(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015762
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】塗料撹拌用のボルテックスミキサー
(51)【国際特許分類】
B01F 31/23 20220101AFI20240130BHJP
B01F 35/42 20220101ALI20240130BHJP
B01F 35/32 20220101ALI20240130BHJP
B01F 35/50 20220101ALI20240130BHJP
B01F 35/222 20220101ALI20240130BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240130BHJP
B05B 15/20 20180101ALI20240130BHJP
B01F 101/30 20220101ALN20240130BHJP
【FI】
B01F31/23
B01F35/42
B01F35/32
B01F35/50
B01F35/222
B05C11/10
B05B15/20
B01F101:30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118052
(22)【出願日】2022-07-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】517084782
【氏名又は名称】株式会社エトワール
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 久利司
【テーマコード(参考)】
4D073
4F042
4G036
4G037
【Fターム(参考)】
4D073BB01
4D073BB03
4D073CA30
4D073DA10
4F042AA01
4F042BA05
4F042CA03
4F042CA06
4G036AB18
4G037DA25
4G037DA30
4G037EA10
(57)【要約】
【課題】 主にプラモデルなどの模型製作に使用される塗料について、塗料瓶などの容器に収容された状態の塗料を攪拌するための新規な技術を提案する。
【解決手段】プラモデルなどの模型制作に利用される塗料等が収容された容器の内容液を攪拌して均質化するための塗料用のボルテックスミキサー1であって、モーターを収容する本体部20と、モーターの駆動によって旋回する旋回ステージ30と、を備え、旋回ステージ30には容器を保持するための保持機構50を備える、こととする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラモデルなどの模型制作に利用される塗料等が収容された容器の内容液を攪拌して均質化するための塗料撹拌用のボルテックスミキサーであって、モーターを収容する本体部と、モーターの駆動によって旋回する旋回ステージと、を備え、旋回ステージには容器を水平に保って保持するための保持機構を備える、塗料撹拌用のボルテックスミキサー。
【請求項2】
旋回ステージは、複数の偏心軸に支持されており、少なくとも一つの偏心軸には、旋回ステージの旋回によって生じるモーメントとバランスを取って、装置全体の揺れの発生を防止するためのカウンターウェイトが設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗料撹拌用のボルテックスミキサー。
【請求項3】
保持機構は、一対の支持壁部と、支持壁部同士を相対的に回動可能に連結する垂直方向の回動軸部と、を有し、支持壁部にて容器を両側から挟み込むようにして保持する構成とする、
ことを特徴とする請求項2に記載の塗料撹拌用のボルテックスミキサー。
【請求項4】
保持機構は、高さの高い容器を保持するために好適な高支持壁領域と、高支持壁部よりも高さの低い低支持壁部であって、高さの低い容器を保持するために好適な低支持壁領域と、を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の塗料撹拌用のボルテックスミキサー。
【請求項5】
旋回ステージの旋回速度を設定するための操作スイッチを有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の塗料撹拌用のボルテックスミキサー。
【請求項6】
旋回ステージを所定時間だけ旋回させることで、使用者が撹拌完了までの時間的拘束を受けずに必要十分な撹拌を自動的に行い、安全に停止させる利便性を向上するタイマー機能を設けた、
ことを特徴とする請求項5に記載の塗料撹拌用のボルテックスミキサー。
【請求項7】
旋回ステージの旋回半径は、容器が載置される設置台の最大幅の3%~7%である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の塗料撹拌用のボルテックスミキサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の液体に渦流を生じさせるボルテックスミキサーに関するものであり、特に、プラモデルなどの模型作成時に利用される塗料の容器(塗料瓶(塗料ビン)やスプレー缶)に収容された塗料を撹拌するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験管の底部を高速旋回して内容液を撹拌する電動器具として、ボルテックスミキサーが知られており、非特許文献1乃至3に示すように多くのメーカーから各種の商品が発売されている。
【0003】
ボルテックスミキサーは、試験管や容器内の液体に渦を形成して撹拌をするものであり、試薬の混合や均一な倍散に利用することや、複数色のマニュキアを混合して色を調合する際に用いられている。
【0004】
非特許文献1乃至3に示される市販のボルテックスミキサーは、上方に向けたモーターの駆動軸の中心からずれた位置にゴム製の椀状部材が取り付けられる。モーターを駆動して椀状部材を作動させ、液体の入った容器を手で押さえつつ容器の底部を椀状部材に押し付けて接触させることで、容器の底部を高速旋回させる。これにより容器の内部の液体に渦が形成され、この渦によって液体が撹拌される。
【0005】
他方、特許文献1に示すように、容器に収納した塗料等を攪拌するための攪拌装置も知られている。特許文献1では、容器内部において空気を巻き込まないでまんべんなく攪拌することができることを目的とし、螺旋状の条溝を刻設してなるミキシングビットを容器に入れて直接攪拌する技術を開示している。模型などの趣味の工作に用いる小型のビンや缶などの容器に収納した塗料等を、容器内部に入れたままで攪拌するための攪拌装置として高い有用性を有するとの記載がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】商品名『Vortex-Genie 2』,scientific industries社,ホームページ(https://www.scientificindustries.com/)
【非特許文献2】商品名『ボルテックスミキサー GHW-3000』,アズワン株式会社,ホームページ(https://www.as-1.co.jp/)
【非特許文献3】商品名『Mini Vortex Mixer』,FOUR E’S SCIENTIFIC社,ホームページ(https://www.4esci.com/Mini-Vortex-Mixer-pd46928832.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願の出願人は、プラモデルなどの模型製作に使用する各種用具を開発する会社である。プラモデルなどの模型製作に使用される各色の塗料は、それぞれ個別の塗料瓶に入れられて保存されおり、使用の際に蓋を外して利用がされるものである。
【0009】
色の種類は数百以上のものが市販されており、モデラ―(模型製作者)によっては、百色以上の塗料瓶をストックし、そのストックの中から必要なものを選択し、その都度蓋を外して使用するものである。
【0010】
購入後に使用せず長期間が経過した塗料瓶や、前回使用後から時間が経過した塗料瓶においては、内部の塗料が分離、沈殿、ゲル化などしてしまい、蓋を開けてそのまま使用できない状態となっていることがある。このような場合には、塗料瓶を手にもって振るだけでは使用することができず、筆を瓶に差し込んで攪拌をすることや、攪拌棒となる棒状のものを瓶に差し込んで攪拌することが必要となる。
【0011】
しかしながら、筆を差し込む場合では、塗料瓶の底に至るまで深く筆を差し込まなければならず、筆の竿部分に塗料が付着することで塗料のロスを生じさせてしまうことになる。筆以外の棒状のものを攪拌棒として使用した場合でも同様である。
【0012】
このような塗料ロスの問題は、特許文献1に示されるような塗料瓶の中に攪拌装置を直接挿入するものにおいても同様に生じてしまうものである。特に、塗料瓶の種類が多いこともあり、その都度攪拌装置を用意してミキシングビットを塗料瓶に突っ込んで攪拌作業をすることは、モデラ―に対し多大な負担を強いることになり、さらには、使用後のミキシングビットの洗浄まで必要となることを考えると、現実的なものではないといえる。
【0013】
他方、非特許文献に開示されるようなボルテックスミキサーを利用して塗料瓶の内部において渦を生じさせて攪拌することも検討される。しかしながら、従来のボルテックスミキサーは、液体の拡散、混合、均一な倍散を目的するものであり、分離、沈殿、ゲル化など、いわゆる半固形化してしまった塗料を撹拌できる渦を生じさせることは期待できず、再び塗料を使用できる状態にまで戻せない恐れがある。
【0014】
そして、仮に従来のボルテックスミキサーを利用して攪拌しようとする場合には、手で塗料瓶を保持しつつ、塗料瓶の底部を椀状部材に押し付けたままにしなければならない。従って、その間は時間が拘束されて、他の作業をすることができないことになる。特に使用する色の種類が多く、攪拌が必要な塗料瓶の数が多い場合には、その時間的なロスは図り知れないものとなる。加えて、塗料瓶から手に振動が伝わることでモデラ―に身体的な負担をかけてしまうことも懸念される。
【0015】
さらに、ボルテックスミキサーを使用したとしても、モデラ―の塗料瓶の持ち方や角度によって渦の形成のされ方がことなり、攪拌操作にばらつきが生じ、塗料の状態にもばらつきが生じることになる。塗料の状態にまで強いこだわりを有するモデラ―の要求に応えるためには、攪拌力の強い渦を確実に形成し、質の良い攪拌を実現することが求められるのである。
【0016】
他方、いわゆるスプレー塗料を収容するスプレー缶についても、使用時には缶を激しく振って内部のスプレー塗料を攪拌する必要があり、塗料瓶の場合と同様の課題が存在するものである。
【0017】
本発明は以上の問題に鑑み、主にプラモデルなどの模型製作に使用される塗料について、塗料瓶に収容された状態の塗料やスプレー缶に巣有用されたスプレー塗料を攪拌するための新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0019】
本発明の一態様によれば、プラモデルなどの模型制作に利用される塗料等が収容された容器の内容液を攪拌して均質化するための塗料撹拌用のボルテックスミキサーであって、モーターを収容する本体部と、モーターの駆動によって旋回する旋回ステージと、を備え、旋回ステージには容器を水平に保って保持するための保持機構を備える、塗料撹拌用のボルテックスミキサーとする。
【0020】
また、本発明の一態様によれば、旋回ステージは、複数の偏心軸に支持されており、少なくとも一つの偏心軸には、旋回ステージの旋回によって生じるモーメントとバランスを取って、装置全体の揺れの発生を防止するためのカウンターウェイトが設けられる、こととする。
【0021】
また、本発明の一態様によれば、保持機構は、一対の支持壁部と、支持壁部同士を相対的に回動可能に連結する垂直方向の回動軸部と、を有し、支持壁部にて容器を両側から挟み込むようにして保持する構成とする、こととする。
【0022】
また、本発明の一態様によれば、保持機構は、高さの高い容器を保持するために好適な高支持壁領域と、高支持壁部よりも高さの低い低支持壁部であって、高さの低い容器を保持するために好適な低支持壁領域と、を有する、こととする。
【0023】
また、本発明の一態様によれば、旋回ステージの旋回速度を設定するための操作スイッチを有する、こととする。
【0024】
また、本発明の一態様によれば、旋回ステージを所定時間だけ旋回させることで、使用者が撹拌完了までの時間的拘束を受けずに必要十分な撹拌を自動的に行い、安全に停止させる利便性を向上するタイマー機能を設けた、、こととする。
【0025】
また、本発明の一態様によれば、旋回ステージの旋回半径は、容器が載置される設置台の最大幅の3%~7%である、こととする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明の一態様によれば、容器を保持機構にセットして旋回ステージを旋回させることで、内容液に渦(渦流)を生じさせ、この渦によって内容液を攪拌し、内容液を均質化することができる。モデラ―はハンズフリーで内容液の均質化を行うことができ、他の作業を行うことができ、プラモデル制作を効率よく行うことができる。また、容器の蓋を開けることなく撹拌を行うことができ、撹拌のための作業が容易であり、塗料のロスが発生することもない。また、撹拌のばらつき発生を抑えることができ、質の良い撹拌を実現できる。
【0027】
また、本発明の一態様によれば、撹拌時において装置の揺れの発生が防止され、容器の無駄な揺れや、容器の中心軸の傾きが抑制されて直立状態を維持することができ、内容液に安定して渦を形成することができる。また、装置や容器の揺れを抑えることにより、より高速な旋回を実施することが可能となり、流れの早い渦が形成され、より強力な攪拌を実現することができ、また、攪拌時間の短縮化を図ることもできる。
【0028】
また、本発明の一態様によれば、角瓶、小径の丸瓶、中径の丸瓶、大径の丸瓶、スプレー缶など、形状や太さが異なる容器をアタッチメントなしで挟持して、安定的に保持することができる。
【0029】
また、本発明の一態様によれば、例えば、高さの高い塗料瓶をセットする場合には、高支持壁領域で塗料瓶を広範囲で安定的に保持することができる一方、高さの低い塗料瓶をセットする場合には、低支持壁領域で塗料瓶を支持することで、塗料瓶を掴む指を容易にセットすることができる。撹拌後に塗料瓶を取り外すときも指で摘んで容易に取り出せる。
【0030】
また、本発明の一態様によれば、任意の旋回スピードで旋回させることができる。
【0031】
また、本発明の一態様によれば、容器の攪拌を自動停止させることができ、攪拌を終了させるための操作負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係るボルテックスミキサーの全体概要について示す斜視図。
【
図2】(A)は本体部の前面側の構成について示す斜視図。(B)は本体部の背面側の構成について示す斜視図。
【
図3】(A)は
図1におけるA-A線部分の断面図である。(B)は
図1におけるB-B線部分の断面図である。
【
図4】(A)は旋回ステージの固定穴と軸受について示す図。(B)は旋回ステージ図の構成について示す図。
【
図6】(A)は高さの高い塗料瓶をセットした状態について示す図。(B)は高さの低い塗料瓶をセットした状態について示す図。
【
図7】(A)~(D)は、旋回ステージの旋回とカウンターウェイトの回転について示す図。
【
図8】(A)は塗料に渦を生じさせた状態について示す図。(B)は渦を変化させた様子について示す図。
【
図9】(A)は角瓶を保持した状態について示す図。(B)は小径の丸瓶を保持した状態について示す図。(C)は高さの低い中径の丸瓶を保持した状態について示す図。(D)は高さの高い大径の丸瓶を保持した状態について示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本発明に係るボルテックスミキサー1は、主に、プラモデルなどの模型制作に利用される塗料が入った塗料瓶60(容器)について、塗料瓶60の内部の塗料に渦(渦流)を発生させて塗料を撹拌し、分離、沈殿、ゲル化などしてしまった塗料を均質化するものである。
【0034】
なお、塗料によっては、数種類の液体からなるもの、固形分を含むものもあり、渦によって撹拌することで、厳密には、乳化、分散、などの各種現象が生じるものであるが、本明細書では、これらの各種現象を含む現象を均質化という用語で表現する。また、瓶に収容される塗料としては、ラッカー塗料、水性アクリル塗料、エナメル塗料、などがある。また、瓶入りの塗料の他、塗料を薄める溶剤や、プラモデル用のスプレー缶に入ったスプレー塗料等を攪拌することを目的とするものである。また、塗料瓶としては、例えば、10ml、15ml、50mlといった様々な容量や、角瓶(角柱型)、丸瓶(円筒型)など様々なものがあり、これらの各種の形状について、本願は対応可能とするものである。また、塗料は、赤、青、黄色といった単色や、メタリック色、マット色、蛍光色、サーフェーサー(塗装の下地)などがあり、密度や粘度も相違するが、これらのあらゆる塗料について本願は対応可能とするものである。
【0035】
図1に示すように、ボルテックスミキサー1は、モーター等を収容する本体部20と、モーターの駆動によって旋回する旋回ステージ30と、を有する。
【0036】
図2(A)(B)に示すように、本体部20は、直方体のケース21を有し、ケース21内に図示せぬ電源と接続されるモーターが収容される。
【0037】
図1、及び、
図2(A)に示すように、ケース21の正面側には操作スイッチ29が設けられる。操作スイッチ29により、旋回ステージ30の回転の開始、停止を行うことができる。また、操作スイッチ29によりモーターの出力を調整し、旋回ステージ30の旋回スピードを調整することができるようにしてもよい。旋回スピードは、例えば200rpm~2000rpmとする。回転数を500rpm以上に設定することで、塗料を攪拌して均質化することを可能とする渦を確実に形成することが可能となる。したがって、500rpm以上の旋回が可能となるように構成することが好ましい。また、図示せぬタイマーを設けることで、旋回ステージ30を所定時間回転させた後に、自動的に回転を停止させることとしてもよい。
【0038】
図1に示すケース21の底面には、図示せぬ吸盤や振動吸収用ゴムが設けられており、ケース21の底面をテーブルなどに吸着させることで、動作時の装置全体の移動が防止されるとともに、振動吸収用ゴムによってテーブルへの振動伝達が防止される。これにより、ハンズフリーで攪拌作業を実施することができ、モデラ―は他の作業を行うことができる。
【0039】
図3(A)に示すように、モーター22の駆動軸22aは上方に向けて突出され、偏心軸24の第1軸24aの軸穴に連結される。偏心軸24の第2軸24bは、軸受44の内輪に挿入される。第2軸24bには、旋回ステージ30の抜けを防止するためのワッシャー32aがネジ32bによって固定される。
【0040】
図3(A)に示すように、旋回ステージ30には、軸受44の外輪が嵌入される固定穴34が形成されており、旋回ステージ30の固定穴34に対し軸受44の外輪が嵌め込まれる。固定穴34の上方には小径部30dが形成されており、小径部30dの上側に凹空間30eが形成され、凹空間30eにワッシャー32aが配設される。小径部30dの上方にワッシャー32aが配設されることで、旋回ステージ30の上側への抜けが防止される。
【0041】
図3(A)に示すように、偏心軸24の第1軸24aには、円板状のカウンターウェイト33が形成されている。カウンターウェイト33は、偏心軸24の第1軸24aと第2軸24bを結ぶ直線上において、第1軸24aを挟んで第2軸24bと反対側に突出するように配置されている。この配置により、第2軸24bとカウンターウェイト33の間に第1軸24aが配置され、第2軸24bとカウンターウェイト33の間でのバランスが取られる。このバランスによって、旋回動作時における装置全体の揺れの発生が防止される。
【0042】
図2(B)に示すように、カウンターウェイト33は、ケース21に形成された円形の収容空間21a内に配置される。カウンターウェイト33は、偏心軸24の第1軸24a(
図3(A))に対しイモねじ37により固定される。ケース21には、レンチを挿入して緩んだイモねじ37を締め付けるための工具挿入穴21bが形成される。収容空間21aは図示せぬカバーによって蓋がされる。
【0043】
図2(A)(B)に示すように、偏心軸24から水平方向にずれた二箇所において、それぞれ偏心軸25,26が配置される。偏心軸24から各偏心軸25,26までの距離は同一に設定される。
【0044】
図3(B)に示すように、偏心軸25は、偏心軸24(
図3(A))と同様に、第1軸25aと第2軸25bを有して構成され、第1軸25aは本体フレーム27に固定される軸受23の内輪に嵌入される一方、第2軸25bは軸受45の内輪に嵌入される。
【0045】
図3(B)に示すように、旋回ステージ30には、軸受45の外輪が嵌入される固定穴35が形成されており、旋回ステージ30の固定穴35に対し軸受45の外輪が嵌め込まれる。固定穴35の上方には小径部30gが形成されており、小径部30gの上側に凹空間30hが形成され、凹空間30hにワッシャー32cが配設される。小径部30hの上方にワッシャー32cが配設されることで、旋回ステージ30の上側への抜けが防止される。ワッシャー32cはネジ32dによって第2軸25bに固定される。もう一つの偏心軸26についても偏心軸25と同様であり、説明を省略する。なお、旋回ステージを安定して旋回させることが可能であれば、偏心軸の数については特に限定されるものではない。
【0046】
図4(A)に示すように、各偏心軸24,25,26の第2軸には、それぞれ軸受44,45,46が固定され、軸受44,45,46の外輪が旋回ステージ30の固定穴34,35,36に挿入される。
【0047】
図4(A)(B)に示すように、旋回ステージ30は、平面視において略三角形状に構成され、図示せぬ塗料瓶等の容器が載置される円形の設置台31の中心からずれた箇所に固定穴34が形成され、設置台31から二方向に突出する箇所に固定穴35,36が形成される。
図4(B)に示すように、旋回ステージ30の固定穴35,36は、キャップ35a,36aにより塞がれる。なお、設置台31は、円形に限定されるものではなく、長方形などであってもよい。
【0048】
図5に示すように、旋回ステージ30の表面には円形のゴム製のシート31aにより設置台31が形成され、設置台31の周囲を取り囲むように保持機構50が設けられる。
【0049】
本実施例の保持機構50は、一対の支持壁部51,52にて図示せぬ塗料瓶やスプレー缶などの容器をクランプする構成とするものである。支持壁部51は、設置台31の略半分のエリアをカバーするように、平面視において周方向に立設される円周壁状に構成される。もう一方の支持壁部52は垂直方向の回動軸部53に対して回動するように設けられ、支持壁部51と対向するような円周壁状に構成される。なお、両方の支持壁部51,52が共に回動するように構成されることとしてもよい。
【0050】
回動軸部53は旋回ステージ30に垂直方向に立設されており、各支持壁部51,52及び回動軸部53は、旋回ステージ30と一体となって旋回するものである。回動軸部53が垂直方向にすることで、支持壁部51,52で挟持した際に、容器を垂直に保持することが可能となる。各支持壁部51,52において、回動軸部53から離れた側の先端側には、それぞれ櫛状をなす複数の突起部51a,52aが形成されており、各突起部51a,52aは上下方向に互いにずれることで互いに干渉することなく移動できるようになっている。これにより、詳しくは後述するように、支持壁部51,52の内側に形成される保持空間の直径を幅広く設定することが可能となる。
【0051】
各支持壁部51,52の突起部51a,52aと反対側の端部は、指でつまんで各支持壁部51,52を回動操作して、保持機構50を開いた状態にするためのつまみ部51b,52bが設けられる。回動軸部53の周囲には、各支持壁部51,52の突起部51a,52a同士を近づけて保持機構50を閉じた状態にするための図示せぬ付勢機構が設けられる。
【0052】
各支持壁部51,52の内側面には、図示せぬ塗料瓶の外周面に密着するための複数の突起部55,55が突設されている。突起部55,55は、例えば、小径の円形凸部が均一に配列されたゴム製のシートによって構成することができ、これにより、保持機構50によって保持された塗料瓶が振動によってズレることを防止することで、安定して渦を形成することができる。
【0053】
図5及び
図6(A)(B)に示すように、保持機構50の各支持壁部51,52において、回動軸部53に近い側は設置台31からの高さH1が高く構成される高支持壁領域と、回動軸部53に遠い側は設置台31からの高さH2が低く構成される低支持壁領域と、が形成される。本実施例では、
図5に示すように、回動軸部53に近い側の一定の範囲を高さH1とし、回動軸部53から遠い側の一定の範囲を高さH2とし、高さH1から高さH2に切り替わる範囲が円弧状のカーブを形成するようにしている。
【0054】
これにより、
図6(A)に示すように、高さの高い塗料瓶61をセットする場合には、回動軸部53に近い側にセットすることにより、高さH1の範囲によって塗料瓶61を広範囲で安定的に保持することができる。一方で、
図6(B)に示すように高さの低い塗料瓶62をセットする場合には、高さH2の範囲によって塗料瓶62を掴む指65を各支持壁部51,52と干渉させることなく容易にセットすることができる。撹拌後に塗料瓶62を取り外すときも同様に、各支持壁部51,52よりも上方に突出する塗料瓶62を指で摘んで容易に取り出せる。
【0055】
以上のように構成し、
図1に示すようにボルテックスミキサー1に塗料瓶60をセットし、操作スイッチ29を操作して旋回ステージ30の旋回を開始させる。
図7(A)乃至(D)に示すように、旋回ステージ30は、偏心軸24~26に支持されて旋回をする。この際、カウンターウェイト33によってバランスが取られ、装置全体の振動が抑えられる。
【0056】
図8(A)に示すように、旋回ステージ30の旋回に従って、塗料瓶60内の塗料63に渦64が形成され、塗料63が攪拌されて均質化される。なお、渦64は下降流を発生して上澄みを瓶底へ吸い込むとともに、瓶の縁(内壁)に上昇流を発生させて瓶底に溜まった塗料63を上に巻き上げることで、上下に循環する流れを形成させるものである。
【0057】
また、
図8(B)に示すように、塗料63の状況に応じ、旋回ステージ30の旋回スピードを任意に調整することにより、渦64の形状を変化させることができる。例えば、塗料63が完全に分離しており、固形化が相当進んでしまっているような場合には、旋回スピードを速くすることで、短時間で均質化を図ることができる。
【0058】
また、この攪拌が行なわれる間は、モデラ―はボルテックスミキサー1や塗料瓶60を手で押さえる必要がなく、ハンズフリーで攪拌作業を実施することができ、他の作業を並行して行うことができ、プラモデル作成を効率よく行うことができる。
【0059】
以上のようにして本発明を実施することができる。
即ち、
図1に示すように、プラモデルなどの模型制作に利用される塗料等が収容された容器(瓶やスプレー缶)の内容液を攪拌して均質化するためのボルテックスミキサー1であって、モーターを収容する本体部20と、モーターの駆動によって旋回する旋回ステージ30と、を備え、旋回ステージ30には容器(瓶やスプレー缶)を水平に保って保持するための保持機構50を備える、こととする。
【0060】
より具体的な形態として、模型製作に利用される、粒子や密度、粘度、溶媒及び容器の異なるあらゆる種類のプラモデル用塗料を攪拌して均質化するためのボルテックスミキサーであって、モーターを収容する本体部と、モーターの駆動によって旋回する旋回ステージと、を備え、旋回ステージにはプラモデル用塗料の様々な大きさ、形状の容器を安全かつ確実に保持し、旋回のエネルギーを容器内の塗料に逃がさず伝達するための保持機構を備える、プラモデル用塗料専用のボルテックスミキサーとするものである。
【0061】
これにより、容器を保持機構50にセットして旋回ステージ30を旋回させることで、内容液に渦(渦流)を生じさせ、この渦によって内容液を攪拌し、内容液を均質化することができる。モデラ―はハンズフリーで内容液の均質化を行うことができ、他の作業を行うことができ、プラモデル制作を効率よく行うことができる。また、容器の蓋を開けることなく撹拌を行うことができ、撹拌のための作業が容易であり、塗料のロスが発生することもない。また、撹拌のばらつき発生を抑えることができ、質の良い撹拌を実現できる。
【0062】
また、
図2(A)(B)及び3(A)(B)に示すように、旋回ステージ30は、複数の偏心軸24~26に支持されており、少なくとも一つの偏心軸には、旋回ステージ30の旋回によって生じるモーメントとバランスを取って、装置全体の揺れの発生を防止するためのカウンターウェイト33が設けられる、こととする。
【0063】
より具体的な形態として、旋回ステージは、複数の偏心軸に支持されており、旋回ステージと容器の高速旋回によって生じる遠心力の反動を打ち消し、軽量かつ低重心な容器から、重量かつ高重心の容器まで旋回させた際の、装置全体の振動と騒音を抑制するために最適化されたカウンターウェイトが設けられることとするものである。
【0064】
これにより、撹拌時において装置の揺れの発生が防止され、容器の無駄な揺れ(上下、左右の揺れ)や容器の中心軸の傾きが抑制され、安定した直立状態、つまり、容器を水平の状態に安定して維持することができ、内容液に安定して渦を形成することができる。また、装置や容器の揺れを抑えることにより、より高速な旋回を実施することが可能となり、流れの早い渦が形成され、より強力な攪拌を実現することができ、また、攪拌時間の短縮化を図ることもできる。
【0065】
また、
図5及び
図6(A)(B)に示すように、保持機構50は、一対の支持壁部51,52と、支持壁部51,52同士を相対的に回動可能に連結する垂直方向の回動軸部53と、を有し、支持壁部51,52にて容器を両側から挟み込むようにして保持する構成とする、ものである。
【0066】
より具体的な形態として、保持機構は、一対の支持壁部と、支持壁部同士を相対的に回動可能に連結する回動軸部と、を有し、支持壁部にて容器を両側から挟み込むようにして、円柱型や多角形型のボトルの形状に適応し、容器の容易な着脱と、高速旋回時でも強固で安定した保持力を有することとするものである。
【0067】
これにより、
図9(A)に示す角瓶、
図9(B)に示す小径の丸瓶、
図9(C)に示す中径の丸瓶、
図9(D)に示す大径の丸瓶、さらにはスプレー塗料の収容されたスプレー缶など、形状や太さが異なる容器をアタッチメントなしで挟持して、安定的に保持することができる。
【0068】
また、
図5及び
図6(A)(B)に示すように、保持機構50は、高さの高い容器を保持するために好適な高支持壁領域と、高支持壁部よりも高さの低い低支持壁部であって、高さの低い容器を保持するために好適な低支持壁領域と、を有する構成としている。
【0069】
これにより、
図6(A)に示すように、例えば、高さの高い塗料瓶61をセットする場合には、高支持壁領域で塗料瓶61を広範囲で安定的に保持することができる一方、
図6(B)に示すように、高さの低い塗料瓶62をセットする場合には、低支持壁領域で塗料瓶62を支持することで、塗料瓶62を掴む指65を容易にセットすることができる。撹拌後に塗料瓶62を取り外すときも指で摘んで容易に取り出せる。
【0070】
また、
図1に示すように、旋回ステージ30の旋回速度を設定するための操作スイッチを有する、こととする。
【0071】
より具体的な形態として、旋回ステージの旋回速度を可変にすることで、重量かつ高重心の容器は低速低反動の低速旋回を可能とし、軽量かつ低重心の容器は高速低反動の高速旋回を可能とし、安全で確実な撹拌を行うための操作スイッチを有する、構成とする。
【0072】
これにより、任意の旋回スピードで旋回させることができる。
【0073】
また、旋回ステージ30を所定時間だけ旋回させることで、使用者が撹拌完了までの時間的拘束を受けずに必要十分な撹拌を自動的に行い、安全に停止させる利便性を向上するタイマー機能を設けるものである。
【0074】
これにより、容器(瓶やスプレー缶)の内容液の攪拌を自動停止させることができ、攪拌を終了させるための操作負担を軽減することができる。
【0075】
また、
図3(A)に示す旋回ステージ30の旋回半径Sr(第1軸24aと第2軸24bの中心間距離(
図3(B)の第1軸25aと第2軸25bの中心間距離))は、容器が載置される設置台31の最大幅31r(
図4(B))の3%~7%であり、好ましくは、6.04%とする。本実施例では、旋回半径Sr:最大幅31r=13:215であり、旋回ステージ30の旋回半径Srは、設置台31の最大幅31rの6.04%の比率となっている。なお、例えば、設置台31が円形の場合には、最大幅31rは設置台31の直径となり、設置台31が正方形の場合には、最大幅31rは設置台31の幅(縦幅、又は、横幅)となり、設置台31が長方形の場合には、最大幅31rは設置台31の長辺の寸法となる。
【0076】
これにより、設置台31に載置されることが想定される様々な容器の大きさに対し、旋回半径Srを小さく確保することで、水平方向に容器を大きく揺れ動かさずに(ブレが小さい)、渦を形成することができる。仮に、旋回半径が大きい場合には、容器が水平方向に大きく揺れ動くことにより、慣性によって容器が傾いて転倒することや、この傾きによって安定した渦が形成されないことが懸念される。また、特に高速旋回をさせる場合には、容器の水平方向の移動が大きいと大きな遠心力が生じて、容器を支えきれないことになり、手で押される必要も生じることになる。
【0077】
本願発明は、この点に鑑みて、水平方向の容器の移動を押さえつつ、高速旋回を可能とするために、旋回半径を小さくしたものであり、この点において、本願発明は、例えば、振とう機などの単なる撹拌を目的とした装置とは一線を画するものである。例えば、
図9(A)に示すような小さな角瓶に入ったエナメル塗料において、内部で分離して半固形化してしまった場合には、攪拌棒などを挿入してかき混ぜることが必要とされるものであった。このような場合にも、旋回半径を小さくし、高速旋回を実現可能とすることで、渦を確実に発生させることが可能となり、エナメル塗料を使用できる状態に戻すことが可能となる。このような、半固形化してしまった塗料を再利用できるようにまで撹拌することは、従来の振とう機では、到底実現できないものである。加えて、旋回速度を可変としていることにより、塗料の状態に応じた最適な撹拌が可能であることが、従来の単なる撹拌を目的とした装置と比較して本発明の優位な点である。
【符号の説明】
【0078】
1 ボルテックスミキサー
20 本体部
21 ケース
22 モーター
23 軸受
24 偏心軸
24a 第1軸
24b 第2軸
25 偏心軸
25a 第1軸
25b 第2軸
26 偏心軸
27 本体フレーム
29 操作スイッチ
30 旋回ステージ
31 設置台
33 カウンターウェイト
50 保持機構
【手続補正書】
【提出日】2022-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明は以上の問題に鑑み、主にプラモデルなどの模型製作に使用される塗料について、塗料瓶に収容された状態の塗料やスプレー缶に収容されたスプレー塗料を攪拌するための新規な技術を提案するものである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
また、本発明の一態様によれば、旋回ステージを所定時間だけ旋回させることで、使用者が撹拌完了までの時間的拘束を受けずに必要十分な撹拌を自動的に行い、安全に停止させる利便性を向上するタイマー機能を設けた、こととする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
【
図1】本発明に係るボルテックスミキサーの全体概要について示す斜視図。
【
図2】(A)は本体部の前面側の構成について示す斜視図。(B)は本体部の背面側の構成について示す斜視図。
【
図3】(A)は
図1におけるA-A線部分の断面図である。(B)は
図1におけるB-B線部分の断面図である。
【
図4】(A)は旋回ステージの固定穴と軸受について示す図。(B)は旋回ステー
ジの構成について示す図。
【
図6】(A)は高さの高い塗料瓶をセットした状態について示す図。(B)は高さの低い塗料瓶をセットした状態について示す図。
【
図7】(A)~(D)は、旋回ステージの旋回とカウンターウェイトの回転について示す図。
【
図8】(A)は塗料に渦を生じさせた状態について示す図。(B)は渦を変化させた様子について示す図。
【
図9】(A)は角瓶を保持した状態について示す図。(B)は小径の丸瓶を保持した状態について示す図。(C)は高さの低い中径の丸瓶を保持した状態について示す図。(D)は高さの高い大径の丸瓶を保持した状態について示す図。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
本願発明は、この点に鑑みて、水平方向の容器の移動を
抑えつつ、高速旋回を可能とするために、旋回半径を小さくしたものであり、この点において、本願発明は、例えば、振とう機などの単なる撹拌を目的とした装置とは一線を画するものである。例えば、
図9(A)に示すような小さな角瓶に入ったエナメル塗料において、内部で分離して半固形化してしまった場合には、攪拌棒などを挿入してかき混ぜることが必要とされるものであった。このような場合にも、旋回半径を小さくし、高速旋回を実現可能とすることで、渦を確実に発生させることが可能となり、エナメル塗料を使用できる状態に戻すことが可能となる。このような、半固形化してしまった塗料を再利用できるようにまで撹拌することは、従来の振とう機では、到底実現できないものである。加えて、旋回速度を可変としていることにより、塗料の状態に応じた最適な撹拌が可能であることが、従来の単なる撹拌を目的とした装置と比較して本発明の優位な点である。