(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157556
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】同軸ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 11/18 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
H01B11/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024071862
(22)【出願日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2023071860
(32)【優先日】2023-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 克昭
(72)【発明者】
【氏名】大橋 史弥
【テーマコード(参考)】
5G319
【Fターム(参考)】
5G319FC01
5G319FC08
5G319FC19
5G319FC26
(57)【要約】
【課題】
所定の伝送特性を確保しつつ、軽量化が可能な同軸ケーブルを提供することにある。
【解決手段】
内部導体の外周に誘電体、外部導体、外被を順次形成した同軸ケーブルにおいて、誘電体は第1樹脂を主成分とする樹脂組成物とし、第1樹脂の密度は該内部導体を構成する導体素線の主成分である金属の密度の5分の1未満、好ましくは10分の1未満とする。第1樹脂は主鎖が螺旋状の構造を有する高分子材料とし、密度を0.80g/cm
3以上、0.90g/cm
3未満、比誘電率を2.0以上、2.2以下とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体の外周に誘電体、外部導体、外被を順次形成した同軸ケーブルであって、
該誘電体は第1樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、
該第1樹脂の密度は該内部導体を構成する導体素線の主成分である金属の密度の5分の1未満であることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
該第1樹脂の密度は該内部導体を構成する導体素線の主成分である金属の密度の10分の1未満であることを特徴とする、請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
該導体素線の主成分である金属は、銅又は銅合金であることを特徴とする、請求項2に記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
該第1樹脂の密度が0.80g/cm3以上、0.90g/cm3未満であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の同軸ケーブル。
【請求項5】
該第1樹脂の比誘電率が2以上、2.2以下であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の同軸ケーブル。
【請求項6】
該第1樹脂の温度260℃、荷重5kgで測定したメルトフローレイトが、10~30g/10minの範囲にあることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の同軸ケーブル。
【請求項7】
該第1樹脂は、主鎖が螺旋状の構造を有する高分子材料であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の同軸ケーブル。
【請求項8】
該高分子材料の側鎖は、炭素数が2以上の置換基であることを特徴とする、請求項7に記載の同軸ケーブル。
【請求項9】
該第1樹脂はポリ(4-メチル-1-ペンテン)であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の同軸ケーブル。
【請求項10】
該第1樹脂は、カーボンブラック、及びチタン酸化物を顔料として含有していることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の同軸ケーブル。
【請求項11】
該顔料における該カーボンブラックの含有量は、該チタン酸化物の含有量よりも少ないことを特徴とする、請求項10に記載の同軸ケーブル。
【請求項12】
該顔料は、該カーボンブラックを1~10wt%、該チタン酸化物を80~90wt%含有することを特徴とする、請求項11に記載の同軸ケーブル。
【請求項13】
該顔料は、銅酸化物、マンガン酸化物、コバルト酸化物、アルミニウム酸化物を混合した、銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物も含有することを特徴とする、請求項12に記載の同軸ケーブル。
【請求項14】
該顔料は、該カーボンブラック、該チタン酸化物、及び該銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物の3成分のみで構成され、該銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物は1~10wt%含有することを特徴とする、請求項13に記載の同軸ケーブル。
【請求項15】
該外皮が、該第1樹脂を主成分とする樹脂組成物からなることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の同軸ケーブル。
【請求項16】
内部導体の外周に誘電体、外部導体、外被を順次形成した同軸ケーブルであって、
該誘電体と該外皮はポリ(4-メチル-1-ペンテン)を主成分とする樹脂組成物からなり、
該ポリ(4-メチル-1-ペンテン)の密度は該内部導体を構成する導体素線の主成分である金属の密度の5分の1未満であることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項17】
該ポリ(4-メチル-1-ペンテン)の密度は該内部導体を構成する導体素線の主成分である金属の密度の10分の1未満であることを特徴とする、請求項16に記載の同軸ケーブル。
【請求項18】
該導体素線の主成分である金属は、銅又は銅合金であることを特徴とする、請求項17に記載の同軸ケーブル。
【請求項19】
該誘電体は、カーボンブラック、及びチタン酸化物を顔料として含有していることを特徴とする、請求項16~18の何れか一項に記載の同軸ケーブル。
【請求項20】
該顔料における該カーボンブラックの含有量は、該チタン酸化物の含有量よりも少ないことを特徴とする、請求項19に記載の同軸ケーブル。
【請求項21】
該顔料は、該カーボンブラックを1~10wt%、該チタン酸化物を80~90wt%含有することを特徴とする、請求項20に記載の同軸ケーブル。
【請求項22】
該顔料は、銅酸化物、マンガン酸化物、コバルト酸化物、アルミニウム酸化物を混合した、銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物も含有することを特徴とする、請求項21に記載の同軸ケーブル。
【請求項23】
該顔料は、該カーボンブラック、該チタン酸化物、及び該銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物の3成分のみで構成され、該銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物は1~10wt%含有することを特徴とする、請求項22に記載の同軸ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン等の情報通信機器においては、通信、データ伝送の高速化、大容量化が求められる一方で、小型化、軽量化も求められている。
【0003】
これらの機器内で使用される同軸ケーブルは所定の伝送特性を維持しつつ、細径化、軽量化が求められる。
【0004】
軽量化を目指した同軸ケーブルとしては、特許文献1、2に記載のものが挙げられる。
【0005】
特許文献1に記載の同軸ケーブルは発泡絶縁層を使用することで軽量化を図っているが、所定の伝送特性を得るため発泡状態の管理が必要となる課題が存在する。
【0006】
特許文献2に記載の同軸ケーブルは外部導体にアルミニウムを使用することで軽量化を図っているが、遮蔽性に寄与する外部導体の材料が限定されてしまい、所定の伝送特性を得ために必要な遮蔽性を確保できない場合も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-134775号公報
【特許文献2】特開2018-26317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、所定の伝送特性を確保しつつ、軽量化が可能な同軸ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、同軸ケーブルの構造を鋭意検討した結果、以下の構造を採用することで上記の課題の解決に至った。
【0010】
(1)内部導体の外周に誘電体、外部導体、外被を順次形成した同軸ケーブルであって、該誘電体は第1樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、該第1樹脂の密度は該内部導体を構成する導体素線の主成分である金属の密度の5分の1未満であることを特徴とする同軸ケーブル。
(2)該第1樹脂の密度は該内部導体を構成する導体素線の主成分である金属の密度の10分の1未満であることを特徴とする、上記(1)に記載の同軸ケーブル。
(3)該導体素線の主成分である金属は、銅又は銅合金であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の同軸ケーブル。
(4)該第1樹脂の密度が0.80g/cm3以上、0.90g/cm3未満であることを特徴とする、上記(1)~(3)の何れかに記載の同軸ケーブル。
(5)該第1樹脂の比誘電率は2.0以上、2.2以下であることを特徴とする、上記(1)~(4)の何れかに記載の同軸ケーブル。
(6)該第1樹脂の温度260℃、荷重5kgで測定したメルトフローレイトが、10~30g/10minの範囲にあることを特徴とする、上記(1)~(5)の何れかに記載の同軸ケーブル。
(7)該第1樹脂は、主鎖が螺旋状の構造を有する高分子材料であることを特徴とする、上記(1)~(6)の何れかに記載の同軸ケーブル。
(8)該高分子材料の側鎖は、炭素数が2以上の置換基であることを特徴とする、上記(7)に記載の同軸ケーブル。
(9)該第1樹脂はポリ(4-メチル-1-ペンテン)であることを特徴とする、上記(1)~(8)の何れかに記載の同軸ケーブル。
(10)該第1樹脂は、カーボンブラック、及びチタン酸化物を顔料として含有していることを特徴とする、上記(1)~(9)の何れかに記載の同軸ケーブル。
(11)該カーボンブラックの含有量は、該チタン酸化物の含有量よりも少ないことを特徴とする、上記(10)に記載の同軸ケーブル。
(12)該顔料は、該カーボンブラックを1~10wt%、該チタン酸化物を80~90wt%含有することを特徴とする、上記(10)または(11)に記載の同軸ケーブル。
(13)該顔料は、銅酸化物、マンガン酸化物、コバルト酸化物、アルミニウム酸化物を混合した、銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物も含有することを特徴とする、上記(10)~(12)の何れかに記載の同軸ケーブル。
(14)該顔料は、該銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物を1~10wt%含有することを特徴とする、上記(13)に記載の同軸ケーブル。
(15)該顔料は、該カーボンブラック、該チタン酸化物、及び該銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物の3成分のみで構成されることを特徴とする、上記(13)または(14)に記載の同軸ケーブル。
(16)該外皮が、該第1樹脂を主成分とする樹脂組成物からなることを特徴とする、上記(1)~(15)の何れかに記載の同軸ケーブル。
【0011】
加えて、上記(1)~(16)に記載された構成を適宜選択、組み合わせた構成も、本開示の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明の同軸ケーブルの実施例の一例である。
【
図3】実施例、比較例の同軸ケーブルの挿入損失の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について添付図面を参照しながら説明する。
【0014】
本発明の同軸ケーブル1は
図1に示したように、内部導体10の外周に誘電体20、外部導体30、外被40を順次形成した構造を有する。
【0015】
本発明において、誘電体20は第1樹脂を主成分とする樹脂組成物からなり、第1樹脂の密度は内部導体10を構成する導体素線11の主成分である金属の密度の5分の1未満となっている。
【0016】
ここで「主成分」とは、上記樹脂組成物が含有する成分のうち質量基準で最も多い成分(例えば50質量%以上含有される成分)を意味する。
【0017】
導体素線11は所定の導電性が求められるため、通常その材料は銅に代表される導電性金属から選択されることになり、軽量化できる余地は限られている。このため、誘電体20の主成分である第1樹脂の密度を導体素線11の主成分の密度の5分の1未満とすることで、同軸ケーブル1の軽量化に寄与できる。
【0018】
本発明の同軸ケーブル1は、内視鏡、超音波診断装置等の医療用機器や、小型情報機器の配線用として複数本束ねた多芯ケーブルの態様や、制御機器等と電気接続するための端末基板等に複数本を接続したケーブルハーネスの態様で使用されることがあるが、軽量化された同軸ケーブル1を使用することで多芯ケーブルやケーブルハーネス、これらが使用された機器類の軽量化を促すことができる。
【0019】
特に、多芯ケーブルやケーブルハーネスに使用される同軸ケーブル1の本数が多くなるほど、本発明による軽量化の効果が際立つことになる。
【0020】
より好ましくは、第1樹脂の密度は導体素線11の主成分の密度の10分の1未満とする。
【0021】
具体的には、第1樹脂の密度は0.80g/cm3以上、0.90g/cm3未満とするのが好ましい。
【0022】
同軸ケーブル1には所定の伝送特性が求められることを考慮すると、第1樹脂の比誘電率は低くするのが望ましく、具体的には2.0以上、2.2以下とするのが好ましい。
【0023】
第1樹脂の比誘電率をこの範囲に設定することで、同軸ケーブル1の伝送特性確保に寄与する。
【0024】
本発明における誘電体20の肉厚は特に限定されないが、同軸ケーブル1を細径化する観点から、0.06~0.30mm程度の薄肉に形成するのが好ましい。
【0025】
誘電体20を薄肉に形成する観点から、第1樹脂は小さいMFR(メルトフローレイト)を示すものが好ましく利用でき、具体的にはMFRが10~30g/10min(温度260℃、荷重5kgでの測定値)の樹脂が好ましく、より好ましくはMFRが15~25g/10minの範囲である。
【0026】
第1樹脂としては、主鎖が螺旋状の構造を有する高分子材料が好ましく利用できる。主鎖が螺旋状の構造であることで、コイルの様に中心部に空間が形成され、高分子材料内に分子レベルの大きさで無数の空間が形成されることになる。高分子材料内に空間が形成されることで、第1樹脂の低密度化、低誘電率化に寄与する。
【0027】
第1樹脂として主鎖が螺旋状の構造を有する高分子材料を使用する場合、その側鎖は炭素数が2以上の置換基とするのが好ましい。炭素数が2以上の置換基は嵩高いため、第1樹脂の低密度化、低誘電率化に寄与する。
【0028】
第1樹脂として好ましく利用できる樹脂としては、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)が挙げられる。ポリ(4-メチル-1-ペンテン)は7モノマーで2回転する7/2螺旋構造の主鎖と、炭素数が4の側鎖を有し、密度が約0.83g/cm3、比誘電率が約2.1であり、低密度と低比誘電率を示す樹脂として好ましく利用できる。
【0029】
加えて、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)のMFRは約20g/10minであり、誘電体20の薄肉形成も容易であるとともに、ハロゲンフリーが求められる際にも利用することができる。
【0030】
また、第1樹脂に添加剤を含有させても良い。添加剤の例としては、レーザ光による外部導体30の溶融切断を行う際に、レーザ光に対する耐久性を第1樹脂に付与する顔料類、架橋によって耐熱性を上げるための架橋剤、誘電体20を発泡させるための発泡剤、発泡核剤等が挙げられる。
【0031】
レーザ光に対する耐久性を第1樹脂に付与する顔料としては、カーボンブラック、チタン酸化物が挙げられる。
【0032】
カーボンブラックは黒色顔料の1種であり、誘電体20に使用する第1樹脂にカーボンブラックを添加することでレーザ光が誘電体20に吸収されるようになり、レーザ光による内部導体10の損傷を抑制することができる。
【0033】
チタン酸化物は白色顔料の一種であり、外部導体30の溶融切断に使用されることが多い波長1064nmのレーザ光を散乱・反射させる性質を有する。誘電体20に使用する第1樹脂にチタン酸化物を添加することで、誘電体20がレーザ光を散乱・反射させるようになり、レーザ光による内部導体10及び誘電体20の損傷を抑制することができる。
【0034】
本発明ではカーボンブラック、及びチタン酸化物を第1樹脂に添加して使用することで、内部導体10及び誘電体20の損傷の抑制に寄与する。
【0035】
カーボンブラックはレーザ光の吸収機能、チタン酸化物はレーザ光の散乱・反射機能を有するため、両者が誘電体20に含まれることで、カーボンブラックによるレーザ光の吸収機能を誘電体20に付与しつつも、チタン酸化物による散乱・反射によって過度な吸収を抑制できるため、内部導体10の損傷を抑制しつつ、誘電体20の損傷抑制にも寄与する。
【0036】
カーボンブラックと酸化チタンとを含有させる際は、必要以上のレーザ光吸収による誘電体20の損傷や特性変化を抑制する観点からカーボンブラックの含有量を、チタン酸化物の含有量よりも少なくするのが好ましい。
【0037】
具体的な含有量は、顔料中のカーボンブラックが1~10wt%、チタン酸化物が80~90wt%である。
【0038】
誘電体20の絶縁破壊を抑制する観点から、誘電体20に使用する第1樹脂は、銅酸化物、マンガン酸化物、コバルト酸化物、アルミニウム酸化物を混合した、銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物も顔料として含有するのが好ましい。
【0039】
誘電体20に銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物を含有させることによって、レーザ光による誘電体20の絶縁特性の悪化が抑制され、レーザ光に対する誘電体20の耐久性向上に寄与する。
【0040】
銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物の具体的な含有量は、顔料中に1~10wt%である。
【0041】
誘電体20に使用する第1樹脂に銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物を含有させる際は、顔料をカーボンブラック、チタン酸化物、及び銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物の3成分のみで構成するのが好ましい。
【0042】
顔料成分を上述した3成分のみとすることで、他の顔料によるレーザ光の吸収、反射・散乱への影響を抑制でき、誘電体20の損傷抑制と絶縁特性の安定化とに寄与する。
【0043】
上述したチタン酸化物、及び銅-マンガン-コバルト-アルミニウム系酸化物は、高温焼成した後に誘電体20に使用する第1樹脂に含有させても良い。
【0044】
また、誘電体20における顔料の含有量は、誘電体100wt%に対して0.1~6.0wt%が好ましい。
【0045】
外皮40を構成する材料は特に限定されず、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなど、同軸ケーブルの外皮として使用されている樹脂材料を適宜選択して使用することができる。
【0046】
同軸ケーブル1の軽量化を促す観点では、外皮40も誘電体20に使用した第1樹脂を主成分として構成するのが好ましい。なお、外皮40に使用される第1樹脂には上述した顔料を含有させなくても良い。
【0047】
本発明における外皮40の肉厚、外径は特に限定されないが、同軸ケーブル1を細径化する観点から、肉厚は0.03~0.30mm程度、外径は0.5~1.5mm程度に設定されるのが好ましい
【0048】
本発明の同軸ケーブル1に使用される外部導体30の態様は特に限定されず、編組シールド、金属素線を螺旋状に巻いた横巻シールド、金属箔あるいは樹脂-金属積層テープを巻回もしくは縦添え巻きした態様など、同軸ケーブルの外部導体として使用されている態様を適宜選択して使用することができる。
【0049】
内部導体10を構成する導体素線11の材料は、導体材料として知られている金属や合金を適宜選択して使用すればよく、具体的には銅、銀、アルミニウム等の金属や、それらに錫、鉄、亜鉛、銀、ニッケル等を添加した合金等を使用することができる。
【0050】
また、導体素線11の表面は、銀、錫等のメッキが施されてもよい。
【0051】
伝送特性を重視する場合、導体素線11の材料は銅又は銅合金が好ましく利用できる。銅の密度は一般的に8.9g/cm3前後であるが、第1樹脂の密度を銅の5分の1未満、より好ましくは10分の1未満とすることで、同軸ケーブル1の軽量化に寄与する。
【0052】
内部導体10の構成は特に限定されず、単線、撚線、集合撚線等から適宜選択して利用することができる。屈曲、捻回に対する耐久性向上を考慮すると、撚線又は集合撚線が好ましく利用できる。
【0053】
本発明における内部導体10の直径、導体断面積は特に限定されないが、細径、軽量の同軸ケーブル1とする観点から、AWG30~50程度の内部導体10が好ましく利用できる。
【実施例0054】
以下に本発明の同軸ケーブル1の実施例を示す。
【0055】
[実施例1]
外径0.08mmの銀メッキ軟銅線7本を撚り合わせたAWG32相当の内部導体10の外周に、誘電体20としてポリ(4-メチル-1-ペンテン)を押出被覆する。誘電体20の肉厚は0.23mmとした。
【0056】
次いで、誘電体20の外周に外部導体30を設ける。実施例1における外部導体30は
図2に示したように、銅PETテープ31と編組シールド32とで構成した。
【0057】
具体的には、誘電体20の外周に厚さ8μmの銅層と厚さ4μmのPET層からなる銅PETテープ31を縦添え巻きし、更に3本のシールド素線を互いに並べてなる素線束を単位として、16組の素線束で構成された編組シールド32を施し、外部導体30を構成した。編組シールド32の編組密度は90%に設定し、シールド素線には、外径0.05mmの銀メッキ軟銅線を使用した。
【0058】
外部導体30の外周に、外皮40として誘電体20に使用したものと同じポリ(4-メチル-1-ペンテン)を押出被覆し、実施例1の同軸ケーブル1-1が完成した。外皮40の肉厚は0.1mm、同軸ケーブル1-1の外径は1.1mmとした。
【0059】
[実施例2]
実施例2の同軸ケーブル1-2は、
図1に示した構成とした。実施例1との主な相違点は、外部導体30の構成である。
【0060】
外径0.05mmの銀メッキ軟銅線7本を撚り合わせたAWG36相当の内部導体10の外周に、誘電体20としてポリ(4-メチル-1-ペンテン)を押出被覆する。誘電体20の肉厚は0.15mmとした。
【0061】
次いで、誘電体20の外周に外部導体30を設ける。外部導体30は、3本のシールド素線を互いに並べてなる素線束を単位として、16組の素線束で構成された編組シールドとし、編組密度は93%に設定した。シールド素線には、外径0.05mmの銀メッキ軟銅線を使用した。
【0062】
外部導体30の外周に、外皮40として誘電体20に使用したものと同じポリ(4-メチル-1-ペンテン)を押出被覆し、実施例2の同軸ケーブル1-2が完成した。外皮40の肉厚は0.06mm、同軸ケーブル1-2の外径は0.8mmとした。
【0063】
[比較例1]
実施例1の同軸ケーブル1-1の誘電体20、外皮40を、同軸ケーブルに使用される樹脂材料として従来から使用されているFEPで形成したものを、比較例1の同軸ケーブル1’-1とした。
【0064】
[比較例2]
実施例1の同軸ケーブル1-1の誘電体20、外皮40を、同軸ケーブルに使用される樹脂材料として従来から使用されているポリエチレンで形成したものを、比較例2の同軸ケーブル1’-2とした。
【0065】
[比較例3]
実施例2の同軸ケーブル1-2の誘電体20、外皮40を、同軸ケーブルに使用される樹脂材料として従来から使用されているPFAで形成したものを、比較例3の同軸ケーブル1’-3とした。
【0066】
[比較例4]
実施例2の同軸ケーブル1-2の誘電体20、外皮40を、同軸ケーブルに使用される樹脂材料として従来から使用されているポリエチレンで形成したものを、比較例4の同軸ケーブル1’-4とした。
【0067】
実施例、比較例の同軸ケーブルに対し、以下の評価を行った。
【0068】
[重量比較]
実施例、比較例の同軸ケーブルの1mあたりの重量を測定して比較した。結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
実施例1の同軸ケーブル1-1は、比較例1と比べて約28%、比較例2と比べて約2%重量が減少した。1本あたりではそれぞれ約0.9g、約0.06gの重量減少に留まるが、本発明の同軸ケーブル1は多芯ケーブルなど、複数本を束ねた態様で使用されることが想定されるものであり、その際の軽量化効果は顕著なものになる。
【0071】
実施例2の同軸ケーブル1-2は、比較例3と比べて約27%、比較例4と比べて約2%重量が減少した。1本あたりではそれぞれ約0.5g、約0.03gの重量減少に留まるが、実施例1と同様、複数本束ねた際の軽量化効果は顕著なものになる。
【0072】
[伝送特性比較]
伝送特性の評価として、実施例1と比較例1、2の挿入損失を比較した。
【0073】
挿入損失は、長さ1mに調整した評価対象の同軸ケーブルの両端にコネクタを接続したものを、シールドルーム内で直線状にした状態でネットワークアナライザに接続し、信号を掃引してSパラメータ(S21)を測定した。測定結果を
図3に示す。
【0074】
比較例1に対し、実施例1の同軸ケーブル1-1は挿入損失が僅かに増加しているが、実使用上問題のない範囲であり、ふっ素樹脂を使用した比較例1の同軸ケーブル1’-1と比較して軽量化されていることも考慮すると、実施例1の同軸ケーブル1-1は軽量化と伝送特性を両立した同軸ケーブルと評価することができる。
【0075】
比較例2に対し、実施例1の同軸ケーブル1-1は挿入損失が低下しており、先述したように1mあたりの重量も軽くなっている。この点からも、実施例1の同軸ケーブル1-1は軽量化と伝送特性を両立した同軸ケーブルと評価することができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について述べたが、特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形及び変更を行って実施することが可能である。