IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用表示装置 図1
  • 特開-車両用表示装置 図2
  • 特開-車両用表示装置 図3
  • 特開-車両用表示装置 図4
  • 特開-車両用表示装置 図5
  • 特開-車両用表示装置 図6
  • 特開-車両用表示装置 図7
  • 特開-車両用表示装置 図8
  • 特開-車両用表示装置 図9
  • 特開-車両用表示装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157573
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20241031BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20241031BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241031BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60J5/00 G
B60J5/10 Z
B60J5/04 C
B60J5/00 H
E05B49/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071915
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀川 一樹
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250CC26
2E250FF23
2E250FF36
2E250HH01
2E250JJ03
2E250LL01
(57)【要約】
【課題】車外の搭乗者に対して着座しようとする座席の占有状況を事前に伝える。
【解決手段】車両200への接近者Dを検知するドア接近センサ1と、車内の各座席201の占有状況を検知する車内カメラ2及び座席感圧部3と、車外への投影表示を行うロードプロジェクタ5と、CPU81と、を備え、ステップS10でドア接近センサ1の検知結果に基づき接近者Dが乗り込もうとする対応ドア202aと座席201を予測・決定し、ステップS20で車内カメラ2及び座席感圧部3の検知結果に基づき、決定された座席201への着座が可能か否かを判定し、ステップS25~S60において、決定された座席201が着座が可能と判定された場合には対応する誘導表示を投影表示するとともに、着座が不可能と判定された場合には対応する非誘導表示を投影表示する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の座席と複数の乗降ドアとを備えた車両に設けられる車両用表示装置であって、
前記車両に対する外部からの接近者を検知する接近検知部と、
前記車両の内部における前記座席の占有状況を検知する占有検知部と、
前記車両の外部へ所望の投影表示を行う投影部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記接近検知部の検知結果に基づき、前記複数の乗降ドアのうち前記接近者が乗り込もうとする1つの乗降ドアを予測するドア予測処理と、
前記複数の座席のうち、前記ドア予測処理で予測された前記1つの乗降ドアに対応する1つの前記座席を決定するドア決定処理と、
前記占有検知部の検知結果に基づき、前記ドア決定処理で決定された前記1つの座席への着座が可能か否かを判定する着座判定処理と、
前記着座判定処理の判定結果に基づき、前記1つの座席が人物又は物体で占有されておらず着座が可能と判定された場合には、対応する第1投影表示を前記投影部により行うとともに、前記1つの座席が人物又は物体で占有されており着座が不可能と判定された場合には、対応する第2投影表示を前記投影部により行う、切替投影処理と、
を実行することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記切替投影処理での前記第1投影表示は、路面上に投影され前記接近者を前記1つの乗降ドアへと誘導する第1誘導表示を含む
ことを特徴とする請求項1記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記切替投影処理での前記第2投影表示は、路面上に投影され前記接近者を前記1つの乗降ドアとは異なる別の乗降ドアへと誘導する第2誘導表示を含む
ことを特徴とする請求項2記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記切替投影処理での前記第2投影表示は、前記1つの座席を占有している前記人物又は前記物体を模した模擬画像表示を含む
ことを特徴とする請求項2記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記車両は、
後部荷台を開放可能なテールゲートと、
前記後部荷台における荷物積載状況を検知する積載検知部と、
をさらに備え、
前記制御部は、さらに、
前記積載検知部の検知結果に基づき、前記後部荷台における前記荷物の積載量が所定の閾値に達したか否かを判定する積載判定処理と、
前記積載判定処理により、前記荷物の積載量が前記閾値に達していると判定された場合には、対応する警告表示を前記投影部により行う、警告投影処理と、
を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、さらに、
前記接近検知部の検知結果に基づき前記接近者に対する認証を行う認証処理と、
前記認証処理による認証に成功しかつ前記着座判定処理において前記1つの座席の着座が可能と判定された場合には、前記1つの座席に対応する前記1つの乗降ドアのロック解除及び前記切替投影処理による前記第1投影表示を行うとともに、当該1つの乗降ドア開扉を行う、第1ロック解除処理と、
前記認証処理による認証に成功しかつ前記着座判定処理において前記1つの座席の着座が不可能と判定された場合には、前記1つの座席に対応する前記1つの乗降ドアのロック解除及び前記切替投影処理による前記第2投影表示を行うとともに、当該1つの乗降ドアの開扉は行わない、第2ロック解除処理と、
を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて所望の表示を行う車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の車両制御システムが知られている。この車両制御システム装置は、搭乗者が車両のドアに触れることなく当該ドアを開閉できるシステムであり、搭乗者の身体の一部による操作の有無が操作検知手段により検知されている状態であることを視覚的及び聴覚的な報知手段により搭乗者に報知する。これにより、搭乗者は自分の操作が車両に検知された状態であることを確実に認識でき、操作性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6405639号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の車両制御システムでは車内の状況まで検知し車外に報知する手段を有しておらず、例えば薄暗い屋内の駐車場や夜間の時間帯では車外にいる搭乗者から車内の状況を視認しにくい。このため、特定の座席にあらかじめ他の乗員が着座していたり荷物が積載されていることで着座できない場合であっても、車外の搭乗者からはその確認ができずに不用意にドアを開けてしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、車外の搭乗者に対して着座しようとする座席の占有状況を事前に伝えることのできる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の座席201と複数の乗降ドア202とを備えた車両200に設けられる車両用表示装置100であって、前記車両200に対する外部からの接近者Dを検知する接近検知部1と、前記車両200の内部における前記座席201の占有状況を検知する占有検知部2,3と、前記車両200の外部へ所望の投影表示を行う投影部5と、制御部81と、を備え、前記制御部81は、前記接近検知部1の検知結果に基づき、前記複数の乗降ドア202のうち前記接近者Dが乗り込もうとする1つの乗降ドア201aを予測するドア予測処理S10と、前記複数の座席201のうち、前記ドア予測処理201で予測された前記1つの乗降ドア202aに対応する1つの前記座席201を決定するドア決定処理S10と、前記占有検知部1,2の検知結果に基づき、前記ドア決定処理S10で決定された前記1つの座席201への着座が可能か否かを判定する着座判定処理S20と、前記着座判定処理S20の判定結果に基づき、前記1つの座席201が人物X又は物体で占有されておらず着座が可能と判定された場合には、対応する第1投影表示を前記投影部5により行うとともに、前記1つの座席201が人物X又は物体で占有されており着座が不可能と判定された場合には、対応する第2投影表示を前記投影部5により行う、切替投影処理S25~S60と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車外の搭乗者に対して着座しようとする座席の占有状況を事前に伝えることのできる車両用表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態による車両用表示装置を搭載した車両の全体構成を表す透過平面図。
図2】車両用表示装置を搭載した車両の全体構成を表す透過側面図。
図3】車両用表示装置のシステム構成を表す機能ブロック図。
図4】搭乗対象の座席が非占有状況で着座可能な場合の車両の外部における誘導表示の投影表示態様を表す平面図。
図5】搭乗対象の座席が占有状況で着座不可能な場合の車両の外部における誘導表示と非誘導表示の投影表示態様を表す平面図。
図6図5の投影表示態様に対応する室内ディスプレイの表示内容を表す図。
図7】後部荷台で荷物の積載高さが所定高さ以上である場合の車両の外部における警告表示の投影表示態様を表す平面図。
図8】制御ユニットのCPUによって実行される制御手順を示すフローチャートである。
図9】非誘導表示に表示させるアイコンを例示する図。
図10】全ての乗降ドアについて誘導表示と非誘導表示を投影表示する場合の車両の外部における投影表示態様を表す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
本実施形態の車両用表示装置を搭載する車両の透過平面図を図1に示し、透過側面図を図2に示す。なお、以下では、表示装置の構成の理解を容易にするために、車両の前方側を「前(Fr.」、その反対側を「後(Re.)」、当該車両に搭乗した乗員から見た左側を「左(L)」、右側を「右(R)」、上側を「上(Up.)」、下側を「下(Lo.)」として各部を適宜説明する(各図中の矢印表記参照)。
【0011】
<車両用表示装置の全体構成>
これら図1及び図2において、車両用表示装置100は、例えば自家用車、商用車、バス等の各種車両に搭載されるものであり、ドア接近センサ1(接近検知部)と、車内カメラ2(占有検知部)と、座席感圧センサ3(占有検知部)と、荷台センサ4(積載検知部)と、ロードプロジェクタ5(投影部)と、車内ディスプレイ6と、ドアロック機構7と、制御ユニット8と、を有する。
【0012】
当該車両用表示装置100の搭載対象となる車両200は、複数の座席201と複数の乗降ドア202とを備えた車両である。なお図示する例では、車両200の左右両側でそれぞれ前後2つずつ、合計4つの乗降ドア202が設けられており、その他にも車両200の後方側には後部荷台203を開放可能なテールゲート204もドアの一種として設けられている。
【0013】
ドア接近センサ1は、それら各乗降ドア202とテールゲート204を合わせた5つのドア202それぞれのドアノブ周辺に個別に設けられ、所謂スマートエントリーシステムなどに用いられるスマートキー205との間で無線通信が可能な無線通信装置である。ドア接近センサ1は、それぞれ設置された乗降ドア202の近傍範囲に設定された無線通信可能領域R内に通信対象である特定のスマートキー205が到達した際に、自動的にその存在を検知して所定の情報を送受する(図1参照)。
【0014】
なお以下に説明する本実施形態の例では、ドア接近センサ1が検知する対象のスマートキー205は、当該車両200の運転者Dの一人だけが保持する1つの個体だけとする。これにより、いずれのドア接近センサ1がスマートキー205を検知したかによってどの乗降ドア202の近傍に運転者D(接近者)が接近したかを検知できる。
【0015】
車内カメラ2は、この例では車内前方側の天井に設置され、各座席201の周辺を含めた車内全体の状況を撮像して画像情報を出力可能な光学機器である(図1参照)。
【0016】
座席感圧センサ3は、各座席201の座面内に設けられた圧力センサであり、その座席201に乗員が着座もしくは荷物等が積載されている場合にその重量を検知する(図1参照)。
【0017】
荷台センサ4は、図示する例では上記後部荷台203の上方の天井に設けられ、例えばレーザー等の光学的手段もしくは超音波等を用いて当該後部荷台203にどれだけの高さ(荷物積載状況)で荷物が積載されているかを検知するセンサである(図2参照)。
【0018】
ロードプロジェクタ5は、図示する例では車両200の左右両側の下方フレーム上にそれぞれ2か所、及び車両200の後方側のリアウィング上の1か所にそれぞれ設けられ、各乗降ドア202及びテールゲート204の近傍の路面上に所定の映像を投影表示する光学表示装置である(図2参照)。
【0019】
車内ディスプレイ6は、この例では車内の前方中央位置に設けられた液晶ディスプレイであり、例えばナビゲーション情報などの所定の情報を表示可能な表示装置である(図1参照)。
【0020】
ドアロック機構7は、各乗降ドア202及びテールゲート204にそれぞれ設けられた機械的なロック機構であり、その施錠と解錠を電気的及び機械的に切替制御可能であるとともに当該ドアを開く動作まで遠隔操作可能となっている(図2参照)。
【0021】
制御ユニット8は、その内部にCPU81及びメモリ82等を備えたコンピュータであり、図示する例では車内ディスプレイ6の前方側近傍に配置されている(図1参照)。図3は、制御ユニット8と上述した各構成部との接続構成を含めて車両用表示装置100全体のシステム構成を表す機能ブロック図である。この図3において、制御ユニット8が備えるCPU81(制御部)は、バス83を介して上述したドア接近センサ1、車内カメラ2、座席感圧センサ3、及び荷台センサ4のそれぞれと接続して各種の検知情報が取得可能であるとともに、ロードプロジェクタ5、車内ディスプレイ6、及びドアロック機構7のそれぞれと接続して各種の制御情報を出力可能となっている。
【0022】
そしてCPU81は、メモリ82の一時記憶機能を利用しつつあらかじめ記憶された各種プログラムを実行することで当該車両用表示装置100全体の制御を行う。メモリ82は、特に図示しないRAM及びROMを備えた記憶装置である。上記の各種プログラムには、後述する図8 等に示す手順を実行するためのプログラムが含まれている。なお、制御ユニット8と各構成部との接続は、例えばCAN(Controller Area Network)などの通信インターフェースを介した接続であってもよいし、ハードワイヤーを通じた電気接続であってもよい。
【0023】
<車両用表示装置の作動内容>
以下に、図4図6を参照しつつ、当該車両用表示装置100の作動内容について説明する。例えば図4の平面図に示すように、スマートキー205を保持する当該車両200の運転者Dが運転席201aに最も近い乗降ドア202に接近した際には、上述したように当該乗降ドア202に設けられたドア接近センサ1がその無線通信可能領域R内におけるスマートキー205の存在を検知する。なお以下においては、所定の座席201に最も近い乗降ドア202を当該座席201の対応ドア202aという。またこの例では、スマートキー205は運転者Dのみが保持することを前提としているため、上記のスマートキー205の検知はすなわち運転席201aの対応ドア202aの近傍に運転者Dが接近したものとしてみなせる。
【0024】
この時点でその搭乗対象の運転席201aに誰も着座しておらず、又は荷物の積載などといった障害もない非占有状況である場合には、運転者Dは何ら問題なく通常に対応ドア202aを開けて運転席201aに着座することができる。しかしこのような車内の各座席201の占有状況については、例えば薄暗い屋内の駐車場や夜間の時間帯では車外にいる搭乗者から視認しにくい場合がある。そして搭乗対象の座席201にあらかじめ他の乗員(人物)が着座していたり荷物(物体)が積載されている占有状況である場合には、対応ドア202aの不用意な開閉動作を避けるべきである。
【0025】
これに対して本実施形態の車両用表示装置100は、制御ユニット8がドア接近センサ1を介して運転席201aの対応ドア202aに運転者Dが接近したことを検知した際において、当該運転席201aが非占有状況であることを確認した場合には、図示するような通常の搭乗と着座が可能である内容の投影表示を行う。
【0026】
このとき、上記のように所定の座席201が着座可能であるか否か(占有状況か非占有状況か)の判定については、当該座席201の座席感圧センサ3の検知情報と、車内カメラ2で撮像した画像情報の画像解析に基づいて判定する。また投影表示は、当該運転席201aの対応ドア202aの下方に位置するロードプロジェクタ5からその近傍の路面上に通常の搭乗と着座が可能であることを意味する内容の誘導表示を行う。図示する例では、青色などの寒色系で表す矢印と、〇印の図形を並べて投影表示(第1投影表示、第1誘導表示)している。またこのように対応ドア202aへの注意が不要である場合には、制御ユニット8がドアロック機構7を制御してロックを解除するとともに当該対応ドア202aの開動作も自動的に行う(図示省略)。
【0027】
また、他の乗員Xや荷物の存在により運転席201aが着座できない占有状況であることを確認した場合には、図5に示すように当該運転席201aの対応ドア202aに対して通常の搭乗と着座ができないことを意味する内容の非誘導表示を行う。図示する例では、運転席201aの対応ドア202aの近傍の路面上に対して、赤色などの暖色系で表す矢印と、×印の図形を並べて投影表示(第2投影表示)している。なおこの非誘導表示の投影表示は、注意喚起を促す意味で点滅表示させてもよい。またこのように対応ドア202aへの注意が必要である場合には、制御ユニット8がドアロック機構7を制御してロックの解除までは行うが、当該対応ドア202aの自動的な開動作は行わずに閉状態を維持する。
【0028】
また本実施形態では、上記の各座席201の占有状況の判定によって、当初の搭乗対象の運転席201aとは別の他の座席201が非占有状況であることが判定された場合には、図示するように当該非占有状況の座席201へ運転者Dを誘導する投影表示も併せて行う。なお、上述した別の他の座席201に対応する乗降ドア202を、以下において代替ドア202bという。図示する例では、運転席201aの後方に隣接する後部座席201が非占有状況であり、それに対応する代替ドア202bの近傍の路面上に対して、上記暖色系の矢印から引き込む形状の寒色系の矢印と、〇印の図形を並べて投影表示(第1投影表示、第2誘導表示)している。また注意が不要な当該対応ドア202aに対しては、制御ユニット8がドアロック機構7を制御してロックを解除するとともに当該対応ドア202aの開動作も自動的に行う(図示省略)。
【0029】
また図6に示すように、車内ディスプレイ6においても、運転者Dの接近検知に合わせて搭乗対象の座席201とその周辺の座席201のそれぞれの占有状況の判定結果や対応する投影表示内容を表示させてもよい。なお特に図示しないが、当初の搭乗対象の座席201は運転席201aに限られず、スマートキー205を最初に検知できた乗降ドア202に対応する座席201を当初の搭乗対象の座席201とし、占有状況の判定や投影表示を行ってもよい。
【0030】
また後部荷台203に所定以上の高さ(所定の閾値)で荷物が積載されている場合に対しても、テールゲート204の不用意な開動作は避けるべきである。このため本実施形態では、図7に示すように最初にテールゲート204のドア接近センサ1がスマートキー205の存在を検知した際に、荷台センサ4の検知結果に基づいて後部荷台203に所定以上の高さで荷物Yが積載されていることが判定された場合には、図7に示すような投影表示を行う。すなわち、テールゲート204の通常の開動作ができないことを示す内容で近傍の路面上に投影表示(警告表示)する。図示する例では、暖色系の矢印と×印を並べて投影表示する。この場合もまた、制御ユニット8がテールゲート204のロック解除の制御と、荷物Yの積載高さに応じた開動作の切り替え制御とを行う。
【0031】
<制御ユニットの制御手順>
本実施形態の車両用表示装置100における処理手法を実現するために、制御ユニット8のCPU81が実行する制御手順を図8のフローチャートにより説明する。図8の手順は、車両200が駐車状態となって運転者Dが車両200から離れたことが確認された際にその実行が開始される。
【0032】
まずステップS5で、いずれかのドア接近センサ1がスマートキー205の接近を検知するまでループ待機し、そのうち1つでもスマートキー205を検知した際には次のステップS10へ移行する。
【0033】
ステップS10では、スマートキー205を保持して車両200に接近した接近者を認証するとともに(認証処理)、搭乗対象の座席201とその対応ドア202aを予測し決定する(ドア予測処理、ドア決定処理)。本実施形態の例では、スマートキー205を保持するのが当該車両200の運転者Dのみであるため接近者を運転者Dに認証する。また、スマートキー205の接近を検知したドア接近センサ1に対応する座席201とその対応ドア202aを搭乗対象として予測、決定する。なお、決定される対応ドア202aはテールゲート204も対象として含まれる。
【0034】
次にステップS15へ移り、対応ドア202aのドアロック機構7に対してロック解除するよう遠隔操作を行う(第1ロック解除処理、第2ロック解除処理)。
【0035】
次にステップS20へ移り、車内の各座席感圧センサ3からの重量検知と、荷台センサ4からの積載高さ検知と、車内カメラ2による車内画像の撮像とを行い、それらの検知情報及び画像情報に基づいて各座席201の占有状況と荷台の積載高さを判定する(着座判定処理、積載判定処理)。なお、このときに特定の座席201で検知された重量が低い場合であっても、例えば特に図示しないチャイルドシートの設置により運転者Dが着座できない占有状況となっている場合もある。また、車内カメラ2での画像解析で乗員が認識されない場合であっても、前かがみの姿勢で見えないだけで占有状況となっている場合もある。このため各座席201の占有状況の判定は、重量検知と画像認識の両方で複合的に行うことが望ましい。
【0036】
次にステップS25へ移り、上記ステップS10で決定した対応ドア202aとそれに対応する座席201が通常に搭乗して着座可能な非占有状況であるか否かを判定する。なお、対応ドア202aがテールゲート204である場合には、後部荷台203の荷物の積載高さが所定より低く通常にテールゲート204を開いて新たな荷物を積載可能な状況であるか否かを判定する。対応ドア202aでの搭乗や積載が可能である場合には、判定が満たされ(S25;Yes)、ステップS30へ移る。
【0037】
ステップS30では、対応ドア202aに対応するロードプロジェクタ5を制御して対応ドア202aの近傍の路面上に運転者Dを誘導して搭乗を促す投影表示を行う(図4参照)。
【0038】
次にステップS35へ移り、対応ドア202aのドアロック機構7を制御して開動作(乗降ドア開扉)を行わせる。
【0039】
次にステップS40へ移り、ロードプロジェクタ5の投影表示後から所定時間が経過するまでループ待機し、経過した際には次のステップS45へ移る。
【0040】
ステップS45では、ロードプロジェクタ5の投影表示を停止し、そしてこのフローを終了する。
【0041】
一方、上記ステップS25の判定において、対応ドア202aでの搭乗や積載が不可能である場合には、判定は満たされず(S25;No)、ステップS50へ移る。
【0042】
ステップS50では、代替ドア202bでの搭乗又は荷物の積載が可能であるか否かを判定する。言い換えると、上記ステップS20での判定に基づいて、当初の搭乗対象の座席201とは別に通常の搭乗と積載が可能な非占有状況にある他の座席201と、それに対応する代替ドア202bが存在するか否かを判定する。代替ドア202bでの搭乗や積載が可能である場合には、判定が満たされ(S50;Yes)、ステップS55へ移る。なお、対応ドア202aがテールゲート204である場合には代替ドア202bが存在しないため、無条件でステップS55へ移る。
【0043】
ステップS55では、当初の搭乗対象である対応ドア202aに対して運転者Dを誘導させない非誘導の投影表示(警告投影処理)と、代替ドア202bに対して運転者Dを誘導させる投影表示とを併せて行う(図5参照)。なお、対応ドア202aがテールゲート204である場合には代替ドア202bがないため誘導表示は行わず、テールゲート204での通常の開動作ができないことを示す内容の投影表示のみ行う。
【0044】
次にステップS60へ移り、代替ドア202bのドアロック機構7を制御してロック解除と開動作を行わせる(以上、ステップS30~ステップS60の手順が切替投影処理)。なお、対応ドア202aがテールゲート204である場合には開動作は行わない。そして、ステップS40へ移る。
【0045】
また一方、上記ステップS50の判定において、代替ドア202bが存在しない場合には、判定は満たされず(S50;No)、ステップS65へ移る。
【0046】
ステップS65では、対応ドア202aの近傍の路面上に対して通常に搭乗できる座席201や乗降ドア202がないエラー状態を報知するエラー投影表示を行う(図示省略)。そして、ステップS40へ移る。
【0047】
<実施形態の効果>
本実施形態の効果を、以下に説明する。前述したように、本実施形態の車両用表示装置100は、ドア接近センサ1が車両200に対する外部からの運転者Dの接近を検知し、各座席感圧センサ3と車内カメラ2が車両200の内部における座席201の占有状況を検知する。
【0048】
そして制御ユニット8のCPU81が、ステップS10の手順で各ドア接近センサ1の検知結果に基づき、複数の乗降ドア202のうち運転者Dが乗り込もうとする1つの乗降ドア202を予測し、複数の座席201のうち予測された乗降ドア202に対応する座席201を決定する。そして、ステップS20の手順で各座席感圧センサ3と車内カメラ2の検知結果に基づき、決定された座席201への着座が可能か否かを判定する。
【0049】
さらにCPU81は、決定された座席201への着座の可否の判定結果に基づき、決定された座席201が他の乗員X又は荷物で占有されておらず着座が可能と判定された場合には、対応するこの例の寒色系の矢印と〇印の投影表示をロードプロジェクタ5により行う。またそれとともに、決定された座席201が他の乗員X又は荷物で占有されており着座が不可能と判定された場合には、対応するこの例の暖色系の矢印と×印の投影表示をロードプロジェクタ5により行う。
【0050】
以上の結果、本実施形態によれば、車両200に乗り込もうとするユーザに対して、乗降ドア202を開ける前に車内の座席占有状況を事前に伝えることができるので、ユーザは自分が乗ろうとする座席201が空いているのかどうかを容易に認識できる。また、ユーザにとっては車両200と疑似コミュニケーションを取っているように感じることができ、フレンドリーさや親近感を与えて使用上の利便性を向上できる。
【0051】
また、本実施形態では特に、搭乗対象の座席201が非占有状況にあって着座が可能である場合には、ロードプロジェクタ5が運転者Dを当該座席201の対応ドア202aへ誘導するよう路面上に寒色系の矢印と〇印を並べて投影表示する。この結果、運転者Dが対応ドア202aを開ける前に自分が乗ろうとする座席201が空席であることを認識できるので利便性を向上できる。
【0052】
また、本実施形態では特に、搭乗対象の座席201が占有状況にあって着座が不可能である場合には、ロードプロジェクタ5が運転者Dを当該座席201の対応ドア202aとは異なる別の代替ドア202bへと誘導するよう路面上に寒色系の矢印と〇印を並べて投影表示する。この結果、運転者Dが対応ドア202aを開ける前に、自分が乗ろうとする座席201が空いてない(そこには座れない)ことを認識できるとともに、代わりに座れる座席201の位置を知ることができるので利便性を向上できる。
【0053】
また、本実施形態では特に、車両200は、後部荷台203を開放可能なテールゲート204と、後部荷台203における荷物の積載高さを積載状況として検知する荷台センサ4と、をさらに備えている。
【0054】
そして制御ユニット8はステップS20の手順で、荷台センサ4の検知結果に基づき、後部荷台203における荷物の積載高さが所定の高さに達したか否かを判定する。荷物の積載高さが所定の高さに達していると判定された場合には、ステップS55の手順でテールゲート204の通常の開動作ができないことを示す内容で近傍の路面上に投影表示する。このように後部荷台203において荷物がある程度の高さまで積まれていた場合にアラームを発することで、そのままテールゲート204を空けた場合に荷崩れして車両200外に荷物が落ちる可能性があることをユーザに警告することができる。
【0055】
また、本実施形態では特に、制御ユニット8が、ステップS10の手順でドア接近センサ1の検知結果に基づき接近者が運転者Dであることの認証を行う。
【0056】
そしてこの認証に成功しかつステップS20の手順での判定において搭乗対象の座席201の着座が可能と判定された場合には、ステップS30の手順で寒色系の矢印と〇印の投影表示を行うとともに、ステップS15の手順で当該座席201に対応する対応ドア202aのロック解除、及びステップS35の手順で対応ドア202aの開動作を行う。
【0057】
また、接近者の認証に成功しかつステップS20の手順での判定において搭乗対象の座席201の着座が不可能と判定された場合には、ステップS15の手順での当該座席201に対応する対応ドア202aのロック解除、及びステップS55の手順での暖色系の矢印及び×印の投影表示を行い、対応ドア202aの開扉は行わない。
【0058】
以上のように、事前に登録された者であるかどうかを認証することにより、例えば正当な乗車権限を有するユーザに対してのみドアロック機構7を解除して当該車両200を使用できるよう、制限を実行することができる。その際、当該ユーザが乗ろうとする座席201が空席である場合には自動的にドア開扉まで行うことでドア操作の労力を軽減でき、当該ユーザが乗ろうとする座席201が空席でない場合にはドア開扉は行わないことで、誤乗車を抑制することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、運転者Dのみがスマートキー205を保持することを前提としていたため、どのドア接近センサ1でもスマートキー205を検知したことですなわち接近者が運転者Dであることを認証できた。これ以外にも、それぞれ異なるIDが付与された複数のスマートキー205を各乗員が個別に保持し、ドア接近センサ1がそれらスマートキー205のIDを検知することで車両200に接近するユーザを特定の個人として認証してもよい。また、特に図示しない車外カメラを介した画像認識によって車両200への接近者を特定のユーザとして認証してもよく、この場合はあらかじめ個々のユーザに対応して特定の乗降ドア202や座席201との組み合わせを登録しておき、この登録情報に基づいて接近者が搭乗対象としている座席201や対応ドア202aを予測、決定してもよい。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0061】
(1)非誘導表示にその原因を表すアイコンも併せて表示する場合
実施形態では、対応ドア202aへ運転者Dを誘導させないための非誘導表示に暖色系の矢印と×印と並べて投影表示しただけであった。これに対して、当該対応ドア202aへ非誘導としている原因、すなわちその時点で搭乗対象の座席201を占有している乗員や荷物等を象徴するアイコン(模擬画像表示)も併せて投影表示してもよい。
【0062】
例えば、車内カメラ2が撮像した画像情報を画像解析することによって座席201を占有しているのがどのようなものであるかを検知できる。その検知結果から座席201を占有しているものが乗員である場合には、対応する非誘導表示として図9(a)に示すように暖色系の矢印と×印とともに着座した状態の人物を模した乗員アイコン11aを併せて表示する。また、座席201を占有しているものが荷物である場合には、対応する非誘導表示として図9(b)に示すように荷物を模した荷物アイコン11bを併せて表示する。また、座席201を占有しているものがチャイルドシートである場合には、対応する非誘導表示として図9(c)に示すようにチャイルドシートを模したチャイルドシートアイコン11cを併せて表示する。
【0063】
このように本変形例では、対応ドア202aへ運転者Dを誘導させないための非誘導表示に座席201を占有している人物又は物体を模したアイコンを含んでいる。この結果、乗降ドア202を開ける前に、自分が乗ろうとする座席201が、誰によって(あるいは何の荷物によって)占有されているかまで認識できるため利便性が向上する。
【0064】
(2)全ての乗降ドアについて誘導表示と非誘導表示を投影表示する場合
実施形態では、運転者Dが当初搭乗対象としていた1つの対応ドア202aと、状況次第ではその対応ドア202aに隣接する代替ドア202bに対応してのみ誘導表示もしくは非誘導表示を投影表示していた。これに対して図10に示すように、毎回全ての乗降ドア202及びテールゲート204のそれぞれに対応して同時に誘導表示と非誘導表示を投影表示してもよい。
【0065】
この場合には、当該車両200に対する接近者が運転者D、同乗者、及び子供などを区別して特定する認証までは不要であり、接近者が当該車両200に正当に搭乗が許可されている乗員であるかどうかだけを認識できればよい。そして、その正当な乗員Pがどの乗降ドア202又はテールゲート204に接近した場合でも、同様に全ての誘導表示と非誘導表示を投影表示すればよい。
【0066】
このように本変形例では、簡易な検知構成であっても、全ての座席201及び後部荷台203のそれぞれにおける占有状況の明確な認識を実現できる。
【0067】
(3)その他
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
【0068】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 ドア接近センサ(接近検知部)
2 車内カメラ(占有検知部)
3 座席感圧センサ(占有検知部)
4 荷台センサ(積載検知部)
5 ロードプロジェクタ(投影部)
6 車内ディスプレイ
7 ドアロック機構
8 制御ユニット
11a 乗員アイコン(模擬画像表示)
11b 荷物アイコン(模擬画像表示)
11c チャイルドシートアイコン(模擬画像表示)
81 CPU(制御部)
82 メモリ
83 バス
100 車両用表示装置
200 車両
201 座席
201a 運転席
202 乗降ドア
202a 対応ドア
202b 代替ドア
203 後部荷台
204 テールゲート
205 スマートキー
D 運転者
P,X 乗員
Y 荷物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10