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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157597
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】天井搬送車
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B65G1/04 531D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072018
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃士
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022AA08
3F022BB09
3F022CC02
3F022DD01
3F022EE05
3F022KK12
3F022LL12
3F022LL14
3F022MM51
(57)【要約】
【課題】保持部に供給する電圧を安定化させる天井搬送車を提供する。
【解決手段】天井軌道Rに沿って走行する本体部5と、導電部材30を有する吊り下げ部材8と、前記本体部5から前記吊り下げ部材8によって吊り下げられる昇降部9と、を備え、前記本体部5は、前記導電部材30に接続される電源装置10を備え、前記導電部材30は、前記電源装置10からの電圧を前記昇降部9に供給し、前記昇降部9は、前記導電部材30から供給された電圧を昇圧する昇圧装置41と、前記昇圧装置41によって昇圧された電圧Vsによって動作して物品100を保持する保持部42と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井軌道に沿って走行する本体部と、
導電部材を有する吊り下げ部材と、
前記本体部から前記吊り下げ部材によって吊り下げられる昇降部と、
を備え、
前記本体部は、前記導電部材に接続される電源装置を備え、
前記導電部材は、前記電源装置からの電圧を前記昇降部に供給し、
前記昇降部は、
前記導電部材から供給された電圧を昇圧する昇圧装置と、
前記昇圧装置によって昇圧された電圧によって動作して物品を保持する保持部と、
を備える、天井搬送車。
【請求項2】
前記保持部に保持された前記物品の下側に対して進退可能に設けられている落下防止部材と、
前記電源装置から出力された電圧によって動作して前記落下防止部材を進退させる駆動装置と、
を備える、
請求項1に記載の天井搬送車。
【請求項3】
前記昇圧装置は、前記導電部材から供給された電圧を所定電圧に昇圧し、
前記所定電圧は、前記電源装置の出力電圧と同等の電圧である、
請求項1に記載の天井搬送車。
【請求項4】
非接触給電によって交流電力を受電し、受電した前記交流電力を直流電力に変換する受電装置を備え、
前記電源装置は、前記受電装置が受電した前記直流電力を所定の直流電力に変換する電力変換器である、
請求項1に記載の天井搬送車。
【請求項5】
前記保持部は、複数の爪部で前記物品を把持することで当該物品を保持し、
前記昇降部は、
前記複数の爪部が開いているか否かを検知する第1センサと、
前記保持部の位置が前記複数の爪部で前記物品を把持可能な位置であるか否かを検知する第2センサと、
を有し、
前記第1センサ及び前記第2センサは、前記昇圧装置で昇圧した電圧によって作動する、
請求項1に記載の天井搬送車。
【請求項6】
前記昇降部は、前記本体部から複数の前記吊り下げ部材によって吊り下げられ、
前記導電部材は、前記複数の前記吊り下げ部材のいずれかに設けられる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の天井搬送車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
天井軌道に沿って走行する本体部と、スチールベルトなどの吊り下げ部材を介して本体部から吊り下げられている昇降台とを備える天井走行車が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この昇降台には、物品(例えば、容器)を保持する保持部が固定されており、本体部から吊り下げ部材を介して電圧が保持部に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7-16389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吊り下げ部材による電圧降下のため、保持部に供給される電圧が安定しない場合がある。従って、保持部に供給される電圧の安定化が求められる。
【0005】
本発明は、保持部に供給する電圧を安定化させる天井搬送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る天井搬送車は、天井軌道に沿って走行する本体部と、導電部材を有する吊り下げ部材と、本体部から吊り下げ部材によって吊り下げられる昇降部と、を備え、本体部は、導電部材に接続される電源装置を備え、導電部材は、電源装置からの電圧を昇降部に供給し、昇降部は、導電部材から供給された電圧を昇圧する昇圧装置と、昇圧装置によって昇圧された電圧によって動作して物品を保持する保持部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様に係る天井搬送車は、吊り下げ部材から供給された電圧を昇圧装置によって昇圧し、その昇圧した電圧を把持部に供給するため、把持部に供給する電圧を安定化させることができる。
【0008】
上記態様に係る天井搬送車によれば、保持部に保持された物品の下側に対して進退可能に設けられている落下防止部材と、電源装置から出力された電圧によって動作して落下防止部材を進退させる駆動装置と、を備えてもよい。このような構成によれば、安定して落下防止部材を動作させることができる。
【0009】
上記態様に係る天井搬送車によれば、昇圧装置は、導電部材から供給された電圧を所定電圧に昇圧し、所定電圧は、電源装置の出力電圧と同等の電圧であってもよい。このような構成によれば、昇圧装置は、導電部材による電圧降下分を昇圧し、把持部に供給する電圧を安定化させることができる。
【0010】
上記態様に係る天井搬送車によれば、非接触給電によって交流電力を受電し、受電した交流電力を直流電力に変換する受電装置を備え、電源装置は、受電装置が受電した直流電力を所定の直流電力に変換する電力変換器であってもよい。
【0011】
上記態様に係る天井搬送車によれば、保持部は、複数の爪部で物品を把持することで当該物品を保持し、昇降部は、複数の爪部が開いているか否かを検知する第1センサと、保持部の位置が複数の爪部で物品を把持可能な位置であるか否かを検知する第2センサと、を有し、第1センサ及び第2センサは、昇圧装置で昇圧した電圧によって作動してもよい。このような構成によれば、第1センサ及び第2センサを安定して作動させることができる。また、上記態様に係る天井搬送車によれば、昇降部は、本体部から複数の吊り下げ部材によって吊り下げられ、導電部材は、複数の吊り下げ部材のいずれかに設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る天井搬送車の模式図である。
図2】本実施形態に係る天井搬送車の模式図である。
図3】本実施形態に係る天井搬送車の主要な電気系統を示す図である。
図4】本実施形態に係る昇降駆動部及び昇降部の模式図である。
図5】本実施形態に係る昇降台の上面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定されない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。また、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されるなど、実際の製品とは、形状、寸法が異なる場合がある。
【0014】
図面において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する場合がある。XYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面における一方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をY方向と表記する。また、XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向とは反対の方向が-方向であるとして説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る天井搬送車1を-Y方向側から見た模式図である。図1は、天井搬送車1が容器100を把持して収容空間AS内に容器100を収容している様子を示す。図2は、天井搬送車1が容器100を下ろす様子を示す模式図である。図3は、本実施形態に係る天井搬送車1の主要な電気系統を示す図である。
【0016】
天井搬送車1は、クリーンルームの天井などの床面より高い位置に設けられる軌道Rに沿って走行し、容器100を収容空間AS内で吊り下げた状態で搬送する。天井搬送車1は、例えば、処理装置と容器保管装置との間、あるいは2つの処理装置の間などにおいて、容器100の搬送に用いられる。なお、図1におけるX方向は、天井搬送車1の走行方向である。また、図1におけるZ方向は、天井搬送車1の鉛直方向である。図1におけるY方向は、天井搬送車1の幅方向である。
【0017】
処理装置は、例えば、成膜装置、コーター・ディベロッパ、露光装置、エッチング装置などであり、デバイス(例、半導体デバイス)を製造する過程で各種処理を施す。上記容器保管装置は、例えば、容器100を搬送する搬送経路に配置され、容器100を一時的に保管する。上記容器保管装置は、例えば、天井の近傍に配置される。容器100は、例えば、半導体素子の製造に用いられるウエハ又はレチクルなどを収容する。
【0018】
容器100は、半導体ウエハなどの被収容物を容器100の内部へ搬入するための開口を備える。この開口は、鉛直方向と平行に配置される。容器100は、開口が幅方向(図1では-Y方向)に向くように収容空間AS内に配置される。容器100は、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF Pod、又はレチクルPodである。なお、容器100は、物品の一例である。
【0019】
天井搬送車1を軌道Rに沿って走行させたり、容器100を保持させたりするためには天井搬送車1に対して電力供給が必要である。本実施形態では、非接触給電設備NEから非接触で天井搬送車1に電力が供給される。非接触給電設備NEは、例えば、軌道Rの下方に設けられており、軌道Rに沿って敷設された給電フレームや給電フレームに支持された給電線などを有する。
【0020】
天井搬送車1は、例えば、走行部2と、連結部3aと、支持部3bと、受電装置4と、本体部5と、カバー6a,カバー6bと、容器落下防止機構7と、吊り下げ部材8と、昇降部9とを備える。
【0021】
走行部2は、車輪2aと、走行駆動部2bとを備える。車輪2aは、軌道Rに接するように配置され、走行駆動部2bの駆動力により回転駆動する。走行駆動部2bは、天井搬送車1を走行させるための駆動力を発生させる。走行駆動部2bは、例えば、リニアモータ又は回転モータなどの走行モータを有する。また、走行駆動部2bは、ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダを有する。走行駆動部2bは、ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにより検出された車輪2aの回転数などの検出結果に基づいてリニアモータ又は回転モータを制御し、天井搬送車1の速度あるいは停止位置の制御を行う。
【0022】
なお、走行部2は、ガイドローラ及び複数の分岐ローラを有してもよい。走行部2は、軌道Rの分岐部に差し掛かると分岐ローラを駆動させることで天井搬送車1を主軌道または分岐軌道で選択的に走行させることができる。
【0023】
連結部3aは、走行駆動部2bと支持部3bとを連結する。例えば、連結部3aは、一端が走行駆動部2bに接続されており、他端が支持部3bに接続されている。支持部3bは、水平面に沿って配置され、本体部5を支持する。
【0024】
受電装置4は、非接触給電設備NEから非接触でAC電力を受電する。受電装置4は、例えば、連結部3aに設けられている。非接触給電設備NEから受電装置4への非接触給電の方式は、電磁誘導方式、磁界(電界)共鳴方式、電界結合方式、及び電磁波方式のいずれかの方式を採用することができる。受電装置4は、受電したAC電力を整流することで直流電力を取得する。なお、受電装置4は、整流した直流電力を平滑する平滑コンデンサを有してもよい。受電装置4は、本体部5に接続されており、整流した直流電力を本体部5に供給する。受電装置4は、例えば、受電コイルを有しており、上記給電線を流れる電流(高周波電流)によって生じた磁界により当該受電コイルに生じた誘導電流を整流することで交流電力を直流電力に変換する。
【0025】
本体部5は、連結部3aを介して走行駆動部2bに連結されており、軌道Rに沿って走行する。本体部5は、例えば、電源装置10と、昇降駆動部11とを有する。
【0026】
電源装置10は、受電装置4と電気的に接続されている。電源装置10は、受電装置4から供給される直流電力を昇圧又は降圧する。電源装置10は、例えばDCDCコンバータなどの電力変換器である。電源装置10は、受電装置4からの直流電力の電圧を所定の直流電圧(出力電圧)Vdに変換する。具体的には、DCDCコンバータである電源装置10は、受電装置4から入力される直流電力Pdの電圧を降圧することで所定の出力電圧Vdを生成する。出力電圧Vdは、例えば、DC24[V]である。なお、電源装置10から出力された出力電圧Vdを、上記分岐ローラを駆動させるための駆動源として用いてもよい。例えば、本体部5の内部に分岐ローラを駆動させるモータなどの駆動装置を有し、この駆動装置は、電源装置10から出力電圧Vdが供給され、供給された出力電圧Vdによって動作して分岐ローラを駆動する。
【0027】
昇降駆動部11は、所定の速度で昇降部9を降下又は上昇させたり、昇降部9を目標の高さに保持したりする。昇降部9は、本体部5から複数の吊り下げ部材8によって吊り下げられている。昇降駆動部11は、例えばホイストであって、図2に例示するように複数の吊り下げ部材8を繰り出すことにより保持部42を下降させる。また、昇降駆動部11は、複数の吊り下げ部材8を巻き取ることにより昇降部9を上昇させる。
【0028】
図4は、昇降駆動部11及び昇降部9の模式図である。図4に示すように、昇降駆動部11は、例えば、1つ以上の回転体20と、昇降モータ21とを備える。回転体20は、例えば外周に吊り下げ部材8のための巻取り面を有する円筒形状のドラムである。昇降モータ21は、回転体20を回転駆動して複数の吊り下げ部材8の巻き取り及び繰り出し(巻下げ)を行う電動モータである。なお、昇降駆動部11は、例えば、複数の吊り下げ部材8を支持するプーリなどのローラを有してもよい。
【0029】
吊り下げ部材8は、一端が昇降駆動部11に接続され、他端が昇降部9に接続されている。吊り下げ部材8は、例えば、ベルトである。本実施形態では、昇降部9は、3つの吊り下げ部材8によって本体部5から吊り下げられている。ただし、吊り下げ部材8の数には特に限定されず、4つ以上であってもよい。昇降部9を吊り下げている複数の吊り下げ部材8のうち、少なくとも1つの吊り下げ部材8は、導電部材30を有する。
【0030】
導電部材30は、電源装置10からの出力電圧Vdを昇降部9に供給する。導電部材30は、吊り下げ部材8の内部に設けられている。すなわち、昇降部9を吊り下げている複数の吊り下げ部材8のうち、少なくとも1つの吊り下げ部材8の内部を導電部材30が通っている。この導電部材30は、一端が電源装置10の出力端子に電気的に接続され、他端が昇降部9の昇圧装置41に電気的に接続されている。なお、導電部材30は、例えば、導線である。導電部材30は、例えば、電線の導体部分であってもよい。
【0031】
なお、本体部5は、昇降駆動部11を水平面内おける幅方向に移動させる水平駆動部を有してもよい。本体部5は、水平面内で昇降駆動部11を回転させる回転駆動部を有してもよい。本体部5は、水平駆動部及び回転駆動部の双方を備えてもよいし、いずれか一方を備えてもよいし、その双方を備えなくてもよい。
【0032】
本体部5の-X側の側方にはカバー6aが設けられており、+X側の側方にはカバー6bが設けられている。カバー6a及びカバー6bは、それぞれ、支持部3bに固定されており、その支持部3bから-Z方向に向けて延びて配置される。一対のカバー6a,6bは、昇降部9が上昇端まで上昇した状態において昇降部9の下方に、容器100が収容される空間、すなわち収容空間ASを形成する。
【0033】
容器落下防止機構7は、容器100の落下を防止する。容器落下防止機構7は、容器落下防止部材71と、落下防止用駆動装置72とを備える。
【0034】
容器落下防止部材71は、収容空間ASにおいて保持部42に保持された容器100の下面の下方に配置されることで、容器100の落下を防止する。容器落下防止部材71は、可動式である。具体的には、容器落下防止部材71は、一対のカバー6a,6bのそれぞれに水平方向に回動可能に設けられている。容器落下防止部材71は、第1回動方向に回動することで、収容空間ASに収容した容器100の下側に対して進出する。これにより、容器100の落下を防止することができる。また、容器落下防止部材71は、進出した状態から第2回動方向に回動することで収容空間ASへの容器100の移動軌跡に干渉しない位置に退避する。容器落下防止部材71が退避した状態とは、例えば、容器落下防止部材71がカバー6内に収容された状態である。容器落下防止部材71が退避することで、収容空間ASに容器100を収容することができる。
【0035】
落下防止用駆動装置72は、容器落下防止部材71を回動させる駆動力を発生させる。落下防止用駆動装置72は、例えば、電動モータである。この落下防止用駆動装置72の駆動源は、例えば、電源装置10からの出力電圧Vdである。すなわち、落下防止用駆動装置72は、電源装置10から出力された出力電圧Vdによって動作して容器落下防止部材71を進退させる。なお、落下防止用駆動装置72は、本体部5の内部に収容されてもよいし、一対のカバー6a,6bのそれぞれに収容されてもよい。
【0036】
昇降部9は、昇降台40と、昇圧装置41と、保持部42とを備える。
【0037】
昇降台40には、複数の吊り下げ部材8の他端が固定されている。昇降台40は、例えば、板状部材であって、平面が水平面と平行になるように、複数の吊り下げ部材8によって吊り下げられている。
【0038】
昇圧装置41は、昇降台40の上面に固定されている。昇圧装置41は、導電部材30の他端と電気的に接続されている。昇圧装置41は、導電部材30から電圧が供給され、その供給された電圧を昇圧する。昇圧装置41は、例えば、昇圧型のDCDCコンバータである。一例として、昇圧装置41は、スイッチングレギュレータであってもよいし、リニアレギュレータであってもよい。昇圧装置41によって昇圧された電圧(以下、「昇圧電圧」という。)Vsは、例えば、電源装置10の出力電圧Vdと同等の電圧である。この昇圧電圧Vsの電圧値は、少なくとも保持部42を安定して動作させることができる電圧値である。
【0039】
図5は、昇降台40の上面の模式図である。昇降台40の上面には、吊り下げ部材8の他端を固定する固定部材61が設けられている。図5では、昇降台40が3つの吊り下げ部材8によって吊り下げられているため、3つの固定部材61-1~61-3が昇降台40の上面に設けられている。ここで、固定部材61-3に固定される吊り下げ部材8の中に導電部材30が通っているとすると、この固定部材61-3に近傍に昇圧装置41が設けられる。
【0040】
例えば、電源装置10の出力電圧Vdが24[V]であると仮定する。導電部材30の一端は、電源装置10の出力端子に接続されているため、導電部材30の一端には、24[V]の出力電圧Vdが入力される。ここで、導電部材30は、抵抗値を有するため、導電部材30に電流が流れることによって電圧降下が発生する。そのため、導電部材30の一端の電圧と、導電部材30の他端の電圧とが異なる。すなわち、この電圧降下によって、導電部材30の他端の電圧、すなわち昇圧装置41に供給される電圧は、導電部材30の一端の電圧である24[V](出力電圧Vd)よりも低くなる。さらに、導電部材30の抵抗値は、温度によって変動する。そのため、導電部材30による電圧降下にばらつきが生じ、昇圧装置41に供給される電圧は安定しない。そこで、昇圧装置41は、一例として、電圧降下分の電圧を昇圧することで24[V]の昇圧電圧Vsを生成する。この昇圧電圧Vsは、少なくとも保持部42に供給される。これにより、保持部42に供給される電圧が安定する。
【0041】
保持部42は、昇降台40の下面に固定されている。保持部42は、昇圧電圧Vsによって駆動して容器100を保持する。すなわち、保持部42には昇圧装置41によって昇圧された昇圧電圧Vsが供給され、保持部42は、この昇圧電圧Vsを駆動源とし動作することで容器100を保持する。例えば、保持部42が、容器100のフランジ部を把持することにより、容器100を吊り下げて保持する。なお、保持部42が容器100を把持する方法は、特に限定されないが、上から容器100を把持してもよいし、左右から挟み込むことで容器100を把持してもよい。
【0042】
保持部42は、例えば、チャック50と、チャック駆動装置51とを備える。チャック50は、容器100のフランジ部を把持する複数の爪部50aを備える。チャック駆動装置51は、昇圧電圧Vsによって駆動して、複数の爪部50aを第1方向に動作させて容器100のフランジ部を把持させたり、第2方向に動作させて容器100の把持を解放させたりする。チャック駆動装置51は、例えば、複数の爪部50aを動作させるための電動モータやアクチュエータを備える。
【0043】
天井搬送車1は、例えば、ティーチングユニット150を備えてもよい。ティーチングユニット150は、天井搬送車1が容器100を下ろす際の保持部42の位置(以下、「移載位置」という。)や、容器100を保持部42で把持する際の保持部42の位置(以下、「把持位置」という。)を天井搬送車1に記憶させるティーチングを実施する。このティーチングは、例えば、天井搬送車1の納入時に実施される。ティーチングユニット150の構成は、特願2017-76976号や特願2019-139474号に記載のティーチングユニットの構成を採用することができる。
【0044】
ティーチングを実行させる際には、利用者がティーチングユニット150を保持部42で保持させた状態にする。ティーチングユニット150の下面には、タッチパネルを有する。このタッチパネルは、移載位置や把持位置に事前に設けられている位置決めピンに接触することで移載位置や把持位置を検出する。具体的には、天井搬送車1は、ティーチングユニット150を保持部42で保持し、タッチパネルが位置決めピンに接触するまで昇降部9を下降させていく。ティーチングユニット150は、タッチパネルで位置決めピンの接触を検出すると、その検出した保持部42の位置を天井搬送車1に記憶させることでティーチングを実施する。
【0045】
ここで、ティーチングユニット150の駆動源は、昇圧装置41によって昇圧された昇圧電圧Vsである。例えば、昇降台40にティーチングユニット150が接続されるコネクタ200が設けられている。ティーチングユニット150が図5に示すコネクタ200に接続されると、ティーチングユニット150と昇圧装置41の出力端子とが電気的に接続され、ティーチングユニット150に対して昇圧電圧Vsが供給される。従って、ティーチングユニット150は、安定した電源によって動作することできる。
【0046】
図3に例示するように、昇降部9は、第1センサS1及び第2センサS2を有してもよい。第1センサS1は、昇圧装置41で昇圧した昇圧電圧Vsによって作動して、複数の爪部50aが開いているか否かを検知する。第2センサS2は、昇圧装置41で昇圧した昇圧電圧Vsによって作動して、保持部42の位置が複数の爪部50aで容器100を把持可能な位置であるか否かを検知する。第1センサS1及び第2センサS2は、リミットスイッチなどの機械スイッチであってもよいし、光電センサや近接センサなどの光を用いた非接触のセンサであってもよい。第1センサS1及び第2センサS2には昇圧装置41で昇圧した昇圧電圧Vsが駆動源として供給されるため、安定して作動することができる。
【0047】
上述したように、天井搬送車1の昇降部9は、導電部材30を有する吊り下げ部材8によって本体部5から吊り下げられている。導電部材30は、本体部5の電源装置10から出力電圧Vdを昇降部9に供給する。昇降部9は、導電部材30から供給された電圧を昇圧装置41で所定の電圧である昇圧電圧Vsまで昇圧し、その昇圧した昇圧電圧Vsを保持部42に供給する。このような構成により、吊り下げ部材8の導電部材30による電圧降下によって昇降部9に供給される電圧が、保持部42を安定的に動作可能な電圧よりも低下した場合であっても、昇圧装置41により、保持部42を安定的に動作可能な電圧(昇圧電圧Vs)まで昇圧することができる。従って、天井搬送車1は、保持部42に電力を安定して供給することができる。
【0048】
ここで、保持部42に供給する電圧を安定化させる方法の1つとして、昇降台40にバッテリを設ける構成が考えられる。この構成では、昇降台40に昇圧装置41を用いずに保持部42に供給する電圧を安定化させることは可能だが、当該構成では昇降部が重量化する。また、吊り下げ部材8の電圧降下の分を見越して電力の大きな電源装置を本体部5に搭載する構成も考えられるが、吊り下げ部材8の電圧降下のばらつきによる影響が残り、保持部42への電圧の安定供給を行うという点で改善の余地がある。本実施形態では、昇降台40に設けられた昇圧装置41で昇圧した昇圧電圧Vsで保持部42を駆動するため、軽量でかつ、吊り下げ部材8の電圧降下のばらつきがあったとしても保持部42へ電圧を安定して供給することができる。
【0049】
上記実施形態は、以下の構成を開示する。
(構成1)
天井軌道Rに沿って走行する本体部5と、
導電部材30を有する吊り下げ部材8と、
本体部5から吊り下げ部材8によって吊り下げられる昇降部9と、
を備え、
本体部5は、導電部材30に接続される電源装置10を備え、
導電部材30は、電源装置10からの昇圧電圧Vsを昇降部9に供給し、
昇降部9は、
導電部材30から供給された電圧を昇圧する昇圧装置41と、
昇圧装置41によって昇圧された昇圧電圧Vsによって動作して物品(例えば、容器100)を保持する保持部42と、
を備える、天井搬送車。
(構成2)
保持部42に保持された容器100の下側に対して進退可能に設けられている落下防止部材(例えば、容器落下防止部材71)と、
電源装置10から出力された電圧によって動作して落下防止部材を進退させる落下防止用駆動装置72と、
を備える、
構成1の天井搬送車。
(構成3)
昇圧装置41は、導電部材30から供給された電圧を所定電圧(昇圧電圧Vs)に昇圧し、
昇圧電圧Vsは、電源装置10の出力電圧Vdと同等の電圧である、
構成1又は構成2の天井搬送車。
(構成4)
非接触給電によって交流電力を受電し、受電した交流電力を直流電力に変換する受電装置4を備え、
電源装置10は、受電装置4が受電した直流電力を所定の直流電力に変換する電力変換器である、
構成1から構成3のいずれかの天井搬送車。
(構成5)
保持部42は、複数の爪部50aで物品を把持することで当該物品を保持し、
昇降部9は、
複数の爪部50aが開いているか否かを検知する第1センサS1と、
保持部42の位置が複数の爪部50aで物品を把持可能な位置であるか否かを検知する第2センサS2と、
を有し、
第1センサS1及び第2センサS2は、昇圧装置41で昇圧した昇圧電圧Vsによって作動する、
構成1から構成4のいずれかの天井搬送車。
(構成6)
昇降部9は、本体部5から複数の吊り下げ部材8によって吊り下げられ、
導電部材30は、複数の吊り下げ部材8のいずれかに設けられる、
構成1から構成5のいずれかの天井搬送車。
【0050】
上述した実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述した実施形態等で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、本実施形態において示した各手順の実行順序は、前の手順の結果を後の手順で用いない限り、任意の順序で実現可能である。また、上述した実施形態における動作に関して、便宜上「まず」、「次に」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須ではない。
【符号の説明】
【0051】
1・・・天井搬送車
4・・・本体部
8・・・吊り下げ部材
9・・・昇降部
10・・・電源装置
30・・・導電部材
41・・・昇圧装置
42・・・保持部

図1
図2
図3
図4
図5