(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157537
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】樹脂用可塑剤および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 63/16 20060101AFI20241030BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20241030BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20241030BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C08G63/16 ZBP
C08L67/04
C08L67/02
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068799
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2023071385
(32)【優先日】2023-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松島 歩海
(72)【発明者】
【氏名】森 愛美香
(72)【発明者】
【氏名】岸本 崇
(72)【発明者】
【氏名】河村 芳範
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J002CF032
4J002CF03X
4J002CF181
4J002CF18W
4J002FD022
4J002FD02X
4J002GG02
4J002GL00
4J002GQ00
4J029AA03
4J029AD01
4J029AE15
4J029BF17
4J029BF18
4J029CA06
4J029KE03
4J029KH05
4J200AA04
4J200BA14
4J200DA12
4J200DA17
4J200EA09
4J200EA21
(57)【要約】
【課題】
脂肪族ジカルボン酸とジオールの繰り返し単位を有するポリマー鎖の両末端を脂肪族モノアルコールによって封止された構造を有するポリエステル系可塑剤に比し、より耐ブリード性に優れるポリエステル系可塑剤を提供すること。
【解決手段】
下記成分(A)~(C)の反応により得られるポリエステル。
(A)下記一般式(1)で表されるジカルボン酸又はその酸無水物。
(B)分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキレン基を有するトリアルキレングリコール。
(C)下記一般式(2)で表されるアルコール。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)の反応により得られるポリエステル。
(A)下記一般式(1):
(式中、R
1は分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基又は分岐を有してもよい炭素数2~12のアルケニレン基である。)
で表されるジカルボン酸又はその酸無水物。
(B)分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキレン基を有するトリアルキレングリコール。
(C)下記一般式(2):
(式中、R
2は分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基又はフェノキシ基であり、nは0~2の整数を示す。nが2の場合、複数あるR
2は同一であっても、異なっていてもよい。)
で表されるアルコール。
【請求項2】
上記成分(B)において、分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキレン基を有するトリアルキレングリコールが、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール及びトリメチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種のトリアルキレングリコールである、請求項1に記載のポリエステル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリエステルと、前記ポリエステル以外の他の樹脂と、を含む樹脂組成物。
【請求項4】
前記他の樹脂が生分解性樹脂である請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記他の樹脂がポリ乳酸系樹脂である請求項3に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリエステル及びこれを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ビニル樹脂、スチロール系樹脂、アクリル樹脂、およびセルロース系樹脂等のプラスチックは、食品包装、建設材料、家電製品など広い分野で利用されている。また、これらのプラスチックに、柔軟性等を付与するために、種々の可塑剤が用いられており、機能性を向上させたプラスチック製品が様々な用途で利用されている。
【0003】
前記のような可塑剤を含むプラスチック製品として、例えば、特許文献1には、脂肪族ジカルボン酸とジオールの繰り返し単位を有するポリマー鎖の両末端を脂肪族モノアルコールによって封止された構造を有するポリエステル系可塑剤、該可塑剤を含むポリエステル樹脂組成物並びに該樹脂組成物からなるシート及びフィルムが記載されており、これらは、前記ポリエステル系可塑剤を含むことにより、透明性が良好で、かつ、耐熱性及び耐ブリード性に優れることが開示されている。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したポリエステル系可塑剤では、耐ブリード性において未だ十分であるとはいえなかった。本発明は、より耐ブリード性に優れるポリエステル系可塑剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、後述する特定のジカルボン酸、ジオール及びモノアルコールを反応させて得られるポリエステル(可塑剤)が、耐ブリード性に優れ、前記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、具体的には以下の発明を含む。
【0007】
〔1〕
下記成分(A)~(C)の反応により得られるポリエステル。
(A)下記一般式(1):
【0008】
【化1】
(式中、R
1は分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基又は分岐を有してもよい炭素数2~12のアルケニレン基である。)
で表されるジカルボン酸又はその酸無水物。
(B)分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキレン基を有するトリアルキレングリコール。
(C)下記一般式(2):
【0009】
【化2】
(式中、R
2は分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基又はフェノキシ基であり、nは0~2の整数を示す。nが2の場合、複数あるR
2は同一であっても、異なっていてもよい。)
で表されるアルコール。
【0010】
〔2〕
上記成分(B)において、分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキレン基を有するトリアルキレングリコールが、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール及びトリメチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種のトリアルキレングリコールである、〔1〕に記載のポリエステル。
【0011】
〔3〕
〔1〕又は〔2〕に記載のポリエステルと、前記ポリエステル以外の他の樹脂と、を含む樹脂組成物。
【0012】
〔4〕
前記他の樹脂が生分解性樹脂である〔3〕に記載の樹脂組成物。
【0013】
〔5〕
前記他の樹脂がポリ乳酸系樹脂である〔3〕に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐ブリード性に優れるポリエステル(可塑剤)を提供することができる。また、本発明のポリエステルは、樹脂(例えば、ポリ乳酸系樹脂)に添加した場合、得られる樹脂組成物からのブリードアウトが少なく(即ち、耐ブリード性に優れ)、また、該樹脂組成物は、透明性および可塑性に優れるとの効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。また、本明細書において「含む(comprise)」とは、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」も包含する概念である。
【0016】
[ポリエステル]
本発明のポリエステルは、下記成分(A)~(C)の反応により得られ、可塑剤としてそのまま使用することが可能である。
(A)下記一般式(1):
【0017】
【化3】
(式中、R
1は分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基又は分岐を有してもよい炭素数2~12のアルケニレン基である。)
で表されるジカルボン酸又はその酸無水物。
(B)分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキレン基を有するトリアルキレングリコール。
(C)下記一般式(3):
【0018】
【化4】
(式中、R
2は分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基又はフェノキシ基であり、nは0~2の整数を示す。nが2の場合、複数あるR
2は同一であっても、異なっていてもよい。)
で表されるアルコール。
【0019】
本発明のポリエステルは、上記成分(A)に由来する構成単位(a)と、上記成分(B)に由来する構成単位(b)と、上記成分(C)に由来する構成単位(c)とを含有するポリエステルであり、典型的には、実質的に構成単位(a)と構成単位(b)と構成単位(c)のみからなる。本発明のポリエステルは、ジカルボン酸成分である成分(A)とジオール成分である成分(B)との共重合体であって、少なくとも一方のポリマー末端が成分(C)によって封止された構造を有する。
【0020】
成分(A)は上記一般式(1)で表されるジカルボン酸又はその酸無水物である。上記一般式(1)において、R1は分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基又は分岐を有してもよい炭素数2~12のアルケニレン基である。前記R1における、分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。分岐を有してもよい炭素数2~12のアルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基等が挙げられる。これらの中でも、R1として好ましくは分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキレン基又は分岐を有してもよい炭素数2~8のアルケニレン基であり、より好ましくは分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキレン基又は分岐を有してもよい炭素数2~4のアルケニレン基であり、さらに好ましくはエチレン基、テトラメチレン基、エテニレン基である。なお、アルケニレン基はシス体、トランス体のどちらであってもよい。
【0021】
成分(A)の具体例としては、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,2,3-トリメチルコハク酸、2-エチル-2メチル-コハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2,4-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸、3-エチル-3-メチルグルタル酸、アジピン酸、3-メチルアジピン酸、2,2-ジメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ヘプタン-4,4-ジカルボン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラッシル酸、テトラドデカン二酸、1,1-シクロプロパンジカルボン酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,1-シクロペンタン二酢酸、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸、グルタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸、及びこれらの酸無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
成分(B)は、分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキレン基を有するトリアルキレングリコールである。分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられ、これらの中でも、分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基が好ましく、エチレン基、プロピレン基又はトリメチレン基がより好ましい。
【0023】
成分(B)の具体例としては、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0024】
成分(C)は上記一般式(2)で表されるアルコールである。上記一般式(2)において、R2は分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基又はフェノキシ基である。分岐を有してもよい炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。これら置換基の中でも、メチル基が好ましい。
【0025】
上記一般式(2)において、nは0~2の整数、好ましくは0または1である。nが2の場合複数あるR2は同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
成分(C)の具体例としては、ベンジルアルコール(n=0)、2-メチルベンジルアルコール、3-メチルベンジルアルコール、4-メチルベンジルアルコール、2-エチルベンジルアルコール、3-エチルベンジルアルコール、4-エチルベンジルアルコール、2,3-ジメチルベンジルアルコール、2,4-ジメチルベンジルアルコール、3,5-ジメチルベンジルアルコール、2,6-ジメチルベンジルアルコール、4-イソプロピルベンジルアルコール、2,4,6-トリメチルベンジルアルコール、3,4,5-トリメチルベンジルアルコール、3-フェノキシベンジルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0027】
本発明のポリエステルは、例えば、数平均分子量が300~10000、好ましくは350~4000、より好ましくは400~2000である。数平均分子量は、例えば、後述する実施例の項に記載の方法により測定することができる。
【0028】
[ポリエステルの製造方法]
本発明のポリエステルは、例えば、上記成分(A)~(C)を定法によりエステル化反応させることにより得ることができる。反応させる方法としては、例えば、上記成分(A)~(C)を一度に反応させる一段法や、上記成分(A)と上記成分(B)とを反応後に上記成分(C)を反応させる多段法等が挙げられるが、多段法により実施することが好ましい。反応は、例えば、100℃~300℃の温度で、必要に応じて酸及び/又は触媒の存在下、また、必要に応じてトルエン、キシレン等の溶媒の存在下、生成する水を系外に除去しながら行われる。また、反応は窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下または気流下で行うのが望ましい。反応により得られた生成物は、常法に従って、未反応原料や副生物、溶媒等を留去してもよく、また、洗浄、吸着等の精製処理を行ってもよい。
【0029】
反応の際の上記成分(A)~(C)のモル比は、例えば、上記成分(A):1.0モルに対し、成分(B):0.3~0.9モル、成分(C):0.2~3.0モルである。
【0030】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、上記した本発明のポリエステルと、樹脂とを含む。前記樹脂としては、例えば、本発明のポリエステル以外の他のポリエステル樹脂や、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ビニル樹脂、スチロール系樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0031】
前記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などのオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0032】
前記ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-10、ナイロン-12、ナイロン-46等の脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンにより製造される芳香族ポリアミド等が挙げられる。
【0033】
前記ポリアセタール樹脂としては、例えば、ポリホルムアルデヒド、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒド等が挙げられる。
【0034】
前記ビニル樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの単独重合体、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンと酢酸ビニルの共重合体などのビニル系化合物共重合体等が挙げられる。
【0035】
前記スチロール系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
【0036】
前記アクリル樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
【0037】
前記他のポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族系ポリエステル;ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート等の脂肪族芳香族コポリエステル;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシバレレート)(PHBV)とポリ(ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)等のポリヒドロキシアルカノエート(PHA);ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート共重合体、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸系樹脂、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)等の脂肪族ポリエステル;デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン等の天然高分子と前記脂肪族ポリエステルあるいは脂肪族芳香族コポリエステルとの混合物等が挙げられる。
【0038】
これら樹脂の中でも、JIS K6953(ISO14855)「制御された好気的コンポスト条件の好気的かつ究極的な生分解度及び崩壊度試験」に基づいた、自然界において微生物が関与して低分子化合物に分解される(生分解性を有する)ポリエステル樹脂が好ましく、生分解性を有する脂肪族ポリエステルがより好ましく、ポリ乳酸系樹脂が特に好ましい。
【0039】
ポリ乳酸系樹脂としては、乳酸を重合して得られるポリエステル樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリ乳酸のホモポリマー、コポリマー、ブレンドポリマー等が挙げられる。コポリマーとしては、例えば、乳酸と、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸類、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラセンジカルボン酸等のジカルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類、グリコリド、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ポロピオラクトン、ウンデカラクトン等のラクトン類等との共重合物が挙げられる。ブレンドポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸のホモポリマー及び/又はコポリマーと、セルロース類、グリコーゲン、キチン、キトサン等との混合物が挙げられる。なお、重合に用いられる乳酸は、L-乳酸、D-乳酸又はこれらの混合物のいずれであってよい。なお、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂として挙げたこれらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の樹脂組成物において、本発明のポリエステルの含有量は、例えば、樹脂100部に対し1~100重量部、好ましくは1~50重量部、さらに好ましくは5~30重量部である。
【0041】
本発明において、樹脂に本発明のエステル化合物を配合する方法は特に限定されるものではないが、例えば、ブレンダー、ミキサー等で混合する方法、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて溶融混練する方法等が挙げられる。また、樹脂製造段階から可塑剤を混合してもよい。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、本発明のポリエステル及び上記樹脂の他に、用途に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でアンチブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、充填剤、顔料、染料、分散剤、難燃剤等の他の添加剤を添加してもよく、また、本発明のポリエステル以外の可塑剤として一般的に使用される化合物を併用してもよい。
【0043】
本発明の樹脂組成物は一般的な熱可塑性プラスチックと同様に、押し出し成形、射出成形、延伸フィルム成形、ブロー成形などの成形方法を用いることが可能であり、広い用途に使用することができる。例えば、食品容器、電気部品、電子部品、自動車部品、医療用材料、フィルム・シート材料、繊維素材、塗料用樹脂、インキ用樹脂、トナー用樹脂、接着剤樹脂等として有用である。
【実施例0044】
以下に実施例等を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、実施例等に記載したポリエステルの数平均分子量は、後述する測定方法に従って測定した、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0045】
<実施例1>
攪拌機、窒素吹込み管、温度計および冷却管を付けた油水分離器を備えた四つ口フラスコにアジピン酸445.1g(3.03モル)、トリエチレングリコール229.8g(1.52モル)、トルエン153g、パラトルエンスルホン酸・1水和物12.0g、および次亜リン酸ナトリウム・1水和物2.5gを加え、110~120℃に加熱し、生成水を系外に除きながらエステル化反応を行った。理論量の水が生成後、ベンジルアルコール339.3g(3.11モル)を加え、120~130℃に加熱し、減圧下、理論量の水が生成するまで引続きエステル化反応を行った。これを80℃まで冷却し、24%水酸化ナトリウム水溶液で中和を行い、水洗浄を行った。次いで、トルエンおよび過剰のアルコールを減圧除去し、アルカリ洗浄、水洗浄を行い、水を減圧除去し、数平均分子量495のポリエステル(反応生成物A)827.9gを得た。
【0046】
<比較合成例1>
実施例1と同様の反応装置を用いて、コハク酸268.0g(2.27モル)、トリエチレングリコール171.3g(1.14モル)、トルエン95g、パラトルエンスルホン酸・1水和物14.0g、および次亜リン酸ナトリウム・1水和物3.2gを加え、110~120℃で生成水を系外に除きながらエステル化反応を行った。理論量の水の生成後、ノルマルブタノール253.6g(3.42モル)を加え、100~120℃に加熱し、理論量の水が生成するまで引続きエステル化反応を行った。これを80℃まで冷却し、24%水酸化ナトリウム水溶液で中和を行い、水洗浄を行った。次いで、トルエンおよび過剰のアルコールを減圧除去し、アルカリ洗浄、水洗浄を行い、水を減圧除去し、数平均分子量778のポリエステル(反応生成物B)332.3gを得た。
【0047】
<比較合成例2>
実施例1と同様の反応装置を用いて、アジピン酸236.9g(1.62モル)、ポリエチレングリコール#200(平均重合度n=4)161.3g(0.81モル)、トルエン102g、パラトルエンスルホン酸・1水和物10.1g、および次亜リン酸ナトリウム・1水和物2.1gを加え、110~120℃で生成水を系外に除きながらエステル化反応を行った。理論量の水の生成後、ジエチレングリコールモノブチルエーテル269.3g(1.66モル)を加え、120~130℃に加熱し、理論量の水が生成するまで引続きエステル化反応を行った。これを80℃まで冷却し、24%水酸化ナトリウム水溶液で中和を行い、水洗浄を行った。次いで、トルエンおよび過剰のアルコールを減圧除去し、アルカリ洗浄、水洗浄を行い、水を減圧除去し、数平均分子量966のポリエステル(反応生成物C)522.1gを得た。
【0048】
<比較合成例3>
実施例1と同様の反応装置を用いて、コハク酸476.1g(4.02モル)、エチレングリコール125.3g(2.01モル)、トルエン159g、パラトルエンスルホン酸・1水和物6.3g、および次亜リン酸ナトリウム・1水和物1.3gを加え、110~120℃で生成水を系外に除きながらエステル化反応を行った。理論量の水の生成後、ベンジルアルコール449.9g(4.12モル)を加え、120~130℃に加熱し、理論量の水が生成するまで引続きエステル化反応を行った。これを80℃まで冷却し、24%NaOH水溶液で中和を行い、水洗浄を行った。次いで、トルエンおよび過剰のアルコールを減圧除去し、アルカリ洗浄、水洗浄を行い、水を減圧除去し、数平均分子量343のポリエステル(反応生成物D)761.5gを得た。
【0049】
[数平均分子量測定]
分子量既知のポリスチレンを標準物質として、下記条件でGPCにより測定した。
・使用機器:HLC-8320(東ソー社製)
・カラム:TSKgel SuperHZ1000 + TSKgel SuperHZ2500 + TSKgel SuperHZ4000 + TSKgel guardcolumn SuperHZ-L 各1本直列
・溶剤(キャリアー):THF(テトラヒドロフラン)
・流量:0.350mL/min
・カラム温度:40℃
・検出機:RI
・注入量:10μL
・サンプル調製:測定対象のポリエステル約0.1gをTHF5mLに溶解させた。
・数平均分子量(Mn)の算出方法:
上記GPC測定により得られた多峰性のピークをひとかたまりとして取扱い、有機溶媒に該当するピークは除外し、ポリエステルの数平均分子量(Mn)を算出した。
【0050】
<実施例2および比較例1~6>
ポリ乳酸(PLA)系樹脂(Ingeo4032D(Nature Works社製))100重量部に対し、表1記載の通り可塑剤を加え、設定温度190℃でラボプラストミル(東洋精機製作所社製)を用いて溶融混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を180℃、冷却温度25℃で圧縮成形し、厚さ約1mmの試験シートを作成した。この試験シートを用いて下記する条件にて性能評価を行った。評価結果を表1にまとめて示す。
【0051】
[透明性評価]
厚さ約1mmの試験シートを、23℃、湿度50%の環境下、24時間放置後、ヘイズメーターNDH4000(日本電色工業社製)を用いて試験フィルムのヘイズ値を測定した。なお、比較例1(可塑剤無添加)に比し、ヘイズ値が同等乃至より低ければ、ポリ乳酸系樹脂本来の透明性が損なわれず、透明性に優れることを示す。
【0052】
[可塑性評価]
厚さ約1mmの試験シートを3号ダンベルで打ち抜き、該ダンベルを温度23℃、湿度50%RHの恒温室に24時間静置した後、引張速度200mm/minで引張試験を行い、試料が破断した際の伸びから引張破断伸度(%)を算出した。なお、引張破断伸度(%)の数値は大きい方が可塑性が高いことを示す。
【0053】
[ブリード性評価]
厚さ約1mmの試験シートを作成し、該シートの重量を測定した。その後、前記試験シートを80℃雰囲気下で24時間静置し、試験シート表面からブリードアウトした可塑剤を拭き取った後、試験シート重量を測定し、試験前と試験後の重量から重量減少率を算出した。なお、重量減少率が小さい方が耐ブリード性が高いことを示す。
【0054】
【0055】
・ATBC:アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業社製)
・SR-86A:アジピン酸ブトキシエトキシエチル(田岡化学工業社製)