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特開2024-157585レーダアレイアンテナ校正装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157585
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】レーダアレイアンテナ校正装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01S7/40 121
G01S7/40 191
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071984
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】時枝 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】石村 直敬
(72)【発明者】
【氏名】毛塚 直哉
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC13
5J070AD05
5J070AD08
5J070AF03
5J070AK08
(57)【要約】
【課題】2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域のみならず極近距離領域においても、各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することを目的とする。
【解決手段】校正用反射体RCが位置する所定距離(遠方界領域でもよく、極近距離領域でもよい)において、校正用反射体RCからのレーダ信号を実際に受信したうえで、2次元面内配置の各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算する。そして、被観測反射体ROが位置する他の距離(当該所定距離によらず、遠方界領域でもよく、極近距離領域でもよい)において、被観測反射体ROからのレーダ信号を実際に受信するまでもなく(実際に受信してもよい)、2次元面内配置の各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、2次元面内配置の各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ送受信装置として適用される2次元アレイアンテナ装置の各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するレーダアレイアンテナ校正装置であって、
前記レーダ送受信装置の運用前において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの所定距離に位置する校正用反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算する励振振幅位相校正部と、
前記レーダ送受信装置の運用前(又は運用時)において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの前記所定距離以外の他の距離に位置すると想定される(又は観測された)被観測反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信位相が同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する励振位相補正部と、
を備えることを特徴とするレーダアレイアンテナ校正装置。
【請求項2】
前記励振位相補正部は、前記各アンテナ素子と前記校正用反射体との間の距離から前記所定距離を減算した距離に対する、前記各アンテナ素子と前記被観測反射体との間の距離から前記他の距離を減算した距離の差分に基づいて、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する
ことを特徴とする、請求項1に記載のレーダアレイアンテナ校正装置。
【請求項3】
前記励振振幅位相校正部は、前記2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域に対応する前記所定距離について、前記各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算し、
前記励振位相補正部は、前記遠方界領域に対応する前記他の距離と、前記2次元アレイアンテナ装置のフレネル領域に対応する前記他の距離と、について、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーダアレイアンテナ校正装置。
【請求項4】
前記励振振幅位相校正部は、前記2次元アレイアンテナ装置のフレネル領域に対応する前記所定距離について、前記各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算し、
前記励振位相補正部は、前記フレネル領域に対応する前記他の距離と、前記2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域に対応する前記他の距離と、について、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーダアレイアンテナ校正装置。
【請求項5】
レーダ送受信装置として適用されMIMOを適用する2次元アレイアンテナ装置の各仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するレーダアレイアンテナ校正装置であって、
前記レーダ送受信装置の運用前において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの所定距離に位置する校正用反射体からのレーダ信号について、前記各仮想アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、前記各仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算する励振振幅位相校正部と、
前記レーダ送受信装置の運用前(又は運用時)において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの前記所定距離以外の他の距離に位置すると想定される(又は観測された)被観測反射体からのレーダ信号について、前記各仮想アンテナ素子の受信位相が同一位相になるように、前記各仮想アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各仮想アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する励振位相補正部と、
を備えることを特徴とするレーダアレイアンテナ校正装置。
【請求項6】
前記励振位相補正部は、前記各仮想アンテナ素子に対応する各送信アンテナ素子及び各受信アンテナ素子と前記校正用反射体との間の距離から前記所定距離を減算した距離に対する、前記各仮想アンテナ素子に対応する各送信アンテナ素子及び各受信アンテナ素子と前記被観測反射体との間の距離から前記他の距離を減算した距離の差分に基づいて、前記各仮想アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各仮想アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する
ことを特徴とする、請求項5に記載のレーダアレイアンテナ校正装置。
【請求項7】
レーダ送受信装置として適用されKR積拡張を適用する2次元アレイアンテナ装置の各実在アンテナ素子及び各非実在アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するレーダアレイアンテナ校正装置であって、
前記レーダ送受信装置の運用前において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの所定距離に位置する校正用反射体からのレーダ信号について、前記各実在アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、前記各実在アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算する励振振幅位相校正部と、
前記各実在アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値に基づいて、前記各非実在アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算するKR積拡張校正部と、
前記レーダ送受信装置の運用前(又は運用時)において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの前記所定距離以外の他の距離に位置すると想定される(又は観測された)被観測反射体からのレーダ信号について、前記各実在アンテナ素子の受信位相が同一位相になるように、前記各実在アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各実在アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する励振位相補正部と、
前記各実在アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各実在アンテナ素子の励振位相の補正値に基づいて、前記各非実在アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各非実在アンテナ素子の励振位相の補正値を計算するKR積拡張補正部と、
を備えることを特徴とするレーダアレイアンテナ校正装置。
【請求項8】
前記励振位相補正部は、前記各実在アンテナ素子と前記校正用反射体との間の距離から前記所定距離を減算した距離に対する、前記各実在アンテナ素子と前記被観測反射体との間の距離から前記他の距離を減算した距離の差分に基づいて、前記各実在アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各実在アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する
ことを特徴とする、請求項7に記載のレーダアレイアンテナ校正装置。
【請求項9】
レーダ送受信装置として適用される2次元アレイアンテナ装置の各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するレーダアレイアンテナ校正方法であって、
前記レーダ送受信装置の運用前において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの所定距離に位置する校正用反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値があらかじめ計算されたうえで、
前記レーダ送受信装置の運用前(又は運用時)において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの前記所定距離以外の他の距離に位置すると想定される(又は観測された)被観測反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信位相が同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する励振位相補正ステップ、
を備えることを特徴とするレーダアレイアンテナ校正方法。
【請求項10】
レーダ送受信装置として適用される2次元アレイアンテナ装置の各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するレーダアレイアンテナ校正プログラムであって、
前記レーダ送受信装置の運用前において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの所定距離に位置する校正用反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値があらかじめ計算されたうえで、
前記レーダ送受信装置の運用前(又は運用時)において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの前記所定距離以外の他の距離に位置すると想定される(又は観測された)被観測反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信位相が同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する励振位相補正ステップ、
をコンピュータに実行させるためのレーダアレイアンテナ校正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダアレイアンテナを校正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波等を適用して物標を検出する車載レーダ等において、アレイアンテナ装置の各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正する技術が、特許文献1等に開示されている。
【0003】
すなわち、各アンテナ素子の減衰器及び移相器において、製造誤差及び線路長誤差を考慮したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成する必要がある。そこで、アレイアンテナ装置の正面方向及び遠方界領域に位置する校正用反射体からのレーダ信号について、各アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算するのである。
【0004】
ところで、アンテナ素子数が少数であっても大開口長及び高分解能を実現するために、アレイアンテナ装置にMIMO及びKR積拡張を適用する技術が、特許文献2~4等に開示されている。すなわち、MIMOを用いて仮想アレイを構成し、KR積拡張を用いて信号の欠落を補間し、各仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を計算するのである。そして、各アンテナ素子を2次元面内に配置する技術が、一般的に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014-532167号公報
【特許文献2】特開2019-071529号公報
【特許文献3】特開2019-070558号公報
【特許文献4】特開2019-071530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ミリ波等を適用する車載レーダ等において、1m未満から100m程度まで等の広範囲に位置する物標を検出する必要がある。そして、アレイアンテナ装置の遠方界領域においては、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができることが既に分かっている。しかし、アレイアンテナ装置の極近距離領域においては、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができないことが新たに見出された。
【0007】
そして、アレイアンテナ装置の遠方界領域においては、MIMO及びKR積拡張を適用するときには適用しないときと同様に、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができることが既に分かっている。しかし、アレイアンテナ装置の極近距離領域においては、MIMO及びKR積拡張を適用するときには適用しないときと比べてさらに、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができないことが新たに見出された。さらに、2次元のアレイアンテナ装置においては、遠方界領域及び極近距離領域において、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成する技術が存在していない。
【0008】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、(1)2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域のみならず極近距離領域においても、各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成すること、及び、(2)MIMO及びKR積拡張を適用する2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域のみならず極近距離領域においても、各仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域においては、レーダ信号波面がほぼ平面波面であることは勿論であるが、2次元アレイアンテナ装置の極近距離領域においては、レーダ信号波面が平面波面ではないことに新たに着目した。
【0010】
つまり、2次元アレイアンテナ装置の極近距離領域においては、2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域と比べて、各アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるような、各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値が異なることに新たに着目した。
【0011】
そこで、校正用反射体が位置する所定距離においては、校正用反射体からのレーダ信号を実際に受信したうえで、各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算する。ここで、当該所定距離として、遠方界領域でもよく、極近距離領域でもよい。
【0012】
そして、被観測反射体が位置する他の距離においては、被観測反射体からのレーダ信号を実際に受信するまでもなく(実際に受信してもよい)、各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する。ここで、当該他の距離として、当該所定距離によらず、遠方界領域でもよく、極近距離領域でもよい。
【0013】
具体的には、本開示は、レーダ送受信装置として適用される2次元アレイアンテナ装置の各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するレーダアレイアンテナ校正装置であって、前記レーダ送受信装置の運用前において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの所定距離に位置する校正用反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算する励振振幅位相校正部と、前記レーダ送受信装置の運用前(又は運用時)において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの前記所定距離以外の他の距離に位置すると想定される(又は観測された)被観測反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信位相が同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する励振位相補正部と、を備えることを特徴とするレーダアレイアンテナ校正装置である。
【0014】
また、本開示は、レーダ送受信装置として適用される2次元アレイアンテナ装置の各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するレーダアレイアンテナ校正方法であって、前記レーダ送受信装置の運用前において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの所定距離に位置する校正用反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値があらかじめ計算されたうえで、前記レーダ送受信装置の運用前(又は運用時)において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの前記所定距離以外の他の距離に位置すると想定される(又は観測された)被観測反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信位相が同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する励振位相補正ステップ、を備えることを特徴とするレーダアレイアンテナ校正方法である。
【0015】
また、本開示は、レーダ送受信装置として適用される2次元アレイアンテナ装置の各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するレーダアレイアンテナ校正プログラムであって、前記レーダ送受信装置の運用前において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの所定距離に位置する校正用反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値があらかじめ計算されたうえで、前記レーダ送受信装置の運用前(又は運用時)において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの前記所定距離以外の他の距離に位置すると想定される(又は観測された)被観測反射体からのレーダ信号について、前記各アンテナ素子の受信位相が同一位相になるように、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する励振位相補正ステップ、をコンピュータに実行させるためのレーダアレイアンテナ校正プログラムである。
【0016】
これらの構成によれば、2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域のみならず極近距離領域においても、各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するとともに補正したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができる。
【0017】
また、本開示は、前記励振位相補正部は、前記各アンテナ素子と前記校正用反射体との間の距離から前記所定距離を減算した距離に対する、前記各アンテナ素子と前記被観測反射体との間の距離から前記他の距離を減算した距離の差分に基づいて、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算することを特徴とするレーダアレイアンテナ校正装置である。
【0018】
この構成によれば、校正用反射体が位置する所定距離において、各アンテナ素子の励振位相の校正値を計算したうえで、被観測反射体が位置する他の距離において、各アンテナ素子の伝搬距離に基づいて、各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算することができる。
【0019】
また、本開示は、前記励振振幅位相校正部は、前記2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域に対応する前記所定距離について、前記各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算し、前記励振位相補正部は、前記遠方界領域に対応する前記他の距離と、前記2次元アレイアンテナ装置のフレネル領域に対応する前記他の距離と、について、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算することを特徴とするレーダアレイアンテナ校正装置である。
【0020】
この構成によれば、通常の広さの電波暗室において、各アンテナ素子の励振位相の校正値を計算したうえで、被観測反射体が位置する他の距離(遠方界領域でもよく、極近距離領域でもよい)において、各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算することができる。
【0021】
また、本開示は、前記励振振幅位相校正部は、前記2次元アレイアンテナ装置のフレネル領域に対応する前記所定距離について、前記各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算し、前記励振位相補正部は、前記フレネル領域に対応する前記他の距離と、前記2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域に対応する前記他の距離と、について、前記各アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算することを特徴とするレーダアレイアンテナ校正装置である。
【0022】
この構成によれば、さらに狭めの電波暗室において、各アンテナ素子の励振位相の校正値を計算したうえで、被観測反射体が位置する他の距離(極近距離領域でもよく、遠方界領域でもよい)において、各アンテナ素子の励振位相の補正値を計算することができる。
【0023】
また、本開示は、レーダ送受信装置として適用されMIMOを適用する2次元アレイアンテナ装置の各仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するレーダアレイアンテナ校正装置であって、前記レーダ送受信装置の運用前において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの所定距離に位置する校正用反射体からのレーダ信号について、前記各仮想アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、前記各仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算する励振振幅位相校正部と、前記レーダ送受信装置の運用前(又は運用時)において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの前記所定距離以外の他の距離に位置すると想定される(又は観測された)被観測反射体からのレーダ信号について、前記各仮想アンテナ素子の受信位相が同一位相になるように、前記各仮想アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各仮想アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する励振位相補正部と、を備えることを特徴とするレーダアレイアンテナ校正装置である。
【0024】
この構成によれば、MIMOを適用する2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域のみならず極近距離領域においても、各仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するとともに補正したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができる。
【0025】
また、本開示は、前記励振位相補正部は、前記各仮想アンテナ素子に対応する各送信アンテナ素子及び各受信アンテナ素子と前記校正用反射体との間の距離から前記所定距離を減算した距離に対する、前記各仮想アンテナ素子に対応する各送信アンテナ素子及び各受信アンテナ素子と前記被観測反射体との間の距離から前記他の距離を減算した距離の差分に基づいて、前記各仮想アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各仮想アンテナ素子の励振位相の補正値を計算することを特徴とするレーダアレイアンテナ校正装置である。
【0026】
この構成によれば、校正用反射体が位置する所定距離において、各仮想アンテナ素子の励振位相の校正値を計算したうえで、被観測反射体が位置する他の距離において、各仮想アンテナ素子に対応する各送信アンテナ素子及び各受信アンテナ素子の伝搬距離に基づいて、各仮想アンテナ素子の励振位相の補正値を計算することができる。
【0027】
また、本開示は、レーダ送受信装置として適用されKR積拡張を適用する2次元アレイアンテナ装置の各実在アンテナ素子及び各非実在アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するレーダアレイアンテナ校正装置であって、前記レーダ送受信装置の運用前において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの所定距離に位置する校正用反射体からのレーダ信号について、前記各実在アンテナ素子の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、前記各実在アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算する励振振幅位相校正部と、前記各実在アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値に基づいて、前記各非実在アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算するKR積拡張校正部と、前記レーダ送受信装置の運用前(又は運用時)において、前記2次元アレイアンテナ装置の正面方向及び前記2次元アレイアンテナ装置からの前記所定距離以外の他の距離に位置すると想定される(又は観測された)被観測反射体からのレーダ信号について、前記各実在アンテナ素子の受信位相が同一位相になるように、前記各実在アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各実在アンテナ素子の励振位相の補正値を計算する励振位相補正部と、前記各実在アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各実在アンテナ素子の励振位相の補正値に基づいて、前記各非実在アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各非実在アンテナ素子の励振位相の補正値を計算するKR積拡張補正部と、を備えることを特徴とするレーダアレイアンテナ校正装置である。
【0028】
この構成によれば、KR積拡張を適用する2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域のみならず極近距離領域においても、各実在アンテナ素子及び各非実在アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するとともに補正したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができる。
【0029】
また、本開示は、前記励振位相補正部は、前記各実在アンテナ素子と前記校正用反射体との間の距離から前記所定距離を減算した距離に対する、前記各実在アンテナ素子と前記被観測反射体との間の距離から前記他の距離を減算した距離の差分に基づいて、前記各実在アンテナ素子の励振位相の校正値に対する、前記各実在アンテナ素子の励振位相の補正値を計算することを特徴とするレーダアレイアンテナ校正装置である。
【0030】
この構成によれば、校正用反射体が位置する所定距離において、各実在アンテナ素子(及び各非実在アンテナ素子)の励振位相の校正値を計算したうえで、被観測反射体が位置する他の距離において、各実在アンテナ素子の伝搬距離に基づいて、各実在アンテナ素子(及び各非実在アンテナ素子)の励振位相の補正値を計算することができる。
【0031】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0032】
このように、本開示は、(1)2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域のみならず極近距離領域においても、各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成すること、及び、(2)MIMO及びKR積拡張を適用する2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域のみならず極近距離領域においても、各仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本開示のレーダ送受信システムの構成を示す図である。
図2】本開示のレーダ送受信システムの構成を示す図である。
図3】本開示のアンテナ校正処理の手順を示す図である。
図4】本開示の励振位相補正処理の原理を示す図である。
図5】本開示の励振位相補正処理の内容を示す図である。
図6】本開示の励振位相補正値メモリの内容を示す図である。
図7】本開示の励振位相補正値メモリの内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0035】
(本開示のレーダ送受信システムの構成)
本開示のレーダ送受信システムの構成を図1、2に示す。本開示のアンテナ校正処理の手順を図3に示す。レーダ送受信システムSは、アレイアンテナ装置1及びアレイアンテナ校正装置2を備える。レーダ送受信システムSは、ミリ波等を適用して物標を検出する車載レーダ等として利用される。アレイアンテナ装置1は、本開示では、MIMO及びKR積拡張を適用する2次元アレイアンテナ装置であるが、変形例として、MIMOを適用するがKR積拡張を適用しない2次元アレイアンテナ装置でもよく、KR積拡張を適用するがMIMOを適用しない2次元アレイアンテナ装置でもよく、MIMO及びKR積拡張を適用しない2次元アレイアンテナ装置でもよく、容易に変形することができる。
【0036】
アレイアンテナ装置1は、実在送信アンテナ素子T0、T1、T3、非実在送信アンテナ素子T2、実在受信アンテナ素子R0、R2、R3、非実在受信アンテナ素子R1、直交分離処理部D0~D3、第1仮想アンテナ素子V0、V2、V3、V4、V6、V7、V12、V14、V15及び第2仮想アンテナ素子V1、V5、V8、V9、V10、V11、V13を備える。当該第1仮想アンテナ素子は、実在送信アンテナ素子T0、T1、T3及び実在受信アンテナ素子R0、R2、R3に由来するものである。当該第2仮想アンテナ素子は、非実在送信アンテナ素子T2又は非実在受信アンテナ素子R1に由来するものである。アレイアンテナ校正装置2は、励振振幅位相校正部21、KR積拡張校正部22、励振位相補正部23及びKR積拡張補正部24を備え、図3に示したアレイアンテナ校正プログラムをコンピュータにインストールし実現される。
【0037】
実在送信アンテナ素子T0、T1、T3は、レーダ照射信号を同時に送信する。実在受信アンテナ素子R0、R2、R3は、合成レーダ反射信号を受信する。直交分離処理部D0は、実在受信アンテナ素子R0が受信した合成レーダ反射信号のうち、実在送信アンテナ素子T0、T1、T3が送信したレーダ照射信号成分を、第1仮想アンテナ素子V0、V4、V12に出力する。直交分離処理部D1は、仮想的なものである。直交分離処理部D2は、実在受信アンテナ素子R2が受信した合成レーダ反射信号のうち、実在送信アンテナ素子T0、T1、T3が送信したレーダ照射信号成分を、第1仮想アンテナ素子V2、V6、V14に出力する。直交分離処理部D3は、実在受信アンテナ素子R3が受信した合成レーダ反射信号のうち、実在送信アンテナ素子T0、T1、T3が送信したレーダ照射信号成分を、第1仮想アンテナ素子V3、V7、V15に出力する。そして、KR積拡張を用いて信号の欠落を補間し、当該第1仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相に基づいて、当該第2仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を計算するのである。
【0038】
実在送信アンテナ素子T0、T1、T3は、レーダ照射信号を同時に送信するのではなく時分割に送信してもよい。実在受信アンテナ素子R0、R2、R3は、時分割レーダ反射信号を受信してもよい。直交分離処理部D0は、実在受信アンテナ素子R0が受信した時分割レーダ反射信号のうち、実在送信アンテナ素子T0、T1、T3が送信したレーダ照射信号成分を、第1仮想アンテナ素子V0、V4、V12に出力してもよい。直交分離処理部D1は、仮想的なものである。直交分離処理部D2は、実在受信アンテナ素子R2が受信した時分割レーダ反射信号のうち、実在送信アンテナ素子T0、T1、T3が送信したレーダ照射信号成分を、第1仮想アンテナ素子V2、V6、V14に出力してもよい。直交分離処理部D3は、実在受信アンテナ素子R3が受信した時分割レーダ反射信号のうち、実在送信アンテナ素子T0、T1、T3が送信したレーダ照射信号成分を、第1仮想アンテナ素子V3、V7、V15に出力してもよい。そして、KR積拡張を用いて信号の欠落を補間し、当該第1仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相に基づいて、当該第2仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を計算するのである。
【0039】
図1の下段に示したように、アレイアンテナ校正装置2の校正対象のアレイアンテナ装置1は、実在送信アンテナ素子T0、T1、T3、非実在送信アンテナ素子T2、実在受信アンテナ素子R0、R2、R3及び非実在受信アンテナ素子R1を、2次元面内に配置している。具体的には、実在送信アンテナ素子T0、T1、T3及び非実在送信アンテナ素子T2は、図1の上下方向に配置されており、実在受信アンテナ素子R0、R2、R3及び非実在受信アンテナ素子R1は、図1の左右方向に配置されている。
【0040】
ここで、MIMO及びKR積拡張を適用する。すると、第1仮想アンテナ素子V0、V2、V3及び第2仮想アンテナ素子V1は、図1の左右方向かつ2次元面内の第1行目に配置される。そして、第1仮想アンテナ素子V4、V6、V7及び第2仮想アンテナ素子V5は、図1の左右方向かつ2次元面内の第2行目に配置される。そして、第2仮想アンテナ素子V8、V9、V10、V11は、図1の左右方向かつ2次元面内の第3行目に配置される。そして、第1仮想アンテナ素子V12、V14、V15及び第2仮想アンテナ素子V13は、図1の左右方向かつ2次元面内の第4行目に配置される。
【0041】
励振振幅位相校正部21は、レーダ送受信システムSの運用前(工場出荷時又は経年変化補償前)において、アレイアンテナ装置1の正面方向及びアレイアンテナ装置1からの所定距離に位置する校正用反射体RCからのレーダ信号を受信する(ステップS1)。ここで、当該所定距離として、遠方界領域でもよく、極近距離領域でもよい。
【0042】
励振振幅位相校正部21は、各第1仮想アンテナ素子V0、V2、V3、V4、V6、V7、V12、V14、V15の受信振幅及び受信位相が同一振幅及び同一位相になるように、当該第1仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値を計算する(ステップS2)。KR積拡張校正部22は、KR積拡張を用いて信号の欠落を補間し、当該第1仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相の校正値に基づいて、各第2仮想アンテナ素子V1、V5、V8、V9、V10、V11、V13の励振振幅及び励振位相の校正値を計算する(ステップS3)。よって、当該第1仮想アンテナ素子及び当該第2仮想アンテナ素子の減衰器及び移相器において、製造誤差及び線路長誤差が補償される。
【0043】
ところで、ミリ波等を適用する車載レーダ等において、1m未満から100m程度まで等の広範囲に位置する物標を検出する必要がある。そして、励振振幅位相校正部21及びKR積拡張校正部22のステップS1~S3のみでも、校正用反射体RCが位置する所定距離においては、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができる。しかし、励振振幅位相校正部21及びKR積拡張校正部22のステップS1~S3のみでは、被観測反射体ROが位置する他の距離においては、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができない。そこで、励振位相補正部23及びKR積拡張補正部24によるステップS4~S6を用いて、上記の課題を解決するのである。
【0044】
(本開示の励振位相補正処理の原理)
本開示の励振位相補正処理の原理を図4に示す。図4では、簡単のために、第1仮想アンテナ素子V0、V2、V3、V4、V6、V7、V12、V14、V15に代えて、アンテナ素子A0は、アンテナ素子面の原点(0、0、0)に位置するとし、アンテナ素子A1は、アンテナ素子面の位置(x、y、0)に位置するとし、校正用反射体RC又は被観測反射体ROは、アンテナ素子A0の正面方向に位置するとした。
【0045】
図4の左欄では、校正用反射体RCは、アンテナ素子A0の遠方界領域(距離R)に位置する。ここで、アンテナ素子A0、A1の遠方界領域においては、レーダ信号波面W0、W1は、ほぼ平面波面をなす。そして、アンテナ素子A1と校正用反射体RCとの間の往復距離から、アンテナ素子A0と校正用反射体RCとの間の往復距離を減算した距離は、Δφ・λ/2πになる。しかし、伝搬位相差Δφは、後述の数式5の最右辺のうち、距離Rに依存しない第1項を含むが、距離Rに反比例する第2項をほぼ含まない。そして、アンテナ素子A1の減衰器及び移相器において、製造誤差及び線路長誤差が補償されるとともに、伝搬位相差Δφが補償される。よって、各アンテナ素子A0、A1(同様に各第1仮想アンテナ素子V0、V2、V3、V4、V6、V7、V12、V14、V15でも)の受信位相は、同一位相になる。そして、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができる。
【0046】
図4の中欄では、被観測反射体ROは、アンテナ素子A0の遠方界領域(距離R)に位置する。ここで、アンテナ素子A0、A1の遠方界領域においては、レーダ信号波面W0、W1は、ほぼ平面波面をなす。そして、アンテナ素子A1と被観測反射体ROとの間の往復距離から、アンテナ素子A0と被観測反射体ROとの間の往復距離を減算した距離は、Δφ・λ/2πになる。しかし、伝搬位相差Δφは、後述の数式5の最右辺のうち、距離Rに依存しない第1項を含むが、距離Rに反比例する第2項をほぼ含まない。そして、アンテナ素子A1の減衰器及び移相器において、製造誤差及び線路長誤差が既に補償されるとともに、伝搬位相差Δφ(≒Δφ)が既にほぼ補償される。よって、各アンテナ素子A0、A1(同様に各第1仮想アンテナ素子V0、V2、V3、V4、V6、V7、V12、V14、V15でも)の受信位相は、同一位相になる。そして、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができる。
【0047】
図4の右欄では、被観測反射体ROは、アンテナ素子A0の極近距離領域(距離R)に位置する。ここで、アンテナ素子A0、A1の極近距離領域においては、レーダ信号波面W0、W1は、平面波面をなさない。そして、アンテナ素子A1と被観測反射体ROとの間の往復距離から、アンテナ素子A0と被観測反射体ROとの間の往復距離を減算した距離は、Δφ・λ/2πになる。さらに、伝搬位相差Δφは、後述の数式5の最右辺のうち、距離Rに依存しない第1項を含むうえに、距離Rに反比例する第2項も含む。よって、アンテナ素子A1の減衰器及び移相器において、製造誤差及び線路長誤差が既に補償されるものの、伝搬位相差Δφ(≠Δφ)が未だ補償されない。そして、各アンテナ素子A0、A1(同様に各第1仮想アンテナ素子V0、V2、V3、V4、V6、V7、V12、V14、V15でも)の受信位相は、同一位相にならない。さらに、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができない。
【0048】
そこで、励振位相補正部23は、レーダ送受信システムSの運用前(工場出荷時又は経年変化補償前)において、アレイアンテナ装置1の正面方向及びアレイアンテナ装置1からの上記所定距離R以外の他の距離Rに位置すると想定される被観測反射体ROからのレーダ信号を想定する(ステップS4)。ここで、当該他の距離として、当該所定距離Rによらず、極近距離領域(距離R)でもよく、遠方界領域(距離R)でもよい。
【0049】
或いは、励振位相補正部23は、レーダ送受信システムSの運用時(工場出荷後又は経年変化補償後)において、アレイアンテナ装置1の正面方向及びアレイアンテナ装置1からの上記所定距離R以外の他の距離Rに位置すると観測された被観測反射体ROからのレーダ信号を受信する(ステップS4)。ここで、当該他の距離として、当該所定距離Rによらず、極近距離領域(距離R)でもよく、遠方界領域(距離R)でもよい。
【0050】
そして、励振位相補正部23は、各アンテナ素子A0、A1の受信位相が同一位相になるように、各アンテナ素子A0、A1の励振位相の校正値に対する、各アンテナ素子A0、A1の励振位相の補正値を計算する(ステップS5)。よって、各アンテナ素子A0、A1の減衰器及び移相器において、製造誤差及び線路長誤差が補償されるとともに、伝搬位相差Δφ(≠Δφ)が補償される。各第1仮想アンテナ素子V0、V2、V3、V4、V6、V7、V12、V14、V15でも、同様である。各第2仮想アンテナ素子V1、V5、V8、V9、V10、V11、V13でも、信号の欠落の補完が可能である。
【0051】
具体的には、励振位相補正部23は、以下の処理を実行する(ステップS5)。まず、アンテナ素子A1と校正用反射体RCとの間の往復距離から、上記所定距離の往復分2Rを減算した距離Δφ・λ/2πを計算する。次に、アンテナ素子A1と被観測反射体ROとの間の往復距離から、上記他の距離の往復分2Rを減算した距離Δφ・λ/2πを計算する。次に、距離Δφ・λ/2πに対する距離Δφ・λ/2πの差分に基づいて、アンテナ素子A1の励振位相の校正値に対する、アンテナ素子A1の励振位相の補正値Δφ-Δφを計算する。各第1仮想アンテナ素子V0、V2、V3、V4、V6、V7、V12、V14、V15でも、同様である。各第2仮想アンテナ素子V1、V5、V8、V9、V10、V11、V13でも、信号の欠落の補完が可能である。
【0052】
このように、MIMO及びKR積拡張を適用する2次元のアレイアンテナ装置1の遠方界領域のみならず極近距離領域においても、各第1仮想アンテナ素子及び各第2仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正するとともに補正したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができる。
【0053】
そして、校正用反射体RCが位置する所定距離において、各第1仮想アンテナ素子の励振位相(及び各第2仮想アンテナ素子)の校正値を計算したうえで、被観測反射体ROが位置する他の距離において、各実在アンテナ素子の伝搬距離に基づいて、各第1仮想アンテナ素子(及び各第2仮想アンテナ素子)の励振位相の補正値を計算することができる。
【0054】
(本開示の励振位相補正処理の内容)
本開示の励振位相補正処理の内容を図5に示す。図5では、図1に従って、第1仮想アンテナ素子V0、V2、V3、V4、V6、V7、V12、V14、V15を考えて、実在送信アンテナ素子T0、T1、T3は、アンテナ素子面の負の位置(x、y、0)に位置するとし、実在受信アンテナ素子R0、R2、R3は、アンテナ素子面の正の位置(x、y、0)に位置するとした。例えば、第1仮想アンテナ素子V0(V15)を考えるときには、実在送信アンテナ素子T0(T3)の位置(x、y、0)及び実在受信アンテナ素子R0(R3)の位置(x、y、0)を考えればよい。そして、一般化のために、校正用反射体RC又は被観測反射体RO(距離R)は、(x=Rcоsθsinφ、y=Rsinθ、z=Rcоsθcоsφ)(アンテナ素子面の正面方向と比べて、微小仰角θ及び微小方位角φだけずれた方向)に位置するとした。
【0055】
図5の左欄では、励振位相補正部23は、送信アンテナ素子と校正用反射体RC又は被観測反射体ROとの間の距離Rを計算する(数式1)。ここで、数式1の最右辺において、距離Rが位置(x、y、0)と比べて十分に大きいことを考慮して、距離Rそのものの第1項と、距離Rに依存しない第2項と、距離Rに反比例する第3項と、のみを抽出する。
【数1】
【0056】
そして、励振位相補正部23は、送信アンテナ素子と校正用反射体RC又は被観測反射体ROとの間の距離Rから、校正用反射体RC又は被観測反射体ROの距離Rを減算した距離R-Rに基づいて、伝搬位相差Δφ図4のΔφ、Δφ、Δφの半分に対応)を計算する(数式2)。ここで、数式2の最右辺において、距離Rに依存しない第1項は、レーダ信号波面が平面波面であるときであっても生じる寄与であり、距離Rに反比例する第2項は、レーダ信号波面が平面波面でないときに初めて生じる寄与である。
【数2】
【0057】
図5の右欄では、励振位相補正部23は、受信アンテナ素子と校正用反射体RC又は被観測反射体ROとの間の距離Rを計算する(数式3)。ここで、数式3の最右辺において、距離Rが位置(x、y、0)と比べて十分に大きいことを考慮して、距離Rそのものの第1項と、距離Rに依存しない第2項と、距離Rに反比例する第3項と、のみを抽出する。
【数3】
【0058】
そして、励振位相補正部23は、受信アンテナ素子と校正用反射体RC又は被観測反射体ROとの間の距離Rから、校正用反射体RC又は被観測反射体ROの距離Rを減算した距離R-Rに基づいて、伝搬位相差Δφ図4のΔφ、Δφ、Δφの半分に対応)を計算する(数式4)。ここで、数式4の最右辺において、距離Rに依存しない第1項は、レーダ信号波面が平面波面であるときであっても生じる寄与であり、距離Rに反比例する第2項は、レーダ信号波面が平面波面でないときに初めて生じる寄与である。
【数4】
【0059】
励振位相補正部23は、伝搬位相差Δφ及び伝搬位相差Δφ図4のΔφ、Δφ、Δφの半分に対応)を合計して、伝搬位相差Δφ図4のΔφ、Δφ、Δφに対応)を計算する(数式5)。ここで、数式5の最右辺において、距離Rに反比例する第2項は、x +x 、y +y 、x+xに比例しており、位置(x、y、0)、(x、y、0)が距離Rと比べて無視できないときにおける、各第1仮想アンテナ素子V0、V2、V3、V4、V6、V7、V12、V14、V15の実在する受信位相と、各第2仮想アンテナ素子V1、V5、V8、V9、V10、V11、V13の仮想的な受信位相と、(階段状の放物線)を反映している(図4の右欄を参照)。後述の図6、7では、伝搬位相差Δφを励振位相のずれ値という。
【数5】
【0060】
本開示の励振位相補正値メモリの内容を図6に示す。図6の上段では、励振振幅位相校正部21は、アレイアンテナ装置1の遠方界領域に対応する上記所定距離Rについて、各第1仮想アンテナ素子Vi(i=0、2、3、4、6、7、12、14、15)の励振振幅及び励振位相の校正値ΔA(R)及びΔφ(R)を計算し、励振振幅位相の校正値メモリ25に書き込む(ステップS2)。KR積拡張校正部22は、KR積拡張を用いて信号の欠落を補間し、当該第1仮想アンテナ素子Viの励振振幅及び励振位相の校正値ΔA(R)及びΔφ(R)に基づいて、各第2仮想アンテナ素子Vi(i=1、5、8、9、10、11、13)の励振振幅及び励振位相の校正値ΔA(R)及びΔφ(R)を計算し、励振振幅位相の校正値メモリ25に書き込む(ステップS3)。ここで、励振振幅及び励振位相の校正値は、複素数ΔA(R)exp(jΔφ(R))としてもよい。そして、レーダ送受信システムSの運用前において、校正が補正される場合のみならず、レーダ送受信システムSの運用時において、校正が補正される場合であっても、励振振幅及び励振位相の校正値は、校正値メモリ25に書き込まれる。
【0061】
図6の中段では、励振位相補正部23は、遠方界領域に対応する上記所定距離Rと、遠方界領域に対応する上記他の距離RОと、フレネル領域に対応する上記他の距離RО’と、について、各第1仮想アンテナ素子Vi(i=0、2、3、4、6、7、12、14、15)の励振位相のずれ値ΔφSi(R)、ΔφSi(RО)、ΔφSi(RО’)を計算し、励振位相のずれ値メモリ26に書き込む(ステップS5)。KR積拡張補正部24は、KR積拡張を用いて信号の欠落を補間し、当該第1仮想アンテナ素子Viの励振位相のずれ値ΔφSi(R)、ΔφSi(RО)、ΔφSi(RО’)に基づいて、各第2仮想アンテナ素子Vi(i=1、5、8、9、10、11、13)の励振位相のずれ値ΔφSi(R)、ΔφSi(RО)、ΔφSi(RО’)を計算し、励振位相のずれ値メモリ26に書き込む(ステップS6)。ここで、励振位相のずれ値は、図4のΔφ、Δφ、Δφに対応する。そして、レーダ送受信システムSの運用前において、校正が補正される場合では、励振位相のずれ値は、ずれ値メモリ26に書き込まれ、レーダ送受信システムSの運用時において、校正が補正される場合では、励振位相のずれ値は、被観測反射体ROの検出毎に計算される。
【0062】
図6の下段では、励振位相補正部23は、遠方界領域に対応する上記所定距離Rと、遠方界領域に対応する上記他の距離RОと、フレネル領域に対応する上記他の距離RО’と、について、各第1仮想アンテナ素子Vi(i=0、2、3、4、6、7、12、14、15)の励振位相の校正値Δφ(R)に対する、当該第1仮想アンテナ素子Viの励振位相の補正値0、ΔφSi(RО)-ΔφSi(R)、ΔφSi(RО’)-ΔφSi(R)を計算し、励振位相の補正値メモリ27に書き込む(ステップS5)。KR積拡張補正部24は、KR積拡張を用いて信号の欠落を補間し、当該第1仮想アンテナ素子Viの励振位相の補正値0、ΔφSi(RО)-ΔφSi(R)、ΔφSi(RО’)-ΔφSi(R)に基づいて、各第2仮想アンテナ素子Vi(i=1、5、8、9、10、11、13)の励振位相の補正値0、ΔφSi(RО)-ΔφSi(R)、ΔφSi(RО’)-ΔφSi(R)を計算し、励振位相の補正値メモリ27に書き込む(ステップS6)。ここで、励振位相の補正値は、図4のΔφ-Δφに対応する。そして、レーダ送受信システムSの運用前において、校正が補正される場合では、励振位相の補正値は、補正値メモリ27に書き込まれ、レーダ送受信システムSの運用時において、校正が補正される場合では、励振位相の補正値は、被観測反射体ROの検出毎に計算される。
【0063】
このように、通常の広さの電波暗室において、各第1仮想アンテナ素子(及び各第2仮想アンテナ素子)の励振位相の校正値を計算したうえで、被観測反射体ROが位置する他の距離(遠方界領域でもよく、極近距離領域でもよい)において、各第1仮想アンテナ素子(及び各第2仮想アンテナ素子)の励振位相の補正値を計算することができる。なお、励振位相のずれ値及び補正値は、図6のように、距離ビン毎に計算してもよく、変形例として、複数の距離ビンを含む距離ブロック毎に計算してもよい。
【0064】
本開示の励振位相補正値メモリの内容を図7にも示す。図7の上段では、励振振幅位相校正部21は、アレイアンテナ装置1のフレネル領域に対応する上記所定距離Rについて、各第1仮想アンテナ素子Vi(i=0、2、3、4、6、7、12、14、15)の励振振幅及び励振位相の校正値ΔA(R)及びΔφ(R)を計算し、励振振幅位相の校正値メモリ25に書き込む(ステップS2)。KR積拡張校正部22は、KR積拡張を用いて信号の欠落を補間し、当該第1仮想アンテナ素子Viの励振振幅及び励振位相の校正値ΔA(R)及びΔφ(R)に基づいて、各第2仮想アンテナ素子Vi(i=1、5、8、9、10、11、13)の励振振幅及び励振位相の校正値ΔA(R)及びΔφ(R)を計算し、励振振幅位相の校正値メモリ25に書き込む(ステップS3)。ここで、励振振幅及び励振位相の校正値は、複素数ΔA(R)exp(jΔφ(R))としてもよい。そして、レーダ送受信システムSの運用前において、校正が補正される場合のみならず、レーダ送受信システムSの運用時において、校正が補正される場合であっても、励振振幅及び励振位相の校正値は、校正値メモリ25に書き込まれる。
【0065】
図7の中段では、励振位相補正部23は、フレネル領域に対応する上記所定距離Rと、遠方界領域に対応する上記他の距離RОと、フレネル領域に対応する上記他の距離RО’と、について、各第1仮想アンテナ素子Vi(i=0、2、3、4、6、7、12、14、15)の励振位相のずれ値ΔφSi(R)、ΔφSi(RО)、ΔφSi(RО’)を計算し、励振位相のずれ値メモリ26に書き込む(ステップS5)。KR積拡張補正部24は、KR積拡張を用いて信号の欠落を補間し、当該第1仮想アンテナ素子Viの励振位相のずれ値ΔφSi(R)、ΔφSi(RО)、ΔφSi(RО’)に基づいて、各第2仮想アンテナ素子Vi(i=1、5、8、9、10、11、13)の励振位相のずれ値ΔφSi(R)、ΔφSi(RО)、ΔφSi(RО’)を計算し、励振位相のずれ値メモリ26に書き込む(ステップS6)。ここで、励振位相のずれ値は、図4のΔφ、Δφ、Δφに対応する。そして、レーダ送受信システムSの運用前において、校正が補正される場合では、励振位相のずれ値は、ずれ値メモリ26に書き込まれ、レーダ送受信システムSの運用時において、校正が補正される場合では、励振位相のずれ値は、被観測反射体ROの検出毎に計算される。
【0066】
図7の下段では、励振位相補正部23は、フレネル領域に対応する上記所定距離Rと、遠方界領域に対応する上記他の距離RОと、フレネル領域に対応する上記他の距離RО’と、について、各第1仮想アンテナ素子Vi(i=0、2、3、4、6、7、12、14、15)の励振位相の校正値Δφ(R)に対する、当該第1仮想アンテナ素子Viの励振位相の補正値0、ΔφSi(RО)-ΔφSi(R)、ΔφSi(RО’)-ΔφSi(R)を計算し、励振位相の補正値メモリ27に書き込む(ステップS5)。KR積拡張補正部24は、KR積拡張を用いて信号の欠落を補間し、当該第1仮想アンテナ素子Viの励振位相の補正値0、ΔφSi(RО)-ΔφSi(R)、ΔφSi(RО’)-ΔφSi(R)に基づいて、各第2仮想アンテナ素子Vi(i=1、5、8、9、10、11、13)の励振位相の補正値0、ΔφSi(RО)-ΔφSi(R)、ΔφSi(RО’)-ΔφSi(R)を計算し、励振位相の補正値メモリ27に書き込む(ステップS6)。ここで、励振位相の補正値は、図4のΔφ-Δφに対応する。そして、レーダ送受信システムSの運用前において、校正が補正される場合では、励振位相の補正値は、補正値メモリ27に書き込まれ、レーダ送受信システムSの運用時において、校正が補正される場合では、励振位相の補正値は、被観測反射体ROの検出毎に計算される。
【0067】
このように、さらに狭めの電波暗室において、各第1仮想アンテナ素子(及び各第2仮想アンテナ素子)の励振位相の校正値を計算したうえで、被観測反射体ROが位置する他の距離(極近距離領域でもよく、遠方界領域でもよい)において、各第1仮想アンテナ素子(及び各第2仮想アンテナ素子)の励振位相の補正値を計算することができる。なお、励振位相のずれ値及び補正値は、図7のように、距離ビン毎に計算してもよく、変形例として、複数の距離ビンを含む距離ブロック毎に計算してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本開示のレーダアレイアンテナ校正装置、方法及びプログラムは、ミリ波等を適用して物標を検出する車載レーダ等において、(1)2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域のみならず極近距離領域においても、各アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができ、(2)MIMO及びKR積拡張を適用する2次元アレイアンテナ装置の遠方界領域のみならず極近距離領域においても、各仮想アンテナ素子の励振振幅及び励振位相を校正したうえで、サイドローブが小さいビームを所望方位角に形成することができる。
【符号の説明】
【0069】
S:レーダ送受信システム
1:アレイアンテナ装置
2:アレイアンテナ校正装置
T0、T1、T3:実在送信アンテナ素子
T2:非実在送信アンテナ素子
R0、R2、R3:実在受信アンテナ素子
R1:非実在受信アンテナ素子
D0~D3:直交分離処理部
V0、V2、V3、V4、V6、V7、V12、V14、V15:第1仮想アンテナ素子
V1、V5、V8、V9、V10、V11、V13:第2仮想アンテナ素子
21:励振振幅位相校正部
22:KR積拡張校正部
23:励振位相補正部
24:KR積拡張補正部
25:校正値メモリ
26:ずれ値メモリ
27:補正値メモリ
RC:校正用反射体
RO:被観測反射体
A0、A1:アンテナ素子
W0、W1:レーダ信号波面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7