(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157546
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】レーザ加工プロセスに適用される機械加工ツールパスを計算する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20241030BHJP
B23K 26/042 20140101ALI20241030BHJP
B23K 26/352 20140101ALI20241030BHJP
【FI】
B23K26/08 Z
B23K26/042
B23K26/352
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024070603
(22)【出願日】2024-04-24
(31)【優先権主張番号】23169645
(32)【優先日】2023-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519198557
【氏名又は名称】ジー・エフ マシーニング ソリューションズ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】GF Machining Solutions AG
【住所又は居所原語表記】Roger-Federer-Allee 7,2504 Biel,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シャルル エリク ラポルト
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィ コンセイユ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AB01
4E168AD18
4E168CB03
4E168CB04
4E168EA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レーザ加工プロセスに適用される機械加工ツールパスを計算する方法を提供する。
【解決手段】材料をアブレーションするために、レーザ工作機械に備え付けられたレーザヘッドによってレーザビームが放出される。この方法は、a.部品の幾何学形状を定める部品データを取得するステップと、b.部品の材料をアブレーションすることによって部品に機械加工されるパターンを定める画像データを取得するステップと、c.工作機械の軸の最大移動量を定める指定機械ストロークを取得するステップと、d.工作機械の機械加工領域に取り付けられる部品の位置を定める部品位置決めデータを取得するステップと、e.部品データと、画像データと、部品位置決めデータと、指定機械ストロークとに基づき、コンピュータによって機械加工ツールパスを計算するステップとを有し、機械加工ツールパスには、複数のレーザヘッド位置が含まれている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工プロセスに適用される機械加工ツールパスを計算する方法であって、前記レーザ加工プロセスでは、部品(1)にパターンを形成することを目的として、前記部品(1)の材料をアブレーションするために、レーザ工作機械(10)に備え付けられたレーザヘッド(12)によってレーザビームが放出される、方法において、前記方法は、
a.前記部品の幾何学形状を定める部品データを取得するステップと、
b.前記部品の前記材料をアブレーションすることによって前記部品に機械加工されるパターンを定める画像データを取得するステップと、
c.前記工作機械の1つの軸の最大移動量を定める指定機械ストロークを取得するステップと、
d.前記工作機械の機械加工領域に取り付けられる前記部品の位置を定める部品位置決めデータを取得するステップと、
e.前記部品データと、前記画像データと、前記部品位置決めデータと、前記指定機械ストロークとに基づき、コンピュータによって前記機械加工ツールパスを計算するステップとを有し、前記機械加工ツールパスには、複数のレーザヘッド位置が含まれている、方法。
【請求項2】
前記方法はさらにステップ、すなわち、
a.前記部品データおよび前記画像データに基づき、機械加工される複数の機械加工レイヤを定めるステップと、
b.それぞれの機械加工レイヤについて、前記部品データおよび前記画像データに基づき、複数のパッチ(3)を定めるステップであって、それぞれのパッチが前記レーザヘッドにより、1つのレーザヘッド位置から機械加工される定めるステップと、
c.それぞれのパッチについて、前記部品データと、前記画像データと、前記部品位置決めデータとに基づいてレーザヘッド位置を計算するステップと、
d.それぞれパッチの前記レーザヘッド位置と、前記指定機械ストロークとを比較するステップと、
e.前記レーザヘッド位置が、前記指定機械ストロークを超える場合、前記レーザヘッド位置を再計算するステップとを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
それぞれのパッチについて、機械加工方向(20)を定め、前記レーザヘッド位置が、前記指定機械ストロークを超える場合、前記機械加工方向に最小偏差を適用して、前記レーザヘッド位置が、前記指定機械ストローク内にあるようにする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
機械加工方向の偏差について閾値を設定し、特に前記閾値は、10度~80度の範囲にある、請求項3または4記載の方法。
【請求項5】
1つのパッチについての前記機械加工方向の前記偏差が、前記閾値を超える場合、前記パッチを少なくとも2つのパッチに分割する、請求項3から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのパッチのレーザヘッド位置が、前記指定機械ストロークを超える場合、全てのパッチの前記レーザヘッド位置を再計算する、請求項2から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記方法はさらに、
a.前記部品データおよび前記画像データに基づき、機械加工のための前記部品に対して相対的に初期レーザヘッド位置を計算するステップと、
b.全てのパッチについて計算した前記初期レーザヘッド位置に前記レーザヘッドを位置決めできるようにするのに必要な軸の最大移動量である、必要な機械ストロークを計算するステップと、
c.前記必要な機械ストロークに基づいて、最適部品位置を計算するステップと、
d.前記最適部品位置を使用して全てのパッチについて前記レーザヘッド位置を再計算するステップとを有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
プログラムがコンピュータによって実行される場合に、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法のステップを前記コンピュータに実行させる命令を有する、コンピュータプログラム製品。
【請求項9】
プログラムがコンピュータによって実行される場合に、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法のステップを前記コンピュータに実行させる命令を有する、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
レーザ加工プロセスによって部品を機械加工する方法であって、前記レーザ加工プロセスでは、部品にパターンを形成することを目的として前記部品の材料をアブレーションするために、レーザ工作機械に備え付けられたレーザヘッドによってレーザビームが放出される方法において、前記方法は、
a.請求項1から7までのいずれか1項記載の方法をコンピュータによって行うステップと、
b.前記工作機械に前記部品を取り付けるステップと、
c.決定した前記レーザヘッド位置に前記レーザヘッドを制御することによって前記部品を機械加工するステップとを有する、方法。
【請求項11】
前記部品位置決めデータを前記工作機械に表示する、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工プロセスに適用される機械加工ツールパスを計算する方法に関する。
【0002】
発明の背景
レーザテクスチャリングによって部品を機械加工するためのレーザアブレーション法および工作機械は一般に公知である。欧州特許出願公開第2301706号明細書には、レーザテクスチャリング機械の1つの実施例が記載されている。
【0003】
従来からレーザ加工プロセスを最適化するための様々な方法が提案されている。例えば、機械加工部品の品質を向上させ、機械加工時間を短縮するために、いくつかの方法が提案される。従来のアブレーション法はしばしば、例えば機械加工部品に視認可能なマーキング等の欠陥を生じさせてしまい、このアブレーション法は、製造される部品の品質に悪影響を及ぼしてしまう。文献欧州特許出願公開第3047932号明細書には、機械加工時間を短縮しながら、視認可能なマーキングを少なくすることが可能な方法が開示されている。
【0004】
最近、大型部品を彫刻するためのレーザ加工プロセスの需要が高まっており、特に、例えば1メートルを上回る寸法の大型部品に適用される5軸レーザ彫刻プロセスが好まれている。レーザテクスチャリング機械により、極めて大型のモールド、例えば、大型ポジモールド、ドアパネルおよびダッシュボードモールド等であっても複雑なテクスチャが機械加工可能になる。例えば、自動車産業用のモールドは、環境へのダメージを低減するために、化学プロセスによって作製されるのではなく、レーザアブレーションによって作製されることが可能である。従来、このような部品は通常、化学エッチングによって作製される。このような化学プロセスは、環境に対して非常に有害であることが公知であり、したがって、今日、化学プロセスは、プロセス効率および品質において利点を有するレーザテクスチャリングによって置き換えられる傾向がある。
【0005】
レーザテクスチャリングには、内部にこのような大型部品を収容することができかつ全ての方向から機械加工することができる大型のレーザ工作機械が必要である。機械の作業体積内でレーザによって彫刻可能な部品の最大サイズは、部品それ自体のトポロジに依存する。今日では、レーザテクスチャリングプロセスのシミュレーションは、考えられる最悪の部品形状を考慮することによって処理される。したがって、機械の可能なアブレーション体積が不必要に減少してしまい、レーザ加工プロセスは最適化されない。
【0006】
欧州特許第3834984号明細書には、このような大型部品を機械加工することを目的としたガントリタイプを有する5軸工作機械が開示されている。それにもかかわらず、工作機械の機械軸の長さは制限されている。例えば、GF Machining Solutions社のレーザ工作機械Laser S 2500は、X軸、Y軸およびZ軸においてそれぞれ、2500mm、2000mmおよび2500mmのストロークリミットを有する。したがって、現在のところ一部の大型部品は、レーザ工作機械によって機械加工することができない。その理由は、工作機械の容積が最適に使用されず、したがって、レーザ工作機械によって機械加工可能な部品のサイズに制限が生じてしまうからである。
【0007】
発明の概要
本発明の1つの目的は、機械加工体積を増大させて、レーザ加工プロセスに適用される機械加工ツールパスを計算する方法を提供することである。特に、機械加工体積を完全に利用することができる。本発明の1つの目的は、大型部品を機械加工するためのレーザ工作機械を提供することは、である。
【0008】
上の目的を達成するために、本発明によって提供されるのは、レーザ加工プロセスに適用される機械加工ツールパスを計算する方法であり、このレーザ加工プロセスでは、部品にパターンを形成することを目的として、この部品の材料をアブレーションするために、レーザ工作機械に備え付けられたレーザヘッドによってレーザビームが放出される。本方法は、部品の幾何学形状を定める部品データを取得するステップと、部品に機械加工されるパターンを定める画像データを取得するステップと、工作機械の軸の最大移動量を定める指定機械ストロークを取得するステップと、工作機械の機械加工領域に取り付けられる部品の位置を定める部品位置決めデータを取得するステップと、部品データと、画像データと、部品位置決めデータと、指定機械ストロークとに基づき、コンピュータによって機械加工ツールパスを計算するステップとを有し、ここでは機械加工ツールパスには、複数のレーザヘッド位置が含まれている。
【0009】
本発明の方法は特に、パターン、特にテクスチャまたはキャビティを彫刻するためのレーザ加工プロセスに適用可能である。
【0010】
レーザ工作機械は、レーザヘッドと、部品が取り付けられる機械テーブルとを有する。通常、機械テーブルは、機械加工中に同じ位置に留まるのに対し、レーザヘッドは、部品における様々な位置で材料をアブレーションするために様々な位置に移動する。工作機械は、少なくとも3つの直線軸X,Y,Zを有し、これにより、レーザヘッドはこれら3方向に移動される。先端工作機械、すなわち5軸レーザ工作機械は、2つの付加的な回転軸BおよびCを有し、これにより、レーザヘッドはこれらの2つの軸の周りに回転される。
【0011】
機械加工の前には、機械加工データを含む機械加工ファイルが、部品の幾何学形状と、そこに彫刻されるパターンとに基づいて生成されなければならない。工作機械の制御ユニットは、機械加工ファイルを読み取って、レーザヘッドの移動およびレーザヘッドから放出されるレーザビームの移動を制御することができる。というのは、機械加工ファイルにより、材料が除去されるべき場所と、レーザヘッドの対応する位置とが定められるからである。生成される機械加工ファイルは実質的に機械加工ツールパスから構成され、この機械加工ツールパスは、レーザ機械加工ヘッドが、部品に対して相対的に占有しなければならない一連のレーザヘッド位置と、それぞれの位置について、レーザビームがこの位置から行わなければならないスキャニングに対応する一連のアブレーション動作とを有する。したがって、機械加工ファイルには、機械軸および光軸の座標が含まれ、すなわち、機械加工ファイルには、機械軸の移動に対して相対的な定められた機械ツールパスと、光学デバイスの移動に対して相対的な光学ツールパスとが含まれている。特に、それぞれのレーザヘッド位置について、光学ツールパスを定めるサブプログラムがアクティブ化される。光学ツールパスは、光学デバイス、特にスキャナ、いわゆるガルバノメータによって実行される。
【0012】
5軸工作機械の機械軸には、3つの直線軸X,Y,Zと、2つの回転軸B,Cとが含まれている。光軸により、ガルバノメータの移動が定められる。レーザヘッドの位置決めは、機械加工時間と、テクスチャリングの仕上げ品質との両方に直接に影響を及ぼす。機械加工ファイルは一般に、工作機械の外部で外部処理ユニットまたはコンピュータに準備され、機械加工ジョブが開始されると工作機械にロードされる。しかしながら、処理ユニットまたはコンピュータにより、例えば工作機械の制御ユニットにより、工作機械において機械加工ファイルを生成することは除外されない。
【0013】
機械加工の準備フェーズでは、部品の幾何学形状のモデリングと、パターン、例えばテクスチャおよびキャビティ等を定める画像データの分析とが必要である。機械加工ファイルは、部品のパターンおよび幾何学形状を考慮することによって生成される。したがって、部品は通常、3Dモデリングファイルを生成するために、通常は3角形のメッシュ化によって数値的にモデリングされ、例えば部品データは、メッシュファイルである。
【0014】
画像データによって定められるパターンは付加的に、ソフトウェアによってそれぞれ処理されて、部品のモデリングされた3D面のメッシュファイルに適用される。通常、3次元テクスチャを表すためにグレーレベル画像が使用される。グレーレベル画像は、多数の個別のピクセルによって構成され、ここでは、テクスチャにおける位置の深さは、対応するピクセルの対応するグレーレベルとして定められる。ピクセルが明るいほど、その特定のポイントにおけるテクスチャの深さが浅くなる。ピクセルが暗いほど、その特定の位置におけるテクスチャは深くなる。
【0015】
通常、いわゆる機械加工体積がカスタムに提供される。機械加工体積は、機械加工できる部品のサイズを示す。今日まで、この計算された機械加工体積は、定められた機械加工方向において部品の表面にレーザビームが当たるというルールに基づいて決定される。というのは、この方向からのアブレーションにより、最良の機械加工結果が得られるからである。この状況は、アブレーションされる表面の幾何学形状と、機械加工領域に取り付けられる部品の位置とが、最大機械加工体積の計算のために考慮されないため、欠点を有する。したがって、機械加工体積は最適に利用されない。公知の方法では、機械加工ツールパスを決定するために指定機械ストロークは考慮されない。したがって、部品は、十分な機械加工体積を有する工作機械によってのみ機械加工することができる。本発明の方法により、機械加工体積の利用を最適化することによって機械加工可能な最大部品サイズを増大する可能性が得られる。
【0016】
したがって、部品データおよび画像データの他に、指定機械ストロークは、本発明の方法にとって不可欠である。それぞれのレーザ工作機械タイプについて、機械軸の最大ストロークがX、Y、Z方向に対して定められる。5軸工作機械については、2つの回転軸の最大ストロークも指定される。この値は、この工作機械によって機械加工可能な部品の最大サイズに直接に影響を及ぼす。指定工作機械ストロークは、工作機械メーカによって定められる工作機械の仕様である。機械ストロークは、3つの直線軸X、Y、Zと、2つの回転軸、すなわち、YおよびZの周りの回転軸として定められるB軸およびC軸とにおいて与えられる。より具体的には、本発明の方法は、次のステップ、すなわち、部品データと画像データとに基づき、機械加工される複数の機械加工レイヤを定めるステップと、それぞれの機械加工レイヤについて、部品データおよび画像データに基づき、複数のパッチを定めるステップであって、それぞれのパッチがレーザヘッドにより、1つのレーザヘッド位置から機械加工されるステップと、それぞれのパッチについて、部品データと、画像データと、部品位置決めデータとに基づいてレーザヘッド位置を計算するステップと、それぞれパッチのレーザヘッド位置と、指定機械ストロークとを比較するステップと、レーザヘッド位置が、実際の機械ストロークを超える場合、レーザヘッド位置を再計算するステップと、を有する。
【0017】
部品の完全なテクスチャリング機械加工は、複数のアブレーションレイヤを形成することと、それぞれのレイヤについて複数のアブレーションパッチを形成することとから成る。パッチは、レーザヘッドにより、1つのレーザヘッド位置からアブレーションされなければならない、1つのレイヤにおける定められた領域である。1つのパッチをアブレーションする間、機械軸は移動されず、レーザビームは、パッチ内の所望の位置に到達するように光軸によって移動される。例えば、1つのレイヤ当たり6000個の位置を有する37個のレイヤに部品が分割される場合、必要になるのは、この位置に対応するパッチを機械加工するために、レーザヘッドの222000回(37×6000)までの再位置決めと、それぞれのレーザヘッド位置に関連付けられているレーザ光線の特定のスキャンとを行うことである。
【0018】
公知の方法では、それぞれのパッチについてのレーザヘッド位置は、指定機械ストロークを考慮することなく決定される。本発明では、機械加工体積の有用性を最適化するために付加的な検証ステップが導入される。このステップでは、それぞれのパッチについて計算したレーザヘッド位置と、工作機械のメーカによって示された指定機械ストロークとを比較する。レーザヘッド位置が、指定機械ストロークを超える場合、このパッチについてのレーザヘッド位置を再計算しなければならない。再計算中に、このパッチをアブレーションするために可能ないくつかのレーザヘッド位置が計算され、これらのそれぞれと指定機械ストロークとが比較され、これらのうちの最良の位置が、機械加工ツールパスに含まれる最終的なレーザヘッド位置として選択される。この最良の位置は、機械加工品質、機械加工時間および機械加工体積のうちの1つまたは複数である、定められた判定基準に基づいて選択される。
【0019】
パッチは、レーザヘッドの1つの位置から機械加工されることが意図されているため、それぞれのパッチについて、定められた判定基準に基づいて、機械加工方向を決定して、パッチの機械加工に適用しなければならない。機械加工方向は、ガルバノメータがゼロ位置に制御される場合に、すなわちガルバノメータの全ての座標がゼロの場合に、機械加工される表面に当たるレーザビームの方向である。
【0020】
実際、アブレーションされる表面の法線に対して相対的な機械加工方向の角度がゼロである場合に、レーザ加工の最高品質を達成することができる。1つのパッチの指定点において、表面に対して垂直な線は、法線方向と称される。しかしながら、レーザビームが常に法線方向で表面に当たるような仕方で機械加工ツールパスを定めることは困難である。大半の用途では、部品の表面は平坦ではなく、パッチ内の小さな領域でさえ平坦ではなく、したがって、1つのパッチに対して1つの法線方向を定めることはほぼ不可能である。したがって、設計制約に基づき、それぞれのパッチについて機械加工方向を定めるためにアルゴリズムが適用される。
【0021】
したがって、好ましい1つの変形形態では、それぞれのパッチについて、機械加工方向を定め、レーザヘッド位置が指定機械ストロークを超える場合には、機械加工方向を調整し、特に機械加工方向に偏差を適用して、レーザヘッド位置が、機械ストローク内に留まることができるようにする。特に、再計算したレーザヘッド位置により、機械加工方向の最小偏差が保証される。目標は、再計算したレーザヘッド位置が機械加工ストローク内にあると同時に、機械加工方向が最適機械加工方向にできる限り近くなることを保証することである。
【0022】
本発明により、作業領域内の部品位置と、部品のトポロジと、工作機械の機械軸限界、すなわち指定機械ストロークとを考慮して、機械内部において、その指定機械ストローク内で、それぞれ可能なレーザヘッド位置を計算できるようにする、方法またはソフトウェアが提供される。本方法は、部品の品質を大きく劣化させることなく、機械加工体積を増大させることができる。機械加工方向は、機械加工部品の品質に直接に影響を及ぼすため、したがって、最適機械加工方向に対する、レーザテクスチャリング軸線の生じ得る偏差を最小限にすることにより、品質を保証することができる。
【0023】
有利には、機械加工品質を保証するために、機械加工方向の偏差についての閾値を設定する。閾値は好ましくは、調整した機械加工方向と、はじめに計算した機械加工方向との間の角度を定め、例えば、10度~60度の範囲内にある。
【0024】
特に、1つのパッチについての機械加工方向の偏差が閾値を超える場合、パッチを少なくとも2つのパッチに分割する。これにより、機械加工品質について妥協することなく、公知の方法の欠点が克服される。
【0025】
1つの変形形態では、指定機械ストロークを超えるレーザヘッド位置だけを再計算する。しかしながら、少なくとも1つのレーザヘッド位置が指定機械ストロークを超えた場合に、全てのレーザヘッド位置を再計算することも可能である。
【0026】
本発明の目標は、機械加工可能な最大部品サイズを増大させることである。これは、それぞれのパッチについて計算したレーザヘッド位置と、指定機械ストロークとを比較し、必要に応じて機械加工方向を変更することによって達成される。
【0027】
目的は、機械における部品の位置も部品の幾何学形状も既知である状況において、機械加工方向の最小角度偏差を許容することにより、機械内部で格段により正確に部品を処理できるか否かを決定することができるアルゴリズムを開発することである。
【0028】
好ましい1つの変形形態では、本方法は、部品データおよび画像データに基づき、機械加工のための部品に対して相対的に初期レーザヘッド位置を計算するステップと、全てのパッチについて計算した初期レーザヘッド位置にレーザヘッドを位置決めできるようにするのに必要な軸の最大移動量である、必要な機械ストロークを計算するステップと、必要な機械ストロークに基づいて、最適部品位置を計算するステップと、最適部品位置を使用して全てのパッチについてレーザヘッド位置を再計算するステップとを有する。
【0029】
レーザヘッド位置は、工作機械のどこに部品が取り付けられるかに依存する。工作機械においてこの部品が最適に位置決めされない場合、機械加工体積は無駄になってしまう。したがって、この変形形態では、まず最適部品位置を計算し、この最適部品位置を適用することにより、全てのパッチについてのレーザヘッド位置を計算する。機械ストロークリミットを考慮することなく機械加工方向が決定されるような仕方で、初期レーザヘッド位置を含む初期機械加工ツールパスを決定する。初期機械加工ツールパスに基づいて、必要な機械ストロークを計算する。必要な機械ストロークは、1つの方向における2つのパッチについての2つのレーザヘッド位置間の最大距離である。特に、必要な機械ストロークは、1つの方向において互いに最も離れている2つのパッチの2つのレーザヘッド位置間の距離である。したがって、X、YおよびZ軸について、必要な機械ストロークをそれぞれ計算する。好ましくは、2つの回転軸、BおよびCについても必要な機械ストロークを計算する。この値が得られると、最適部品位置を導出することができる。
【0030】
付加的には、必要な機械ストロークと、指定機械ストロークとを比較して、この部品を機械加工するのに指定機械ストロークが十分に大きいか否かを検証することができる。必要な機械ストロークが指定機械ストロークよりも大きい場合、少なくとも1つのパッチの機械加工方向を調整することによって機械加工パスを再計算する。論理的には、指定機械ストロークと、それぞれの軸についての必要な機械ストロークとを比較する。例えば、X軸についての指定機械ストロークと、X軸において必要な機械ストロークとを比較し、Y軸についての指定機械ストロークと、Y軸において必要な機械ストロークとを比較し、Z軸についての指定機械ストロークと、Z軸において必要な機械ストロークとを比較する。
【0031】
本発明は、レーザ加工プロセスによって部品を機械加工する方法であって、レーザ加工プロセスでは、部品にパターンを形成することを目的として部品の材料をアブレーションするために、レーザ工作機械に備え付けられたレーザヘッドによってレーザビームが放出される方法に関する。本方法は、次のステップ、すなわち、コンピュータにより、本発明による機械加工ツールパスを計算する方法を実施するステップと、工作機械に部品を取り付けるステップと、レーザヘッド位置を決定するためにレーザヘッドを制御することによって部品を機械加工するステップとを有する。
【0032】
好ましい1つの変形形態では、部品位置決めデータを工作機械に表示する。
【0033】
以下では、本発明のより具体的な説明をさらに記載する。添付の図面を参照して、実施形態を詳細に記載および説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】(a)(b)はそれぞれ、機械加工領域の概略図である。
【
図2】レーザヘッド位置がどのように変更されるかを示す概略図である。
【
図3】必要な機械ストロークの決定を示す概略図である。
【
図4】(a)(b)はそれぞれ、最適部品位置の適用を示す概略図である。
【
図5】(a)(b)はそれぞれ、パッチをより多くのパッチに分割する変形形態を示す概略図である。
【0035】
例示的な実施形態
図1aおよび
図1bには、レーザ工作機械10の機械加工領域11の概略図が示されている。この概略図は簡略化されており、したがって部品1が取り付けられた機械加工領域11だけが示されている。さらに、X-Z平面の2次元図が示されている。太い矢印は、工作機械のハウジングの内法である、工作機械の内寸法を示している。X方向における長さは文字Lで示されており、Z方向における高さは文字Hで示されている。指定機械ストロークは通常、工作機械の内寸法よりも小さい。機械ストロークは、機械軸移動限界を表す。この値により、基準点Rにおいて測定されるレーザヘッド12の移動範囲が得られる。
【0036】
図1aには、細い矢印により、またMSSxで示された、X方向における機械ストロークが示されている。
図1aには、レーザヘッドの3つの位置P0,P1およびP2が示されている。位置P0は、X方向、Y方向およびZ方向におけるゼロ点を示す。レーザヘッドは、+Xおよび-Xの2つの向きに移動可能である。位置P1およびP2は、X軸移動限界位置を示しており、+Xおよび-X向きにおける、レーザヘッドの最も離れた位置である。これらの2つの限界位置、すなわち点P1およびP2にレーザヘッドを位置決めすることによって測定される、X方向における基準点Rの距離により、X方向における機械ストロークMSSxが得られる。
【0037】
図1bには、細い矢印により、またMSSzで示された、Z方向における機械ストロークが示されている。
図1bには、レーザヘッドの3つの位置P0,P3およびP4が示されている。位置P0はここでもゼロ点を示す。レーザヘッドは、+Zおよび-Zの2つの向きに移動可能である。位置P3およびP4は、Z軸移動限界位置を示しており、+Zおよび-Z向きにおける、レーザヘッドの最も離れた位置である。これらの2つの限界位置、すなわち点P3およびP4にレーザヘッドを位置決めすることによって測定される、Z方向における基準点Rの距離により、Z方向における機械ストロークMSSzが得られる。Y方向における機械ストロークも同様に決定可能であるが、図面には示されていない。
【0038】
図2には、レーザビームにより、部品の材料がどのようにアブレーションされるかが示されている。この部品は複数の機械加工レイヤに分割されている。それぞれのレイヤはさらに、複数のパッチに分割される。
図2、
図3、
図4aおよび
図4bには、X-Z平面の図が示されている。本発明の焦点は、機械加工レイヤおよびパッチをどのようにして作製するのかという点にあるのではないため、図面では、機械加工レイヤは描画されておらず、パッチは、X方向におけるそれらの位置を示すために、単に文字A,BおよびCによって示されているだけである。
【0039】
図2に示したように、レーザヘッドにより、定めた位置において部品の表面に当たるように、機械加工方向20にレーザビームが放出される。このとき、この位置における部品の材料がアブレーションされる。破線M1は、部品の1つの機械加工レイヤにおけるパッチAについての理想的な機械加工方向20を示しており、機械加工方向20は、この点における部品の表面2に対して直交している。しかしながら、この機械加工方向からパッチAを機械加工しようとする場合、レーザヘッドは、X方向における指定機械ストロークMSSxを超えてしまうことになる。この理由から、公知の方法を適用すると、この部品は機械加工することができない。公知のCAMソフトウェアは、レーザヘッドの最終位置を適合させることはできず、またレーザヘッドの移動が、指定機械ストロークに近いかまたはより遠い場合、部品を処理できるようにするために、角度偏差を可能にすることによって機械加工方向を調整する。本発明では、機械加工ツールパスの計算のための入力パラメータとして機械ストロークが設けられており、これにより、計算したレーザヘッド位置と、指定機械ストロークとを比較することができる。指定機械ストロークに適合しない不良なレーザヘッド位置は、機械加工ツールパスの計算中に既に調整可能である。破線M2は、新たなレーザヘッド位置で調整された1つの機械加工方向を示している。この新たなレーザヘッド位置は、指定機械ストローク内にある。このレーザヘッド位置はもちろん、2つ以上の方向において、指定機械ストロークを超えてしまうことがあり、これはわかり易くするために図には描画されていない。
【0040】
図3には、必要な機械ストロークがどのように計算されるかが略示されている。パッチBおよびCを機械加工するために、位置P1およびP2にそれぞれ、レーザヘッドを位置決めしなければならない。これらは、X方向において互いから最も離れた位置である。指定機械ストロークは、例えば、MSSxによって示される、X方向における長さである。X方向における必要な機械ストロークは、X方向におけるP1とP2との間の距離、すなわち、MSCxと示される、座標x1と座標x2との差分である。Y方向およびZ方向における、必要な機械ストロークは、これらの図面には描画されていないが、同じやり方で決定することができる。
【0041】
図4aおよび
図4bには、最適部品位置が最初に決定され、次いでこの位置が機械加工ツールパスの計算に適用される変形形態が略示されている。
図4aには、部品が最適位置に位置決めされていない状況が示されている。黒のドットCPxおよびCMxは、X方向における部品の中央位置および機械ストロークの中央位置をそれぞれ示している。部品は、機械加工領域の右側に寄って配置され、したがってパッチCを機械加工するためのレーザヘッド位置P2は指定機械ストロークを超えてしまう。レーザヘッドの位置は、M4からM5に機械加工方向を調整することによって再計算される。レーザヘッド位置は、点P2から点P3に変更される。この新たなレーザヘッド位置は、指定機械ストローク内にある。しかしながら、調整された位置は、パッチの法線方向に対して大きな角度偏差を有する。この機械加工方向を適用することによってこの部品を機械加工することはできるが、この位置は、最適位置に部品を位置決めすることによってさらに改善することができる。また、指定機械ストローク内に新たな位置が見つからないか、または機械加工方向の偏差が大きすぎるために、新たな位置に位置P2を調整できないことも起こり得る。したがって、最適位置に部品を位置決めすることは、機械加工品質に寄与し、さらに、機械加工体積を改善することができる。
【0042】
これを実現するため、機械ストロークを考慮することなく、初期機械加工ツールパスを決定する。パッチBとパッチCとは、X方向において距離が最も大きい2つのパッチである。したがって、レーザヘッド位置P1およびP2は、レーザヘッドの最大X軸方向移動を必要とする位置である。位置P1およびP2の座標を供給する、決定された初期機械加工ツールパスに基づいて、X方向における必要な機械ストロークを計算する。決定した必要な機械ストロークMSCxに基づいて最適部品位置を計算し、例えば、
図4bに示したように最適部品位置BPxに部品を配置する。
【0043】
最適部品位置を決定した後、最適部品位置を適用することによって機械加工パスを再度計算する。新たに計算したレーザヘッド位置P2がここで指定機械ストローク内にある場合、この位置が、パッチCについての最終的なレーザヘッド位置である。新たに計算したレーザヘッド位置P2が依然として指定機械ストロークを超えている場合、機械加工方向を調整して、レーザヘッド位置をP2からP3に変更する。部品が最適部品位置に位置決めされると、機械加工方向M6およびM7を改善できるように、レーザヘッドの位置P1およびP2を調整することができる。2つの機械加工方向はここでは、パッチの法線方向に対し、より小さい角度偏差を有する。
【0044】
わかり易くするため、
図1、
図2、
図3、
図4aおよび
図4bでは全て、X-Z平面における2次元の図が示されており、実施例は、1つの方向、すなわちX方向についてのみ示されている。しかしながら、本発明の方法は、簡略化されたこの実施例に限定されない。レーザヘッドは5軸において移動可能であり、したがって、レーザヘッド位置を調整しなければならない場合には、任意の5軸の組み合わせが必要となり得る。
【0045】
図5aおよび
図5bには、機械加工部品の品質を最適化するために、1つのパッチを少なくとも2つのパッチに分割する実施形態が示されている。
図5aには、1つの機械加工レイヤの1つのパッチ3が示されている。計算したレーザヘッド位置は、指定機械ストロークを超えてしまうため、偏差角度が大きい位置P10にレーザヘッド位置を調整しなければならない。この位置からパッチを機械加工できたとしても、機械加工部品の品質は不良である。この問題を克服するため、このパッチを2つのパッチ3a,3bに分割する。機械加工パスを再計算し、レーザヘッドを位置P11および位置P12に位置決めすることにより、これらの2つのパッチを機械加工することができる。これら2つの位置は、指定機械ストローク内にあり、機械加工部品の品質が保証される。この実施例はまた、機械加工部品の品質が、機械加工時間よりも優先度が高いという状況を表している。1つのパッチを複数のパッチに分割することは、レーザヘッドの再位置決めに起因して、機械加工時間の増大を生じさせてしまう可能性がある。したがって、機械加工時間が、機械加工部品の品質よりも優先度が高い場合には、別のストラテジを選択することができ、例えば、パッチを複数のパッチに分割しない。
【符号の説明】
【0046】
1 部品
2 部品の表面
3,3a,3b パッチ
4 メッシュ状三角形
10 工作機械
11 機械加工領域
12 レーザヘッド
20,21 機械加工方向
【外国語明細書】