式2]
ηE=c1×εc2
ただし、数式2において、ηEは伸び粘度(elongation viscosity、Pa-s)、εはヘンキー歪み、c1およびc2はパラメータである。
【請求項21】
前記改質プロピレン系重合体は、ジエン共重合体を共重合させて製造されたものである、請求項17に記載の改質プロピレン系重合体。
【請求項22】
請求項15に記載の改質プロピレン系重合体を含む、発泡用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改質プロピレン系重合体の製造方法およびそれにより製造された改質プロピレン系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン重合体(Polypropylene、PP)は炭素と水素だけで構成され、低密度を持つため、再生産が容易で、相対的に低コストでも優れた耐薬品性と高い引張係数を実現することができる。プロピレン重合体の物性をさらに向上させるための方法として、重合体の主鎖に長さが長い長鎖分岐(long chain branched、LCB)を導入する方法が行われてきた。
【0003】
プロピレン主鎖に長鎖分岐を追加するための技術としては、固相反応、反応押出、電子線照射などの方法が報告されている。一方、従来の反応押出を利用した技術は、相対的に高い反応温度により主鎖切断がよく起こり、物性が低下するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一実施形態は、溶液状態でラジカル開始剤を利用してプロピレン系重合体を改質する方法およびそれによって製造された改質プロピレン系重合体を提供することを目的とする。
【0005】
他の一実施形態は、キシレン可溶物含有量が低減された改質プロピレン系重合体を提供することを目的とする。
【0006】
他の一実施形態は、前記一実施形態による改質プロピレン系重合体を含む発泡用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、溶媒にプロピレン系重合体、ジエン化合物およびラジカル開始剤を投入して混合物を調製するステップと、前記混合物をラジカル反応させるステップを含む改質プロピレン系重合体の製造方法を提供する。
【0008】
他の一実施形態は、前記一実施形態による製造方法により製造された改質プロピレン系重合体を提供する。
【0009】
他の一実施形態は、キシレン可溶物の含有量が2.0重量%以下に調整された改質プロピレン系重合体を提供する。
【0010】
他の一実施形態は、前記一実施形態による製造方法により製造された改質プロピレン系重合体を含む発泡用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、溶液状態でラジカル開始剤を利用して改質プロピレン系重合体を製造する方法および前記方法により製造された改質プロピレン系重合体に関する。一実施形態による方法によって製造された改質プロピレン系重合体は、キシレン可燃物含有量が少なく、長い長鎖分岐(long chain branched、LCB)を均一に含むので、加工性および生産性が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に記載された実施形態は、様々な他の形態に変形することができるので、一実施形態による技術が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。さらに、本明細書全体において、ある構成要素を「含む」、「備える」、「含む」、または「有する」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味し、さらに列挙されていない要素、材料、またはプロセスを排除するものではない。
【0013】
本明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内のすべての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に導かれる増分、二重に限定されたすべての値、および異なる形態で限定された数値範囲の上限と下限のすべての可能な組み合わせを含む。一例として、組成物の含有量が10~80%または20~50%に限定された場合、10~50%または50~80%の数値範囲も本明細書に記載されたものと解釈されるべきである。本明細書で特別な定義がない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生する可能性がある数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0014】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、「約」は、記載された値の30%、25%、20%、15%、10%または5%以内の値とみなすことができる。
【0015】
本明細書で特に定義されていない限り、「重合体」は、相対的に高分子量の分子を指し、その構造は、低分子量の分子から誘導された単位の複数の繰り返しを含むことができる。一態様において、重合体は、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、グラジエント共重合体、分岐共重合体、架橋共重合体、またはこれらをすべて含む共重合体(例えば、1種以上のモノマーを含む重合体)であってもよい。他の態様では、重合体は単独重合体(homopolymer)(例えば、1種のモノマーを含む重合体)であってもよい。
【0016】
本明細書で使用される「プロピレン系重合体(propylene-based polymer)」は、プロピレンを含むモノマーから重合された重合体である。本明細書によるプロピレン系重合体の製造のために使用されるモノマーは、プロピレンを必ず含むが、他にさらに使用できるモノマーの種類には制限はない。例えば、前記プロピレン系重合体は、プロピレンと追加の脂肪族不飽和炭化水素(オレフィン、ジエン)などを含むモノマーから重合される高分子であってもよい。一方、本明細書で使用される用語「プロピレン系重合体」は、通常の技術者の選択により「プロピレン重合体」としても使用することができる。
【0017】
一実施形態は、溶液状態でラジカル反応を利用した改質プロピレン系重合体の製造方法(またはプロピレン系重合体の改質方法)を提供しようとする。一実施形態で提供する改質プロピレン系重合体の製造方法は、従来の反応押出(reactive extrusion)を用いた方法に比べ、低い温度で行われることにより、反応の均一性が改善された。一実施形態による方法で製造された改質プロピレン系重合体は、均一な長い長鎖分岐を有するプロピレン重合体(long chain branched polypropylene、LCBPP)であってもよい。一実施形態による改質プロピレン系重合体には、複数の種類の長鎖分岐が均等に分布しており、キシレン可溶物含有量が少ないため、高溶融強度などの物性と加工性および生産性が優れている。
【0018】
以下、一実施形態による改質プロピレン系重合体の製造方法およびそこから製造された改質プロピレン系重合体について具体的に説明する。
【0019】
一実施形態は、溶媒にプロピレン系重合体、ジエン化合物およびラジカル開始剤を投入して混合物を調製するステップと、前記混合物をラジカル反応させるステップと、を含む改質プロピレン系重合体の製造方法を提供する。
【0020】
一実施形態において、前記混合物を調製するステップは、具体的には、溶媒にプロピレン重合体を溶解するステップと、前記プロピレン重合体が溶解した溶液にジエン化合物およびラジカル開始剤を添加した後に混合するステップと、を含むことができる。
【0021】
一実施形態では、前記混合物を調製するステップおよび/またはラジカル反応させるステップは、いずれも80~200℃、80~180℃、100~150℃、約130℃の温度で行うことができる。前記温度範囲は一例を示したものであり、必ずしも前記範囲に限定されるものではない。
【0022】
一実施形態では、前記混合物を調製するステップおよびラジカル反応させるステップは、同じ温度条件で行うことができる。具体的には、溶媒にプロピレン重合体を溶解させるステップ、ジエン化合物およびラジカル開始剤を添加した後に混合するステップ、およびラジカル反応させるステップは、全て同じ条件で行うことができる。
【0023】
一実施形態による改質プロピレン系重合体の製造方法は、従来の反応押出による改質プロピレン系重合体の製造方法と比較して、低い温度で行うことができるので、反応の経済性が改善された。
【0024】
一実施形態では、プロピレン重合体(すなわち、改質前の重合体)は、アイソタクチックプロピレン重合体(isotactic polypropylene、iPP)、シンジオタクチックプロピレン重合体(syndiotactic polypropylene、sPP)またはアタクチックプロピレン重合体(atactic polypropylene、aPP)であってもよい。特定の理論を拘束するつもりはないが、アイソタクチックプロピレン重合体の方が結晶性が優れているため、より適切な場合がある。前記アイソタクチックプロピレン重合体は、ジグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いて製造されたものであってもよい。
【0025】
一実施形態において、前記ジグラー・ナッタ触媒(またはジグラー・ナッタ系触媒)は、周期表の第4族、第5族または第6族元素を含む遷移金属化合物と、周期表の第13族元素を含む有機金属化合物を含むことができる。前記遷移金属化合物は、ジーグラー・ナッタ触媒の主触媒として、マグネシウム、チタン、ハロゲン元素および内部電子供与体のいずれか一つ以上を含む化合物であってもよい。前記有機金属化合物は、ジーグラー-ナタール触媒の助触媒として、有機アルミニウム化合物であってもよく、例えば、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルミニウムジアルキルハイドライドまたはアルキルアルミニウムセスキハライドのいずれか1種以上を含むものであってもよい。具体的に例えば、前記有機アルミニウム化合物は、Al(C2H5)3、Al(C2H5)2H、Al(C3H7)3、Al(C3H7)2H、Al(i-C4H9)2H、Al(C8H17)3、Al(C12H25)3、Al(C2H5)(C12H25)2、Al(i-C4H9)(C12H25)2、Al(i-C4H9)2H、Al(i-C4H9)3、(C2H5)2AlCl、(i-C3H9)2AlCl、または (C2H5)3Al2Cl3のであってもよい。
【0026】
また、一実施形態で投入される改質前のプロピレン重合体として、リサイクルプロピレン重合体を利用することもできる。
【0027】
一実施形態では、プロピレン重合体はホモ(homo)またはランダム(random)形態であり、具体的にはホモアイソタクチックプロピレン重合体またはランダムアイソタクチックプロピレン重合体である。ホモ型は固有動性を持ち、ランダム型は低い融点を有する。一方、前記ホモまたはランダムプロピレン重合体には、キシレン可溶物(アイソタクチック重合体に含まれているアイソタクチックプロピレン重合体の含有量として理解することができる)が通常5%を超える場合が頻繁であるため、商業的に活用することが難しいという問題があった。これに対して、一実施形態は、プロピレン重合体のキシレン含有量を良好に低減することができる改質方法を提供する。
【0028】
一実施形態では、前記溶媒は、プロピレン重合体を溶解するための溶媒として、脂肪族炭化水素化合物および芳香族炭化水素化合物のいずれか1種以上を含むものであってもよい。例えば、前記脂肪族炭化水素化合物は、C3-20の脂肪族炭化水素化合物、C5-15の脂肪族炭化水素化合物またはC5-10の脂肪族炭化水素化合物であってもよく、鎖状または環状であってもよく、ケトン基またはヒドロキシ基を含むものであってもよい。具体的には、前記脂肪族炭化水素化合物は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、C1-5のアルキル基が置換されたシクロペンタン、またはC1-5のアルキル基が置換されたシクロヘキサンであってもよい。前記芳香族炭化水素化合物は、例えば、C5-20の芳香族炭化水素化合物、C6-20の芳香族炭化水素化合物、C6-15の芳香族炭化水素化合物、C6-10の芳香族炭化水素化合物、またはC6-8の芳香族炭化水素化合物であってもよく、前記芳香族炭化水素化合物は、置換または非置換の化合物であってもよい。具体的には、前記芳香族炭化水素化合物は、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、アニソール、カテコール、ナフタレン、スチレン、アニリン、またはキシレノールであってもよい。
【0029】
一実施形態では、前記ジエン化合物は、投入されたプロピレン重合体の重量を基準として(すなわち、投入されたプロピレン重合体の重量を100重量%としたとき)、0.1~20.0重量%、0.5~15.0重量%、1.0~20.0重量%、1.0~15.0重量%、2.0~15.0重量%、3.0~15.0重量%、3.0~13.0重量%、5.0~20.0重量%、5.0~15.0重量%または5.0~10.0重量%で投入することができる。ただし、前記重量範囲は一例であり、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0030】
一実施形態において、前記ラジカル開始剤は、投入されたプロピレン重合体の重量を基準として、0.1~5.0重量%、0.1~3.0重量%、0.1~2.0重量%、0.1~1.0重量%、0.3~1.2重量%または約0.5重量%で投入することができる。ただし、前記重量範囲は一例であり、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0031】
一実施形態において、前記ラジカル開始剤とジエン化合物の重量比は、1:1~1:50、1:1~1:30、1:1~1:20、1:2~1:20、1:5~1:20、1:8~1:20、または1:10~1:20であってもよい。ただし、前記重量比は一例であり、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0032】
一実施形態による前記ジエン化合物は、二重結合を2つ含む化合物であれば特に限定されず、例えば、2~20の炭素数、5~10の炭素数、5~15の炭素数、または5~10の炭素数を含む化合物であってもよい。具体的には、例えば、1、3-ブタジエン、1、4-ペンタジエン、1、5-ヘキサジエン、1、6-ヘプタジエン、1、7-オクタジエン、1、8-ノナジエン、1、9-デカジエン、1、10-ウンデカジエン、1、11-ドデカジエン、1、12-トリデカジエン、1、13-テトラデカジエン、クロロプレン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、2、3-ジメチルブタジエン、イソプレンおよびo-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼンおよびp-ジビニルベンゼンのいずれか1種以上を含むものであってもよい。一例として、以下の実施例で使用されるジビニルベンゼン(DVB)は、m-DVBとp-DVBの混合物である。
【0033】
一実施形態による前記ラジカル開始剤は、公知のラジカル開始剤を限定することなく使用することができ、例えば、アシルパーオキシド、アルキルパーオキシド、ヒドロパーオキシド、パーエステルおよびパーオキシカーボネートからなる群から選択されるいずれか1種以上を含むものであってもよい。
【0034】
アシルパーオキシドは、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、4-クロロベンゾイルペルオキシド、3-メトキシベンゾイルペルオキシド、および/またはメチルベンゾイルパーオキサイドであってもよい。
【0035】
アルキルパーオキサイドは、例えば、アリルt-ブチルパーオキサイド、2、2-ビス(t-ブチルパーオキシブタン)、1、1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4、4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ジイソプロピルアミノメチル-t-アミルパーオキサイド、ジメチルアミノメチル-t-アミルパーオキサイド、ジエチルアミノメチル-t-ブチルペルオキシド、ジメチルアミノメチル-t-ブチルペルオキシド、1、1-ジ(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、t-アミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、t-ブチルペルオキシドおよび/または1-ヒドロキシブチルn-ブチルペルオキシドであってもよい。
【0036】
パーエステルおよびパーオキシカーボネートは、例えば、ブチルパーアセテート、クミルパーアセテート、クミルパーピオネート、シクロヘキシルパーアセテート、ジ-t-ブチルパーアジペート、ジ-t-ブチルパーアゼレート、ジ-t-ブチルペルグルタレート、ジ-t-ブチルパーサレート、ジ-t-ブチルパーセバケート、4-ナイトロクミルパープロピオネート、1-フェニルエチパールオキシベンゾエート、1-フェニルエチル4-ナイトロ-パーオキシベンゾエート、t-ブチルビシクロ-(2、2、1)ヘプタンパーオキシカルボキシレート、t-ブチル-4-カルボメトキシパーオキシブチレート、t-ブチルシクロブタンパーオキシカルボキシレート、t-ブチルシクロヘキシルパーオキシカルボキシレート、t-ブチルシクロペンチルパーオキシカルボキシレート、t-ブチルシクロプロパンパーオキシカルボキシレート、t-ブチルジメチルパーシナメート、t-ブチル-2-(2、2-ジフェニルビニル)パーオキシベンゾエート、t-ブチル-4-メトキシパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパルトルエート、t-ブチル-1-フェニルシクロプロピルパーオキシカルボキシレート、t-ブチル-2-プロピルパーペンテン-2-オエート、t-ブチル-1-メチルシクロプロピルパーオキシカルボキシレート、t-ブチル-4-ニトロフェニルパーアセテート、t-ブチルニトロフェニルパーオキシカルバメート、t-ブチル-N-スクシイミドパーオキシカルボキシレート、t-ブチルパークロトネート、t-ブチルパーマル酸、t-ブチルパーメタクリレート、t-ブチルパーオクトエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーイソブチレート、t-ブチルパーアクリレートおよび/またはt-ブチルパープロピオネートであってもよい。
【0037】
一実施形態による方法で製造された改質プロピレン系重合体は、2.0重量%以下、1.5重量%以下、1.0重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、または0.1重量%以下のキシレン可溶物(xylene soluble、XS)を含むことができる。このときの下限は、例えば0.1重量%、0.05重量%または0.01重量%であってもよい。キシレン可溶物は、重合体に含まれる構成のうち、冷たいキシレンに可溶性の部分を意味し、重合体をキシレンに溶解させた後、不溶性部分(残留物)を冷却溶液から決定させることによって測定することができる。具体的には、キシレン可溶物は次の数式1により計算することができる。
【0038】
[数式1]
キシレン可溶物(XS、%(重量%))={(m0-m1)/m0}×100
【0039】
前記数式1で、m0は重合体の初期重量(g)、m1は残留物の重量(g)である。キシレン可溶物は、立体規則性の低い重合体鎖を含んでおり、非結晶性領域の量の指標となる。
【0040】
一実施形態による製造方法で製造された改質プロピレン系重合体は、キシレン可溶物が著しく低減されることにより、加工性および生産性が優秀に改善されたものである。
【0041】
他の一実施形態は、前記一実施形態による改質プロピレン系重合体の製造方法によって製造された改質プロピレン系重合体を提供する。
【0042】
一実施形態による改質プロピレン系重合体は、多枝分岐したプロピレン系重合体であってもよい。すなわち、プロピレン基幹(主鎖)に多数の側鎖(side chain)を有することができ、前記側鎖の一部は、それ自体が追加の側鎖をさらに有することができる。
【0043】
また、一実施形態による改質プロピレン系重合体は、長鎖分岐を有するプロピレン系重合体(long chain branched polypropylene、LCBPP)であってもよい。一実施形態による改質重合体は、長鎖分岐を有することにより、流れ(flow)、せん断(shear)、伸び(extension)などのレオロジー特性が優れていることができる。
【0044】
一実施形態による改質プロピレン系重合体をゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて分析してみると、市販されているLCBPPと同等またはそれ以上に分子量分布が広く現れることができる。
【0045】
つまり、一実施形態による改質プロピレン系重合体が互いに分離(separation)されておらず、均一(homogeneous)に分布している。
【0046】
一実施形態による改質プロピレン系重合体は、前記数式1に従って計算されたキシレン可溶物(XS)を2.0重量%以下、1.5重量%以下、1.0重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、または0.1重量%以下含むことができる。
【0047】
一実施形態による改質プロピレン系重合体は、溶融強度が高いため、ブローフィルム(blown film)、押出コーティング(extrusion coating)、発泡押出(foam extrusion)およびブロー成形(blow-molding)など様々な応用が可能である。また、高い溶融強度が実現されるため、加工性、生産性などが非常に改善され、有用であり、高温での溶融強度の増加で高温での発泡成形が可能である。また、前記改質プロピレン系重合体はリサイクルが可能であり、環境にやさしい軽量化素材として使用されるのに有用である。
【0048】
一実施形態による改質プロピレン系重合体は、溶融強度が高く、物性が優れているため、積層および非積層シート、ビーズ、離型材などの発泡物品の製造に使用することができる。それだけでなく、一実施形態による改質プロピレン系重合体を利用して、熱成形、射出成形、ブロー成形、押出コーティングまたは溶融して物品を形成することができる。また、一実施形態による改質プロピレン系重合体は、接着剤、フィルム、包装材など様々な分野に効果的に適用することができる。
【0049】
他の一実施形態は、キシレン可溶物含有量が2.0重量%以下の改質プロピレン系重合体を提供する。
【0050】
前記一実施形態による改質プロピレン系重合体は、キシレン可溶物含有量(前記数学式1により計算される)が著しく低減されるため、物性が優れており、具体的には生産性および加工性に優れている。
【0051】
一実施形態による改質プロピレン系重合体は、キシレン可溶物含有量が1.5重量%以下、1.0重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、または0.1重量%以下であってもよい。このときの下限は、例えば0.01重量%、0.05重量%または0.01重量%であってもよい。
【0052】
一実施形態による前記改質プロピレン系重合体は、下記実験例によるDSC測定条件に従って測定した結晶化温度(Tc)が110℃~124℃であってもよい。または110℃~120℃、または110℃~118℃であってもよい。
【0053】
一実施形態による前記改質プロピレン系重合体は、下記実験例によるGPC測定条件に従って測定した数平均分子量(Mn)が60,000g/mol~110,000 g/molであってもよい。または70,000g/mol~110,000 g/molであってもよい。
【0054】
一実施形態による前記改質プロピレン系重合体は、180℃で1.0s-1のヘンキー速度(Hencky rate、dε/dt)および1~3のヘンキー歪み(Hencky strain、ε)の範囲で測定された歪み硬化指数(strain hardening index、SHI)が0.2以上、0.3以上、0.5以上、1.0以上、1.5以上、1.8以上、または1.9以上であってもよい。このときの上限は、例えば5.0、4.0、3.0、または2.74であってもよい。前記歪み硬化指数は、下記数式2で定義されるヘンキー歪みの常用対数(log(ε))関数の傾き値(c2)で定義されるものである。
【0055】
[数式2]
ηE=c1×εc2
【0056】
前記数式2において、ηEは伸び粘度(elongation viscosity、Pa-s)、εはヘンキー歪み、c1およびc2はパラメータである。
【0057】
一実施形態による改質プロピレン系重合体は、既存の開発された商品と同程度の優れた歪み硬化指数を示し、これにより、一実施形態による改質プロピレン系重合体が多様な長鎖分岐を含むことが分かる。したがって、一実施形態によるプロピレン系重合体を利用すれば、加工時に安定した状態を効果的に維持することができる。
【0058】
一実施形態による改質プロピレン系重合体は、ジエン共重合体を共重合して製造されたものであり、前述のジエン化合物に関する内容を適用することができる。
【0059】
他の一実施形態は、前記一実施形態による改質プロピレン系重合体を含む発泡用組成物、これを用いて形成された発泡成形体を提供し、前記成形体の用途は特に限定されない。
【0060】
以下、実施例および実験例を以下に具体的に例示して説明する。ただし、後述する実施例および実験例は、一実施態様の一部を例示するものであるため、本明細書に記載された技術がこれに限定されるものと解釈してはならない。
【0061】
<実施例1>
500mLの3-neck丸底フラスコに、プロピレン重合体(isotacic polypropylene、iPP)15gと磁気バーを入れ、n-オクタン溶剤300mLを入れた後、120℃で窒素ガスと共に還流した。プロピレン重合体が全て溶解した後、ジエンモノマー(ジエン化合物)としてオクタジエン1.0重量%およびDVB(Sigma-Aldrich)1.0重量%、ラジカル開始剤としてTBPB0.5重量%を添加し、同じ温度で1時間攪拌した。室温に冷却した後、アセトンで洗浄し、ろ過および乾燥して改質プロピレン系重合体を得た。
【0062】
<実施例2~実施例7>
前記実施例1の方法でプロピレン系重合体改質を行うが、下記表1に示す溶媒、ラジカル開始剤およびジエン化合物を使用した。
【0063】
【表1】
(前記重量%はプロピレン重合体の重量を基準とする)
TBPB: t-ブチルパーオキシベンゾエート
LP: ラウロイルパーオキサイド
DVB: ジビニルベンゼン
【0064】
<比較例1>
前記実施例1で使用した改質前のプロピレン重合体(isotacic polypropylene、iPP)を準備した。
【0065】
<比較例2>
高溶融強度プロピレン重合体(high melt strength polypropylene、HMSPP)であるWB140HMS(Borealis社)を準備した。WB140HMSは反応押出により作られた製品である。
【0066】
<実験例1>キシレン可溶物(XS)含有量測定
Crystexを用いてキシレン可溶物含有量を測定した。具体的には、改質プロピレン系重合体をキシレンに溶解させた後、不溶性部分(残留物)を冷却溶液から決定させる方法で測定した。下記数式1によりキシレン可溶物の含有量を計算した。その結果を下記表2に記載した。
【0067】
[数式1]
キシレン可溶物(XS、%(重量%))={(m0-m1)/m0}×100
【0068】
前記数式1で、m0は重合体の初期重量(g)、m1は残留物の重量(g)である。
【0069】
<実験例2> DSC(differential scanning calorimetry)分析
示差走査熱量分析(DSC)を利用して、重合体の結晶化温度(crystallization temperature、Tc)および溶融温度(melting temperature、Tm)を測定した。DSC分析のために重合体試験片をクリンパープレスでプレスして準備した後、-50℃~200℃の温度および10℃/minの昇温速度で分析した。その結果を下記表2に記載した。
【0070】
<実験例3> GPC(Gel permeation chromatography)分析
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて重合体の分子量分布を確認し、その結果を下記表2に示した。GPC分析はPolymer Char GPC-IR装置を利用した(標準試料:Easical PS1 Polystyrene、温度:160℃、溶媒:1、2、4-トリクロロベンゼン、粘度定数:ポリプロピレンのK、α)。重合体試料約1.5mgを高温GPC1.25mLバイアルに入れ、1、2、4-トリクロロベンゼン(w/BHT)1mLを添加した後、150℃で攪拌しながら3時間以上溶解させてから分析に使用した。
【0071】
<実験例4> 伸長粘度(Elongation viscostiy)分析
重合体の歪み硬化(strain hardening)特性を確認するために、時間による伸び粘度を測定した。伸び粘度分析のための測定はTA社のStrain-Controlled Rheomether(ARES)を利用し、180℃、歪み速度(strain rate)1.0s-1条件で重合体を厚さ8mm、幅10.2mmの試験片で準備して測定し、最終ヘンキー歪み(final henky strain)を3.5まで設定した。
【0072】
重合体の歪み硬化特性を数値的に確認するために、下記数式2で定義されるヘンキー歪み(Hencky strain、ε)の常用対数(log(ε))関数の勾配値(c2)で定義される歪み硬化指数(strain hardening index、SHI)を計算し、その結果を下記表2に記載した。
【0073】
[数式2]
ηE=c1×εc2
【0074】
このとき、ηEは180℃で1.0s-1のヘンキー速度(Hencky rate、dε/dt)で測定された伸び粘度(elongation viscosity、Pa-s)であり、1から3のヘンキー歪み(ε)の範囲で測定し、c1およびc2はパラメータである。パラメータc1およびc2は、ヘンキー歪みの常用対数関数(log(ηE)=c2×log(ε)+log(c1))をプロットし、最小二乗法を適用してデータを線形フィッティングして確認した。
【0075】
【0076】
前記実験を通じて、実施例による方法で改質されたプロピレン系重合体は、キシレン可溶物含有量が全て約1.0重量%以下で比較例に比べてかなり低く、これにより、実施例による重合体改質により、結晶性に優れ、熱に強く、機械的強度に優れた重合体を製造できることを確認した。
【0077】
また、実施例による方法で改質されたプロピレン系重合体は、市販されたプロピレン系重合体(比較例2)と同等の程度に分子量分布が広く(broad)現れ、これにより、高分子が分離(separation)されておらず、均一(homogeneous)に分布しており、高分子の分布が高いことが分かった。
【0078】
また、実施例による方法で改質されたプロピレン系重合体は、市販されているプロピレン系重合体(比較例2)とは類似しており、比較例1のプロピレン系重合体に比べて優れた歪み硬化指数を示すことを確認した。これにより、実施例による重合体改質により、歪み硬化特性が優れ、加工時に安定した状態を効果的に維持できる重合体を製造できることを確認した。
【0079】
以上、一実施形態を実施例および実験例を通じて詳細に説明したが、一実施形態の範囲は特定の実施例に限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲によって解釈されるべきである。