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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157514
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 8/04 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
B65D8/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001390
(22)【出願日】2024-01-09
(31)【優先権主張番号】P 2023071770
(32)【優先日】2023-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502100482
【氏名又は名称】清水金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】假屋 房亮
(72)【発明者】
【氏名】椎森 芳恵
(72)【発明者】
【氏名】金子 真次郎
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 敦史
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊一
【テーマコード(参考)】
3E061
【Fターム(参考)】
3E061AA26
3E061AB05
3E061AB08
3E061AD04
3E061BB18
3E061DB03
3E061DB04
(57)【要約】
【課題】缶胴部の剛性を安価に高め得る構造を有する缶について提供する。
【解決手段】缶胴の軸方向一端側に開口部を有し、かつ前記軸方向他端側に底蓋を有する缶であって、前記缶胴の開口部を区画する周縁に沿って、外巻のカール部を備え、前記カール部は、外巻部分に、前記周縁に隣接する缶胴の外側面と並行に缶胴周方向へ延び、かつ前記缶胴の軸方向断面における形状が直線状の外側壁面を有し、さらに、前記缶胴の側面の前記底蓋に隣接する部分が前記底蓋に向かって縮径する、くびれ部を備える、缶とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴の軸方向一端側に開口部を有し、かつ前記軸方向他端側に底蓋を有する缶であって、
前記缶胴の開口部を区画する周縁に沿って、外巻のカール部を備え、
前記カール部は、外巻部分に、前記周縁に隣接する缶胴の外側面と並行に缶胴周方向へ延び、かつ前記缶胴の軸方向断面における形状が直線状の外側壁面を有し、
さらに、前記缶胴の側面の前記底蓋に隣接する部分が前記底蓋に向かって縮径する、くびれ部を備える、缶。
【請求項2】
前記くびれ部は、前記缶胴の側面から前記底蓋に向かう傾斜面を有し、該傾斜面の前記缶胴の軸に対する角度が10°~40°である、請求項1に記載の缶。
【請求項3】
前記缶胴の側面は、前記開口部から前記底蓋に向かって縮径する傾斜を有し、前記側面の前記缶胴の軸に対する傾斜角度が1°~10°である、請求項1または2に記載の缶。
【請求項4】
前記缶胴の側面に、前記開口部から前記底蓋に向かって延びる平面部を有する、請求項1または2に記載の缶。
【請求項5】
前記平面部の複数を、前記缶胴の周方向に間隔を置いて配置した、請求項4に記載の缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶胴の軸方向一端側に開口部および同他端側に底蓋を有する缶、特に缶胴径方向の剛性の高い缶に関する。本発明の缶は、例えばコーヒー等の清涼飲料や酒類等を飲用する缶に適用できる。
【背景技術】
【0002】
飲食物提供店やコンビニエンスストアなどで提供される飲料は、紙製やプラスチック製のカップ容器に入れられる。紙製やプラスチック製のカップは、衛生面や洗浄の手間を省く観点から、飲用後に捨てられることが多い。かような使い捨て容器は、一般的に廃棄物として焼却されるために二酸化炭素排出量の増加要因となること、ならびに適切に廃棄されない場合、河川や海洋などの自然環境に流出し、深刻な環境汚染の原因となること、が地球環境保護の観点から、問題視されている。
【0003】
この問題の解決策としては、カップ使用後の金属資源としてリサイクル可能な金属製のカップ容器が利活用されることがある。しかし、金属製のカップ容器は、紙製やプラスチック製に比べると柔軟性に欠けるため、例えば、容器運搬時や飲用時に缶胴部の径方向に強い力が加わると、カップの胴形状が円形から楕円形に変形する結果、内容物が上手く飲めなくなることが問題であった。
【0004】
ここに、特許文献1では、アルミニウム合金等から金属製カップについて外周面にしわやクラックが生じにくく、滑らかなテーパ状の胴部を有する金属製カップの製造方法が開示されている
【0005】
また、特許文献2では、同じく金属製カップについて、外周面にしわやクラックが生じにくく、滑らかなテーパ状の胴部を有し、スタック可能で、開口端部にカール部を有する金属製カップの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-120828号公報
【特許文献2】国際公開第2022/168941号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、胴部がテーパ状であるため、スタック性は良好であるが、スタック後の容器運搬時やカップを用いた飲用時に胴部径方向に強い力が加わると、カップの形状が円形から楕円形に変形する課題がある。さらに、カール部の断面形状は円形であるため、カップを並べて運搬した際に隣接するカップのカール部が接触することでカール部の最外周面に疵が入りやすいという課題がある。
【0008】
特許文献2の技術では、特許文献1と同様に胴部径方向に強い力が加わると、カップ形状が楕円状に変形する課題やカール部最外周面に疵が入りやすい課題は解消されない。
【0009】
本発明は、従来の金属製カップ容器を更に技術的に改良を進めたものであり、缶胴部の剛性を安価に高め得る構造を有する缶について提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は、次の通りである。
1.缶胴の軸方向一端側に開口部を有し、かつ前記軸方向他端側に底蓋を有する缶であって、
前記缶胴の開口部を区画する周縁に沿って、外巻のカール部を備え、
前記カール部は、外巻部分に、前記周縁に隣接する缶胴の外側面と並行に缶胴周方向へ延び、かつ前記缶胴の軸方向断面における形状が直線状の外側壁面を有し、
さらに、前記缶胴の側面の前記底蓋に隣接する部分が前記底蓋に向かって縮径する、くびれ部を備える、缶。
【0011】
2.前記くびれ部は、前記缶胴の側面から前記底蓋に向かう傾斜面を有し、該傾斜面の前記缶胴の軸に対する角度が10°~40°である、前記1に記載の缶。
【0012】
3.前記缶胴の側面は、前記開口部から前記底蓋に向かって縮径する傾斜を有し、前記側面の前記缶胴の軸に対する傾斜角度が1°~10°である、前記1または2に記載の缶。
【0013】
4.前記缶胴の側面に、前記開口部から前記底蓋に向かって延びる平面部を有する、前記1、2または3に記載の缶。
【0014】
5.前記平面部の複数を、前記缶胴の周方向に間隔を置いて配置した、前記4に記載の缶。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる缶によれば、安価な手法によって缶胴部の径方向剛性を高めることができる。従って、缶の運搬時に外力によって缶径方向に大きく変形することを抑制できる。また、カール部の最外周部(外側壁面)は断面形状が直線状の外側壁面であるため、缶を並べて運搬する際に隣接する缶が接触してもカール部の最外周部に疵が入りにくく、缶を使用する際に美麗な状態で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の缶の一実施形態を示す正面図である。
図2】本発明の缶の一実施形態を示す斜視図である。
図3】本発明の缶の一実施形態におけるカール部を拡大して示す斜視図である。
図4】本発明の缶の一実施形態におけるくびれ部を拡大して示す斜視図である。
図5】本発明の缶の別の実施形態を示す正面図及びA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照して説明する。すなわち、図1は本発明の缶の一実施形態を示す正面図および図2は斜視図であり、図3および4は缶の要部についての部分拡大図である。
図1および図2に示す缶は、円筒状に成形された缶胴1の軸方向一端側に開口部2を有し、さらに同軸方向他端側に底蓋3を有する。さらに、缶胴1の開口部2を区画する周縁に沿って、外巻きのカール部4を備える。一方、缶胴1の底蓋3側には、該底蓋3に隣接する側面部分が該底蓋3に向かって縮径する、くびれ部5を有する。
【0018】
前記カール部4は、図3に缶胴1の軸方向断面におけるカール部4を拡大して示すように、缶胴1の開口部2側の端部を4回の折り曲げを介する、外巻き加工を施して成る。すなわち、カール部4は、缶胴1の径方向に延びるカール上部パネル部41と、このカール上部パネル部41の周縁部から、カール外側ウォールラジアス部42を介して缶胴1の軸方向の底蓋3側に延びるカール外側ウォール部43と、カール下側パネルラジアス部44を介して缶胴1の径方向に延びるカール下部パネル部45と、を連ねてなる。
【0019】
特に、カール外側ウォール部43は、缶胴1の軸方向断面における形状が直線状である外側壁面であることが肝要である。すなわち、従前のカール部は、胴1の軸方向断面における形状が円形であったのに対して、本発明に従うカール部4は同断面形状が矩形である。従って、カール部4の最外周部となる、カール外側ウォール部43は、外輪郭が直線状になる。
【0020】
ここで、缶を並べて運搬する際に隣接する缶同士の接触箇所は、缶の最外周部のカール外側ウォール部43である。このカール外側ウォール部43は、上記の通り、外輪郭が直線状であるため、カール外側ウォール部43同士は線接触することになり、接触によるカール部の傷付きが十分に抑制される。これに対して、従前の缶のカール部は、上記の通り断面形状が円形であるため、上記の缶運搬時の隣接缶のカール部同士は、点接触することになる。すると、缶の運搬時に缶のカール部同士が点接触と非接触を繰り返されたり接触したまま接触点が動いたりすることになって、点接触する部位に傷付きが発生することになる。
【0021】
本発明の缶では、カール外側ウォール部43の外輪郭が直線状であることが肝要であるが、前記のカール上部パネル部41、カール外側ウォールラジアス部42、カール下側ウォールラジアス部44およびカール下部パネル部45は、適当な曲率を有する湾曲状に構成されていてもよい。
【0022】
次に、くびれ部5は、缶胴1の底蓋3に隣接する側面部分が該底蓋3に向かって縮径した凹みであり、缶胴1の周方向に連続している。このくびれ部5の形状効果は、缶運搬時や飲用時に、缶胴部の径方向に強い力が加わって缶の形状が円筒から楕円筒に変形することを抑制するのに寄与する。
【0023】
ここで、図4に底蓋3およびその隣接域を拡大して示すように、くびれ部5は、缶胴1の側面から底蓋3に向かって徐々に縮径する傾斜面50からなることが好ましい。さらに、該傾斜面50の缶胴1の軸(図中に点線で示す)に対する角度θaが10°~40°であることが好ましい、すなわち、角度θaが10°以上であれば、缶胴1の剛性向上の効果がより大きくなる。一方、角度θaが40°以下であれば、θaが40°超である場合に比し開口部の径を小さくすることが可能であり、缶運搬時の運搬効率を高くすることができる。より好ましくは、角度θaは12°~30°とする。
【0024】
なお、底蓋3の底部(つまり缶の底面)からくびれ部5の傾斜面50の缶胴1の側面側の始点までの軸方向距離a(図4参照)をくびれ部高さaとしたとき、このくびれ部高さaは特に制限する必要はない。例えば、くびれ部高さaが、缶高さ(缶底面から開口端までの軸方向長さ)の10%以下であれば、缶胴1の径方向に強い力が付加された場合でも缶径方向の変形を抑えるのに有利である。従って、くびれ部高さaは、缶高さの10%以下とすることが好ましい。また、くびれ部高さaは、缶高さの2.0%以上であれば剛性向上効果がより大きくなるため、くびれ部高さaは缶高さの2.0%以上とすることが好ましい。
【0025】
さらに、図4に示すように、缶胴1の側面は、開口部2から底蓋3に向かって縮径する傾斜を有することが好ましい。特に、缶胴1の側面が缶胴の軸(図中に点線で示す)に対する角度θbが1°~10°であることが好ましい。すなわち、角度θbが1°以上であれば、上記の缶胴1の剛性向上の効果がより大きくなる。一方、角度θbが10°以下であれば、側面傾斜が10°超である場合に比し開口部2の径を小さくすることが可能であり、缶運搬時の運搬効率を高くすることができる。より好ましい角度θbは、1.1°~7.5°である。なお、缶胴1の側面の傾斜は、該側面を底蓋側に延長した仮想面に対して底蓋3が缶胴1の径方向内側に位置する程度であることが好ましい。
【0026】
缶胴1および底蓋3に用いる金属板の厚みは、特に限定する必要はなく、缶の用途などに応じて決定すればよい。例えば、上述の飲用缶であれば、金属板の厚みは0.050mm以上0.40mm以下である。
【0027】
また、他の実施形態について、図5を参照して説明する。
この実施形態では、図5(a)に示すように、缶胴1の側面に、開口部2から底蓋3に向かって延びる平面部6を有するところに特徴がある。その他の構成は、上記した実施形態と同様であり同じ符号を付して説明を省略する。この平面部6は、図5(b)に示すように、缶胴1の周方向に間隔を置いて複数を設けることが好ましい。図示例では、缶胴1の周方向に等間隔で4の平面部6を設けてある。ここで、複数の円筒形の缶を積み重ねて収容する場合に、複数の缶が同じ円筒形であることから、隙間なく積み重なることになる。積層した缶の相互に隙間がないと、積層された缶群から缶を抜くことが困難になることが多い。この積み重ねて缶を収容するとき、積層上下の缶の相互間において上記した平面部6を重ならない向きに積み重ねれば、積層上下の缶の相互間において缶の周方向に隙間が点在する積層形態が実現する。すると、積層された缶群から缶を抜く際に、これら隙間を介して空気が流通する結果、缶の引き抜きを容易にすることが可能になる。
【0028】
本発明の缶における缶胴1および底蓋3は金属板を素材とする。この金属板としては、一般に鋼板またはアルミ合金板が用いられるが、機械特性や板厚の低減化(素材コスト)の観点からは、特に鋼板を用いることが好ましい。
【0029】
また、金属板には、耐食性などの観点から必要に応じて各種表面処理(金属めっき、化成処理、塗装やフィルムラミネートなどの有機樹脂被覆、およびそれらの組合せ)が施されていてもよい。金属板に対するこれら表面処理は、剛性には影響を及ぼさないため、適宜任意の表面処理を施すことができる。一方、金属板の表面特性は表面の潤滑性に影響を及ぼす。この潤滑性は、缶の加工性に影響を及ぼすため、加工の観点からは表面処理が施されていることが好ましい。種々の表面処理の中では、耐食性、内容物の保存性(フレーバー維持など)、環境ホルモン対策、潤滑性などの観点から、フィルムラミネート処理をすることが望ましい。
【0030】
本発明の缶における底蓋3は、上記の金属板を素材として金型を用いてプレス加工することにより製造される。プレス加工の具体的工程は任意である。また必要に応じて底蓋のパネル部(底面)に各種形状のエンボス加工、ビード加工、ディンプル加工等を施すことができる。
【0031】
本発明の缶における缶胴1は、上記の金属板を素材とする、絞り加工を経て成形されたもの、例えば、DI缶、DRD缶、絞りしごき缶、薄肉化絞り・しごき缶等の所謂絞り缶や、金属板を各種方法で接合したもの、例えば、溶接缶、接着缶、半田缶等が適合する。
【0032】
底蓋3の缶胴1への固定は、通常は巻締め加工により行われるが、とくに制限しない。缶胴1は、例えば、缶胴内部に金型を挿入して缶径方向に拡げる工程で角度θbを付与する工程を有することが好ましいが、とくに制限しない。また、くびれ部5は、缶径方向に拡げる工程を行ったあとに、例えば、缶径を縮める方向に縮径を行なう工程で角度θaを付与する工程を有することが好ましいが、とくに制限しない。例えば、缶胴1の側方からロール等を缶胴1に押し当てて、上記した斜面50に従う傾斜形状をくびれ部5に付与してもよい。
【0033】
本発明の缶におけるカール部は、例えば、缶胴1の端部を金型に押し当ててカール部断面を円形に加工し、その後に例えば、カール部の側方からロール等をカール部に押し当てて断面直線状の外面壁面をカール部に付与することが好ましいが、とくに制限しない。
【実施例0034】
次に、本発明の実施例について説明する。以下の実施例は、本発明の効果を例示するものであり、本発明の構成を下記のものに特定するものでない。
【0035】
図1および図2に示したところに従う缶を溶接にて作製し、作製した溶接缶を缶の剛性評価試験に供した。具体的には、ロールフォーム加工後に溶接して製作した缶胴1に対して、缶胴1内部に金型を挿入して缶径方向に拡げる工程によって、表1に示す角度θbを付与した。その後、回転させた缶胴1の側方からロールを缶胴1に押し当てて、表1に示す角度θaのくびれ部5を付与した。さらに、くびれ部5と反対の缶胴1の端部を金型に押し当ててカール部断面を円形に加工した。ここで、カール部の最外周部(外側壁面)を直線状にする場合は、さらにカール部の側方からロールをカール部に押し当てて直線状の断面形状を付与した。また、底蓋3は、プレス加工で製作した。
【0036】
次に、上述の方法で製作した缶胴1と底蓋3とを巻締めて缶とし、当該缶を剛性試験に供した。なお、缶胴1と底蓋3には、何れも板厚0.22mmのぶりきを用いた。溶接前のぶりき両面には潤滑性や耐食性の目的で樹脂系の塗装を施した。
【0037】
缶の剛性は、断面V字型のブロックの溝に横向きに缶を静置して、缶高さ方向中央部を圧子で押込み、ロードセルで検知した負荷荷重が60Nでの圧子移動量(mm)を測定して評価した。圧子移動量が2.0mm以下を剛性に優れる缶とした。
【0038】
さらに、カール部断面形状が円状の缶(比較例)または直線状の缶(発明例)を各々16缶用意して、各々について、段ボールの中に縦4缶かつ横4缶に隙間なく配置した。前記の段ボールを自動車の荷室に積込み、自動車を走行させた後、該缶のカール部の最外周部の疵の有無を目視で観察した。
【0039】
そして、60Nでの圧子移動量が2.0mm以下で、かつカール部最外周部の疵が無い缶を優良(◎)、圧子移動量が2.0mm超2.5mm以下で、かつカール部最外周部の疵が無い缶を良(○)、圧子移動量によらず、カール部最外周部の疵が有る缶を劣位(×)として総合評価した。
【0040】
表1に評価結果を示すように、カール外側ウォール部43の缶胴1の軸方向断面における形状が直線状である外側壁面を有する発明例1~4は、缶の運搬時のカール部の最外周部に疵が付かないことがわかる。さらに、くびれ部5の傾斜面50の缶胴1の軸に対する角度θaが10°以上であり、缶胴1の側面の缶胴の軸に対する角度θbが1°以上である発明例1と発明例2は、缶胴に所定の荷重を負荷したときの圧子移動量が小さいことが分かる。つまり、発明例1と発明例2は、缶の運搬時に外力によって缶径方向に大きく変形することを抑制でき、さらには缶を運搬する際にも疵が入りにくく、缶を使用する際に美麗な状態で利活用することができる。一方、発明例3および4は、それぞれ角度θaが10°未満、角度θbが1°未満のため、缶胴部の缶径方向の変形がやや大きくなったが、運搬時の疵付きは防止されていた。
【0041】
比較例1は、カール部の最外周の外側壁面の断面形状が本発明を満たさないため、カール部の最外周部に疵が入り、缶を使用する際に美麗な状態で使用することはできないことを確認した。
【0042】
【表1】
【符号の説明】
【0043】
1 缶胴
2 開口部
3 底蓋
4 カール部
5 くびれ部
6 平面部
41 カール上部パネル部
42 カール外側ウォールラジアス部
43 カール外側ウォール部
44 カール下部パネルラジアス部
45 カール下部パネル部
図1
図2
図3
図4
図5