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特開2024-157510付着抑制部材、作業具、爪部材及び、付着抑制方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157510
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】付着抑制部材、作業具、爪部材及び、付着抑制方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/40 20060101AFI20241030BHJP
   E02F 9/28 20060101ALI20241030BHJP
   E02F 3/815 20060101ALI20241030BHJP
   E21B 11/00 20060101ALI20241030BHJP
   E21B 11/04 20060101ALI20241030BHJP
   E02F 5/02 20060101ALI20241030BHJP
   E02F 7/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
E02F3/40 B
E02F3/40 D
E02F3/40 Z
E02F9/28 A
E02F3/815 C
E21B11/00 A
E21B11/04
E02F5/02 N
E02F7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199744
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2023071316
(32)【優先日】2023-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000208204
【氏名又は名称】大林道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000135999
【氏名又は名称】株式会社ヒロテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】堀居 令奈
(72)【発明者】
【氏名】小林 利充
(72)【発明者】
【氏名】木村 志照
(72)【発明者】
【氏名】福本 勝司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏明
(72)【発明者】
【氏名】光谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】和鹿 公則
(72)【発明者】
【氏名】川渕 達巳
【テーマコード(参考)】
2D012
2D015
2D129
【Fターム(参考)】
2D012HB02
2D015JA06
2D129AB16
2D129BB01
2D129BB03
2D129EB13
(57)【要約】
【課題】作業具に作業対象物が付着することを効果的に抑制する。
【解決手段】建設機械100の作業具20に作業対象物が付着することを抑制する付着抑制部材10であって、撥水性の樹脂材12を表面に有する板状に形成されており、表面が作業具20の作業対象物に接する面の一部をなすように、作業具20の所定部分に設置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の作業具に作業対象物が付着することを抑制する付着抑制部材であって、
撥水性の樹脂材を表面に有する板状に形成されており、前記表面が前記作業具の前記作業対象物に接する面の一部をなすように、前記作業具の所定部分に設置される
ことを特徴とする付着抑制部材。
【請求項2】
請求項1に記載の付着抑制部材であって、
前記樹脂材の前記表面とは反対側の面に接合され、前記所定部分に固定される板状の金属材をさらに備える
ことを特徴とする付着抑制部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の付着抑制部材を備える作業具であって、
前記建設機械は、バックホウであり、
前記作業具は、前記バックホウのアームの先端に回動可能に取り付けられるとともに、掘削した前記作業対象物を収容する収容部を形成する底板部と側板部とを備えるバケットであり、
前記付着抑制部材が、前記底板部及び、前記側板部の何れか一方又は両方に設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項4】
請求項3に記載の作業具であって、
前記バケットは、前記底板部に複数の桝目が設けられたスケルトンバケットであり、
前記付着抑制部材が、前記底板部の前記桝目が設けられていない部分及び、前記側板部の何れか一方又は両方に設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項5】
請求項3に記載の作業具であって、
前記付着抑制部材は、長方形板状に形成されており、
複数の前記付着抑制部材が、前記底板部に長手方向が前記バケットの回転軸方向と略平行となるように並列に設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項6】
請求項5に記載の作業具であって、
前記底板部は、前記収容部の開口側から延びる平坦面部と、該平坦面部の前記開口側とは反対側の端部から前記収容部の外側に向かって凸となるように湾曲する湾曲面部とを有しており、
複数の前記付着抑制部材が、前記平坦面部と、前記湾曲面部の少なくとも前記平坦面部側の部分とに設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項7】
請求項3に記載の作業具であって、
前記バケットは、前記底板部の端部に接合されて前記収容部の開口縁の一部をなすエッジ板部を備えており、
前記付着抑制部材が、前記底板部及び、前記側板部及び、前記エッジ板部の少なくとも一つ又は全部に設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項8】
請求項7に記載の作業具であって、
前記バケットは、前記エッジ板部の先端にアダプタを介して装着される爪部をさらに備えており、
前記付着抑制部材が、前記底板部及び、前記側板部及び、前記エッジ板部及び、前記爪部の少なくとも一つ又は全部に設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項9】
請求項8に記載の作業具であって、
前記バケットに設けられ、前記バケットに振動を伝達可能な振動発生装置をさらに備える
ことを特徴とする作業具。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の付着抑制部材を備える作業具であって、
前記建設機械は、ホイールローダであり、
前記作業具は、前記ホイールローダのブームの先端に回動可能に取り付けられるとともに、前記作業対象物を収容する収容部を形成する底板部と側板部とを備えるバケットであり、
前記付着抑制部材が、前記底板部及び、前記側板部の何れか一方又は両方に設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の付着抑制部材を備える作業具であって、
前記建設機械は、ブルドーザであり、
前記作業具は、前記ブルドーザの支持フレームの先端に取り付けられるとともに、前記作業対象物を押し出すブレードであり、
前記付着抑制部材が、前記ブレードの前面に設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の付着抑制部材を備える作業具であって、
前記建設機械は、杭工事のアースドリル工法で用いられるアースドリル掘削機であり、
前記作業具は、前記アースドリル掘削機が備えるケリーバの先端に取り付けられるとともに、前記作業対象物としての掘削土砂を取り込んで排土するドリリングバケットであり、
前記ドリリングバケットは、筒状のバケット本体と、前記バケット本体の下端開口を閉鎖可能な底蓋と、を備えており、
前記付着抑制部材が、前記バケット本体の内周面及び、前記底蓋の内面の何れか一方又は両方に設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の付着抑制部材を備える作業具であって、
前記建設機械は、杭工事のオールケーシング工法で用いられるオールケーシング掘削機であり、
前記作業具は、前記オールケーシング掘削機が備える揚重装置に吊持されるとともに、前記作業対象物としての掘削土砂を掴み取って排土するハンマグラブであり、
前記ハンマグラブは、ハンマグラブ本体と、前記ハンマグラブ本体の下端部に開閉自在に取り付けられ一対のシェルと、を備えており、
前記付着抑制部材が、一対の前記シェルの内周面に設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の付着抑制部材を備える作業具であって、
前記建設機械は、地中連続壁工法で用いられる水平多軸式掘削機であり、
前記作業具は、前記水平多軸式掘削機が備える掘削機本体の下端に並設されるとともに、回転駆動することにより地盤を掘削する一対のロータリーカッタであり、
前記ロータリーカッタは、円筒状の回転ドラムと、前記回転ドラムの外周面に径方向に突出して設けられるとともに、先端にカッタービットが固定された複数のブレードと、を備えており、
前記付着抑制部材が、複数の前記ブレードの表面に設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の付着抑制部材を備える作業具であって、
前記建設機械は、パワーブレンダー工法で用いられる地盤改良装置であり、
前記作業具は、前記地盤改良装置が備えるトレンチャー式撹拌混合機であり、
前記トレンチャー式撹拌混合機は、柱状のフレームと、前記フレームの上端及び下端にそれぞれ設けられたスプロケットと、前記スプロケットに巻き掛けられた無端チェーンと、前記無端チェーンの外周に設けられた複数の攪拌翼と、を備えており、
前記付着抑制部材が、前記フレームの表面及び、前記攪拌翼の表面の何れか一方又は両方に設置されている
ことを特徴とする作業具。
【請求項16】
請求項7に記載の作業具に装着される爪部材であって、
前記バケットの開口幅と略同じ長さで形成された平面部を含む爪本体部を備えており、該爪本体部は、前記エッジ板部の先端にアダプタを介して装着され、前記平面部に前記付着抑制部材が設置される
ことを特徴とする爪部材。
【請求項17】
請求項1又は2に記載の付着抑制部材を用いる付着抑制方法であって、
前記付着抑制部材の前記表面が前記作業具の前記作業対象物に接する面の一部をなすように、前記付着抑制部材を、前記作業具の前記所定部分に設置する
ことを特徴とする付着抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、付着抑制部材、作業具、爪部材及び、付着抑制方法に関し、特に、土砂や泥土等の作業対象物を処理する建設機械に好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
土工事、地盤改良工事、杭工事等においては、バックホウやホイールローダ、アースオーガやアースドリル、ブルドーザ、水平多軸式掘削機、パワーブレンダー等の建設機械を用いた掘削作業が行われる。例えば、バックホウの場合、掘削作業中に、バケットの内面に水を含んだ粘土を含む土質材が付着して堆積すると、バケットの実質的な容量が減少することで、作業効率を低下させる要因となる。
【0003】
このような場合、オペレータはバケットを揺動させたり、或は、バケットに衝撃を与えたりすることにより、バケット内から付着残土を振り落とすことが行われる。しかしながら、バケットの揺動や衝撃の付与は、大きな騒音や振動を発生させるといった課題があり、周辺環境に配慮した施工が求められている。また、バケットの揺動や衝撃の蓄積により、バケット接続部のコネクタやバケット先端部が疲労しやすくなり、一定期間ごとに交換する手間が発生していた。
【0004】
バケット内の付着残土による作業効率の低下は、近年実用化が進められている建設機械の自動運転システムにおいても発生する。自動運転中にシステム側がバケット内の付着残土を逐次把握することは難しく、さらには、自動制御によってバケットを意図的に揺動させることも困難である。このため、自動運転を一定時間以上継続して行った場合には、自動運転を中断し、バケット内を清掃することになる。しかしながら、バケットの清掃は、作業員が建設機械に近づいて行わなければならず、作業員が自動運転中の他の建設機械に接触する等、安全性を十分に確保できない課題がある。
【0005】
バケット内の土付着防止を図る技術が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1記載の技術では、撥水性の塗膜又はライニング体をバケットの内面全体に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-164595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、バケットには、湾曲部や溶接によるビード部等がある。このため、特許文献1記載の技術のように、バケットの内面全体にライニング体や塗膜を密着させるように取り付け加工することは実質的に困難である。また、バケットの内面全体にライニング体や塗膜を設ける構成では、掘削時の衝撃等によってライニング体や塗膜が破損した場合に、破損した箇所のみを部分的に補修することは難しい。このため、特許文献1記載の技術では、補修作業を行う際に、バケットを建設機械から取り外す必要があり、掘削を長期に亘って中断しなければならない課題もある。すなわち、建設機械においては、作業具に作業対象物が付着することを効果的に抑制しつつ、取り付け加工性及び補修性を兼ね備えた付着抑制部材の提供が望まれる。
【0008】
本開示の技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業具に作業対象物が付着することを効果的に抑制しつつ、取り付け加工性及び補修性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の付着抑制部材(10)は、
建設機械(100,200,300,400,500,600,700)の作業具(20,20’,30,40,50,60,70,80)に作業対象物が付着することを抑制する付着抑制部材(10)であって、
撥水性の樹脂材(12)を表面に有する板状に形成されており、前記表面が前記作業具(20,20’,30,40,50,60,70,80)の前記作業対象物に接する面の一部をなすように、前記作業具(20,20’,30,40,50,60,70,80)の所定部分に設置される
ことを特徴とする。
【0010】
本開示の他の態様の付着抑制部材(10)は、
前記樹脂材(12)の前記表面とは反対側の面に接合され、前記所定部分に固定される板状の金属材(11)をさらに備える
ことを特徴とする。
【0011】
本開示の作業具(20,20’)は、付着抑制部材(10)を備える作業具(20,20’)であって、
前記建設機械は、バックホウ(100)であり、
前記作業具(20,20’)は、前記バックホウ(100)のアーム(142)の先端に回動可能に取り付けられるとともに、掘削した前記作業対象物を収容する収容部(28)を形成する底板部(21)と側板部(22,23)とを備えるバケット(20,20’)であり、
前記付着抑制部材(10)が、前記底板部(21)及び前記側板部(22,23)の何れか一方又は両方に設置されている
ことを特徴とする。
【0012】
本開示の他の態様の作業具(20’)において、
前記バケット(20’)は、前記底板部(21)に複数の桝目(27)が設けられたスケルトンバケット(20’)であり、
前記付着抑制部材(10)が、前記底板部(21)の前記桝目(27)が設けられていない部分及び、前記側板部(22,23)の何れか一方又は両方に設置されている
ことを特徴とする。
【0013】
本開示の他の態様の作業具(20)において、
前記付着抑制部材(10)は、長方形板状に形成されており、
複数の前記付着抑制部材(10)が、前記底板部(21)に長手方向が前記バケット(20)の回転軸(R)方向と略平行となるように並列に設置されている
ことを特徴とする。
【0014】
本開示の他の態様の作業具(20)において、
前記底板部(21)は、前記収容部(28)の開口側から延びる平坦面部(21A)と、該平坦面部(21A)の前記開口側とは反対側の端部から前記収容部(28)の外側に向かって凸となるように湾曲する湾曲面部(21B)とを有しており、
複数の前記付着抑制部材(10)が、前記平坦面部(21A)と、前記湾曲面部(21B)の少なくとも前記平坦面部(21A)側の部分とに設置されている
ことを特徴とする。
【0015】
本開示の他の態様の作業具(20)において、
前記バケット(20)は、前記底板部(21)の端部に接合されて前記収容部(28)の開口縁の一部をなすエッジ板部(24)を備えており、
前記付着抑制部材(10)が、前記底板部(21)及び、前記側板部(22,23)及び、前記エッジ板部(24)の少なくとも一つ又は全部に設置されている
ことを特徴とする。
【0016】
本開示の他の態様の作業具(20)において、
前記バケット(20)は、前記エッジ板部(24)の先端にアダプタ(4A~4E)を介して装着される爪部(5A~5E)をさらに備えており、
前記付着抑制部材(10)が、前記底板部(21)及び、前記側板部(22,23)及び、前記エッジ板部(24)及び、前記爪部(5A~5E)の少なくとも一つ又は全部に設置されている
ことを特徴とする。
【0017】
本開示の他の態様の作業具(20)は、
前記バケット(20)に設けられ、前記バケット(20)に振動を伝達可能な振動発生装置(8A)をさらに備える
ことを特徴とする。
【0018】
本開示の他の態様の作業具(30)は、付着抑制部材(10)を備える作業具(30)であって、
前記建設機械は、ホイールローダ(200)であり、
前記作業具は、前記ホイールローダ(200)のブーム(231)の先端に回動可能に取り付けられるとともに、前記作業対象物を収容する収容部(38)を形成する底板部(31)と側板部(32,33)とを備えるバケット(30)であり、
前記付着抑制部材(10)が、前記底板部(31)及び、前記側板部(32,33)の何れか一方又は両方に設置されている
ことを特徴とする。
【0019】
本開示の他の態様の作業具(40)は、付着抑制部材(10)を備える作業具(40)であって、
前記建設機械は、ブルドーザ(300)であり、
前記作業具は、前記ブルドーザ(300)の支持フレーム(331,332)の先端に取り付けられるとともに、前記作業対象物を押し出すブレード(40)であり、
前記付着抑制部材(10)が、前記ブレード(40)の前面に設置されている
ことを特徴とする。
【0020】
本開示の他の態様の作業具(50)は、付着抑制部材(10)を備える作業具(50)であって、
前記建設機械は、杭工事のアースドリル工法で用いられるアースドリル掘削機(400)であり、
前記作業具は、前記アースドリル掘削機(400)が備えるケリーバ(450)の先端に取り付けられるとともに、前記作業対象物としての掘削土砂を取り込んで排土するドリリングバケット(50)であり、
前記ドリリングバケット(50)は、筒状のバケット本体(51)と、前記バケット本体の下端開口を閉鎖可能な底蓋(52)と、を備えており、
前記付着抑制部材(10)が、前記バケット本体(51)の内周面及び、前記底蓋(52)の内面の何れか一方又は両方に設置されている
ことを特徴とする。
【0021】
本開示の他の態様の作業具(60)は、付着抑制部材(10)を備える作業具(60)であって、
前記建設機械は、杭工事のオールケーシング工法で用いられるオールケーシング掘削機(500)であり、
前記作業具は、前記オールケーシング掘削機(500)が備える揚重装置(530)に吊持されるとともに、前記作業対象物としての掘削土砂を掴み取って排土するハンマグラブ(60)であり、
前記ハンマグラブ(60)は、ハンマグラブ本体(61)と、前記ハンマグラブ本体(61)の下端部に開閉自在に取り付けられ一対のシェル(63,64)と、を備えており、
前記付着抑制部材(10)が、一対の前記シェル(63,64)の内周面に設置されている
ことを特徴とする。
【0022】
本開示の他の態様の作業具(70)は、付着抑制部材(10)を備える作業具(70)であって、
前記建設機械は、地中連続壁工法で用いられる水平多軸式掘削機(600)であり、
前記作業具は、前記水平多軸式掘削機(600)が備える掘削機本体(620,621)の下端に並設されるとともに、回転駆動することにより地盤を掘削する一対のロータリーカッタ(70,70)であり、
前記ロータリーカッタ(70,70)は、円筒状の回転ドラム(71)と、前記回転ドラム(71)の外周面に径方向に突出して設けられるとともに、先端にカッタービット(74)が固定された複数のブレード(72)と、を備えており、
前記付着抑制部材(10)が、複数の前記ブレード(72)の表面に設置されている
ことを特徴とする。
【0023】
本開示の他の態様の作業具(80)は、付着抑制部材(10)を備える作業具(80)であって、
前記建設機械は、パワーブレンダー工法で用いられる地盤改良装置(700)であり、
前記作業具は、前記地盤改良装置(700)が備えるトレンチャー式撹拌混合機(80)であり、
前記トレンチャー式撹拌混合機(81)は、柱状のフレーム(81)と、前記フレーム(81)の上端及び下端にそれぞれ設けられたスプロケット(82,83)と、前記スプロケット(82,83)に巻き掛けられた無端チェーン(84)と、前記無端チェーン(84)の外周に設けられた複数の攪拌翼(88)と、を備えており、
前記付着抑制部材(10)が、前記フレーム(81)の表面及び、前記攪拌翼(88)の表面の何れか一方又は両方に設置されている
ことを特徴とする。
【0024】
本開示の爪部材(5F)は、作業具(20)に装着される爪部材(5F)であって、
前記バケット(20)の開口幅と略同じ長さで形成された平面部(5H)を含む爪本体部(5G)を備えており、該爪本体部(5G)は、前記エッジ板部(24)の先端にアダプタ(4A~4E)を介して装着され、前記平面部(5H)に前記付着抑制部材(10)が設置される
ことを特徴とする。
【0025】
本開示の付着抑制方法は、付着抑制部材(10)を用いる付着抑制方法であって、
前記付着抑制部材(10)の前記表面が前記作業具(20,20’,30,40,50,60,70,80)の前記作業対象物に接する面の一部をなすように、前記付着抑制部材(10)を、前記作業具(20,20’,30,40,50,60,70,80)の前記所定部分に設置する
ことを特徴とする。
【0026】
上記説明においては、本開示の理解を助けるために、実施形態に対応する構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0027】
本開示の技術によれば、作業具の作業対象物が付着することを効果的に抑制しつつ、取り付け加工性及び補修性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第一実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。
図2】第一実施形態に係るバケットを示す模式的な斜視図である。
図3】バケットの内面に付着した土を模式的に示す斜視図である。
図4】(A)は、本実施形態に係る付着抑制部材を示す模式的な斜視図である。(B)は、(A)のA-A断面図である。
図5】付着抑制部材をバケットの内面に設置する一例を説明する模式的な斜視図である。
図6】実証試験1の付着抑制部材の貼り付けパターンを説明する模式図である。
図7】実証試験1の結果を説明する模式図である。
図8】実証試験2の付着抑制部材の貼り付けパターンを説明する模式図である。
図9】実証試験2の結果を説明する模式図である。
図10】実証試験3の付着抑制部材の貼り付けパターンを説明する模式図である。
図11】実証試験3の結果を説明する模式図である。
図12】騒音試験の結果を説明する模式図である。
図13】第一実施形態に係る変形例1のバケットを示す模式的な斜視図である。
図14】第一実施形態に係る変形例2のバケットを示す模式的な斜視図である。
図15】第一実施形態に係る変形例3のバケットを示す模式的な斜視図である。
図16】第一実施形態に係る変形例4のバケットを示す模式的な斜視図である。
図17】第二実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。
図18】第二実施形態に係るバケットを示す模式的な斜視図である。
図19】第三実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。
図20】第三実施形態に係るブレードを示す模式的な斜視図である。
図21】第四実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。
図22】第四実施形態に係るドリリングバケットを示す模式的な側面図である。
図23】第四実施形態に係るドリリングバケットを示す模式的な縦断面図である。
図24】第五実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。
図25】第五実施形態に係るハンマグラブが閉じた状態を示す模式的な斜視図である。
図26】第五実施形態に係るハンマグラブが開いた状態を示す模式的な斜視図である。
図27】第六実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。
図28】第六実施形態に係るロータリーカッタを回転軸方向から視た模式図である。
図29】第六実施形態に係るロータリーカッタを径方向から視た模式図である。
図30】第七実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。
図31】第七実施形態に係るトレンチャー式撹拌混合機を示す模式的な斜視図である。
図32】第七実施形態に係る変形例の模式的な平面図である。
図33】第七実施形態に係る変形例の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係る付着抑制部材、作業具、爪部材及び、付着抑制方法について説明する。
【0030】
[第一実施形態の建設機械]
図1は、第一実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。建設機械は、例えば、作業具としてのバケット20を備えるバックホウ100(油圧ショベル)である。なお、建設機械は、バックホウ100に限定されず、バケットを備える建設機械であれば、例えばホイールローダ等であってもよい。また、建設機械は、作業具としてブレードを備えるドーザやグレーダ等であってもよい。以下では、建設機械はバックホウ100を一例に説明する。
【0031】
バックホウ100は、下部走行体110と、旋回装置120と、上部旋回体130と、作業機140とを備える。下部走行体110は、クローラ112及び、不図示の駆動装置を有する。バックホウ100は、クローラ112が駆動装置から伝達される動力によって駆動することにより走行する。
【0032】
上部旋回体130は、下部走行体110に旋回装置120を介して支持されている。上部旋回体130は、不図示の油圧モータからの動力によって旋回装置120が作動することにより旋回駆動する。上部旋回体130には、キャビン131が設けられている。キャビン131には、バックホウ100を操縦するオペレータが搭乗する。なお、バックホウ100は、遠隔操作により作動してもよく、或は、自動運転制御により作動してもよい。この場合、バックホウ100はキャビン131を備えなくてもよい。
【0033】
作業機140は、ブーム141と、アーム142と、バケットリンク143と、作業具としてのバケット20と、複数のシリンダ150,151,152とを備える。ブーム141の基端側は、上部旋回体130に回動可能に支持されている。アーム142の基端側は、ブーム141の先端側に回動可能に支持されている。バケット20は、アーム142の先端側に回動可能に支持されている。バケットリンク143は、アーム142とバケット20とを連結する。
【0034】
ブームシリンダ150は、上部旋回体130及びブーム141に接続されている。ブームシリンダ150が伸縮すると、ブーム141は上部旋回体130に対して回動する。アームシリンダ151は、ブーム141及びアーム142に接続されている。アームシリンダ151が伸縮すると、アーム142はブーム141に対して回動する。
【0035】
バケットシリンダ152は、アーム142及びバケットリンク143に接続されている。バケットシリンダ152が伸縮すると、バケット20はアーム142に対して回動する。なお、バケット20とアーム142との間には、バケット20をアーム142の軸心周りに回転させるチルトローテータ等の予備アタッチメントが介装されてもよい。
【0036】
[バケット(作業具)]
図2は、第一実施形態に係るバケット20を示す模式的な斜視図である。以下では、バケット20の回転軸R方向を「左右方向」、「幅方向」と称する場合もある。図2において、バケット20は、いわゆる標準バケットで示されているが、幅狭バケット、幅広バケットであってもよい。また、バケット20は、法面バケット、マルチパーパスバケット、マテリアルハンドリングバケット、グラブバケット等の他の種類のバケットであってよい。
【0037】
バケット20は、例えば鋼材等で形成されており、バケット本体部20Aと、複数のアダプタ4A~4Eと、複数の爪部5A~5Eと、一対のブラケット6L,6Rとを備えている。
【0038】
バケット本体部20Aは、底板部21と、左側板部22と、右側板部23と、エッジ板部24と、ブラケット固定板部25とを有する。底板部21及び側板部22,23は、掘削した土砂や泥土等の作業対象物を収容するための収容部28を形成する。
【0039】
底板部21は、収容部28の開口側から略平面状に延びる平坦面部21Aと、平坦面部21Aの端部から収容部28の外側に向かって凸となるように湾曲する湾曲面部21Bとを有する。平坦面部21A及び湾曲面部21Bは、一枚の板材でもよく、或は、別体の板材を溶接等によって接合することにより形成されてもよい。平坦面部21Aの湾曲面部21Bとは反対側の端部には、エッジ板部24が溶接によって固定されている。湾曲面部21Bの平坦面部21Aとは反対側の端部には、ブラケット固定板部25が溶接によって固定されている。左側板部22は、底板部21、エッジ板部24及び、ブラケット固定板部25の左端部に溶接によって固定されている。右側板部23は、底板部21、エッジ板部24及び、ブラケット固定板部25の右端部に溶接によって固定されている。
【0040】
エッジ板部24には、複数のアダプタ4A~4Eが左右方向に所定間隔で固定される。複数のアダプタ4A~4Eには、複数の爪部5A~5Eが着脱可能に取り付けられる。図2において、爪部5A~5Eは、平爪で示されているが、先端に向かうに従い細くなる掘削爪であってもよい。
【0041】
一対のブラケット6L,6Rは、ブラケット固定板部25の収容部28とは反対側の外面に設けられており、左右方向に所定距離を隔てて対向する。ブラケット6L,6Rには、一対の挿通孔6A,6Bがそれぞれ設けられている。開口側の挿通孔6Aには、バケット本体部20Aをアーム142(図1参照)に連結するためのピン(図示せず)が挿入される。背面側の挿通孔6Bには、バケット本体部20Aをバケットリンク143(図1参照)に連結するためのピン(図示せず)が挿入される。バケットシリンダ152(図1参照)を伸縮させると、バケット20が挿通孔6Aの軸心周りに回動するように構成されている。すなわち、挿通孔6Aの軸心はバケット20の回転軸Rと一致する。
【0042】
ここで、バケット20が、水を含んだ粘土を含む土砂等の土質材を掘削する場合を考える。水を含んだ土質材は、鋼材からなるバケット20の内面に付着しやすい性質がある。このような水を含んだ土質材は、図3中に灰色で示すように、バケット本体部20Aの(1)エッジ板部24、(2)底板部21の平坦面部21A及び、湾曲面部21Bの平坦面部21A側の部分、(3)側板部22,23のエッジ板部24側及び平坦面部21A側の部分に付着しやすい傾向がある。また、爪部5A~5Eが平爪タイプの場合、土は各爪部5A~5Eの間にも付着しやすい。
【0043】
バケット20の内面に土が付着して堆積すると、収容部28の実質的な容積が減少することになり、作業効率を低下させる要因となる。バケット20内に付着残土が堆積した場合には、バケット20を揺動させたり、或いは、バケット20に衝撃を与えたりすることで、付着残土を振り落とすことはできるが、大きな騒音や振動を発生させることになる。また、バックホウ100を自動運転により作動させる場合は、システム側がバケット20を意図して揺動させることは難しい。このため、自動運転を一定時間以上継続して実行した場合は、自動運転を一時的に中断し、バケット20を清掃することになるが、作業員がバケット20に近づかなければならず、安全性を確保できない課題がある。
【0044】
そこで、第一実施形態では、バケット20の内面に、図4に示す付着抑制部材10を設置することにより、バケット20の内面に土が付着することを抑制すようにした。以下、付着抑制部材10の詳細について説明する。
【0045】
[付着抑制部材]
図4(A)は、本実施形態に係る付着抑制部材10を示す模式的な斜視図である。図4(B)は、(A)のA-A断面図である。
【0046】
図4(A)に示すように、付着抑制部材10は、全体として矩形短冊状(長方形板状)をなしており、下層の金属材11と、上層の樹脂材12とを接合した二層構造を有する。以下では、付着抑制部材10の長辺が延びる方向を長手方向X、短辺が延びる方向を短手方向Yと称する。
【0047】
金属材11は、例えば、板状の鋼材であって、本実施形態では、耐食性に優れたステンレス鋼で形成される。なお、金属材11は、炭素鋼、工具鋼等を用いて形成してもよい。金属材11の短手方向Yの長さW1(図4(B)参照)は、特に限定されないが、本実施形態では約90~110mm、好ましく約105mmである。金属材11の長手方向Xの長さL1(図4(A)参照)は、例えば、500~2000mm等、バケット20の幅に応じた適宜の長さとすればよい。金属材11の厚みT1(図4(B)参照)は、作業員が付着抑制部材10の短手方向Yの両端を把持し、付着抑制部材10を人力によって湾曲させて塑性変形させることができる厚みであることが好ましい。本実施形態では、金属材11の厚みT1は、約0.1~1mm、好ましくは約0.5mmである。
【0048】
樹脂材12は、例えば、板状のフッ素樹脂材であって、本実施形態では、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)で形成される。PTFEは、表面自由エネルギ(表面張力)が非常に小さく、撥水性や撥油性に優れており、土の付着を効果的に抑制することができる。なお、樹脂材12は、PTFEに限定されず、例えば、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド/フッ化ビニリデン/ポリフッ化ビニリデン)等を用いることができる。
【0049】
樹脂材12の短手方向Yの長さW2(図4(B)参照)は、特に限定されないが、本実施形態では約90~105mm、約好ましく100mmである。樹脂材12の長手方向Xの長さL2(図4(A)参照)は、金属材11の長さL1と同様、バケット20の幅に応じた適宜の長さとすればよい。樹脂材12の厚みT2(図4(B)参照)は、特に限定されないが、本実施形態では約0.1~1mm、好ましくは約0.5mmである。
【0050】
ここで、樹脂材12に用いられるフッ素樹脂は難接合材であり、樹脂材12と金属材11とを単純に接合することは難しい。樹脂材12と金属材11との接合は、例えば、特開2022-049070号公報に開示されている接合方法を用いることができる。以下、接合方法の概略を簡単に説明する。
工程(1):金属材11の樹脂材12に接合される側の面(接合面)に、酸化性雰囲気下においてレーザ光を照射し、金属材11の接合面に金属酸化物粒子が連続的してなる金属酸化物粒子クラスタを形成する。
工程(2):金属酸化物粒子クラスタが形成された金属材11を、樹脂材12と当接させ、被接合界面を形成する。
工程(3):レーザ光を照射して被接合界面を昇温し、ローラを用いて金属材11及び樹脂材12を密着させることにより、被接合界面に圧力を印加する。
以上の工程(1)~(3)により製造される付着抑制部材10は、樹脂材12と金属材11との接合強度が高く、掘削時の衝撃等に対しても互いに剥がれることなく耐えることができる。
【0051】
なお、金属材11と樹脂材12との接合方法は、上述の工程(1)~(3)に限定されず、周知の他の方法を用いることも可能である。以下の説明では、金属材11の被接合界面とは反対側の面を、付着抑制部材10の「裏面」、樹脂材12の被接合界面とは反対側の面を、付着抑制部材10の「表面」と称する。
【0052】
[第一実施形態の付着抑制部材の設置]
図5は、第一実施形態の付着抑制部材10をバケット20の内面に設置する一例を説明する模式的な斜視図である。
【0053】
付着抑制部材10は、裏面(好ましくは、裏面全体)に貼り付けた両面テープによってバケット20の内面に貼り付けてもよく、或は、裏面に塗布した接着剤によってバケット20の内面に接着してもよい。両面テープを用いれば、付着抑制部材10を新たなものに貼り替える際に接着跡が残りにくいため、交換作業を容易に行うことが可能になる。両面テープの種類は特に制限されないが、粘着力が強い屋外用の両面テープを用いることが好ましい。
【0054】
なお、付着抑制部材10の設置は、両面テープや接着材を用いる手法に限定されず、金属材11の樹脂材12よりも突出する縁部E(図4(B)参照)をバケット20の内面にスポット溶接で固定してもよく、或は、付着抑制部材10の所定箇所をリベットやボルトを用いて固定することも可能である。以下では、付着抑制部材10は、両面テープを用いて貼り付けるものとして説明する。
【0055】
図5に示すように、複数枚の付着抑制部材10は、バケット20の内面のうち、水を含んだ粘土を含む土砂や泥土等の作業対象物が付着しやすい部分(図3中の灰色参照)に設置される。具体的には、付着抑制部材10は、(1)エッジ板部24、(2)底板部21の平坦面部21A及び、湾曲面部21Bの平坦面部21A側の部分、(3)側板部22,23の平坦面部21A側の部分に貼り付けられる。
【0056】
エッジ板部24及び、底板部21の付着抑制部材10は、長手方向がバケット20の回転軸R方向と略平行となるように貼り付けられる。エッジ板部24と底板部21との境界部分には、溶接によるビードBDがあり、付着抑制部材10がビードBDに干渉すると、掘削作業時の衝撃等によって付着抑制部材10が剥がれやすくなる。このため、エッジ板部24と底板部21との境界付近において、付着抑制部材10はビードBDを外すようにして貼り付けられる。
【0057】
湾曲面部21Bの付着抑制部材10は、予め付着抑制部材10を湾曲面部21Bに沿うように湾曲させて塑性変形させた後に貼り付けられる。付着抑制部材10を湾曲させて貼り付ければ、付着抑制部材10の湾曲面部21Bに対する接着強度を向上することができる。図示例において、付着抑制部材10は、エッジ板部24に1枚、底板部21に計4枚が貼り付けられているが、付着抑制部材10の枚数はこれには限定されず、エッジ板部24及び底板部21の具体的な寸法に応じた適宜の枚数を貼り付ければよい。
【0058】
側板部22,23の付着抑制部材10は、長手方向が平坦面部21Aの面方向と略平行となるように貼り付けられる。側板部22,23において、付着抑制部材10は、少なくとも平坦面部21A側の部分に貼り付けられていればよい。図示例において、付着抑制部材10は、左側板部22及び右側板部23に、それぞれ3枚貼り付けられているが、付着抑制部材10の枚数はこれには限定されず、側板部22,23の具体的な寸法に応じた適宜の枚数を貼り付ければよい。
【0059】
複数枚の付着抑制部材10は、敷き詰めて貼り付けてもよいが、隣接する付着抑制部材10の端部同士が接触していると、掘削作業時の衝撃や振動等によって付着抑制部材10の端部同士が互いに干渉し、剥がれやすくなる可能性がある。このため、複数枚の付着抑制部材10は、所定のクリアランスCを隔てて貼り付けることが好ましい。クリアランスCの具体的な数値は特に限定されないが、クリアランスCを狭くするほど、土の付着を抑制する効果が得られる。本実施形態では、クリアランスCは、20~90mm、好ましくは、30mmで設定される。
【0060】
図5に示す例において、バケット20に装着されている爪部5A~5Eは、いわゆる平爪タイプである。爪部5A~5Eが平爪タイプの場合、各爪部5A~5Eの間にも土が付着しやすい。このため、爪部5A~5Eにも付着抑制部材10を貼り付けることが好ましい。
【0061】
以上のように、バケット20の内面に付着抑制部材10を貼り付けると、付着抑制部材10の表面をなす樹脂材12は表面自由エネルギが小さいため、バケット20内に収容された掘削土は付着抑制部材10の表面に付着し難くなる。すなわち、バケット20内に収容した掘削土を、バケット20内に堆積させることなく効果的に排土することが可能になる。これにより、バケット20の実質的な容量が減少することを効果的に抑制でき、作業効率の低下を確実に防止することが可能になる。また、バケット20内から付着残土を振り落とすための揺動や衝撃の付与がほぼ不要、或は、回数を限りなく少なくすることができ、大きな騒音や振動の発生を効果的に防止することも可能になる。また、バケット20の揺動や衝撃に伴う疲労の蓄積を効果的に低減することができ、定期交換までの寿命を延ばすことも可能になる。また、作業員が清掃のためにバケット20に近づく必要もなくなることから、安全性の向上を図ることも可能になる。
【0062】
また、付着抑制部材10は、金属材11及び樹脂材12の厚みが薄く容易に変形できるため、底板部21の湾曲面部21Bに密接させて貼り付けることができる。また、付着抑制部材10は、短冊状をなしており、エッジ板部24と底板部21との境界のビードBD等を外して貼り付けることができる。すなわち、付着抑制部材10のバケット20に対する接着性を確実に向上しつつ、取り付け加工性も効果的に向上することが可能になる。
【0063】
また、複数枚の付着抑制部材10は、バケット20の内面にそれぞれ独立して貼り付けられる。このため、一部の付着抑制部材10が掘削時の衝撃等によって破損或は、長期の使用により劣化した場合には、破損又は劣化した付着抑制部材10のみを交換すればよい。すなわち、バケット20をバックホウ100に装着したまま交換作業を行うことができ、補修性を確実に向上することができる。また、交換作業を短時間で行えるため、掘削作業や工期に与える影響も最小限に抑えることが可能になる。
【0064】
[実証試験1]
バックホウのバケットに付着抑制部材10を貼り付け、土付着抑制の効果を確認する実証試験を行った。図6は、実証試験1の付着抑制部材10の貼り付けパターンを説明する模式図である。図中において、付着抑制部材10はハッチングで示してある。付着抑制部材10は、両面テープを用いてバケット内面に貼り付けた。
【0065】
パターン(A1)は、エッジ板部に1枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように貼り付けた。また、底板部の平坦面部及び湾曲面部に、計5枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように並列に貼り付けた。各付着抑制部材10のクリアランスは約30mmに設定した。各付着抑制部材10の表面積の総和をバケット内面の表面積で除した値(以下、PTFE面積比率)は約36%である。
【0066】
パターン(B1)は、底板部に、計4枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略直交するように並列に貼り付けた。また、左側板部及び右側板部のそれぞれに、計2枚の付着抑制部材10を長手方向が底板部の平坦面部の面方向と略平行となるように並列に貼り付けた。各付着抑制部材10のクリアランスは約130mmに設定した。PTFE面積比率は約25%である。
【0067】
パターン(C1)は、底板部の左側板部付近及び右側板部付近のそれぞれに、1枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略直交するように貼り付けた。また、左側板部の底板部付近及び、右側板部の底板部付近のそれぞれに、1枚の付着抑制部材10を長手方向が底板部の平坦面部の面方向と略平行となるように貼り付けた。PTFE面積比率は約12%である。
【0068】
パターン(D1)は、バケットに付着抑制部材10を貼り付けていない比較例である。PTFE面積比率は0%である。
【0069】
実証試験1では、山盛りにした湿土をバケット内にすくい取り、他の場所へ排土する一連の動作を計10回行った後、バケット内の残土をそぎ落とし、重量計で残土重量を計測した。図7に残土重量の計測結果を示す。パターン(A1)の残土重量は、19.3kgであった。パターン(B1)の残土重量は、46.7kgであった。パターン(C1)の残土重量は、96.6kgであった。パターン(D1)の残土重量は、147.6kgであった。
【0070】
以上の計測結果から、付着抑制部材10を底板部と側板部との境界付近のみに貼り付けるパターン(C1)であっても、比較例のパターン(D1)よりも残土重量を低減できることから、一定の土付着抑制効果を得られることが確認された。また、付着抑制部材10の長手方向がバケットの回転軸方向と直交する方向であっても、付着抑制部材10を底板部及び側板部の両方に貼り付けるパターン(B1)であれば、比較例のパターン(D1)よりも残土重量を大幅に低減できることが確認された。また、付着抑制部材10の長手方向をバケットの回転軸方向と略平行にし、且つ、クリアランスが約30mmとなるように貼り付けるパターン(A1)は、比較例のパターン(D1)に対して残土重量を大幅に低減でき、さらに、パターン(B1)よりも残土重量を低減できることが確認された。
【0071】
すなわち、付着抑制部材10は、長手方向をバケットの回転軸方向と略平行にし、且つ、クリアランスを小さくして貼り付けると、最も高い土付着抑制効果が得られることを確認できた。また、付着抑制部材10は、長手方向をバケットの回転軸方向と略直交させても、底板部及び側板部の両方に貼り付ければ、高い土付着抑制効果が得られることを確認できた。また、付着抑制部材10の枚数が少ない場合であっても、底板部と側板部との境界付近に貼り付ければ、一定の土付着抑制効果が得られることを確認できた。
【0072】
[実証試験2]
実証試験2では、付着抑制部材10をバケットの底板部の奥(湾曲面部)側まで貼り付ける場合と、底板部の奥側に貼らずに爪部に貼り付ける場合とで、土付着抑制効果に差が出るかを確認した。図8は、実証試験3の付着抑制部材10の貼り付けパターンを説明する模式図である。付着抑制部材10は、実証試験1と同様、両面テープを用いてバケット内面に貼り付けた。
【0073】
パターン(A3)は、実証試験1のパターン(A1)と同じである。すなわち、エッジ板部に1枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように貼り付けた。また、底板部の平坦面部及び湾曲面部に、計5枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように並列に貼り付けた。各付着抑制部材10のクリアランスは約30mmに設定した。
【0074】
パターン(B3)は、エッジ板部に1枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように貼り付けた。また、底板部の主に平坦面部に、計4枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように並列に貼り付けた。各付着抑制部材10のクリアランスは約30mmに設定した。また、爪部に、1枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように貼り付けた。
【0075】
実証試験2においても、実証実験1と同様、山盛りにした湿土をバケット内にすくい取り、他の場所へ排土する一連の動作を計10回行った後、バケット内の残土をそぎ落とし、重量計で残土重量を計測した。図9に残土重量の計測結果を示す。パターン(A3)の残土重量は、19.3kgであった。パターン(B3)の残土重量は、30.0kgであった。
【0076】
以上の計測結果から、付着抑制部材10を爪部に貼り付けなくても、底板部の平坦面部及び湾曲面部(底板部の奥側)に重点的に貼り付ける方が高い土付着抑制効果を得られることが確認された(パターン(A3):底板部奥側>パターン(B3):爪部)。
【0077】
[実証試験3]
実証試験3では、各付着抑制部材10のクリアランスの設定に応じて土付着抑制効果に差が出るかを確認した。図10は、実証試験4の付着抑制部材10の貼り付けパターンを説明する模式図である。付着抑制部材10は、実証試験1と同様、両面テープを用いてバケット内面に貼り付けた。
【0078】
パターン(A4)は、エッジ板部に1枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように貼り付けた。また、底板部の平坦面部及び湾曲面部に、計5枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように並列に貼り付けた。また、左側板部及び右側板部のそれぞれに、計3枚の付着抑制部材10を長手方向が底板部の平坦面部の面方向と略平行となるように並列に貼り付けた。各付着抑制部材10のクリアランスは約30mmに設定した。
【0079】
パターン(B4)は、エッジ板部に1枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように貼り付けた。また、底板部の平坦面部及び湾曲面部に、計4枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように並列に貼り付けた。また、左側板部及び右側板部のそれぞれに、計3枚の付着抑制部材10を長手方向が底板部の平坦面部の面方向と略平行となるように並列に貼り付けた。各付着抑制部材10のクリアランスは約90mmに設定した。また、爪部に、1枚の付着抑制部材10を長手方向がバケットの回転軸方向と略平行となるように貼り付けた。
【0080】
実証試験3においても、実証実験1と同様、山盛りにした湿土をバケット内にすくい取り、他の場所へ排土する一連の動作を計10回行った後、バケット内の残土をそぎ落とし、重量計で残土重量を計測した。図11に残土重量の計測結果を示す。パターン(A4)の残土重量は、15.6kgであった。パターン(B4)の残土重量は、24.6kgであった。
【0081】
以上の計測結果から、付着抑制部材10を爪部に貼り付けなくても、クリアランスを小さく設定する方が高い土付着抑制効果を得られることが確認された(パターン(A4):底板部重視>パターン(B4):爪部)。
【0082】
[騒音試験]
バケットの内面に付着抑制部材10が貼り付けられたバックホウを用いて騒音試験を行った。騒音試験では、「動作時騒音」及び、「揺動時騒音」を計測した。計測は、バックホウから約10m、約20m、約30m離れた計3地点にて行った。ここで、動作時騒音とは、山盛りにした湿土をバケットにすくい取って他の場所へ排土する一連の動作を計10回行った際の騒音である。また、揺動時騒音とは、バケットを揺動させて付着残土を振り落とした際の騒音である。図12は、騒音の計測結果である。
【0083】
図12に示されるように、揺動時騒音は、10m地点で83dB、20m地点で77dB、30m地点で74dBであった。揺動時騒音は、10m地点で80dBを超えており、20m地点及び30m地点でも70dBを超えており、バケットを揺動させると非常に大きな騒音が発生することが確認された。
【0084】
動作時騒音の最大値は、10m地点で70dB、20m地点で65dB、30m地点で63dBであった。動作時騒音の最小値は、10m地点で64dB、20m地点で59dB、30m地点で56dBであった。動作時騒音の平均値は、10m地点で67dB、20m地点で62dB、30m地点で60dBであった。動作時騒音は、最大値であっても揺動時騒音に対して11~13dB(平均12dB)ほど小さく、また、10m地点であっても最大値は70dB以下であることが確認された。
【0085】
以上の結果から、バックホウのバケットに本実施形態の付着抑制部材10を貼り付けて掘削作業を行えば、付着残土を振り落とすためのバケットの揺動がほぼ不要、或は、回数を限りなく少なくすることができることから、騒音レベルを確実に小さく抑えることが可能となり、周辺環境に配慮した施工を実現できることが確認できた。
【0086】
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0087】
[第一実施形態の変形例1]
図13は、第一実施形態に係る変形例1の爪部材5Fを示す模式的な分解斜視図である。変形例1の爪部材5Fは、前述の各爪部5A~5E(図2等参照)を一体化したものである。具体的には、爪部材5Fは、断面略三角形状の爪本体部5Gを有する。爪部本体5Gは、好ましくは、収容部28の開口幅又はエッジ板部24と略同じ長さで形成されている。爪本体部5Gは、付着抑制部材10を貼り付けるための平坦状の平面部5Hを有する。爪本体部5Gの背面側には、アダプタ4A~4Eの凸部が差し込まれる不図示の凹部が設けられている。爪本体部5Gは、不図示のピン等を介してアダプタ4A~4Eに固定される。
【0088】
変形例1の爪部材5Fによれば、爪本体部5Gは、各アダプタ4A~4Eに個別に装着される分割型ではなく、各アダプタ4A~4Eに纏めて取り付けられる一体型として形成されている。爪本体部5Gには、付着抑制部材10を貼り付ける平面部5Hが設けられており、付着抑制部材10の爪部材5Fに対する接着力を確実に向上できるように構成されている。これにより、掘削作業時の衝撃等によって付着抑制部材10が爪部材5Fから剥がれ落ちることを効果的に防止することが可能になる。また、爪部材5Fの土付着を効果的に抑止することができ、作業効率の低下を確実に防止することも可能になる。
【0089】
[第一実施形態の変形例2]
図14は、第一実施形態に係る変形例2のバケット20を示す模式的な斜視図である。変形例2のバケット20は、バケット20に振動を伝達可能な振動発生装置8Aを備えている。振動発生装置8Aは、不図示の振動発生モータを内蔵した電動式の振動発生装置でもよく、或は、不図示の流体圧シリンダを内蔵した流体圧式の振動発生装置であってもよい。振動発生装置8Aが電動式の場合、電力はバックホウ100に搭載されたバッテリから供給すればよい。振動発生装置8Aが流体圧式の場合、流体圧はバックホウ100が備える油圧回路等から供給すればよい。振動発生装置8Aを設ける場所は、特に限定されないが、掘削時にバケット20が土に埋没しない場所、例えば、ブラケット固定板部25等に設置すればよい。
【0090】
変形例2においても、バケット20の内面には付着抑制部材10が貼り付けられる。このため、振動発生装置8Aは、バケット20に対して大きな振動を付与する必要はなく、付着抑制部材10の表面と土との付着力を弱められる程度の振動を付与できればよい。変形例2によれば、振動発生装置8Aからバケット20に振動を付与することで、付着抑制部材10の表面に対する土の付着力を確実に弱めることが可能になる。これにより、バケット20内に掘削土が付着して堆積することを効果的に抑止することができ、作業効率の低下を確実に防止することが可能になる。また、振動発生装置8Aは、大きな振動を伝達する必要がないため、騒音も効果的に抑制することができる。
【0091】
[第一実施形態の変形例3]
図15は、第一実施形態に係る変形例3の付着抑制部材10Aを示す模式的な斜視図である。変形例3のバケット20は、先端に向かうに従い細くなる掘削爪5Jを備えている。バケット20が掘削爪5Jを備える場合、土は掘削爪5Jの間には堆積せず、各アダプタ4A~4Eの間に付着して堆積しやすい。このため、変形例3の付着抑制部材10Aでは、各アダプタ4A~4Eに対応する位置に略U字状のスリット10Cが設けられている。スリット10Cは、例えば、付着抑制部材10の端部を電動鋸等で切削することにより加工すればよい。
【0092】
変形例3によれば、エッジ板部24の各アダプタ4A~4E間に付着抑制部材10Aを設けることで、各アダプタ4A~4E間に土が付着して堆積することを効果的に抑止することができる。また、付着抑制部材10Aをエッジ板部24に密接させて貼り付けることができ、付着抑制部材10Aの剥がれ落ちも効果的に防止することが可能になる。
【0093】
[第一実施形態の変形例4]
図16は、第一実施形態に係る変形例4の作業具を示す模式的な斜視図である。変形例4の作業具は、表層改良工事や汚泥改質工事等に用いられる、いわゆるスケルトンバケット20’である。スケルトンバケット20’は、底板部21の平坦面部21A及び、湾曲面部21Bに複数の桝目27を設けたものである。スケルトンバケット20’は、掘削によって収容部28内に収容した土石等から桝目27を介して土砂を落とすことにより、土砂と石等とを篩い分けすることができる。側板部22,23やエッジ板部24、ブラケット固定板部25等の構成は、前述の一般的なバケット20と略同構造のため、それらの説明は省略する。
【0094】
変形例4においても、スケルトンバケット20’の内面に付着抑制部材10が貼り付けられる。具体的には、付着抑制部材10は、側板部22,23、エッジ板部24及び、底板部21の桝目27が設けられていない部分(図示例では、湾曲面部21Bのブラケット固定板部25側の部分)に貼り付けられる。付着抑制部材10は、第一実施形態と同様、両面テープ又は接着材を用いて貼り付ければよい。なお、付着抑制部材10の設置は、スポット溶接で固定してもよく、或は、リベットやボルトを用いて固定することも可能である。
【0095】
エッジ板部24及び、底板部21(湾曲面部21B)の付着抑制部材10は、長手方向がバケット20’の回転軸R方向と略平行となるように貼り付けられる。図示例において、付着抑制部材10は、エッジ板部24及び底板部21に、それぞれ1枚貼り付けられているが、付着抑制部材10の枚数はこれには限定されず、エッジ板部24や底板部21の具体的な寸法に応じた適宜の枚数を貼り付ければよい。側板部22,23の付着抑制部材10は、長手方向が平坦面部21Aの面方向と略平行となるように貼り付けられる。図示例において、付着抑制部材10は、左側板部22及び右側板部23に、それぞれ3枚貼り付けられているが、付着抑制部材10の枚数はこれには限定されず、側板部22,23の具体的な寸法に応じた適宜の枚数を貼り付ければよい。
【0096】
このように、スケルトンバケット20’の内面に付着抑制部材10を貼り付けることで、土石等から篩い分けられる土砂が側板部22,23やエッジ板部24等に付着して堆積することを効果的に抑止することが可能になる。すなわち、掘削した土石から土砂と石等とを効率的に分別できるようになり、作業効率を確実に向上することが可能になる。また、スケルトンバケット20’を大きく揺動させることなく、土砂と石とを篩い分けできるため、揺動に伴う騒音も効果的に抑制することが可能になる。また、作業員が清掃のためにスケルトンバケット20’に近づく必要性も少なくなることから、安全性の向上を図ることも可能になる。
【0097】
[第二実施形態]
図17は、第二実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。第二実施形態の建設機械は、例えば、作業具としてのバケット30を備えるホイールローダ200である。ホイールローダ200は、後輪270が取り付けられた後部車体210と、前輪280が取り付けられた前部フレーム220と、作業装置230とを備えている。後部車体210及び、前部フレーム220は、互いに揺動自在に接続されたアーティキュレート構造をなしている。後部車体210には、運転室212が設けられている。前部フレーム220には、作業装置230が設けられている。
【0098】
作業装置230は、基端部を前部フレーム220に揺動自在に取り付けられたブーム231と、ブーム231の先端部に揺動自在に取り付けられたバケット30とを備えている。前部フレーム220及び、ブーム231は、ブームシリンダ232によって連結されている。ブームシリンダ232を伸縮させると、ブーム231が揺動、すなわち、ブーム231の先端側が上下動する。また、作業装置230は、ブーム231に揺動自在に取り付けられたチルトアーム233と、前部フレーム220とチルトアーム233の基端部とを連結するチルトシリンダ234と、チルトアーム233の先端部とバケット30とを連結するチルトロッド235とを備えている。チルトシリンダ234を伸縮させると、バケット30が傾動する。ホイールローダ200は、ブーム231の上下動、バケット30の傾動及び、ホイールローダ200の前進又は後進を適宜に組み合わせ、バケット30の位置や傾き姿勢を調整することにより、土砂や泥土、雪等の積込作業、運搬作業を行なう。
【0099】
図18は、第二実施形態に係るバケット30を示す模式的な斜視図である。バケット30は、例えば鋼材等で形成されており、前述のバックホウ100等に用いられるバケット20(図2参照)よりも左右方向に長く形成されている。具体的には、バケット30は、底板部31と、左側板部32と、右側板部33と、カッティングエッジ34と、スピルガード35とを有する。底板部31及び、側板部32,33は、土砂や泥土、雪等の作業対象物を収容するための収容部38を形成する。
【0100】
底板部31は、収容部38の開口側から略平面状に延びる平坦面部31Aと、平坦面部31Aの端部から収容部38の外側に向かって凸となるように湾曲する湾曲面部31Bとを有する。平坦面部31Aの湾曲面部31Bとは反対側の端部には、カッティングエッジ34が固定されている。湾曲面部31Bの平坦面部31Aとは反対側の端部には、スピルガード35が固定されている。湾曲面部31Bの外周面には、ブーム231やチルトロッド234(何れも図17に示す)にピン連結されるブラケット等が設けられている。左側板部32は、底板部31の左側開口を塞ぐように、底板部31の左端部に溶接等で固定されている。右側板部33は、底板部31の右側開口を塞ぐように、底板部31の右端部に溶接等で固定されている。
【0101】
第二実施形態においても、バケット30の内面に付着抑制部材10が設置される。具体的には、付着抑制部材10は、底板部31(平坦面部31A、湾曲面部31B)及び、側板部32,33に設置される。付着抑制部材10の設置は、両面テープや接着材を用いてもよく、或は、スポット溶接等で固定してもよい。底板部31の付着抑制部材10は、長手方向がバケット30の幅方向と略平行となるように貼り付けられる。図示例において、付着抑制部材10は、底板部31に4列で貼り付けられているが、付着抑制部材10の列数はこれには限定されず、底板部31の具体的な寸法に応じた適宜の列数で貼り付ければよい。側板部32,33の付着抑制部材10は、長手方向が平坦面部31Aの面方向と略平行となるように貼り付けられる。図示例において、付着抑制部材10は、左側板部32及び右側板部33に、それぞれ3枚貼り付けられているが、付着抑制部材10の枚数はこれには限定されず、側板部32,33の具体的な寸法に応じた適宜の枚数を貼り付ければよい。
【0102】
このように、ホイールローダ200に用いられるバケット30の内面に付着抑制部材10を貼り付けることで、土砂や泥土、雪等の作業対象物がバケット30の内面に付着して堆積することを効果的に抑止することが可能になる。すなわち、作業対象物をバケット30からトラックの荷台等に積み込む際や、作業対象物を所定位置まで運搬してバケット30から放出する際に、作業対象物がバケット30内に残存することを効果的に防止できるようになる。これにより、作業効率を確実に向上することが可能になる。また、バケット30を大きく揺動させることなく、作業対象物をバケット30から効率的に放出できるため、揺動に伴う騒音や振動の発生も効果的に抑制することが可能になる。また、作業員が清掃のためにバケット30に近づく必要性も少なくなることから、安全性の向上を図ることも可能になる。
【0103】
なお、図面に基づいた説明は省略するが、ホイールローダ200に装着可能なバケットとして、図16に示すようなスケルトンバケットがある。本開示の付着抑制部材10は、このようなホイールローダ200用のスケルトンバケットにも適用することが可能である。この場合も、付着抑制部材10を、スケルトンバケットの側板部及び、底板部の桝目が設けられていない部分に設置すればよい。
【0104】
[第三実施形態]
図19は、第三実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。第三実施形態の建設機械は、盛土工事や埋め立て工事等で土砂の掘削、運搬、整地等に用いられるブルドーザ300である。ブルドーザ300は、車体フレーム310と、左右一対の走行装置320と、作業装置330とを備えている。車体フレーム310の上部には、運転室311が設けられている。走行装置320は、不整地等での走行を可能とする無端状の履帯321を有する。走行装置320は、車体フレーム310の左右下部にそれぞれ設けられている。
【0105】
作業装置330は、作業具としてのブレード(排土板)40と、支持フレーム331,332と、昇降シリンダ333とを有する。支持フレーム331,332は、基端部を走行装置320又は車体フレーム310に揺動自在に取り付けられている。ブレード40は、支持フレーム331,332の先端部に取り付けられており、土砂や泥土等を押し出す。昇降シリンダ333は、基端部を車体フレーム310に取り付けられている。昇降シリンダ332の先端部には、ブレード40が取り付けられており、昇降シリンダ332が伸縮すると、ブレード40が上下に昇降する。
【0106】
図20は、第三実施形態に係るブレード40を示す模式的な斜視図である。ブレード40は、例えば鋼材等で形成されており、後方に凸となるように湾曲するブレード本体板41と、ブレード本体板41の左右両端に接合された一対の側板42,43と、ブレード本体板41の下端に固定されたカッティングエッジ44とを備えている。ブレード本体板41の後面には、前述の支持フレーム331,332や昇降シリンダ332(何れも図19に示す)が連結される不図示のブラケット等が設けられている。
【0107】
第三実施形態において、付着抑制部材10は、ブレード40のブレード本体板41の前面に設置される。具体的には、付着抑制部材10は、長手方向がブレード本体板41の幅方向と略平行となるように設置される。複数枚の付着抑制部材10は、ブレード本体板41の前面に全体的に敷き詰めて設置してもよいが、互いに上下左右に所定のクリアランスを隔てて設置することが好ましい。付着抑制部材10の設置は、特に限定されないが、スポット溶接により固定することが望ましい。
【0108】
このように、ブレード本体板41の前面に付着抑制部材10を設置することで、土砂や泥土等の作業対象物がブレード本体板41の前面に付着して堆積することを効果的に抑止することが可能になる。すなわち、押土作業や掘削作業の効率を確実に向上することが可能になる。また、ブレード40を上下動させて付着土等を振り落とすための動作がほぼ不要、或は、回数を限りなく少なくできため、騒音や振動の発生も効果的に抑制することが可能になる。また、作業員が清掃のためにブレード40に近づく必要性も少なくなることから、安全性の向上を図ることも可能になる。
【0109】
[第四実施形態]
図21は、第四実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。第四実施形態の建設機械は、場所打ち杭工事のアースドリル工法で用いられるアースドリル掘削機400である。アースドリル掘削機400は、作業具としてのドリリングバケット50を備えている。アースドリル工法では、ドリリングバケット50を回転させて、地盤を掘削しながら掘削土砂をドリリングバケット50内に取り込み、取り込んだ土砂を地上に排土する作業を繰り返し行うことにより、掘削孔を所望の深度まで掘削する。
【0110】
アースドリル掘削機400は、クレーン等の揚重装置410と、揚重装置410のフロントフレーム420に取付けられたロータリドライブ430と、揚重装置410のブーム440にワイヤ441によって吊り下げられたケリーバ450とを備えている。ドリリングバケット50は、ケリーバ450の先端に取り付けられており、ロータリドライブ430の回転力がケリーバ450を介して伝達される。
【0111】
図22は、第四実施形態に係るドリリングバケット50を示す模式的な側面図である。図23は、第四実施形態に係るドリリングバケット50を示す模式的な縦断面図である。ドリリングバケット50は、円筒状のバケット本体51と、バケット本体51の下端開口を閉鎖可能な円板状の底蓋52とを備えている。バケット本体51及び、底蓋52は、例えば鋼材等で形成されている。バケット本体51の上端には、ソケット57が設けられている。ソケット57には、前述のケリーバ450(図21に示す)の先端がピン等によって連結される。
【0112】
底蓋52は、バケット本体51の下端縁にヒンジ機構55を介して開閉自在に取り付けられている。底蓋52は、地盤を掘削する際は、バケット本体51の下端開口を閉鎖する(図22に閉状態を示す)。底蓋52の下面には、地盤を掘削するための複数のビット53が設けられている。また、底蓋52には、掘削土砂をバケット本体51内に取り込むためのスリット54が設けられている。バケット本体51内に取り込まれた掘削土砂は、底蓋52を開くことにより、地上に排土される(図23に開状態を示す)。
【0113】
図23に示すように、付着抑制部材10は、バケット本体51の内周面及び、底蓋52の内面(底蓋52の閉状態において、バケット本体51の内部空間に臨む面)に設置される。具体的には、バケット本体51の付着抑制部材10は、長手方向がバケット本体51の軸方向(鉛直下方)と略平行となるように設置される。付着抑制部材10の枚数は、特に限定されないが、周方向に等ピッチで4枚以上設置することが望ましい。複数枚の付着抑制部材10は、バケット本体51の内周面に敷き詰めて設置してもよいが、互いに周方向に所定のクリアランスを隔てて設置することが好ましい。底蓋52の付着抑制部材10は、底蓋52が開いた状態で、長手方向が略鉛直方向に向くように設置される。付着抑制部材10の固定方法は、特に限定されないが、スポット溶接によって固定することが望ましい。
【0114】
このように、バケット本体51の内周面及び、底蓋52の内面に付着抑制部材10を設置することで、バケット本体51内に取り込まれた掘削土砂がバケット本体51の内周面や底蓋52の内面に付着して堆積することを効果的に抑止することが可能になる。すなわち、掘削土砂を地上に排土する際に、掘削土砂がドリリングバケット50内に残存することを効果的に防止できるようになる。これにより、作業効率を確実に向上しつつ、杭工事の工期の短縮化を図ることも可能になる。また、ドリリングバケット50内から付着残土を振り落とすために、ドリリングバケット50に衝撃を付与する動作がほぼ不要になるか、或は、回数を限りなく少なくすることができるため、大きな騒音や振動の発生を効果的に防止することも可能になる。また、作業員が清掃のためにドリリングバケット50に近づく必要性も少なくなることから、安全性の向上を図ることも可能になる。
【0115】
[第五実施形態]
図24は、第五実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。第五実施形態の建設機械は、場所打ち杭工事のオールケーシング工法で用いられるオールケーシング掘削機500である。オールケーシング掘削機500は、作業具としてのハンマグラブ60を備えている。オールケーシング工法では、ケーシングチューブ590を回転又は揺動させながら地盤に圧入し、ケーシングチューブ590内の土砂をハンマグラブ60によって地上に排土する作業を、ケーシングチューブ590を適宜に継ぎ足しながら繰り返すことにより、掘削孔を所望の深度まで掘削する。
【0116】
オールケーシング掘削機500は、チュービング装置510と、クレーン等の揚重装置530とを備えている。チュービング装置510は、ケーシングチューブ590を回転又は揺動させることにより地盤に圧入する。ケーシングチューブ590の先端には、不図示のカッタービットが設けられている。揚重装置530は、ジブ531を備えている。ジブ531から垂下した吊持用ワイヤ532の先端には、ハンマグラブ60を係脱可能に保持するクラウン533が取り付けられている。ハンマグラブ60は、クラウン533の中心部に挿通された昇降操作用ワイヤ540を介して、揚重装置530から昇降操作可能に吊持されている。
【0117】
図25は、第五実施形態に係るハンマグラブ60が閉じた状態を示す模式的な斜視図である。図26は、第五実施形態に係るハンマグラブ60が開いた状態を示す模式的な斜視図である。ハンマグラブ60は、ハンマグラブ本体61と、ハンマグラブ本体61の上部に設けられたスライドブロック62と、ハンマグラブ本体61の下端部にヒンジ機構65を介して開閉自在に取り付けられ一対のシェル63,64とを備えている。各シェル63,64は、略半円錐状に形成されており、閉状態において互いに接触することにより、掘削土砂を掴み取る。
【0118】
掘削作業を行う際は、昇降操作用ワイヤ540(図24に示す)を繰り出し、スライドブロック62をクラウン533(図24に示す)から切り離す。スライドブロック62を切り離すと、ハンマグラブ60は地盤に向けて落下し、シェル63,64が開いた状態で地盤に食い込む。その後、昇降操作用ワイヤ540を巻き上げると、シェル63,64が閉じて掘削土砂を掴み取る。この状態で、ハンマグラブ60を引き上げて、スライドブロック62をクラウン533に係止させる。掘削土砂を地上に排土する際は、昇降操作用ワイヤ540を緩めると、不図示のスプリングの付勢力によってシェル63,64が開状態となる。
【0119】
図26に示すように、付着抑制部材10は、各シェル63,64の内周面に設置される。具体的には、付着抑制部材10は、各シェル63,64が開いた状態で、長手方向が略鉛直方向に向くように設置される。付着抑制部材10の固定方法は、特に限定されないが、スポット溶接によって固定することが望ましい。付着抑制部材10の枚数も、特に限定されないが、各シェル63,64に、少なくとも2枚以上を設置することが望ましい。
【0120】
このように、各シェル63,64の内周面に付着抑制部材10を設置することで、各シェル63,64によって掴み取られた掘削土砂がシェル63,64の内周面に付着して堆積することを効果的に抑止することが可能になる。すなわち、掘削土砂を地上に排土する際に、掘削土砂がシェル63,64の内周面に残存することを効果的に防止できるようになる。これにより、作業効率を確実に向上しつつ、杭工事の工期の短縮化を図ることも可能になる。また、各シェル63,64から付着残土を振り落とすために、ハンマグラブ60に衝撃を付与する動作がほぼ不要になるか、或は、回数を限りなく少なくすることができるため、大きな騒音や振動の発生を効果的に防止することも可能になる。また、作業員が清掃のためにハンマグラブ60に近づく必要性も少なくなることから、安全性の向上を図ることも可能になる。
【0121】
[第六実施形態]
図27は、第六実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。第六実施形態の建設機械は、地中連続壁工法で用いられる水平多軸式掘削機600である。水平多軸式掘削機600は、作業具として、ロータリーカッタ70を有する掘削機620を備える。地中連続壁工法では、掘削機620を安定液で満たされた溝内に吊り下げた状態でロータリーカッタ70を回転駆動させることにより、地盤を鉛直下方に掘り下げていく。掘削された土砂は、安定液とともに地上に吸い上げられ、土砂分離等の処理を施された後に、再び溝内に戻されて循環使用される。
【0122】
水平多軸式掘削機600は、クローラ式の下部走行体610と、下部走行体610の上部に旋回自在に取り付けられた架台611と、架台611に起伏自在に設けられた伸縮ブーム612とを備えている。伸縮ブーム612は、起伏用ジャッキ613によって起伏する。伸縮ブーム612の先端には、掘削機620がワイヤ618を介して昇降自在に吊持されている。また、架台611には、揚泥ホース614を巻き取る揚泥ホースリール615、ワイヤ618によって掘削機620を昇降させるウインチ616、油圧ホースを巻き取る油圧ホースリール617、計測ケーブルを巻き取るケーブルリール(不図示)等が設けられている。
【0123】
掘削機620は、掘削機本体621を備えている。掘削機本体621には、溝の内壁面に当接して掘削機本体621の姿勢を保持する複数の姿勢保持板622が設けられている。また、掘削機本体621の下端には、油圧駆動式の一対のロータリーカッタ70が並設されている。掘削機本体621の略中央には、揚泥ポンプ623が設けられている。揚泥ポンプ623は、ロータリーカッタ70,70の間に配された吸入口624から掘削土砂及び安定液を吸い込む。吸入口624から吸い込まれた掘削土砂及び安定液は、揚泥配管625及び、揚泥ホース614を介して揚泥ホースリール615に圧送される。揚泥ホースリール615に圧送された掘削土砂及び安定液は、吐出口619から不図示の泥水処理プラントに送られて処理される。
【0124】
図28は、第六実施形態に係るロータリーカッタ70を回転軸方向から視た模式図である。図29は、第六実施形態に係るロータリーカッタ70を径方向から視た模式図である。ロータリーカッタ70は、円筒状の回転ドラム71と、回転ドラム71の外周面に径方向に突出して設けられた略台形板状のブレード72と、ブレード72の先端にホルダ73を介して固定されたカッタービット74とを備えている。複数のブレード72は、回転ドラム71の外周面に周方向に所定ピッチで設けられている。
【0125】
ここで、ロータリーカッタ70のブレード72に、掘削土砂が付着して堆積すると、造成した混合土が掘削機本体621の下部に滞留して掘削速度を著しく低下させる要因となる。第六実施形態において、付着抑制部材10は、ロータリーカッタ70のブレード72の表面に設置される。具体的には、付着抑制部材10は、ブレード72の掘削機本体621に臨む面(以下、内面)と、ブレード72の掘削機本体621とは反対側の面(以下、外面)に設置される。付着抑制部材10は、長手方向が回転ドラム71の接線方向と略平行となるように設置される。付着抑制部材10の固定方法は、特に限定されないが、スポット溶接によって固定することが望ましい。
【0126】
このように、ロータリーカッタ70のブレード72の内面及び、外面に付着抑制部材10を設置することで、掘削土砂がブレード72の内面及び、外面に付着して堆積することを効果的に抑止することが可能になる。すなわち、造成した混合土が掘削機本体621の下部に滞留することを効果的に防止できるようになり、掘削速度の低下も効果的に抑制できるようになる。これにより、作業効率を確実に向上しつつ、地中連続壁工事の工期の短縮化を図ることも可能になる。また、混合土と安定液との混合比率が安定するようになり、施工品質の向上を図ることも可能になる。また、作業員が清掃のためにロータリーカッタ70に近づく必要性も少なくなることから、安全性の向上を図ることも可能になる。
【0127】
なお、図示による説明は省略するが、付着抑制部材10をロータリーカッタ70のみならず、掘削機本体621の表面にも設置することにより、土砂の付着抑制効果をさらに向上させることも可能である。
【0128】
[第七実施形態]
図30は、第七実施形態の建設機械を示す模式的な側面図である。第七実施形態の建設機械は、中層混合処理工事等のパワーブレンダー工法で用いられる地盤改良装置700である。地盤改良装置700は、作業具としてのトレンチャー式撹拌混合機80を備えている。パワーブレンダー工法では、トレンチャー式撹拌混合機80から地盤にセメント系固化材等の改良材を噴射し、トレンチャー式撹拌混合機80が備える攪拌翼88によって地盤の掘削と改良材との撹拌混合を行うことにより、連続して安定した改良体を造成する。
【0129】
地盤改良装置700は、ベースマシーンとしてのバックホウ100を備える。バックホウ100については、図1に示す構成と基本的に同構造となるため、詳細な説明は省略する。トレンチャー式撹拌混合機80は、バックホウ100のアーム142の先端に取り付けられている。具体的には、トレンチャー式撹拌混合機80は、略角柱状のフレーム81と、フレーム81の上端に設けられた駆動スプロケット82と、フレーム81の下端に設けられた従動スプロケット83と、各スプロケット82,83に巻き掛けられた無端状のドライブチェーン84と、フレーム81に設けられた複数のチェーンテンショナ85と、フレーム81の上端に設けられたジョイント86とを備えている。ジョイント86は、アーム142の先端に、フレーム81を長手方向の軸心周りに回転可能に連結する。フレーム81の下端側には、改良材を噴射する吐出口87が設けられている。複数の撹拌翼88は、ドライブチェーン84の外周に所定ピッチで設けられている。
【0130】
図31に示すように、付着抑制部材10は、トレンチャー式撹拌混合機80のフレーム81の表面に設置される。具体的には、付着抑制部材10は、角柱状に形成されたフレーム81の四面に、その長手方向がフレーム81の長手方向と略平行となるように設置される。付着抑制部材10の固定方法は、特に限定されないが、スポット溶接によって固定することが望ましい。
【0131】
このように、トレンチャー式撹拌混合機80のフレーム81の表面に付着抑制部材10を全体的に設置することで、フレーム81の表面に掘削土砂が付着することを効果的に抑制することが可能になる。すなわち、フレーム81とドライブチェーン84と間に掘削土砂が堆積することを防止できるようになる。これにより、撹拌翼88による地盤の掘削と改良材との撹拌混合を効率的に行えるようになり、工期の短縮化に加え、施工品質の向上を図ることも可能になる。また、作業員が清掃のためにトレンチャー式撹拌混合機80に近づく必要性も少なくなることから、安全性の向上を図ることも可能になる。
【0132】
[第七実施形態の変形例]
なお、付着抑制部材10を設置する箇所は、トレンチャー式撹拌混合機80のフレーム81に限定されず、撹拌翼88に設置することも可能である。図32は、撹拌翼88を示す模式的な平面図である。図33は、撹拌翼80を示す模式的な側面図である。撹拌翼88は、ドライブチェーン84の外周に固定された長板状のベースプレート88Aと、ベースプレート88Aのドライブチェーン84とは反対側の面(以下、表面)に固定された複数の掘削刃88Bと、ベースプレート88Aの掘削刃88Bとは反対側の面に固定された長板状の撹拌ブレード88Cとを備えている。複数の掘削刃88Bは、ベースプレート88Aの表面に、ベースプレート88Aの長手方向に所定間隔をおいて配置されている。撹拌ブレード88Cは、ベースプレート88Aの裏面に、ベースプレート88Aの長手方向に沿って略直角に設けられている。
【0133】
第七実施形態の変形例において、付着抑制部材10は、ベースプレート88Aの表面(各掘削刃88B,88Bの間)及び、撹拌ブレード88Cの表面に設置される。このように、撹拌翼88のベースプレート88A及び、撹拌ブレード88Cの表面に付着抑制部材10を設置することで、撹拌翼80に掘削土砂が付着して堆積することを効果的に抑制できるようになり、作業効率及び、施工品質のさらなる向上を図ることが可能になる。
【0134】
[その他]
付着抑制部材10は、上記実施形態の建設機械以外の他の建設機械の作業具にも広く適用することが可能である。例えば、モーターグレーダのブレード、或は、スクレーパのエプロン等にも、本開示の付着抑制部材10を設置すれば、掘削土砂等の付着抑制効果を得られることができる。
【0135】
また、上記実施形態において、建設機械の作業対象物は、土砂や泥土、雪等を一例に説明したが、作業対象物の性状は、液体状、半固体状、固体状を問わず、ベントナイト、コンクリート、モルタル等のような付着性を有する作業対象物に対しても同様の作用効果を奏することができる。また、付着抑制部材10は、上層の樹脂材12と、下層の金属材11とを有するものとして説明したが、下層は樹脂材12に接合可能な材質であれば、金属以外の母材で形成することも可能である。また、付着抑制部材10は、バケット20の底板部21や側板部22,23に複数枚を貼り付けることができる大きさであればよい。また、付着抑制部材10の形状も矩形短冊状(長方形板状)に限定されず、円形状、楕円形状、三角形状、五以上の多角形状であってもよい。
【符号の説明】
【0136】
10…付着抑制部材,11…金属材,12…樹脂材,20…バケット,20’…スケルトンバケット,20A…バケット本体部,21…底板部,21A…平坦面部,21B…湾曲面部,22…左側板部,23…右側板部,24…エッジ板部,25…ブラケット固定板部,27…桝目,4A~4E…アダプタ,5A~5E…爪部,6L,6R…ブラケット,30…バケット,30A…バケット本体部,31…底板部,31A…平坦面部,31B…湾曲面部,32…左側板部,33…右側板部,40…ブレード,41…ブレード本体板,50…ドリリングバケット,51…バケット本体,52…底蓋,60…ハンマグラブ,63,64…シェル,70…ロータリーカッタ,72…ブレード,80…トレンチャー式撹拌混合機,81…フレーム,88…撹拌翼,100…バックホウ,142…アーム,143…バケットリンク,150~152…シリンダ,200…ホイールローダ,200…ブーム,300…ブルドーザ,331,332…支持フレーム,400…アースドリル掘削機,450…ケリーバ,500…オールケーシング掘削機,530…揚重装置,600…水平多軸式掘削機,621…掘削機本体,700…地盤改良装置
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