(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157574
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60K 23/08 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B60K23/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071916
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】対馬 洋平
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀平
【テーマコード(参考)】
3D036
【Fターム(参考)】
3D036GA16
3D036GB03
3D036GB15
3D036GB16
3D036GD09
3D036GG35
3D036GG63
3D036GH12
3D036GJ17
(57)【要約】
【課題】運転者の意図しない車両の挙動を抑制する。
【解決手段】コントロールユニット15は、ブレーキペダル踏み込まれておらず(フットブレーキオフ)、自動変速機3の変速レンジがPレンジもしくは車速がゼロの場合に、モータ9の作動のうち副変速機5がニュートラル領域に入る可能性がある逆転方向の回転(作動)を禁止する。また、コントロールユニット15は、モータ9の逆転方向の回転を禁止する条件が成立したタイミングから所定時間Aが経過するまでモータ9の逆転方向の回転(作動)を許可する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力が前輪及び後輪へ伝達されないニュートラル領域が存在するとともに、主変速機を経て入力された駆動源からの駆動力を変速して出力可能な副変速機と、上記副変速機の変速比を変更するモータと、を備え、上記主変速機で変速された駆動源からの駆動力を前輪と後輪とに配分することが可能なトランスファを有する車両の制御方法において、
上記主変速機の変速レンジがPレンジ、もしくは車速がゼロの場合、上記モータの作動を禁止することを特徴とする車両の制御方法。
【請求項2】
上記モータの作動は、フットブレーキがオフの状態で、上記主変速機の変速レンジがPレンジ、もしくは車速がゼロの場合に禁止されることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御方法。
【請求項3】
上記トランスファは、変速比が低い4輪駆動の高速段モードと、変速比が高い4輪駆動の低速段モードと、前後輪への駆動力の配分を自動で選択する4輪駆動の自動モードと、のうちの少なくとも2つの動作モードを備え、これらの動作モードを運転者が選択可能であり、運転者が動作モードの切り替えを行った場合には、切り替えてから所定時間が経過するまでの間は、上記モータの作動が禁止されないことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御方法。
【請求項4】
フットブレーキがオフで、上記主変速機の変速レンジがPレンジに切り替わる、もしくは車速がゼロに遷移すると、所定時間が経過するまでの間は、上記モータの作動が禁止されないことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御方法。
【請求項5】
駆動力が前輪及び後輪へ伝達されないニュートラル領域が存在するとともに、主変速機を経て入力された駆動源からの駆動力を変速して出力可能な副変速機と、上記副変速機の変速比を変更するモータと、を備え、上記主変速機で変速された駆動源からの駆動力を前輪と後輪とに配分することが可能なトランスファと、
上記主変速機の変速レンジがPレンジ、もしくは車速がゼロの場合には、上記モータの作動を禁止する制御部と、を有することを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御方法及び車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ニュートラル位置を含み、2輪駆動ハイモード位置と4輪駆動ハイモード位置と4輪駆動ローモード位置とを切り替えるハイギヤ-ローギヤ切替機構と2WD-4WD切替機構とを有するトランスファが開示されている。このトランスファには、自動変速機を介してエンジンからの駆動力が伝達(入力)されている。
【0003】
また、特許文献1において、トランスファのハイギヤ-ローギヤ切替機構は、4輪駆動ハイモード位置と4輪駆動ローモード位置との間に駆動力が変速機から車輪へ伝達されないニュートラル位置が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような特許文献1においては、例えば、自動変速機の変速レンジがPレンジのときに何らからの不具合によりトランスファがニュートラル位置の状態なった場合、傾斜した場所では車両が運転者の意図に反して動いてしまう虞がある。
【0006】
すなわち、駆動力が前輪及び後輪へ伝達されないニュートラル領域が存在するトランスファが搭載された車両においては、運転者の意図しない車両の挙動を抑制するために更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両は、主変速機の変速レンジがPレンジ、もしくは車速がゼロの場合、トランスファの副変速機の変速比を変更するモータの作動を禁止することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両が無人の可能性がある場合には、副変速機を駆動するモータの作動を禁止することで、モータが作動してトランスファがニュートラル領域に入ってしまうこと抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明が適用された車両のシステム構成の概略を模式的に示した説明図。
【
図2】本発明が適用された車両におけるトランスファが具備するモータの制御の流れを模式的に示した説明図。
【
図3】本発明が適用された車両においてトランスファが4HモードからAUTOモードに切り替わった際の状況を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明が適用された車両1のシステム構成の概略を模式的に示した説明図である。
【0012】
車両1は、いわゆるフロントエンジンリアドライブ方式(FR方式)の車両をベースとしてものであって、駆動源となる内燃機関2が車両前部のエンジンルーム内に搭載された4輪駆動車両である。
【0013】
車両1は、内燃機関2の出力軸に接続された自動変速機3と、自動変速機3の出力軸に接続されたトランスファ4と、を有している。
【0014】
自動変速機3は、主変速機に相当するものであり、例えば、駐車用のパーキング(P)レンジ、後退走行用のリバース(R)レンジ、自身の出力軸に動力が伝わらないニュートラル(N)レンジ、通常(前進)走行用のドライブ(D)レンジ等の複数の変速レンジを有している。自動変速機3は、図示せぬセレクタレバーを運転者が操作することで、変速レンジが選択される。
【0015】
トランスファ4は、自動変速機3から入力された駆動力を変速して出力可能な副変速機5と、自動変速機3から入力された駆動力を前輪6と後輪7に分配して出力可能な駆動力分配機構8と、副変速機5の変速比及び駆動力分配機構8における配分比を変更する際に駆動するモータ9と、を有している。
【0016】
副変速機5は、駆動力が前輪6及び後輪7へ伝達されないニュートラル領域が存在するものであって、変速比が低い所定の高速段と、変速比が高い所定の低速段と、を有している。なお、副変速機5は、モータ9の回転方向が逆転方向(後述)の場合にはニュートラル領域に入る可能性があり、モータ9の回転方向が正転方向(後述)の場合にはニュートラル領域に入ることがないように構成されている。
【0017】
駆動力分配機構8は、駆動力の前輪6への配分比率を0%~50%の間に設定可能となるように構成されている。つまり、駆動力の前輪6への配分比率は、最大でも50%である。前輪6への駆動力の配分比率が後輪7への駆動力の配分比率よりも大きくなることはない。駆動力分配機構8は、例えば、駆動力の前輪6への配分比率が50%であれば、駆動力の後輪7への配分比率が50%となる。
【0018】
モータ9は、後述するコントロールユニット15からの指令に基づいて作動し、副変速機5の高速段と低速段の切り替え及び駆動力分配機構8の配分比率を制御する。つまり、モータ9は、副変速機5の変速比や駆動力分配機構8の配分比率を変更する際に駆動する。
【0019】
なお、モータ9は、前輪6への駆動力を増加させる回転方向を正転方向とし、前輪6への駆動力を減少させる回転方向を逆転方向とする。換言すると、モータ9は、後輪7への駆動力を増加させる回転方向を逆転方向とし、後輪7への駆動力を減少させる回転方向を正転方向とする。
【0020】
トランスファ4で前輪用に分配された駆動力は、フロントプロペラシャフト10及びフロントディファレンシャルギヤ11を介して左右の前輪6に伝達されている。トランスファ4で後輪用に分配された駆動力は、リアプロペラシャフト12及びリアディファレンシャルギヤ13を介して左右の後輪7に伝達されている。
【0021】
トランスファ4は、動作モード(T/Fモード)として変速比が低い4輪駆動の高速段モードである4Hモードと、動作モードとして変速比が高い4輪駆動の低速段モードである4Lモードと、動作モードとして前後輪への駆動力の配分を自動で選択する4輪駆動の自動モードであるAUTOモードと、を有している。
【0022】
4Hモードでは、駆動力の前輪6への配分比率が50%となり、副変速機5が高速段を選択している。
【0023】
4Lモードでは、駆動力の前輪6への配分比率が50%となり、副変速機5が低速段を選択している。
【0024】
AUTOモードでは、駆動力の前輪6への配分比率をアクセル開度と車速に応じて0%~50%の範囲内で制御する。駆動力の前輪6への配分比率が0%の場合、車両1は2輪駆動(2WD)状態となる。
【0025】
また、AUTOモードでは、副変速機5が例えば高速段または低速段のいずれかに固定される。なお、AUTOモードでは、運転状態に応じて、副変速機5の高速段と低速段を切り替えるようにしてもよい。
【0026】
AUTOモードでは、車両1が滑りやすい操作をする場合に駆動力の前輪6への配分比率を大きくしている。車両1は発進する際に滑りやすくなるので、AUTOモードでは、例えば、車両1が発進する際に駆動力の前輪6への配分比率を50%(後輪7は50%となる)とする。また、アクセル開度が100%だと滑りやすくなるので、AUTOモードでは、例えば、アクセル開度が100%の際に駆動力の前輪6への配分比率を大きく設定する。
【0027】
トランスファ4の動作モードは、車室内の運転者が操作可能な位置に配置された動作モード切替スイッチ14を操作することで切り替えることが可能となっている。動作モード切替スイッチ14からの信号は、制御部としてのコントロールユニット15に入力される。つまり、トランスファ4における動作モードは、コントロールユニット15からの指令によりモータ9を駆動することで変更可能となっている。すなわち、トランスファ4は、モータ9を作動させることで動作モードの変更(切り替え)が可能な構成となっている。
【0028】
コントロールユニット15には、横加速度センサ16、前後加速度センサ17、車速センサ18、ブレーキスイッチ19、機関回転速度センサ20と、シフトポジションセンサ21、モータ回転速度センサ22等の各種センサ類の検出信号が入力されている。
【0029】
横加速度センサ16は、横加速度検出部に相当するものであって、車両1の横方向に沿った加速度(横G)を検出する。
【0030】
前後加速度センサ17は、前後加速度検出部に相当するものであって、車両1の前後方向に沿った加速度(前後G)を検出する。
【0031】
車速センサ18は、車速検出部に相当するものであって、車両1の車速を検出する。
【0032】
ブレーキスイッチ19は、ブレーキ検出部に相当するものであって、図示せぬブレーキペダル(フットブレーキ)の踏み込みを検知する。
【0033】
機関回転速度センサ20は、回転速度検出部に相当するものであって、内燃機関2の機関回転速度を検出する。
【0034】
シフトポジションセンサ21は、シフトポジション検出部に相当するものであって、自動変速機3の現在選択されているシフトポジションを検出する。
【0035】
モータ回転速度センサ22は、モータ回転速度検出部に相当するものであって、モータ9の出力軸の回転速度を検出する。
【0036】
コントロールユニット15は、前輪6に配分される前輪駆動力を算出するとともに、算出された前輪駆動力に基づいて走行中の車両1における前輪6と後輪7への駆動力の配分比率を決定する。また、コントロールユニット15は、ブレーキペダル踏み込まれておらず(フットブレーキオフ)、自動変速機3の変速レンジがPレンジもしくは車速がゼロの場合に、モータ9の作動のうち副変速機5がニュートラル領域に入る可能性がある逆転方向の回転(作動)を禁止する。コントロールユニット15は、モータ9の逆転方向の回転を禁止する条件が成立したタイミングから所定時間Aが経過するまでモータ9の逆転方向の回転(作動)を許可する。
【0037】
図2は、コントロールユニット15が行うモータ9の制御の流れを模式的に示した説明図であって、上述した実施例におけるモータ9の制御の概要を示すブロック図である。
【0038】
ステップS1には、車両1の運転状態等に応じて算出されたモータ9の回転方向に関する指令であるモータ正転/逆転指令と、車両1の運転状態に応じて算出されたモータ9のデューティ指令(%)と、ブレーキスイッチ19からのオン/オフ信号と、シフトポジションセンサ21からの自動変速機3の変速レンジ(ATレンジ)に関する情報と、車速センサ18からの車速に関する情報と、動作モード切替スイッチ14からの信号と、が入力されている。ステップS1においては、モータ9の逆転方向への回転を禁止するか否かを判定する。ステップS1では、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態(フットブレーキがオフの状態)で、自動変速機3の変速レンジがPレンジ、もしくは車速がゼロの場合、モータ9の逆転方向への回転を禁止すると判定する。ステップS1では、モータ9の逆転方向への回転を禁止するか否かの判定に応じて、入力されたモータ正転/逆転指令及びモータデューティ(Duty)指令を変更し、ステップS6へ出力する。
【0039】
ステップS2では、ブレーキペダルが踏み込まれた状態(フットブレーキがオンの状態)からブレーキペダルが踏み込まれていない状態(フットブレーキがオフの状態)になったか否かを判定する。ステップS2での判定結果は、ステップS6に出力される。
【0040】
ステップS3では、自動変速機3の変速レンジがPレンジ以外からPレンジになったか否かを判定する。ステップS3での判定結果は、ステップS6に出力される。
【0041】
ステップS4では、車両1が走行状態(車速がゼロではない状態)から停止状態(車速がゼロの状態)になったか否かを判定する。ステップS4での判定結果は、ステップS6に出力される。
【0042】
ステップS5では、動作モード切替スイッチ14の切り替え操作の有無を判定する。ステップS5での判定結果は、ステップS2に出力される。
【0043】
ステップS6では、ステップS2でモータ9の逆転方向への回転が禁止された場合であっても、ステップS2~S5においていずれかの判定が許可条件を満たせば、許可条件を満たすと判定された時点から所定時間Aが経過するまでモータ9の逆転方向への回転を許可する。すなわち、以下の(1)~(4)のいずれか一つの条件が成立した場合には、所定時間Aの間、モータ9の逆転方向への回転を許可する。
(1)フットブレーキがオンからオフの状態に切り替わった場合(ステップS2)。
(2)変速レンジがPレンジ以外からPレンジになった場合(ステップS3)。
(3)車速がゼロでない状態からゼロになった場合(ステップS4)。
(4)動作モード切替スイッチが操作された場合(ステップS5)。
すなわち、ステップS6では、モータ9の逆転方向への回転が禁止された状態であっても、車両1に対して運転者による何等かの操作があった場合、運転者が降車に要する時間に相当する所定時間Aの間、モータ9の逆転方向の回転を許可する。
【0044】
ステップS6では、ステップS1の判定結果にステップS6での判定結果を加味して、最終的なモータ正転/逆転指令と最終的なモータデューティ(Duty)指令を出力する。従って、ステップS6から出力されるモータ正転/逆転指令及びモータデューティ(Duty)指令は、ステップS1に入力されたモータ正転/逆転指令及びモータデューティ(Duty)指令と必ずしも同じではない。
【0045】
図3は、トランスファ4が4HモードからAUTOモードに切り替わった際の状況を示すタイミングチャートである。
【0046】
時刻t1は、車速がゼロ、自動変速機3がPレンジ、フットブレーキが踏まれていない状態、においてトランスファ4の動作モードが4HモードからAUTOモードに切り替えられたタイミングである。
【0047】
また、時刻t1は、モータ9の逆転方向への回転禁止を猶予する逆転許可カウントタイマーがカウントを開始するタイミングとなる。モータ9の逆転方向への回転は、モータ9の逆転方向への回転を禁止する条件が成立した状態で逆転許可カウントタイマーが予め設定された所定値Cまでカウントアップされると禁止される。所定値Cとなるまでカウントアップされるのに要する時間は、所定時間Aである。
【0048】
また、駆動輪(例えば前輪6)の指令トルクは、時刻t1のタイミングから低下する。このときの指令トルクは、ゼロを目標に低下させるが、指令トルクの低下させる際の変化率を2段階に設定している。すなわち、駆動輪の指令トルクは、予め設定された所定トルクTまで低下させる際の指令トルクの減少率(前半減少率)が所定トルクTからゼロとなるまで低下させる際の指令トルクの減少率(後半減少率)よりも大きくなっている。また、上記後半減少率は、運転者にショックを与えることがないような小さい値に設定されている。なお、これらの減少率は、所定時間Aの間に駆動輪の指令トルクをゼロにできるように設定される。
【0049】
時刻t2は、逆転許可カウントタイマーが所定値Cまでカウントアップされたタイミングである。モータ9の逆転方向への回転は、時刻t2のタイミングで禁止される。
【0050】
時刻t3は、フットブレーキがオンとなったタイミングである。時刻t2のタイミングでモータ9の逆転方向への回転禁止が解除される。つまり、時刻t2のタイミングでモータ9の逆転方向への回転が許可される。
【0051】
時刻t4は、変速レンジがPレンジからDレンジに切り替えられたタイミングである。車速及び駆動輪の指令トルクは、時刻t4のタイミングから上昇する。
【0052】
時刻t5は、フットブレーキがオンとなったタイミングである。車速は、時刻t5のタイミングから低下し始める。なお、時刻t3のタイミングでオンとなったフットブレーキは、時刻t4と時刻5の間のタイミングでオフとなっている。
【0053】
時刻t6は、車速がゼロになるタイミングである。逆転許可カウントタイマーは、時刻t6のタイミングからカウントアップを開始する。駆動輪の指令トルクは、時刻t6のタイミングから上記前半減少率で低下する。
【0054】
時刻t7は、フットブレーキがオフとなり、停止した車両1が動きだして、車速が上昇し始めるタイミングである。逆転許可カウントタイマーは、時刻t7のタイミングでカウントアップを終了する。駆動輪の指令トルクは、時刻t7のタイミングで上記前半減少率による減少を終了する。
【0055】
時刻t8は、フットブレーキがオンとなったタイミングである。車速は、時刻85のタイミングから低下し始める。
【0056】
時刻t9は、車速がゼロになるタイミングである。逆転許可カウントタイマーは、時刻t9のタイミングからカウントアップを開始する。駆動輪の指令トルクは、時刻t9のタイミングから上記前半減少率で低下する。
【0057】
時刻t10は、変速レンジがDレンジからPレンジに切り替えられたタイミングである。逆転許可カウントタイマーは、時刻t10のタイミングでカウントアップをリセットし、時刻t10からカウントアップを最初から始める。
【0058】
時刻t11は、時刻t10から開始した逆転許可カウントタイマーのカウントアップが所定値Cに達したタイミングである。時刻t11のタイミングでモータ9の逆転方向への回転が禁止される。
【0059】
上述した実施例の車両1においては、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態(フットブレーキがオフの状態)で、自動変速機3の変速レンジがPレンジ、もしくは車速がゼロの場合に、無人になっている可能性がある。このような状態でモータ9が誤って逆転方向に作動して副変速機5がニュートラル領域に入ってしまうと、傾斜した場所等では、車両1が意図にせず動き出してしまう虞がある。
【0060】
そこで、上述した実施例の車両1は、フットブレーキがオフで、自動変速機3の変速レンジがPレンジ、もしくは車速がゼロの場合、モータ9の作動のうち副変速機5がニュートラル領域に入る可能性があるモータ9の逆転方向の作動を禁止する。
【0061】
これによって、車両1は、フットブレーキがオフで、自動変速機3の変速レンジがPレンジ、もしくは車速がゼロの場合にモータ9が逆転方向に回転してトランスファ4の副変速機5がニュートラル領域に入ってしまうことを抑制することができ、ひいては運転者の意図しない車両1の挙動を抑制することができる。
【0062】
また、上述した実施例の車両1は、運転者がトランスファ4の動作モードの切り替えを行った場合には、切り替えてから予め設定された所定時間Aが経過するまでの間は、モータ9の作動のうち副変速機5がニュートラル領域に入る可能性があるモータ9の逆転方向の作動が禁止されないように設定されている。
【0063】
動作モードの切り替えは、運転者が車内で行う操作である。従って、運転者が車両1から降車するのに要する時間を考慮すると、動作モードの切り替えが行われた時点から運転者の降車に要する時間に相当する所定時間Aが経過するまでは、少なくとも車両内に運転者おり、車両1が無人になることはない。
【0064】
つまり、所定時間A内であれば車内に運転者がいるため、副変速機5がニュートラル領域にある状態でモータ9が停止したとしても、運転者がフットブレーキを踏むことにより車両1の予期せぬ動きに対応することができる。
【0065】
そこで、このような場合には、運転者が車両1から降車するのに要する時間に基づいて設定された所定時間Aの間、モータ9の作動のうち副変速機5がニュートラル領域に入る可能性がある逆転方向の作動を許可している。
【0066】
そのため、車両1は、フットブレーキを踏まないで信号待ちをしているような場面で運転者がトランスファ4の動作モードを例えば4HモードからAUTOモードの切り替えを行った場合に、モータ9の逆転方向の回転を許可して前輪6に伝達される駆動トルクをこのときのAUTOモードに対応したトルク値であるゼロにすることができる。
【0067】
上述した実施例の車両1は、フットブレーキがオフで、自動変速機3の変速レンジがPレンジに切り替わる、もしくは車速がゼロに遷移すると、運転者の降車に要する時間に相当する所定時間Aが経過するまでの間は、モータ9の作動のうち副変速機5がニュートラル領域に入る可能性がある逆転方向の作動が禁止されないように設定されている。
【0068】
自動変速機3の変速レンジの切り替わる際や車速がゼロに遷移する際には、車内に運転者がいると考えられる。従って、運転者が車両1から降車するのに要する時間を考慮すると、変速レンジの切り替えが行われた時点や車速がゼロに遷移した時点から所定時間Aが経過するまでは、少なくとも車両1内に運転者おり、車両1が無人になることはない。
【0069】
つまり、所定時間A内であれば車内に運転者がいるため、仮にモータ9が逆転方向に作動して副変速機5がニュートラル領域にある状態でモータ9が停止したとしても、運転者がフットブレーキを踏むことにより車両1の予期せぬ動きに対応することができる。
【0070】
そこで、このような場合には、運転者が車両1から降車するのに要する時間に基づいて設定された所定時間Aの間、モータ9の作動のうち副変速機5がニュートラル領域に入る可能性がある逆転方向の作動を許可している。
【0071】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かによらず、自動変速機3の変速レンジがPレンジ、もしくは車速がゼロの場合に無人になっていると判定し、モータ9の作動のうち副変速機5がニュートラル領域に入る可能性がある逆転方向の作動を禁止するようにしてもよい。これにより、ブレーキペダルの効きが弱いような場合にも、自動変速機3の変速レンジがPレンジ、もしくは車速がゼロの場合にモータ9の逆転方向への回転が禁止され、運転者の意図しない車両1の挙動を抑制することができる。
【0073】
例えば、トランスファ4は、4H(モード)と、4L(モード)と、AUTO(モード)と、のうちの少なくとも2つの動作モードを有するものであってもよい。
【0074】
上述した実施例は、車両の制御方法及び車両の制御装置に関するものである。
【符号の説明】
【0075】
1…車両
2…内燃機関
3…自動変速機
4…トランスファ
5…副変速機
6…前輪
7…後輪
8…駆動力分配機構
9…モータ
10…フロントプロペラシャフト
11…フロントディファレンシャルギヤ
12…リアプロペラシャフト
13…リアディファレンシャルギヤ
14…動作モード切替スイッチ
15…コントロールユニット
16…横加速度センサ
17…前後加速度センサ
18…車速センサ
19…ブレーキスイッチ
20…機関回転速度センサ
21…シフトポジションセンサ
22…モータ回転速度センサ