(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157577
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04746 20160101AFI20241031BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/04313
H01M8/04 J
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/0438
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071923
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】北條 芙美
(72)【発明者】
【氏名】高井 希紗
(72)【発明者】
【氏名】中根 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】竹前 昭宏
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AC11
5H127BA02
5H127BA12
5H127BA22
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127DA11
5H127DB03
5H127DB13
5H127DB23
5H127DB33
5H127DC08
5H127DC18
5H127DC22
5H127DC28
5H127DC32
5H127DC38
(57)【要約】
【課題】発電部に関する設計の自由度の低下を招くことなく、第1の気体流路内や第2の気体流路内への水の滞留に起因する発電能力の低下を好適に回避可能とする。
【解決手段】制御部9が、燃料電池セル10において発電を行うときに、切替弁7a~7dを制御して給気口11bへの空気の流入および排気口11cからの空気の排気を許容させた状態で吸引ポンプ3を動作させると共に、予め規定された「第1の条件」が満たされたときに、吸引ポンプ3の動作を継続させつつ、切替弁7a~7dを制御して給気口11bへの空気の流入および排気口11cからの空気の排気を規制し、その後に予め規定された「第2の条件」が満たされたときに、切替弁7a~7dを制御して給気口11bへの空気の流入および排気口11cからの空気の排気を許容させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤を含む第1の気体を通過させる第1の気体流路を構成する第1のセパレータ、水素を含む第2の気体を通過させる第2の気体流路を構成する第2のセパレータ、および膜電極接合体を少なくとも含む平板状の複数の被積層物を積層して一体化した発電部を備え、前記第1のセパレータにおける第1の給気口から当該第1のセパレータにおける第1の排気口に向かって前記第1の気体流路を移動させられる前記第1の気体と、前記第2のセパレータにおける第2の給気口から当該第2のセパレータにおける第2の排気口に向かって前記第2の気体流路を移動させられる前記第2の気体とを前記膜電極接合体を介して反応させて発電可能に構成された燃料電池ユニットであって、
前記第1の排気口から前記第1の気体を吸引する吸引ポンプと、
前記第1の給気口への前記第1の気体の流入および前記第1の排気口からの当該第1の気体の排気を許容/規制可能な弁機構と、
前記吸引ポンプおよび前記弁機構の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記発電部において発電を行うときに、前記弁機構を制御して前記第1の給気口への前記第1の気体の流入および前記第1の排気口からの当該第1の気体の排気を許容させた状態で前記吸引ポンプを動作させると共に、予め規定された第1の条件が満たされたときに、前記吸引ポンプの動作を継続させつつ、前記弁機構を制御して前記第1の給気口への前記第1の気体の流入および前記第1の排気口からの当該第1の気体の排気の少なくとも一方を規制し、その後に予め規定された第2の条件が満たされたときに、当該弁機構を制御して当該第1の給気口への当該第1の気体の流入および当該第1の排気口からの当該第1の気体の排気を許容させる燃料電池ユニット。
【請求項2】
前記第1の給気口および前記第2の給気口を連通させる第1の配管、並びに前記第1の排気口および前記第2の排気口を連通させる第2の配管を備え、
前記弁機構は、
前記第1の配管および前記第2の配管への前記第1の気体および前記第2の気体の流入を規制しつつ、前記第1の給気口に当該第1の気体を流入させ、かつ前記第2の給気口に当該第2の気体を流入させる第1の切替え状態と、
前記吸引ポンプへの前記第1の気体および前記第2の気体の流入を規制する第2の切替え状態と、
前記第1の配管および前記第2の配管への前記第1の気体および前記第2の気体の流入、並びに前記第2の給気口への前記第2の気体の流入を規制しつつ、前記第1の給気口に当該第1の気体を流入させる第3の切替え状態と、
前記第1の給気口への前記第1の気体の流入、および前記第2の給気口への前記第2の気体の流入を規制しつつ、当該第1の配管への当該第1の気体の流入、当該第2の給気口への当該第1の気体の流入および当該第2の配管への当該第1の気体の流入を許容する第4の切替え状態とに切替え可能に構成され、
前記制御部は、前記発電部において発電を行うときに、前記弁機構を制御して前記第1の切替え状態に移行させ、
前記第1の条件が満たされたときに、前記弁機構を制御して前記第2の切替え状態に移行させ、その後に前記第2の条件が満たされたときに、当該弁機構を制御して前記第3の切替え状態に移行させ、
予め規定された第3の条件が満たされたときに、前記吸引ポンプの動作を継続させつつ、前記弁機構を制御して前記第2の切替え状態に移行させ、その後に予め規定された第4の条件が満たされたときに、当該弁機構を制御して前記第4の切替え状態に移行させる請求項1記載の燃料電池ユニット。
【請求項3】
前記制御部は、前記発電部における発電が終了したときに、前記第1の条件が満たされたと判別する請求項1または2記載の燃料電池ユニット。
【請求項4】
前記制御部は、前記発電部における発電が終了したときに、前記第3の条件が満たされたと判別する請求項2記載の燃料電池ユニット。
【請求項5】
前記第1の給気口および前記第1の排気口に生じる圧力差を検出する第1の圧力差検出部を備え、
前記制御部は、前記第1の圧力差検出部によって検出された圧力差が予め規定された第1の上限値を超えたときに、前記第1の条件が満たされたと判別する請求項1または2記載の燃料電池ユニット。
【請求項6】
前記第2の給気口および前記第2の排気口に生じる圧力差を検出する第2の圧力差検出部を備え、
前記制御部は、前記第2の圧力差検出部によって検出された圧力差が予め規定された第2の上限値を超えたときに、前記第3の条件が満たされたと判別する請求項2記載の燃料電池ユニット。
【請求項7】
前記制御部は、前記発電部における発電効率が予め規定された状態を下回ったときに、前記第1の条件が満たされたと判別する請求項1または2記載の燃料電池ユニット。
【請求項8】
前記制御部は、前記発電部における発電効率が予め規定された状態を下回ったときに、前記第3の条件が満たされたと判別する請求項2記載の燃料電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のセパレータ、第2のセパレータおよび膜電極接合体などを積層して一体化した発電部を備え、第1のセパレータにおける第1の気体流路を移動させられる第1の気体と、第2のセパレータにおける第2の気体流路を移動させられる第2の気体とを膜電極接合体を介して反応させて発電可能に構成された燃料電池ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料電池ユニットとして、一対のセパレータ(第1金属セパレータおよび第2金属セパレータ)の間に電解質膜・電極構造体(樹脂枠付きMEA:以下、枠材を含めて単に「MEA」ともいう)が挟み込まれて構成された複数の燃料電池(発電セル)が一対のエンドプレートの間に積層されて一体化された燃料電池スタックを備えたユニットが下記の特許文献に開示されている。
【0003】
この燃料電池スタックでは、燃料電池における各セパレータおよび各MEAに、酸化剤ガス供給連通孔、酸化剤ガス排出連通孔、燃料ガス供給連通孔、および燃料ガス排出連通孔が開口されており、各酸化剤ガス供給連通孔を介して第1金属セパレータに酸化剤ガスが供給されると共に第1金属セパレータの酸化剤ガス流路を通過させられた酸化剤ガスが各酸化剤ガス排出連通孔を介して排出され、かつ各燃料ガス供給連通孔を介して第2金属セパレータに燃料ガスが供給されると共に第2金属セパレータの燃料ガス流路を通過させられた燃料ガスが各燃料ガス排出連通孔を介して排出される構成が採用されている。なお、この燃料電池では、各セパレータおよび各MEAに冷却媒体供給連通孔および冷却媒体排出連通孔が開口され、両セパレータの接合面に形成された冷却媒体流路に冷却媒体が供給される構成が採用されているが、冷却媒体に関連する構成についての説明を省略する。
【0004】
この場合、この種の燃料電池スタックでは、発電に際して両反応ガスの反応によってカソード電極側に水が発生する。また、この水がアノード電極側に逆拡散することもある。ここで、反応ガス流路内に水が滞留したときには、反応ガスの流れが阻害されて反応ガスの供給不足による発電能力の低下を招くこととなる。そこで、この燃料電池スタックでは、上側の酸化剤ガス排出連通孔と下側の酸化剤ガス排出連通孔との間に位置する中点が、酸化剤ガス流路における重力方向の中心よりも下方に位置するように第1金属セパレータが構成されると共に、上側の燃料ガス排出連通孔と下側の燃料ガス排出連通孔との間に位置する中点が、燃料ガス流路における重力方向の中心よりも下方に位置するように第2金属セパレータが構成されている。これにより、両排出連通孔の中点を流路の中心と同じ高さに位置させた構成と比較して、流路内の水を下側の排出連通孔に円滑に排出させることが可能となり、水の滞留に起因する発電能力の低下を回避することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-121562号公報(第5-16頁、第1-10図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献に開示の燃料電池スタックには、以下のような解決すべき問題点が存在する。具体的には、上記の燃料電池スタックでは、上側の排出連通孔および下側における排出連通孔の中央に位置する中点が、反応ガスの流路における重力方向の中心よりも下方に位置するように両セパレータを構成することで、流路内の水を下側の排出連通孔に円滑に排出させることが可能となっている。つまり、上記の燃料電池スタックでは、発生した水が自重によって移動し易い状態とすることで流路内に滞留するのを抑制するとの技術的思想に基づいて各セパレータが設計・製造されている。
【0007】
しかしながら、セパレータに形成される反応ガス流路の少なくとも一部に、反応ガスの上昇や水平移動を要する区間が存在するときには、その区間において流路内に水が滞留し易く、滞留した水によって反応ガスの移動が阻害されるため、発電効率が低下することとなる。また、反応ガスの上昇や水平移動を要する区間が存在しないように流路を形成しようとしたときには、発電部の形状に関する設計の自由度が低下し、回路設計が困難となるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、発電部に関する設計の自由度の低下を招くことなく、第1の気体流路内や第2の気体流路内への水の滞留に起因する発電能力の低下を好適に回避し得る燃料電池ユニットを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の燃料電池ユニットは、酸化剤を含む第1の気体を通過させる第1の気体流路を構成する第1のセパレータ、水素を含む第2の気体を通過させる第2の気体流路を構成する第2のセパレータ、および膜電極接合体を少なくとも含む平板状の複数の被積層物を積層して一体化した発電部を備え、前記第1のセパレータにおける第1の給気口から当該第1のセパレータにおける第1の排気口に向かって前記第1の気体流路を移動させられる前記第1の気体と、前記第2のセパレータにおける第2の給気口から当該第2のセパレータにおける第2の排気口に向かって前記第2の気体流路を移動させられる前記第2の気体とを前記膜電極接合体を介して反応させて発電可能に構成された燃料電池ユニットであって、前記第1の排気口から前記第1の気体を吸引する吸引ポンプと、前記第1の給気口への前記第1の気体の流入および前記第1の排気口からの当該第1の気体の排気を許容/規制可能な弁機構と、前記吸引ポンプおよび前記弁機構の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記発電部において発電を行うときに、前記弁機構を制御して前記第1の給気口への前記第1の気体の流入および前記第1の排気口からの当該第1の気体の排気を許容させた状態で前記吸引ポンプを動作させると共に、予め規定された第1の条件が満たされたときに、前記吸引ポンプの動作を継続させつつ、前記弁機構を制御して前記第1の給気口への前記第1の気体の流入および前記第1の排気口からの当該第1の気体の排気の少なくとも一方を規制し、その後に予め規定された第2の条件が満たされたときに、当該弁機構を制御して当該第1の給気口への当該第1の気体の流入および当該第1の排気口からの当該第1の気体の排気を許容させる。
【0010】
請求項2記載の燃料電池ユニットは、請求項1記載の燃料電池ユニットにおいて、前記第1の給気口および前記第2の給気口を連通させる第1の配管、並びに前記第1の排気口および前記第2の排気口を連通させる第2の配管を備え、前記弁機構は、前記第1の配管および前記第2の配管への前記第1の気体および前記第2の気体の流入を規制しつつ、前記第1の給気口に当該第1の気体を流入させ、かつ前記第2の給気口に当該第2の気体を流入させる第1の切替え状態と、前記吸引ポンプへの前記第1の気体および前記第2の気体の流入を規制する第2の切替え状態と、前記第1の配管および前記第2の配管への前記第1の気体および前記第2の気体の流入、並びに前記第2の給気口への前記第2の気体の流入を規制しつつ、前記第1の給気口に当該第1の気体を流入させる第3の切替え状態と、前記第1の給気口への前記第1の気体の流入、および前記第2の給気口への前記第2の気体の流入を規制しつつ、当該第1の配管への当該第1の気体の流入、当該第2の給気口への当該第1の気体の流入および当該第2の配管への当該第1の気体の流入を許容する第4の切替え状態とに切替え可能に構成され、前記制御部は、前記発電部において発電を行うときに、前記弁機構を制御して前記第1の切替え状態に移行させ、前記第1の条件が満たされたときに、前記弁機構を制御して前記第2の切替え状態に移行させ、その後に前記第2の条件が満たされたときに、当該弁機構を制御して前記第3の切替え状態に移行させ、予め規定された第3の条件が満たされたときに、前記吸引ポンプの動作を継続させつつ、前記弁機構を制御して前記第2の切替え状態に移行させ、その後に予め規定された第4の条件が満たされたときに、当該弁機構を制御して前記第4の切替え状態に移行させる。
【0011】
請求項3記載の燃料電池ユニットは、請求項1または2記載の燃料電池ユニットにおいて、前記制御部は、前記発電部における発電が終了したときに、前記第1の条件が満たされたと判別する。
【0012】
請求項4記載の燃料電池ユニットは、請求項2記載の燃料電池ユニットにおいて、前記制御部は、前記発電部における発電が終了したときに、前記第3の条件が満たされたと判別する。
【0013】
請求項5記載の燃料電池ユニットは、請求項1または2記載の燃料電池ユニットにおいて、前記第1の給気口および前記第1の排気口に生じる圧力差を検出する第1の圧力差検出部を備え、前記制御部は、前記第1の圧力差検出部によって検出された圧力差が予め規定された第1の上限値を超えたときに、前記第1の条件が満たされたと判別する。
【0014】
請求項6記載の燃料電池ユニットは、請求項2記載の燃料電池ユニットにおいて、前記第2の給気口および前記第2の排気口に生じる圧力差を検出する第2の圧力差検出部を備え、前記制御部は、前記第2の圧力差検出部によって検出された圧力差が予め規定された第2の上限値を超えたときに、前記第3の条件が満たされたと判別する。
【0015】
請求項7記載の燃料電池ユニットは、請求項1または2記載の燃料電池ユニットにおいて、前記制御部は、前記発電部における発電効率が予め規定された状態を下回ったときに、前記第1の条件が満たされたと判別する。
【0016】
請求項8記載の燃料電池ユニットは、請求項2記載の燃料電池ユニットにおいて、前記制御部は、前記発電部における発電効率が予め規定された状態を下回ったときに、前記第3の条件が満たされたと判別する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の燃料電池ユニットでは、制御部が、発電部において発電を行うときに、弁機構を制御して第1のセパレータにおける第1の給気口への第1の気体の流入、および第1のセパレータにおける第1の排気口からの第1の気体の排気を許容させた状態で吸引ポンプを動作させると共に、予め規定された第1の条件が満たされたときに、吸引ポンプの動作を継続させつつ、弁機構を制御して第1の給気口への第1の気体の流入および第1の排気口からの第1の気体の排気の少なくとも一方を規制し、その後に予め規定された第2の条件が満たされたときに、弁機構を制御して第1の給気口への第1の気体の流入および第1の排気口からの第1の気体の排気を許容させる。
【0018】
したがって、請求項1記載の燃料電池ユニットによれば、第1の条件が満たされて、吸引ポンプの動作を継続させつつ、第1の給気口への第1の気体の流入および第1の排気口からの第1の気体の排気の少なくとも一方を規制することで、吸引ポンプと第1の給気口との間、または吸引ポンプと第1の排気口との間の負圧を上昇させ、その状態で第2の条件が満たされて第1の給気口への第1の気体の流入および第1の排気口からの第1の気体の排気が許容されたときに、第1の気体流路内の第1の気体が第1の排気口から急速に排気され、これに伴って第1の気体流路内に滞留していた水を第1の排気口から排水することができる。これにより、自重によって第1の排気口に向かって水が移動し難い第1の気体流路であっても、滞留していた水を確実に排水することができるため、第1のセパレータに関する設計の自由度の低下を招くことなく、第1の気体流路内への水の滞留に起因する発電能力の低下を好適に回避することができる。
【0019】
また、請求項2記載の燃料電池ユニットでは、制御部が、発電部において発電を行うときに、弁機構を制御して、第1の配管および第2の配管への第1の気体および第2の気体の流入を規制しつつ、第1の給気口に第1の気体を流入させ、かつ第2のセパレータにおける第2の給気口に第2の気体を流入させる第1の切替え状態に移行させ、第1の条件が満たされたときに、弁機構を制御して、吸引ポンプへの第1の気体および第2の気体の流入を規制する第2の切替え状態に移行させ、その後に第2の条件が満たされたときに、弁機構を制御して、第1の配管および第2の配管への第1の気体および第2の気体の流入、並びに第2の給気口への第2の気体の流入を規制しつつ、第1の給気口に第1の気体を流入させる第3の切替え状態に移行させ、予め規定された第3の条件が満たされたときに、吸引ポンプの動作を継続させつつ、弁機構を制御して、上記の第2の切替え状態に移行させ、その後に予め規定された第4の条件が満たされたときに、弁機構を制御して、第1の給気口への第1の気体の流入、および第2の給気口への第2の気体の流入を規制しつつ、第1の配管への第1の気体の流入、第2の給気口への第1の気体の流入および第2の配管への第1の気体の流入を許容する第4の切替え状態に移行させる。
【0020】
したがって、請求項2記載の燃料電池ユニットによれば、第1の条件が満たされたときに第1の気体流路内の水が好適に排水されるだけでなく、第3の条件が満たされて、吸引ポンプの動作を継続させつつ、第2の切替え状態に移行させられることで、吸引ポンプと第1の排気口との間の負圧を上昇させ、その状態で第4の条件が満たされて第4の切替え状態に移行させられることで、第2の気体流路内の第2の気体等が第2の排気口から急速に排気され、これに伴って第2の気体流路内に滞留していた水が第2の排気口から排水される。これにより、自重によって第2の排気口に向かって水が移動し難い第2の気体流路であっても、滞留していた水を確実に排水することができるため、第2のセパレータに関する設計の自由度の低下を招くことなく、第2の気体流路内への水の滞留に起因する発電能力の低下を好適に回避することができる。
【0021】
さらに、請求項3記載の燃料電池ユニットでは、制御部が、発電部における発電が終了したときに、第1の条件が満たされたと判別する。また、請求項4記載の燃料電池ユニットでは、制御部が、発電部における発電が終了したときに、第3の条件が満たされたと判別する。したがって、請求項3,4記載の燃料電池ユニットによれば、発電中に第1の気体流路内や第2の気体流路内に水が滞留した状態になったとしても、この水が発電終了時に確実に排水されるため、次回の発電開始時に、第1の気体流路に対する第1の気体の通過が妨げられたり、第2の気体流路に対する第2の気体の通過が妨げられたりすることがなく、好適に発電を開始することができる。
【0022】
さらに、請求項5記載の燃料電池ユニットでは、制御部が、第1の給気口および第1の排気口に生じる圧力差を検出する第1の圧力差検出部によって検出された圧力差が予め規定された第1の上限値を超えたときに、第1の条件が満たされたと判別する。また、請求項6記載の燃料電池ユニットでは、制御部が、第2の給気口および第2の排気口に生じる圧力差を検出する第2の圧力差検出部によって検出された圧力差が予め規定された第2の上限値を超えたときに、第3の条件が満たされたと判別する。
【0023】
したがって、請求項5,6記載の燃料電池ユニットによれば、第1の気体流路内に滞留した水の量が多量となって第1の気体流路に対する第1の気体の通過抵抗が大きくなったときに、検出される圧力差が第1の上限値を超えて第1の条件が満たされることで、この第1の気体流路内の水が好適に排水され、第2の気体流路内に滞留した水の量が多量となって第2の気体流路に対する第2の気体の通過抵抗が大きくなったときに、検出される圧力差が第2の上限値を超えて第3の条件が満たされることで、この第2の気体流路内の水が好適に排水されるため、好適な発電に必要とされる十分な量の第1の気体や第2の気体を確実に反応させることができる。
【0024】
さらに、請求項7記載の燃料電池ユニットでは、制御部が、発電部における発電効率が予め規定された状態を下回ったときに、第1の条件が満たされたと判別する。また、請求項8記載の燃料電池ユニットでは、制御部が、発電部における発電効率が予め規定された状態を下回ったときに、第3の条件が満たされたと判別する。
【0025】
したがって、請求項7,8記載の燃料電池ユニットによれば、第1の気体流路内に多量の水が滞留して第1の気体の通過抵抗が大きくなり、十分な量の第1の気体を第1のセパレータに供給するのが困難となって発電能力が低下したときに、第1の条件が満たされて第1の気体流路から水が排水され、第2の気体流路内に多量の水が滞留して第2の気体の通過抵抗が大きくなり、十分な量の第2の気体を第2のセパレータに供給するのが困難となって発電能力が低下したときに、第3の条件が満たされて第2の気体流路から水が排水されるため、それ以上発電能力が低下する前に、発電に必要な十分な量の第1の気体や第2の気体を供給可能な状態に復帰させて好適に発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】燃料電池ユニット1の構成を示す図であって、発電中の気体の流れについて説明するための説明図である。
【
図2】燃料電池ユニット1の構成を示す他の図であって、空気流路または水素ガス流路の排水処理に移行する直前の状態について説明するための説明図である。
【
図3】燃料電池ユニット1の構成を示すさらに他の図であって、空気流路の排水処理に移行した状態について説明するための説明図である。
【
図4】燃料電池ユニット1の構成を示すさらに他の図であって、水素ガス流路の排水処理に移行した状態について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、燃料電池ユニットの実施の形態について説明する。
【0028】
図1~4に示す燃料電池ユニット1は、「燃料電池ユニット」の一例であって、発電用の気体(「酸化剤を含む第1の気体」の一例である空気(大気:酸素)、および「水素を含む第2の気体」の一例である水素ガス)を反応させることで電力を生じさせることができるように構成されている。具体的には、燃料電池ユニット1は、前処理装置2、吸引ポンプ3、供給源4、後処理装置5、配管2-11,4-12,11-3,12-5,6a,6b、切替弁7a~7d、圧力センサ8a~8d、制御部9および燃料電池セル10を備えて構成されている。
【0029】
この場合、燃料電池セル10は、「平板状の複数の被積層物を積層して一体化した発電部」の一例であって、「第1のセパレータ」の一例であるセパレータ11、「第2のセパレータ」の一例であるセパレータ12、および「膜電極接合体(燃料電池用膜電極接合体)」の一例であるMEA13からなる発電用スタックや、冷却用の流体(空気や冷却液)を通過させるためのセパレータ(図示せず)、および各積層物の積層方向における両端に配設されたエンドプレート(図示せず)などを備えている。なお、この例では、セパレータ11,12、MEA13、冷却用のセパレータおよびエンドプレートなどの各板体が「被積層物」に相当する。
【0030】
また、セパレータ11には、空気(大気)を通過させるための溝部(図示せず)が形成されると共に、セパレータ12には、水素ガスを通過させるための溝部(図示せず)が形成され、両セパレータ11,12の間にMEA13が挟み込まれるようにしてこれらが積層されることにより、セパレータ11の溝部およびMEA13の一面によって空気流路11a(「第1の気体流路」の一例)が構成されると共に、セパレータ12の溝部およびMEA13の他の一面によって水素流路12a(「第2の気体流路」の一例)が構成されている。また、MEA13は、電解質膜、触媒層およびガス拡散層などを備えて構成されている。
【0031】
なお、実際の燃料電池セル10は、燃料電池ユニット1に求められる発電能力に応じて、上記の発電用スタックや冷却用のセパレータを複数備えて構成されるが、燃料電池ユニット1の構成およびその動作に関する理解を容易とするために1つの発電用スタックのみを図示すると共に、冷却用のセパレータやエンドプレートについての図示および説明を省略する。
【0032】
一方、前処理装置2は、燃料電池セル10(セパレータ11)に供給する空気(大気)から異物を除去して浄化するフィルタなどを備えている。なお、供給する空気に除去すべき異物が含まれていないときや、空気(大気)に代えて酸化剤を含む各種の工業用ガスを使用するときには、この前処理装置2を不要とすることもできる。吸引ポンプ3は、「吸引ポンプ」の一例であって、制御部9の制御に従い、セパレータ11の排気口11c(「第1の排気口」の一例)から空気流路11a内の空気を吸引することにより、前処理装置2において処理された新たな空気を給気口11b(「第1の給気口」の一例)から空気流路11a内に給気させる。
【0033】
供給源4は、別所で製造された水素を貯蔵可能な水素タンク、別所で製造された液化水素を気化させる変換装置、および水素ガスを生成可能な水素ガス生成装置などで構成され、燃料電池セル10(セパレータ12)に水素ガスを供給可能に構成されている。この場合、本例の燃料電池ユニット1では、この供給源4から燃料電池セル10に供給する水素ガスが好適な湿度範囲内の湿度となるように供給源4において水素ガスを加湿する構成が採用されている。
【0034】
後処理装置5は、セパレータ12の給気口12b(「第2の給気口」の一例)から水素流路12aに供給されて排気口12c(「第2の排気口」の一例)から排気された気体(燃料電池セル10において未反応の水素を含む排気)に含まれる水素を除去(回収)する回収装置や、排気口11cから排気された気体の水素濃度が既定値を下回るように空気(大気)を混合する(排気口11cからの排気を希釈する)混合装置などで構成されている。なお、排気される気体の水素濃度が十分に低いときなどには、この後処理装置5を不要とすることもできる。
【0035】
配管2-11は、前処理装置2から給気口11bに空気を給気可能に前処理装置2および燃料電池セル10(セパレータ11)に接続されている。配管4-12は、供給源4から給気口12bに水素ガスを給気可能に供給源4および燃料電池セル10(セパレータ12)に接続されている。配管11-3は、排気口11cから吸引ポンプ3に空気を吸引可能に吸引ポンプ3および燃料電池セル10(セパレータ11)に接続されている。配管12-5は、排気口12cから後処理装置5に排気を案内可能に後処理装置5および燃料電池セル10(セパレータ12)に接続されている。配管6aは、「第1の給気口および第2の給気口を連通させる第1の配管」の一例であって、その一端部が配管2-11に接続されると共に、他端部が配管4-12に接続されている。配管6bは、「第1の排気口および前記第2の排気口を連通させる第2の配管」の一例であって、その一端部が配管12-5に接続されると共に、他端部が配管11-3に接続されている。
【0036】
切替弁7aは、上記の配管2-11と配管6aとの接続部に配設されており、制御部9の制御に従い、給気口11bへの空気の流入、および配管6aへの空気の流入を許容/規制する。切替弁7bは、上記の配管11-3と配管6bとの接続部に配設されており、制御部9の制御に従い、排気口11cから吸引ポンプ3への空気の吸引、および配管6bから吸引ポンプ3への空気の吸引を許容/規制する。切替弁7cは、上記の配管4-12と配管6aとの接続部に配設されており、制御部9の制御に従い、供給源4から給気口12bや配管6aへの水素ガスの流入、および配管6aから供給源4や給気口12bへの空気の流入を許容/規制する。切替弁7dは、上記の配管12-5と配管6bとの接続部に配設されており、制御部9の制御に従い、排気口12cから後処理装置5への水素ガスの流入、および排気口12cから配管6bへの空気等の流入を許容/規制する。
【0037】
この場合、本例の燃料電池ユニット1では、上記の切替弁7a~7dによって「弁機構」が構成されている。なお、
図1~4では、切替弁7a~7dにおいて制御部9によって閉塞されたポートを黒色で塗り潰して図示している。この制御部9による各切替弁7a~7dの切替え制御については後に具体的に説明する。
【0038】
圧力センサ8a,8bは、制御部9と相俟って「第1の給気口および第1の排気口に生じる圧力差を検出する第1の圧力差検出部」を構成し、圧力センサ8aが、上記の配管2-11における切替弁7aと給気口11bとの間に生じる圧力(すなわち、給気口11bに生じる圧力)を検出し、圧力センサ8bが、上記の配管11-3における排気口11cと切替弁7bとの間に生じる圧力(すなわち、排気口11cに生じる圧力)を検出し、制御部9が両圧力センサ8a,8bによって検出された圧力に基づいて圧力差を特定する。なお、圧力センサ8a,8bに代えて、1つの差圧センサー(図示せず)によって給気口11bと排気口11cとの圧力差を直接検出する構成を採用することもできる。
【0039】
圧力センサ8c,8dは、制御部9と相俟って「第2の給気口および第2の排気口に生じる圧力差を検出する第2の圧力差検出部」を構成し、圧力センサ8cが、上記の配管4-12における切替弁7cと給気口12bとの間に生じる圧力(すなわち、給気口12bに生じる圧力)を検出し、圧力センサ8dが、上記の配管12-5における排気口12cと切替弁7dとの間に生じる圧力(すなわち、排気口12cに生じる圧力)を検出し、制御部9が両圧力センサ8c,8dによって検出された圧力に基づいて圧力差を特定する。なお、圧力センサ8c,8dに代えて、1つの差圧センサー(図示せず)によって給気口12bと排気口12cとの圧力差を直接検出する構成を採用することもできる。
【0040】
制御部9は、燃料電池ユニット1を総括的に制御する。具体的には、制御部9は、吸引ポンプ3を制御して空気を吸引させると共に、供給源4を制御して水素ガスを供給させる。また、制御部9は、燃料電池ユニット1の動作状態や圧力センサ8a~8dによって検出された圧力に応じて切替弁7a~7dを切替え制御することで、空気や水素ガスの流れをコントロールする。
【0041】
この燃料電池ユニット1では、空気(酸素)と水素とを反応させて発電を行う「通常動作モード」に加え、空気流路11a内に発生した水を燃料電池セル10(セパレータ11)から強制排水する「空気流路排水動作モード」や、水素流路12a内に発生した水を燃料電池セル10(セパレータ12)から強制排水する「水素流路排水動作モード」で動作することができるように構成されている。
【0042】
まず、「通常動作モード」で燃料電池セル10において発電を行うときに、制御部9は、吸引ポンプ3を制御して空気の吸引を開始させると共に、供給源4を制御して水素ガスの供給を開始させる。この際に、制御部9は、
図1に示すように、切替弁7aを制御して、配管2-11から配管6aへの空気の流入を規制させつつ、配管2-11から給気口11bへの空気の流入を許容させ、かつ、切替弁7cを制御して、配管4-12から配管6aへの水素ガスの流入を規制させつつ、配管4-12から給気口12bへの水素ガスの流入を許容させると共に、切替弁7dを制御して、配管12-5から配管6bへの水素ガスの流入を規制させつつ、配管12-5から後処理装置5への水素ガスの流入を許容させ、かつ、切替弁7bを制御して、配管6bから配管11-3への水素ガスの流入を規制させつつ、配管11-3から吸引ポンプ3への空気の吸引を許容させる(「第1の給気口への第1の気体の流入および第1の排気口からの第1の気体の排気を許容させた状態」および「第1の切替え状態」の一例)。
【0043】
これにより、前処理装置2において浄化された空気が、配管2-11を介して燃料電池セル10(セパレータ11)の給気口11bに供給され、給気口11bから排気口11cに向かって空気流路11aを通過させられた後に、排気口11cから配管11-3を介して吸引ポンプ3に吸引される。また、供給源4において加湿された水素ガスが、配管4-12を介して燃料電池セル10(セパレータ12)の給気口12bに供給され、給気口12bから排気口12cに向かって水素流路12aを通過させられた後に、排気口12cから配管12-5を介して後処理装置5に流入する。これにより、燃料電池セル10においてMEA13を介して空気(酸素)と水素とが反応させられて電力が発生する。
【0044】
この場合、燃料電池セル10において発電が行われているときには、酸素と水素との反応によってMEA13におけるカソード電極側に水が発生する。また、発電効率の向上を目的として供給源4において加湿をした水素ガスが燃料電池セル10(セパレータ12)に供給される本例では、動作開始直後であることで低温(常温)となっている燃料電池セル10(セパレータ12)との熱交換、および空気流路11aを通過させられる空気や冷却用のセパレータを通過させられる冷媒との熱交換等による水素ガスの温度低下に伴って水素ガス中の水分が水素流路12a内で結露する結果、水素流路12a内にも水が発生することがある。さらに、前述の特許文献にも記載されているように、カソード電極側において発生した水がアノード電極側(水素流路12a内)に逆拡散(MEA13を透過して水素流路12a内に侵入)したり、アノード電極側において発生した水がカソード電極側(空気流路11a内)に逆拡散(MEA13を透過して空気流路11a内に侵入)したりすることもある。
【0045】
ここで、空気流路11a内に発生した水の多くは、空気流路11aを通過させられる空気と共に空気流路11a内を移動させられて排気口11cから排気と共に排水され、水素流路12a内に発生した水の多くは、水素流路12aを通過させられる水素ガスと共に水素流路12a内を移動させられて排気口12cから排気と共に排水される。しかしながら、例えば、燃料電池セル10に対する空気および水素ガスの単位時間当りの供給量が多く、かつ、これらが好適に反応しているときには、空気流路11a内や水素流路12a内に発生する水の量が多くなるため、発生した水の一部が空気流路11a内や水素流路12a内に滞留した状態となることがある。したがって、このような状態において発電を停止させるために空気や水素ガスの供給を停止させたときには、空気流路11a内や水素流路12a内に水が滞留したままの状態となる。
【0046】
一方、燃料電池ユニット1による発電開始時には、酸素と水素とが好適な反応が得られる状態となるまで、燃料電池セル10に対する空気や水素ガスの供給量を徐々に増加させる制御が行われる。この際に、前回の発電終了時に空気流路11a内や水素流路12a内に水が滞留した状態となっていたときには、発電開始時に供給される空気や水素ガスが少量であるため、この水を排気口11c,12cから排水するのが困難であることから、空気流路11a内の水によって空気の通過が阻害され、かつ水素流路12a内の水によって水素ガスの通過が阻害さることとなる。このため、好適な反応が得られる状態となるまでに要する時間が長くなってしまう。
【0047】
そこで、本例の燃料電池ユニット1では、「通常動作モード」での発電の終了に際して、一例として、「空気流路排水動作モード」で動作して空気流路11a内の水を排水し、次いで「水素流路排水動作モード」で動作して水素流路12a内の水を排水する処理を行ってから停止する構成が採用されている。具体的には、制御部9は、図示しない操作部の操作、または図示しない外部装置からの制御信号によって発電の終了を指示されたときに、まず、吸引ポンプ3の動作を継続させつつ、供給源4を制御して燃料電池セル10に対する水素ガスの供給を停止させる。これにより、燃料電池セル10における水素と酸素との反応が停止して発電が終了する(「予め規定された第1の条件が満たされたとき」、および「予め規定された第3の条件が満たされたとき」の一例)。
【0048】
次いで、制御部9は、「空気流路排水動作モード」に移行する。この「空気流路排水動作モード」では、制御部9は、引き続き吸引ポンプ3を動作させつつ、
図2に示すように、切替弁7aを制御して配管6aおよび給気口11bへの空気の流入を規制すると共に、切替弁7bを制御して配管6bから配管11-3への空気や水素ガスの流入、および排気口11cから配管11-3への空気の排気(流入)を規制させる。これにより、配管11-3から吸引ポンプ3への空気の流入(吸引)が規制される(「第1の給気口への第1の気体の流入および第1の排気口からの第1の気体の排気の双方を規制した状態」:「第2の切替え状態」の一例)。なお、本例では、上記の「第2の切替え状態」において、制御部9が、切替弁7cを制御して配管6aおよび水素流路12aへの水素ガスの流入を規制すると共に、切替弁7dを制御して、水素流路12aからの水素ガスの排気や、配管6bへの水素ガス等の流入を規制する。これにより、吸引ポンプ3が継続動作させられることで、配管11-3における吸引ポンプ3と切替弁7bとの間の負圧が徐々に上昇する(負圧の蓄圧)。
【0049】
続いて、制御部9は、各切替弁7a~7dを「第2の切替え状態」に切り替えてから予め規定された時間が経過したときに(「第2の条件」が満たされたときの一例)、引き続き吸引ポンプ3を動作させつつ、
図3に示すように、切替弁7aを制御して、配管6aへの空気の流入を規制させつつ、給気口11bへの空気の流入を許容させると共に、切替弁7bを制御して、配管6bから配管11-3への空気や水素ガスの流入を規制させつつ、排気口11cから配管11-3への空気の排気(流入)を許容させる(「第3の切替え状態」の一例)。なお、本例では、この「第3の切替え状態」において、制御部9が、切替弁7c,7dについては、「第2の切替え状態」と同様の状態を維持させる。
【0050】
この場合、前述のように切替弁7a~7dが「第2の切替え状態」に切り替えられてから吸引ポンプ3が継続動作させられることで配管11-3における吸引ポンプ3と切替弁7bとの間の負圧が上昇した状態となっている。したがって、各切替弁7a~7dが「第3の切替え状態」に切り替えられることで、配管11-3における切替弁7bと燃料電池セル10におけるセパレータ11(排気口11c)との間の空気が吸引ポンプ3側に急速に吸引され、これに伴い、空気流路11a内の空気が排気口11cから配管11-3に向かって急速に排気され、さらに、配管2-11内の空気が給気口11bから空気流路11a内に急速に吸引される。これにより、空気流路11a内に滞留していた水が空気と共に、排気口11cから排水され、給気口11bから新たに吸引される乾燥した空気によって空気流路11a内が十分に乾燥させられる。
【0051】
一方、上記のように切替弁7a~7dを「第3の切替え状態」に移行させてから予め規定された時間が経過したとき(空気流路11a内の水の排水が完了するのに要する時間が経過したとき)に、制御部9は、「水素流路排水動作モード」に移行する。具体的には、制御部9は、吸引ポンプ3を引き続き動作させつつ、切替弁7a~7dを再び「第2の切替え状態」に移行させる。この際には、「第3の切替え状態」への移行前の「第2の切替え状態」での動作時と同様にして、配管11-3における吸引ポンプ3と切替弁7bとの間の負圧が徐々に上昇する。
【0052】
続いて、制御部9は、各切替弁7a~7dを「第2の切替え状態」に切り替えてから予め規定された時間が経過したときに(「第4の条件」が満たされたときの一例)、引き続き吸引ポンプ3を動作させつつ、
図4に示すように、切替弁7aを制御して、セパレータ11(給気口11b)への空気の流入を規制させつつ、配管6aへの空気の流入を許容させると共に、切替弁7cを制御して、配管6aを介して配管4-12に流入する空気の供給源4への空気の流入(逆流)を規制させつつ、セパレータ12(給気口12b)への流入を許容させる。また、制御部9は、切替弁7dを制御して、セパレータ12(水素流路12a)を通過させられて排気口12cから排気される空気の後処理装置5への流入を規制させつつ、配管6bへの流入を許容させると共に、切替弁7bを制御して、配管6bを介して配管11-3に流入する空気のセパレータ11(排気口11c)への流入(逆流)を規制させつつ、吸引ポンプ3への吸引を許容させる(「第4の切替え状態」の一例)。
【0053】
この場合、前述のように切替弁7a~7dが「第2の切替え状態」に切り替えられてから吸引ポンプ3が継続動作させられることで配管11-3における吸引ポンプ3と切替弁7bとの間の負圧が上昇した状態となっている。したがって、各切替弁7a~7dが「第4の切替え状態」に切り替えられることで、配管6b内の気体(以前に「第4の切替え状態」に切り替えられたときに配管6b内に流入した空気等)が配管11-3における切替弁7bと吸引ポンプ3との間に急速に吸引され、これに伴い、配管12-5内の気体(発電終了直前に排気口12cから排気された水素ガス)が配管6b内に急速に吸引されると共に、水素流路12a内の気体(水素ガス)が排気口12cから配管12-5に向かって急速に排気され、さらに、配管4-12内の気体(水素ガス)が給気口12bから水素流路12a内に急速に吸引される。また、配管6a内の空気が配管4-12内に急速に吸引されると共に、配管2-11内の空気が配管6a内に急速に吸引される。これにより、水素流路12a内に滞留していた水が水素ガスと共に、排気口12cから排水され、配管6aを介して配管4-12に吸引された空気が給気口12bから吸引され、この乾燥した空気によって水素流路12a内が十分に乾燥させられる。
【0054】
この後、制御部9は、切替弁7a~7dを「第4の切替え状態」に移行させてから予め規定された時間が経過したとき(水素流路12a内の水の排水が完了するのに要する時間が経過したとき)に、この「水素流路排水動作モード」での動作を終了する。具体的には、制御部9は、吸引ポンプ3を停止させると共に、一例として各切替弁7a~7dを前述の「第1の切替え状態」に移行させ、一連の制御を終了する。以上により、空気流路11a内および水素流路12a内に水が存在しない状態で燃料電池ユニット1が停止状態(非発電状態)となる。
【0055】
なお、「空気流路排水動作モード」で動作して空気流路11aの排水を行った後に「水素流路排水動作モード」で動作して水素流路12aの排水を行う例について説明したが、「水素流路排水動作モード」で動作して水素流路12aの排水を行った後に「空気流路排水動作モード」で動作して空気流路11aの排水を行ってもよい。また、必要に応じて、「空気流路排水動作モード」での排水(「第2の切替え状態」から「第3の切替え状態」への移行)を複数回連続して実行したり、「水素流路排水動作モード」での排水(「第2の切替え状態」から「第4の切替え状態」への移行)を複数回連続して実行したりすることもできる。これにより、「第2の切替え状態」において長時間に亘って吸引ポンプ3に高負荷を掛けることなく、空気流路11a内の水や水素流路12a内の水を好適に排水することができる。
【0056】
一方、発電の終了時(停止前)に空気流路11a内の水や水素流路12a内の水を排水する処理について説明したが、燃料電池ユニット1の動作状態によっては、発電を行っている最中にも、空気や水素ガスを通過させるのが困難となる多量の水が空気流路11a内や水素流路12a内に存在する状態となることがある。この状態では、空気および/または水素ガスの供給量が不足することで好適な反応を得られず、必要とされる電力量の電力を発電するのが困難となるおそれがある。したがって、本例の燃料電池ユニット1では、「通常動作モード」での動作中(発電を行っているとき)も、必要に応じて空気流路11a内の水や水素流路12a内の水を排水することができるように構成されている。
【0057】
例えば、発電中に空気流路11a内に多量の水が滞留した状態となったときには、空気流路11aに対する空気の通過抵抗が大きくなる。この結果、セパレータ11における排気口11c側の圧力(吸引ポンプ3の吸引によって排気口11c生じる負圧)と、給気口11b側の圧力(空気流路11aを介して給気口11bに及ぶ負圧)との差が空気流路11a内の水の量(通過抵抗の大きさ)に応じて大きくなる。
【0058】
したがって、本例の燃料電池ユニット1では、制御部9が、給気口11bに接続された配管2-11に設けられている圧力センサ8aによって検出された圧力(すなわち、給気口11bに生じている負圧)と、排気口11cに接続された配管11-3に設けられている圧力センサ8bによって検出された圧力(すなわち、排気口11cに生じている負圧)との差が、予め規定された「第1の上限値」を超えたとき(空気流路11aに対する空気の通過抵抗が、発電に必要な量の空気を通過させるのが困難となる可能性がある大きさになったとき)に、「第1の条件」が満たされたとして、前述の「空気流路排水動作モード」で動作して空気流路11a内の水を排水し、その後に、「通常動作モード」に復帰する。なお、「空気流路排水動作モード」での動作については、発電終了時の「空気流路排水動作モード」での動作と同様のため、重複する説明を省略する。これにより、空気流路11aに対する空気の通過抵抗が十分に小さくなり、発電に必要となる十分な量の空気を通過させることが可能となる。
【0059】
また、発電中に水素流路12a内に多量の水が滞留した状態となったときには、水素流路12aに対する水素ガスの通過抵抗が大きくなる。この結果、セパレータ12における排気口12c側の圧力(排気口11c生じる正圧)と、給気口12b側の圧力(給気口12bに及ぶ正圧)との差が水素流路12a内の水の量(通過抵抗の大きさ)に応じて大きくなる。
【0060】
したがって、本例の燃料電池ユニット1では、制御部9が、給気口12bに接続された配管4-12に設けられている圧力センサ8cによって検出された圧力(すなわち、給気口12bに生じている正圧)と、排気口12cに接続された配管12-5に設けられている圧力センサ8dによって検出された圧力(すなわち、排気口12cに生じている正圧)との差が、予め規定された「第2の上限値」を超えたとき(水素流路12aに対する水素ガスの通過抵抗が、発電に必要な量の水素ガスを通過させるのが困難となる可能性がある大きさになったとき)に、「第3の条件」が満たされたとして、前述の「水素流路排水動作モード」で動作して水素流路12a内の水を排水し、その後に、「通常動作モード」に復帰する。なお、「水素流路排水動作モード」での動作についても、発電終了時の「水素流路排水動作モード」での動作と同様のため、重複する説明を省略する。これにより、水素流路12aに対する水素ガスの通過抵抗が十分に小さくなり、発電に必要となる十分な量の水素ガスを通過させることが可能となる。
【0061】
また、上記のように空気流路11a内に滞留した水の量が多量となって空気の通過抵抗が大きくなったとき(すなわち、反応に必要な十分な量の空気が供給されなくなったとき)や、水素流路12a内に滞留した水の量が多量となって水素ガスの通過抵抗が大きくなったとき(すなわち、反応に必要な十分な量の水素ガスが供給されなくなったとき)には、燃料電池セル10における発電効率が低下する。したがって、本例の燃料電池ユニット1では、「通常動作モード」での動作時(発電中)に燃料電池セル10における発電効率が予め規定された状態を下回ったときに、一例として、前述の発電終了時と同様にして、「空気流路排水動作モード」で動作して空気流路11a内の水を排水すると共に、「水素流路排水動作モード」で動作して水素流路12a内の水を排水する。これにより、燃料電池セル10に対して十分な量の空気や水素ガスが供給されて発電効率が上昇する。
【0062】
なお、上記の「予め規定された状態を下回ったとき」とは、一例として、供給源4から燃料電池セル10(セパレータ12)への単位時間当りの水素ガスの供給量(供給源4に設けられた図示しない供給弁の開弁率等)や、吸引ポンプ3による燃料電池セル10(セパレータ11)からの単位時間当りの空気の吸引量(吸引ポンプ3の回転数等)から想定される単位時間当りの発電量に対して、実際に発電された単位時間当りの発電量が、予め規定された割合を下回って低下したときがこれに相当する。
【0063】
このように、この燃料電池ユニット1では、制御部9が、燃料電池セル10において発電を行うときに、「弁機構(本例では、切替弁7a~7d)」を制御してセパレータ11における給気口11bへの空気(大気)の流入、およびセパレータ11における排気口11cからの空気の排気を許容させた状態で吸引ポンプ3を動作させると共に、予め規定された「第1の条件」が満たされたときに、吸引ポンプ3の動作を継続させつつ、「弁機構」を制御して給気口11bへの空気の流入および排気口11cからの空気の排気の少なくとも一方(本例では、双方)を規制し、その後に予め規定された「第2の条件」が満たされたときに、「弁機構」を制御して給気口11bへの空気の流入および排気口11cからの空気の排気を許容させる。
【0064】
したがって、この燃料電池ユニット1によれば、「第1の条件」が満たされて、吸引ポンプ3の動作を継続させつつ、給気口11bへの空気の流入および排気口11cからの空気の排気を規制することで、吸引ポンプ3と排気口11cとの間の負圧を上昇させ、その状態で「第2の条件」が満たされて給気口11bへの空気の流入および排気口11cからの空気の排気が許容されたときに、空気流路11a内の空気が排気口11cから急速に排気され、これに伴って空気流路11a内に滞留していた水を排気口11cから排水することができる。これにより、自重によって排気口11cに向かって水が移動し難い空気流路11aであっても、滞留していた水を確実に排水することができるため、セパレータ11に関する設計の自由度の低下を招くことなく、空気流路11a内への水の滞留に起因する発電能力の低下を好適に回避することができる。
【0065】
また、この燃料電池ユニット1では、制御部9が、燃料電池セル10において発電を行うときに、「弁機構」を制御して、配管6a,6bへの空気および水素ガスの流入を規制しつつ、給気口11bに空気を流入させ、かつセパレータ12における給気口12bに水素ガスを流入させる「第1の切替え状態」に移行させ、「第1の条件」が満たされたときに、「弁機構」を制御して、吸引ポンプ3への空気および水素ガスの流入を規制する「第2の切替え状態」に移行させ、その後に「第2の条件」が満たされたときに、「弁機構」を制御して、配管6a,6bへの空気および水素ガスの流入、並びに給気口12bへの水素ガスの流入を規制しつつ、給気口11bに空気を流入させる「第3の切替え状態」に移行させ、予め規定された「第3の条件」が満たされたときに、吸引ポンプ3の動作を継続させつつ、「弁機構」を制御して、上記の「第2の切替え状態」に移行させ、その後に予め規定された「第4の条件」が満たされたときに、「弁機構」を制御して、給気口11bへの空気の流入、および給気口12bへの水素ガスの流入を規制しつつ、配管6aへの空気の流入、給気口12bへの空気の流入および配管6bへの空気の流入を許容する「第4の切替え状態」に移行させる。
【0066】
したがって、この燃料電池ユニット1によれば、「第1の条件」が満たされたときに空気流路11a内の水が好適に排水されるだけでなく、「第3の条件」が満たされて、吸引ポンプ3の動作を継続させつつ、「第2の切替え状態」に移行させられることで、吸引ポンプ3と排気口11cとの間の負圧を上昇させ、その状態で「第4の条件」が満たされて「第4の切替え状態」に移行させられることで、水素流路12a内の水素ガス等が排気口12cから急速に排気され、これに伴って水素流路12a内に滞留していた水が排気口12cから排水される。これにより、自重によって排気口12cに向かって水が移動し難い水素流路12aであっても、滞留していた水を確実に排水することができるため、セパレータ12に関する設計の自由度の低下を招くことなく、水素流路12a内への水の滞留に起因する発電能力の低下を好適に回避することができる。
【0067】
さらに、この燃料電池ユニット1では、制御部9が、燃料電池セル10における発電が終了したときに、「第1の条件」および「第3の条件」が満たされたと判別する。したがって、この燃料電池ユニット1によれば、発電中に空気流路11a内や水素流路12a内に水が滞留した状態になったとしても、この水が発電終了時に確実に排水されるため、次回の発電開始時に、空気流路11aに対する空気の通過が妨げられたり、水素流路12aに対する水素ガスの通過が妨げられたりすることがなく、好適に発電を開始することができる。
【0068】
さらに、この燃料電池ユニット1では、制御部9が、給気口11bおよび排気口11cに生じる圧力差を検出する圧力センサ8a,8bによって検出された圧力差が予め規定された「第1の上限値」を超えたときに、「第1の条件」が満たされたと判別する。また、この燃料電池ユニット1では、制御部9が、給気口12bおよび排気口12cに生じる圧力差を検出する圧力センサ8c,8dによって検出された圧力差が予め規定された「第2の上限値」を超えたときに、「第3の条件」が満たされたと判別する。
【0069】
したがって、この燃料電池ユニット1によれば、空気流路11a内に滞留した水の量が多量となって空気流路11aに対する空気の通過抵抗が大きくなったときに、検出される「圧力差」が「第1の上限値」を超えて「第1の条件」が満たされることで、この空気流路11a内の水が好適に排水され、水素流路12a内に滞留した水の量が多量となって水素流路12aに対する水素ガスの通過抵抗が大きくなったときに、検出される「圧力差」が「第2の上限値」を超えて「第3の条件」が満たされることで、この水素流路12a内の水が好適に排水されるため、好適な発電に必要とされる十分な量の空気や水素ガスを確実に反応させることができる。
【0070】
さらに、この燃料電池ユニット1では、制御部9が、燃料電池セル10における発電効率が「予め規定された発電効率」を下回ったときに、「第1の条件」が満たされたと判別する。また、この燃料電池ユニット1では、制御部9が、燃料電池セル10における発電効率が「予め規定された発電効率」を下回ったときに、「第3の条件」が満たされたと判別する。
【0071】
したがって、この燃料電池ユニット1によれば、空気流路11a内に多量の水が滞留して空気の通過抵抗が大きくなり、十分な量の空気をセパレータ11に供給するのが困難となって発電能力が低下したときに、「第1の条件」が満たされて空気流路11aから水が排水され、水素流路12a内に多量の水が滞留して水素ガスの通過抵抗が大きくなり、十分な量の水素ガスをセパレータ12に供給するのが困難となって発電能力が低下したときに、「第3の条件」が満たされて水素流路12aから水が排水されるため、それ以上発電能力が低下する前に、発電に必要な十分な量の空気や水素ガスを供給可能な状態に復帰させて好適に発電することができる。
【0072】
なお、「燃料電池ユニット」の構成は、上記の燃料電池ユニット1の構成の例に限定されない。
【0073】
例えば、制御部9が、各切替弁7a~7dを「第2の切替え状態」に切り替えた後に「予め規定された時間」が経過したときに「第2の条件」が満たされたと判別する構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて(または、このような構成に加えて)、配管11-3における吸引ポンプ3と切替弁7bとの間の圧力(負圧)が予め規定された圧力に達したときや、吸引ポンプ3に加わっている負荷が予め規定された負荷量に達したとき(吸引ポンプ3の動作電流が規定電流値に達したとき)に「第2の条件」が満たされたと判別する構成を採用することもできる。
【0074】
また、「第2の切替え状態」において吸引ポンプ3を継続動作させることで配管11-3における吸引ポンプ3と切替弁7bとの間の負圧を上昇させる(負圧を蓄圧する)構成を例に挙げて説明したが、配管11-3における吸引ポンプ3と切替弁7bとの間に密閉耐圧容器体(バッファタンク:図示せず)を接続することで、第2の切替え状態」において十分に負圧を蓄圧することが可能となる。このような構成を採用することにより、「第3の切替え状態」や「第4の切替え状態」に切り替えたときに、負圧となっている密閉耐圧容器体内に多量の空気を吸引させて、十分な量の空気を高速移動させることが可能となり、確実に排水を行うことができる。
【0075】
また、空気流路11aからの排水、および水素流路12aからの排水を実行可能に構成した燃料電池ユニット1の構成を例に挙げて説明したが、空気流路11aからの排水だけを実行可能な構成(水素流路12aからの排水を行わない構成)を採用することもできる。
【0076】
具体的には、一例として、上記の燃料電池ユニット1における配管6a,6bおよび切替弁7a~7dを排除すると共に、配管2-11,11-3のいずれか一方に「弁機構」としての開閉弁を配設することにより、この開閉弁を開状態とすることで給気口11bからの空気の流入および排気口11cからの排気を許容させ、かつ開閉弁を閉状態とすることで給気口11bからの空気の流入および排気口11cからの排気を規制させる。この場合、配管2-11に開閉弁を設けることにより、「第1の条件」が満たされたときに「第1の給気口への第1の気体の流入」を規制することができ、配管11-3に開閉弁を設けることにより、「第1の条件」が満たされたときに「第1の排気口からの第1の気体の排気」を規制することができ、空気流路11aからの排水を好適に実施することができる。
【0077】
また、水素ガスの供給源である供給源4を備えた燃料電池ユニット1の構成を例に挙げて説明したが、供給源4を備えずに、外部装置としての「水素ガスの供給源」から水素ガスを得て発電を行う構成の「燃料電池ユニット」とすることもできる。また、未反応の水素を含む排気を処理する後処理装置5を備えた燃料電池ユニット1の構成を例に挙げて説明したが、後処理装置5を備えずに、外部装置としての各種の処理装置に燃料電池セル10(セパレータ12)からの排気を処理させる構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1 燃料電池ユニット
2 前処理装置
3 吸引ポンプ
4 供給源
5 後処理装置
2-11,4-12,11-3,12-5,6a,6b 配管
7a~7d 切替弁
8a~8d 圧力センサ
9 制御部
10 燃料電池セル
11,12 セパレータ
11a 空気流路
11b,12b 給気口
11c,12c 排気口
12 セパレータ
12a 水素流路
13 MEA