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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157602
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/76 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01H37/76 F
H01H37/76 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072025
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100141999
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 敬一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕二
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA02
5G502BA08
5G502BB03
5G502BC12
5G502BD02
5G502CC04
(57)【要約】
【課題】ブリッジ現象の発生を抑制することができる保護素子を提供する。
【解決手段】保護素子11は、絶縁基板26と、絶縁基板26に互いに離れて設けられた第1の電極22及び第2の電極23と、絶縁基板26に設けられた発熱抵抗体24と、第1の電極22と第2の電極23との間に設けられた中間電極21と、第1の電極22及び第2の電極23を跨ぐように設けられ、導電性を有する固定部材28を介して第1の電極22、第2の電極23及び中間電極21に固定され、発熱抵抗体24によって所定の温度以上に加熱されると溶断されるヒューズエレメント20と、を備える。ヒューズエレメント20には、ヒューズエレメント20の表面から厚み方向に凹む凹部60が形成されている。凹部60に、固定部材28の一部が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板に互いに離れて設けられた第1の電極及び第2の電極と、
前記絶縁基板に設けられた発熱抵抗体と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた中間電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極を跨ぐように設けられ、導電性を有する固定部材を介して前記第1の電極、前記第2の電極及び前記中間電極に固定され、前記発熱抵抗体によって所定の温度以上に加熱されると溶断されるヒューズエレメントと、を備え、
前記ヒューズエレメントには、前記ヒューズエレメントの表面から厚み方向に凹む凹部、又は、前記厚み方向に凸をなす凸部が形成されており、
前記凹部又は前記凸部に、前記固定部材の一部が設けられている、
保護素子。
【請求項2】
前記ヒューズエレメントには、前記凹部が形成されており、
前記凹部に、前記固定部材の一部が充填されている、
請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記凹部は、平面視で前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれと前記中間電極との間の部分と重なる位置に配置されている、
請求項2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記凹部は、前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれと前記中間電極との間の中心位置よりも、前記第1の電極、前記第2の電極及び前記中間電極のそれぞれの外縁の近くに配置されている、
請求項3に記載の保護素子。
【請求項5】
前記凹部は、平面視で前記第1の電極及び前記第2の電極の配置方向に対して交差する仮想線上に配置されている、
請求項2から4の何れか一項に記載の保護素子。
【請求項6】
前記凹部は、平面視で直線状、波線状又は破線状に形成されている、
請求項5に記載の保護素子。
【請求項7】
前記凹部は、平面視で前記仮想線上における前記ヒューズエレメントの全体にわたって直線状に形成されている、
請求項6に記載の保護素子。
【請求項8】
前記凹部は、複数設けられ、
複数の前記凹部は、平面視で所定の間隔をもって規則的又は不規則的に配置されている、
請求項2から4の何れか一項に記載の保護素子。
【請求項9】
前記凹部は、前記ヒューズエレメントの前記厚み方向の両面に形成されている、
請求項2から4の何れか一項に記載の保護素子。
【請求項10】
前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれには、前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれの表面から厚み方向に凹凸をなす凹凸構造が形成されている、
請求項1から4の何れか一項に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流経路に定格を超える電流が流れたときに、発熱して溶断し、電流経路を遮断するヒューズエレメントがある。ヒューズエレメントを備える保護素子(ヒューズ素子)は、家電製品から電気自動車など幅広い分野で使用されている。
【0003】
例えば、リチウムイオン電池は、モバイル機器用途から電気自動車(EV)、蓄電池など幅広い用途に用いられており、大容量化が進んでいる。リチウムイオン電池は、大容量化が進むにつれて、異常時に発火等するリスクが高まる。このため、製品の安全を確保するために、一般的に、保護素子を使った保護回路を組み込む手法が採用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、基板上の電極にソルダーペースト(はんだ)を介してヒューズエレメントが設けられている保護素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-158490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のはんだによる接合技術では、以下の課題がある。
例えば、高電圧・大容量に対応した大型のヒューズエレメントをはんだで固定する場合、必然的にはんだの使用量も多くなる。しかしながら、はんだの使用量が多くなると、ヒューズエレメントの固定時に溶融したはんだが、予定した固定範囲を超えて外側に漏れ出す現象(ブリード現象)が生じるおそれがある。ブリード現象は、隣接した電極間のはんだ同士が接合して短絡する現象(ブリッジ現象)を引き起こすおそれがあるため、好ましくない。ブリッジ現象が発生すると、ヒューズ回路切断後もブリッジ部で電流が流れる状態となるため、動作不良とみなされる。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ブリッジ現象の発生を抑制することができる保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
[1]絶縁基板と、前記絶縁基板に互いに離れて設けられた第1の電極及び第2の電極と、前記絶縁基板に設けられた発熱抵抗体と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた中間電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極を跨ぐように設けられ、導電性を有する固定部材を介して前記第1の電極、前記第2の電極及び前記中間電極に固定され、前記発熱抵抗体によって所定の温度以上に加熱されると溶断されるヒューズエレメントと、を備え、前記ヒューズエレメントには、前記ヒューズエレメントの表面から厚み方向に凹む凹部、又は、前記厚み方向に凸をなす凸部が形成されており、前記凹部又は前記凸部に、前記固定部材の一部が設けられている、保護素子。
【0010】
[2]前記ヒューズエレメントには、前記凹部が形成されており、前記凹部に、前記固定部材の一部が充填されている、[1]に記載の保護素子。
【0011】
[3]前記凹部は、前記絶縁基板において前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれと前記中間電極との間の部分と重なる位置に配置されている、[2]に記載の保護素子。
【0012】
[4]前記凹部は、前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれと前記中間電極との間の中心位置よりも、前記第1の電極、前記第2の電極及び前記中間電極のそれぞれの外縁の近くに配置されている、[3]に記載の保護素子。
【0013】
[5]前記凹部は、平面視で前記第1の電極及び前記第2の電極の配置方向に対して交差する仮想線上に配置されている、[2]から[4]の何れかに記載の保護素子。
【0014】
[6]前記凹部は、平面視で直線状、波線状又は破線状に形成されている、[5]に記載の保護素子。
【0015】
[7]前記凹部は、平面視で前記仮想線上における前記ヒューズエレメントの全体にわたって直線状に形成されている、[6]に記載の保護素子。
【0016】
[8]前記凹部は、複数設けられ、複数の前記凹部は、平面視で所定の間隔をもって規則的又は不規則的に配置されている、[2]から[7]の何れかに記載の保護素子。
【0017】
[9]前記凹部は、前記ヒューズエレメントの前記厚み方向の両面に形成されている、[2]から[8]の何れかに記載の保護素子。
【0018】
[10]前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれには、前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれの表面から厚み方向に凹凸をなす凹凸構造が形成されている、[1]から[9]の何れかに記載の保護素子。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ブリッジ現象の発生を抑制することができる保護素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係るバッテリパックの回路図である。
図2】第1実施形態に係る保護素子を示す平面図である。
図3】第1実施形態に係る保護素子を示す図であって、図2のIII-III断面図である。
図4】第1実施形態に係るヒューズエレメントの一例を示す斜視図である。
図5】第1実施形態に係るバッテリパックの回路図の一例を示す図であって、熱感応素子としてのサーモスタットが加熱される前を示す図である。
図6】上記のサーモスタットが加熱され、ヒューズエレメントが溶断された状態を示す図である。
図7】第1実施形態に係るバッテリパックの回路図の一例を示す図であって、ProtectionIC及びスイッチを搭載した場合を示す図である。
図8】第1実施形態に係る保護素子の製造方法の一工程を示す平面図である。
図9図8に続く、保護素子の製造方法の一工程を示す平面図である。
図10図9のX-X断面図である。
図11図9に続く、保護素子の製造方法の一工程を示す平面図である。
図12図11のXII-XII断面図である。
図13】第1実施形態に係る保護素子の効果を説明するための平面図である。
図14】保護素子の変形例を示す断面図である。
図15】ヒューズエレメントの第1変形例を示す側面図である。
図16図15の矢視XVIの平面図である。
図17】ヒューズエレメントの第2変形例を示す側面図である。
図18】ヒューズエレメントの第3変形例を示す平面図である。
図19】ヒューズエレメントの第4変形例を示す平面図である。
図20】電極の第1変形例を示す平面図である。
図21】電極の第2変形例を示す平面図である。
図22図21の矢視XXIIの側面図である。
図23】第2実施形態に係る保護素子の平面図である。
図24】第2実施形態に係る保護素子を示す図であって、第1保持部材を省略して示す平面図である。
図25図23のXXV-XXV断面図である。
図26図23のXXVI-XXVI断面図である。
図27】第2実施形態に係る第1保持部材の平面図である。
図28】第2実施形態に係る第2保持部材の平面図である。
図29】第2実施形態に係る第1保持部材及び第2保持部材の断面図である。
図30】第3実施形態に係る保護素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0022】
(第1実施形態)
まず、本発明の一実施形態の保護素子を備えるバッテリパック及び保護回路について、図1を参照して説明する。本実施形態のバッテリパックは、例えばリチウムイオン二次電池を使用する高電圧大電流(100V/100A以上)の電気回路の一部を構成する。バッテリパックは、例えば、電気自動車(EV)などに搭載される。
【0023】
図1に示すように、バッテリパック10は、例えば、複数のリチウムイオン二次電池のバッテリセル15a(図5参照)からなるバッテリスタック15と、バッテリスタック15と直列に接続された保護素子11と、保護素子11の動作を制御する熱感応素子12と、を備える。
【0024】
保護素子11は、バッテリパック10の異常時にバッテリスタック15の充放電経路を遮断する。熱感応素子12は、熱により導通のオン・オフや抵抗値、出力電圧等の電気特性が変動する。熱感応素子12は、所定の温度以上の温度に加熱されると保護素子11を作動させる。バッテリパック10は、熱感応素子12の電気特性の変動に応じて保護素子11の動作が制御される。
【0025】
バッテリスタック15は、過電圧や過電流等から保護するための制御を要するバッテリセル15a(図5参照)を備える。バッテリセル15aは、直列及び/又は並列に接続されている。バッテリスタック15は、バッテリパック10の正極端子10a、負極端子10bを介して、着脱可能に充電装置13に接続されている。バッテリスタック15は、バッテリパック10の正極端子10a、負極端子10bを介して、充電装置13からの充電電圧が印加される。充電装置13により充電されたバッテリパック10は、正極端子10a、負極端子10bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0026】
バッテリパック10は、バッテリスタック15の充放電を制御する充放電制御回路16を備える。充放電制御回路16は、バッテリスタック15から充電装置13に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子17,18と、これらの電流制御素子17,18の動作を制御する制御部19と、を備える。
【0027】
電流制御素子17,18は、例えば、電界効果トランジスタ(以下「FET」ともいう。)により構成されている。電流制御素子17,18は、制御部19によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック15の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部19は、充電装置13から電力供給を受けて動作する。制御部19は、各バッテリセル15aの電圧を検出する図示しない検出回路による検出結果に応じて、バッテリスタック15が過放電又は過充電であるか否か判定する。制御部19は、バッテリスタック15が過放電又は過充電であると判定したとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子17,18の動作を制御する。
【0028】
(保護素子)
保護素子11は、例えば、バッテリスタック15と充放電制御回路16との間の充放電電流経路上に接続されている。保護素子11の動作は、熱感応素子12によって制御される。図2及び図3を併せて参照し、保護素子11は、絶縁基板26と、絶縁基板26上に形成された第1、第2の電極22、23(以下「端子部」ともいう。)と、絶縁基板26の表面に形成された発熱抵抗体24と、発熱抵抗体24を被覆する絶縁層27と、絶縁層27上に積層されるとともに発熱抵抗体24と接続された発熱体引出電極21(以下「中間電極21」ともいう。)と、第1の電極22、発熱体引出電極21及び第2の電極23にわたって固定用はんだ28(以下「固定部材28」ともいう。)を介して搭載されるヒューズエレメント20と、を備える。第1、第2の電極22、23は、所定方向に互いに離れて配置されている。
【0029】
以下、各図に適宜XYZ直交座標系(3次元直交座標系)を設定し、各構成について説明する場合がある。
第1の電極22と第2の電極23とが並ぶ上記所定方向を、前後方向と呼ぶ。前後方向は、各図においてX軸方向に相当する。X軸方向のうち、-X側を前側と呼び、+X側を後側と呼ぶ。なお、前後方向は、第1の電極22と第2の電極23とを結ぶ方向であり、保護素子11の使用時において電気が流れる方向でもあることから、通電方向と言い換えてもよい。
【0030】
第1の電極22及び第2の電極23の各板面が向く方向を、上下方向と呼ぶ。上下方向は、前後方向と直交する方向であり、各図においてZ軸方向に相当する。上下方向のうち、上側は+Z側に相当し、下側は-Z側に相当する。
【0031】
前後方向及び上下方向と直交する方向を、左右方向と呼ぶ。左右方向は、各図においてY軸方向に相当する。左右方向のうち、左側は-Y側に相当し、右側は+Y側に相当する。詳しくは、-Y側は、保護素子11を後側(+X側)から見たときの左側であり、+Y側は、保護素子11を後側から見たときの右側である。なお、左右方向は、幅方向と言い換えてもよい。この場合、例えば、幅方向一方側は-Y側に相当し、幅方向他方側は+Y側に相当する。
【0032】
なお、本実施形態において、前側、後側、上側、下側、左側及び右側とは、各構成の相対的な位置関係をわかりやすく説明するための便宜的な名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0033】
第1、第2の電極22,23は、バッテリセル15aの充放電経路上に接続される第1、第2の端子部である。第1、第2の電極22,23は、それぞれ上下方向と垂直な面方向(X-Y面方向)に広がる板状をなしている。第1、第2の電極22,23は、具体的には、略四角形板状である。
【0034】
第1の電極22の後端部(+X端部)は、ヒューズエレメント20の前端部(-X端部)と接続されている。第1の電極22の前端部は、保護素子11の前側から保護素子11の外部に露出している。第2の電極23の前端部は、ヒューズエレメント20の後端部と接続されている。第2の電極23の後端部は、保護素子11の後側から保護素子11の外部に露出している。
【0035】
図1を併せて参照し、発熱抵抗体24は、発熱体給電電極25と接続されている。発熱抵抗体24は、発熱体給電電極25を介して熱感応素子12と接続されている。発熱抵抗体24は、発熱体引出電極21がヒューズエレメント20と電気的に接続されることにより、ヒューズエレメント20及びバッテリスタック15の充放電経路と接続されている。
【0036】
絶縁基板26は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する材料で形成されている。図2及び図3を併せて参照し、絶縁基板26は、例えば略方形状に形成されている。なお、絶縁基板26は、その他にも、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料で形成されていてもよい。例えば、絶縁基板26の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0037】
絶縁基板26の相対向する両端部(具体的には、絶縁基板26の前端部及び後端部)には、第1、第2の電極22,23が形成されている。第1、第2の電極22,23は、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。第1、第2の電極22,23は、保護素子11が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続される。これにより、ヒューズエレメント20は、外部回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0038】
発熱抵抗体24は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材である。発熱抵抗体24は、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱抵抗体24は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板26上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0039】
発熱抵抗体24は、ヒューズエレメント20が重畳されることによりヒューズエレメント20と熱的に接続されている。発熱抵抗体24は、通電によって発熱するとヒューズエレメント20を溶断する。発熱抵抗体24は、一端が熱感応素子12と接続されることにより、常時、電流及び発熱が制限されている。発熱抵抗体24は、熱感応素子12による通電や電気抵抗値の低下等により電流が増加することにより発熱量が増大する。発熱抵抗体24の発熱量が増大することにより、ヒューズエレメント20を溶断することができる。発熱抵抗体24は、ヒューズエレメント20と電気的にも接続されている。
【0040】
ヒューズエレメント20は、固定用はんだ28により第1の電極22から第2の電極23に跨って接続されている。ヒューズエレメント20は、例えば、金属製の板状部材、シート状部材、又は金属箔等により構成されている。図の例では、ヒューズエレメント20は、上下方向から見て、前後方向に長い四角形状をなしている。ヒューズエレメント20は、通常使用時には第1、第2の電極22,23間を導通させ、保護素子11が組み込まれた外部回路の電流経路の一部を構成する。
【0041】
ヒューズエレメント20は、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断する。ヒューズエレメント20は、発熱抵抗体24によって所定の温度以上に加熱されると溶断される。ヒューズエレメント20は、発熱抵抗体24の発熱により溶断し、第1、第2の電極22,23間を遮断する。
【0042】
ヒューズエレメント20は、所定の定格電流値を有し、発熱抵抗体24の発熱や定格電流値を超える電流が通電された際の自己発熱により速やかに溶断する。ヒューズエレメント20は、ニッケル、錫、鉛から選択されるいずれか1種を主成分とすることが好ましい。なお、主成分とは、材料全質量を基準として、50wt%以上である成分をいう。
【0043】
図4を併せて参照し、ヒューズエレメント20は、低融点金属層41と高融点金属層42とを積層させた積層構造を有してもよい。例えば、低融点金属としては、Pbフリーはんだなどのはんだを用いることが好ましい。例えば、高融点金属としては、Ag、Cu又はこれらを主成分とする合金などを用いることが好ましい。高融点金属と低融点金属とを含有することによって、保護素子11をリフロー実装する場合に、リフロー温度が低融点金属層の溶融温度を超えて、低融点金属が溶融しても、ヒューズエレメント20として溶断するに至らない。
【0044】
例えば、ヒューズエレメント20は、内層を低融点金属とし、外層を高融点金属としてもよい。例えば、ヒューズエレメント20は、内層の低融点金属層41の全表面が外層の高融点金属層42で被覆された構成であってもよい。この構成によれば、リフロー温度よりも融点の低い低融点金属を用いた場合でも、リフロー実装時に、内層の低融点金属の外部への流出を抑制することができる。また、ヒューズエレメント20の溶断時も、内層の低融点金属が溶融することにより、外層の高融点金属を溶食(はんだ食われ)し、速やかに溶融させることができる。
【0045】
熱感応素子12は、電気特性が温度依存性を有する電子部品を用いることができる。図1及び図5を併せて参照し、熱感応素子12は、周囲の温度変化に伴い回路を開閉させるサーモスタット12aを用いることができる。例えば、熱感応素子12は、バッテリスタック15に近接又は接触して配置され、バッテリスタック15と熱的に接続されてもよい。この場合、熱感応素子12は、バッテリスタック15が異常発熱することにより熱せられる。これにより、熱感応素子12は、抵抗値や出力電圧等の電気特性が変化する。
【0046】
例えば、熱感応素子12としてサーモスタット12aを用いた場合、サーモスタット12aの一端は、バッテリスタック15の開放端と接続される。サーモスタット12aの他端は、保護素子11の発熱抵抗体24と接続される。サーモスタット12aは、常時、バッテリスタック15から発熱抵抗体24への通電経路を開放している。バッテリパック10は、バッテリスタック15が異常発熱する等によりサーモスタット12aが加熱されると、サーモスタット12aがバッテリスタック15から発熱抵抗体24への通電経路を閉路するように変位する。これにより、ヒューズエレメント20を溶断させるに十分なバッテリスタック15の電力が発熱抵抗体24へ通電する。
【0047】
なお、図示はしないが、熱感応素子12としては、サーモスタット12aの他にも、周囲の温度上昇に伴い抵抗値が低下する負特性サーミスタ(NTCサーミスタ、CTRサーミスタ)を用いることができる。また、熱感応素子12としては、閾値となる温度を超えると電圧が変化するダイオードを用いることができる。その他、熱感応素子12としては、ペルチェ素子、熱電対、バイメタル、温度センサ等が挙げられる。例えば、熱感応素子12の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0048】
(保護回路)
図1及び図5を併せて参照し、保護素子11は、第1、第2の電極22,23間にわたって直列接続されたヒューズエレメント20と、ヒューズエレメント20の接続点を介して通電して発熱させることによってヒューズエレメント20を溶断する発熱抵抗体24と、を含む回路構成である。保護素子11は、熱感応素子12、発熱体給電電極25、発熱抵抗体24及びヒューズエレメント20に至る発熱抵抗体24への通電経路が形成され、熱感応素子12によって発熱抵抗体24への通電が制御されている。
【0049】
保護素子11は、第1の電極22を介してバッテリスタック15の一方の開放端側に接続されている。保護素子11は、第2の電極23を介してバッテリパック10の正極端子10a側に接続されている。これにより、ヒューズエレメント20は、第1、第2の電極22,23を介してバッテリパック10の充放電電流経路上に直列接続されている。
【0050】
保護素子11は、発熱体給電電極25が発熱抵抗体24に通電させるバッテリスタック15の一方の開放端と接続されるとともに、熱感応素子12(例えば、サーモスタット12a)によって発熱抵抗体24への通電が制限されている。そのため、ヒューズエレメント20は発熱抵抗体24の発熱により溶断することなく、バッテリパック10の充放電電流経路は通電可能とされている。
【0051】
バッテリパック10は、バッテリセル15aの過電圧等による異常発熱や火災などによる周囲の温度の異常過熱等、バッテリパック10の電流経路を遮断する必要が生じ得る。この場合、バッテリパック10は、熱感応素子12が加熱され、所定の閾値を超えると発熱抵抗体24への通電経路を閉路する。これにより、バッテリスタック15から発熱抵抗体24へ通電される。これにより、保護素子11は、発熱抵抗体24が高温に発熱され、バッテリパック10の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント20が溶融される。ヒューズエレメント20の溶融導体は、濡れ性の高い発熱体引出電極21及び第1、第2の電極22,23に引き寄せられることによりヒューズエレメント20が溶断される。したがって、バッテリパック10は、第1の電極22~発熱体引出電極21~第2の電極23の間を溶断させ、バッテリスタック15の電流経路を遮断することができる(図6参照)。
【0052】
このようなバッテリパック10は、熱感応素子12によって保護素子11を作動させることによりバッテリスタック15の充放電電流経路を遮断することができる。したがって、電流制御素子17,18のスイッチ動作や保護素子11を制御する制御ICによらず、高温環境にさらされた場合にも誤作動する危険がなく、バッテリスタック15の充放電電流経路を遮断することができる。
【0053】
保護素子11は、ヒューズエレメント20が発熱抵抗体24と接続されることにより、発熱抵抗体24への通電経路の一部を構成する。したがって、保護素子11は、ヒューズエレメント20が溶融し、外部回路との接続が遮断されると、発熱抵抗体24への通電経路も遮断されるため、発熱を停止させることができる。
【0054】
なお、図7に示すように、バッテリパック10は、熱感応素子12(図では、サーミスタ12b)に加え、スイッチ回路50を備えてもよい。スイッチ回路50は、バッテリスタック15全体の電圧及び/又は各バッテリセル15aの異常電圧を検出し、スイッチ操作によって保護素子11を作動させる機能を持つ。例えば、スイッチ回路50は、バッテリスタック15全体の電圧及び/又は各バッテリセル15aの電圧をモニタするProtectionIC51と、ProtectionIC51によって操作されるスイッチ52と、を備える。
【0055】
スイッチ52は、例えばFETである。スイッチ52の一端は、バッテリスタック15又はバッテリセル15aの一方の開放端と接続されている。スイッチ52の他端は、保護素子11の発熱抵抗体24と接続されている。これにより、スイッチ52は、熱感応素子12(図では、サーミスタ12b)と並列されている。スイッチ52は、ProtectionIC51によってオン状態とオフ状態とに切替制御される。
【0056】
ProtectionIC51は、例えばバッテリスタック15や各バッテリセル15aの両開放端と接続されている。ProtectionIC51は、例えば、常時バッテリスタック15全体の電圧及び/又は各バッテリセル15aの電圧をモニタし、異常電圧時にスイッチ52をオンに切替え、発熱抵抗体24に通電させる。
【0057】
具体的に、ProtectionIC51は、バッテリスタック15及び/又はバッテリセル15aの両端の電圧に基づき、過電圧であるか否かを判定する。例えば、ProtectionIC51は、充電中にバッテリセル15aの電圧が予め設定されている所定の閾値を超えた場合、バッテリスタック15又はバッテリセル15aの電圧が過電圧であると判定する。ProtectionIC51は、過電圧と判定した場合、スイッチ52をオフ状態からオン状態にする制御を行う。これにより、保護素子11が作動し、ヒューズエレメント20を溶断することで、バッテリスタック15の充放電電流経路を遮断することができる。
【0058】
なお、上述した保護回路では、熱感応素子12がバッテリスタック15の充放電経路と並列に設けられているが、これに限定されない。例えば、熱感応素子12は、バッテリスタック15の充放電経路と電気的に独立した経路上に設け、別途設けられる電源から電力が供給されてもよい。また、本発明のバッテリパックは、リチウムイオン二次電池のバッテリパック10に用いる場合に限らず、異常過熱の際に電流経路の遮断を必要とする様々な用途にも応用可能である。
【0059】
(ヒューズエレメント等との接合)
図2及び図3を併せて参照し、本実施形態のヒューズエレメント20は、第1の電極22及び第2の電極23を跨ぐように設けられている。ヒューズエレメント20は、固定用はんだ28(以下単に「はんだ28」ともいう。)を介して第1の電極22、第2の電極22及び中間電極21に固定されている。固定用はんだ28は、導電性を有する固定部材の一例である。
【0060】
例えば、はんだ28は、Pbフリーはんだである。例えば、はんだ28の材料は、Snや、Sn-Cu合金、Sn-Bi合金、Sn-Ag合金等の金属材料を用いることができる。例えば、はんだ28の材料は、低融点金属粒子(Bi)と、高融点金属粒子群(Sn,Ag,Cu等)とを混合したもの、又は、高融点金属粒子表面に低融点金属粒子の被膜層を有したものでもよい。例えば、はんだ28の材料は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0061】
(ヒューズエレメントの構成)
ヒューズエレメント20には、ヒューズエレメント20の表面から厚み方向(図の例では、上下方向)に凹む凹部60が形成されている。凹部60は、ヒューズエレメント20の厚み方向の片面(図の例では、下面)に形成されている。凹部60は、ヒューズエレメント20において絶縁基板26と対向する面(下面)に形成されている。図の例では、凹部60は、ヒューズエレメント20において絶縁基板26と対向する面とは反対側の面(上面)には形成されていない。
【0062】
凹部60は、ヒューズエレメント20の厚み方向において最も外側の表面(図の例では、ヒューズエレメント20の最下面)を基準としたとき、ヒューズエレメント20の最下面から厚み方向の内側(図の例では、上側)に凹む部分である。ヒューズエレメント20において前後方向に隣り合う2つの凹部60の間には、厚み方向に凸をなす凸部61が形成されている。凸部61は、ヒューズエレメント20に形成された凹部60の底面(図の例では、凹部60の上面)を基準としたとき、凹部60の底面から厚み方向外側(図の例では、下側)に凸をなす部分である。
【0063】
凹部60は、平面視で第1の電極22及び第2の電極23のそれぞれと中間電極21との間の部分と重なる位置に配置されている。凹部60は、第1の電極22及び第2の電極23のそれぞれと中間電極21との間の中心位置CP1,CP2よりも、第1の電極22、第2の電極23及び中間電極21のそれぞれの外縁の近くに配置されている。凹部60は、平面視で第1の電極22及び第2の電極23の配置方向(図の例では、前後方向)に対して交差(図の例では、直交)する仮想線上に配置されている。図の例では、凹部60は、左右方向に沿う仮想線上に配置されている。
【0064】
凹部60は、平面視で直線状に形成されている。具体的に、凹部60は、平面視で仮想線上におけるヒューズエレメント20の全体にわたって直線状に形成されている。凹部60は、複数設けられている。複数の凹部60は、平面視で所定の間隔をもって規則的に配置されている。
【0065】
図の例では、8個の凹部60が設けられている。8個の凹部60は、第1の電極22と中間電極21との間の中心位置CP1よりも第1の電極22の外縁の近くに配置された2つの凹部60と、第2の電極23と中間電極21との間の中心位置CP2よりも第2の電極23の外縁の近くに配置された2つの凹部60と、第1の電極22と中間電極21との間の中心位置CP1よりも中間電極21の外縁の近くに配置された2つの凹部60と、第2の電極23と中間電極21との間の中心位置CP2よりも中間電極21の外縁の近くに配置された2つの凹部60と、である。なお、凹部60の設置数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0066】
本実施形態では、凹部60及び凸部61に、はんだ28(固定部材28の一部に相当)が設けられている。図の例では、凹部60に、はんだ28が充填されている。各電極21,22,23の外縁の近くに配置された凹部60には、各電極21,22,23の外縁の遠くに配置された凹部60よりも多く、はんだが入り込んでいる。
【0067】
(保護素子の製造方法)
本実施形態の保護素子11の製造方法は、基板上の電極21,22,23に固定用はんだ28を介してヒューズエレメント20を接続する工程を含む。以下、本実施形態の保護素子11の製造方法の一例について、図8から図12を参照しつつ説明する。
【0068】
まず、図8に示すように、発熱体引出電極21及び端子部22,23上に固定用はんだ28を塗布する。その後、図9及び図10に示すように、固定用はんだ28を介して、発熱体引出電極21及び端子部22,23にヒューズエレメント20を接続する。例えば、固定用はんだ28としては、Sn-Bi系のはんだ材料を含むはんだペーストを用いる。なお、固定用はんだ28としては、接着剤併用型Sn-Biはんだペーストを用いてもよい。
【0069】
次に、不図示のリフロー炉(リフロー装置)を用いてリフロー加熱を行い、ヒューズエレメント20を発熱体引出電極21及び端子部22,23にはんだ接続する。本実施形態では、固定用はんだ28としてSn-Bi系のはんだ材料を用いることで、リフロー加熱は150℃未満の温度で行うことができる。リフロー加熱により、固定用はんだ28を溶融させ、土台の金属とヒューズエレメント20とを合金化させる。これにより、ヒューズエレメント20と発熱体引出電極21及び端子部22,23とを電気的に接続し、固定する。なお、はんだ接続時の加熱は、上記に限らず、ヒータを熱源としたホットプレートを用いてもよい。
【0070】
本実施形態では、ヒューズエレメント20には、凹部60が形成されている。これにより、図11及び図12に示すように、溶融後のはんだ28の流動を凹部60で制御し、安定に保持することができる。このため、電極21,22,23間のブリード現象の発生を抑制することができる。
その結果、図13に示すように、保護素子11の動作時にヒューズエレメント20を安全に即溶断することができる。
【0071】
(本実施形態の作用効果)
以上説明した本実施形態の保護素子11は、絶縁基板26と、絶縁基板26に互いに離れて設けられた第1の電極22及び第2の電極23と、絶縁基板26に設けられた発熱抵抗体24と、第1の電極22と第2の電極23との間に設けられた中間電極21と、第1の電極22及び第2の電極23を跨ぐように設けられ、導電性を有する固定部材28を介して第1の電極22、第2の電極23及び中間電極21に固定され、発熱抵抗体24によって所定の温度以上に加熱されると溶断されるヒューズエレメント20と、を備える。ヒューズエレメント20には、ヒューズエレメント20の表面から厚み方向に凹む凹部60が形成されている。凹部60に、固定部材28の一部が設けられている。
この構成によれば、ヒューズエレメント20の凹部60において、ヒューズエレメント20の固定時に溶融したはんだ28(固定部材28)の一部を受け止めることができる。このため、溶融したはんだ28が予定した固定範囲に収まるようになり、ブリード現象の発生を抑制することができる。したがって、ブリッジ現象の発生を抑制することができる。
【0072】
本実施形態では、ヒューズエレメント20には、凹部60が形成されている。凹部60に、固定部材28の一部が充填されている。
この構成によれば、ヒューズエレメント20の凹部60に溶融したはんだ28の一部が入り込むことにより、ブリード現象の発生をより効果的に抑制することができる。したがって、ブリッジ現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0073】
本実施形態では、凹部60は、平面視で第1の電極22及び第2の電極23のそれぞれと中間電極21との間の部分と重なる位置に配置されている。
この構成によれば、平面視で隣接した電極間のそれぞれと重なる位置にある凹部60に溶融したはんだ28の一部が入り込むことにより、ブリード現象の発生をより効果的に抑制することができる。したがって、ブリッジ現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0074】
本実施形態では、凹部60は、第1の電極22及び第2の電極23のそれぞれと中間電極21との間の中心位置CP1,CP2よりも、第1の電極22、第2の電極23及び中間電極21のそれぞれの外縁の近くに配置されている。
この構成によれば、凹部60が第1の電極22及び第2の電極23のそれぞれと中間電極21との間の中心位置CP1,CP2にある場合と比較して、凹部60に溶融したはんだ28の一部が入り込みやすいため、ブリード現象の発生をより効果的に抑制することができる。したがって、ブリッジ現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0075】
本実施形態では、凹部60は、平面視で第1の電極22及び第2の電極23の配置方向に対して交差する仮想線上に配置されている。
この構成によれば、平面視で仮想線上にある凹部60に溶融したはんだ28の一部が入り込むことにより、ブリード現象の発生をより効果的に抑制することができる。したがって、ブリッジ現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0076】
本実施形態では、凹部60は、平面視で直線状に形成されている。
この構成によれば、平面視で直線状に形成された凹部60に沿って溶融したはんだ28の一部が入り込むことにより、ブリード現象の発生をより効果的に抑制することができる。したがって、ブリッジ現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0077】
本実施形態では、凹部60は、平面視で仮想線上におけるヒューズエレメント20の全体にわたって直線状に形成されている。
この構成によれば、凹部60が平面視で仮想線上におけるヒューズエレメント20の一部のみに形成されている場合と比較して、溶融したはんだ28が予定した固定範囲に収まりやすいため、ブリード現象の発生をより効果的に抑制することができる。したがって、ブリッジ現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0078】
本実施形態では、凹部60は、複数設けられている。複数の凹部60は、平面視で所定の間隔をもって規則的に配置されている。
この構成によれば、規則的に配置された複数の凹部60に溶融したはんだ28の一部が入り込むことにより、ブリード現象の発生をより効果的に抑制することができる。したがって、ブリッジ現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0079】
本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、他の実施形態や変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0080】
(変形例)
上記実施形態では、ヒューズエレメントには、ヒューズエレメントの表面から厚み方向に凹む凹部が形成されており、凹部に固定部材の一部が設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ヒューズエレメントには、ヒューズエレメントの表面から厚み方向に凸をなす凸部が形成されており、凸部に固定部材の一部が設けられていてもよい。例えば、ヒューズエレメントの厚み方向における所定の面を基準としたとき、ヒューズエレメントの表面から厚み方向に凹む凹部、又は、厚み方向に凸をなす凸部が形成されていてもよい。例えば、凹部又は凸部の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0081】
上記実施形態では、ヒューズエレメントには凹部が形成されており、凹部に固定部材の一部が充填されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、凹部に固定部材が充填されていなくてもよい。例えば、固定用はんだの使用量が所定値より少ない場合は、凹部に固定用はんだが入り込まない場合もあり得る。例えば、固定部材の充填態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0082】
上記実施形態では、凹部は、平面視で第1の電極及び第2の電極のそれぞれと中間電極との間の部分と重なる位置に配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、凹部は、平面視で第1の電極及び第2の電極のそれぞれと中間電極との間の部分と重なる位置に配置されていなくてもよい。例えば、凹部は、平面視で第1の電極又は第2の電極の何れか一方と中間電極との間の部分と重なる位置に配置されていてもよい。例えば、凹部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0083】
上記実施形態では、凹部は、第1の電極及び第2の電極のそれぞれと中間電極との間の中心位置よりも、第1の電極、第2の電極及び中間電極のそれぞれの外縁の近くに配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、凹部は、第1の電極及び第2の電極のそれぞれと中間電極との間の中心位置に配置されていてもよい。例えば、凹部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0084】
上記実施形態では凹部は、平面視で直線状に形成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、凹部は、平面視で波線状又は破線状に形成されていてもよい。例えば、凹部の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0085】
上記実施形態では、凹部は、平面視で仮想線上におけるヒューズエレメントの全体にわたって直線状に形成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、凹部は、平面視で仮想線上におけるヒューズエレメントの一部のみに形成されていてもよい。例えば、凹部の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0086】
上記実施形態では、凹部は、複数設けられており、複数の凹部は、平面視で所定の間隔をもって規則的に配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、複数の凹部は、平面視で所定の間隔をもって不規則的に配置されていてもよい。例えば、複数の凹部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0087】
(他の変形例)
本発明の実施形態に係る他の変形例について、図14図22を参照して説明する。なお、本変形例の各図において、第1実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0088】
上記実施形態では、凹部は、ヒューズエレメントの厚み方向の片面に形成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。図14に示すように、例えば、凹部60,160は、ヒューズエレメント120の厚み方向の両面に形成されていてもよい。
【0089】
例えば、ヒューズエレメント120は、断面視矩形状の低融点金属層141と、低融点金属層141の厚み方向の両面に形成された高融点金属層142と、を備えていてもよい。例えば、低融点金属層141としては、Snや、Sn-Cu合金、Sn-Bi合金、Sn-Ag合金等の金属材料を用いることができる。例えば、高融点金属層142としては、Ag、Cu、Ag又はCuを主成分とする合金を用いることができる。例えば、高融点金属層142としては、ヒューズエレメント120をリフロー炉によって絶縁基板26上に実装を行う場合においても溶融しない高い融点を有するものを用いることができる。
【0090】
例えば、高融点金属層142には、高融点金属層142の表面から厚み方向に凹む凹部60,160が形成されていてもよい。図の例では、12個の凹部60,160が設けられている。12個の凹部60,160は、ヒューズエレメント120の最下面(図の例では、低融点金属層141の下側にある高融点金属層142)から上側に凹む8個の凹部60と、ヒューズエレメント120の最上面(図の例では、低融点金属層141の上側にある高融点金属層142)から下側に凹む4個の凹部160と、である。8個の凹部60は、第1の電極22と中間電極21との間の中心位置CP1よりも第1の電極22の外縁の近くに配置された2つの凹部60と、第2の電極23と中間電極21との間の中心位置CP2よりも第2の電極23の外縁の近くに配置された2つの凹部60と、第1の電極22と中間電極21との間の中心位置CP1よりも中間電極21の外縁の近くに配置された2つの凹部60と、第2の電極23と中間電極21との間の中心位置CP2よりも中間電極21の外縁の近くに配置された2つの凹部60と、である。4個の凹部160は、第1の電極22と中間電極21との間の中心位置CP1よりも第1の電極22の外縁の近くに配置された2つの凹部160と、第2の電極23と中間電極21との間の中心位置CP2よりも第2の電極23の外縁の近くに配置された2つの凹部160と、である。なお、凹部60,160の設置数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0091】
図14の変形例では、凹部60,160は、ヒューズエレメント120の厚み方向の両面に形成されている。
この構成によれば、ヒューズエレメント120の厚み方向の両面に形成された凹部60,160に溶融したはんだ28の一部が入り込むことにより、ブリード現象の発生をより効果的に抑制することができる。したがって、ブリッジ現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0092】
例えば、図15及び図16に示すように、凹部60は、ヒューズエレメント120Aの厚み方向の片面(図の例では、下面)に一様に形成されていてもよい。図の例では、ヒューズエレメント120Aの厚み方向の片面に8個の凹部60が形成されており、各凹部60は、平面視で直線状に形成されている。図の例では、各凹部60は、平面視で互いに隣り合う2個の間隔が同じ間隔をもって規則的に配置されている。なお、凹部60の設置数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0093】
例えば、図17に示すように、凹部60,160は、ヒューズエレメント120Bの厚み方向の両面(図の例では、上面及び下面)に一様に形成されていてもよい。図の例では、ヒューズエレメント120Bの厚み方向の両面に16個(片面に8個ずつ)の凹部60,160が形成されており、各凹部60,160は、平面視で直線状に形成されている。図の例では、各凹部60,160は、平面視で互いに隣り合う2個の間隔が同じ間隔をもって規則的に配置されている。なお、凹部60,160の設置数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0094】
例えば、図18に示すように、凹部160Cは、ヒューズエレメント120Cの厚み方向の片面(図の例では、下面)に一様に平面視で点線状に形成されていてもよい。図の例では、凹部160C及び凸部161Cを含む凹凸構造162CがY方向に沿うように点線状に形成されている。なお、凹凸構造162Cの形成態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0095】
例えば、図19に示すように、凹部160Dは、ヒューズエレメント120Dの厚み方向の片面(図の例では、下面)に一様に平面視で円形状に形成されていてもよい。図の例では、ヒューズエレメント120Dの厚み方向の片面に16個の凹部160Dが形成されている。各凹部160Dは、X方向(前後方向)では平面視で所定の間隔をもって互いに同一の仮想線上に配置されている。各凹部160Dは、Y方向(左右方向)では平面視で所定の間隔をもってジグザグ状に配置されている。なお、凹部160Dの配置態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0096】
例えば、図20に示すように、第1の電極122及び第2の電極123のそれぞれには、平面視で凹形状の凹部170が形成されていてもよい。各凹部170は、第1の電極122及び第2の電極123のそれぞれの表面から厚み方向に凹凸をなす凹凸構造172を構成している。図の例では、第1の電極122及び第2の電極123のそれぞれに、6個の凹部170が形成されている。なお、凹部170の設置数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0097】
図20の変形例では、第1の電極122及び第2の電極123のそれぞれには、第1の電極122及び第2の電極123のそれぞれの表面から厚み方向に凹凸をなす凹凸構造172が形成されている。
この構成によれば、第1の電極122及び第2の電極123のそれぞれに形成された凹凸構造172において、溶融したはんだの一部を受け止めることができる。このため、溶融したはんだが予定した固定範囲に更に収まりやすくなり、ブリード現象の発生をより効果的に抑制することができる。したがって、ブリッジ現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0098】
例えば、図21及び図22に示すように、第1の電極122A及び第2の電極123Aのそれぞれには、平面視で円形状の凸部171Aが形成されていてもよい。各凸部171Aは、第1の電極122A及び第2の電極123Aのそれぞれの表面から厚み方向に凹凸をなす凹凸構造172Aを構成している。図の例では、第1の電極122A及び第2の電極123Aのそれぞれに、30個の凸部171Aが形成されている。なお、凸部171Aの設置数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0099】
図21および図22の変形例では、第1の電極122A及び第2の電極123Aのそれぞれには、第1の電極122A及び第2の電極123Aのそれぞれの表面から厚み方向に凹凸をなす凹凸構造172Aが形成されている。
この構成によれば、第1の電極122A及び第2の電極123Aのそれぞれに形成された凹凸構造172Aにおいて、溶融したはんだの一部を受け止めることができる。このため、溶融したはんだが予定した固定範囲に更に収まりやすくなり、ブリード現象の発生をより効果的に抑制することができる。したがって、ブリッジ現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0100】
(保護素子(第2実施形態))
本発明の第2実施形態に係る保護素子211について、図23図29を参照して説明する。第2実施形態の保護素子211は、主に、位置決め構造を持つ絶縁カバー260を備える点で、前述の第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の各図において、第1実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0101】
図23から図29を併せて参照し、保護素子211は、絶縁基板226と、ヒューズ端子として機能する第1、第2の電極222,223(端子部222,223)と、ヒータ端子として機能する第3の電極225と、絶縁基板226の表面上に形成された発熱抵抗体224と、発熱抵抗体224を被覆する絶縁層227と、絶縁層227上に積層されるとともに発熱抵抗体224と接続された発熱体引出電極221と、第1の電極222、発熱体引出電極221及び第2の電極223にわたって固定用はんだ28を介して搭載されるヒューズエレメント220と、島状電極233と、絶縁カバー260と、を備える。ヒューズエレメント220は、はんだ28によって端子部222,223等に接合されている。ヒューズエレメント220には、ヒューズエレメント220の表面から厚み方向に凹む凹部60が形成されており、凹部60に、固定部材28の一部が設けられている。
【0102】
絶縁カバー260は、上下方向に積層して配置される第1保持部材261及び第2保持部材262を備える。
第1保持部材261は、上側が閉塞し且つ下側が開口する略四角形の有底筒状である。第1保持部材261の各角部(四つの隅部)には、凹部263が形成されている。
第2保持部材262は、平面視で第1保持部材261と同じ外形を持つ略四角形であり、断面視で中央部が上側に開口する凹形状である。第2保持部材262の各角部(四つの隅部)には、凹部263に嵌合可能な凸部264が設けられている。
【0103】
第1保持部材261に形成された凹部263及び第2保持部材262に設けられた凸部264は、絶縁カバー260の位置決め構造を構成する。例えば、まず、第1保持部材261の下面と第2保持部材262の上面との少なくとも一面に接着剤を塗布する。次に、平面視で第1保持部材261及び第2保持部材262が重なるように第1保持部材261の下面と第2保持部材262の上面とを合わせることで、各凸部264を各凹部263に嵌合する。これにより、第1保持部材261と第2保持部材262とを接着剤で固定することができる。
【0104】
なお、第1保持部材261の各角部に凹部263が形成され、第2保持部材262の各角部に凸部264が設けられることに限定されない。例えば、第1保持部材261の各角部に凸部264が設けられ、第2保持部材262の各角部に凹部263が形成されていてもよい。例えば、凸部264の設置態様及び凹部263の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0105】
第1の電極222の後端部(+X端部)は、ヒューズエレメント220の前端部(-X端部)と接続されている。第1の電極222の前端部は、絶縁ケース260の前側から絶縁ケース260の外部に突出することで露出している。
第2の電極223の前端部は、ヒューズエレメント220の後端部と接続されている。第2の電極223の後端部は、絶縁ケース260の後側から絶縁ケース260の外部に突出することで露出している。
第3の電極225の右端部は、発熱体引出電極221の左端部と接続されている。第3の電極225の左端部は、絶縁ケース260の左側から絶縁ケース260の外部に突出することで露出している。
【0106】
なお、第2実施形態の保護素子211は、ねじ止め式である。具体的に、保護素子211は、絶縁ケース260の外に突出した各電極222,223,225の孔(各端子の孔)にねじを通して配線に接続するものである。
【0107】
島状電極233は、絶縁基板226の表面の両端部に形成されている。絶縁基板226の一端側の島状電極233と他端側の島状電極233とは、発熱抵抗体224等を介して、前後方向に互いに離間している。島状電極233は、ヒューズエレメント220が溶断したとき、ぬれ性によって、ヒューズエレメント220の溶融導体の一部を、第1、第2の電極222,223と離間して保持する。
【0108】
以上説明した本実施形態の保護素子211は、位置決め構造を持つ絶縁カバー260を備える。
この構成によれば、絶縁カバー260を構成する第1保持部材261と第2保持部材262とを、位置決めしつつ固定することができる。
【0109】
(保護素子(第3実施形態))
本発明の第3実施形態に係る保護素子311について、図30を参照して説明する。第3実施形態の保護素子311は、主に、発熱抵抗体324が絶縁基板326A,326Bにある構造がヒューズエレメント320を挟み込んでいる点で、前述の第2実施形態と異なる。なお本実施形態の図において、第1実施形態及び第2実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0110】
図30に示すように、保護素子311は、第1、第2の絶縁基板326A,326Bと、第1、第2の電極222,223(端子部222,223)と、絶縁基板326A,326Bの表面上に設けられた発熱抵抗体324と、発熱抵抗体324を被覆する絶縁層327と、絶縁層327上に積層されるとともに発熱抵抗体324と接続された発熱体引出電極321と、第1の電極222、発熱体引出電極321及び第2の電極223にわたって固定用はんだ28を介して搭載されるヒューズエレメント320と、表面電極371と、導電層372と、裏面電極373と、島状電極333と、絶縁カバー260と、を備える。ヒューズエレメント320は、はんだ28によって端子部222,223等に接合されている。ヒューズエレメント320には、ヒューズエレメント320の表面から厚み方向に凹む凹部60が形成されており、凹部60に、固定部材28の一部が設けられている。
【0111】
絶縁基板326A,326Bは、第1、第2の電極222,223の間に配置されている。絶縁基板326A,326Bは、互いに上下方向に離間している。一方の絶縁基板326Aは、ヒューズエレメント320の上方に配置されている。他方の絶縁基板326Bは、ヒューズエレメント320の下方に配置されている。
絶縁基板326A,326Bには、絶縁基板326A,326Bの厚さ方向に貫通する貫通孔326hが形成されている。
【0112】
表面電極371は、絶縁基板326A,326Bの表面上(ヒューズエレメント320側の面上)に形成されている。表面電極371は、ヒューズエレメント320と絶縁層327との間に配置されている。表面電極371は、ヒューズエレメント320の一部とはんだ等を介して接続されている。
【0113】
ヒューズエレメント320が発熱抵抗体324の発熱により溶融すると、溶融したヒューズエレメント320(以下「溶融導体」ともいう。)が表面電極371に凝集する。このため、表面電極371に凝集した溶融導体を、毛管現象により貫通孔326h内に吸引させることができる。これにより、保護素子311は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント320の断面積を増大させた場合にも、溶融導体が絶縁基板326A,326Bの表面上に過剰に凝集することが無く、確実に第1、第2の電極222,223間の電流経路を遮断することができる。
【0114】
導電層372は、絶縁基板326A,326Bの貫通孔326hの内周面に形成されている。導電層372は、表面電極371と連続している。導電層372は、例えば、溶融導体がぬれ広がる金属材料で形成されている。導電層372は、例えば、ペースト処理、メッキ処理等で形成されている。
【0115】
導電層372が表面電極371と連続していることにより、保護素子311は、表面電極371に凝集した溶融導体を貫通孔326h内に引き込みやすくなる。これにより、より多くの溶融導体を貫通孔326h内に吸引させることができる。
【0116】
裏面電極373は、絶縁基板326A,326Bの裏面(ヒューズエレメント320とは反対側の面)に形成されている。裏面電極373は、絶縁基板326A,326B等を挟んで表面電極371とは反対側に形成されている。裏面電極373は、導電層372と連続している。
【0117】
裏面電極373が導電層372と連続していることにより、導電層372を伝って貫通孔326h内に吸引された溶融導体が裏面電極373に凝集する。このため、さらにより多くの溶融導体を吸引させることができる。
【0118】
島状電極333は、絶縁基板326A,326Bの表面の端部に形成されている。島状電極333は、前後方向において表面電極371の外側に離間している。島状電極333は、ヒューズエレメント320が溶断したとき、ぬれ性によって、溶融導体の一部を、表面電極371や第1、第2の電極222,223と離間して保持する。
【0119】
なお、貫通孔326h内には、ヒューズエレメント320よりも融点の低い予備はんだ375が充填されていてもよい。この構成によれば、発熱抵抗体324が発熱したとき、予備はんだ375がヒューズエレメント320より先に溶融するため、溶融導体を貫通孔326hに呼び込むことができる。このため、溶融導体を、効率よく絶縁基板326A,326Bの表面側から裏面側に吸引し、姿勢に拘わらず、第1の電極222と第2の電極223との間の電流経路を確実に遮断することができる。
【0120】
例えば、貫通孔326h内の少なくとも一部には、予備はんだ375と共に、又は予備はんだ375に代えて、フラックスが充填されていてもよい。この構成によっても、ヒューズエレメント320の濡れ性を高め、効率よく溶融導体を貫通孔326hに呼び込むことができる。
【0121】
本実施形態では、複数の発熱抵抗体324が、ヒューズエレメント320の上下方向の両面側にそれぞれ配置されている。
各発熱抵抗体324の一端は、発熱体引出電極321を介してヒューズエレメント320と接続されている。各発熱抵抗体324の他端は、不図示の外部接続電極を介して発熱抵抗体324を発熱させるための電源に接続されている。
【0122】
保護素子311は、ヒューズエレメント320を溶断する際には、各発熱抵抗体324がそれぞれ発熱するとともに溶融導体を各貫通孔326h内に吸引する。したがって、保護素子311は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント320の断面積を増大させ溶融導体が多量に発生した場合にも、溶融導体を上下方向両側から吸引し、確実にヒューズエレメント320を溶断させることができる。また、保護素子311は、上下方向両側から溶融導体を吸引することにより、より速やかにヒューズエレメント320を溶断させることができる
【0123】
保護素子311は、ヒューズエレメント320として、内層を構成する低融点金属を高融点金属で被覆する被覆構造を用いた場合にも、ヒューズエレメント320を速やかに溶断させることができる。高融点金属で被覆されたヒューズエレメント320は、発熱抵抗体324が発熱した場合にも、外層の高融点金属が溶融する温度まで加熱するのに時間を要する。保護素子311は、複数の発熱抵抗体324を備え、同時に各発熱抵抗体324を発熱させることで、外層の高融点金属を速やかに溶融温度まで加熱することができる。したがって、保護素子311によれば、外層を構成する高融点金属層の厚みを厚くすることができ、さらなる高定格化を図りつつ、速溶断特性を維持することができる。
【0124】
保護素子311は、一対の発熱抵抗体324が対向してヒューズエレメント320に接続されることが好ましい。これにより、保護素子311は、一対の発熱抵抗体324で、ヒューズエレメント320の同一箇所を両面側から同時に加熱するとともに上下方向両側から溶融導体を吸引することができる。したがって、より速やかにヒューズエレメント320を加熱、溶断することができる。
【0125】
なお、発熱抵抗体324は、絶縁基板326A,326Bの表面側に設けられることに限らず、絶縁基板326A,326Bの裏面側に設けられてもよい。例えば、発熱抵抗体324の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0126】
本発明の保護素子は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0127】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例および参考例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0128】
11,211,311 保護素子
20,120,120A,120B,120C,120D,220,320 ヒューズエレメント
21,221,321 発熱体引出電極(中間電極)
22,122,122A,222 第1の電極
23.123,123A,223 第2の電極
24,224,324 発熱抵抗体
26,226,326A,326B 絶縁基板
28 固定用はんだ(固定部材)
60,160,160C,160D 凹部
61,161C 凸部
172,172A…凹凸構造
CP1,CP2 中心位置
図1
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