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特開2024-157587配管施工支援装置、配管施工支援方法、および、配管施工支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157587
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】配管施工支援装置、配管施工支援方法、および、配管施工支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20241031BHJP
   G06F 113/14 20200101ALN20241031BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F113:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071990
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】522364206
【氏名又は名称】株式会社坂海工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】辻井 明宏
(72)【発明者】
【氏名】西田 成希
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA03
5B146DC05
5B146DE06
5B146DG02
5B146DG03
5B146EC09
(57)【要約】
【課題】予め設計された3次元CADデータを活用することで、施工現場で必要な施工情報を容易に得ることができる配管施工支援装置を提供する。
【解決手段】タブレット端末で構成される配管施工支援装置であって、配管プラントモデルの3次元CADデータファイルをインポートするインポート処理部と、配管プラントモデルに含まれる配管モデルに付随する配管属性データを補充するデータ補充処理部と、配管プラントモデルから選択した任意の構成要素を基準に基準面データを生成して表示する基準面生成処理部と、施工対象配管モデルの管軸心を示す管軸心データを生成する管軸心データ生成処理部と、基準面データと管軸心データに基づいて基準面から管軸心までの距離を算出し、基準面データと管軸心データと距離とを画面に施工支援画面として表示する施工支援データ生成処理部と、を備えている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タブレット端末で構成される配管施工支援装置であって、
所定の中間ファイルに変換され、配管モデルを含む配管プラントモデルの3次元CADデータファイルをインポートするインポート処理部と、
前記インポート処理部によりインポートした前記配管プラントモデルを画面に表示する表示処理部と、
前記配管モデルに付随する配管属性データのうち前記インポート処理部で未取得の配管属性データを補充するデータ補充処理部と、
前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した前記配管モデルの管軸心を示す管軸心データを生成する管軸心データ生成処理部と、
前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した任意の構成要素に基づいて配管施工のための基準を特定する基準データを生成し、前記画面に前記基準を前記配管プラントモデルと識別可能な状態で表示する基準生成処理部と、
前記基準データと前記管軸心データに基づいて前記基準から前記管軸心までの基準距離を算出し、前記基準データと前記管軸心データと前記基準距離とを前記画面に施工支援画面として表示する施工支援データ生成処理部と、
を備えている配管施工支援装置。
【請求項2】
前記画面に表示された前記配管モデルのうち、カメラ中心から所定範囲に存在する前記配管モデルの口径、流体種、材質の何れかを含む特定の属性情報を前記配管モデルの近傍に表示する属性表示処理部を備えている請求項1記載の配管施工支援装置。
【請求項3】
前記配管モデルに付随する前記配管属性データに基づいて、特定の配管モデルのみを選択して表示する特定配管表示処理部を備え、
前記特定配管表示処理部は、前記配管プラントモデルの全てを表示するか、前記特定の配管モデルのみを表示するかを切替可能に構成されている請求項1記載の配管施工支援装置。
【請求項4】
前記施工支援画面を含む任意の画面表示状態をロックして、新たな画面操作の受け付けを拒否する画面ロック処理部を備え、
前記画面ロック処理部は前記画面にロック状態であるかアンロック状態であるかを識別するための識別表示を行なう請求項1記載の配管施工支援装置。
【請求項5】
前記配管モデルに関連する仕様値を含むデータが規定されたデータファイルを読み込むファイル入力部と、
前記ファイル入力部で読み込まれた前記データファイルと各配管モデルとを関連付けて表示させる紐づけ処理部と、
を備えている請求項1記載の配管施工支援装置。
【請求項6】
タブレット端末で構成される配管施工支援方法であって、
所定の中間ファイルに変換され、配管モデルを含む配管プラントモデルの3次元CADデータファイルをインポートするインポート処理と、
前記インポート処理によりインポートした前記配管プラントモデルを画面に表示する表示処理と、
前記配管モデルに付随する配管属性データのうち前記インポート処理で未取得の配管属性データを補充するデータ補充処理と、
前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した前記配管モデルの管軸心を示す管軸心データを生成する管軸心データ生成処理と、
前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した任意の構成要素に基づいて配管施工のための基準を特定する基準データを生成し、前記画面に前記基準を前記配管プラントモデルと識別可能な状態で表示する基準生成処理と、
前記基準データと前記管軸心データに基づいて前記基準から前記管軸心までの基準距離を算出し、前記基準データと前記管軸心データと前記基準距離とを前記画面に施工支援画面として表示する施工支援データ生成処理と、
を実行する配管施工支援方法。
【請求項7】
前記画面に表示された前記配管モデルのうち、カメラ中心から所定範囲に存在する前記配管モデルの口径、流体種、材質の何れかを含む特定の属性情報を前記配管モデルの近傍に表示する属性表示処理を実行する請求項6記載の配管施工支援方法。
【請求項8】
前記配管モデルに付随する前記配管属性データに基づいて、特定の配管モデルのみを選択して表示するとともに、前記配管プラントモデルの全てを表示するか、前記特定の配管モデルのみを表示するかを切替可能な特定配管表示処理を実行する請求項6記載の配管施工支援方法。
【請求項9】
前記施工支援画面を含む任意の画面表示状態をロックして、新たな画面操作の受け付けを拒否するロック状態と、ロック状態であるかアンロック状態であるかを識別するために識別表示する画面ロック処理をさらに実行する請求項6記載の配管施工支援方法。
【請求項10】
前記配管モデルに関連する仕様値を含むデータが規定されたデータファイルを読み込む、読み込んだ前記データファイルと各配管モデルとを関連付けて表示させる紐づけ処理をさらに実行する請求項6記載の配管施工支援方法。
【請求項11】
タブレット端末で実行される配管施工支援プログラムであって、
所定の中間ファイルに変換され、配管モデルを含む配管プラントモデルの3次元CADデータファイルをインポートするインポート処理と、
前記インポート処理によりインポートした前記配管プラントモデルを画面に表示する表示処理と、
前記配管モデルに付随する配管属性データのうちインポート処理で未取得の配管属性データを補充するデータ補充処理と、
前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した前記配管モデルの管軸心を示す管軸心データを生成する管軸心データ生成処理と、
前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した任意の構成要素に基づいて配管施工のための基準を特定する基準データを生成し、前記画面に前記基準を前記配管プラントモデルと識別可能な状態で表示する基準生成処理と、
前記基準データと前記管軸心データに基づいて前記基準から前記管軸心までの基準距離を算出し、前記基準データと前記管軸心データと前記基準距離とを前記画面に施工支援画面として表示する施工支援データ生成処理と、
を実行するように構成されている配管施工支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管施工支援装置、配管施工支援方法、および、配管施工支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種のプラント設計に際して3次元CAD装置を用いて配管設計が行なわれている。
例えば、特許文献1には、配管の始点と終点との間を接続する配管ルートを生成する配管配置設計システムであって、配管配置設計に関する基本設計条件を示す配管配置基準情報と配管配置設計に関する詳細設計条件を示す詳細設計情報の少なくともいずれか一つを記憶する記憶部と、前記配管配置基準情報と前記詳細設計情報の少なくともいずれか一つに基づいて、前記配管ルートを生成するルート生成部と、を有する配管配置設計システムが提案されている。
このような配管配置設計システムによれば、数多くの制約条件を満たす配管ルートを自動生成することができ、設計負担が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-86310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、3次元CAD装置を用いて設計された配管プラントモデルに基づいて、実際の配管プラントを施工する場合には、設計された3次元CADデータを2次元CAD図面に変換し、さらに紙に印刷した2次元図面に基づいて、各種の配管の配置を確認し、現場で採寸して各種の配管やサポートを位置決めする必要がある。
【0005】
そのために、専用の図面変換プログラムをインストールしたコンピュータを用いて、3次元CADデータを2次元CAD図面に変換するという煩雑な作業が必要となり、施工現場にそのようなコンピュータやプリンタを搬入して作業を行なう場合には、設置スペースの確保など、さらに多くの工数や費用が発生するという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来の課題に鑑み、予め設計された3次元CADデータを活用することで、施工現場で必要な施工情報を容易に得ることができる配管施工支援装置、配管施工支援方法、および、配管施工支援プログラムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明による配管施工支援装置の第一の特徴構成は、タブレット端末で構成される配管施工支援装置であって、所定の中間ファイルに変換され、配管モデルを含む配管プラントモデルの3次元CADデータファイルをインポートするインポート処理部と、前記インポート処理部によりインポートした前記配管プラントモデルを画面に表示する表示処理部と、前記配管モデルに付随する配管属性データのうち前記インポート処理部で未取得の配管属性データを補充するデータ補充処理部と、前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した前記配管モデルの管軸心を示す管軸心データを生成する管軸心データ生成処理部と、前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した任意の構成要素に基づいて配管施工のための基準を特定する基準データを生成し、前記画面に前記基準を前記配管プラントモデルと識別可能な状態で表示する基準生成処理部と、前記基準データと前記管軸心データに基づいて前記基準から前記管軸心までの基準距離を算出し、前記基準データと前記管軸心データと前記基準距離とを前記画面に施工支援画面として表示する施工支援データ生成処理部と、を備えている点にある。
【0008】
施工現場に容易に搬入できるタブレット端末で配管施工支援装置が構成される。タブレット端末に備えたインポート処理部により、配管モデルや各種の機器を備えて構成される配管プラントモデルの3次元CADデータファイルがインポートされ、表示処理部により配管プラントモデルが画面に表示される。演算処理能力やメモリ容量が限られるタブレット端末を、特定の3次元CADデータファイルに制限されることなく汎用的に活用すべく、3次元CADデータファイルとして汎用の中間ファイルが用いられる。そのため、インポートされる配管の属性データが適切に取り込まれない場合も生じる。そのような場合に備えて、データ補充処理部により、配管モデルに付随する配管属性データのうちインポート処理部で未取得の配管属性データが補充処理される。
管軸心データ生成処理部では、配管プラントモデルからオペレータにより選択された配管モデルの管軸心を示す管軸心データが生成される。インポート処理で取り込めなかった場合に備えて管軸心データを補充するためである。
【0009】
基準生成処理部では、画面に表示された配管プラントモデルからオペレータにより選択された任意の構成要素に基づいて配管施工のための基準を特定する基準データが生成され、当該基準が配管プラントモデルと識別可能な状態で画面に表示される。基準は現場で配管の位置を測定するための基準となり。点や面で構成される。3次元CADデータに含まれる壁面や柱面、または壁芯や柱芯を基準に施工現場で配管の設置位置を測定する場合に、中間に存在する他のプラント設備が障害となって測定が困難な場合であっても、フレキシブルに基準を設置でき、現場で必要な寸法を容易に測定できるようになる。
【0010】
施工支援データ生成処理部では、基準面データと管軸心データに基づいて基準面から管軸心までの距離が算出され、基準面データと管軸心データと距離とが画面に施工支援画面として表示される。施工作業者は、タブレットに表示された施工支援画面を目視確認して、施工現場の基準面データに対応する基準面からの距離を測定して配管の設置位置を確認しつつ設置作業を効率的に進めることになる。
【0011】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記画面に表示された前記配管モデルのうち、カメラ中心から所定範囲に存在する前記配管モデルの口径、流体種、材質の何れかを含む特定の属性情報を前記配管モデルの近傍に表示する属性表示処理部を備えている点にある。
【0012】
属性表示処理部により、カメラ中心から所定範囲に存在する配管モデルに対して、口径、流体種、材質の何れかを含む特定の属性情報が表示されるため、画面に表示される主要な配管モデルの属性および属性の保持状態がオペレータに容易に把握できる。
【0013】
同第三の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記配管モデルに付随する前記配管属性データに基づいて、特定の配管モデルのみを選択して表示する特定配管表示処理部を備え、前記特定配管表示処理部は、前記配管プラントモデルの全てを表示するか、前記特定の配管モデルのみを表示するかを切替可能に構成されている点にある。
【0014】
特定配管表示処理部により、配管プラントモデルの全てを表示するか、配管属性データに基づいて特定配管モデルのみを表示するのかが切り替えられ、特定配管モデルとして表示することで、画面を見易くすることができる。
【0015】
同第四の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記施工支援画面を含む任意の画面表示状態をロックして、新たな画面操作の受け付けを拒否する画面ロック処理部を備え、前記画面ロック処理部は前記画面にロック状態であるかアンロック状態であるかを識別するための識別表示を行なう点にある。
【0016】
例えば、基準面と特定配管との位置関係が数値表示された画面に、施工作業者が不用意に接触すると表示状態が変化する虞がある。そのような場合でも、画面をロック状態に設定できれば、不用意に表示状態の変化を招くようなことが回避できる。そして、識別表示によりその状態がロック状態かアンロック状態であるかが容易に判断できる。
【0017】
同第五の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記配管モデルに関連する仕様値を含むデータが規定されたデータファイルを読み込むファイル入力部と、前記ファイル入力部で読み込まれた前記データファイルと各配管モデルとを関連付けて表示させる紐づけ処理部と、を備えている点にある。
【0018】
3次元CADデータファイルに含まれる各配管モデルについて、具体的な仕様値を含むデータが規定されたデータファイルがファイル入力部を介して読み込まれ、紐づけ処理部により各配管モデルと紐づけられる。その結果、任意の配管モデルを選択すると、そのモデルに対する仕様値などの詳細な情報が閲覧できるようになり、施工現場で各配管モデルに対応する部品の仕様値がタブレット上で確認できるようになる。
【0019】
本発明による配管施工支援方法の第一の特徴構成は、タブレット端末で構成される配管施工支援方法であって、所定の中間ファイルに変換され、配管モデルを含む配管プラントモデルの3次元CADデータファイルをインポートするインポート処理と、前記インポート処理によりインポートした前記配管プラントモデルを画面に表示する表示処理と、前記配管モデルに付随する配管属性データのうち前記インポート処理で未取得の配管属性データを補充するデータ補充処理と、前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した前記配管モデルの管軸心を示す管軸心データを生成する管軸心データ生成処理と、前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した任意の構成要素に基づいて配管施工のための基準を特定する基準データを生成し、前記画面に前記基準を前記配管プラントモデルと識別可能な状態で表示する基準生成処理と、前記基準データと前記管軸心データに基づいて前記基準から前記管軸心までの基準距離を算出し、前記基準データと前記管軸心データと前記基準距離とを前記画面に施工支援画面として表示する施工支援データ生成処理と、を実行する点にある。
【0020】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記画面に表示された前記配管モデルのうち、カメラ中心から所定範囲に存在する前記配管モデルの口径、流体種、材質の何れかを含む特定の属性情報を前記配管モデルの近傍に表示する属性表示処理を実行する点にある。
【0021】
同第三の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記配管モデルに付随する前記配管属性データに基づいて、特定の配管モデルのみを選択して表示するとともに、前記配管プラントモデルの全てを表示するか、前記特定の配管モデルのみを表示するかを切替可能な特定配管表示処理を実行する点にある。
【0022】
同第四の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記施工支援画面を含む任意の画面表示状態をロックして、新たな画面操作の受け付けを拒否するロック状態と、ロック状態であるかアンロック状態であるかを識別するために識別表示する画面ロック処理をさらに実行する点にある。
【0023】
同第五の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記配管モデルに関連する仕様値を含むデータが規定されたデータファイルを読み込む、読み込んだ前記データファイルと各配管モデルとを関連付けて表示させる紐づけ処理をさらに実行する点にある。
【0024】
本発明による配管施工支援プログラムの特徴構成は、タブレット端末で実行される配管施工支援プログラムであって、所定の中間ファイルに変換され、配管モデルを含む配管プラントモデルの3次元CADデータファイルをインポートするインポート処理と、前記インポート処理によりインポートした前記配管プラントモデルを画面に表示する表示処理と、前記配管モデルに付随する配管属性データのうちインポート処理で未取得の配管属性データを補充するデータ補充処理と、前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した前記配管モデルの管軸心を示す管軸心データを生成する管軸心データ生成処理と、前記画面に表示された前記配管プラントモデルから選択した任意の構成要素に基づいて配管施工のための基準を特定する基準データを生成し、前記画面に前記基準を前記配管プラントモデルと識別可能な状態で表示する基準生成処理と、前記基準データと前記管軸心データに基づいて前記基準から前記管軸心までの基準距離を算出し、前記基準データと前記管軸心データと前記基準距離とを前記画面に施工支援画面として表示する施工支援データ生成処理と、を実行するように構成されている点にある。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した通り、本発明によれば、予め設計された3次元CADデータを活用することで、施工現場で必要な施工情報を容易に得ることができる配管施工支援装置、配管施工支援方法、および、配管施工支援プログラムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)は配管施工支援装置のハードウェアの説明図、(b)は配管施工支援装置のソフトウェアで構成される機能ブロックの説明図である。
図2】配管施工支援装置で実行される配管施工支援方法の全体を示すフローチャートである。
図3】データ補充処理を示すフローチャートである。
図4】基準面設定処理を示すフローチャートである。
図5】施工支援データ生成処理を示すフローチャートである。
図6】画面ロック処理を示すフローチャートである。
図7】基準面設定処理の説明図である。
図8】施工支援データ生成処理の第1の態様の説明図である。
図9】施工支援データ生成処理の第1の態様の説明図である。
図10】管軸心データ生成処理の説明図である。
図11】配管施工支援装置の基本画面の説明図である。
図12】属性表示処理の説明図である。
図13】(a)はポップアップ表示されたレイヤー設定画面の説明図であり、(b)はレイヤー設定画面の詳細説明図である。
図14】(a)は基準作成画面の説明図であり、(b)は基準面の移動設定画面の詳細説明図である。
図15】(a)はポップアップ表示された基準一覧表示画面の説明図であり、(b)は基準一覧表示画面の詳細説明図である。
図16】(a)はポップアップ表示されたレイヤーのプロパティ表示画面の説明図であり、(b)はレイヤーのプロパティ表示画面の詳細説明図である。
図17】(a)は距離計測設定画面の説明図であり、(b)は距離計測設定画面の詳細説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明による配管施工支援装置、配管施工支援方法、および、配管施工支援プログラムを図面に基づいて説明する。
図1(a)には、配管施工支援装置1を構成するタッチパネル式のタブレット型コンピュータ(以下、「タブレット」と略記する。)のハードウェア構成が示され、図1(b)には、の本発明が適用される3次元CAD装置のハードウェア構成が示され、図1(b)には、タブレットにインストールされた配管施工支援プログラムが実行されることにより具現化される機能ブロックの構成が示されている。
【0028】
各種の配管プラントの施工現場に持ち込まれ、施工に携わる作業者が操作することで、施工作業を効率的に進めることを可能としたタブレットである。画面に表示されるアイコンなどを作業者が操作することにより、施工に必要な部材寸法などを演算表示させ、その結果に基づいて施工現場を測定することで配管やサポートの設置位置を確定させ、また施工に用いる部材情報を、画面表示を参照して確認しつつ作業を進めるために用いられる。施工現場の作業員は手袋を装着しているため、基本的にタッチペンで画面操作される。
【0029】
配管施工支援装置1は、配管施工支援プログラムを実行するCPU、距離演算などを実行するGPU、OSやアプリケーションプログラムなどを格納するメインメモリ、配管モデルやアイコンを表示する液晶表示画面を備えた出力装置、液晶表示画面上に配されたタッチパネル、タッチペン、必要に応じて画面表示されるキーボード、タブレットに接続可能なマウスやキーボードなどでなる入力装置、タブレットに装着可能な補助記憶装置としてのストレージなどを備えている。
【0030】
配管施工支援装置1はスタンドアロンタイプで構成してもよいし、端末として機能させるAPIがインストールされ、クラウドサーバと接続することによりクラウドサーバと一体で配管施工支援装置1としての機能が実現されるような態様で構成されたものであってもよい。
【0031】
配管施工支援装置1は、インポート処理部1A、表示処理部1B、属性表示処理部1C、データ補充処理部1D、管軸心データ生成処理部1E、施工支援データ生成処理部1F、ファイル入力部1G、紐づけ処理部1H、基準生成処理部1I、特定配管表示処理部1J、データ入出力処理部1K、画面ロック処理部1Lなどの機能ブロックを備えている。
【0032】
インポート処理部1Aは、専用の3次元CADで設計され、配管モデルを含む配管プラントモデルの3次元CADデータファイルに対応し、所定の中間ファイルに変換された3次元CADの中間データファイルをインポートする機能ブロックである。表示処理部1Bは、インポート処理部1Aによりインポートした配管プラントモデルを画面に表示処理する機能ブロックである。
【0033】
属性表示処理部1Cは、画面に表示された前記配管モデルのうち、カメラ中心から所定範囲に存在する配管モデルに対して、その口径、流体種、材質の何れかを含む特定の属性情報を画面に表示された当該配管モデルの近傍に表示する機能ブロックである。
【0034】
データ補充処理部1Dは、配管モデルに付随する配管属性データのうちインポート処理部1Aで得ることができなかった配管属性データを補充する機能ブロックである。管軸心データ生成処理部1Eは、画面に表示された配管プラントモデルから選択した配管モデルの管軸心を示す管軸心データを生成する機能ブロックである。インポート処理部1Aで得ることができなかった管軸心データを生成するために設けられている。
【0035】
基準生成処理部1Iは、画面に表示された配管プラントモデルから選択した任意の構成要素、例えば壁、柱、機器の表面などに基づいて配管施工のための基準を特定する基準データを生成し、基準を配管プラントモデルと識別可能な状態で画面に表示する機能ブロックである。基準として、点、線、面などが定義できる。施工支援データ生成処理部1Fは、3次元の基準データと管軸心データに基づいて基準から設置対象の配管の管軸心までの距離を算出し、基準から管軸心までの距離を画面に施工支援画面として表示する機能ブロックである。なお、配管の管軸心に代えて配管の上端または下端の座標を設定することも可能である。管軸心からZ軸方向に配管の半径だけ情報または下方にシフトさせることにより、配管の上端または下端の座標が求まる。
【0036】
ファイル入力部1Gは、配管モデルに関連する仕様値を含むデータファイルを読み込む機能ブロックである。紐づけ処理部1Hは、ファイル入力部1Gで読み込まれたデータファイルと各配管モデルとを関連付けて表示させる機能ブロックである。データファイルとして例えばエクセルファイルやPDFファイルが含まれる。
【0037】
特定配管表示処理部1Jは、配管モデルに付随する配管属性データに基づいて、特定の配管モデルのみを選択して表示する機能ブロックであり、配管プラントモデルの全てを表示するか、当該特定の配管モデルのみを表示するかを切替操作可能に構成されている。
【0038】
データ入出力処理部1Kは、補助記憶装置との間でデータをやり取りする機能ブロックで、上述した各機能ブロックにより実行されたデータを補助記憶装置に書込み、或いは上述した各機能ブロックにより必要とされるデータを補助記憶装置から読み出す。
【0039】
3次元CAD装置として様々な種類のアプリケーションプログラムが存在し、3次元CADデータファイルのデータフォーマットも様々である。そのため、全ての3次元CAD装置で設計された配管プラントモデルのデータファイルを当該配管施工支援装置1に取り込むのは困難である。そのため、専用の3次元CAD装置で設計された配管プラントモデルのデータファイルを汎用の中間ファイルに変換したうえで、当該配管施工支援装置1にインポートされる。
【0040】
そのような中間ファイルとして、それぞれ情報の記述形式が定められたDXFフォーマット、IFCフォーマットのデータファイルが好適に採用される。なお、本発明に使用可能な中間ファイルは、これらに限定されるものではない。当該配管施工支援装置1における演算負荷の軽減のため、インポート可能なデータは制限されている。なお、配管プラントモデルを構成する各配管モデルはレイヤー単位で識別可能に管理されている。
【0041】
DXFは、AutoDesk社が開発したAutoCADバージョン互換用の拡張子であり、主に2次元向けの図面情報や図形情報(平面形状)を保持しているが、立体図形情報も保持できる。ただし、付加情報はレイヤーデータや色データ等の図面に類する部分が多く付加されている。
【0042】
DXFフォーマットでは、配管モデルの中心座標データを含むデータとして、POLYLINE[ポリライン]、INSERT[ブロック挿入]、3DFACE[3D面]、LINE[線分]、3DSOLID[3Dソリッド]、配管モデルの中心座標データを含まないデータとして、LAYER[画層名]、COLOR[色番号]がインポート可能に構成されている。しかし、ACAD_PROXY_ENTITY[プロキシ図形]、ARC[円弧]、ATTDEF[属性定義]、ATTRIB[属性]、BODY[ボディ]、CLRCLE[円]などのデータは読み込まれない。
【0043】
また、IFCは、立体図形情報(柱状物や円筒等)に加え、建築的情報(対象が配管や壁、鋼材であるか、材質や規格は何か等の属性情報)が内包された建築系CAD向け拡張子であり、1つのパーツデータに複数の属性情報が付加されている。
【0044】
IFCフォーマットのデータでは、配管モデルの中心座標データを含むデータとしてレイヤー、配管モデルの中心座標データを含まないデータとして、3D形状、色情報がインポート可能に構成されている。しかし、2D形状(線)は読み込まれない。
【0045】
元の3次元CADに設定されたデータの中で、拡張子にて定められた記述形式ではない固有のデータ、例えば各部材のJIS規格などの固有のデータは、3次元CADからデータが出力されずに欠落する場合があるのである。また、拡張子に記述形式自体はサポートされていても3次元CADがそのデータを出力するように設定していない場合、もしくはデータの出力に対応していない場合は、データが欠落するということもあるのである。
【0046】
3次元CADデータファイルとして汎用の中間ファイルが用いられ、インポートされる配管の属性データが制限される場合に備えて、データ補充処理部1Dにより、配管モデルに付随する配管属性データのうちインポート処理で未取得の配管属性データがオペレータの操作を介して補充処理される。
【0047】
図11には、表示処理部1Bで処理される表示内容を含む操作画面が例示されている。画面には、3次元配管プラントモデルが表示され、画面の上下左右の枠の近傍に各種のアイコンが表示されている。
【0048】
「ファイル」アイコンによりファイルの読込み/書込み処理が起動され、「設定」アイコンによりオプション画面に切替わる。「Undo」「Redu」アイコンにより処理の復帰と進行が制御される。「視点指示キューブ」アイコンで正面図、平面図などの六面図の切替えが行なわれ、「投射投影」アイコン(投影法アイコンと称する。)により画面の投影法の変更が行われる。投影法アイコンでは平行投影(パースの効いていない投影法)と透視投影(パースの効いている投影法)の切替えが可能になる。「移動」アイコンで移動処理、「回転」アイコンで回転処理、「ズーム」アイコンで拡大縮小処理が実行される。表示画面の中心がカメラ(座標)中心となり、「移動」アイコンや「回転」アイコンなどの操作によりカメラ中心の周りに視認される3次元配管モデルが変化する。
【0049】
「レイヤー」アイコンで各モデルを定義するレイヤーの一覧(図13(b)参照。)がポップアップ表示され(図13(a)参照。)、「基準一覧」アイコンで基準の一覧(図13(b)参照。)がポップアップ表示され(図15(a)参照。)、「プロパティ」アイコンによりプロパティ(図16(b)参照。)がポップアップ表示され(図16(a)参照。)、「画面ロック」アイコンで画面の表示状態がロックされるかアンロックされるか切替えられる。「基準作成」アイコンで基準(基準点、基準面)の作成画面が表示され(図14(a),(b)参照。)、「距離計測」アイコンで基準と配管モデルとの距離が算出される(図17(a),(b)参照。)。
【0050】
[配管施工支援処理の全体]
図2には、配管施工支援装置1により実行される配管施工支援方法の処理手順が示されている。
タブレットに電源が投入されて、配管施工支援プログラムが起動すると(SA1)、これから開始する配管施工支援が新規の配管施工支援プロジェクトであるか、仕掛中の配管施工支援プロジェクトであるかが画面操作により選択され(SA2)、仕掛中の配管施工支援プロジェクトであれば、補助記憶装置である記憶部に格納されているプロジェクトデータが読み出される(SA8)。
【0051】
新規の配管施工支援プロジェクトであれば、新規の3次元CADの中間ファイルがインポート処理され(SA3)、さらに、各配管モデルの具体的な仕様値や設計値などを示す各種のデータファイルが読み込まれる(SA4)。図12図16に示すように、画面に表示された配管プラントモデルの属性表示状態に基づいて属性情報の有無がオペレータにより確認され(SA5)、属性情報が欠落している場合には、オペレータにより属性情報が補充され(SA6)、記憶部に新たなプロジェクトデータとして識別可能に格納される(SA7)。なお、配管属性の補充処理など、不足情報の補充処理は、図3を参照して後述する。
【0052】
続いて、基準生成処理が実行されて、画面に表示された配管プラントモデルからオペレータにより選択された任意の構成要素を基準に配管施工のための基準面を特定する基準データが生成され、生成された基準が配管プラントモデルと識別可能な状態で画面に表示される(SA9)。基準は施工現場で配管の位置を測定するための基準となる。3次元CADデータに含まれる壁芯や柱芯を基準に測定する場合に、他のプラント設備が障害となって測定が困難な場合でも基準を適宜設定できるため、施工現場でフレキシブルに対処できるようになる。
【0053】
続いて、配管モデル選択処理が実行されて(SA10)、選択された配管モデルと基準面との間の寸法が算出されて表示される(SA11)。施工に必要な配管寸法の全ての確認が終了する迄、ステップSA8からステップSA10の各処理が繰り返される(SA12)。必要な全ての寸法の表示が終了すると、配管寸法を含めた処理済みのデータが検証データなどとして記憶部に記憶される(SA13)。
【0054】
[配管属性の補充処理]
ステップSA5からステップSA7の配管属性の補充処理について、図3に基づいてさらに説明する。これらの処理は、タブレットが施工現場に搬入される前に実行される処理である。表示処理部1Bで実行される表示処理により、画面に3Dオブジェクトである配管プラントモデルが表示され(SB1)、個々の配管モデルと仕様データファイルなどとの関連付け処理が実行される(SB2)。個々の配管モデルはレイヤー単位で管理され、各レイヤーに対応する配管モデルの仕様データファイルとのリンク付け(ファイルパスの設定)がなされる。
【0055】
続いて属性表示処理が実行される(SB3)。図12には属性表示処理の一例が示されている。画面に表示された配管モデルのうち、カメラ中心から所定範囲(この例では5mの円の内側)に存在する配管モデルの口径、流体種、材質の何れかを含む特定の属性情報が配管モデルの近傍に表示される。属性表示処理により、カメラ中心から所定範囲に存在する施工対象配管モデルに対して、口径、流体種、材質の何れかを含む特定の属性情報が表示されるため、表示内容(属性が表示されているか空欄であるか)に基づいて配管モデルの属性および属性の保持状態がオペレータに把握できる。
【0056】
「投射投影」アイコン、「移動」アイコン、「回転」アイコンなどを操作して、配管プラントモデルの表示状態を切替え操作することで、各配管の属性を表示処理させることができる。また、配管モデルを個々に選択操作することで、各配管の属性を表示処理させることができる。
【0057】
図16には、各配管モデルのプロパティ画面が例示されている。配管モデルを選択して、「プロパティ」アイコンを操作すると、レイヤーが表示され、例示するように、インポートされていない属性データは空欄となるので、属性情報の欠落状態がオペレータに把握される。(SB3)。
【0058】
属性情報の欠落があった配管に対して(SB4)、口径、流体(配管内を流れる流体種)を補充するとともに(SB5)、材質・保温材料・保温厚の各属性情報を入力する(SB6)。さらに、管軸心データが欠落している場合には、管軸心データ生成処理が実行されて、配管プラントモデルからオペレータにより選択された配管モデルの管軸心を示す管軸心データが生成される(SB7)。このようにして、全配管モデルに対して必要は属性データの補充が終了すると(SB8)、補充後のプロジェクトデータを記憶部に書き込む(SB9)。補充される属性データはオペレータが、配管仕様書や元の3次元CADデータを参照することで得られる。
【0059】
図10には、画面に表示されたXYZのローカル座標系に描かれた配管プラントモデルからオペレータにより選択された床面と平行に配される配管モデルが例示されている。当該配管モデルの管軸心を求めるべく、当該配管モデルと直交する面が生成され、当該面に位置する配管モデルの断面Aが生成され、配管モデルの断面Aの中心座標が配管の管軸心データとして算出される。配管モデルの口径は属性データにより定まっているため、口径から断面Aの中心座標が算出される。この例では中心座標からZ軸方向に半径の値だけ加算すると配管モデルの上端座標が求まり、Z軸方向に半径の値だけ減算すると配管モデルの下端座標が求まる。床面と垂直に配される配管モデルであっても、同様に床面と平行な面に形成される配管モデルの断面から中心座標が求まる。
【0060】
[基準面設定処理]
図4には、面を基準とする場合の基準設定処理が示されている。表示処理部1Bで実行される表示処理により、画面に配管プラントモデルが表示された状態で(SC1)、任意の構成要素を選択すると(SC2)、選択した点が属する構成要素の平面に基準面が定義され、選択した構成要素の平面に定義されている法線方向が基準面の法線方向となる(SC3)。基準となる構成要素は、配管モデル以外の任意のモデルである。例えば、壁面であったり柱であったり機器のパネル面などである。
【0061】
基準面として問題無ければ(SC4,OK)、基準面として確定させて基準面リストに記録し(SC6)、問題があれば(SC4,NG)、基準面を法線方向に移動させる(SC5)。基準面として問題がある場合とは、基準面から設置対象となる配管モデルとの距離が、他の機器などの障害物により実測できないような場合や、基準面から設置対象となる配管モデルとの距離が非常に長く、簡単に実測できないような場合をいう。
【0062】
図14には、X軸を通りZ軸方向に延びる基準面をその法線方向に移動させるための案内画面が例示されている。基準面が選択されると、基準面を定義する入力画面がポップアップ表示され、基準面の名称の入力とともに、移動距離の入力が案内される。移動量を直接に数値入力するか、矢印を複数回タップ操作することで、所定値を単位に移動値が加算入力される。
【0063】
各配管モデルの施工に対して必要となる基準面が全て設定できるまでステップSC2からステップSC6の処理を繰返し(SC7)、終了すると記憶部に基準面の設定データを記憶する(SC8)。なお、各配管を施工する度に対応する基準面を設定し、後述の配管施工寸法表示処理を実行するように構成してもよい。
【0064】
図15には、「基準一覧」アイコンを操作することによりポップアップ表示される基準一覧画面が示されている。X,Y,Z軸方向に沿う複数の基準のリストが表示されている。当該リストの左端の表示アイコンを操作することで、対応する基準を表示または非表示するように切り替えることができ、固有の名称を登録することができる。また、右端のごみ箱を操作することにより基準を削除することも可能となる。
【0065】
[配管施工寸法表示処理]
図5には、配管施工寸法表示処理が示されている。配管プラントモデルが表示された状態で(SD1)、施工対象となる配管モデルを選択し(SD2)、当該配管モデルに対する基準を選択すると(SD3)、基準と配管モデルの相対寸法が算出されて(SD4)、基準から配管モデルまでの配管寸法が表示される(SD5)。表示された配管寸法に基づいて施工現場を実測することにより、配管の設置位置が決定される。
【0066】
必要な配管モデルに対して各基準面からの寸法が算出されるまで、ステップSD2からステップSD5の処理が繰り返され(SD6)、終了すると記憶部に算出した寸法データを記憶する(SD7)。
【0067】
図8には、基準が柱の一側面に選択された点である場合の配管施工寸法表示処理が例示されている。選択された配管モデルの管軸心上の指定点と基準点との直線距離およびXYZの各成分距離が演算されて表示される。タブレットに表示された直線距離およびXYZの各成分距離に対応して、施工現場では対応する柱の基準点からXYZの各成分距離および直線距離を実測して配管の施工位置を決定する。
【0068】
図9には、基準が面として設定された場合の配管施工寸法表示処理が例示されている。選択された配管モデルの管軸心上の指定点と基準面との直線距離が演算されて表示される。タブレットに表示された直線距離に対応して、施工現場では対応する基準面から直線距離を実測して配管の施工位置を決定する。
[特定配管表示処理]
図8図9に示すように、基準と配管モデルとの距離情報が表示される際に、他の配管モデルや機器などの同時に表示されていると、非常に見辛くなる。そこで、配管モデルに付随する配管属性データに基づいて、特定の配管モデルのみを選択して表示するとともに、配管プラントモデルの全てを表示するか、特定の配管モデルのみを表示するかを切替可能な特定配管表示処理を実行するように構成されている。
【0069】
特定配管表示処理部により、配管プラントモデルの全てを表示するか、配管属性データに基づいて特定配管モデルのみを表示するのかが切り替えられ、特定配管モデルとして施工対象配管のみを表示することで、画面を見易くすることができる。
【0070】
[画面ロック処理]
例えば、図8図9に示すように、基準と配管モデルとの距離情報が表示された画面に、誤って何らかの操作がなされると、その後の作業継続が困難になる虞がある。そこで、誤った操作の受け付けを排除するロック状態と、操作の受け付けを許容するアンロック状態との間で状態を切替える画面ロック処理が実行可能に構成されている。
【0071】
図6に示すように、画面ロックアイコンが所定時間継続して操作されると(SE1,SE2)、画面ロック状態であるか否かが判断され(SE3)、画面ロック状態でなければ(SE3,N)、画面ロック状態に移行し(SE4)、画面ロック状態である旨の表示を行なう(SE5)。画面ロック状態であれば(SE3,Y)、画面アンロック状態に移行し(SE6)、画面アンロック状態である旨の表示を解除する(SE7)。例えば画面ロックアイコンの表示色を切り替えることにより、画面ロック状態であるか画面アンロック状態であるかを識別できるようにすることができる。識別表示はアイコンの表示色の切替に限るものではなく、アイコンの点滅と点燈の切替や状態を文字で表示するメッセージ表示など適宜設定
【0072】
以上説明したように、本発明による配管施工支援プログラムは、上述のタブレット端末で実行される配管施工支援プログラムであって、所定の中間ファイルに変換され、配管モデルを含む配管プラントモデルの3次元CADデータファイルをインポートするインポート処理と、インポート処理によりインポートした配管プラントモデルを表示する表示処理と、配管モデルに付随する配管属性データのうちインポート処理で未取得の配管属性データを補充するデータ補充処理と、画面に表示された配管プラントモデルから選択した配管モデルの管軸心を示す管軸心データを生成する管軸心データ生成処理と、画面に表示された配管プラントモデルから選択した任意の構成要素を基準に配管施工のための基準を特定する基準データを生成し、画面に基準を配管プラントモデルと識別可能な状態で表示する基準生成処理と、基準データと管軸心データに基づいて基準から管軸心までの基準距離を算出し、基準データと管軸心データと基準距離とを画面に施工支援画面として表示する施工支援データ生成処理と、を実行するように構成されている。
【0073】
配管施工支援プログラムは、画面に表示された配管モデルのうち、カメラ中心から所定範囲に存在する配管モデルの口径、流体種、材質の何れかを含む特定の属性情報を配管モデルの近傍に表示する属性表示処理を実行するように構成されている。
【0074】
配管施工支援プログラムは、配管モデルに付随する配管属性データに基づいて、特定の配管モデルのみを選択して表示するとともに、配管プラントモデルの全てを表示するか、特定の配管モデルのみを表示するかを切替可能な特定配管表示処理を実行するように構成されている。
【0075】
配管施工支援プログラムは、施工支援画面を含む任意の画面表示状態をロックして、新たな画面操作の受け付けを拒否するロック状態と、ロック状態であるかアンロック状態であるかを識別するために識別表示する画面ロック処理をさらに実行するように構成されている。
【0076】
配管施工支援プログラムは、配管モデルに関連する仕様値を含むデータが規定されたデータファイルを読み込む、読み込んだ前記データファイルと各配管モデルとを関連付けて表示させる紐づけ処理をさらに実行するように構成されている。
【0077】
上述した実施形態は本発明の一態様に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏する範囲で各部の具体的な構成は適宜変更することができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1:配管施工支援装置
1A:インポート処理部
1B:表示処理部
1C:属性表示処理部
1D:データ補充処理部
1E:管軸心データ生成処理部
1F:施工支援データ生成処理部
1G:ファイル入力部
1H:紐づけ処理部
1I:基準面生成処理部
1J:特定配管表示処理部
1K:データ入出力処理部
1L:画面ロック処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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