IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人立命館の特許一覧 ▶ ニチニチ製薬株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-乾癬の予防、治療又は改善剤 図1
  • 特開-乾癬の予防、治療又は改善剤 図2
  • 特開-乾癬の予防、治療又は改善剤 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157617
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】乾癬の予防、治療又は改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/744 20150101AFI20241031BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241031BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K35/744
A61P17/06
A23L33/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072058
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(71)【出願人】
【識別番号】591246849
【氏名又は名称】ニチニチ製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】五藤 健児
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF06
4B018MF14
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC61
4C087BC62
4C087CA09
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
【課題】乾癬の予防、治療又は改善剤を提供する。
【解決手段】エンテロコッカス属に属する乳酸菌の菌体及びその菌体成分からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、乾癬の予防、治療又は改善剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンテロコッカス属に属する乳酸菌の菌体及びその菌体成分からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、乾癬の予防、治療又は改善剤。
【請求項2】
前記エンテロコッカス属に属する乳酸菌がエンテロコッカス・フェカリスである、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記エンテロコッカス属に属する乳酸菌がエンテロコッカス・フェカリスNF-1011株(FERM BP-10902)である、請求項1に記載の剤。
【請求項4】
前記菌体が死菌体である、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項5】
前記乳酸菌の菌体成分が、乳酸菌の溶菌酵素及び加熱処理物である、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項6】
経口製剤形態である、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項7】
食品組成物である、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項8】
食品添加物である、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項9】
医薬である、請求項1又は2に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾癬の予防、治療又は改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乾癬は、皮膚の炎症と角化細胞の異常増殖を特徴とする慢性の皮膚疾患である。乾癬の原因は未だ十分に解明されておらず、遺伝的要因に種々の外的要因(感染症、ストレス、薬剤など)が加わることにより発症すると考えられており、皮膚細胞の正常な増殖機構及び分化機構からの逸脱が主要な原因と考えられている。また、近年では免疫機能の異常が関与していることが示されつつある。乾癬は5つの類型、すなわち、尋常性乾癬、関節症性乾癬(乾癬性関節炎)、滴状乾癬、乾癬性紅皮症及び膿疱性乾癬に大別される。乾癬はリンパ球異常であり、紅斑、鱗屑、浸潤・肥厚などの症状を有する。
【0003】
乾癬の治療には、コルチコステロイド、ビタミンD誘導体、免疫抑制剤(シクロスポリン等)、ビタミンA誘導体(レチノイド)、生物学的製剤(例えば、抗TNF-α抗体)、光化学療法(PUVA)などが用いられているが、必ずしも満足しうる治療効果が得られていない。さらに、副作用の面でも、種々の問題があり、改善の余地が存在する。また、現在、抗IL-17抗体療法が確立され、重症化した乾癬病態に著効を示す。ただし、これらの治療アプローチは限定的であり、治癒的ではない。治療を中止すると症状が再発することから、生物学的製剤は患者の生涯を通じて投与されなければならない。したがって、既存の治療薬とは異なるタイプの、より効果的かつ安全性の高い乾癬の治療薬が望まれている。
【0004】
腸内フローラに影響する因子として従来、乳酸菌が有名でその作用には整腸作用以外にも各種の作用が報告されている。また、エンテロコッカス属に属する乳酸菌は、生体に対して多様な効果を有することが知られている。
【0005】
例えば、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)NF-1011株は、血圧上昇抑制作用及び心臓肥大防止効果(特許文献1)、免疫賦活効果(特許文献2)、インターフェロン産生増強効果(特許文献3)、感染防御効果(特許文献4)、制癌増強効果(特許文献5)、抗癌剤の毒性軽減効果(特許文献6)、がん転移抑制効果(特許文献7)などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-201871号公報
【特許文献2】特開平8-99887号公報
【特許文献3】特開平8-259450号公報
【特許文献4】特開平8-283166号公報
【特許文献5】特開平8-295631号公報
【特許文献6】特開平9-48733号公報
【特許文献7】特開2019-131475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、乾癬の予防、治療又は改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、エンテロコッカス・フェカリスNF-1011株の菌体及びその菌体成分が、乾癬モデルマウスに経口投与することによって乾癬の症状を抑制することができることを見出した。
【0009】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の乾癬の予防、治療又は改善剤を提供するものである。
【0010】
項1.エンテロコッカス属に属する乳酸菌の菌体及びその菌体成分からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、乾癬の予防、治療又は改善剤。
項2.前記エンテロコッカス属に属する乳酸菌がエンテロコッカス・フェカリスである、項1に記載の剤。
項3.前記エンテロコッカス属に属する乳酸菌がエンテロコッカス・フェカリスNF-1011株(FERM BP-10902)である、項1に記載の剤。
項4.前記菌体が死菌体である、項1~3のいずれか一項に記載の剤。
項5.前記乳酸菌の菌体成分が、乳酸菌の溶菌酵素及び加熱処理物である、項1~4のいずれか一項に記載の剤。
項6.経口製剤形態である、項1~5のいずれか一項に記載の剤。
項7.食品組成物である、項1~5のいずれか一項に記載の剤。
項8.食品添加物である、項1~5のいずれか一項に記載の剤。
項9.医薬である、項1~7のいずれか一項に記載の剤。
【発明の効果】
【0011】
エンテロコッカスに属する乳酸菌の菌体及びその菌体成分は、顕著に優れた乾癬の治療、予防及び改善作用を有するので、乾癬の予防、治療又は改善剤の有効成分として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】イミキモドを塗布し、FK-23を投与したマウスの背中の写真である。
図2】イミキモドを塗布し、FK-23を投与したマウスの皮膚組織のパラフィン切片の写真及び表皮の厚さを示すグラフである。データは平均値±標準誤差値、**:P<0.01 vs CRL,††:P<0.01 vs IMQ,Tukey’s post-hoc test
図3】イミキモドを塗布し、FK-23を投与したマウスの臨床スコア(PASI)を示すグラフである。データは平均値±標準誤差値、***:P<0.005 vs CRL,†††:P<0.005 vs IMQ,Tukey’s post-hoc test
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
本明細書において「乾癬」とは、表皮細胞の増殖及び分化異常と炎症細胞浸潤を特徴とする慢性、再発性の炎症性不全角化症をいい、典型的にみられる症状は、銀色の鱗屑で覆われた境界明瞭な紅色の丘疹または局面である。乾癬は遺伝的素因に種々の環境因子が加わって発症すると考えられる。
【0015】
本発明の乾癬の予防、治療又は改善剤は、エンテロコッカス属に属する乳酸菌の菌体及びその菌体成分からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0016】
エンテロコッカス属に属する乳酸菌としては、特に限定されず、例えば、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・アビウム(Enterococcus avium)、エンテロコッカス・カッセリフラバス(Enterococcus casseliflavus)、エンテロコッカス・ガリナルム(Enterococcus gallinarum)、エンテロコッカス・フラベセンス(Enterococcus flavescens)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはエンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム等であり、より好ましくはエンテロコッカス・フェカリスである。また、エンテロコッカス・フェカリスの中でも、好ましくは健常者の糞便から分離された菌株であるエンテロコッカス・フェカリスNF-1011株である。エンテロコッカス・フェカリスNF-1011株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566))に1991年10月8日に受託番号FERM P-12564として寄託されている。また、この菌株は、現在国際寄託に移管されており、その受託番号はFERM BP-10902である。なお、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターは、2012年4月に独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センターと統合され、現在、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター特許生物寄託センター(NITE-IPOD)(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)にてその微生物寄託業務は承継されている。
【0017】
エンテロコッカス属に属する乳酸菌の菌体は、エンテロコッカス属に属する乳酸菌の構成物全体である限り特に限定されず、生菌体であっても、死菌体であってもよい。菌体は、凍結乾燥物等の乾燥物であってもよい。エンテロコッカス属に属する乳酸菌の生菌体は、ATCC、IFO、JCM等の国内分譲機関、国際分譲機関等から取り寄せることができるし、生物体から単離することもできる。
【0018】
また、培養により容易に大量に得ることができるため、培養して得られた生菌体を用いると生産コストが安く経済的である。エンテロコッカス属に属する乳酸菌の生菌体は、公知の方法に従って培養することにより、増殖させることもできる。例えば、該乳酸菌を、適量の滅菌ロゴザ液体培地に播種し、35~37℃にて10~16時間好気的に静置培養し、前培養液を得て、これを大容量の滅菌ロゴザ液体培地に加え同様に静置培養することによって、大量の生菌体を得ることができる。生菌体を採用する場合、例えば、培養液そのものを用いてもよいし、該培養液の固形分(例えば、培養液から遠心分離等で生菌体を沈殿させて得られた沈殿物、その後必要に応じて生理食塩水等で洗浄して得られた沈殿物等)を用いてもよいし、該固形分の懸濁液(例えば、生理食塩水などの等張液に懸濁して得られた懸濁液等)を用いてもよい。
【0019】
エンテロコッカス属に属する乳酸菌の死菌体は、特に限定されないが、例えば、生菌体の加熱処理物であることができる。熱処理の温度は、100℃以上であれば特に限定されないが、好ましくはオートクレーブ処理ができる温度(例えば、110~125℃)である。熱処理時間は、例えば、1分間以上、好ましくは5~20分間、より好ましくは5~15分間程度である。
【0020】
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリスNF-1011株の菌体は、例えば、FK-23(商標)としてニチニチ製薬株式会社より市販されている。
【0021】
本発明において「乳酸菌の菌体成分」とは、乳酸菌の細胞壁が破壊されることにより細胞外に放出される成分を意味する。
【0022】
乳酸菌の菌体成分は、特に限定されないが、例えば、生菌体の細胞壁破壊処理物である。この細胞壁破壊は、生菌体の細胞壁の全体であってもよいし、又は一部分であってもよい。細胞壁破壊処理方法としては、例えば、熱処理、物理的力による処理、溶菌酵素による処理等、或いはこれらを組み合わせた処理が挙げられる。これらの中でも、好ましくは溶菌酵素による処理を含む方法が挙げられ、より好ましくは(a)溶菌酵素による処理、並びに(b)熱処理及び物理的力による処理からなる群より選択される少なくとも1種の処理(好ましくは熱処理)を含む方法が挙げられ、更に好ましくは(a)溶菌酵素による処理後に、(b)熱処理及び物理的力による処理からなる群より選択される少なくとも1種の処理(好ましくは熱処理)を行うことを含む方法が挙げられる。
【0023】
熱処理の温度は、100℃以上であれば特に限定されないが、好ましくはオートクレーブ処理ができる温度(例えば、110~125℃)である。熱処理時間は、細胞壁の一部又は全部を破壊できる限り特に限定されず、熱処理の温度に応じて適宜設定することができる。熱処理時間は、例えば1分間以上、好ましくは5~20分間、より好ましくは5~15分間程度である。
【0024】
物理的力による処理の方法は、細胞壁の一部又は全部を破壊できる限り特に限定されない。例えば、超音波処理、フレンチプレス等が挙げられる。
【0025】
溶菌酵素による処理に用いる酵素は、細胞壁の一部又は全部を破壊できる限り特に限定されず、細菌類を溶菌するために一般的に用いられている酵素を広く用いることができる。溶菌酵素としては、例えば、リゾチーム、アクチナーゼ、ザイモリエース、キタラーゼ、ムタノシリン、アクロモペプチダーゼ等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはリゾチームである。溶菌酵素は、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
溶菌酵素による処理条件は、溶菌酵素の種類、溶菌対象(生菌体)量等に応じて適宜設定することができる。例えば、溶菌酵素を終濃度0.01~1mg/mLになるように生菌体懸濁液に添加し、30~40℃で1~10時間処理すればよい。
【0027】
乳酸菌の菌体成分は、該乳酸菌の菌体を構成する成分である限り特に制限されない。該菌体成分は、好ましくは水溶性成分である。水溶性成分は、例えば、乳酸菌を細胞壁破壊した物から、遠心分離等により固形分を除いて得られる。
【0028】
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリスNF-1011株の菌体成分は、例えば、LFK(登録商標)としてニチニチ製薬株式会社より市販されている。
【0029】
エンテロコッカス属に属する乳酸菌の菌体は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
本発明の剤は、各種分野において、例えば、医薬、食品組成物(例えば、健康食品、栄養補助食品(バランス栄養食、サプリメントなど)、栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品等を含む)、食品添加剤などとして利用することができる。
【0031】
本発明の剤の製剤形態は、特に限定されず、本発明の剤の利用分野に応じて、各利用分野において通常使用される製剤形態をとることができる。必須成分を必要に応じて濃縮状態とすることにより、多量の菌体又はその菌体成分であっても投与可能な剤形に調製することができる。製剤形態としては、例えば、錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤等を含む)、ゼリー剤などの経口摂取に適した製剤形態(経口製剤形態)、注射剤、貼付剤、ローション剤、クリーム剤などの非経口摂取に適した製剤形態(非経口製剤形態)が挙げられ、好ましくは経口製剤形態が挙げられる。特に、食品組成物としては、液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えば、ガム、錠菓等の菓子類、栄養飲料等の飲料類などのバランス栄養食、粉末、カプセル、錠剤などが挙げられる。
【0032】
本発明の剤は、必須成分の他に、利用分野、製剤形態等に応じて、他の成分を適宜配合してもよい。配合できる成分としては、特に制限されず、例えば、水、アミノ酸類、アルコール類、多価アルコール類、糖類、ガム質、多糖類などの高分子化合物、界面活性剤、防腐・抗菌・殺菌剤、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、酵素成分、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、清涼化剤の他、ミネラル類、細胞賦活剤、滋養強壮剤、賦形剤、増粘剤、安定化剤、保存剤、等張化剤、分散剤、吸着剤、崩壊補助剤、湿潤剤又は湿潤調節剤、防湿剤、着色料、着香剤又は香料、芳香剤、還元剤、可溶化剤、溶解補助剤、発泡剤、粘稠剤又は粘稠化剤、溶剤、基剤、乳化剤、可塑剤、緩衝剤、光沢化剤などを挙げることができる。
【0033】
本発明の剤における必須成分の含有量は、その使用形態により適宜選択することができるので特に限定されない。本発明の剤中に必須成分を有効量配合すればよいが、本発明の剤の質量に対して必須成分を乾燥質量で、通常0.001~60%、より好ましくは0.01~40%、特に好ましくは0.1~30%の比率で配合できる。
【0034】
本発明の剤の適用(例えば、投与、摂取、接種など)量は、症状、患者の年齢、体重、製剤形態等に応じて適宜増減することができる。成人1日あたり必須成分を乾燥質量として、通常0.001~0.5g/kg体重を、好ましくは0.002~0.1g/kg体重を適用することができ、更に、1日1回又は数回に分けて適用することができる。
【0035】
本発明の剤は、哺乳動物(ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、モルモット、ブタ、ウサギ、ヒツジ等)、特にヒトに適用されるものである。
【0036】
後述する実施例で示すように、本発明者らは乾癬モデルマウスにエンテロコッカス属に属する乳酸菌を経口投与することにより、乾癬の症状(皮膚症状、表皮の肥厚)を抑制することができることを見出した。そのため、当該作用に基づいて、エンテロコッカス属に属する乳酸菌の菌体及びその菌体成分には乾癬の治療、予防及び改善作用が期待できることが示された。結果として、エンテロコッカス属に属する乳酸菌の菌体及びその菌体成分は、乾癬の予防、治療又は改善剤の有効成分として有用である。
【0037】
有効成分であるエンテロコッカス属に属する乳酸菌の菌体及びその菌体成分は、従来より食品として摂取されてきた物質であるため安全性が高い。
【0038】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term “comprising” includes “consisting essentially of” and “consisting of.”)。
【0039】
また、上述した本発明の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本発明に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本発明には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0040】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0041】
菌体試料の調製方法
1.FK-23
エンテロコッカス・フェカリスNF-1011株を液体培地中で37℃、18時間培養した。遠心分離で集菌し、蒸留水で洗浄した後、これを110℃で10分間熱処理し、処理後、スプレードライで乾燥させた。得られた死菌体乾燥物を、菌体試料(FK-23)として、以下の実験で用いた。
【0042】
試験例
<実験方法>
・マウスと手順
7週齢の雄マウスを日本エスエルシー株式会社から入手し、セミバリア動物室(12:12の明暗サイクル、自由摂食(水又は2%FK-23))にて1週間飼育した。マウスを3群に分けた:コントロール(CRL)、イミキモド塗布(IMQ)、IMQ塗布+2%FK-23経口投与(IMQ+FK-23)。C57BL/6Nマウスを剃毛し、24時間後に62.5mg/cmのイミキモド(IMQ)クリーム(5%)(持田製薬株式会社)を8週齢マウスの背中に連続6日間(0~6日目)適用した。疾患の重症度は、紅斑、鱗屑、皮膚肥厚の複合スコアであるPASI(Psoriasis Area and Severity Index)を改変した採点システムを用いて、それぞれ独立して、目に見える表現型なし(0)から重症(5)まで、合計12点(修正PASI)の可能なスコアで評価した。IMQ塗布の6日後にマウスの背部皮膚を採取した。サンプルは10%ホルマリンで固定し、免疫組織化学的評価のためにパラフィン包埋した。全ての動物プロトコルは、立命館大学動物実験委員会の承認を得ている(BKC2021-026)。
【0043】
・組織学的解析
組織は、以前報告しているように10%(w/v)パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンブロックに包埋した。ブロックは、ミクロトーム(Leica Biosystems社)で切片化した。切片(厚さ5μm)をヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色し、顕微鏡(BX51/DP74)及びcellSensソフトウェア(オリンパス株式会社)を用いて画像を取得し、表皮の厚さを計測した。
【0044】
・統計解析
有意性は、一元配置分散分析(ANOVA)を用いて検定した。P値が0.05未満の場合は、有意とみなした。
【0045】
<結果>
プロバイオティクスであるFK-23は、乾癬に対する有効性は証明されていない。そのため、イミキモド誘発乾癬のマウスモデルでFK-23の効果を調べた。その結果を図1-3に示す。
【0046】
図1に皮膚症状の観察結果を示す。図1から、イミキモド塗布+FK-23群においてイミキモドの作用が抑制されていた。図2にマウスの皮膚組織のパラフィン切片の写真を示す。イミキモド塗布群は、イミキモド非塗布群と比べて表皮が厚くなっているのに対して、イミキモド塗布+FK-23群はイミキモド塗布群に比べて表皮肥厚が抑制されていた。このことからFK-23には表皮肥厚に対して保護効果が観察された。
【0047】
さらに、図3において、イミキモド塗布群は、イミキモド非塗布群と比べてPASIが有意に高くなっており、イミキモド塗布+FK-23群はイミキモドの作用が有意に抑制されていた。
図1
図2
図3