(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157622
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】クラフト紙および包装袋
(51)【国際特許分類】
D21H 21/18 20060101AFI20241031BHJP
D21H 11/04 20060101ALI20241031BHJP
D21H 17/37 20060101ALI20241031BHJP
B65D 30/02 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
D21H21/18
D21H11/04
D21H17/37
B65D30/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072066
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若松 菜央
(72)【発明者】
【氏名】島田 菜津美
【テーマコード(参考)】
3E064
4L055
【Fターム(参考)】
3E064AC01
3E064BA05
3E064BC15
3E064BC20
3E064EA07
3E064FA06
4L055AA02
4L055AC06
4L055AG50
4L055AG72
4L055AH09
4L055AH10
4L055AH16
4L055BB03
4L055CB13
4L055EA04
4L055EA05
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA09
4L055EA10
4L055EA16
4L055EA32
4L055FA13
4L055FA17
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】比引張強度および引裂強度を両立し、さらにサイズ性に優れるクラフト紙およびこれを用いた包装袋を提供すること。
【解決手段】木材パルプを主成分とするクラフト紙であって、クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度が500mL以上であり、クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量が0.05質量%以上0.75質量%以下である、クラフト紙。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプを主成分とするクラフト紙であって、
クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度が500mL以上であり、
クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量が0.05質量%以上0.75質量%以下である、
クラフト紙。
【請求項2】
クラフト紙を構成するパルプの重量平均繊維長が2.2mm以上3.7mm以下である、請求項1に記載のクラフト紙。
【請求項3】
木材パルプが針葉樹クラフトパルプを含む、請求項1に記載のクラフト紙。
【請求項4】
木材パルプ中の針葉樹クラフトパルプの含有量が90質量%以上である、請求項3に記載のクラフト紙。
【請求項5】
針葉樹クラフトパルプの原料が、ダグラスファーを含む、請求項3に記載のクラフト紙。
【請求項6】
比引張強度が40.0N・m/g以上である、請求項1に記載のクラフト紙。
【請求項7】
比引裂強度が10.0mN・m2/g以上である、請求項1に記載のクラフト紙。
【請求項8】
坪量が30g/m2以上200g/m2以下である、請求項1に記載のクラフト紙。
【請求項9】
ステキヒトサイズ度が12秒以上である、請求項1に記載のクラフト紙。
【請求項10】
破断伸びが3.1%以上である、請求項1に記載のクラフト紙。
【請求項11】
重包袋用のクラフト紙である、請求項1に記載のクラフト紙。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のクラフト紙を用いてなる、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラフト紙およびこれを用いた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
クラフト紙は主としてセメントや肥料、農薬などの産業用の重量物を入れる大型袋や塩や米麦、農産物などの包装袋に利用されている。
重量物を入れる大型袋を製造する場合には、輸送中に加えられる衝撃に耐えられる強度を持つ紙であることや、使用時の水濡れによる破れに強い紙であることが要求される。
【0003】
例えば、特許文献1には、クラフト紙の強度を下げることなく、製造コストの低減と高い通気性を実現させることを目的として、重量平均繊維長2.3~4.0mmであるクラフトパルプを用いて、離解フリーネスが600~680mLとなる紙支持体を形成していることを特徴とする重包装用クラフト紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に記載の重包装用クラフト紙は、比引張強度と比引裂強度の両立については、十分な検討がされていない。さらに、サイズ性を示す指標としてのステキヒトサイズ度についても、十分な検討がされていない。
【0006】
本発明の目的は、比引張強度および比引裂強度を両立し、さらにサイズ性に優れるクラフト紙、およびこれを用いた包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度、およびクラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量を特定の範囲とすることで、前記課題が解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<12>に関する。
<1>木材パルプを主成分とするクラフト紙であって、クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度が500mL以上であり、クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量が0.05質量%以上0.75質量%以下である、クラフト紙。
<2>クラフト紙を構成するパルプの重量平均繊維長が2.2mm以上3.7mm以下である、<1>に記載のクラフト紙。
<3>木材パルプが針葉樹クラフトパルプを含む、<1>または<2>に記載のクラフト紙。
<4>木材パルプ中の針葉樹クラフトパルプの含有量が90質量%以上である、<3>に記載のクラフト紙。
<5>針葉樹クラフトパルプの原料が、ダグラスファーを含む、<3>または<4>に記載のクラフト紙。
<6>比引張強度が40.0N・m/g以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のクラフト紙。
<7>比引裂強度が10.0mN・m2/g以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のクラフト紙。
<8>坪量が30g/m2以上200g/m2以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のクラフト紙。
<9>ステキヒトサイズ度が12秒以上である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のクラフト紙。
<10>破断伸びが3.1%以上である、<1>~<9>のいずれか1つに記載のクラフト紙。
<11>重包袋用のクラフト紙である、<1>~<10>のいずれか1つに記載のクラフト紙。
<12><1>~<11>のいずれか1つに記載のクラフト紙を用いてなる、包装袋。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、比引張強度および比引裂強度を両立するクラフト紙およびこれを用いた包装袋を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[クラフト紙]
本実施形態のクラフト紙は、木材パルプを主成分とするクラフト紙であって、クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度が500mL以上であり、クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量が0.05質量%以上0.75質量%以下である。
本実施形態のクラフト紙は、比引張強度および比引裂強度を両立できる。さらに、本実施形態のクラフト紙は、比引張強度および比引裂強度を両立でき、さらにサイズ性にも優れる。当該効果を奏するメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
本実施形態のクラフト紙は、木材パルプを主成分とすることによって、繊維長の比較的長いパルプにより、クラフト紙を形成することができるため、比引裂強度を優れたものとすることができる。
一方、パルプの叩解を行うほど(すなわち、クラフト紙を構成するパルプのカナダ標準ろ水度を下げるほど)、比引裂強度は下がる。これは、叩解の促進時には繊維のフィブリル化が起き、繊維間結合面積の増加によって比引張強度が向上するため、弾性率が高くなってシートが固くなり、比引裂強度が下がりやすいためと考えられる。なお、叩解の促進によって繊維が短くなることも比引裂強度が下がりやすい一因と推定される。
本実施形態のクラフト紙は、適度に叩解したパルプを使用することで、再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度が500mL以上であることにより、上記現象による比引裂強度の低下を抑え、比引裂強度を優れたものとすることができる。
さらに、本実施形態のクラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量が0.05質量%以上であることにより、繊維同士の結合点の強度が向上することで、比引張強度を向上させることができ、さらにステキヒトサイズ度を向上させることができる。一方、ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量が0.75質量%以下であることにより、パルプ繊維同士が過度に凝集することを防ぐことができ、引裂強度の大幅な低下を抑制することができる。
以上のように、本実施形態のクラフト紙は、比引張強度および比引裂強度を両立し、さらにサイズ性に優れたものとできると考えられる。なお、本発明の範囲は、上記メカニズムによって制限されるものではない。
【0010】
<クラフト紙を構成するパルプ>
(木材パルプ)
本実施形態において、クラフト紙は木材パルプを主成分とする。「クラフト紙が木材パルプを主成分とする」とは、クラフト紙中の木材パルプの含有量が50質量%超であることを意味し、木材パルプの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
本実施形態において、クラフト紙は、パルプとして非木材パルプを含有してもよいが、比引張強度および比引裂強度を向上させる観点から、クラフト紙を構成する全パルプ中、木材パルプの含有量は、好ましくは50質量%超、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。
木材パルプとしては、特に制限されず、公知の木材パルプを使用できる。具体的には、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ;砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミグランドパルプ(CGP)等の機械パルプ等が挙げられる。広葉樹クラフトパルプ(LKP)としては、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が挙げられる。針葉樹クラフトパルプ(NKP)としては、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が挙げられる。また、非木材パルプとしては、例えば、古紙パルプ;ケナフ、バガス、竹、コットン等の非木材繊維パルプ;合成パルプ等が挙げられる。これらのパルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、得られるクラフト紙の比引張強度および比引裂強度を向上させる観点から、針葉樹クラフトパルプ(NKP)が好ましく、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)よりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)がさらに好ましい。
【0011】
木材パルプが針葉樹クラフトパルプ(NKP)(好ましくは、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP))を含む場合、木材パルプ中の針葉樹クラフトパルプ(NKP)(好ましくは、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP))の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは、95質量%以上、さらに好ましくは100質量%以上である。針葉樹クラフトパルプ(NKP)は、平均繊維長が長いため、クラフト紙を構成するパルプの主成分である木材パルプにおいて、針葉樹クラフトパルプ(NKP)の含有量が90質量%以上であることにより、所望の比引張強度および比引裂強度を有するのクラフト紙を得られるので好ましい。さらに、クラフト紙を構成するパルプとして針葉樹クラフトパルプ(NKP)を用いると、パルプ繊維自身の強度が広葉樹クラフトパルプ(LKP)と比べて高いため、得られるクラフト紙の比引張強度および比引裂強度をより向上しやすくできる。
【0012】
針葉樹クラフトパルプ(NKP)の原料は、得られるクラフト紙の比引張強度または/および比引裂強度を向上させる観点から、カリビアンパイン、ラジアータパイン、スギおよびカラマツよりなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ダグラスファーを含むことがより好ましい。
【0013】
(フリーネス)
クラフト紙を構成するパルプのフリーネス(カナダ標準ろ水度)は、後述するクラフト紙の再離解後フリーネスが500mL以上となるように調整できればよい。
クラフト紙を構成するパルプのフリーネスは、得られるクラフト紙の比引裂強度の観点から、好ましくは500mL以上、より好ましくは520mL以上であり、そして、比引張強度または/および破断伸びの観点からは、好ましくは760mL以下、より好ましくは700mL以下、さらに好ましくは650mL以下、よりさらに好ましくは630mL以下である。
クラフト紙を構成するパルプのフリーネスは、JIS P 8121:1995に準拠した方法で求められる。
クラフト紙を構成するパルプのフリーネスは、叩解処理条件を適宜調節することにより、上記範囲内に調整することができる。
【0014】
(長さ平均繊維長)
クラフト紙を構成するパルプの長さ平均繊維長は、得られるクラフト紙の比引張強度および比引裂強度を両立させる観点から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.3mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上である。上限は特に限定されないが、クラフト紙の地合いの観点からは、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.8mm以下、さらに好ましくは2.5mm以下である。
クラフト紙を構成するパルプの長さ平均繊維長は、ISO 16065-2(2007)に準拠して測定される。
【0015】
(重量平均繊維長)
クラフト紙を構成するパルプの重量平均繊維長は、得られるクラフト紙の比引張強度および比引裂強度を両立させ、さらにステキヒトサイズ度とも両立させる観点から、好ましくは2.2mm以上、より好ましくは2.4mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上、よりさらに好ましくは2.8mm以上、よりさらに好ましくは2.9mm以上である。上限は特に限定されないが、クラフト紙の地合いの観点からは、好ましくは3.7mm以下、より好ましくは3.5mm以下、さらに好ましくは3.3mm以下、よりさらに好ましくは3.1mm以下である。
木材パルプの重量平均繊維長は、具体的にはISO 16065-2(2007)に準拠して測定される。
【0016】
(平均繊維幅)
クラフト紙を構成するパルプの平均繊維幅は、得られるクラフト紙の比引張強度または/および比引裂強度を向上させる観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは45μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは35μm以下ある。
木材パルプの平均繊維幅は、具体的にはISO 16065-2(2007)に準拠して測定される。
【0017】
(微細繊維含有量)
クラフト紙を構成するパルプ中の微細繊維含有量は、得られるクラフト紙の比引張強度、比引裂強度または/およびサイズ性を向上させる観点から、好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下である。下限は特に限定されないが、生産性の観点から、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上である。
本実施形態において、微細繊維とは、クラフト紙を構成するパルプのうち、繊維長が0.1mm以下である、微細な繊維のことを示す。また、クラフト紙を構成するパルプ中の微細繊維含有量とは、クラフト紙を構成する全パルプ数に対する、微細繊維数の割合(%)のことである。
木材パルプ中の微細繊維含有量は、具体的にはISO 16065-2(2007)に準拠して測定される。
【0018】
<ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤>
本実施形態のクラフト紙は、ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤を0.05質量%以上0.75質量%以下含む。
クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量が0.05質量%以上であることにより、比引張強度を向上させることができ、さらにステキヒトサイズ度を向上させることができる。一方、ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量が0.75質量%以下であることにより、パルプ繊維同士が凝集することを防ぐことができ、比引裂強度の低下を抑制することができる。
クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量は、得られるクラフト紙の比引張強度、比引裂強度または/およびサイズ性を向上させる観点から、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、さらに好ましくは0.20質量%以上、よりさらに好ましくは0.30質量%以上であり、そして、破断伸びの向上の観点からは、好ましくは0.70質量%以下、より好ましくは0.60質量%以下、さらに好ましくは0.50質量%以下、よりさらに好ましくは0.40質量%以下、よりさらに好ましくは0.30質量%以下である。
本実施形態において、クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤を上記範囲内とするために、クラフト紙を製造の際に、クラフト紙を製造するための紙料中に、ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤を添加すればよい。なお、一般に、クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量は、紙料へのポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の添加量よりも減少する傾向がある。よって、紙料へのポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の添加量は、これを考慮して、適宜調整すればよい。紙料へのポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の添加量は、紙料中の原料パルプ100質量部に対し、0.10質量部以上0.78質量部以下である。
【0019】
ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、および両性ポリアクリルアミドからなる群から選択される1種以上が好ましい。これらのポリアクリルアミド系乾燥紙力剤は、1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0020】
(アニオン性ポリアクリルアミド)
アニオン性ポリアクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミドとアニオン性モノマーとを構成成分とする水溶性コポリマー、加水分解ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらのアニオン性ポリアクリルアミドは、1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
本明細書において(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドのことを示す。
【0021】
水溶性コポリマーの構成成分として使用可能なアニオン性モノマーとしては、例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸、不飽和テトラカルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和ホスホン酸およびそれらの塩類等のアニオン性ビニルモノマーが挙げられる。これらのアニオン性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。特に、アクリル酸およびその塩類のモノマーが好ましく使用される。アニオン性の水溶性コポリマーの重合にあたっては、一般に重合に用いられる連鎖移動剤などの助剤が添加されてもよい。
【0022】
加水分解ポリアクリルアミドは、従来知られる加水分解反応によりポリアクリルアミドを分解して得られる分解生成物である。加水分解ポリアクリルアミドは、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質を(メタ)アクリルアミドのコポリマーおよび/またはホモポリマーに作用させることにより部分加水分解を生じさせ、アミド基をカルボキシ基に変換させて得ることができる。
【0023】
(カチオン性ポリアクリルアミド)
カチオン性ポリアクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミドとカチオン性モノマーとを構成成分とする水溶性コポリマー、マンニッヒ変性ポリアクリルアミド、ホフマン分解ポリアクリルアミドが挙げられる。これらのカチオン性ポリアクリルアミドは、1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0024】
水溶性コポリマーの構成成分として使用可能なカチオン性モノマーとしては、例えば、3級アミノ基、または4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマー等のカチオン性ビニルモノマーが挙げられる。これらのカチオン性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。カチオン性の水溶性コポリマーの重合にあたっては、一般に重合に用いられる連鎖移動剤などの助剤が添加されてもよい。
【0025】
マンニッヒ変性ポリアクリルアミドは、従来知られるマンニッヒ反応によりポリアクリルアミドを変性して得られる反応生成物である。マンニッヒ変性ポリアクリルアミドは、例えば、(メタ)アクリルアミドのコポリマーおよび/またはホモポリマーにホルムアルデヒドおよび2級アミンを反応させ、一部のアミド基をカチオン化する方法により得ることができる。ホルムアルデヒドとしては、水溶液(ホルマリン)あるいはパラホルムアルデヒドのいずれを用いてもよい。2級アミンの例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等が挙げられる。これらの2級アミンは、1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0026】
ホフマン分解ポリアクリルアミドは、従来知られるホフマン反応によりポリアクリルアミドを分解して得られる分解生成物である。ホフマン分解ポリアクリルアミドは、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ性物質の存在下で(メタ)アクリルアミドのコポリマーおよび/またはホモポリマーに次亜塩素酸塩(NaOCl)等の次亜ハロゲン酸塩を作用させることによりアミド基(-C=ONH-)をアミノ基(-NH2)に変換させて得ることができる。
【0027】
(両性ポリアクリルアミド)
両性ポリアクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミドとアニオン性モノマーとカチオン性モノマーとを構成成分とする水溶性コポリマーが挙げられる。これらの両性ポリアクリルアミドは、1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0028】
両性の水溶性コポリマーの構成成分として用いられるアニオン性モノマーおよびカチオン性モノマーの例としては、上述のアニオン性ポリアクリルアミドおよびカチオン性ポリアクリルアミドの構成成分として例示したものが同様に挙げられる。両性の水溶性コポリマーの重合にあたっては、一般に重合に用いられる連鎖移動剤などの助剤が添加されてもよい。
【0029】
本実施形態において、ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤は、得られるクラフト紙の比引張強度およびサイズ性を向上させる観点から、両性ポリアクリルアミドであることが好ましく、(メタ)アクリルアミドとアニオン性モノマーとカチオン性モノマーとを構成成分とする水溶性コポリマーであることがより好ましい。
【0030】
<任意成分>
クラフト紙には、必要に応じて、例えば、アニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留剤、濾水性向上剤、湿潤紙力剤、サイズ剤、定着剤、填料等の内添助剤、耐水化剤、染料、蛍光増白剤等の任意成分を含んでいてもよい。
【0031】
湿潤紙力剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。湿潤紙力増強剤の含有量は、特に限定されないが、クラフト紙中、好ましくは3.0質量%以下である。
【0032】
サイズ剤としては、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤等の内添サイズ剤、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体等の表面サイズ剤が挙げられる。サイズ剤の含有量は、特に限定されないが、クラフト紙中、好ましくは3.0質量%以下である。
【0033】
定着剤としては、硫酸バンド、ポリエチレンイミン等が挙げられる。定着剤の含有量は、特に限定されないが、クラフト紙中、好ましくは3.0質量%以下である。
【0034】
填料としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機填料、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の有機填料が挙げられる。
【0035】
<クラフト紙の物性>
(坪量)
クラフト紙の坪量は、特に限定されないが、包装袋用途の場合、好ましくは30g/m2以上、より好ましくは40g/m2以上、さらに好ましくは50g/m2以上であり、そして、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは150g/m2以下、さらに好ましくは100g/m2以下、よりさらに好ましくは80g/m2以下である。クラフト紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0036】
(厚さ)
クラフト紙の厚さは、特に限定されないが、包装袋用途の場合、好ましくは60μm以上、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは160μm以下である。クラフト紙の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0037】
(密度)
クラフト紙の密度は、特に限定されないが、包装袋用途の場合、好ましくは0.3g/cm3以上、より好ましくは0.4g/cm3以上であり、そして、好ましくは1.0g/cm3以下、より好ましくは0.8g/cm3以下、さらに好ましくは0.7g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.6g/cm3以下である。クラフト紙の密度は、上述した測定方法により得られた、クラフト紙の坪量および厚さから算出される。
【0038】
(比引張強度)
クラフト紙の比引張強度は、包装袋として用いた際の強度を向上させる観点から、好ましくは40.0N・m/g以上、より好ましくは45.0N・m/g以上、さらに好ましくは50.0N・m/g以上、よりさらに好ましくは52.0N・m/g以上である。また、比引張強度の上限は、特に限定はされないが、好ましくは100N・m/g以下、より好ましくは90.0N・m/g以下である。
比引張強度(N・m/g)は、JIS P 8113:2006に準拠して測定された引張強度(N/m)を、坪量(g/m2)で除した値である。
また、クラフト紙が配向性のあるクラフト紙の場合、比引張強度(N・m/g)は、縦方向の引張強度および横方向の引張方向をJIS P 8113:2006に準拠してそれぞれ測定し、縦方向の引張強度および横方向の引張方向の相乗平均を求め、これを坪量で除した値である。
なお、本明細書において、「縦方向」とは、抄紙方向と平行な方向を意味し、「横方向」とは、抄紙方向に対して垂直な方向を意味する。
クラフト紙の比引張強度は、クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量(すなわち、紙料へのポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の添加量)等によって調整することができる。クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量を増加させると、クラフト紙の比引張強度は上昇する傾向にある。
【0039】
(比引裂強度)
クラフト紙の比引裂強度は、包装袋として用いた際の強度を向上させる観点から、好ましくは10.0mN・m2/g以上、より好ましくは11.0mN・m2/g以上、さらに好ましくは12.0mN・m2/g以上である。また、比引裂強度の上限は、特に限定はされないが、好ましくは40.0mN・m2/g以下、より好ましくは30.0mN・m2/g以下である。
比引裂強度(mN・m2/g)は、JIS P 8116:2000に準拠して測定された引裂強度(mN)を、坪量(g/m2)で除した値である。
また、クラフト紙が配向性のあるクラフト紙の場合、比引裂強度(mN・m2/g)は、縦方向の引裂強度および横方向の引裂方向をJIS P 8116:2000に準拠してそれぞれ測定し、縦方向の引裂強度および横方向の引裂方向の相乗平均を求め、これを坪量で除した値である。
クラフト紙の比引裂強度は、クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量(すなわち、紙料へのポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の添加量)、クラフト紙の再離解後フリーネス(すなわち、クラフト紙を構成するパルプのフリーネス)等によって調整することができる。クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量を減少させると、クラフト紙の比引裂強度は上昇する傾向にある。クラフト紙の再離解後フリーネスを増加させると、クラフト紙の比引裂強度は上昇する傾向にある。
【0040】
(ステキヒトサイズ度)
クラフト紙のステキヒトサイズ度は、サイズ性を向上させる観点、印刷時のインクのにじみを抑制させ、印刷適性を向上させる観点および水に濡れた際の強度を向上させる観点から、好ましくは12秒以上、より好ましくは14秒以上、さらに好ましくは15秒以上、よりさらに好ましくは17秒以上、さらに一層好ましくは18秒以上である。また、ステキヒトサイズ度の上限は、特に限定はされないが、好ましくは40秒以下、より好ましくは30秒以下である。
ステキヒトサイズ度は、JIS P 8122:2004に準拠して測定される。
クラフト紙のステキヒトサイズ度は、クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量(すなわち、紙料へのポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の添加量)、クラフト紙の再離解後フリーネス(すなわち、クラフト紙を構成するパルプのフリーネス)等によって調整することができる。クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量を増加させると、クラフト紙のステキヒトサイズ度は上昇する傾向にある。クラフト紙の再離解後フリーネスを減少させると、クラフト紙のステキヒトサイズ度は上昇する傾向にある。
【0041】
(破断伸び)
クラフト紙の破断伸びは、包装袋として用いた際の強度を向上させる観点から、好ましくは3.1%以上、より好ましくは3.5%以上、さらに好ましくは3.8%以上、よりさらに好ましくは4.0%以上である。また、破断伸びの上限は、特に限定はされないが、製造性の観点から、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
破断伸びは、JIS P 8113:2006に準拠して測定される。
また、クラフト紙が配向性のあるクラフト紙の場合、破断伸びは、縦方向の破断伸びおよび横方向の破断伸びをJIS P 8113:2006に準拠してそれぞれ測定し、縦方向の破断伸びおよび横方向の破断伸びの相乗平均を求めた値である。
クラフト紙の破断伸びは、クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量(すなわち、紙料へのポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の添加量)、クラフト紙の再離解後フリーネス(すなわち、クラフト紙を構成するパルプのフリーネス)等によって調整することができる。クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量を増加させると、クラフト紙の破断伸びは上昇する傾向にある。クラフト紙の再離解後フリーネスを減少させると、クラフト紙の破断伸びは上昇する傾向にある。
【0042】
(クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度(再離解後フリーネス))
本実施形態のクラフト紙は、クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度(クラフト紙の再離解後フリーネス)が、500mL以上である。
クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度が500mL以上であることにより、上述したように比引裂強度の低下を抑え、比引裂強度を優れたものとすることができる。
クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度は、得られるクラフト紙の比引裂強度の観点から、好ましくは520mL以上、より好ましくは540mL以上であり、そして、比引張強度または/および破断伸びの観点からは、好ましくは800mL以下、より好ましくは780mL以下、さらに好ましくは760mL以下、よりさらに好ましくは700mL以下、さらに一層好ましくは650mL以下である。
クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度は、クラフト紙をJIS P 8220-1:2012に準拠した方法で離解し、得られた離解パルプについて、JIS P 8121:1995に準拠した方法で求められる。
クラフト紙の再離解後フリーネスは、クラフト紙を構成するパルプのフリーネスによって、上記範囲内に調整することができる。
【0043】
[クラフト紙の製造方法]
本実施形態において、クラフト紙の製造方法は、特に限定されない。例えば、クラフト紙を構成するパルプ(以下、「原料パルプ」ともいう)の蒸解処理を行なう蒸解工程と、蒸解処理した原料パルプを含有する分散液を叩解処理する叩解工程と、叩解処理した原料パルプを抄紙する抄紙工程とを含む製造方法が挙げられる。当該製造方法のそれぞれの工程について、以下に説明する。
【0044】
(蒸解工程)
蒸解工程は、原料パルプの蒸解処理を行なう工程である。本工程では、特に限定されないが、原料パルプの材料として用いられる原料チップを、水酸化ナトリウムを含む薬液で処理することが好ましく、水酸化ナトリウムを含む薬液による処理方法としては、公知の薬液を使用する公知の処理方法を用いることができる。
【0045】
原料パルプの材料として用いられる原料チップは、針葉樹パルプを主成分とすることが好ましい。「針葉樹パルプを主成分とする原料チップ」とは、原料チップ中、針葉樹チップの含有量が50質量%超のものをいい、針葉樹チップの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0046】
原料パルプに、漂白処理を施さなくてもよいし、漂白処理を施してもよい。原料パルプは、晒クラフトパルプおよび未晒クラフトパルプよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、未晒クラフトパルプであることがより好ましい。
【0047】
(叩解工程)
叩解工程は、蒸解処理した原料パルプを含有する分散液を叩解処理する工程である。本実施形態の叩解工程では、得られるクラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度が500mL以上の範囲となるように、叩解処理を行う。クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度を上記範囲とするように叩解処理することで、上述したように比引裂強度の低下を抑え、比引裂強度を優れたものとすることができる。叩解工程において、分散液の原料パルプ濃度は、特に限定されないが、好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。叩解処理の方法は特に限定されないが、蒸解処理した原料パルプを水中に分散させて、上記の原料パルプ濃度の分散液を作製し、叩解することが好ましい。叩解処理方法としては、特に限定されないが、例えば、ダブルディスクリファイナー、シングルディスクリファイナー、コニカルリファイナー、デラックスファイナー等の叩解機を用いて行うことができる。
【0048】
蒸解処理した原料パルプを含有する分散液を叩解処理することにより、比引張強度、比引裂強度およびサイズ性に優れるクラフト紙が得られると共に、生産性に優れる。
【0049】
(抄紙工程)
抄紙工程は、叩解処理した原料パルプを抄紙する工程である。本実施形態の抄紙工程において、得られるクラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量が、0.05質量%以上0.75質量%以下となるように、ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤を添加する。得られるクラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量が上記範囲内とするために、抄紙工程において、ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の添加量は、原料パルプ100質量部に対し、0.10質量部以上0.78質量部以下とすることが好ましい。クラフト紙中のポリアクリルアミド系乾燥紙力剤の含有量を上記範囲内となるように抄紙を行うことで、比引張強度および比引裂強度の両方を向上させることができ、さらにステキヒトサイズ度を向上させ、サイズ性を向上させることができる。
抄紙方法については、特に限定されず、例えばpHが4.5付近で抄紙を行う酸性抄紙法、pHが約6~約9で抄紙を行う中性抄紙法等が挙げられる。抄紙工程では、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙工程用薬剤を適宜添加できる。抄紙機についても、特に限定されず、例えば長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。
【0050】
<用途>
本実施形態のクラフト紙は、上述の通り、比引張強度、比引裂強度およびサイズ性に優れることから、包袋用(特に重包袋用)クラフト紙として、好適に用いることができる。特に、セメントや肥料、農薬などの産業用の重量物を入れる重包装袋用のクラフト紙として、好適に用いることができる。
【0051】
本実施形態の包装体は、上述のクラフト紙を用いてなる包装体である。
上述のクラフト紙は、比引張強度、比引裂強度およびサイズ性に優れることから、本実施形態の包装体は、特に、セメントや肥料、農薬などの産業用の重量物を入れる包装袋として、好適に用いることができる。
【実施例0052】
以下に、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、以下の操作は23℃、相対湿度50%RHの条件で行った。また、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0053】
[クラフト紙の製造]
<実施例1>
ダグラスファーを含む針葉樹チップを用い、クラフト蒸解を行った。
クラフト蒸解終了後、黒液を分離し、得られたチップを離解機によって離解後、濾布で遠心脱水と水洗浄を3回繰り返し、次いでスクリーンにより、未蒸解物を除き、遠心脱水して針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)を得た。得られたNUKPを、リファイナーを用いて叩解した。叩解後に得られたパルプの性状を、表1および表2に示す。
叩解後の得られたNUKPスラリーに、NUKPの含有量(乾燥質量)100部に対して、サイズ剤としてロジン0.04部、定着剤として硫酸バンド1.2部および紙力剤として両性ポリアクリルアミド(荒川化学工業社製OKS-20)0.75部を撹拌しながら添加し紙料を調製した。
上記紙料を用いて、JIS P 8222:2015に準拠した方法で手すきシートを作製し、坪量62.2g/m2のクラフト紙を得た。
【0054】
<実施例2>
紙料中の両性ポリアクリルアミドの添加量を0.60部に変更した以外は、実施例1と同様に手すきシートを作製し、坪量60.5g/m2のクラフト紙を得た。
【0055】
<実施例3>
パルプの叩解度を高め、紙料中の両性ポリアクリルアミドの添加量を0.60部に変更した以外は、実施例1と同様に手すきシートを作製し、坪量65.6g/m2のクラフト紙を得た。
【0056】
<実施例4>
パルプの叩解度を高め、紙料中の両性ポリアクリルアミドの添加量を0.30部に変更した以外は、実施例1と同様に手すきシートを作製し、坪量62.5g/m2のクラフト紙を得た。
【0057】
<実施例5>
紙料中の両性ポリアクリルアミドの添加量を0.10部に変更した以外は、実施例4と同様に手すきシートを作製し、坪量63.5g/m2のクラフト紙を得た。
【0058】
<比較例1>
紙料中に両性ポリアクリルアミドを添加しなかった以外は、実施例1と同様に手すきシートを作製し、坪量62.5g/m2のクラフト紙を得た。
【0059】
<比較例2>
紙料中の両性ポリアクリルアミドの添加量を1.00部に変更した以外は、実施例4と同様に手すきシートを作製し、坪量63.6g/m2のクラフト紙を得た。
【0060】
<比較例3>
パルプの叩解度を高め、紙料中の両性ポリアクリルアミドの添加量を0.30部に変更した以外は、実施例1と同様に手すきシートを作製し、坪量64.5g/m2のクラフト紙を得た。
【0061】
<比較例4>
紙料中に両性ポリアクリルアミドを添加しなかった以外は、比較例3と同様に手すきシートを作製し、坪量64.4g/m2のクラフト紙を得た。
【0062】
<実施例6>
実施例1と同様にして調製した紙料を用いて、長網式抄紙機を用い、抄速速度700m/分でクラフト紙を製造した。
【0063】
[測定方法]
<パルプ性状の測定>
(フリーネス)
叩解後に得られたパルプスラリー中のパルプについて、JIS P 8121:1995に準拠した方法で、カナダ標準ろ水度を測定した。
【0064】
(長さ平均繊維長、重量平均繊維長、平均繊維幅および微細繊維含有量)
叩解後に得られたパルプスラリー中のパルプの長さ平均繊維長、重量平均繊維長、平均繊維幅および微細繊維含有量を、繊維長測定機(型式名:FS-5(UHDベースユニット付き)、バルメット社製)を用い、ISO 16065-2(2007)に準拠して測定した。
【0065】
<クラフト紙物性の測定>
(比引張強度)
実施例および比較例で得られたクラフト紙について、JIS P 8113:2006に準拠した方法で引張強度を測定し、得られた引張強度(実施例6については、縦方向の引張強度と横方向の引張強度の相乗平均)を坪量で除して、比引張強度を算出した。
【0066】
(比引裂強度)
実施例および比較例で得られたクラフト紙について、JIS P 8116:2000に準拠した方法で引裂強度を測定し、得られた引裂強度(実施例6については、縦方向の引裂強度と横方向の引裂強度の相乗平均)を坪量で除して、比引裂強度を算出した。
【0067】
(ステキヒトサイズ度)
実施例および比較例で得られたクラフト紙について、JIS P 8122:2004に準拠した方法でステキヒトサイズ度を測定した。
【0068】
(破断伸び)
JIS P 8113:2006に準じて、23±5℃、50±10%の環境下に1日以上静置し、調温および調湿処理した実施例および比較例で得られたクラフト紙を幅15mm、長さ150mmに切り出したサンプルを準備した。
引張試験機(型式RTC-1210A、株式会社エーアンドディ製)にて、チャック間距離を100mmとなるようサンプルを装着し、10mm/minの速度で引張試験を行い、破断伸びを測定した。
【0069】
(再離解後フリーネス(クラフト紙を再離解して得られる離解パルプのカナダ標準ろ水度))
実施例および比較例のクラフト紙を、JIS P 8220-1:2012に準拠した方法で離解し、得られた離解パルプについて、JIS P 8121:1995に準拠した方法で、カナダ標準ろ水度を測定した。
【0070】
(残留乾燥紙力剤量の測定(ポリアクリルアミド系化合物の含有量の測定方法))
実施例および比較例のクラフト紙に含まれるポリアクリルアミド系化合物の含有量(固形分換算)は、熱分解GC/MS分析装置を用いて以下の条件で測定し、検出されるイオンm/z 125(3-Ethylidene-2,5-pyrrolidinedione)の結果から検量線を用いて定量し求めた。
〔測定試料〕
実施例および比較例のクラフト紙を、100~150μg程度精秤し、測定試料とした。
〔測定条件〕
GC:カラムHP-INNOWAX(長さ30m、内径0.25μm、外径0.25mm)
キャリアーガス:He
MS:EI(+)
条件:50℃→(10℃/min)→260℃15分保持
熱分解装置:フロンティアラボ PY-3030D、分解温度500℃
解析:選択イオンm/z 125でポリアクリルアミド系化合物の含有量を算出
【0071】
〔検量線の作成〕
(1)ポリアクリルアミド系化合物の原液の濃度の測定
質量が既知のアルミカップにポリアクリルアミド系化合物の原液(荒川化学工業社製、OKS-20)を1g測り取り、105℃2時間以上で乾燥し、乾固させた。その後、アルミカップと乾固させたポリアクリルアミド系化合物の原液の合計質量を測定し、以下の計算式によって、ポリアクリルアミド系化合物の原液の濃度を算出した。
ポリアクリルアミド系化合物の原液の濃度(質量%)={乾燥後のアルミカップと乾固させたポリアクリルアミド系化合物の原液の合計質量(g)-アルミカップ質量(g)}÷ポリアクリルアミド系化合物の原液の質量(g)×100
(2)ポリアクリルアミド系化合物の標準液の作製
50mLカップにポリアクリルアミド系化合物の原液を所定量入れ、イオン交換水で10gまでメスアップし、ポリアクリルアミド系化合物の標準液を作製した。この時、ポリアクリルアミド系化合物の原液の量は、1.0g、2.5gおよび5.0gとして、濃度が異なる3種の標準液を得た。得られた標準液について、前記(1)と同様の方法で、濃度の測定を行った。
(3)標準濾紙試料の作製
濾紙の乾燥質量を測定したのち、濾紙へポリアクリルアミド系化合物の標準液を、目標添加量含ませ、乾燥機で105℃1時間乾燥させ、標準濾紙試料を作製した。標準濾紙試料は、粉砕機で粉砕し、100~150μg程度精秤し、検量線の作成に用いた。
なお、標準濾紙試料を作製するための、濾紙へのポリアクリルアミド系化合物の標準液の目標添加量は、下記計算式によって求めた。
標準液の目標添加量(g)=濾紙乾燥質量(g)×目標ポリアクリルアミド系化合物含量(質量%)÷ポリアクリルアミド系化合物の標準液濃度(質量%)
(4)検量線の作成
得られた標準濾紙試料を熱分解GC/MS分析装置を用いて測定し、検出されるイオンm/z 125(3-Ethylidene-2,5-pyrrolidinedione)の測定結果から検量線を作成した。
【0072】
【0073】
【0074】
表1および表2の結果より、実施例1~6のクラフト紙は、比引張強度および比引裂強度の両方並びにサイズ性に優れることが分かる。
木材パルプが針葉樹クラフトパルプ(NKP)(好ましくは、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP))を含む場合、木材パルプ中の針葉樹クラフトパルプ(NKP)(好ましくは、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP))の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは、95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。針葉樹クラフトパルプ(NKP)は、平均繊維長が長いため、クラフト紙を構成するパルプの主成分である木材パルプにおいて、針葉樹クラフトパルプ(NKP)の含有量が90質量%以上であることにより、所望の比引張強度および比引裂強度を有するクラフト紙を得られるので好ましい。さらに、クラフト紙を構成するパルプとして針葉樹クラフトパルプ(NKP)を用いると、パルプ繊維自身の強度が広葉樹クラフトパルプ(LKP)と比べて高いため、得られるクラフト紙の比引張強度および比引裂強度をより向上しやすくできる。