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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157517
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】導電性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241030BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20241030BHJP
   C08K 5/092 20060101ALI20241030BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20241030BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20241030BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241030BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241030BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20241030BHJP
   H05K 3/12 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/08
C08K5/092
C09J9/02
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/06
H01B1/22 D
H01B1/22 A
H05K3/12 610B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017921
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023071531
(32)【優先日】2023-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 洸
(72)【発明者】
【氏名】坂井 修大
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
5E343
5G301
【Fターム(参考)】
4J002CD011
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD181
4J002CD201
4J002DA116
4J002EF067
4J002EV348
4J002FD116
4J002FD147
4J002FD148
4J002GJ01
4J002GQ02
4J040EC061
4J040EC071
4J040HA066
4J040HB15
4J040HB26
4J040HD03
4J040JB10
4J040KA03
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA32
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA09
4J040NA19
5E343AA02
5E343BB25
5E343BB72
5E343DD03
5G301DA13
5G301DA42
5G301DA57
5G301DD01
5G301DD02
5G301DD03
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】錫粉末を含有する導電性樹脂組成物であって、室温(25℃)保存安定性及び冷蔵(4℃)保存安定性に優れ、体積抵抗率が低く導電性に優れる導電膜を形成することができ、コスト的に有利である導電性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(a)錫粉末、(b)エポキシ樹脂、及び(c)ジカルボン酸化合物を含み、前記(b)エポキシ樹脂は、エポキシ当量が400g/eq以上で25℃で固体状もしくは半固体状であるエポキシ樹脂を含むものであり、前記(c)ジカルボン酸化合物は、炭素数4以上9以下のジカルボン酸化合物を含むものである、導電性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)錫粉末、
(b)エポキシ樹脂、及び
(c)ジカルボン酸化合物を含み、
前記(b)エポキシ樹脂は、エポキシ当量が400g/eq以上で25℃で固体状もしくは半固体状であるエポキシ樹脂を含むものであり、
前記(c)ジカルボン酸化合物は、炭素数4以上9以下のジカルボン酸化合物を含むものである、
導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a)錫粉末の含有量は、導電性樹脂組成物中の溶媒以外の成分全量を100質量%として、92.01質量%以上99.50質量%以下である、請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(c)ジカルボン酸化合物は、さらに、炭素数10以上のジカルボン酸化合物を含む、請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、(d)チオール系化合物を含む、請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物から形成された、体積抵抗率が4.0×10-4Ω・cm未満である導電膜。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物を含む、導電性材料。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物を含む、導電性接着剤。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物を含む、回路接続材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物に関する。また、本発明は、導電膜、基材にスクリーン印刷法等で印刷して回路等を形成する際に用いられる導電性材料、導電性接着剤、及び電子部品を回路基板等に導電接続する際に用いられる回路接続材料に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性樹脂組成物としては、多種多様な組成のものが知られており、導電性ペースト、導電膜、導電性材料、導電性塗料、回路接続材料、導電性接着剤等として、電子回路の形成、電子部品の接着等の種々の用途に使用されている。
例えば、導電回路や電極等の導電構造を形成するために、体積抵抗率が低く導電性に優れた導電膜を形成できる導電性樹脂組成物が求められている。
例えば、各種の印刷方法に適用可能であり、相互接続及びトレース、電極などの導電構造を有するフレキシブルプラスチック基材等の製造に有用な導電性材料が求められている。
例えば、コンピュータや携帯電話などの電子機器において、LED素子、半導体素子、コンデンサなど各種の電子部品が同一回路基板上に高密度実装し高集積化するための回路接続材料が求められている。
【0003】
導電性樹脂組成物としては、各種の樹脂と各種の導電性粒子を含む導電性樹脂組成物(導電性ペースト)が知られている。しかし、これまでの導電性樹脂組成物は、体積抵抗率が十分に低くならず、優れた導電性(低い体積抵抗率)が求められる用途に供する場合には、導電性粒子として銀粒子を用いる必要があり、コスト的に問題があった。また、導電性樹脂組成物から形成される導電膜の体積抵抗率を低くするために、導電性粒子を大量に含有させた場合には、各種基材に対する膜の接着性(接合強度)が低下し、満足できるものではなかった。
【0004】
特許文献1には、導電性粉末が少なくとも銀を用いた銀系粉末であり、樹脂成分が熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくとも一方であり、さらに、特定の分子量及び構造を有するエステル系化合物又はその塩、あるいは、エーテル/アミン系化合物を含有する、導電性ペースト組成物が開示されている。
特許文献2には、錫粉末と、樹脂と、有機酸化合物と、を含む導電性樹脂組成物が開示されている。この導電性樹脂組成物は、導電膜を形成した際の体積抵抗率が低く、良好な導電性を示し、銀ペーストの代替として使用可能であり、導電性材料、導電性接着剤や回路接続材料等として有用な導電性樹脂組成物であるとされている。
特許文献3には、導電性金属粉末を85重量%以上92重量%以下含有し、残部がバインダーからなる導電性接着剤であって、バインダーは、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、有機酸、及び100nm以上300nm以下の粒径を有するゴム粒子を含み、ゴム粒子の割合が、バインダー100重量%に対して8重量%以上25重量%以下である導電性接着剤が開示されている。この導電性接着剤は、導電性金属粉末の融点より低い温度で金属同士を接着させることができ、にじみが抑えられた導電性接着剤であるとされている。
特許文献4には、有機系樹脂と導電性フィラーからなる導電性接着剤において、錫及び/又は錫合金20~100wt%未満よりなる導電性主フィラーと、銀及び/又は銀合金、又は金及び/又は金合金の粉体、あるいはそれらの金属をメッキした粉体フィラーよりなるその他の導電性フィラーと、バインダーと、アジピン酸等の有機酸又はその誘導体を含む導電性接着剤が開示されている。この導電性接着剤は、はんだ代替用として、安価で且つ導電性、リペア性に優れた導電性接着剤であるとされている。
特許文献5には、Sn含有の導電性金属粉末、熱硬化性樹脂、酸無水物系硬化剤及び有機酸を含み、加熱中に導電性金属粉末と有機酸が反応して、生成される有機酸金属塩を硬化促進剤として使用する導電性接着剤が開示されている。この導電性接着剤は、熱硬化性樹脂を短時間で硬化させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-205245号公報
【特許文献2】特開2022-172874号公報
【特許文献3】特許第6428716号公報
【特許文献4】特開2000-309773号公報
【特許文献5】国際公開第2015/019666号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
銀粒子を含有する導電性樹脂組成物は、導電性に優れた導電膜を形成できるものの、銀粒子が非常に高価であることから、コスト的に不利であった。一方銀粒子以外の導電性粒子を含有する導電性樹脂組成物は、体積抵抗率が高い導電膜となり導電性が不十分になることがあった。また、体積抵抗率を低くするために導電性粒子を大量に含有させた場合には、各種基材に対する接着性が不十分になることがあった。
錫粉末を含有する導電性樹脂組成物は、特許文献2~5等により知られているが、室温下及び冷蔵下での保存安定性の点や、導電膜を形成した際の体積抵抗率の点で満足できるものではなく、優れた保存安定性及び優れた導電性の両者を兼ね備えるという高度な要望を満足する導電性樹脂組成物は知られていなかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題の1つは、錫粉末を含有する導電性樹脂組成物であって、室温(25℃)保存安定性及び冷蔵(4℃)保存安定性に優れ、体積抵抗率が低く導電性に優れる導電膜を形成することができ、コスト的に有利である導電性樹脂組成物を提供することである。
本発明が解決しようとする課題の1つは、錫粉末を含有する導電性樹脂組成物であって、室温(25℃)保存安定性及び冷蔵(4℃)保存安定性に優れ、体積抵抗率が低く導電性に優れる導電膜を形成することができ、チオール系エポキシ樹脂硬化剤、アミン系エポキシ樹脂硬化剤、酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤及びフェノール系エポキシ樹脂硬化剤を使用しなくても硬化性に優れ、コスト的に有利である導電性樹脂組成物を提供することである。
本発明が解決しようとする課題の1つは、前記導電性樹脂組成物から形成された体積抵抗率が低い導電膜、当該導電性樹脂組成物を含む導電性材料、当該導電性樹脂組成物を含む導電性接着剤、及び、当該導電性樹脂組成物を含む回路接続材料を、低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の組成の導電性樹脂組成物とすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、以下に示すとおりである。
[項1]
(a)錫粉末、
(b)エポキシ樹脂、及び
(c)ジカルボン酸化合物を含み、
前記(b)エポキシ樹脂は、エポキシ当量が400g/eq以上で25℃で固体状もしくは半固体状であるエポキシ樹脂を含むものであり、
前記(c)ジカルボン酸化合物は、炭素数4以上9以下のジカルボン酸化合物を含むものである、
導電性樹脂組成物。
[項2]
前記(a)錫粉末の含有量は、導電性樹脂組成物中の溶媒以外の成分全量を100質量%として、92.01質量%以上99.50質量%以下である、項1に記載の導電性樹脂組成物。
[項3]
前記(c)ジカルボン酸化合物は、さらに、炭素数10以上のジカルボン酸化合物を含む、項1又は2に記載の導電性樹脂組成物。
[項4]
さらに、(d)チオール系化合物を含む、項1~3のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
[項5]
項1~4のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物から形成された、体積抵抗率が4.0×10-4Ω・cm未満である導電膜。
[項6]
項1~4のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を含む、導電性材料。
[項7]
項1~4のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を含む、導電性接着剤。
[項8]
項1~4のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を含む、回路接続材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、錫粉末を含有する導電性樹脂組成物であって、室温(25℃)保存安定性及び冷蔵(4℃)保存安定性に優れ、体積抵抗率が低く導電性に優れる導電膜を形成することができ、コスト的に有利である導電性樹脂組成物が提供される。
本発明により、錫粉末を含有する導電性樹脂組成物であって、室温(25℃)保存安定性及び冷蔵(4℃)保存安定性に優れ、体積抵抗率が低く導電性に優れる導電膜を形成することができ、チオール系エポキシ樹脂硬化剤、アミン系エポキシ樹脂硬化剤、酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤及びフェノール系エポキシ樹脂硬化剤を使用しなくても硬化性に優れ、コスト的に有利である導電性樹脂組成物が提供される。
本発明により、前記導電性樹脂組成物から形成された体積抵抗率が低い導電膜、当該導電性樹脂組成物を含む導電性材料、当該導電性樹脂組成物を含む導電性接着剤、及び、当該導電性樹脂組成物を含む回路接続材料を、低コストで提供することができる。
本発明の導電性樹脂組成物は、プリンテッドエレクトロニクス材料として有用であり、表示装置、車両関連部品、IoT、移動通信システム(Mobile Communication System)等の各種電子機器等の大量生産に際して極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、導電性樹脂組成物、導電膜、導電性材料、導電性接着剤、及び回路接続材料に係るものである。以下、これらについて詳細に説明する。
【0011】
[導電性樹脂組成物]
<(a)錫粉末>
本発明の導電性樹脂組成物に含まれる(a)錫粉末は、錫99.5質量%以上から構成されるものであって、錫以外の成分(例えば、不可避不純物)を含んでいてもよい粉末である。例えば、不可避不純物のみを含む錫粉末や錫以外の成分を0.5質量%以下含む錫粉末等が挙げられる。
(a)錫粉末における錫の含有率は、蛍光X線分析(XRF)装置等を用いることで容易に測定できる。
(a)錫粉末に含まれていてもよい錫以外の成分としては、例えば、Mn、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Ag、Cu、Ni、Au、B、C、N、O、Ge、Sb、In、As、Al、Fe等からなる群より選ばれる1種以上の他の原子が挙げられる。
他の原子の含有率は、好ましくは(a)錫粉末中0.3質量%未満、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0012】
(a)錫粉末の形状は、特に限定されない。例えば、鱗片状(フレーク状)、扁平状、真球状、略球状(例えば、縦横のアスペクト比が1.5以下)、ブロック状、板状、多角錐状、多面体状、棒状、繊維状、針状、不定形状等のものを、用途等に応じて用いることができる。本発明においては、体積抵抗率、分散性、取扱性等の観点から、鱗片状、真球状、略球状、扁平状のものが好ましい。
【0013】
(a)錫粉末が球状の場合、その体積平均粒子径(体積基準粒度分布における累積頻度%径の50%粒子径D50)は、特に制限されない。D50としては、例えば0.5μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは3.0μm以上であり、例えば300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。D50が0.5μm以上であると、(a)錫粉末の分散性及び取扱性が良好になる。D50が300μm以下であると、体積抵抗率を低くでき、分散性及び取扱性が良好になる。
D50の測定法は特に限定されないが、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定法が挙げられる。
【0014】
(a)錫粉末が扁平状又は鱗片状の場合、その平均直径、平均厚及びアスペクト比(平均直径/平均厚)は、特に限定されない。
平均直径は、例えば0.5μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上であり、例えば500.0μm以下、好ましくは300.0μm以下、より好ましくは150.0μm以下である。
平均厚は、例えば、0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、例えば50.0μm以下、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下である。
アスペクト比は、例えば、2以上、好ましくは10以上、より好ましくは50以上である。
平均直径や平均厚の測定法は特に限定されないが、例えば走査型電子顕微鏡による測定法が挙げられる。
【0015】
導電性樹脂組成物における、(a)錫粉末の含有量は、特に限定されない。導電性樹脂組成物中の溶媒以外の成分全量を100質量%として、例えば88.00質量%以上、好ましくは90.10質量%以上、より好ましくは92.01質量%以上であり、例えば99.50質量%以下、好ましくは99.00質量%以下、より好ましくは98.00質量%以下である。
導電性樹脂組成物中の溶媒以外の成分全量を100質量%として、(a)錫粉末の含有量が88.00質量%未満であると、導電性が低下し体積抵抗率が上昇するおそれがあり、99.50質量%を超えると、膜形成ができない、基材接着性が低い、硬化に時間がかかる、(a)錫粉末の分散性が低下し均一な組成物が形成できない、保存安定性が低下する等のおそれがある。
【0016】
<(b)エポキシ樹脂>
本発明の導電性樹脂組成物に含まれる(b)エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を2つ以上有し、エポキシ当量が400g/eq以上で25℃で固体状もしくは半固体状であるエポキシ樹脂を含むものであれば、特に限定されない。
本発明において、エポキシ当量が400g/eq以上で25℃で固体状であるエポキシ樹脂は、25℃において流動性を示さないものであり、融点又は軟化点が25℃以上のエポキシ樹脂である。融点又は軟化点の上限は特に限定されないが、例えば150℃以下であることが好ましい。なお、本発明において、軟化点とは、軟化点試験(環球式)法(測定条件:JIS-K7234:1986に準拠)により測定した値である。
本発明において、エポキシ当量が400g/eq以上で25℃で半固体状のエポキシ樹脂は、25℃におけるガードナー粘度標準液記号(測定条件:濃度60%、ブチルカルビトール溶媒、JIS K 5600)が、Z-Z2のエポキシ樹脂である。
【0017】
エポキシ当量が400g/eq以上で25℃で固体状もしくは半固体状であるエポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;アルキレンオキサイド変性ビスフェノール型樹脂;キレート変性エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;グリコール型エポキシ樹脂;ペンタエリスリトール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;イソシアネート基を有するウレタン結合含有化合物とヒドロキシ基含有エポキシ化合物とを反応させて得られる樹脂等のウレタン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂;キレート変性エポキシ樹脂;ダイマー酸変性エポキシ樹脂;ゴム変性エポキシ樹脂;ポリサルファイド変性エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;等が挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、例えばグリシジル基を1分子内に2つ以上含む化合物のうちの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物又はこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するポリジオール又はこれらの誘導体のエポキシ化物等の脂環族エポキシ樹脂;ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ポリブタジエンポリオール等の脂肪族ポリジオール又はこれらの誘導体のエポキシ化物等の脂肪族エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン骨格(トリスフェノールメタン骨格)を有するエポキシ樹脂;アミノフェノール型エポキシ樹脂;ポリエーテル変性エポキシ樹脂;多官能芳香族エポキシ樹脂;水素添加ビスフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
エポキシ当量が400g/eq以上で25℃で固体状もしくは半固体状であるエポキシ樹脂は、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
エポキシ当量が400g/eq以上で25℃で固体状もしくは半固体状であるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、
日鉄ケミカル&マテリアル社製のYD-011、YD-012、YD-013、YD-014、YD-017、YD-019、YD-901、YD-902、YD-903N、YD-904、YD-907、YD-7910、YDF-2001、YDF-2004;
三菱ケミカル社製のjER-4005P、jER-4007P、jER-4010P、jER-1010;
DIC社製のEPICLON 5500、EPICLON 5800、EPICLON 1050、EPICLON 1055、EPICLON 3050、EPICLON 4050、EPICLON 7050、EPICLON AM-030-P、EPICLON AM-040-P、EPICLON HM-091、EPICLON TSR-601;
日本化薬社製のLCE-2615;
等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0019】
本発明においては、(b)エポキシ樹脂として、(i)25℃で液体であるエポキシ樹脂、及び/又は、(ii)エポキシ当量が400g/eq未満で25℃で固体状もしくは半固体状であるエポキシ樹脂、を含有していてもよい。
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びポリブタジエンポリオールのエポキシ化物である構造を有するエポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂等が挙げられる。好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0020】
導電性樹脂組成物における、(b)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されない。導電性樹脂組成物中の溶媒以外の成分全量を100質量%として、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、例えば10.0質量%以下、好ましくは9.0質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下である。
導電性樹脂組成物中の溶媒以外の成分全量を100質量%として、(b)エポキシ樹脂の含有量が0.1質量%未満であると、膜形成ができない、硬化に時間がかかる、錫粉末の分散性が低下し均一な組成物が形成できない等のおそれがあり、含有量が10.0質量%を超えると、導電性が低下して体積抵抗率が上昇する等のおそれがある。
【0021】
(b)エポキシ樹脂中の、エポキシ当量が400g/eq以上で25℃で固体状もしくは半固体状であるエポキシ樹脂の含有量は、(b)エポキシ樹脂全量を100質量%として、例えば10質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、100質量%以下(エポキシ当量が400g/eq以上で25℃で固体状もしくは半固体状であるエポキシ樹脂のみを使用)とすることができる。
【0022】
<(c)ジカルボン酸化合物>
(c)ジカルボン酸化合物は、例えば、R-(COOH)(式中、Rは、水素、炭素数1~50の有機基である。また、Rは酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでもよい。)で表されるものである。本発明において、(c)ジカルボン酸化合物は、炭素数4以上9以下のジカルボン酸化合物を含むものである。
炭素数4以上9以下のジカルボン酸化合物としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、メサコン酸、2-ペンテン二酸、メチレンコハク酸、アリルマロン酸、ヘキサジエン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、o-フタル酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸、2,4-ジエチルグルタル酸、ジグリコール酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、チオジグリコール酸等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらのうち、炭素数4以上9以下の脂肪族ジカルボン酸化合物が好ましく、炭素数5以上9以下の脂肪族ジカルボン酸化合物がより好ましく、炭素数6以上8以下の脂肪族ジカルボン酸化合物がさらに好ましい。炭素数4以上9以下の脂肪族ジカルボン酸において、脂肪族基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0023】
本発明において、(c)ジカルボン酸化合物は、炭素数4以上9以下のジカルボン酸化合物以外のジカルボン酸(炭素数2以上3以下のジカルボン酸化合物、炭素数10以上のジカルボン酸化合物等)を含んでいてもよい。
炭素数2以上3以下のジカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
炭素数10以上のジカルボン酸化合物としては、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ノナデカン二酸、ドコサン二酸、エイコサジエン二酸、イソエイコサン二酸、イソドコサン二酸、イソドコサジエン二酸、ブチルオクタン二酸、2-メチルアゼライン酸、ジメチルメトキシカルボニルウンデカン二酸、ジメチルジメトキシカルボニルヘキサデカン二酸、トリメチルジメトキシカルボニルトリデカン二酸、ドデセニルコハク酸、ナフタレンジカルボン酸、直鎖又は分岐鎖ジカルボン酸(例えば、岡村製油社製、SL-12、SL-20、UL-20、MMA-10R、SB-12、IPU-22、IPS-22、SB-20、UB-20等)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0024】
(c)ジカルボン酸化合物として、炭素数4以上9以下のジカルボン酸化合物を含むジカルボン酸化合物を用いることで、錫粉末の分散性等を向上させることが可能となり、錫粉末の含有量をより多くすることが可能となり、導電性を高めることができる。
【0025】
導電性樹脂組成物における、(c)ジカルボン酸化合物の含有量は、特に限定されない。導電性樹脂組成物中の溶媒以外の成分全量を100質量%として、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、例えば4.0質量%以下、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。
導電性樹脂組成物中の溶媒以外の成分全量を100質量%として、(c)ジカルボン酸化合物の含有量が0.1質量%未満であると、膜形成ができない、硬化に時間がかかる、錫粉末の分散性が低下し均一な組成物が形成できない等のおそれがあり、含有量が4.0質量%を超えると、導電性が低下して体積抵抗率が上昇する、保存安定性が低下する等のおそれがある。
【0026】
(c)ジカルボン酸化合物中の、炭素数4以上9以下のジカルボン酸化合物の含有量は、(c)ジカルボン酸化合物全量を100質量%として、例えば10質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、100質量%以下(炭素数4以上9以下のジカルボン酸化合物のみを使用)とすることができる。
【0027】
<(d)チオール系化合物>
本発明の導電性樹脂組成物は、さらに(d)チオール系化合物を含んでいてもよい。(d)チオール系化合物は、導電性樹脂組成物中の(b)エポキシ樹脂の硬化剤として作用することができ、導電性樹脂組成物の硬化をより早く、より確実に進行させることが可能となる。
【0028】
(d)チオール系化合物としては、分子内にエポキシ基と反応し得るチオール基を1つ以上有する化合物の1種以上が挙げられる。好ましくは2つ以上有する化合物の1種以上である。(d)チオール系化合物としては、1分子中のチオール基数が2~6(2官能~6官能)であるものがより好ましく、3~6(3官能~6官能)であるものがさらに好ましい。
【0029】
(d)チオール系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(略称:TMTP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(略称:PEMP)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(略称:DPMP)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(略称:TEMPIC)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート(略称:TMPIC)、エチレングリコールビスチオグリコレート(略称:EGTG)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート(略称:TMTG)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(略称:PETG)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)(略称:TPMB)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)(略称:TEMB)、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトプロピル)グリコールウリル、4,4’-イソプロピリデンビス[(3-メルカプトプロポキシ)ベンゼン]、チオシアヌル酸(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール)、チオール基を有するポリサルファイドポリマ等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0030】
具体的には、例えば、SC有機化学社製チオール系化合物(TMMP-LV、PEMP-LV、DPMP、TEMPIC、PEMP等)、東レファインケミカル社製チオール系化合物(QE-340M、LP-3、LP-55、LP-31等)、四国化成工業社製チオール系化合物(TS-G、C3TS-G等)、レゾナック社製チオール系化合物(PE-1、BD-1、NR-1、TPMB、TEMB等)、淀化学社製チオール系化合物(OTG、EGTG、TMTG、PETG、3-MPA、TMTP、PETP等)、堺化学工業社製チオール系化合物(TEMP、PEMP、TEMPIC、DPMP等)が挙げられる。
【0031】
導電性樹脂組成物における、(d)チオール系化合物の含有量は、特に限定されない。本発明においては、(d)チオール系化合物を使用しなくても、導電性樹脂組成物を硬化させることが可能である。
(d)チオール系化合物を含有する場合、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、(d)チオール系化合物中のチオール基(-SH基)が、例えば0.05当量以上、好ましくは0.10当量以上、より好ましくは0.15当量以上であり、例えば4.00当量以下、好ましくは3.50当量以下、より好ましくは1.50当量以下となる量を含有させることが好ましい。(d)チオール系化合物の含有量が4.00当量を超える場合、過剰となる硬化剤未反応物の影響で塗膜の硬化不良が発生し、塗膜硬度が低下するおそれがある。
また、(d)チオール系化合物を含有する場合、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば1.0質量部以上、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上であり、例えば250質量部以下、好ましくは200質量部以下、より好ましくは180質量部以下とすることができる。エポキシ樹脂100質量部に対して(d)チオール系化合物の含有量が250質量部を超える場合、導電性樹脂組成物が固体とならなくなるおそれがある。
【0032】
<(e)溶媒>
本発明の導電性樹脂組成物は、さらに(e)溶媒を含んでいてもよい。これにより、導電性樹脂組成物の流動性を向上させ、作業性の向上に寄与することができる。また、導電性樹脂組成物と溶媒を混合することで、導電性樹脂ペースト、導電性材料、導電性接着剤や回路接続材料を構成することができる。
【0033】
溶媒としては、水及び各種有機溶媒からなる群より選ばれる1種以上から、任意のものを用いることができる。有機溶媒としては、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α-ターピネオール、β-ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはグリセリン等のアルコール系溶媒やアルコールエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、2-オクタノン、イソホロン(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン)もしくはジイソブチルケトン(2,6-ジメチル-4-ヘプタノン)等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ジアセトキシエタン等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2-ビス(2-ジエトキシ)エタンもしくは1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン等のエーテル系溶媒;酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;2-(2-メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、n-パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシンもしくは軽油等の炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素極性溶媒;シリコンオイル系溶媒等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
これらのうち、アルコール系溶媒、アルコールエーテル系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、アルコールエーテル系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒からなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、アルコールエーテル系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒からなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましい。
有機溶媒を用いる場合の使用量は、特に限定されず、導電性樹脂組成物の粘度が、基材上に適切に塗布、印刷等できる程度の粘度及び/又は多孔質体に適切に含浸し得る程度の粘度となるように適宜調整すればよい。
【0034】
<(f)その他の成分>
本発明の導電性樹脂組成物は、必要に応じて、前記(a)~(e)以外に、有機酸化合物、エポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂硬化促進剤、錫粉末以外の導電性粉末、接着性付与剤、粘弾性調整剤、湿潤分散剤、反応性希釈剤、エポキシ樹脂以外の樹脂、顔料、充填剤(フィラー)、酸化防止剤、腐食抑制剤、消泡剤、カップリング剤、沈降防止剤等、レベリング剤、重金属不活性化剤、ギャップ調整剤等からなる群より選ばれる1種以上の各種添加剤を「(f)その他の成分」として含有させることができる。
【0035】
(有機酸化合物)
有機酸化合物としては、ジカルボン酸化合物以外の有機酸化合物であって、例えば、R-X(式中、Rは、水素、炭素数1~50の有機基であり、Xは酸基であって複数のXは互いに異なっていてもよく、nは1以上の整数である。)で表される有機酸化合物の1種又は2種以上が挙げられる。
Xで表される酸基としては、例えば、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SOH)、リン酸基(-PO)等が挙げられる。
有機酸化合物としては、例えば、ジカルボン酸化合物以外の有機カルボン酸化合物、有機スルホン酸化合物、有機ホスホン酸化合物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。好ましくは、ジカルボン酸化合物以外の有機カルボン酸化合物である。
【0036】
{有機カルボン酸化合物}
有機カルボン酸化合物は、分子構造中にカルボキシル基(-COOH)を1つ又は3つ以上有する炭素数1~50の化合物であれば、特に限定されない。
有機カルボン酸化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクチル酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、乳酸、グルコン酸、クエン酸、アスコルビン酸、アビエチン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、トリメチロールプロパン酸、トリメチロールブタン酸、安息香酸、サリチル酸、ピルビン酸、パラメチル安息香酸、トルイル酸、4-エチル安息香酸、4-プロピル安息香酸、2-メチルプロパン酸、イソペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロピオル酸、クロトン酸、2-エチル-2-ブテン酸、ヘキサントリカルボン酸、シクロヘキシルカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、グルタル酸モノメチル、グリコール酸、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、チロシン、システイン、アスパラギン、セリン、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、アルギニン等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0037】
{有機スルホン酸化合物}
有機スルホン酸化合物は、分子構造内にスルホン酸基(-SOH)を1つ以上有する化合物であれば、特に限定されない。
例えば、ベンゼンスルホン酸、n-ブチルベンゼンスルホン酸、n-オクチルベンゼンスルホン酸、n-ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、2,5-ジメチルベンゼンスルホン酸、p-クロルベンゼンスルホン酸、2,5-ジクロロベンゼンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、o-クレゾ-ルスルホン酸、m-クレゾ-ルスルホン酸、p-クレゾ-ルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、スチレンスルホン酸、4,4-ビフェニルジスルホン酸、アントラキノン-2-スルホン酸、m-ベンゼンジスルホン酸、アニリン-2,4-ジスルホン酸、アントラキノン-1,5-ジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸化合物;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸、n-オクチルスルホン酸、ペンタデシルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、1,3-プロパンジスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、2-アミノエタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸化合物;シクロペンタンスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸、3-シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸脂環族スルホン酸化合物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
好ましくは、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及び(ポリ)スチレンスルホン酸等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0038】
{有機ホスホン酸化合物}
有機ホスホン酸化合物は、分子構造内にホスホン酸基(-PO)を1つ以上有する化合物であれば、特に限定されない。
例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、メチルジホスホン酸、ニトロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、シクロヘキサンジアミンテトラメチレンホスホン酸、カルボキシエチルホスホン酸、ホスホノ酢酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、2,3-ジカルボキシプロパン-1,1-ジホスホン酸、ホスホノブチル酸、ホスホノプロピオン酸、スルホニルメチルホスホン酸、N-カルボキシメチル-N,N-ジメチレンホスホン酸、N,N-ジカルボキシメチル-N-メチレンホスホン酸、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、ベンゼンホスホン酸等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0039】
有機ホスホン酸化合物は、分子構造内にリン酸基(-PO)を有する界面活性剤であってもよい。
リン酸基を有する界面活性剤としては、分子構造内にポリオキシエチレン基又はフェニル基を有するものが好ましい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ジポリオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレンオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸、ジポリオキシプロピレンオレイルエーテルリン酸、ラウリルリン酸アンモニウム、オクチルエ-テルリン酸アンモニウム、セチルエーテルリン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテルリン酸等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
リン酸基を有する界面活性剤としては、東邦化学工業社製の商品名フォスファノールやビックケミー・ジャパン社製のDISPERBYK等の市販品からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0040】
(エポキシ樹脂硬化剤)
本発明の導電性樹脂組成物は、(d)チオール系化合物以外のエポキシ樹脂硬化剤を含んでいてもよい。これにより、導電性樹脂組成物の硬化性が向上し、接合強度等の向上に寄与することができる。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤及びフェノール系硬化剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の導電性樹脂組成物は、作業性や取扱性等をより効果的に向上させる観点から、20℃において液状である硬化剤を含むことが好ましい。
【0041】
{アミン系硬化剤}
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、ビス[4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル]メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m-キシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン及びこれらをエポキシアダクト、マイケル付加、マンニッヒ反応等により変性した変性ポリアミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
{酸無水物系硬化剤}
酸無水物系硬化剤は、分子構造中にカルボン酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-)を1つ以上有する化合物であれば、特に限定されない。
酸無水物系硬化剤は、有機カルボン酸2分子の分子間での脱水及び/又は有機カルボン酸1分子の分子内での脱水により得られたものである。本発明においては、例えば、前記有機カルボン酸のうち、有機モノカルボン酸の分子間脱水により得られたもの及び有機ポリカルボン酸の分子内脱水及び/又は分子間脱水により得られるものからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。例えば、脂肪族モノカルボン酸無水物、脂肪族ポリカルボン酸無水物、脂環族ポリカルボン酸無水物、芳香族ポリカルボン酸無水物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
好ましくは、酢酸無水物、グルタル酸無水物、プロピオン酸無水物、シュウ酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、安息香酸無水物、コハク酸無水物、2-メチルコハク酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、(ポリ)アジピン酸無水物、(ポリ)アゼライン酸無水物、(ポリ)セバシン酸無水物、ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0043】
本発明においては、下記構造式(1)
【化1】
(構造式(1)中、Rは、炭素数10以上の直鎖又は分岐炭化水素基である。)で表されるポリ酸ポリ無水物の1種以上を酸無水物系硬化剤として用いてもよい。このようなポリ酸ポリ無水物は、長鎖脂肪族ジカルボン酸が分子間脱水縮合反応することで得られるものである。例えば、岡村製油社製のSL-12AH、SL-20AH、SB-20AH、IPU-22AH、ST-2PAH等が挙げられる。特に、25℃で液状のSB-20AH、IPU-22AH、ST-2PAHが好ましく用いられる。
【0044】
{フェノール系硬化剤}
フェノール系硬化剤としては、分子内にエポキシ基と反応し得るフェノール性水酸基を1つ以上、好ましくは2つ以上有する化合物が挙げられる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビフェノール、テトラメチルビフェノール等のビフェノール類;ヒドロキシフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル等のフェノール類;アルキルフェノール類;2,6-ビス[(2-ヒドロキシフェニル)メチル]-フェノール、フェノールビフェニレンノボラック(ビフェニルアラルキルフェノール)等のフェノールノボラック類;o-クレゾールノボラック、m-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック等のクレゾールノボラック類;フェノール樹脂類;等が例示できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0045】
{エポキシ樹脂硬化剤の含有量}
本発明の導電性樹脂組成物において、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、特に限定されない。本発明においては、硬化剤を使用しなくても、導電性樹脂組成物を硬化させることが可能である。
硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤中のエポキシ基と反応する基(例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、(酸無水物基から形成される)カルボキシル基)が、例えば0.7当量以上、好ましくは0.8当量以上、より好ましくは0.9当量以上であり、例えば1.3当量以下、好ましくは1.2当量以下、より好ましくは1.1当量以下となる量とすることができる。1.3当量を超える場合、過剰となる硬化剤未反応物の影響で塗膜の硬化不良が発生し、塗膜硬度が低下するおそれがある。最も好ましくは1.0当量である。
【0046】
(エポキシ樹脂硬化促進剤)
本発明の導電性樹脂組成物は、エポキシ樹脂の硬化を促進させるための硬化促進剤(硬化触媒)を含有していてもよい。硬化促進剤としては、特に限定されないが、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のエチレンアミン類、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルペンチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等の脂肪族第三アミン類、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、ジメチルアミノ-p-クレゾール、ピペリジン、α-ピコリン、ピリジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、3,4,5-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、N-アミノエチルピペラジン、1,3,6-トリスアミノメチルヘキサン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、メチレンジアニリン、2,4-トルエンジアミン、2,4-ジアミノアニゾール、2,4-トルエンジアミン、2,4-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-メチレンジアニリン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラピロ〔5,5〕ウンデカン、1,8-ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン-7もしくはポリアミン、ポリアミドアミン、ポリアミド、変性ポリアミン、変性ポリアミドアミン、変性ポリアミド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0047】
(錫粉末以外の導電性粉末)
本発明の導電性樹脂組成物は、錫粉末以外の導電性粉末を含んでいてもよい。このような導電性粉末としては、例えば、無鉛ハンダ粉末、金粉末、銀粉末、銅粉末、銀被覆銅粉末、銀被覆シリカ粉末、銀被覆ニッケル粉末、樹脂コア金属被覆微粒子、ニッケル粉末、導電性カーボン粉末等が挙げられる。
例えば、無鉛ハンダ粉末としては、作業者、使用者、環境等への影響から、不可避的に含まれる量以上の鉛を含有しないハンダの粉末であれば、特に限定されない。無鉛ハンダ粉末の融点は、好ましくは300℃以下、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは50~240℃である。無鉛ハンダ粉末の融点が300℃を超えると、回路基板や電子部品等の被接続部材が熱破壊や熱劣化するおそれがある。融点が50℃未満であると、機械的強度が弱くなり、導電接続の信頼性が低下するおそれがある。
【0048】
(接着性付与剤)
本発明の導電性樹脂組成物は、接着性付与剤を含んでいてもよい。これにより、導電性樹脂組成物を基材に塗布した際に、基材との接着性等を向上させることができる。接着性付与剤としては、例えば、トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物、官能基(カルボン酸基、アミノ基、水酸基等)を有するポリマーやその塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
接着性付与剤としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製BYKシリーズ(4509、4510、4512等)が挙げられる。
【0049】
(粘弾性調整剤)
本発明の導電性樹脂組成物は、粘弾性調整剤(レオロジーコントロール剤)を含んでいてもよい。これにより、導電性樹脂組成物の粘弾性(レオロジー)を調整して、作業性等の向上に寄与することができる。
粘弾性調整剤(レオロジーコントロール剤)としては、ポリアマイド系、アミノプラスト系、ポリカルボン酸系、ウレタン系、セルロース系、無機層状化合物系等の粘弾性調整剤(レオロジーコントロール剤)が挙げられる。例えば、ビックケミー・ジャパン社製RHEOBYKシリーズ(H370、H400、H600、H600VF、100、405、410、411、415、430、431、440、7410ET等);楠本化成社製ディスパロンシリーズ(AQ-600、AQH-800、3600N、3900EF等);サンノプコ社製SNシックナーシリーズ(613、617、618、630、634、636、621N、623N等);ADEKA社製アデカノールシリーズ(UH-814N、UH-752、UH-750、UH-462等)、ダイセル社製HECダイセルシリーズ(SP600N等);エレメンティスジャパン社製BENTONE HD等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(湿潤分散剤)
本発明の導電性樹脂組成物は、錫粉末の凝集を防止するために、必要に応じて分散剤を含有していてもよい。
湿潤分散剤の具体例としては、例えば、日本ルーブリゾール社製ソルスパースシリーズ(9000、12000、17000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、32000、35100、54000等)、エフカアディディブズ社製EFKAシリーズ(4008、4009、4010、4015、4046、4047、4060、4080、7462、4020、4050、4055、4400、4401、4402、4403、4300、4330、4340、6220、6225、6700、6780、6782、8503等)、味の素ファインテクノ社製アジスパーシリーズ(PA111、PB711、PB821、PB822、PN411等)、ビックケミー・ジャパン社製DISPERBYKシリーズ(101、106、108、116、130、140、145、161、163、166、168、171、180、192、2000、2001、2020、2025、2070、2152、2155、2164、220S、300、320、340、378、380N、410、425、430等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0051】
(反応性希釈剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、導電性樹脂組成物の粘度調整や硬化性調整等のための反応性希釈剤を含有していてもよい。反応性希釈剤としては、特に限定されないが、分子構造中にエポキシ基を1つ有する化合物、分子構造中にオキセタン基を1つ以上有する化合物等の1種以上が挙げられる。例えば、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルラウリルエーテル、2-フェニルフェノールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、4-tertブチルフェニルグリシジルエーテル、N-グリシジルフタルイミド、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、三菱ケミカル社製のYED111N、YED111AN、YED188、ADEKA社製のアデカグリシロールED-502、アデカグリシロールED-502S、アデカグリシロールED-509E、アデカグリシロールED-509S、アデカグリシロールED-529、ナガセケムテックス社製のデナコールEX-145、デナコールEX-171、デナコールEX-192、共栄社化学社製のエポライトM-1230、エポライト100MF、東亜合成社製のアロンオキセタンOXT-101、アロンオキセタンOXT-212、アロンオキセタンOXT-121、アロンオキセタンOXT-221、UBE社製のETERNACOLL EHO、ETERNACOLL HBOX、ETERNACOLL OXMA、ETERNACOLL OXBP等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0052】
(エポキシ樹脂以外の樹脂)
本発明の導電性樹脂組成物は、エポキシ樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。このような樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれでもよく、1種単独又は2種以上を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アイオノマー樹脂、ブロックウレタン樹脂等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、キシレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレア系樹脂、フラン樹脂等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
本発明においては、樹脂としてポリビニルアセタール系樹脂、レゾール型フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド系樹脂及びキシレン系樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性、基材への接着性等の観点から、ポリビニルアセタール系樹脂が好適に用いられる。
【0053】
(カップリング剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、カップリング剤を含んでいてもよい。これにより、エポキシ樹脂組成物の短時間加熱接合強度を向上させることができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、及びジルコニウムカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルメトキシシラン等のアミノ基含有シラン化合物;ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シラン化合物;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シラン化合物;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン類、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン化合物;等が挙げられる。チタンカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、テトライソプロピルチタネート、テトラタシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンイソステアレート、チタンジエタノールアミネート、チタンアミノエチルアミノエタノレート、チタンオリゴマー等が挙げられる。アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルコキシド基を有するアルミネート化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等のアセチルアセトネート基を有するアルミネート化合物等が挙げられる。ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、テトラ-n-プロポキシジルコニウム、テトラ-ブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、テトラキス(2,4-ペンタンジオネート)ジルコニウム等が挙げられる。
カップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0054】
<導電性樹脂組成物の性状>
本発明の導電性樹脂組成物の性状は、粉末状、固体状、ペースト状、液状(ワニス状)等の任意の性状とすることができる。導電性材料、導電性接着剤や回路接続材料としての用途の際には、室温(25℃)でペースト状又は液状(ワニス状)であることが好適である。
【0055】
<導電性樹脂組成物の特性>
本発明の導電性樹脂組成物は導電性に優れている。例えば、剥離性基材の上に導電性樹脂組成物を流延又は塗布し乾燥後に剥離して得られた導電膜の体積抵抗率が3.0×10-4Ω・cm未満であることが好ましい。より好ましくは導電膜の体積抵抗率が2.0×10-4Ω・cm未満である。ここで、体積抵抗率は、実施例において記載した方法により得られる。
本発明の導電性樹脂組成物は、各種の基材に対する接着性に優れている。例えば、ガラス、金属又はプラスチック(例えば、ポリエステル等)に対する接着性に優れている。
本発明の導電性樹脂組成物は、室温(25℃)で24時間静置して保存(室温(25℃)24時間保存)及び冷蔵庫内(4℃)で1週間静置して保存(冷蔵(4℃)1週間保存)のいずれの場合であっても、固化、表面の皮張り、液体の分離がなく、室温24時間保存及び冷蔵1週間保存の前後で粘度の増加が小さく、保存安定性に優れるものである。
【0056】
<導電性樹脂組成物の調製方法>
本発明の導電性樹脂組成物の調製に際しては、錫粉末、特定のエポキシ樹脂及び特定のジカルボン酸化合物を必須成分とし、必要に応じてチオール系化合物、溶媒、その他の成分を、任意の順序で混合容器に加えて混合し製造することができる。混合に際しては、例えば、自転・公転ミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、タンブラー、スターラー、撹拌機、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、単軸或いは二軸の押出機などで混合する方法が適宜用いられる。
【0057】
導電性樹脂組成物を調製する際の温度(各成分を混合する際の温度)は、特に限定されない。必要に応じて、加熱等をすることもでき、例えば、10~100℃で導電性樹脂組成物を調製することができる。
導電性樹脂組成物を調製する際の雰囲気は、特に限定されない。大気中で行うことができ、不活性雰囲気下で行うこともできる。
【0058】
<導電性樹脂組成物の用途>
本発明の導電性樹脂組成物の用途は、導電性物体の製造に係る用途である。導電性物体は、導電性樹脂組成物に加えて他の部材等を含んでいてもよい。
導電性物体としては、例えば、導電性材料、回路接続材料、導電性ペースト、導電性を有する膜、導電性繊維、導電性塗料、半導体パッケージ用導電材料、マイクロエレクトロニクスデバイス用導電材料、帯電防止材料、電磁波シールド材料、導電性接着剤(ダイ取付接着剤等)、ダイアタッチペースト、アクチュエータ、センサー、導電性樹脂成形体からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0059】
例えば、溶媒を導電性樹脂組成物の成分とすることで、導電性材料、回路接続材料、導電性ペースト、導電性塗料、導電性接着剤等を構成することができる。その際の粘度は特に限定されず、用途等に応じて低粘度のワニス状から高粘度のペースト状等とすることができる。
例えば、必要に応じて溶媒等を含む導電性樹脂組成物を、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ディスペンサ法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷、フレキソ印刷法、スプレーコート法、スピンコート法、又はインクジェット法等により各種の基材に塗布し、300℃以下の温度で加熱乾燥させて導電性を有する膜とすることができる。乾燥時の雰囲気は、大気中、不活性ガス中、真空中、減圧等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。特に、導電性を有する膜の劣化抑制(錫粉末等の酸化防止等)の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0060】
本発明の導電性樹脂組成物は、押出成形、射出成形、圧縮成形等の成形方法により成形し、成形体として用いることができる。成形体としては、例えば電子機器部品、自動車用部品、機械機構部品、食品容器、フィルム、シート、繊維等が挙げられる。
【0061】
[導電膜]
本発明の導電膜は、前記導電性樹脂組成物から形成することができる。本発明の導電膜は、体積抵抗率が3.0×10-4Ω・cm未満であることが好ましい。より好ましくは導電膜の体積抵抗率が2.0×10-4Ω・cm未満、さらに好ましくは1.0×10-4Ω・cm未満である。本発明の導電膜は、1.0×10-4Ω・cm未満(10-5Ω・cmオーダー)という、銀ペーストから形成された導電膜に匹敵する体積抵抗率とすることも可能である。
ここで、体積抵抗率は、実施例において記載した方法により得られる。
【0062】
導電性樹脂組成物から導電膜を形成する方法としては、特に限定されない。例えば、前記導電性樹脂組成物を溶媒含有のものとし、これを任意の基材上に塗布又は印刷し乾燥等することで、導電膜を形成できる。また、剥離性基材の上に導電性樹脂組成物を流延又は塗布し乾燥等した後に剥離して得ることができる。
導電膜の形成条件は、特に限定されず、被塗物等に応じて適宜設定できる。導電性樹脂組成物を塗布した後の乾燥等に際しての温度は、例えば50℃以上、好ましくは90℃以上であり、例えば250℃以下、好ましくは220℃以下である。乾燥等の時間としては、例えば5分以上、好ましくは7分以上であり、例えば300分以下、好ましくは200分以下である。
本発明においては、導電膜を形成する際に、用途、塗布・印刷方法等に応じて、ウエット膜厚及び/又は乾燥膜厚のいずれかを調整して、導電膜を形成することができる。
導電膜のウエット膜厚(導電性樹脂組成物のウエット膜厚)は、特に限定されず、用途等に応じて適宜調整できる。例えば、5μm以上、好ましくは10μm以上であり、例えば1000μm以下、好ましくは500μm以下である。
導電膜の乾燥膜厚は、特に限定されず、用途等に応じて適宜調整できる。例えば、1μm以上、好ましくは5μm以上であり、例えば1000μm以下、好ましくは500μm以下である。
【0063】
[導電性材料]
本発明の導電性材料は、前記導電性樹脂組成物を含むものである。例えば、前記導電性樹脂組成物を、必要に応じて前記溶媒に溶解及び/又は分散させて得ることができる。
導電性材料は、錫粉末、特定のエポキシ樹脂及び特定のジカルボン酸化合物に加えて、さらに、導電性材料を形成するための各種添加剤(例えば、錫粉末以外の導電性粉末、各種の硬化剤、界面活性剤、pH調整剤(アミン系化合物等)、接着促進剤、粘弾性調整剤、湿潤分散剤、レベリング剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤等)等を含んでいてもよい。
導電性材料は、前記成分を混合容器に入れた後に、自転・公転ミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、タンブラー、スターラー、撹拌機、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー等からなる群より選ばれる1種以上の混合機を用いて混合し、ワニス状又はペースト状とすることで得られる。
【0064】
導電性材料は、例えば配線形成用の印刷用導電性インク、回路形成材料や、受動部品の内部及び外部電極形成材料等として利用できる。
導電性材料を印刷用導電性インクとして使用する場合、印刷方法としては、例えばスクリーン印刷、メタルマスク印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、ディスペンサ法等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。本発明においては、印刷性や形状保持性に優れるため、スクリーン印刷、インクジェット印刷等からなる群より選ばれる1種以上の印刷方法を用いることが好ましい。
ここで、スクリーン印刷法におけるメッシュは適宜選択でき、導電性材料中の導電性粉末や無鉛ハンダ粉末が過度に除去されないだけのメッシュを採用することが好ましい。
【0065】
導電性材料を物品等に塗布する塗布方法は、特に限定されない。物品等の形状や使用形態等に応じて、任意の塗布方法を採用することができる。例えば、スピンコート、ディップコート、浸漬、ダイコート、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗布、ハケ塗り、ローラー塗り、ロールコーター、カーテンフローコーター、ローラーカーテンコーター、ダイコーター、インクジェット、ディスペンサによる塗布等からなる群より選ばれる1種以上の塗布方法が挙げられる。
【0066】
導電性材料を塗布してなる塗布膜の膜厚は、特に限定されず、各種の用途に応じて適当な膜厚とすることができる。例えば1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、400μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。
導電性材料は、冷蔵下及び室温下での保存安定性及び導電性に加えて、各種基材への接着性、レベリング(表面平滑性)及び印刷性等からなる群より選ばれる1種以上の特性に優れたものである。
【0067】
[導電性接着剤]
本発明の導電性接着剤は、前記導電性樹脂組成物を含むものである。例えば、前記導電性樹脂組成物を、必要に応じて前記溶媒に溶解及び/又は分散させて得ることができる。
導電性接着剤は、接着対象部位を導電性を有するように接着するために用いられる。例えば、電池、電気・電子機器の製造において、導電性が必要な接着を行う際等に用いられる。導電性接着剤は、必要に応じて、溶媒、エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤、密着性付与剤、粘弾性調整剤、湿潤分散剤、硬化促進剤(硬化触媒)、反応性希釈剤、錫粉末以外の導電性粉末、エポキシ樹脂以外の樹脂、酸化防止剤、顔料、充填剤(フィラー)、腐食抑制剤、消泡剤、カップリング剤、沈降防止剤等、レベリング剤、重金属不活性化剤、界面活性剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、難燃剤、接着付与剤等からなる群より選ばれる1種以上をさらに含んでいてもよい。
導電性接着剤は、前記成分を混合容器に入れた後に、自転・公転ミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、タンブラー、スターラー、撹拌機、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、一軸押出機、二軸押出機等からなる群より選ばれる1種以上の混合機を用いて混合し、ワニス状又はペースト状とすることで得られる。
【0068】
本発明の導電性接着剤は、異方導電性接着剤として用いることができる。これにより、微細化されたICチップ、発光ダイオード等の電子部品、回路基板の電極接続等において、高信頼性の導電接続を形成することができる。
本発明の導電性接着剤を介して被接着部材同士が接着されている接着構造体としては、例えば、電極を有する基板にICチップを接着した、ICカードやICタグ等のRFID関連製品や、電極を有する基板に発光ダイオードを接着した発光電子部品等が挙げられる。例えば、基板の少なくとも一方の面に電極を多数形成し、各電極がそれぞれ少なくとも覆われるように本発明の導電性接着剤を塗布して接着剤膜を形成し、各電極部に各電子部品の電極部を相対させて圧着し、接着剤層を硬化させることで、導電性接着剤を用いた接着構造体を形成することができる。
【0069】
本発明の導電性接着剤を基材に塗布する手段は、特に限定されない。例えば、前記の導電性樹脂組成物を基材に塗布する方法が挙げられる。本発明においては、印刷、吐出等により行うことができる。印刷方法としては、例えばスクリーン印刷、メタルマスク印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、ディスペンサ法等からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、印刷性や形状保持性に優れることから、スクリーン印刷、インクジェット印刷等からなる群より選ばれる1種以上の印刷方法を用いることが好ましい。
ここで、スクリーン印刷におけるメッシュは適宜選択でき、導電性接着剤中の導電性粉末が過度に除去されないだけのメッシュを採用することが好ましい。
導電性接着剤を塗布してなる接着剤膜の膜厚は、各種の用途に応じて適当な膜厚とすることができる。例えば1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、200μm以下である。
【0070】
本発明の導電性接着剤は、フィルム状に成形して用いてもよい。フィルム状の導電性接着剤は、例えば、導電性接着剤組成物に必要に応じて溶剤等を加える等で得られた導電性接着剤溶液を、剥離性支持体上に塗布し、溶剤等を除去する方法により得ることができる。フィルム状の導電性接着剤は、取り扱い等の点から一層便利である。フィルム状の導電性接着剤の層を1層以上と、必要に応じて、1層以上の絶縁性接着剤層、1層以上の剥離性材料層等とともに、多層構造体として用いることもできる。
本発明の導電性接着剤は、通常、加熱及び加圧を併用して被着体同士を接着させることができる。加熱温度は、被着体に損傷を与えない範囲であれば特に制限されず、例えば70℃以上250℃以下である。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば特に制限されず、例えば0.1MPa以上10MPa以下である。加熱及び加圧は、例えば0.5秒以上120秒以下で行うことが好ましい。
【0071】
本発明の導電性接着剤は、被着体同士を電気的に接合させるために用いられる。例えば、互いに異なる材料であって熱膨張係数が異なる被着体同士を接着させるとともに電気的に接続させるための異種の被着体の接着剤として使用することができる。さらに、本発明の導電性接着剤は、異方導電性接着剤、導電性ペースト、導電性接着フィルム等の回路接続材料、アンダーフィル材、LOCテープ等の半導体素子接着材料として使用することができる。
【0072】
[回路接続材料]
本発明の回路接続材料は、前記導電性樹脂組成物を含むものである。各種電子部品と回路基板との導電接続や電気・電子回路相互の接続(接着)に用いられる。
回路接続材料の形状等は特に限定されないが、液状又はフィルム状であることが好ましい。
液状の回路接続材料は、例えば、本発明の導電性樹脂組成物に有機溶媒等の溶媒を混合して液状化することで得ることができる。
フィルム状の回路接続材料は、例えば、前記の液状化した本発明の導電性樹脂組成物を剥離性基材上に直接流延・塗布して膜を形成し、乾燥して溶媒を除去してフィルムを形成した後に剥離性基材上から剥がすことで得ることができる。
また、フィルム状の回路接続材料は、例えば、前記の液状化した本発明の導電性樹脂組成物を不織布等に含浸させた後に剥離性基材上に形成し、乾燥して溶媒を除去した後に剥離性基材上から剥がすことで得ることができる。
【0073】
回路接続材料を用いた電気的接続方法等は特に限定されない。例えば、電子部品や回路等の電極と、それと相対峙する基材上の電極との間に回路接続材料を設け、加熱して両電極の電気的接続と両電極間の接着を行う方法が挙げられる。加熱の際、必要に応じて加圧することができる。
相対峙する電極との間に回路接続材料を設ける方法は、特に限定されない。例えば、液状の回路接続材料を塗布する方法、フィルム状の回路接続材料を挟む方法等が挙げられる。
また、電子部品等が有するピンと回路との導電接続に際して、ピンの根元に回路接続材料を設け、突合せ接合して導電接続を構成する方法等が挙げられる。
【0074】
回路接続材料は、実質的に異方導電材料として用いることができ、また、接着性に優れた回路接続材料を基材上の相対峙する電極間に形成し、加熱加圧により両電極の接触と基材間の接着を得る電極の接続方法に用いることができる。電極を形成する基材としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機質、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の有機物、ガラス/エポキシ等のこれら複合の各組み合わせが適用できる。
なお、回路接続材料の成分として、低温で溶融するハンダ粉末を含む場合、250℃以下、例えば200℃以下という低温で導電接続を可能とすることができる。
【実施例0075】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。特に断りのない限り、「部」は「質量部」を意味する。
【0076】
[使用成分]
実施例で用いた成分は、それぞれ以下のとおりである。
・錫粉末1:球状錫粉末(D50=5.5μm、Sn≧99.5質量%)
・エポキシ樹脂1:固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「YD-014」;エポキシ当量900~1000g/eq;軟化点100℃)
・エポキシ樹脂2:固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「YD-011」;エポキシ当量440~510g/eq;軟化点66℃)
・エポキシ樹脂3:固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「YD-019」;エポキシ当量2200~2900g/eq;軟化点138℃)
・エポキシ樹脂4:固体状エポキシ樹脂(日本化薬社製「LCE-2615」;エポキシ当量494g/eq;軟化点93℃)
・エポキシ樹脂5:固体状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「YDF-2004」;エポキシ当量850~1050g/eq;軟化点85℃)
・エポキシ樹脂6:固体状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER-4005P」;エポキシ当量950~1200g/eq;軟化点87℃)
・エポキシ樹脂7:半固体状ゴム変性エポキシ樹脂(DIC社製「TSR-601」;エポキシ当量450~500g/eq)
・エポキシ樹脂8:固体状ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-7200」;エポキシ当量254~264g/eq;軟化点57~68℃)
・エポキシ樹脂9:固体状フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製「N-770」;エポキシ当量183~193g/eq;軟化点65~75℃)
・エポキシ樹脂10:固体状ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000」;エポキシ当量276g/eq;軟化点57℃)
・エポキシ樹脂11:固体状ナフトール-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-7000L」;エポキシ当量232g/eq;軟化点90℃)
・エポキシ樹脂12:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP-4100G」;エポキシ当量190g/eq;軟化点25℃未満)
・エポキシ樹脂13:液状プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP-4000S」;エポキシ当量260g/eq;軟化点25℃未満)
・エポキシ樹脂14:液状フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「RE-305S」;エポキシ当量173g/eq;軟化点25℃未満)
・直鎖ジカルボン酸化合物1:アジピン酸(HOOC-(CH)-COOH)
・直鎖ジカルボン酸化合物2:ピメリン酸(HOOC-(CH)-COOH)
・直鎖ジカルボン酸化合物3:セバシン酸(HOOC-(CH)-COOH)
・直鎖ジカルボン酸化合物4:コハク酸(HOOC-(CH)-COOH)
・直鎖ジカルボン酸化合物5:グルタル酸(HOOC-(CH)-COOH)
・直鎖ジカルボン酸化合物6:ジグリコール酸(HOOC-CH-O-CH-COOH)
・分岐ジカルボン酸化合物1:長鎖分岐二塩基酸(岡村製油社製「MMA-10R」)
・分岐ジカルボン酸化合物2:長鎖分岐二塩基酸(岡村製油社製「SB-12」)
・チオール系化合物1:チオシアヌル酸(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール)
・溶媒1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)
・溶媒2:ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルカルビトール)
【0077】
<導電性評価>
導電性樹脂組成物により形成された導電膜(乾燥塗膜)について、体積抵抗率を以下の方法で求めるとともに、導電性評価を以下に示す方法で行った。
【0078】
(測定用導電膜(乾燥塗膜)の作製)
パターン2cm×2cm、厚さ100ミクロンのメタルマスクを用いて、導電性樹脂組成物を手刷り印刷し、5cm×5cmのガラス基材上に2cm×2cmの塗膜を作製した。次いで、160℃・60分の熱処理条件で加熱硬化し、体積抵抗率測定用の導電膜(乾燥塗膜)を作製した。
【0079】
(体積抵抗率)
得られた導電膜(乾燥塗膜)の体積抵抗率を、抵抗率計「ロレスタGP-MCP T610」(日東精工アナリテック社製)を用いて4端子法により2方向(塗膜中央を通り塗膜上辺と平行である方向及び該方向と垂直である方向の2方向)の体積抵抗率を測定し、その平均体積抵抗率を算出した。さらに、導電性樹脂組成物ごとに2枚の導電膜(乾燥塗膜)を作製し、2枚の導電膜(乾燥塗膜)における平均体積抵抗率を算出して体積抵抗率とした。算出した体積抵抗率を、表1~表6に併せて示す。なお、体積抵抗率が高過ぎて測定できない(体積抵抗率測定不可)の場合は、表1~表6において「UM」と、導電性樹脂組成物の塗布性能が低く、均一に塗布することが不可能(塗布不良)の場合は、表1~表6において「UC」とした。
【0080】
(導電性評価)
体積抵抗率及びを以下の基準にて評価した。本評価において、Aは合格、Dは不合格である。
A:体積抵抗率が3.0×10-4(Ω・cm)未満
D:体積抵抗率が3.0×10-4(Ω・cm)以上、体積抵抗率測定不可(UM)又は塗布不良(UC)
【0081】
導電性樹脂組成物の粘度測定、保存安定性評価は、以下に示す方法で行った。
<粘度測定>
導電性樹脂組成物の粘度を、レオメーター(TA Instruments社製Rheometer DHR-2)を用いて測定した。20mmコーンプレート、25℃、せん断速度10s-1にて測定を開始し、測定開始から180秒後における粘度を記録した。
【0082】
<保存安定性>
作製した導電性樹脂組成物を容器に入れ、室温(25℃)で24時間静置して保存(室温(25℃)24時間保存)及び冷蔵庫内(4℃)で1週間静置して保存(冷蔵(4℃)1週間保存)した後に、各導電性樹脂組成物の保存安定性を以下の評価項目と基準にて評価した。さらに、それぞれの評価に基づいて、室温(25℃)24時間保存及び冷蔵(4℃)1週間保存の総合評価を以下の基準で行った。本評価において、Aは合格、Dは不合格である。評価結果を表1~表6に併せて示す。
A:固化、皮張り、液体の分離及び増粘率の4つの評価が、全て合格している。
D:固化、皮張り、液体の分離及び増粘率の4つの評価において、1つ以上不合格がある。
【0083】
(固化)
所定条件での保存後に各導電性樹脂組成物をへらで触り、へらで導電性樹脂組成物を掬うことができる場合は固化しておらずA、流動性がなくへらで導電性樹脂組成物を掬うことができない場合は固化しているとしてDとした。本評価において、Aは合格、Dは不合格である。なお、体積抵抗率が「UC(塗布不良)」の場合には、固化の確認は行わず、表中は斜線とした。
【0084】
(皮張り)
所定条件での保存後に各導電性樹脂組成物の外観を確認し、導電性樹脂組成物表面部に皮張りが無い場合はA、皮張りがある場合はDとした。ここで「皮張り」とは、空気と接する導電性樹脂組成物の表面部分に皮膜を生じている状態である。本評価において、Aは合格、Dは不合格である。なお、体積抵抗率が「UC(塗布不良)」の場合及び固化が確認された場合には、皮張りの確認は行わず、表中は斜線とした。
【0085】
(液体の分離)
所定条件での保存後に各導電性樹脂組成物の外観を確認し、導電性樹脂組成物表面に液体が分離して浮いていない場合はA、液体が分離して浮いてきている場合はDとした。本評価において、Aは合格、Dは不合格である。なお、体積抵抗率が「UC(塗布不良)」の場合及び固化又は皮張りが確認された場合には、液体の分離の確認は行わず、表中は斜線とした。
【0086】
(粘度)
所定条件での保存後に各導電性樹脂組成物の粘度を、レオメーター(TA Instruments社製Rheometer DHR-2)を用いて測定した。20mmコーンプレート、25℃、せん断速度10s-1にて測定を開始し、測定開始から180秒後における粘度を粘度値とした。なお、保存後に固化、皮張り、液体の分離が発生しているため粘度を測定できない(粘度測定不可)場合には、表1~表6において「UM」と記載した。また体積抵抗率が「UC(塗布不良)」の場合には、粘度の測定は行わず、表中は斜線とした。
【0087】
(増粘率)
所定条件での保存後に各導電性樹脂組成物の粘度を測定して得られた値を、導電性樹脂組成物を作製した直後に粘度を測定して得られた値と比較して増粘率を算出するとともに、以下の基準で評価した。本評価において、A、Bは合格、Dは不合格である。
増粘率[%]={(所定条件での保存後の粘度/作製した直後の粘度)-1}×100
A:増粘率が50%未満
B:増粘率が50%以上100%未満
D:増粘率が100%以上又は粘度測定不可
【0088】
[実施例1]
15.00部の錫粉末1、0.84部のエポキシ樹脂1、0.40部の直鎖ジカルボン酸化合物1及び1.00部の溶媒1を混合し、自転・公転ミキサー(シンキー社製、「あわとり練太郎 AR-100」)を用い混合、撹拌して導電性樹脂組成物を得た。得られた導電性樹脂組成物において、溶媒以外の全成分量(実施例1においては、錫粉末1、エポキシ樹脂1及び直鎖ジカルボン酸化合物1の合計量)中の錫粉末量(非溶媒成分全量中錫粉末量)は、92.36質量%であった。
得られた導電性樹脂組成物について、粘度を測定した。
得られた導電性樹脂組成物から導電膜(乾燥塗膜)を作製し、体積抵抗率の測定及び評価を行った。
得られた導電性樹脂組成物について、保存安定性(室温(25℃)24時間保存及び冷蔵(4℃)1週間保存)の評価を行った。
これらの結果を、表1に併せて示す。
【0089】
[実施例2~32、比較例1~13]
導電性樹脂組成物の構成成分及びその含有量(部)を、それぞれ表1~表6に示すものとしたほかは、実施例1と同様にして導電性樹脂組成物を作製した。
得られた導電性樹脂組成物について、粘度を測定した。
得られた導電性樹脂組成物から導電膜(乾燥塗膜)を作製し、体積抵抗率の測定及び評価を行った。
得られた導電性樹脂組成物について、保存安定性(室温(25℃)24時間保存及び冷蔵(4℃)1週間保存)の評価を行った。
これらの結果を、表1~表6に併せて示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
実施例1~32に係る導電性樹脂組成物により形成された導電膜は、いずれも体積抵抗率が3.0×10-4Ω・cm未満、場合によっては1.0×10-4Ω・cm未満という、銀ペーストと同等以上の導電性を示し、導電性に優れたものであった。これより、銀ペースト等と比較して低コストであり、銀ペーストと同等の高い導電性を示す導電性樹脂組成物が形成されたことがわかる。
また、実施例1~32に係る導電性樹脂組成物は、室温(25℃)24時間保存及び冷蔵(4℃)1週間保存のいずれの場合においても、固化、表面の皮張り、液体の分離がなく、室温24時間保存及び冷蔵1週間保存の前後で粘度の増加が小さく、保存安定性に優れるものであることがわかる。