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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157513
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】紡糸引取装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 7/00 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
D01D7/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222865
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2023071592
(32)【優先日】2023-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】矢野 靖展
(72)【発明者】
【氏名】金子 雅彦
【テーマコード(参考)】
4L045
【Fターム(参考)】
4L045AA05
4L045BA03
4L045DB07
4L045DB16
4L045DB17
4L045DC31
(57)【要約】
【課題】巻き掛けが容易となり、ゴデットローラを傷付けてしまうことを防止可能であるとともに、安全性を向上させることが可能な紡糸引取装置を提供する。
【解決手段】ゴデットローラ10,12は、軸方向の左側端部がガイドレール26に支持されており、360度未満の巻き掛け角度で複数の糸Yが巻き掛けられる。カバー部材50,70は、ゴデットローラ10,12よりも径方向の外側に配置される巻掛誘導部52,72と、巻掛誘導部52,72をガイドレール26に固定する固定部54,74と、を含む。巻掛誘導部52,72は、周方向第1領域の部位が、ガイドレール26の方を向く側部53aを有するとともに軸方向第3領域に設けられており、固定部54,74は、軸方向第1領域の部位が周方向第2領域に設けられている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、
紡糸装置から複数の糸が紡出される方向に対して直交する方向を軸方向とする一方の端部が前記支持部材に支持されており、
360度未満の巻き掛け角度で、前記複数の糸が巻き掛けられ、
巻き掛けられた前記複数の糸を糸走行方向下流側に送るローラである、ゴデットローラと、
前記ゴデットローラへの前記複数の糸の巻き掛けを補助する巻掛補助部材と、を備え、
前記巻掛補助部材は、
前記ゴデットローラのローラ面よりも径方向の外側に配置される巻掛誘導部と、
前記巻掛誘導部を前記支持部材に固定する固定部と、を少なくとも含み、
前記ゴデットローラの軸方向における領域のうち、前記複数の糸が巻き掛けられる領域を軸方向第1領域、前記軸方向第1領域よりも前記一方の端部側の領域を軸方向第2領域、及び前記軸方向第1領域よりも前記一方の端部とは反対側である他方の端部側の領域を軸方向第3領域とし、
前記ゴデットローラの周方向における領域のうち、前記複数の糸が前記ゴデットローラに導入される導入部位と前記ゴデットローラから導出される導出部位との間であって前記複数の糸が前記ゴデットローラに巻き掛けられる側の領域を周方向第1領域、及び前記複数の糸の巻き掛けが行われない側の領域を周方向第2領域としたときに、
前記巻掛誘導部は、当該巻掛誘導部の周方向のうち少なくとも前記周方向第1領域の部位が、前記支持部材の方を向く側部を有するとともに少なくとも前記軸方向第3領域に設けられており、
前記固定部は、当該固定部の軸方向のうち少なくとも前記軸方向第1領域の部位が前記周方向第2領域に設けられている、
紡糸引取装置。
【請求項2】
前記巻掛誘導部は、前記ゴデットローラのローラ面よりも径方向外側において、前記軸方向第3領域から前記軸方向第1領域に向けて延在する他方側延在面を含み、
前記側部は、前記他方側延在面の側部であって、前記ゴデットローラに対して前記複数の糸が導入される間隙を形成している、
請求項1に記載の紡糸引取装置。
【請求項3】
前記固定部は、前記ゴデットローラのローラ面よりも径方向外側において、前記軸方向第2領域から前記軸方向第1領域に向けて延在する一方側延在面を含み、
前記一方側延在面は、前記支持部材と反対の方を向く側部を有し、
前記一方側延在面の側部は、前記ゴデットローラに対して前記複数の糸が導入される間隙を形成している、
請求項1または2に記載の紡糸引取装置。
【請求項4】
前記巻掛誘導部と前記固定部とが環状に形成されて、環状の前記固定部と環状の前記巻掛誘導部とで、前記ゴデットローラを外挿する筒状部材が形成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の紡糸引取装置。
【請求項5】
前記固定部と前記巻掛誘導部とは、
前記ゴデットローラを外挿した状態で、前記軸方向第3領域側の端部が開放された底なし筒状部材に形成されている、
請求項4に記載の紡糸引取装置。
【請求項6】
前記間隙は、前記ゴデットローラに対して前記複数の糸が導入される部位に形成される第1間隙と、前記第1間隙よりも前記複数の糸の糸走行方向下流側に形成され、前記軸方向の大きさが前記第1間隙と比べて小さい第2間隙とを有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の紡糸引取装置。
【請求項7】
前記ゴデットローラは、
前記紡糸装置から紡出される複数の糸を、糸走行方向下流側に送る第1ゴデットローラと、
前記第1ゴデットローラよりも糸走行方向下流側に配置され、前記第1ゴデットローラから送られた前記複数の糸を、糸走行方向下流側に送る第2ゴデットローラと、を少なくとも含み、
前記支持部材は、前記第1ゴデットローラと前記第2ゴデットローラとを支持するガイドレールであり、
前記第1ゴデットローラと前記第2ゴデットローラとが互いに近接する巻き掛け位置では、前記第1ゴデットローラ、前記第2ゴデットローラの順で巻き掛けが行われ、
前記複数の糸が掛けられると、前記第1ゴデットローラから離れた巻取位置に前記第2ゴデットローラが前記支持部材に沿って移動するように構成されており、
前記巻掛補助部材は、
前記第1ゴデットローラと前記第2ゴデットローラとのうち少なくともいずれか一方に対して設けられている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の紡糸引取装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸機から紡糸された糸を引き取る紡糸引取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、モータによって回転駆動されるゴデットローラと、ゴデットローラの下方に配置される巻取装置と、を備える紡糸巻取機が開示されている。ゴデットローラは、紡糸機から紡出された複数の糸を引き取って糸走行方向下流側に送る。巻取装置は、巻取処理が開始されると、ゴデットローラから送られた複数の糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する。
【0003】
巻取装置での巻取処理の開始前には、ゴデットローラに対して糸を巻き掛ける巻き掛け作業が行われる。巻き掛け作業は、オペレータがサクションガンで複数の糸を吸引保持しつつ、ゴデットローラ等に糸を掛けて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-050440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サクションガンはオペレータにとって重いだけでなく、サクションガンに対して糸を吸引する力が作用している。そのため、サクションガンがゴデットローラに接触しないように糸を巻き掛けることは難しく、巻き掛け時にサクションガンがゴデットローラに接触してしまうと、ゴデットローラの表面を傷付けてしまう虞がある。また、巻き掛け作業についても、必ずしも安全であるとは言い難い。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、糸の巻き掛けが容易となり、ゴデットローラを傷付けてしまうことを防止可能であるとともに、安全性を向上させることが可能な紡糸引取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の紡糸引取装置は、
支持部材と、
紡糸装置から複数の糸が紡出される方向に対して直交する方向を軸方向とする一方の端部が前記支持部材に支持されており、
360度未満の巻き掛け角度で、前記複数の糸が巻き掛けられ、
巻き掛けられた前記複数の糸を糸走行方向下流側に送るローラである、ゴデットローラと、
前記ゴデットローラへの前記複数の糸の巻き掛けを補助する巻掛補助部材と、を備え、
前記巻掛補助部材は、
前記ゴデットローラのローラ面よりも径方向外側に配置される巻掛誘導部と、
前記巻掛誘導部を前記支持部材に固定する固定部と、を少なくとも含み、
前記ゴデットローラの軸方向における領域のうち、前記複数の糸が巻き掛けられる領域を軸方向第1領域、前記軸方向第1領域よりも前記一方の端部側の領域を軸方向第2領域、及び前記軸方向第1領域よりも前記一方の端部とは反対側である他方の端部側の領域を軸方向第3領域とし、
前記ゴデットローラの周方向における領域のうち、前記複数の糸が前記ゴデットローラに導入される導入部位と前記ゴデットローラから導出される導出部位との間であって前記複数の糸が前記ゴデットローラに巻き掛けられる側の領域を周方向第1領域、及び前記複数の糸の巻き掛けが行われない側の領域を周方向第2領域としたときに、
前記巻掛誘導部は、当該巻掛誘導部の周方向のうち少なくとも前記周方向第1領域の部位が、前記支持部材の方を向く側部を有するとともに少なくとも前記軸方向第3領域に設けられており、
前記固定部は、当該固定部の軸方向のうち少なくとも前記軸方向第1領域の部位が前記周方向第2領域に設けられている、
【0008】
上記(1)に記載の紡糸引取装置によれば、軸方向第3領域の側からサクションガンの先端を巻掛誘導部に押し当てた後、巻掛誘導部に沿わせてサクションガンを移動させることにより、サクションガンがゴデットローラに接触しないように、複数の糸を導入してゴデットローラに巻き掛けることができる。しかも、巻掛誘導部が支持部材の側を向く側部を有するため巻掛誘導部と支持部材との間に糸の巻き掛けを遮るものがなく、さらに、固定部の軸方向のうち軸方向第1領域の部位が周方向第2領域に設けられている。そのため、巻掛誘導部に沿わせてサクションガンを移動させることにより、サクションガンが固定部に接触することなくゴデットローラに糸を容易に巻き掛けることが可能となり、作業性及び安全性に優れる紡糸引取装置を提供できる。
【0009】
なお、巻掛誘導部の周方向のうち少なくとも周方向第1領域の部位が軸方向第3領域に設けられていれば、サクションガンがゴデットローラに接触しないように複数の糸をゴデットローラに巻き掛けることができる。ただし、巻掛誘導部の周方向第2領域の部位が軸方向第3領域に設けられていてもよい。
【0010】
また、固定部の軸方向のうち少なくとも軸方向第1領域の部位が周方向第2領域に設けられていれば、固定部が複数の糸と接触することを回避できる。よって、固定部の軸方向のうち、第2領域の部位及び第3領域の部位については、周方向第1領域及び周方向第2領域のいずれに設けられていてもよい。
【0011】
(2)本発明の紡糸引取装置において、
前記巻掛誘導部は、前記ゴデットローラのローラ面よりも径方向外側において、前記軸方向第3領域から前記軸方向第1領域に向けて延在する他方側延在面を含み、
前記側部は、前記他方側延在面の側部であって、前記ゴデットローラに対して前記複数の糸が導入される間隙を形成している、ことが好ましい。
【0012】
上記(2)に記載の紡糸引取装置によれば、巻掛誘導部が他方側延在面を含むことで巻掛誘導部の強度を高めることができ、サクションガンの先端を巻掛誘導部に押し当ててサクションガンを移動させるときの安定性を保つことができる。
【0013】
なお、間隙は、他方側延在面の側部と支持部材との間に形成されていてもよいし、他方側延在面と支持部材との間に他の部材を有する場合には、他方側延在面の側部と他の部材との間に形成されていてもよい。
【0014】
(3)本発明の紡糸引取装置において、
前記固定部は、前記ゴデットローラのローラ面よりも径方向外側において、前記軸方向第2領域から前記軸方向第1領域に向けて延在する一方側延在面を含み、
前記一方側延在面は、前記支持部材と反対の方を向く側部を有し、
前記一方側延在面の側部は、前記ゴデットローラに対して前記複数の糸が導入される間隙を形成している、ことが好ましい。
【0015】
上記(3)に記載の紡糸引取装置によれば、固定部が一方側延在面を含むことで、固定部を支持部材に対して安定して固定することができる。
【0016】
なお、間隙は、一方側延在面の側部と巻掛導入部との間に形成されていてもよいし、一方側延在面と巻掛導入部との間に他の部材を有する場合には、一方側延在面の側部と他の部材との間に形成されていてもよい。また、巻掛誘導部が他方側延在面を含む場合には、一方側延在面の側部と他方側延在面の側部との間で間隙を形成してもよい。
【0017】
また、巻掛誘導部が他方側延在面を含むとともに、固定部が一方側延在面を含む場合には、一方側延在面と他方側延在面とが同一平面上にあることが好ましいが、一方側延在面と他方側延在面とが同一平面上にあることは必須でなく、例えば一方側延在面と他方側延在面との間に段差があってもよい。
【0018】
(4)本発明の紡糸引取装置において、前記巻掛誘導部と前記固定部とが環状に形成されて、環状の前記固定部と環状の前記巻掛誘導部とで、前記ゴデットローラを外挿する筒状部材が形成されている、ことが好ましい。
【0019】
(4)本発明の紡糸引取装置において、
前記巻掛誘導部と前記固定部とが環状に形成されて、環状の前記固定部と環状の前記巻掛誘導部とで、前記ゴデットローラを外挿する筒状部材が形成されている、ことが好ましい。
【0020】
上記(4)の紡糸引取装置によれば、巻掛誘導部と固定部とが一体となって筒状部材が形成されるため、巻掛誘導部及び固定部の堅牢性を担保することができる。しかも、巻掛誘導部及び固定部の堅牢性を担保しつつ、筒状部材の外周部に沿わせてサクションガンを移動させることにより、サクションガンがゴデットローラに接触することなく、間隙から複数の糸をゴデットローラに巻き掛けることができる。
【0021】
(5)本発明の紡糸引取装置において、
前記固定部と前記巻掛誘導部とは、前記ゴデットローラを外挿した状態で、前記軸方向第3領域側の端部が開放された底なし筒状部材に形成されている、ことが好ましい。
【0022】
上記(5)の紡糸引取装置によれば、固定部と巻掛誘導部とは軸方向第3領域側の端部が開放された底なし筒状部材であるため、ゴデットローラへの糸の巻き掛けを容易に行うことが可能となる。すなわち、ゴデットローラを外挿する筒状部材の軸方向第3領域側の端部が閉じられていると、ゴデットローラと筒状部材との間すなわちゴデットローラのローラ面よりも径方向外側において気流が乱れ、ゴデットローラへの糸の巻き掛けが困難になるおそれがある。この点、筒状部材を、軸方向第3領域側の端部が開放された筒状部材とすることで、ゴデットローラのローラ面よりも径方向外側における気流の乱れを抑制でき、ゴデットローラへの糸の巻き掛けを容易に行うことが可能となる。
【0023】
(6)本発明の紡糸引取装置において、
前記間隙は、前記ゴデットローラに対して前記複数の糸が導入される部位に形成される第1間隙と、前記第1間隙よりも前記複数の糸の糸走行方向下流側に形成され、前記軸方向の大きさが前記第1間隙と比べて小さい第2間隙とを有する、ことが好ましい。
【0024】
上記(6)に記載の紡糸引取装置によれば、第1間隙からゴデットローラに対して複数の糸を導入しやすい一方、第2間隙は第1間隙よりも軸方向における間隙が小さいため、複数の糸を導入した後はサクションガンがゴデットローラに接触することを防止できる。
【0025】
(7)本発明の紡糸引取装置において、
前記ゴデットローラは、前記紡糸装置から紡出される複数の糸を、糸走行方向下流側に送る第1ゴデットローラと、
前記第1ゴデットローラよりも糸走行方向下流側に配置され、前記第1ゴデットローラから送られた前記複数の糸を、糸走行方向下流側に送る第2ゴデットローラと、を少なくとも含み、
前記支持部材は、前記第1ゴデットローラと前記第2ゴデットローラとを支持するガイドレールであり、
前記第1ゴデットローラと前記第2ゴデットローラとが互いに近接する巻き掛け位置では、前記第1ゴデットローラ、前記第2ゴデットローラの順で巻き掛けが行われ、
前記複数の糸が掛けられると、前記第1ゴデットローラから離れた巻取位置に前記第2ゴデットローラが前記支持部材に沿って移動するように構成されており、
前記巻掛補助部材は、
前記第1ゴデットローラと前記第2ゴデットローラとのうち少なくともいずれか一方に対して設けられている、
ことが好ましい。
【0026】
上記(7)に記載の紡糸引取装置によれば、巻掛補助部材は、第1ゴデットローラと第2ゴデットローラとのうち、第1ゴデットローラのみに対して設けられてもよいし、第2ゴデットローラのみに対して設けられてもよいし、第1ゴデットローラ及び第2ゴデットローラの両方に対して設けられてもよい。いずれの場合であっても、上記(1)~(6)と同様の作用効果を奏することができる。
【0027】
本発明に係る紡糸引取装置は、上記(1)~(7)に記載された構成の全部を備えることは必須でない。例えば、本発明に係る紡糸引取装置は、上記(1)に記載された紡糸引取装置に記載された構成のみで構成されてもよいし、整合を図ることができる範囲で、上記(1)に記載された構成と、上記(2)~(7)のいずれかに記載された構成と、を任意に組み合わせたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、巻き掛けが容易となり、ゴデットローラを傷付けてしまうことを防止可能であるとともに、安全面を向上させることが可能な紡糸引取装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態に係る紡糸引取装置1の一例を示す概略構成図である。
図2】第2ゴデットローラが巻き掛け位置に配置されているときの第1ゴデットローラ及び第2ゴデットローラの周辺を、図1と同じ方向から見た場合の概略図の一例である。
図3】第2ゴデットローラが巻き掛け位置に配置されているときの第1ゴデットローラ及び第2ゴデットローラの周辺を、右側前方から見た場合の斜視図の一例である。
図4】この明細書において定義された領域を説明するための図であって、(A)第1ゴデットローラを前方から見た場合の一例を示す図、(B)第1ゴデットローラを右方から見た場合の一例を示す図、(C)第2ゴデットローラを右方から見た場合の一例を示す図、である。
図5】第1ゴデットローラの径方向外側に設けられるカバー部材を前方右側の上方から見た場合の斜視図の一例である。
図6】(A)第1ゴデットローラの径方向外側に設けられるカバー部材を前方から見た場合の図の一例であり、(B)第1ゴデットローラの径方向外側に設けられるカバー部材を後方から見た場合の図の一例である。
図7】第1ゴデットローラへの巻き掛けを開始するときの態様を示す図であって、第1ゴデットローラの周辺を前方側から見た場合の図の一例である。
図8】第1ゴデットローラに巻き掛け中の態様を示す図であって、第1ゴデットローラ及び第2ゴデットローラの周辺を前方右側から見た場合の斜視図の一例である。
図9】第2ゴデットローラの径方向外側に設けられるカバー部材を前方右側の上方から見た場合の斜視図の一例である。
図10】第2ゴデットローラへの巻き掛けを開始するときの態様を示す図であって、第1ゴデットローラ及び第2ゴデットローラの周辺を前方右側から見た場合の斜視図の一例である。
図11】第2ゴデットローラが巻き掛け位置に配置されているときの第1ゴデットローラ及び第2ゴデットローラの周辺の斜視図を示す変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(紡糸引取装置1の概要)
以下、本発明の好適な実施の形態(以下、「本実施形態」と称する。)について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る紡糸引取装置1の一例を示す概略構成図である。
【0031】
図1に示されるように、紡糸引取装置1は、主として、紡糸装置2と、油剤ガイド4と、紡糸延伸装置6と、第1ゴデットローラ10と、第2ゴデットローラ12と、交絡装置(不図示)と、糸巻取装置8とを備える。
【0032】
この明細書において、図1の紙面上下方向を上下方向とし、図1の紙面左右方向を前後方向とする。また、図1の紙面に対して垂直な方向を左右方向とし、紙面表側(手前側)を右方とする。なお、後述するボビンホルダ34の先端側は、作業者が紡糸引取装置1を操作する側であって、これを前側とする。
【0033】
紡糸引取装置1は、紡糸装置2から連続的に紡出されたポリエステル等の溶融繊維材料が固化して形成された複数の糸Yを、紡糸延伸装置6で延伸した後、第1ゴデットローラ10及び第2ゴデットローラ12を経て、糸巻取装置8で巻き取る構成となっている。
【0034】
紡糸装置2は、ポリエステル等の溶融繊維材料を複数のフィラメントFとして下方に連続的に紡出する。油剤ガイド4は、紡糸装置2から紡出された複数のフィラメントFをまとめて1本の糸Yにするとともに、糸Y(複数のフィラメントF)に油剤を付与する。油剤が付与された複数の糸Yは、紡糸延伸装置6に送られる。
【0035】
紡糸延伸装置6は、複数の糸Yを加熱延伸する装置であり、紡糸装置2の下方に配置されている。紡糸延伸装置6は、保温箱14と、保温箱14の内部に収容された複数の加熱ローラ(不図示)とを有する。
【0036】
紡糸延伸装置6で延伸された複数の糸Yは、第1ゴデットローラ10によって引き取られ、さらに、第1ゴデットローラ10よりも糸走行方向下流側に設けられた第2ゴデットローラ12によって糸巻取装置8に送られる。
【0037】
第1ゴデットローラ10は、紡糸延伸装置6の下方において、紡糸装置2から紡出される複数の糸Yの紡出方向に対して水平に直交する左右方向が軸方向となるように配置されている。また、第1ゴデットローラ10の軸方向は、後述するガイドレール26の長手方向に対しても、水平に直交している。第2ゴデットローラ12は、第1ゴデットローラ10よりも糸走行方向の下流側であって、第1ゴデットローラ10の後方上部において、第1ゴデットローラ10と軸方向が平行となるように配置されている。また、第1ゴデットローラ10及び第2ゴデットローラ12は、ローラ昇降機構20によって支持されている。第1ゴデットローラ10は、例えば駆動源としてのモータ(不図示)によって回転しているが、これに限定されず、モータを有さずに回転するフリーローラであってもよい。
【0038】
ローラ昇降機構20は、第1ゴデットローラ10を回転可能に支持するブラケット22と、第2ゴデットローラ12を回転可能に支持する昇降ブラケット24と、固定フレーム(不図示)と、ガイドレール26と、モータ(不図示)とを含む。
【0039】
ガイドレール26は、一端部から他端部に向かって延びる長手状の部材である。ガイドレール26は、その長さ方向の一端部(図1における前側)が下、後端部(図1における後側)が上となるように、前後方向に対して斜めに配置されている。また、ガイドレール26は、水平方向に延びる固定フレーム(不図示)によって支持されている。なお、上記の「ガイドレール26」は、本発明の「支持部材」に相当する。
【0040】
ブラケット22は、ガイドレール26の一端部において、第1ゴデットローラ10の回転軸が後述するボビンホルダ34の軸方向と直交するように、第1ゴデットローラ10を回転可能に支持する。昇降ブラケット24は、第2ゴデットローラ12の回転軸がボビンホルダ34の軸方向と直交するように、第2ゴデットローラ12を回転可能に支持する。昇降ブラケット24は、モータ(不図示)の駆動により、ガイドレール26の長さ方向に沿って移動可能となっている。第2ゴデットローラ12は、昇降ブラケット24の移動に伴い、ガイドレール26の長さ方向に沿って移動する。
【0041】
第2ゴデットローラ12は、糸巻取装置8による糸Yの巻き取り時、図1において実線で示される巻取位置、すなわちガイドレール26の他端部であって、ボビンホルダ34の軸方向の略中央部上方に配置される。第2ゴデットローラ12は、第2ゴデットローラ12への糸Yの巻き掛け時、図1において破線で示される巻き掛け位置、すなわちガイドレール26の一端部であって、第1ゴデットローラ10に近接するように配置される。このように、第2ゴデットローラ12は、第1ゴデットローラ10と近接する巻き掛け位置と、第1ゴデットローラ10との距離が巻き掛け位置よりも大きい巻取位置との間で移行可能となっている。第2ゴデットローラ12は、例えば駆動源としてのモータ(不図示)によって回転しているが、これに限定されず、モータを有さずに回転するフリーローラであってもよい。
【0042】
交絡装置(不図示)は、第1ゴデットローラ10と第2ゴデットローラ12との間に配置され、1本の糸Yを構成する複数のフィラメントFを絡ませて交絡を付与する。
【0043】
糸巻取装置8は、第1ゴデットローラ10及び第2ゴデットローラ12の下方に配置されており、複数の糸Yを複数のボビンBに巻き取ってパッケージPを形成するように構成されている。糸巻取装置8は、複数の振支点ガイド31と、複数のトラバースガイド32と、ターレット33と、例えば2本のボビンホルダ34と、コンタクトローラ35と、糸検知部36とを備える。
【0044】
(第1ゴデットローラ10及び第2ゴデットローラ12の周辺構成)
図2は、第2ゴデットローラ12が巻き掛け位置に配置されているときの第1ゴデットローラ10及び第2ゴデットローラ12の周辺を、図1と同じ方向から見た場合の概略図の一例である。図3は、第2ゴデットローラ12が巻き掛け位置に配置されているときの第1ゴデットローラ10及び第2ゴデットローラ12の周辺を、右側前方から見た場合の斜視図の一例である。
【0045】
図2及び図3に示されるように、第1ゴデットローラ10の径方向外側にカバー部材50が配置されており、第2ゴデットローラ12の径方向外側にカバー部材70が配置されている。カバー部材50及びカバー部材70は、いずれも本発明の「巻掛補助部材」に相当する。
【0046】
カバー部材50は、第1ゴデットローラ10への糸の巻き掛け時に、オペレータの安全性を確保するとともに、第1ゴデットローラ10への糸の巻き掛けを補助する機能、及びサクションガン(後述の図7図8参照)が第1ゴデットローラ10に接触することを防止する機能を有する。カバー部材70は、カバー部材50と同様に、第2ゴデットローラ12への巻き掛け時に、オペレータの安全性を確保するとともに、第2ゴデットローラ12への糸の巻き掛けを補助する機能、及びサクションガンが第2ゴデットローラ12に接触することを防止する機能を有する。
【0047】
以下、この明細書において、第1ゴデットローラ10または第2ゴデットローラ12への「糸の巻き掛け」を単に「巻き掛け」と称する場合がある。
【0048】
(カバー部材50)
図4図6を参照して、カバー部材50の詳細について説明する。図4は、この明細書において定義された領域を説明するための図であって、(A)第1ゴデットローラ10を前方から見た場合の一例を示す図、(B)第1ゴデットローラ10を右方から見た場合の一例を示す図、(C)第2ゴデットローラ12を右方から見た場合の一例を示す図、である。図5は、カバー部材50を前方右側の上方から見た場合の斜視図の一例である。図6は、(A)はカバー部材50を前方から見た場合の図の一例であり、(B)はカバー部材50を後方から見た場合の図の一例である。なお、図5及び図6に示される方向は、カバー部材50が第1ゴデットローラ10の径方向外側に配置されたときの方向を示している。
【0049】
先ず、図4(A)を参照して、この明細書において定義する第1ゴデットローラ10の軸方向(図4(A)に示される左右方向)の領域について説明する。図4(A)に示される領域Cは、複数の糸Yが第1ゴデットローラ10の軸方向に巻き掛けられる領域であり、「軸方向第1領域C」と称する。図4(A)に示される領域Lは、軸方向第1領域よりも基端部側(ガイドレール26側(左側))の領域であり、「軸方向第2領域L」と称する。図4(A)に示される領域Rは、軸方向第1領域よりも先端部側(右側)の領域であり、「軸方向第3領域R」と称する。
【0050】
なお、第2ゴデットローラ12についても同様に、複数の糸Yが第2ゴデットローラ12の軸方向に巻き掛けられる領域を「軸方向第1領域C」と称し、軸方向第1領域よりも基端部側(ガイドレール26側(左側))の領域を「軸方向第2領域L」と称し、軸方向第1領域よりも先端部側(右側)の領域を「軸方向第3領域R」と称する。
【0051】
図4(B)を参照して、この明細書において定義する第1ゴデットローラ10の周方向の領域について説明する。図4(B)に示されるEは、複数の糸Yが第1ゴデットローラ10に導入される部位(以下「導入部E」と称する)である。図4(B)に示されるFは、複数の糸Yが第1ゴデットローラ10から導出される部位(以下「導出部F」と称する)である。360度の周方向のうち、図4(B)に示される領域αは、導入部Eから、複数の糸Yの糸走行方向(図4(B)において反時計回り)に向けた導出部Fまでの領域であり、「周方向第1領域α」と称する。360度の周方向のうち、図4(B)に示される領域βは、導入部Eから、複数の糸Yの糸走行方向と反対方向(図4(B)において時計回り)に向けた導出部Fまでの領域であり、「周方向第2領域β」と称する。すなわち、周方向第1領域αは、第1ゴデットローラ10の360度の周方向のうち、導入部Eと導出部Fとの間であって、複数の糸Yが第1ゴデットローラ10に巻き掛けられる側の領域である。また、周方向第2領域βは、第1ゴデットローラ10の360度の周方向のうち、導入部Eと導出部Fとの間であって、第1ゴデットローラ10への複数の糸の巻き掛けが行われない側の領域である。導入部Eは本発明の「導入部位」に相当し、導出部Fは本発明の「導出部」に相当する。
【0052】
図4(C)に示されるように、第2ゴデットローラ12についても、第1ゴデットローラ10と同様に、「周方向第1領域α」及び「周方向第2領域β」を定義する。図4(C)に示されるGは、複数の糸Yが第2ゴデットローラ12に導入される部位(以下「導入部G」と称する)である。図4(C)に示されるHは、複数の糸Yが第2ゴデットローラ12から導出される部位(以下「導出部H」と称する)である。そして、第2ゴデットローラ12の360度の周方向のうち、導入部Gと導出部Hとの間であって、複数の糸Yが第2ゴデットローラ12に巻き掛けられる側の領域を「周方向第1領域α」と称する。また、第2ゴデットローラ12の360度の周方向のうち、導入部Gと導出部Hとの間であって、第2ゴデットローラ12への複数の糸の巻き掛けが行われない側の領域を「周方向第2領域β」と称する。導入部Gについても本発明の「導入部位」に相当し、導出部Hについても本発明の「導出部」に相当する。
【0053】
図5に示されるように、カバー部材50は、本実施形態では筒状部材で構成されており、巻掛誘導部52と固定部54と間隙60とを有する。
【0054】
巻掛誘導部52は、サクションガン(後述の図7図8参照)を用いて第1ゴデットローラ10への巻き掛けを行う際に、サクションガンの先端を当接させて巻掛誘導部52に沿って移動させるだけで、第1ゴデットローラ10への巻き掛けを行うことができるようにした部位である。巻掛誘導部52は、第1ゴデットローラ10のローラ径よりも径が大きく、第1ゴデットローラ10を外挿するように、第1ゴデットローラ10よりも径方向外側に配置されている。
【0055】
なお、巻掛誘導部52は、周方向については少なくとも周方向第1領域α(図4参照)の部位を有していればよく、軸方向については少なくとも軸方向第3領域R(図4参照)に配置されていればよい。
【0056】
固定部54は、カバー部材50の基端部(左側端部)において、ガイドレール26(図1参照)に支持される部位である。この固定部54は、巻掛誘導部52とガイドレール26とを固定し、巻掛誘導部52をガイドレール26に支持する機能を有する。なお、筒状部材で構成されるカバー部材50の軸方向は、第1ゴデットローラ10の軸方向と同じである。巻掛誘導部52は、固定部54がガイドレール26に支持された状態、すなわち第1ゴデットローラ10の径方向外側に配置された状態で、第1ゴデットローラ10のローラ面の幅方向(左右方向)を全て覆っている。巻掛誘導部52及び固定部54は、剛性のある例えば金属製であることが好ましい。
【0057】
また、本実施形態においてカバー部材50は底なし筒状部材であり、第1ゴデットローラ10の径方向外側に巻掛誘導部52が配置された状態で、第1ゴデットローラ10の右側端部が開放された状態となっている。第1ゴデットローラ10が巻掛誘導部52に外挿された状態で、第1ゴデットローラ10の軸方向における他方の端部(右側端部)が閉じられていると、第1ゴデットローラ10と巻掛誘導部52とにより第1ゴデットローラ10の径方向外側において気流が乱れ、第1ゴデットローラ10への巻き掛けが困難になるおそれがある。そこで、カバー部材50を底なし筒状部材とすることで、第1ゴデットローラ10の径方向外側における気流の乱れを抑制でき、第1ゴデットローラ10への巻き掛けを容易に行うことが可能となる。ただし、カバー部材50を底なし筒状部材とすることは必須でなく、カバー部材50を底あり筒状部材とすることを排除する趣旨ではない。
【0058】
カバー部材50の巻掛誘導部52は、第1ゴデットローラ10よりも径方向外側において、軸方向第3領域Rから軸方向第1領域C(いずれも図4参照)に向けて延在する巻掛側延在面53を含む。巻掛誘導部52が巻掛側延在面53を含むことで巻掛誘導部52の強度を高めることができ、サクションガン(後述の図7図8参照)の先端を巻掛誘導部52に押し当ててサクションガンを移動させるときの安定性を保つことができる。
【0059】
巻掛側延在面53は、ガイドレール26の方(図5に示される左方)を向く側面53aを有する。間隙60は、この側面53aと後述する固定側延在面58の側面58aとの間に形成されている。上記の「巻掛側延在面53」は、本発明の「他方側延在面」に相当する。また、上記の「側面53a」は、本発明の「側部」に相当する。
【0060】
カバー部材50の固定部54は、ガイドレール26と巻掛誘導部52とを連結する連結部55と、ガイドレール26に支持される特定固定部56と、を少なくとも含む。
【0061】
連結部55は、周方向第2領域βに配置される。そのため、連結部55が複数の糸Yと接触することを防止できる。
【0062】
特定固定部56は、周方向第2領域βに設けられずに周方向第1領域αに設けられていてもよいし、周方向第1領域αに設けられずに周方向第2領域βに設けられていてもよいし、周方向第1領域α及び周方向第2領域βの両方に設けられていてもよい。本実施形態では、カバー部材50が筒状部材であるため、固定部54は、周方向第1領域α及び周方向第2領域βの両方に設けられていることとなる。
【0063】
固定部54は、第1ゴデットローラ10よりも径方向外側において、特定固定部56から軸方向第1領域(図4参照)に向けて延在する固定側延在面58を含む。固定部54が固定側延在面58を含むことで、固定部54をガイドレール26に対して安定して固定することができる。固定側延在面58は、ガイドレール26と反対側の方(図5に示される右方)を向く側面58aを有する。上記の「固定側延在面58」は、本発明の「一方側延在面」に相当する。
【0064】
なお、巻掛誘導部52が巻掛側延在面53を含み、且つ固定部54が固定側延在面58を含むことは必須でない。例えば、巻掛誘導部52が巻掛側延在面53を含むとともに固定部54が固定側延在面58を含まない態様、及び、巻掛誘導部52が巻掛側延在面53を含まずに固定部54が固定側延在面58を含む態様のうち、いずれかの態様であってもよい。
【0065】
また、巻掛側延在面53と固定側延在面58とは同一平面状にあることが好ましいが、必ずしも巻掛側延在面53と固定側延在面58とが同一平面状にあることは必須でない。例えば、巻掛側延在面53と固定側延在面58との間に段差があってもよい。
【0066】
間隙60は、第1ゴデットローラ10の軸方向において、巻掛側延在面53と固定側延在面58との間、すなわち巻掛誘導部52よりも軸方向第1領域Cの側に、周方向に沿って形成されている。この間隙60は、第1ゴデットローラ10に対して複数の糸Yが導入される導入部E(図4参照)に形成される第1間隙62と、第1ゴデットローラ10から複数の糸Yが導出される導出部F(図4参照)に形成される第2間隙64と、第1間隙62と第2間隙64との間であって、第1間隙62よりも複数の糸の糸走行方向下流側に形成される第3間隙66とを有する。第3間隙66は、導入部Eである第1間隙62から導出部Fである第2間隙64まで途切れずに、少なくとも周方向第1領域α(図4参照)の全領域にわたって形成されている。
【0067】
第1間隙62は、第1ゴデットローラ10に複数の糸を巻き掛けるために、複数の糸Yを通す開口部であり、巻掛誘導部52の周方向に沿って、下方に頂角部63を有する逆三角形状に設けられている。このように、第1間隙62を逆三角形状にすることで、第1ゴデットローラ10への複数の糸の導入部Eの開口を大きくすることができ、第1ゴデットローラ10への巻き掛けを行うときに、糸Yがカバー部材50と接触してしまうことを防止できる。
【0068】
また、第1間隙62の下方の頂角部63は、軸方向(水平な左右方向)における大きさ(開口幅)がサクションガン80(後述の図7図8参照)の先端部よりも小さい。そのため、サクションガン80の先端部が第1ゴデットローラ10のローラ面に接触することを防止できる。
【0069】
第2間隙64は、第1ゴデットローラ10から複数の糸を導出するための開口部であり、周方向に沿って矩形状に設けられている。第2間隙64は、軸方向(水平な左右方向)における開口幅が、第1間隙62の頂角部63における開口幅よりも大きく、さらには複数の糸Yによる糸走行幅(糸走行方向に対して直交する方向(すなわち水平な左右方向)の大きさ)よりも大きいことが好ましい。このようにすることで、糸Yが第1ゴデットローラ10のローラ面から離間するときに、離間した糸Yを、カバー部材50と接触することなく第2ゴデットローラ12に送ることができる。
【0070】
第3間隙66は、開口幅が第1間隙62及び第2間隙64のいずれと比べても小さく、第1間隙62と第2間隙64とが連なるように、巻掛誘導部52の周方向に沿ってスリット状に設けられた開口部である。第3間隙66の軸方向(水平な左右方向)における開口幅は、サクションガン80(後述の図7図8参照)の先端部よりも小さい。そのため、サクションガン80を巻掛誘導部52の外周部に沿わせて移動させたとしても、サクションガン80の先端が第1ゴデットローラ10に接触することを防止できる。
【0071】
なお、第3間隙66は、サクションガン80を、巻掛誘導部52の周方向に設けられた第3間隙66の範囲内を移動させるだけで、第1ゴデットローラ10への巻き掛けを行うことができるように設けられていることが好ましい。このようにすることで、第1ゴデットローラ10への巻き掛け時に、サクションガン80の先端部が第1ゴデットローラ10に接触してしまうことをより確実に防止することが可能となる。
【0072】
(第1ゴデットローラ10への巻き掛け)
図7は、第1ゴデットローラ10への巻き掛けを開始するときの態様を示す図であって、第1ゴデットローラ10の周辺を前方側から見た場合の図の一例である。この図7では、便宜上、カバー部材50、第1ゴデットローラ10、及びサクションガン80のみを図示し、ガイドレール26等についての図示を省略している。図8は、第1ゴデットローラ10に巻き掛け中の態様を示す図であって、第1ゴデットローラ10及び第2ゴデットローラ12の周辺を前方右側から見た場合の斜視図の一例である。
【0073】
図7に示されるように、第1ゴデットローラ10への巻き掛けは、第1間隙62よりも下方側において、サクションガン80を、軸方向第3領域Rの側から、巻掛誘導部52に近付けることによって行われる。そして、図8に示されるように、サクションガン80を、巻掛誘導部52の外周部に当接させつつ周方向に沿って反時計回りに移動させて、第1ゴデットローラ10への巻き掛け角度が360度未満となるように、第1ゴデットローラ10への巻き掛けが行われる。このように、サクションガン80を巻掛誘導部52の外周部に当接させつつ周方向に沿って移動させることにより、第1ゴデットローラ10に対して複数の糸Yを巻き掛けることができる。とくに、サクションガン80を、巻掛誘導部52の外周部に当接させつつ周方向に沿って移動させる範囲は、概ね第3間隙66が設けられている範囲であることが好ましい。
【0074】
また、カバー部材50を、巻掛誘導部52と固定部54とが一体となった筒状部材を採用することにより、カバー部材50の堅牢性を担保することができる。よって、筒状部材の外周部に沿ってサクションガンを移動させながら、筒状部材に設けた間隙60に複数の糸Yを通して、第1ゴデットローラ10に糸を巻き掛けることができるため、第1ゴデットローラ10への巻き掛けを容易に行うことができる。
【0075】
なお、巻掛誘導部52は、例えば図8に示される右方向から見たときの形状が真円の円弧状であることが好ましい。第1ゴデットローラ10への巻き掛け、すなわち、サクションガン80を巻掛誘導部52の外周部に当接させつつ周方向に沿って容易に移動させることができるからである。ただし、右方向から見たときの巻掛誘導部52の形状は、真円の円弧状であることが好ましいが、少なくとも角部を有していなければよく、例えば楕円の円弧状であってもよい。また、巻掛誘導部52は、少なくとも周方向第1領域αに存在していればよく、周方向第2領域βに存在していなくてもよい。
【0076】
(カバー部材70)
図9を参照して、カバー部材70の詳細について説明する。図9は、カバー部材70を前方右側の上方から見た場合の斜視図の一例である。なお、図9に示される方向は、カバー部材70が第2ゴデットローラ12の径方向外側に配置されたときの方向を示している。
【0077】
カバー部材70は、巻掛誘導部72と固定部74とを有する。巻掛誘導部72はガイドレール26の方(図9に示される左方)を向く側面72aを有し、固定部74はガイドレール26と反対側の方(図9に示される右方)を向く側面74aを有する。巻掛誘導部72の側面72aと固定部74の側面74aとの間には、間隙76が形成されている。上記の「側面72a」も、本発明の「側部」に相当する。
【0078】
巻掛誘導部72は、サクションガン(後述の図7図8参照)を用いて第2ゴデットローラ12への巻き掛けを行う際に、サクションガンの先端を当接させて巻掛誘導部72に沿って移動させるだけで、第2ゴデットローラ12への巻き掛けを行うことができるようにした部位である。巻掛誘導部72は、第2ゴデットローラ12のローラ径よりも径が大きく、少なくとも軸方向第3領域Rにおいて、第2ゴデットローラ10よりも径方向外側に配置される。
【0079】
なお、巻掛誘導部72は、周方向については少なくとも周方向第1領域α(図4参照)の部位を有していればよく、軸方向については少なくとも軸方向第3領域R(図4参照)に配置されていればよい。
【0080】
固定部74は、カバー部材70の基端部(左側端部)において、ガイドレール26(図1参照)に支持される部位である。この固定部74は、巻掛誘導部72とガイドレール26とを固定し、巻掛誘導部72をガイドレール26に支持する機能を有する。なお、カバー部材70の軸方向は、第2ゴデットローラ12の軸方向と同じである。巻掛誘導部72は、固定部74がガイドレール26に支持された状態、すなわち第2ゴデットローラ12の径方向外側に配置された状態で、第2ゴデットローラ12のローラ面の幅方向(左右方向)を全て覆っている。巻掛誘導部72及び固定部74は、剛性のある例えば金属製であることが好ましい。
【0081】
間隙76は、巻掛誘導部72と固定部74との間、すなわち巻掛誘導部72よりも軸方向第1領域Cの側に、周方向に沿って形成されている。間隙76の開口幅は、複数の糸Yによる糸走行幅よりも大きいことが好ましい。このようにすることで、第2ゴデットローラ12に送られた糸Yを、カバー部材70に接触させることなく第2ゴデットローラ12のローラ面に接触させることができる。間隙76は、導入部Gから導出部Hまで途切れずに、少なくとも周方向第1領域α(図4参照)の全領域にわたって形成されている。
【0082】
また、第2ゴデットローラ12はオペレータからの距離が第1ゴデットローラ10よりも遠いため、第2ゴデットローラ12への巻き掛けは第1ゴデットローラ10への巻き掛けよりも困難である。しかし、間隙76の開口幅を、複数の糸Yによる糸走行幅よりも大きくすることによって、第2ゴデットローラ12に対する複数の糸の巻き掛けを容易に行うことができる。
【0083】
さらに、第2ゴデットローラ12への巻き掛けは第2ゴデットローラ12の右側下方から行われるが、巻掛誘導部72が第2ゴデットローラ12の軸方向(水平な左右方向)の右側端部の側に設けられているため、サクションガン80が第2ゴデットローラ12のローラ面に接触することも防止できる。
【0084】
(第2ゴデットローラ12への巻き掛け)
図10は、第2ゴデットローラ12への巻き掛けを開始するときの態様を示す図であって、第1ゴデットローラ10及び第2ゴデットローラ12の周辺を前方右側から見た場合の斜視図の一例である。なお、上述したように、第2ゴデットローラ12への巻き掛け時、第2ゴデットローラ12は巻き掛け位置(図1において破線で示される位置)に配置されている。
【0085】
図10に示されるように、第2ゴデットローラ12への巻き掛けは、間隙76よりも下方側において、サクションガン80を、軸方向第3領域Rの側から、巻掛誘導部72に近付けることによって行われる。そして、サクションガン80を、巻掛誘導部72の外周部に当接させつつ周方向に沿って時計回りに移動させて、第2ゴデットローラ12への巻き掛け角度が360度未満となるように、第2ゴデットローラ12への巻き掛けが行われる。このように、サクションガン80を巻掛誘導部72の外周部に当接させつつ周方向に沿って移動させることにより、複数の糸Yが間隙76を通って第2ゴデットローラ12のローラ面に接触し、第2ゴデットローラ12に巻き掛けを行うことができる。第2ゴデットローラ12への巻き掛けが終了すると、第2ゴデットローラ12は、巻取位置(図1において実線で示される位置)に向けてガイドレール26の長さ方向に沿って移動する。
【0086】
なお、巻掛誘導部72は、例えば図10に示される右方向から見たときの形状が真円の円弧状であることが好ましい。第2ゴデットローラ12への巻き掛け、すなわち、サクションガン80を巻掛誘導部72の外周部に当接させつつ周方向に沿って容易に移動させることができるからである。ただし、右方向から見たときの巻掛誘導部72の形状は、真円の円弧状であることが好ましいが、少なくとも角部を有していなければよく、例えば楕円の円弧状であってもよい。また、巻掛誘導部72は、少なくとも周方向第1領域αに存在していればよく、周方向第2領域βに存在していなくてもよい。
【0087】
(作用効果)
本実施形態の紡糸引取装置1によれば、第1ゴデットローラ10の径方向外側にカバー部材50が設けられているため、第1ゴデットローラ10へのオペレータの接触を防止でき、第1ゴデットローラ10への糸の巻き掛けを補助し、巻き掛け時の安全性を向上することができる。とくに、第1ゴデットローラ10が回転しているときはオペレータにとっても危険が伴うが、第1ゴデットローラ10の径方向外側にカバー部材50を設けることによって、オペレータの安全面を担保することができる。しかも、軸方向第3領域Rの側からサクションガン80の先端を巻掛誘導部52に押し当てた後、巻掛誘導部52に沿わせてサクションガン80を移動させることにより、サクションガン80が第1ゴデットローラ10に接触しないように、複数の糸を第1ゴデットローラ10に巻き掛けることができる。そのため、簡単な操作で第1ゴデットローラ10への巻き掛けを行うことができ、さらには第1ゴデットローラ10を傷付けてしまうことも防止できる。
【0088】
また、第2ゴデットローラ12の径方向外側にカバー部材70が設けられているため、第2ゴデットローラ12へのオペレータの接触を防止でき、第2ゴデットローラ12への糸の巻き掛けを補助し、巻き掛け時の安全性を向上することができる。とくに、第2ゴデットローラ12が回転しているときはオペレータにとっても危険が伴うが、第2ゴデットローラ12の径方向外側にカバー部材70を設けることによって、オペレータの安全面を担保することができる。しかも、軸方向第3領域Rの側からサクションガン80の先端を巻掛誘導部72に押し当てた後、巻掛誘導部72に沿わせてサクションガン80を移動させることにより、サクションガン80が第2ゴデットローラ12に接触しないように、複数の糸を第2ゴデットローラ12に巻き掛けることができる。そのため、簡単な操作で第2ゴデットローラ12への巻き掛けを行うことができ、さらには第2ゴデットローラ12を傷付けてしまうことも防止できる。
【0089】
また、カバー部材50は、第1ゴデットローラ10を外挿した状態で軸方向(水平な左右方向)における右側端部が開放される底なし筒状部材で構成されているため、第1ゴデットローラ10よりも径方向外側における気流の乱れを抑制することができ、第1ゴデットローラ10への巻き掛けを容易に行うことが可能となる。
【0090】
また、カバー部材50は、第1ゴデットローラ10に対して複数の糸Yが導入される導入部Eに、下方に頂角部63を有する逆三角形状の第1間隙62を有する。頂角部63の開口幅は、サクションガン80の先端部よりも小さい。同様に、第3間隙66の開口幅は、サクションガン80の先端部よりも小さい。よって、第1ゴデットローラ10への巻き掛け時に、サクションガン80の先端部が第1ゴデットローラ10のローラ面に接触してしまうことを防止できる。
【0091】
また、カバー部材50は、第1ゴデットローラ10から複数の糸Yが導出される導出部Fに、矩形状の第2間隙64を有する。第2間隙64の開口幅は、第1間隙62の下方の頂角部63における開口幅よりも大きいため、糸Yが第1ゴデットローラ10のローラ面から離間するときに、離間した糸Yとカバー部材50とが接触することを防止できる。
【0092】
また、カバー部材50は、第1間隙62と第2間隙64との間に、開口幅がサクションガンの先端よりも小さいスリット状の第3間隙66を有する。そのため、第1ゴデットローラ10への巻き掛けの開始から終了までの全範囲にわたって、オペレータの安全を確保しつつ、簡単な操作で第1ゴデットローラ10への巻き掛けを行うことが可能になるとともに、第1ゴデットローラ10へのサクションガン80の接触により生じうる傷の発生を防止できる。
【0093】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、これらの例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、上述の本実施形態では、第1ゴデットローラ10の径方向外側にカバー部材50を設けるとともに、第2ゴデットローラ12の径方向外側にカバー部材70を設けるようにしたが、これに限定されない。すなわち、第1ゴデットローラ10と第2ゴデットローラ12とのうち少なくともいずれか一方のローラの径方向外側に、カバー部材(カバー部材50またはカバー部材70)を設けるようにしてもよい。
【0094】
なお、カバー部材50に代えてカバー部材50Aにした場合であっても、カバー部材50Aに、第1ゴデットローラ10への糸の巻き掛けを補助する機能を持たせることができる。同様に、カバー部材70に代えてカバー部材70Aにした場合であっても、カバー部材70Aに、第2ゴデットローラ12への糸の巻き掛けを補助する機能を持たせることができる。すなわち、カバー部材50A及びカバー部材70Aのいずれも、本発明の「巻掛補助部材」に相当するといえる。
【0095】
また、上述の本実施形態では、カバー部材50を筒状部材としたが、オペレータの安全面を確保しつつ簡単な操作で第1ゴデットローラ10への巻き掛けを行うことができれば、カバー部材50を筒状部材とすることは必須でない。例えば、カバー部材50を、筒状部材に代えて、リング状の巻掛誘導部と、このリング状の巻掛誘導部とガイドレール26とを固定する固定部とで構成してもよい。カバー部材70についても同様である。以下に、筒状部材のカバー部材50を、リング状の巻掛誘導部52Aと連結固定部54Aとを有するカバー部材50Aに変更するとともに、筒状部材のカバー部材70を、リング状の巻掛誘導部72Aと固定部74Aとを有するカバー部材70Aに変更した変形例について、図11を参照して説明する。
【0096】
図11は、第2ゴデットローラ12が巻き掛け位置に配置されているときの第1ゴデットローラ10及び第2ゴデットローラ12の周辺の斜視図を示す変形例である。図11では、カバー部材50に代えてカバー部材50Aが設けられているとともに、カバー部材70に代えてカバー部材70Aが設けられている。
【0097】
カバー部材50Aは、第1ゴデットローラ10のローラ径よりも径が大きいリング状の巻掛誘導部52Aと、連結固定部54Aとを有する。
【0098】
巻掛誘導部52Aは、ガイドレール26の方(図9に示される左方)を向く側面52Aaを有し、この側面52Aaとガイドレール26との間に空間部60Aを形成している。空間部60Aは、巻掛誘導部52Aよりも軸方向第1領域Cに形成されている。上記の「側面52Aa」も、本発明の「側部」に相当する。
【0099】
連結固定部54Aは、巻掛誘導部52Aから左方向に向けて伸びる棒状部材であり、左側端部においてガイドレール26に支持されている。連結固定部54Aは、巻掛誘導部52Aとガイドレール26とを連結する機能と、ガイドレール26に支持される機能とを有する。連結固定部54Aは、軸方向において、周方向第2領域β(図4(B)参照)に配置されている。このようにすることで、連結固定部54Aが複数の糸Yと接触することを防止できる。
【0100】
カバー部材50Aを図11に示される構成にした場合であっても、巻掛誘導部52Aに沿わせてサクションガンを移動させることにより、サクションガンが第1ゴデットローラ10に接触することなく、空間部60Aから複数の糸を第1ゴデットローラ10に巻き掛けることができる。
【0101】
なお、カバー部材50Aは、巻掛誘導部52Aとガイドレール26とを連結する機能と、ガイドレール26に支持される機能との両方を有する連結固定部54Aを有するが、これに代えて、巻掛誘導部52Aとガイドレール26とを連結する機能を有する連結部と、ガイドレール26に支持される機能を有する特定固定部とを有するようにしてもよい。この場合、連結部は、少なくとも軸方向第1領域Cにおいて周方向第2領域βに配置されていれば、複数の糸Yと接触することを防止できる。すなわち、連結部は、軸方向第2領域L及び軸方向第3領域Rでは、周方向第1領域α(いずれも図4参照)に配置されていてもよい。また、特定固定部は、周方向第1領域α及び周方向第2領域βのいずれに配置されていてもよい。
【0102】
同様に、カバー部材70Aは、第2ゴデットローラ12のローラ径よりも径が大きいリング状の巻掛誘導部72Aと、連結固定部74Aとを有する。
【0103】
巻掛誘導部72Aは、ガイドレール26の方(図9に示される左方)を向く側面72Aaを有し、この側面72Aaとガイドレール26との間に空間部76Aを形成している。空間部76Aは、巻掛誘導部72Aよりも軸方向第1領域Cに形成されている。上記の「側面72Aa」も、本発明の「側部」に相当する。
【0104】
連結固定部74Aは、巻掛誘導部72Aから左方向に向けて伸びる棒状部材であり、左側端部においてガイドレール26に支持されている。連結固定部74Aは、巻掛誘導部72Aとガイドレール26とを連結する機能と、ガイドレール26に支持される機能とを有する。連結固定部74Aは、軸方向において、周方向第2領域β(図4(C)参照)に配置されている。このようにすることで、連結固定部54Aが複数の糸Yと接触することを防止できる。
【0105】
カバー部材70Aを図11に示される構成にした場合であっても、巻掛誘導部72Aに沿わせてサクションガンを移動させることにより、サクションガンが第2ゴデットローラ12に接触することなく、空間部76Aから複数の糸を第2ゴデットローラ12に巻き掛けることができる。
【0106】
カバー部材70Aについても、カバー部材50Aと同様に、巻掛誘導部72Aとガイドレール26とを連結する機能と、ガイドレール26に支持される機能との両方を有する連結固定部74Aを有するが、これに代えて、巻掛誘導部72Aとガイドレール26とを連結する機能を有する連結部と、ガイドレール26に支持される機能を有する特定固定部とを有するようにしてもよい。この場合、連結部は、少なくとも軸方向第1領域Cにおいて周方向第2領域βに配置されていれば、複数の糸Yと接触することを防止できる。すなわち、連結部は、軸方向第2領域L及び軸方向第3領域Rでは、周方向第1領域α(いずれも図4参照)に配置されていてもよい。また、特定固定部は、周方向第1領域α及び周方向第2領域βのいずれに配置されていてもよい。
【0107】
このように、第1ゴデットローラ10の径方向外側に、カバー部材50に代えてカバー部材50Aを設けた場合であっても、カバー部材50を設けた場合と同様に、第1ゴデットローラ10へのオペレータの接触を防止でき、第1ゴデットローラ10への糸の巻き掛けを補助し、巻き掛け時の安全性を向上することができる。また、巻掛誘導部52Aの外周部に当接させつつ周方向に沿ってサクションガン80を移動させるだけの簡単な操作で第1ゴデットローラ10への巻き掛けを行うことができ、第1ゴデットローラ10を傷付けてしまうことも防止できる。
【0108】
第2ゴデットローラ12についても同様に、第2ゴデットローラ12の径方向外側に、カバー部材70に代えてカバー部材70Aを設けた場合であっても、カバー部材70を設けた場合と同様に、第2ゴデットローラ12へのオペレータの接触を防止でき、第2ゴデットローラ12への糸の巻き掛けを補助し、巻き掛け時の安全性を向上することができる。また、巻掛誘導部72Aの外周部に当接させつつ周方向に沿ってサクションガン80を移動させるだけの簡単な操作で第2ゴデットローラ12への巻き掛けを行うことができ、第2ゴデットローラ12を傷付けてしまうことも防止できる。
【0109】
なお、カバー部材50Aは、リング状の巻掛誘導部52Aを有する。すなわち、カバー部材50Aは、周方向の全領域において巻掛誘導部52Aを有するが、これに限られない。巻掛誘導部は、例えばリング状の一部が切り欠かれたものであってもよい。巻掛誘導部は、周方向のうち少なくとも周方向第1領域αの部位が軸方向第3領域R(図4参照)に設けられていれば、サクションガン80(図7図8参照)がゴデットローラに接触しないように複数の糸をゴデットローラに巻き掛けることができる。
【0110】
同様に、カバー部材70Aは、リング状の巻掛誘導部72Aを有する。すなわち、カバー部材70Aは、周方向の全領域において巻掛誘導部72Aを有するが、これに限られない。巻掛誘導部は、例えばリング状の一部が切り欠かれたものであってもよい。巻掛誘導部は、周方向のうち少なくとも周方向第1領域αの部位が軸方向第3領域R(図4参照)に設けられていれば、サクションガン80(図7図8参照)がゴデットローラに接触しないように複数の糸をゴデットローラに巻き掛けることができる。
【0111】
すなわち、巻掛誘導部52A及び巻掛誘導部72Aは、いずれも、少なくともサクションガン80(図7図8参照)を用いてゴデットローラ10,12に糸Yを巻き掛けるために必要な範囲にあればよい。
【0112】
また、巻掛誘導部52A及び巻掛誘導部72Aは、いずれも、巻掛誘導部52及び巻掛誘導部72と同様に、例えば図11に示される右方向から見たときの形状が真円の円弧状であることが好ましい。ただし、これに限定されず、巻掛誘導部52A及び巻掛誘導部72Aは、例えば図11に示される右方向から見たときに少なくとも角部を有していなければよく、例えば楕円の円弧状であってもよい。
【0113】
また、図11に示される変形例では、カバー部材50及びカバー部材70の両方が、それぞれ、カバー部材50A及びカバー部材70Aに変更されている。ただし、これに限定されず、カバー部材50及びカバー部材70のうちいずれか一方のみが、カバー部材50A又はカバー部材70Aに変更された態様であってもよい。
【0114】
また、上述の巻掛誘導部(より詳しくは巻掛側延在面53)の側面53a、固定部54(より詳しくは固定側延在面58)の側面58a、巻掛誘導部72の側面72a、固定部74の側面74a、巻掛誘導部52Aの側面52Aa、巻掛誘導部72Aの側面72Aaは、いずれも面であることに限定されず、ゴデットローラ10,12に糸を巻き掛けることができる間隙や空間部を形成する側部であればよい。
【0115】
なお、上述の本実施形態では、紡糸延伸装置6を備える紡糸引取装置1について説明したが、紡糸引取装置1が紡糸延伸装置6を備えることは必須でない。すなわち、紡糸引取装置1で生成される複数の糸Yは、延伸糸(FDY:Fully Drawn Yarn)に限定されず、部分延伸糸(POY:Partially Oriented Yarn)であってもよいし、FDYとPOYとを混繊させた混繊糸(BSY:Bi-Shrinkage Yarn)であってもよい。上述の変形例についても同様である。
【0116】
今回開示された本実施形態及び変形例は全ての点で例示であり、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の基本的な範囲は、上記の本実施形態または変形例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
1 紡糸引取装置
2 紡糸装置
10 第1ゴデットローラ
12 第2ゴデットローラ
26 ガイドレール
50,50A カバー部材
52,52A 巻掛誘導部
53 巻掛側延在面
54,54A 固定部
55 連結部
56 特定固定部
58 固定側延在面
60 間隙
62 第1間隙
64 第2間隙
66 第3間隙
70,70A カバー部材
80 サクションガン
Y 糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11