IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通テン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157579
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電源制御装置および電源制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241031BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20241031BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20241031BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241031BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/34 G
H02J7/00 302C
H02J1/00 304H
H02J1/00 301D
B60R16/02 645A
B60R16/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071933
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白島 大樹
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165BB08
5G165CA01
5G165CA05
5G165DA07
5G165EA02
5G165EA10
5G165FA01
5G165GA09
5G165JA07
5G165NA10
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503EA05
5G503FA06
5G503FA17
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】負荷への給電が瞬断されることを防止できる電源制御装置および電源制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係るコントローラは、第1電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、第2電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続する系統間スイッチと、第2電源と第2系統とを接続する電池用スイッチとを制御する。コントローラは、電源失陥を検出すると系統間スイッチを遮断し、電池用スイッチを導通するプレ遮断制御を行った後、電源失陥がないと本判定した場合、系統間スイッチを導通し、電池用スイッチを遮断する復帰制御を行う。コントローラは、プレ遮断制御および/または復帰制御において、系統間スイッチおよび電池用スイッチの一方のスイッチを所定期間半導通状態にしてから切り替え、一方のスイッチが半導通状態の期間に他方のスイッチを切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、第2電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続する系統間スイッチと、前記第2電源と前記第2系統とを接続する電池用スイッチとを制御するコントローラを備える電源制御装置であって、
前記コントローラは、
前記第1系統および前記第2系統の電源失陥を検出しない通常時に、前記系統間スイッチを導通状態にし、前記電池用スイッチを遮断状態にし、
前記第1系統または前記第2系統の電源失陥を検出すると、前記系統間スイッチを遮断状態に切り替え、前記電池用スイッチを導通状態に切り替えるプレ遮断制御を行い、
前記プレ遮断制御後に、前記第1系統および前記第2系統のうち電源失陥がある系統を判定する本判定を行い、
前記本判定の結果、両系統とも電源失陥がない場合は、前記系統間スイッチを導通状態に切り替え、前記電池用スイッチを遮断状態に切り替える復帰制御を行い、
前記プレ遮断制御および前記復帰制御の少なくとも一方の制御において、前記系統間スイッチおよび前記電池用スイッチの一方のスイッチを所定期間にわたって半導通状態にしてから切り替え、前記一方のスイッチが半導通状態の期間に他方のスイッチを切り替える
電源制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記プレ遮断制御を行う場合に、前記系統間スイッチを導通状態から所定期間にわたって半導通状態にしてから遮断状態に切り替え、前記系統間スイッチが半導通状態の期間に、前記電池用スイッチを遮断状態から導通状態に切り替える
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
コントローラは、
ハードウェアによって前記プレ遮断制御を行うハード制御装置を備え、
前記ハード制御装置は、
前記電源失陥を検出して検出信号を出力する比較器と、
前記比較器から前記検出信号が入力されると所定時間幅のパルスを出力するパルス発生器と、
発振器と、
前記パルスが出力されている期間、前記発振器の発振出力を前記系統間スイッチに出力するゲート回路と、
前記パルスを前記所定時間幅より短い時間遅延し、前記電池用スイッチに出力する遅延回路と
を有する請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記遅延回路によるパルスの遅延時間は、
前記第2負荷が備える給電電力を蓄電するコンデンサが給電停止から蓄電残量がなくなるまでの時間よりも短い
請求項3に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記プレ遮断制御を行う場合に、前記電池用スイッチを遮断状態から所定期間にわたって半導通状態にしてから導通状態に切り替え、前記電池用スイッチが半導通状態の期間に、前記系統間スイッチを導通状態から遮断状態に切り替える
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記プレ遮断制御を行う場合に、前記系統間スイッチおよび前記電池用スイッチを所定期間にわたって半導通状態にしてから、前記系統間スイッチを半導通状態から遮断状態に切り替え、前記電池用スイッチを半導通状態から導通状態に切り替える
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項7】
コントローラは、
ソフトウェアによって前記本判定および前記復帰制御を行うソフト制御装置を備え、
前記ソフト制御装置は、
発振信号を生成し、前記復帰制御を行う場合に、前記系統間スイッチおよび前記電池用スイッチの一方のスイッチに前記発振信号を出力して所定期間にわたって半導通状態にしてから切り替え、前記一方のスイッチが半導通状態の期間に他方のスイッチを切り替える
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項8】
第1電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、第2電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続する系統間スイッチと、前記第2電源と前記第2系統とを接続する電池用スイッチとを制御するコントローラが、
前記第1系統および前記第2系統の電源失陥を検出しない通常時に、前記系統間スイッチを導通状態にし、前記電池用スイッチを遮断状態にし、
前記第1系統または前記第2系統の電源失陥を検出すると、前記系統間スイッチを遮断状態に切り替え、前記電池用スイッチを導通状態に切り替えるプレ遮断制御を行い、
前記プレ遮断制御後に、前記第1系統および前記第2系統のうち電源失陥がある系統を判定する本判定を行い、
前記本判定の結果、両系統とも電源失陥がない場合は、前記系統間スイッチを導通状態に切り替え、前記電池用スイッチを遮断状態に切り替える復帰制御を行い、
前記プレ遮断制御および前記復帰制御の少なくとも一方の制御において、前記系統間スイッチおよび前記電池用スイッチの一方のスイッチを所定期間にわたって半導通状態にしてから切り替え、前記一方のスイッチが半導通状態の期間に他方のスイッチを切り替える
ことを含む電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電源制御装置および電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、電池用スイッチを介して第2電源の電力を第2負荷に給電する第2系統と、第1系統と第2系統間とを接続する系統間スイッチとを備える電源制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電源制御装置は、電源失陥を検出しない通常時に、系統間スイッチを導通状態にし、電池用スイッチを遮断状態にする。そして、電源制御装置は、第1系統または第2系統の地絡を検出すると、系統間スイッチを導通状態から遮断状態に切り替え、電池用スイッチを遮断状態から導通状態に切り替える。
【0004】
その後、電源制御装置は、地絡が解消して通常状態に復帰する場合には、系統間スイッチを遮断状態から導通状態に切り替え、電池用スイッチを導通状態から遮断状態に切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-152408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電源制御装置は、地絡検出時や復帰時に系統間スイッチおよび電池用スイッチを切り替える場合、系統間スイッチおよび電池用スイッチがともに遮断状態になる期間が生じるおそれがある。その場合、電源制御装置は、系統間スイッチおよび電池用スイッチが遮断状態になる期間に、第2負荷への電力が瞬断されるため、第2負荷の挙動が変化して運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、系統間スイッチおよび電池用スイッチの切り替え時に、第2負荷への給電が瞬断されることを防止できる電源制御装置および電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る電源制御装置は、コントローラを備える。前記コントローラは、系統間スイッチと電池用スイッチとを制御する。前記系統間スイッチは、第1電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、第2電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続する。前記電池用スイッチは、前記第2電源と前記第2系統とを接続する。前記コントローラは、前記第1系統および前記第2系統の電源失陥を検出しない通常時に、前記系統間スイッチを導通状態にし、前記電池用スイッチを遮断状態にする。前記コントローラは、前記第1系統または前記第2系統の電源失陥を検出すると、前記系統間スイッチを遮断状態に切り替え、前記電池用スイッチを導通状態に切り替えるプレ遮断制御を行う。前記コントローラは、前記プレ遮断制御後に、前記第1系統および前記第2系統のうち電源失陥がある系統を判定する本判定を行う。前記コントローラは、前記本判定の結果、両系統とも電源失陥がない場合は、前記系統間スイッチを導通状態に切り替え、前記電池用スイッチを遮断状態に切り替える復帰制御を行う。前記コントローラは、前記プレ遮断制御および前記復帰制御の少なくとも一方の制御において、前記系統間スイッチおよび前記電池用スイッチの一方のスイッチを所定期間にわたって半導通状態にしてから切り替え、前記一方のスイッチが半導通状態の期間に他方のスイッチを切り替える。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様に係る電源制御装置は、系統間スイッチおよび電池用スイッチの切り替え時に、第2負荷への給電が瞬断されることを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
図2図2は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
図3図3は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
図4図4は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
図5A図5Aは、実施形態に係るコントローラの構成および地絡時動作を示す説明図である。
図5B図5Bは、実施形態に係るコントローラの地絡時動作を示すタイミングチャートである。
図6A図6Aは、実施形態に係るコントローラの復帰時動作を示す説明図である。
図6B図6Bは、実施形態に係るコントローラの復帰時動作を示すタイミングチャートである。
図7A図7Aは、実施形態の第1変形例に係るコントローラの構成および地絡時動作を示す説明図である。
図7B図7Bは、実施形態の第1変形例に係るコントローラの地絡時動作を示すタイミングチャートである。
図8A図8Aは、実施形態の第1変形例に係るコントローラの復帰時動作を示す説明図である。
図8B図8Bは、実施形態の第1変形例に係るコントローラの復帰時動作を示すタイミングチャートである。
図9A図9Aは、実施形態の第2変形例に係るコントローラの構成および地絡時動作を示す説明図である。
図9B図9Bは、実施形態の第2変形例に係るコントローラの地絡時動作を示すタイミングチャートである。
図10A図10Aは、実施形態の第2変形例に係るコントローラの復帰時動作を示す説明図である。
図10B図10Bは、実施形態の第2変形例に係るコントローラの復帰時動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、電源制御装置および電源制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、実施形態に係る電源制御装置が搭載される車両が電気自動車またはハイブリッド自動車である場合について説明する。
【0012】
なお、実施形態に係る電源制御装置が搭載される車両は、内燃機関によって走行するエンジン自動車であってもよい。実施形態に係る電源制御装置は、自動運転機能を備える車両に搭載されて負荷へ電力を供給する装置である。
【0013】
[1.電源制御装置の構成]
図1図4を参照して、実施形態に係る電源制御装置1の構成および動作について説明する。図1図4は、実施形態に係る電源制御装置1の構成および動作の説明図である。図1に示すように、実施形態に係る電源制御装置1は、第1電源10と、第1負荷101と、一般負荷102と、第2負荷103と、外部装置100とに接続される。
【0014】
電源制御装置1は、第1系統110と、第2系統120とを備える。第1系統110は、第1電源10の電力を第1負荷101および一般負荷102に供給する電源系統である。第2系統120は、後述する第2電源20の電力を第2負荷103に供給する電源系統である。
【0015】
第1負荷101は、自動運転用の負荷を含む。第1負荷101は、例えば、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、および車載カメラ等を含む。一般負荷102は、自動運転に関与しない負荷であり、ディスプレイ、エアコン、オーディオ、ビデオ、および各種ライト等を含む。
【0016】
第2負荷103は、第1負荷101が備える自動運転用の機能の一部を備える。第2負荷103は、例えば、ステアリングモータ、電動ブレーキ装置、およびレーダ等のFOP(Fail Operation、退避走行制御)に最低限必要な装置を含む。第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103は、電源制御装置1から供給される電力によって動作する。
【0017】
外部装置100は、第1負荷101および第2負荷103を動作させることによって車両を自動運転制御する装置である。外部装置100は、車両の自動運転中に第1系統110で地絡などの電源異常が発生した場合には、第2負荷103によってFOPを実施できる。また、外部装置100は、第2系統120で地絡などの電源異常が発生した場合には、第1負荷101によってFOPを実施できる。
【0018】
第1電源10は、DC/DCコンバータ(以下、「DC/DC11」と記載する)と、鉛バッテリ(以下、「PbB12」と記載する)とを含む。なお、第1電源10の電池は、PbB12以外の任意の2次電池であってもよい。
【0019】
DC/DC11は、発電機と、PbB12よりも電圧が高い高圧バッテリとに接続される。DC/DC11は、発電機および高圧バッテリの電圧を降圧して第1系統110に出力する。発電機は、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。高圧バッテリは、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される車両駆動用のバッテリである。
【0020】
第1電源10は、エンジン自動車に搭載される場合、DC/DC11の代わりにオルタネータ(発電機)が設けられる。DC/DC11は、PbB12の充電、第1負荷101および一般負荷102への電力供給、第2負荷103への電力供給、および後述する第2電源20の充電を行う。
【0021】
電源制御装置1は、第2電源20と、系統間スイッチ41と、電池用スイッチ42と、コントローラ3と、第1電圧センサ51と、第2電圧センサ52とを備える。第2電源20は、第1電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。第2電源20は、リチウムイオンバッテリ(以下、「LiB21」と記載する)を備える。第2電源20の電池は、LiB21以外の任意の2次電池であってもよい。
【0022】
系統間スイッチ41は、第1系統110と第2系統120とを接続する系統間ライン130に設けられる。系統間スイッチ41は、第1系統110と第2系統120とを接続および遮断可能なスイッチである。
【0023】
本実施形態では、系統間スイッチ41によって第1系統110と第2系統120とを電気的に接続することを、系統間スイッチ41を導通状態にすると称する。また、本実施形態では、系統間スイッチ41によって第1系統110と第2系統120との電気的な接続を切断することを、系統間スイッチ41を遮断状態にすると称する。
【0024】
電池用スイッチ42は、第2電源20を第2系統120に接続するスイッチである。本実施形態では、電池用スイッチ42によって第2電源20と第2系統120とを電気的に接続することを、電池用スイッチ42を導通状態にすると称する。また、本実施形態では、電池用スイッチ42によって第2電源20と第2系統120との電気的な接続を切断することを、電池用スイッチ42を遮断状態にすると称する。
【0025】
第1電圧センサ51は、第1系統110に設けられる。第1電圧センサ51は、第1系統110の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。第2電圧センサ52は、第2系統120に設けられる。第2電圧センサ52は、第2系統120の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。
【0026】
コントローラ3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。なお、コントローラ3は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0027】
かかるコントローラ3は、第1検出部31と、第2検出部32とを備える。第1検出部31は、ハードウェアによって構成され、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を制御する。
【0028】
第1検出部31の構成例については、図5Aを参照して後述する。第2検出部32は、ソフトウェアによって系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を制御するマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記載する)を備える。
【0029】
また、コントローラ3は、第2電源20から状態監視ライン22を介して取得する第2電源20の充電残量を示す情報を取得する。第2電源20の充電残量を示す情報は、例えば、LiB21のSOC(State Of Charge)である。
【0030】
LiB21は、SOCが100%のときが、充電残量が最大の状態である。LiB21は、SOCが0%のときが、充電残量がない状態である。コントローラ3は、第2電源20の充電残量を示す情報として、例えば、LiB21のSOCを取得する。コントローラ3は、LiB21のSOCに基づいて、第2電源20の充電残量を監視する。
【0031】
コントローラ3は、第1電圧センサ51および第2電圧センサ52から入力される検出結果に基づいて、第1系統110または第2系統120の電源失陥を検出する。電源失陥は、例えば、地絡である。コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出した場合、その旨を外部装置100に通知する。
【0032】
具体的には、コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出した場合、自動運転が不可能な状態である旨を示す自動運転禁止信号を外部装置100に出力する。また、コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出していない場合、自動運転が可能な状態である旨を示す自動運転許可信号を外部装置100に出力する。
【0033】
[2.電源制御装置の通常時動作]
コントローラ3は、第1系統110および第2系統120に電源失陥を検出しない通常時には、図1に示すように、電池用スイッチ42を遮断状態にし、系統間スイッチ41を導通状態にする。
【0034】
こうして、コントローラ3は、第1電源10から第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103に電力を供給する。なお、コントローラ3は、第1系統110および第2系統120の異常が発生していない通常時には、外部装置100に自動運転許可信号を出力する。
【0035】
[3.電源制御装置の電源失陥検出時動作]
次に、図2図4を参照して、電源制御装置1の電源失陥検出時動作について説明する。コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の異常に関するパラメータと閾値とを比較して電源異常の発生を検出する。
【0036】
ここでは、第1系統110の異常に関するパラメータが第1系統110の電圧であり、第2系統120の異常に関するパラメータが第2系統120の電圧である場合について説明する。以下では、第1電圧センサ51によって検出される第1系統110の電圧を第1系統電圧V1と称する。また、第2電圧センサ52によって検出される第2系統120の電圧を第2系統電圧V2と称する。
【0037】
なお、第1系統110の異常に関するパラメータは、第1系統110を流れる電流または第2系統120を流れる電流であってもよい。この場合、電源制御装置1は、第1系統110を流れる電流を検出する電流センサと、第2系統120を流れる電流を検出する電流センサとを備える。そして、コントローラ3は、第1系統110を流れる電流、または、第2系統120を流れる電流が過電流閾値を超えると、地絡の発生を検出する。
【0038】
図2に示すように、電源制御装置1では、例えば、第1系統110で地絡200が発生した場合、または、第2系統120で地絡201が発生した場合、地絡点に向けて過電流が流れる。このため、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2は、地絡閾値以下になる。
【0039】
コントローラ3の第1検出部31は、例えば、第2系統電圧V2が地絡閾値以下になった場合に、第1系統110または第2系統120に地絡200または地絡201が発生したと仮判定する。その後、コントローラ3は、外部装置100に自動運転禁止信号を出力する。
【0040】
そして、第1検出部31は、地絡200または地絡201が発生したと仮判定すると、系統間スイッチ41を遮断状態に切り替え、電池用スイッチ42を導通状態に切り替えるプレ遮断制御を行う。
【0041】
これにより、第1系統110と第2系統120との接続が切断されるので、第1電源10から第1系統110へ電力が供給され、第2電源20から第2系統120へ電力が供給される。その後、第2検出部32は、第1検出部31による制御を引き継いで、系統間スイッチ41を遮断状態に維持し、電池用スイッチ42を導通状態に維持する。
【0042】
なお、第1検出部31は、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2の少なくともいずれか一方が地絡閾値以下になった場合に、第1系統110または第2系統120に地絡が発生したと仮判定することもできる。
【0043】
第2検出部32は、第1検出部31によって第1系統110または第2系統120に地絡が発生したと仮判定された後、第1系統110および第2系統120のうち、地絡が発生した系統を判定する本判定を行う。
【0044】
第2検出部32は、プレ遮断後、第1系統電圧V1が所定期間以上継続して地絡閾値以下であり、かつ第2系統電圧V2が所定期間以上継続して地絡閾値より大きい正常閾値以上になるまで復帰した場合、第2系統120は正常であって第1系統110に地絡200が発生したと本判定する。ここでの所定期間は、例えば、100msである。なお、所定期間は、100msに限定されるものではない。また、正常閾値は、地絡閾値よりも高い値である。
【0045】
そして、第2検出部32は、第1系統110に地絡200が発生したと本判定した場合、図3に示すように、第2電源20から第2負荷103に電力を供給するフェイルセーフ制御を行い、その旨を外部装置100に通知する。
【0046】
これにより、外部装置100は、第2電源20から供給される電力によって第2負荷103を動作させ、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。なお、フェイルセーフ制御には、仮判定による系統間スイッチ41の遮断、電池用スイッチ42の導通、および本判定時の外部装置100への通知も含まれてよい。
【0047】
また、第2検出部32は、プレ遮断後、第1系統電圧V1が所定期間以上継続して正常閾値以上になるまで復帰し、かつ第2系統電圧V2が所定期間以上継続して地絡閾値以下である場合に、第1系統110は正常であって第2系統120に地絡201が発生したと本判定する。
【0048】
第2検出部32は、第2系統120に地絡201が発生したと本判定した場合、図4に示すように、電池用スイッチ42を遮断状態にして、第1電源10から第1負荷101および一般負荷102に電力を供給するフェイルセーフ制御を行う。
【0049】
そして、第2検出部32は、その旨を外部装置100に通知する。これにより、外部装置100は、第1電源10から供給される電力によって第1負荷101を動作させ、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0050】
このように、コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出すると、系統間スイッチ41を遮断状態にする。そして、コントローラ3は、第1系統110および第2系統120のうち正常な系統によって電力を供給するフェイルセーフ制御を行う。
【0051】
また、第2検出部32は、プレ遮断後、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2がともに所定期間以上継続して正常閾値以上になるまで復帰した場合、一過性の電圧低下であり地絡200,201の発生はないと判定する。すなわち、第2検出部32は、第1系統110および第2系統120のどちらも正常であると本判定する。
【0052】
この場合、第2検出部は、図2に示すプレ遮断の状態から電池用スイッチ42を遮断状態に切り替え、系統間スイッチ41を導通状態に切り替えて、図1の通常時動作の状態に復帰させる復帰制御を行う。これにより、コントローラ3は、第2電源20の蓄電量が減少することを抑制できる。
【0053】
しかしながら、電源制御装置は1、地絡検出時や復帰制御時に系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を切り替える場合、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42が共に遮断状態になる期間が生じるおそれがある。
【0054】
例えば、電源制御装置1は、地絡200,201を検出してプレ遮断制御を行う場合、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42の切り替え制御を同時にしても、電池用スイッチ42を導通状態にする前に、系統間スイッチ41を遮断状態になるおそれがある。
【0055】
また、電源制御装置1は、プレ遮断制御後に復帰制御を行う場合、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42の切り替え制御を同時に行っても、系統間スイッチ41を導通状態にする前に、電池用スイッチ42が遮断状態になるおそれがある。
【0056】
その場合、電源制御装置1は、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42が遮断状態になる期間に、第2負荷103への電力が瞬断されるため、第2負荷103の挙動が変化して運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0057】
また、電源制御装置1は、プレ遮断制御において、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42が同時に導通状態になる期間が発生すると、第1電源10および第2電源20から地絡点へ大電流が流れて電力が失われる。
【0058】
そこで、コントローラ3は、プレ遮断制御および復帰制御の少なくとも一方の制御において、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42のうち、一方のスイッチを所定期間にわたって半導通状態にしてから切り替え、一方のスイッチが半導通状態の期間に他方のスイッチを切り替える。
【0059】
ここでの半導通状態とは、トランジスタが能動領域で増幅動作を行っている状態のことであり、スイッチング素子(ここでは、系統間スイッチ41または電池用スイッチ42)に流れる電流を制限したオン状態(ハーフオン状態)のことを意味する。
【0060】
例えば、コントローラ3は、系統間スイッチ41または電池用スイッチ42に一定周波数のパルス列を印可することで、短周期でオンとオフを繰り返させる。これにより、系統間スイッチ41または電池用スイッチ42は、平均して半導通状態となり、系統間スイッチ41または電池用スイッチ42を流れる平均電流は微小なものとなる。
【0061】
これにより、電源制御装置1は、プレ遮断制御および復帰制御の少なくとも一方の制御において、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42のうち、一方のスイッチが仮に遮断状態になっても、そのときには他方のスイッチが必ず半導通状態にできる。したがって、電源制御装置1は、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42の切り替え時に、第2負荷103への給電が瞬断されることを防止できる。
【0062】
また、電源制御装置1は、プレ遮断制御において、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42が同時に導通状態になる期間の発生を防止することができる。したがって、電源制御装置1は、プレ遮断制御において、第1電源10および第2電源20の電力が大量に失われることを防止することができる。以下、コントローラ3の構成および動作例について、具体的に説明する。
【0063】
[4.コントローラの構成および動作]
図5Aは、実施形態に係るコントローラ3の構成および地絡時動作を示す説明図である。図5Bは、実施形態に係るコントローラ3の地絡時動作を示すタイミングチャートである。図6Aは、実施形態に係るコントローラ3の復帰時動作を示す説明図である。図6Bは、実施形態に係るコントローラ3の復帰時動作を示すタイミングチャートである。
【0064】
図5Aに示すように、第1検出部31は、ハードウェアによって構成される。かかる第1検出部31は、ハードウェアによってプレ遮断制御を行うハード制御装置の一例である。第1検出部31は、比較器61と、パルス発生器62と、発振器63と、ゲート回路64と、遅延回路65とを含む。
【0065】
比較器61は、第2電圧センサ52から入力される第2系統電圧V2と、地絡閾値とを比較するコンパレータである。比較器61は、第2系統電圧V2が地絡閾値以下になった場合に、電源失陥を検出して検出信号をパルス発生器62に出力する。
【0066】
パルス発生器62は、比較器61から検出信号が入力されると所定時間幅のパルスをゲート回路64、遅延回路65、および第2検出部32に出力する。パルス発生器62は、例えば、50msの間ハイレベルになるワンショットパルスを出力する。発振器63は、ワンショットパルスの50msよりも短い周期でハイレベルとローレベルとを繰り返す発振出力をゲート回路64に出力する。
【0067】
ゲート回路64は、AND論理回路である。ゲート回路64は、入力されるワンショットパルスおよび発振出力が共にハイレベルの期間にハイレベルの信号を系統間スイッチ41に出力する。
【0068】
つまり、ゲート回路64は、ワンショットパルスがハイレベルとなっている50msの間、発振器63の発振出力を系統間スイッチ41に出力する。これにより、系統間スイッチ41は、ワンショットパルスがハイレベルとなっている所定時間幅の間、発振出力の周期で導通状態と遮断状態とを繰り返す半導通状態になる。
【0069】
また、遅延回路65は、パルス発生器62から入力されるパルスを、所定時間幅よりも短い時間遅延させて電池用スイッチ42に出力する。このとき、遅延回路65によるパルスの遅延時間は、第2負荷103が備える給電電力を蓄電するコンデンサが給電停止から蓄電残量がなくなるまでの時間よりも短い。
【0070】
電池用スイッチ42は、遅延回路65から入力されるパルスがハイレベルになると遮断状態から導通状態に切り替わる。これにより、第1検出部31は、第2負荷103が備えるコンデンサの蓄電残量がなくなる前に、電池用スイッチ42を遮断状態から導通状態にできるので、電力不足による第2負荷103の挙動の変化を防止できる。
【0071】
このように、第1検出部31は、ハードウェアによって構成されるので、例えば、地絡を検出すると瞬時にプレ遮断制御を行うことができる。また、第1検出部31は、系統間スイッチ41を半導通状態にする期間を、パルス発生器62から出力されるワンショットパルスの時間長によって規定することができる。
【0072】
一方、第2検出部32は、マイコン7を備える。マイコン7は、パルス発生器62からパルスが入力されると、つまり、第1検出部31によってプレ遮断制御が開始されると、第1検出部31からプレ遮断制御を引き継ぎ、その後、地絡系統の本判定を行う。
【0073】
具体的には、マイコン7は、図5Aに点線矢印で示すように、パルス発生器62からパルスが入力されると、遮断状態を維持させる制御信号を系統間スイッチ41に出力し、導通状態を維持させる制御信号を電池用スイッチ42に出力する。
【0074】
これにより、パルス発生器62から出力されるパルスがハイレベルからローレベルに変化しても、系統間スイッチ41が遮断状態に維持され、電池用スイッチ42が導通状態に維持される。
【0075】
これにより、コントローラ3は、図5Bに示すように、例えば、時刻t11でプレ遮断制御を開始する場合、まず、時刻t11からt13までの期間にわたって、系統間スイッチ41を半導通状態にし、時刻t13で半導通状態から遮断状態に切り替える。また、コントローラ3は、系統間スイッチ41が半導通状態になっている時刻t11からt13の間の時刻t12で電池用スイッチ42を遮断状態から導通状態に切り替える。
【0076】
このように、コントローラ3は、プレ遮断制御を行う場合に、系統間スイッチ41を導通状態から所定期間にわたって半導通状態にしてから遮断状態に切り替え、系統間スイッチ41が半導通状態の期間に、電池用スイッチ42を遮断状態から導通状態に切り替える。
【0077】
これにより、コントローラ3は、プレ遮断制御中に、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42が共に遮断状態になる期間の発生を防止できる。また、コントローラ3は、電源失陥を検出したときに、系統間スイッチ41を直ちに半導通状態にするため、第2系統120が失陥していた場合、第1電源10の電力が第2系統120によって減少することを防止できる。
【0078】
その後、第2検出部32は、地絡系統の本判定を行う。第2検出部32は、本判定において地絡200,201がないと判定した場合、復帰制御を行う。かかる第2検出部32は、ソフトウェアによって本判定および復帰制御を行うソフト制御装置の一例である。
【0079】
第2検出部32は、地絡200,201がないと判定した場合、図6Aに示すように、発振器63の発振出力と同様の発振出力を電池用スイッチ42に出力し、その間に系統間スイッチ41を遮断状態にする。
【0080】
これにより、コントローラ3は、図6Bに示すように、例えば、時刻t21で復帰制御を開始する場合、まず、時刻t21からt23までの期間にわたって、電池用スイッチ42を半導通状態にし、時刻t23で半導通状態から遮断状態に切り替える。
【0081】
また、コントローラ3は、電池用スイッチ42が半導通状態になっている時刻t21からt23の間の時刻t22で系統間スイッチ41を遮断状態から導通状態に切り替える。これにより、コントローラ3は、復帰制御中に、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42が共に遮断状態になる期間の発生を防止できる。
【0082】
[5.第1変形例に係るコントローラの構成および動作]
図7Aは、実施形態の第1変形例に係るコントローラ3Aの構成および地絡時動作を示す説明図である。図7Bは、実施形態の第1変形例に係るコントローラ3Aの地絡時動作を示すタイミングチャートである。図8Aは、実施形態の第1変形例に係るコントローラ3Aの復帰時動作を示す説明図である。図8Bは、実施形態の第1変形例に係るコントローラ3Aの復帰時動作を示すタイミングチャートである。
【0083】
図7Aに示すように、コントローラ3Aの第1検出部31Aは、ハードウェアによって構成される。かかる第1検出部31Aは、ハードウェアによってプレ遮断制御を行うハード制御装置の一例である。第1検出部31Aは、比較器61と、パルス発生器62と、発振器63と、ゲート回路64と、遅延回路65とを含む。
【0084】
比較器61は、第2電圧センサ52から入力される第2系統電圧V2と、地絡閾値とを比較するコンパレータである。比較器61は、第2系統電圧V2が地絡閾値以下になった場合に、電源失陥を検出して検出信号をパルス発生器62に出力する。
【0085】
パルス発生器62は、比較器61から検出信号が入力されると所定時間幅のパルスをゲート回路64、遅延回路65、および第2検出部32Aに出力する。パルス発生器62は、例えば、50msの間ハイレベルになるワンショットパルスを出力する。発振器63は、ワンショットパルスの50msよりも短い周期でハイレベルとローレベルとを繰り返す発振出力をゲート回路64に出力する。
【0086】
ゲート回路64は、AND論理回路である。ゲート回路64は、入力されるワンショットパルスおよび発振出力が共にハイレベルの期間にハイレベルの信号を電池用スイッチ42に出力する。
【0087】
つまり、ゲート回路64は、ワンショットパルスがハイレベルとなっている50msの間、発振器63の発振出力を電池用スイッチ42に出力する。これにより、電池用スイッチ42は、ワンショットパルスがハイレベルとなっている所定時間幅の間、発振出力の周期で導通状態と遮断状態とを繰り返す半導通状態になる。
【0088】
また、遅延回路65は、パルス発生器62から入力されるパルスを、所定時間幅よりも短い時間遅延させて系統間スイッチ41に出力する。系統間スイッチ41は、遅延回路65から入力されるパルスがハイレベルになると導通状態から遮断状態に切り替わる。
【0089】
このように、第1検出部31Aは、ハードウェアによって構成されるので、例えば、地絡を検出すると瞬時にプレ遮断制御を行うことができる。また、第1検出部31Aは、電池用スイッチ42を半導通状態にする期間を、パルス発生器62から出力されるワンショットパルスの時間長によって規定することができる。
【0090】
一方、第2検出部32Aは、マイコン7を備える。マイコン7は、パルス発生器62からパルスが入力されると、つまり、第1検出部31Aによってプレ遮断制御が開始されると、第1検出部31Aからプレ遮断制御を引き継ぎ、その後、地絡系統の本判定を行う。
【0091】
具体的には、マイコン7は、図7Aに点線矢印で示すように、パルス発生器62からパルスが入力されると、遮断状態を維持させる制御信号を系統間スイッチ41に出力し、導通状態を維持させる制御信号を電池用スイッチ42に出力する。
【0092】
これにより、パルス発生器62から出力されるパルスがハイレベルからローレベルに変化しても、系統間スイッチ41が遮断状態に維持され、電池用スイッチ42が導通状態に維持される。
【0093】
これにより、コントローラ3Aは、図7Bに示すように、例えば、時刻t31でプレ遮断制御を開始する場合、まず、時刻t31からt33までの期間にわたって、電池用スイッチ42を半導通状態にし、時刻t33で半導通状態から導通状態に切り替える。また、コントローラ3Aは、電池用スイッチ42が半導通状態になっている時刻t31からt33の間の時刻t32で系統間スイッチ41を導通状態から遮断状態に切り替える。
【0094】
このように、コントローラ3Aは、プレ遮断制御を行う場合に、電池用スイッチ42を遮断状態から所定期間にわたって半導通状態にしてから導通状態に切り替え、電池用スイッチ42が半導通状態の期間に、系統間スイッチ41を導通状態から遮断状態に切り替える。
【0095】
これにより、コントローラ3Aは、プレ遮断制御中に、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42が共に遮断状態になる期間の発生を防止できる。また、コントローラ3Aは、電源失陥を検出したときに、電池用スイッチ42を直ちに半導通状態にするため、第2系統120が失陥していた場合、第2電源20の電力が第2系統120によって減少することを防止できる。
【0096】
その後、第2検出部32Aは、地絡系統の本判定を行う。第2検出部32Aは、本判定において地絡200,201がないと判定した場合、復帰制御を行う。具体的には、第2検出部32Aは、地絡200,201がないと判定した場合、図8Aに示すように、発振器63の発振出力と同様の発振出力を系統間スイッチ41に出力し、その間に電池用スイッチ42を遮断状態にする。
【0097】
これにより、コントローラ3Aは、図8Bに示すように、例えば、時刻t41で復帰制御を開始する場合、まず、時刻t41からt43までの期間にわたって、系統間スイッチ41を半導通状態にし、時刻t43で半導通状態から導通状態に切り替える。
【0098】
また、コントローラ3Aは、系統間スイッチ41が半導通状態になっている時刻t41からt43の間の時刻t42で電池用スイッチ42を導通状態から遮断状態に切り替える。これにより、コントローラ3Aは、復帰制御中に、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42が共に遮断状態になる期間の発生を防止できる。
【0099】
[6.第2変形例に係るコントローラの構成および動作]
図9Aは、実施形態の第2変形例に係るコントローラ3Bの構成および地絡時動作を示す説明図である。図9Bは、実施形態の第2変形例に係るコントローラ3Bの地絡時動作を示すタイミングチャートである。図10Aは、実施形態の第2変形例に係るコントローラ3Bの復帰時動作を示す説明図である。図10Bは、実施形態の第2変形例に係るコントローラ3Bの復帰時動作を示すタイミングチャートである。
【0100】
図9Aに示すように、コントローラ3Bの第1検出部31Bは、ハードウェアによって構成される。かかる第1検出部31Bは、ハードウェアによってプレ遮断制御を行うハード制御装置の一例である。第1検出部31Bは、比較器61と、パルス発生器62と、発振器63と、ゲート回路64とを含む。
【0101】
比較器61は、第2電圧センサ52から入力される第2系統電圧V2と、地絡閾値とを比較するコンパレータである。比較器61は、第2系統電圧V2が地絡閾値以下になった場合に、電源失陥を検出して検出信号をパルス発生器62に出力する。
【0102】
パルス発生器62は、比較器61から検出信号が入力されると所定時間幅のパルスをゲート回路64と第2検出部32Bとに出力する。パルス発生器62は、例えば、50msの間ハイレベルになるワンショットパルスを出力する。発振器63は、ワンショットパルスの50msよりも短い周期でハイレベルとローレベルとを繰り返す発振出力をゲート回路64に出力する。
【0103】
ゲート回路64は、AND論理回路である。ゲート回路64は、入力されるワンショットパルスおよび発振出力が共にハイレベルの期間にハイレベルの信号を系統間スイッチ41に出力する。
【0104】
つまり、ゲート回路64は、ワンショットパルスがハイレベルとなっている50msの間、発振器63の発振出力を系統間スイッチ41に出力する。これにより、系統間スイッチ41は、ワンショットパルスがハイレベルとなっている所定時間幅の間、発振出力の周期で導通状態と遮断状態とを繰り返す半導通状態になる。
【0105】
また、ゲート回路64は、ワンショットパルスがハイレベルとなっている50msの間、発振器63の発振出力を電池用スイッチ42に出力する。これにより、電池用スイッチ42は、ワンショットパルスがハイレベルとなっている所定時間幅の間、発振出力の周期で導通状態と遮断状態とを繰り返す半導通状態になる。
【0106】
このように、第1検出部31Bは、ハードウェアによって構成されるので、例えば、地絡を検出すると瞬時にプレ遮断制御を行うことができる。また、第1検出部31Bは、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を半導通状態にする期間を、パルス発生器62から出力されるワンショットパルスの時間長によって規定することができる。
【0107】
一方、第2検出部32Bは、マイコン7を備える。マイコン7は、パルス発生器62からパルスが入力されると、つまり、第1検出部31Bによってプレ遮断制御が開始されると、第1検出部31Bからプレ遮断制御を引き継ぎ、その後、地絡系統の本判定を行う。
【0108】
具体的には、マイコン7は、図9Aに点線矢印で示すように、パルス発生器62からパルスが入力されると、遮断状態を維持させる制御信号を系統間スイッチ41に出力し、導通状態を維持させる制御信号を電池用スイッチ42に出力する。
【0109】
これにより、パルス発生器62から出力されるパルスがハイレベルからローレベルに変化しても、系統間スイッチ41が遮断状態に維持され、電池用スイッチ42が導通状態に維持される。
【0110】
これにより、コントローラ3Bは、図9Bに示すように、例えば、時刻t51でプレ遮断制御を開始する場合、まず、時刻t51からt52までの期間にわたって、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を半導通状態にする。そして、コントローラ3Bは、系統間スイッチ41を時刻t52で半導通状態から遮断状態に切り替え、電池用スイッチ42を同じくt52で半導通状態から導通状態に切り替える。
【0111】
このように、コントローラ3Bは、プレ遮断制御を行う場合、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を所定期間にわたって半導通状態にしてから、系統間スイッチ41を遮断状態に切り替え、電池用スイッチ42を導通状態に切り替える。
【0112】
これにより、コントローラ3Bは、プレ遮断制御中に、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42が共に遮断状態になる期間の発生を防止できる。
【0113】
その後、第2検出部32Bは、地絡系統の本判定を行う。第2検出部32Bは、本判定において地絡200,201がないと判定した場合、復帰制御を行う。具体的には、第2検出部32Bは、地絡200,201がないと判定した場合、図10Aに示すように、発振器63の発振出力と同様の発振出力を系統間スイッチ41および電池用スイッチ42に出力し、その後、系統間スイッチ41を導通状態にし、電池用スイッチ42を遮断状態にする。
【0114】
これにより、コントローラ3Bは、図10Bに示すように、例えば、時刻t61で復帰制御を開始する場合、まず、時刻t61からt62までの期間にわたって、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を半導通状態にする。
【0115】
その後、コントローラ3Bは、時刻t62で系統間スイッチ41を導通状態にし、電池用スイッチ42を遮断状態にする。これにより、コントローラ3Bは、復帰制御中に、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42が共に遮断状態になる期間の発生を防止できる。
【0116】
なお、上述した実施形態では、第1検出部31,31A,31Bがハードウェアによって構成される場合について説明したが、ソフトウェアによってプレ遮断制御および復帰制御を行うように構成されてもよい。この場合、第1検出部31,31A,31Bは、マイコン7とは別のマイコンによって構成されてもよく、マイコン7が第1検出部31,31A,31Bおよび第2検出部32,32A,32Bの機能を実現するように構成されてもよい。
【0117】
[7.付記]
付記として、本発明の特徴を以下の通り示す。
(1)
第1電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、第2電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続する系統間スイッチと、前記第2電源と前記第2系統とを接続する電池用スイッチとを制御するコントローラを備える電源制御装置であって、
前記コントローラは、
前記第1系統および前記第2系統の電源失陥を検出しない通常時に、前記系統間スイッチを導通状態にし、前記電池用スイッチを遮断状態にし、
前記第1系統または前記第2系統の電源失陥を検出すると、前記系統間スイッチを遮断状態に切り替え、前記電池用スイッチを導通状態に切り替えるプレ遮断制御を行い、
前記プレ遮断制御後に、前記第1系統および前記第2系統のうち電源失陥がある系統を判定する本判定を行い、
前記本判定の結果、両系統とも電源失陥がない場合は、前記系統間スイッチを導通状態に切り替え、前記電池用スイッチを遮断状態に切り替える復帰制御を行い、
前記プレ遮断制御および前記復帰制御の少なくとも一方の制御において、前記系統間スイッチおよび前記電池用スイッチの一方のスイッチを所定期間にわたって半導通状態にしてから切り替え、前記一方のスイッチが半導通状態の期間に他方のスイッチを切り替える
電源制御装置。
(2)
前記コントローラは、
前記プレ遮断制御を行う場合に、前記系統間スイッチを導通状態から所定期間にわたって半導通状態にしてから遮断状態に切り替え、前記系統間スイッチが半導通状態の期間に、前記電池用スイッチを遮断状態から導通状態に切り替える
前記(1)に記載の電源制御装置。
(3)
コントローラは、
ハードウェアによって前記プレ遮断制御を行うハード制御装置を備え、
前記ハード制御装置は、
前記電源失陥を検出して検出信号を出力する比較器と、
前記比較器から前記検出信号が入力されると所定時間幅のパルスを出力するパルス発生器と、
発振器と、
前記パルスが出力されている期間、前記発振器の発振出力を前記系統間スイッチに出力するゲート回路と、
前記パルスを前記所定時間幅より短い時間遅延し、前記電池用スイッチに出力する遅延回路と
を有する前記(1)または(2)に記載の電源制御装置。
(4)
前記遅延回路によるパルスの遅延時間は、
前記第2負荷が備える給電電力を蓄電するコンデンサが給電停止から蓄電残量がなくなるまでの時間よりも短い
前記(3)に記載の電源制御装置。
(5)
前記コントローラは、
前記プレ遮断制御を行う場合に、前記電池用スイッチを遮断状態から所定期間にわたって半導通状態にしてから導通状態に切り替え、前記電池用スイッチが半導通状態の期間に、前記系統間スイッチを導通状態から遮断状態に切り替える
前記(1)に記載の電源制御装置。
(6)
前記コントローラは、
前記プレ遮断制御を行う場合に、前記系統間スイッチおよび前記電池用スイッチを所定期間にわたって半導通状態にしてから、前記系統間スイッチを半導通状態から遮断状態に切り替え、前記電池用スイッチを半導通状態から導通状態に切り替える
前記(1)に記載の電源制御装置。
(7)
コントローラは、
ソフトウェアによって前記本判定および前記復帰制御を行うソフト制御装置を備え、
前記ソフト制御装置は、
発振信号を生成し、前記復帰制御を行う場合に、前記系統間スイッチおよび前記電池用スイッチの一方のスイッチに前記発振信号を出力して所定期間にわたって半導通状態にしてから切り替え、前記一方のスイッチが半導通状態の期間に他方のスイッチを切り替える
前記(1)から(6)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(8)
第1電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、第2電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続する系統間スイッチと、前記第2電源と前記第2系統とを接続する電池用スイッチとを制御するコントローラが、
前記第1系統および前記第2系統の電源失陥を検出しない通常時に、前記系統間スイッチを導通状態にし、前記電池用スイッチを遮断状態にし、
前記第1系統または前記第2系統の電源失陥を検出すると、前記系統間スイッチを遮断状態に切り替え、前記電池用スイッチを導通状態に切り替えるプレ遮断制御を行い、
前記プレ遮断制御後に、前記第1系統および前記第2系統のうち電源失陥がある系統を判定する本判定を行い、
前記本判定の結果、両系統とも電源失陥がない場合は、前記系統間スイッチを導通状態に切り替え、前記電池用スイッチを遮断状態に切り替える復帰制御を行い、
前記プレ遮断制御および前記復帰制御の少なくとも一方の制御において、前記系統間スイッチおよび前記電池用スイッチの一方のスイッチを所定期間にわたって半導通状態にしてから切り替え、前記一方のスイッチが半導通状態の期間に他方のスイッチを切り替える
ことを含む電源制御方法。
【0118】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0119】
1 電源制御装置
3,3A,3B コントローラ
7 マイコン
10 第1電源
20 第2電源
22 状態監視ライン
31,31A,31B 第1検出部
32,32A,32B 第2検出部
41 系統間スイッチ
42 電池用スイッチ
51 第1電圧センサ
52 第2電圧センサ
61 比較器
62 パルス発生器
63 発振器
64 ゲート回路
65 遅延回路
100 外部装置
101 第1負荷
102 一般負荷
103 第2負荷
110 第1系統
120 第2系統
130 系統間ライン
V1 第1系統電圧
V2 第2系統電圧
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B