IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

<>
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図1
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図2
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図3
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図4
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図5
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図6
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図7
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図8
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図9
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図10
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図11
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図12
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図13
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図14
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図15
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図16
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図17
  • 特開-基板処理装置および基板処理方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157628
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072076
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】植村 知浩
(72)【発明者】
【氏名】正司 和大
(72)【発明者】
【氏名】篠原 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】根本 脩平
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA12
5F157AB03
5F157AB17
5F157AB33
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157CD16
5F157CD27
5F157CE07
5F157CE25
5F157CE32
5F157CE83
5F157CF16
5F157CF22
5F157CF34
5F157CF70
5F157CF74
5F157DB51
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】周縁部に切欠部が設けられた基板に対して処理液を供給して処理する基板処理技術において、パーティクルの発生を効果的に抑制する。
【解決手段】この発明は、周縁部に切欠部が設けられた基板を回転させるとともにノズルから処理液を吐出させながら、ノズルを基板の外側から基板の端面を経由して端面から所定のベベル処理距離だけ離れた最大処理位置まで往路移動させた後にノズルを前記往路移動とは逆方向に復路移動させる。これにより、基板の周縁部を処理液により処理するが、端面と中間位置との間でのノズルの移動中における切欠到達量が、中間位置と最大処理位置との間でのノズルの移動中における切欠到達量よりも少なくなるように、中間位置で回転部、処理液供給部およびノズル移動部のうちの少なくとも1つの動作条件を切り替える。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部の一部に切欠部が設けられた基板を水平姿勢で回転軸まわりに回転自在に保持する基板保持部と、
前記基板保持部を前記回転軸まわりに回転させる回転部と、
ノズルから処理液を吐出することで前記基板の前記周縁部に前記処理液を供給する処理液供給部と、
前記ノズルを前記基板の径方向に移動させるノズル移動部と、
前記基板を回転させるとともに前記ノズルから前記処理液を吐出させながら、前記ノズルを前記基板の外側から前記基板の端面を経由して前記端面から所定のベベル処理距離だけ離れた最大処理位置まで往路移動させた後に前記ノズルを前記往路移動とは逆方向に復路移動させるように、前記回転部、前記処理液供給部および前記ノズル移動部の動作条件を制御する制御部と、を備え、
前記ノズルの移動中に、前記ノズルから吐出された前記処理液が単位時間当たりに前記切欠部に到達する量を切欠到達量とし、
前記基板の前記径方向における前記端面と前記最大処理位置との中間を中間位置としたとき、
前記制御部は、前記端面と前記中間位置との間での前記ノズルの移動中における前記切欠到達量が、前記中間位置と前記最大処理位置との間での前記ノズルの移動中における前記切欠到達量よりも少なくなるように、前記中間位置で前記回転部、前記処理液供給部および前記ノズル移動部のうちの少なくとも1つの前記動作条件を切り替える、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記径方向において前記基板の前記端面から前記切欠部の最深位置までの距離が前記ベベル処理距離よりも短いとき、
前記中間位置は、前記基板の径方向において前記最深位置と前記最大処理位置との間に設定されている、基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記中間位置は前記最深位置と一致している、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記基板の前記端面から前記切欠部の最深位置までの距離が前記ベベル処理距離と同じまたは長いとき、
前記中間位置は、前記基板の径方向において前記端面の位置と前記最大処理位置との間に設定されている、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記動作条件は、前記基板の回転数を含み、
前記制御部は、
前記基板を回転させるとともに前記ノズルから前記処理液を吐出させながら前記ノズルを前記基板の外側から前記最大処理位置まで往路移動させる往路側ベベル処理のうち、前記基板の外側から前記中間位置まで往路移動させるときの前記回転数が前記中間位置から前記最大処理位置まで往路移動させるときの前記回転数よりも少なく、
前記基板を回転させるとともに前記ノズルから前記処理液を吐出させながら前記ノズルを前記最大処理位置から前記基板の外側まで復路移動させる復路側ベベル処理のうち、前記中間位置から前記基板の外側まで復路移動させるときの前記回転数が前記最大処理位置から前記中間位置まで復路移動させるときの前記回転数よりも少なく
なるように、前記回転部を制御する、基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記動作条件は、前記基板の径方向における前記ノズルの移動速度を含み、
前記制御部は、
前記往路側ベベル処理のうち、前記基板の外側から前記中間位置まで往路移動させるときの前記移動速度が前記中間位置から前記最大処理位置まで往路移動させるときの前記移動速度よりも大きく、
前記復路側ベベル処理のうち、前記中間位置から前記基板の外側まで復路移動させるときの前記移動速度が前記最大処理位置から前記中間位置まで復路移動させるときの前記移動速度よりも大きく
なるように、前記ノズル移動部を制御する、基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記動作条件は、前記ノズルから吐出される前記処理液の吐出流量を含み、
前記制御部は、
前記往路側ベベル処理のうち、前記基板の外側から前記中間位置まで往路移動させるときの前記吐出流量が前記中間位置から前記最大処理位置まで往路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく、
前記復路側ベベル処理のうち、前記中間位置から前記基板の外側まで復路移動させるときの前記吐出流量が前記最大処理位置から前記中間位置まで復路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく
なるように、前記ノズル移動部を制御する、基板処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記動作条件は、前記基板の径方向における前記ノズルの移動速度を含み、
前記制御部は、
前記基板を回転させるとともに前記ノズルから前記処理液を吐出させながら前記ノズルを前記基板の外側から前記最大処理位置まで往路移動させる往路側ベベル処理のうち、前記基板の外側から前記中間位置まで往路移動させるときの前記移動速度が前記中間位置から前記最大処理位置まで往路移動させるときの前記移動速度よりも大きく、
前記基板を回転させるとともに前記ノズルから前記処理液を吐出させながら前記ノズルを前記最大処理位置から前記基板の外側まで復路移動させる復路側ベベル処理のうち、前記中間位置から前記基板の外側まで復路移動させるときの前記移動速度が前記最大処理位置から前記中間位置まで復路移動させるときの前記移動速度よりも大きく
なるように、前記ノズル移動部を制御する、基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記動作条件は、前記ノズルから吐出される前記処理液の吐出流量を含み、
前記制御部は、
前記往路側ベベル処理のうち、前記基板の外側から前記中間位置まで往路移動させるときの前記吐出流量が前記中間位置から前記最大処理位置まで往路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく、
前記復路側ベベル処理のうち、前記中間位置から前記基板の外側まで復路移動させるときの前記吐出流量が前記最大処理位置から前記中間位置まで復路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく
なるように、前記ノズル移動部を制御する、基板処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記動作条件は、前記ノズルから吐出される前記処理液の吐出流量を含み、
前記制御部は、
前記基板を回転させるとともに前記ノズルから前記処理液を吐出させながら前記ノズルを前記基板の外側から前記最大処理位置まで往路移動させる往路側ベベル処理のうち、前記基板の外側から前記中間位置まで往路移動させるときの前記吐出流量が前記中間位置から前記最大処理位置まで往路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく、
前記基板を回転させるとともに前記ノズルから前記処理液を吐出させながら前記ノズルを前記最大処理位置から前記基板の外側まで復路移動させる復路側ベベル処理のうち、前記中間位置から前記基板の外側まで復路移動させるときの前記吐出流量が前記最大処理位置から前記中間位置まで復路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく
なるように、前記ノズル移動部を制御する、基板処理装置。
【請求項11】
周縁部の一部に切欠部が設けられた基板を水平姿勢で回転軸まわりに回転させる回転工程と、
ノズルから処理液を吐出しながら、前記ノズルを回転している前記基板の外側から前記基板の端面を経由して前記端面から所定のベベル処理距離だけ離れた最大処理位置まで往路移動させる往路処理工程と、
前記往路処理工程の後に、前記基板の回転を維持するとともに前記ノズルから処理液を吐出しながら、前記ノズルを前記往路移動とは逆方向に復路移動させる復路処理工程と、を備え、
前記ノズルの移動中に、前記ノズルから吐出された前記処理液が単位時間当たりに前記切欠部に到達する量を切欠到達量とし、
前記基板の径方向における前記端面と前記最大処理位置との中間を中間位置としたとき、
前記往路処理工程および前記復路処理工程のいずれにおいても、前記端面と前記中間位置との間での前記ノズルの移動中における前記切欠到達量が、前記中間位置と前記最大処理位置との間での前記ノズルの移動中における前記切欠到達量よりも少なくなるように、前記基板の回転、前記処理液の吐出および前記ノズルの移動のうちの少なくとも1つの動作条件を、前記中間位置で切り替えることを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周縁部にノッチなどの切欠部が設けられた基板を回転させながら基板の周縁部に処理液を供給して処理する基板処理技術に関するものである。ここで、基板には、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、太陽電池用基板、等(以下、単に「基板」という)が含まれる。また、処理には、エッチング処理が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板を回転させつつ当該基板の周縁部に処理液を供給して薬液処理や洗浄処理などを施す基板処理装置が知られている。例えば特許文献1に記載の装置では、ノズルから処理液を吐出しつつ基板の上方で当該ノズルを移動させているため、ベベル部に衝突して飛散した処理液がパーティクルの発生源となる可能性がある。そこで、基板の回転数を制御することで、パーティクル発生の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6980457号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、ベベル部での処理液の飛散を問題視している。そして、いわゆるノッチと称される切欠部を有さない基板については一定の効果が認められる。しかしながら、半導体ウエハに代表されるような、ノッチを有する基板については、必ずしも十分な効果は得られていない。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、周縁部に切欠部が設けられた基板に対して処理液を供給して処理する基板処理技術において、パーティクルの発生を効果的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様は、基板処理装置であって、周縁部の一部に切欠部が設けられた基板を水平姿勢で回転軸まわりに回転自在に保持する基板保持部と、基板保持部を回転軸まわりに回転させる回転部と、ノズルから処理液を吐出することで基板の周縁部に処理液を供給する処理液供給部と、ノズルを基板の径方向に移動させるノズル移動部と、基板を回転させるとともにノズルから処理液を吐出させながら、ノズルを基板の外側から基板の端面を経由して端面から所定のベベル処理距離だけ離れた最大処理位置まで往路移動させた後にノズルを往路移動とは逆方向に復路移動させるように、回転部、処理液供給部およびノズル移動部の動作条件を制御する制御部と、を備え、ノズルの移動中に、ノズルから吐出された処理液が単位時間当たりに切欠部に到達する量を切欠到達量とし、基板の径方向における端面と最大処理位置との中間を中間位置としたとき、制御部は、端面と中間位置との間でのノズルの移動中における切欠到達量が、中間位置と最大処理位置との間でのノズルの移動中における切欠到達量よりも少なくなるように、中間位置で回転部、処理液供給部およびノズル移動部のうちの少なくとも1つの動作条件を切り替えることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の他の態様は、基板処理方法であって、周縁部の一部に切欠部が設けられた基板を水平姿勢で回転軸まわりに回転させる回転工程と、ノズルから処理液を吐出しながら、ノズルを回転している基板の外側から基板の端面を経由して端面から所定のベベル処理距離だけ離れた最大処理位置まで往路移動させる往路処理工程と、往路処理工程の後に、基板の回転を維持するとともにノズルから処理液を吐出しながら、ノズルを往路移動とは逆方向に復路移動させる復路処理工程と、を備え、ノズルの移動中に、ノズルから吐出された処理液が単位時間当たりに切欠部に到達する量を切欠到達量とし、基板の径方向における端面と最大処理位置との中間を中間位置としたとき、往路処理工程および復路処理工程のいずれにおいても、端面と中間位置との間でのノズルの移動中における切欠到達量が、中間位置と最大処理位置との間でのノズルの移動中における切欠到達量よりも少なくなるように、基板の回転、処理液の吐出およびノズルの移動のうちの少なくとも1つの動作条件を、中間位置で切り替えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、処理液を吐出しているノズルが回転している基板に対して往復移動し、処理液が基板の周縁部に供給される。この往復移動中に、ノズルは切欠部の上方を横切る。このとき、ノズルから吐出された処理液が切欠部に到達するが、切欠到達量が増大するにしたがって液はねの発生確率が高まり、液はね量も多くなる。また、液はねの影響は基板の端面に近くなるほど大きい。そこで、これらの点を考慮し、本発明では、ノズルの往復移動中における基板の回転、処理液の吐出およびノズルの移動を含めた動作条件を固定するのではなく、端面と最大処理位置との中間位置で動作条件を切り替えている。より詳しくは、切欠到達量が中間位置と最大処理位置との間でのノズルの移動中における切欠到達量よりも少なくなるように、動作条件が切り替えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周縁部に切欠部が設けられた基板に対して処理液を供給して処理する基板処理技術において、パーティクルの発生を効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
図2】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の構成を示す図である。
図3】ベース部材上に設置された基板処理部の構成を模式的に示す平面図である。
図4】スピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。
図5】回転カップ部および固定カップ部の一部を示す図である。
図6】面保護加熱機構の構成を示す外観斜視図である。
図7図6に示す上面保護加熱機構の断面図である。
図8】処理機構に装備される上面側の処理液吐出ノズルを示す斜視図である。
図9】ノズル移動部の構成および動作を模式的に示す図である。
図10】ベベル処理される領域、ノッチおよび基板端面の関係の一例を模式的に示す図である。
図11】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。
図12】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。
図13】本発明に係る基板処理装置の第3実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。
図14】本発明に係る基板処理装置の第4実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。
図15】本発明に係る基板処理装置の第5実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。
図16】本発明に係る基板処理装置の第6実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。
図17】本発明に係る基板処理装置の第7実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。
図18】ベベル処理される領域、ノッチおよび基板端面の関係の他の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。これは基板処理システム100の外観を示すものではなく、基板処理システム100の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理システム100は、例えばクリーンルーム内に設置され、一方主面のみに回路パターン等(以下「パターン」と称する)が形成された基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。そして、基板処理システム100に装備される処理ユニット1において、処理液による基板処理が実行される。本明細書では、基板の両主面のうちパターンが形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターン形成されている面を意味する。
【0012】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0013】
図1に示すように、基板処理システム100は、基板Wに対して処理を施す基板処理エリア110を有している。この基板処理エリア110に対し、インデクサ部120が隣接して設けられている。インデクサ部120は、基板Wを収容するための容器C(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121を有している。また、インデクサ部120は、容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Wを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Wを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Wがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0014】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Wを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0015】
基板処理エリア110では、載置台112がインデクサロボット122からの基板Wを載置可能に設けられている。また、平面視において、基板処理エリア110のほぼ中央に基板搬送ロボット111が配置される。さらに、この基板搬送ロボット111を取り囲むように、複数の処理ユニット1が配置される。具体的には、基板搬送ロボット111が配置された空間に面して複数の処理ユニット1が配置される。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット111は載置台112にランダムにアクセスし、載置台112との間で基板Wを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Wに対して所定の処理を実行するものであり、本発明に係る基板処理装置に相当するものである。本実施形態では、これらの処理ユニット(基板処理装置)1は同一の機能を有している。このため、複数基板Wの並列処理が可能となっている。なお、基板搬送ロボット111はインデクサロボット122から基板Wを直接受け渡すことが可能であれば、必ずしも載置台112は必要ない。
【0016】
図2は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の構成を示す図である。図3図2に示す基板処理装置の一部を上方から見た平面図であり、基板処理部の構成を模式的に示している。図2図3および以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示される場合がある。基板処理装置(処理ユニット)1で用いられるチャンバ11は、鉛直上方からの平面視で矩形形状の底壁11aと、底壁11aの周囲から立設される4枚の側壁11b~11eと、側壁11b~11eの上端部を覆う天井壁11fと、を有している。これら底壁11a、側壁11b~11eおよび天井壁11fを組み合わせることで、略直方体形状の内部空間12が形成される。
【0017】
底壁11aの上面に、ベース支持部材16、16が互いに離間しながらボルトなどの締結部品により固定される。つまり、底壁11aからベース支持部材16が立設される。これらベース支持部材16、16の上端部に、ベース部材17がボルトなどの締結部品により固定される。このベース部材17は、底壁11aよりも小さな平面サイズを有するとともに、底壁11aよりも厚肉で高い剛性を有する板材で構成される。図2に示すように、ベース部材17は、ベース支持部材16、16により底壁11aから鉛直上方に持ち上げられている。つまり、チャンバ11の内部空間12の底部において、いわゆる高床構造が形成されている。このベース部材17の上面は、後で詳述するように、基板Wに対して基板処理を施す基板処理部SPを設置可能に仕上げられ、当該上面に基板処理部SPが設置される。この基板処理部SPを構成する各部は装置全体を制御する制御ユニット10と電気的に接続され、制御ユニット10からの指示に応じて動作する。なお、ベース部材17の形状、基板処理部SPの構成や動作については、後で詳述する。
【0018】
図2に示すように、チャンバ11の天井壁11fには、ファンフィルタユニット(FFU)13が取り付けられている。このファンフィルタユニット13は、基板処理装置1が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバ11内の内部空間12に供給する。ファンフィルタユニット13は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバ11内に送り出すためのファンおよびフィルタ(例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ)を備えており、天井壁11fに設けられた開口11f1を介して清浄空気を送り込む。これにより、チャンバ11内の内部空間12に清浄空気のダウンフローが形成される。また、ファンフィルタユニット13から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレート14が天井壁11fの直下に設けられている。
【0019】
基板処理装置1では、4枚の側壁11b~11eのうち基板搬送ロボット111と対向する側壁11bには、搬送用開口11b1が設けられており、内部空間12とチャンバ11の外部とが連通される。このため、基板搬送ロボット111のハンド(図示省略)が搬送用開口11b1を介して基板処理部SPにアクセス可能となっている。つまり、搬送用開口11b1を設けたことで、内部空間12に対する基板Wの搬入出が可能となっている。また、この搬送用開口11b1を開閉するためのシャッター15が側壁11bに取り付けられている。
【0020】
シャッター15にはシャッター開閉機構(図示省略)が接続されており、制御ユニット10からの開閉指令に応じてシャッター15を開閉させる。より具体的には、基板処理装置1では、未処理の基板Wをチャンバ11に搬入する際にシャッター開閉機構はシャッター15を開き、基板搬送ロボット111のハンドによって未処理の基板Wがフェースアップ姿勢で基板処理部SPに搬入される。つまり、基板Wは上面Wfを上方に向けた状態で基板処理部SPのスピンチャック21上に載置される。そして、当該基板搬入後に基板搬送ロボット111のハンドがチャンバ11から退避すると、シャッター開閉機構はシャッター15を閉じる。そして、チャンバ11の処理空間(後で詳述する密閉空間12aに相当)内で基板Wの周縁部Wsに対するベベル処理が基板処理部SPにより本発明の「基板処理」の一例として実行される。また、ベベル処理の終了後においては、シャッター開閉機構がシャッター15を再び開き、基板搬送ロボット111のハンドが処理済の基板Wを基板処理部SPから搬出する。このように、本実施形態では、チャンバ11の内部空間12が常温環境に保たれる。なお、本明細書において「常温」とは、5℃~35℃の温度範囲にあることを意味する。
【0021】
側壁11dは、ベース部材17に設置された基板処理部SP(図2)を挟んで側壁11bの反対側に位置している。この側壁11dには、メンテナンス用開口11d1が設けられている。メンテナンス時には、同図に示すように、メンテナンス用開口11d1は開放される。このため、オペレータは装置の外部からメンテナンス用開口11d1を介して基板処理部SPにアクセス可能となっている。一方、基板処理時には、蓋部材19がメンテナンス用開口11d1を塞ぐように取り付けられる。このように、本実施形態では、蓋部材19は側壁11dに対して着脱自在となっている。
【0022】
また、側壁11eの外側面には、基板処理部SPに対して加熱した不活性ガス(本実施形態では、窒素ガス)を供給するための窒素ガス供給部47が取り付けられている。
【0023】
このように、チャンバ11の外壁側には、シャッター15、蓋部材19および窒素ガス供給部47が配置される。これに対し、チャンバ11の内側、つまり内部空間12には、高床構造のベース部材17の上面に基板処理部SPが設置される。以下、図2ないし図9を参照しつつ、基板処理部SPの構成について説明する。
【0024】
図3では、ベース部材上に設置された基板処理部の構成が模式的に示されている。以下、装置各部の配置関係や動作などを明確にするために、Z方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。図3における座標系において、基板Wの搬送経路TPと平行な水平方向を「X方向」とし、それと直交する水平方向を「Y方向」としている。さらに詳しくは、チャンバ11の内部空間12から搬送用開口11b1およびメンテナンス用開口11d1に向かう方向をそれぞれ「+X方向」および「-X方向」と称し、チャンバ11の内部空間12から側壁11c、11eに向かう方向をそれぞれ「-Y方向」および「+Y方向」と称し、鉛直上方および鉛直下方に向かう方向をそれぞれ「+Z方向」および「-Z方向」と称する。
【0025】
基板処理部SPは、保持回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8および基板観察機構9を備えている。これらの機構は、ベース部材17上に設けられている。つまり、チャンバ11よりも高い剛性を有するベース部材17を基準とし、保持回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8および基板観察機構9が相互に予め決められた位置関係で配置される。
【0026】
保持回転機構2は、図2に示すように、基板Wの表面を上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持する基板保持部2Aと、基板Wを保持した基板保持部2Aおよび飛散防止機構3の一部を同期して回転させる回転機構2Bと、を備えている。このため、制御ユニット10からの回転指令に応じて回転機構2Bが作動すると、基板Wおよび飛散防止機構3の回転カップ部31は、鉛直方向Zと平行に延びる回転軸AXまわりに回転される。
【0027】
基板保持部2Aは、基板Wより小さい円板状の部材であるスピンチャック21を備えている。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸AXに一致するように設けられている。特に、本実施形態では、図3に示すように、基板保持部2Aの中心(スピンチャック21の中心軸に相当)がチャンバ11の中心11gよりも(+X)方向にオフセットされる。つまり、チャンバ11の上方からの平面視で、スピンチャック21の中心軸(回転軸AX)が内部空間12の中心11gから搬送用開口11b1側に距離Lofだけずれた処理位置に位置するように、基板保持部2Aは配置される。なお、後述する装置各部の配置関係を明確にするため、本明細書では、オフセットされた基板保持部2Aの中心(回転軸AX)を通過するとともに、搬送経路TPと直交する仮想線および搬送経路TPと平行な仮想線をそれぞれ「第1仮想水平線VL1」および「第2仮想水平線VL2」と称する。
【0028】
スピンチャック21の下面には、円筒状の回転軸部22が連結される。回転軸部22は、その軸線を回転軸AXと一致させた状態で、鉛直方向Zに延設される。また、回転軸部22には、回転機構2Bが接続される。
【0029】
回転機構2Bは、基板保持部2Aおよび飛散防止機構3の回転カップ部31を回転させるための回転駆動力を発生するモータ23と、当該回転駆動力を伝達するための動力伝達部24とを有している。モータ23は、回転駆動力の発生に伴い回転する回転シャフト231を有している。回転シャフト231を鉛直下方に延設させた姿勢でベース部材17のモータ取付部位171に設けられている。より詳しくは、モータ取付部位171は、図3に示すように、メンテナンス用開口11d1と対向しながら(+X)方向に切り欠かれた部位である。このモータ取付部位171の切欠幅(Y方向サイズ)はモータ23のY方向幅とほぼ同一である。このため、モータ23は、その側面をモータ取付部位171と係合させながらX方向に移動自在となっている。
【0030】
モータ取付部位171で、モータ23がX方向に位置決めされながらベース部材17に固定される。ベース部材17から下方に突出した回転シャフト231の先端部には、第1プーリ241が取り付けられている。また、基板保持部2Aの下方端部には、第2プーリ242が取り付けられている。より詳しくは、基板保持部2Aの下方端部は、ベース部材17のスピンチャック取付部位172に設けられた貫通孔に挿通され、ベース部材17の下方に突出している。この突出部分に第2プーリ242が設けられている。そして、第1プーリ241および第2プーリ242の間に無端ベルト243が架け渡される。このように、本実施形態では、第1プーリ241、第2プーリ242および無端ベルト243により、動力伝達部24が構成される。
【0031】
スピンチャック21の中央部には、貫通孔(図示省略)が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、バルブ(図示省略)が介装された配管25を介してポンプ26が接続される。当該ポンプ26およびバルブは、制御ユニット10に電気的に接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて動作する。これによって、負圧と正圧とが選択的にスピンチャック21に付与される。例えば基板Wがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプ26が負圧をスピンチャック21に付与すると、スピンチャック21は基板Wを下方から吸着保持する。一方、ポンプ26が正圧をスピンチャック21に付与すると、基板Wはスピンチャック21の上面から取り外し可能となる。また、ポンプ26の吸引を停止すると、スピンチャック21の上面上で基板Wは水平移動可能となる。
【0032】
スピンチャック21には、回転軸部22の中央部に設けられた配管28を介して窒素ガス供給部29が接続される。窒素ガス供給部29は、基板処理システム100が設置される工場のユティリティーなどから供給される常温の窒素ガスを制御ユニット10からのガス供給指令に応じた流量およびタイミングでスピンチャック21に送給し、基板Wの下面Wb側で窒素ガスを中央部から径方向外側に流通させる。なお、本実施形態では、窒素ガスを用いているが、その他の不活性ガスを用いてもよい。この点については、後で説明する中央ノズルから吐出される加熱ガスについても同様である。また、「流量」とは、窒素ガスなどの流体が単位時間当たりに移動する量を意味している。
【0033】
回転機構2Bは、基板Wと一体的にスピンチャック21を回転させるのみならず、当該回転に同期して回転カップ部31を回転させるために、動力伝達部27(図2)を有している。動力伝達部27は、非磁性材料または樹脂で構成される円環部材27a(図2)と、円環部材に内蔵されるスピンチャック側磁石(図示省略)と、回転カップ部31の一構成である下カップ32に内蔵されるカップ側磁石(図示省略)とを有している。円環部材27aは、図2に示すように回転軸部22に取り付けられ、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能となっている。より詳しくは、回転軸部22は、図2に示すように、スピンチャック21の直下位置において、径方向外側に張出したフランジ部位(図示省略)を有している。そして、フランジ部位に対して円環部材27aが同心状に配置されるとともに、図示省略するボルトなどによって連結固定される。
【0034】
円環部材27aの外周縁部では、複数のスピンチャック側磁石が回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。本実施形態では、互いに隣り合う2つのスピンチャック側磁石の一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置される。
【0035】
これらのスピンチャック側磁石と同様に、複数のカップ側磁石が回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。これらのカップ側磁石は下カップ32に内蔵される。下カップ32は次に説明する飛散防止機構3の構成部品であり、円環形状を有している。つまり、下カップ32は、円環部材27aの外周面と対向可能な内周面を有している。この内周面の内径は円環部材27aの外径よりも大きい。そして、当該内周面を円環部材27aの外周面から所定間隔(=(上記内径-上記外径)/2)だけ離間対向させながら下カップ32が回転軸部22および円環部材27aと同心状に配置される。この下カップ32の外周縁上面には、係合ピンおよび連結用マグネットが設けられており、これらにより上カップ33が下カップ32と連結され、この連結体が回転カップ部31として機能する。
【0036】
下カップ32は、ベース部材17の上面上において、図面への図示を省略したベアリングによって、上記配置状態のまま、回転軸AXまわりに回転可能に支持される。この下カップ32の内周縁部において、上記したようにカップ側磁石が回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。また、互いに隣り合う2つのカップ側磁石の配置についてもスピンチャック側磁石と同様である。つまり、一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置される。
【0037】
このように構成された動力伝達部27では、モータ23により回転軸部22とともに円環部材27aが回転すると、スピンチャック側磁石とカップ側磁石との間での磁力作用によって、下カップ32がエアギャップ(円環部材27aと下カップ32との隙間)を維持しつつ円環部材27aと同じ方向に回転する。これにより、回転カップ部31が回転軸AXまわりに回転する。つまり、回転カップ部31は基板Wと同一方向でしかも同期して回転する。
【0038】
飛散防止機構3は、スピンチャック21に保持された基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能な回転カップ部31と、回転カップ部31を囲むように固定的に設けられる固定カップ部34と、を有している。回転カップ部31は、下カップ32に上カップ33が連結されることで、回転する基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能に設けられている。
【0039】
図4はスピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。図5は回転カップ部および固定カップ部の一部を示す図である。下カップ32は円環形状を有している。その外径は基板Wの外径よりも大きく、鉛直上方からの平面視においてスピンチャック21で保持された基板Wから径方向にはみ出た状態で下カップ32は回転軸AXまわりに回転自在に配置される。当該はみ出た領域、つまり下カップ32の上面周縁部では、周方向に沿って鉛直上方に立設する係合ピン(図示省略)と平板状の下マグネット(図示省略)とが交互に取り付けられている。
【0040】
一方、上カップ33は、図2および図4に示すように、下円環部位331と、上円環部位332と、これらを連結する傾斜部位333とを有している。下円環部位331の外径D331は下カップ32の外径D32と同一であり、下円環部位331は下カップ32の周縁部321の鉛直上方に位置している。下円環部位331の下面では、係合ピンの鉛直上方に相当する領域において、下方に開口した凹部が係合ピンの先端部と嵌合可能に設けられている。また、下マグネットの鉛直上方に相当する領域において、上マグネットが取り付けられている。このため、凹部および上マグネットがそれぞれ係合ピンおよび下マグネットと対向した状態で、上カップ33は下カップ32に対して係脱可能となっている。
【0041】
上カップ33は、昇降機構7により鉛直方向において昇降可能となっている。上カップ33が昇降機構7により上方に移動されると、鉛直方向において上カップ33と下カップ32との間に基板Wの搬入出用の搬送空間が形成される。一方、昇降機構7により上カップ33が下方に移動されると、凹部が係合ピンの先端部を被るように嵌合し、下カップ32に対して上カップ33が水平方向に位置決めされる。また、上マグネットが下マグネットに近接し、両者間で生じる引力によって、上記位置決めさた上カップ33および下カップ32が互いに結合される。これによって、図3の部分拡大図および図5に示すように、水平方向に延びる隙間GPcを形成した状態で、上カップ33および下カップ32が鉛直方向に一体化される。そして、回転カップ部31は隙間GPcを形成したまま回転軸AXまわりに回転自在となっている。
【0042】
回転カップ部31では、図4に示すように、上円環部位332の外径D332は下円環部位331の外径D331よりも若干小さい。また、下円環部位331および上円環部位332の内周面の径d331、d332を比較すると、下円環部位331の方が上円環部位332よりも大きく、鉛直上方からの平面視で、上円環部位332の内周面が下円環部位331の内周面の内側に位置する。そして、上円環部位332の内周面と下円環部位331の内周面とが上カップ33の全周にわたって傾斜部位333により連結される。このため、傾斜部位333の内周面、つまり基板Wを取り囲む面は、傾斜面334となっている。すなわち、図5に示すように、傾斜部位333は回転する基板Wの外周を囲んで基板Wから飛散する液滴を捕集可能となっており、上カップ33および下カップ32で囲まれた空間が捕集空間SPcとして機能する。なお、本実施形態では、鉛直方向Zにおける各部の高さ位置を次のように称する。つまり、図5に示すように、スピンチャック21に保持された基板Wの上面(表面)の位置を「高さ位置Zw」と称し、後で詳述する上面保護加熱機構4の円板部42の上面の位置を「高さ位置Z42」と称する。
【0043】
しかも、捕集空間SPcを臨む傾斜部位333は、下カップ32と連結されて連結部位を構成する下円環部位331から基板Wの周縁部の上方に向かって傾斜している。このため、図5に示すように、回転する基板Wから飛散した処理液の液滴は高さ位置Zwで傾斜部位333の傾斜面334に捕集される。そして、当該液滴は傾斜面334に沿って上カップ33の下端部、つまり下円環部位331に流動し、さらに隙間GPcを介して回転カップ部31の外側に排出可能となっている。
【0044】
固定カップ部34は回転カップ部31を取り囲むように設けられ、排出空間SPeを形成する。固定カップ部34は、液受け部位341と、液受け部位341の内側に設けられた排気部位342とを有している。液受け部位341は、隙間GPcの反基板側開口(図5の左手側開口)を臨むように開口したカップ構造を有している。つまり、液受け部位341の内部空間が排出空間SPeとして機能しており、隙間GPcを介して捕集空間SPcと連通される。したがって、回転カップ部31により捕集された液滴は気体成分とともに隙間GPcを介して排出空間SPeに案内される。そして、液滴は液受け部位341の底部に集められ、固定カップ部34から排液される。
【0045】
一方、気体成分は排気部位342に集められる。この排気部位342は区画壁343を介して液受け部位341と区画される。また、区画壁343の上方に気体案内部344が配置される。気体案内部344は、区画壁343の直上位置から排出空間SPeと排気部位342の内部にそれぞれ延設されることで、区画壁343を上方から覆ってラビリンス構造を有する気体成分の流通経路を形成している。したがって、液受け部位341に流入した流体のうち気体成分が上記流通経路を経由して排気部位342に集められる。この排気部位342は排気部38と接続される。このため、制御ユニット10からの指令に応じて排気部38が作動することで固定カップ部34の圧力が調整され、排気部位342内の気体成分が効率的に排気される。また、排気部38の精密制御により、排出空間SPeの圧力や流量が調整される。例えば排出空間SPeの圧力が捕集空間SPcの圧力よりも下がる。その結果、捕集空間SPc内の液滴を効率的に排出空間SPeに引き込み、捕集空間SPcからの液滴の移動を促進することができる。
【0046】
図6は上面保護加熱機構の構成を示す外観斜視図である。図7図6に示す上面保護加熱機構の断面図である。上面保護加熱機構4は、スピンチャック21に保持される基板Wの上面Wfの上方に配置された遮断板41を有している。この遮断板41は水平な姿勢で保持された円板部42を有している。円板部42はヒータ駆動部422により駆動制御されるヒータ421を内蔵している。この円板部42は基板Wよりも若干短い直径を有している。そして、円板部42の下面が基板Wの上面Wfのうち周縁部Wsを除く表面領域を上方から覆うように、円板部42は支持部材43により支持される。なお、図6中の符号44は円板部42の周縁部に設けられた切欠部であり、これは処理機構5に含まれる処理液吐出ノズルとの干渉を防止するために設けられている。切欠部44は、径方向外側に向かって開口している。
【0047】
支持部材43の下端部は円板部42の中央部に取り付けられている。支持部材43と円板部42とを上下に貫通するように、円筒状の貫通孔が形成される。また、当該貫通孔に対し、中央ノズル45が上下に挿通している。この中央ノズル45には、図2に示すように、配管46を介して窒素ガス供給部47と接続される。窒素ガス供給部47は、基板処理システム100が設置される工場の用力などから供給される常温の窒素ガスをヒータ421により加熱して制御ユニット10からの加熱ガス供給指令に応じた流量およびタイミングで基板処理部SPに供給する。
【0048】
ここで、ヒータ421をチャンバ11の内部空間12に配置すると、ヒータ421から放射される熱が基板処理部SP、特に後述するように処理機構5や基板観察機構9に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、本実施形態では、ヒータ421を有する窒素ガス供給部47が、図3に示すように、チャンバ11の外側に配置される。また、本実施形態では、配管46の一部にリボンヒータ48が取り付けられている。リボンヒータ48は制御ユニット10からの加熱指令に応じて発熱して配管46内を流れる窒素ガスを加熱する。
【0049】
こうして加熱された窒素ガス(以下「加熱ガス」という)が中央ノズル45に向けて圧送され、中央ノズル45から吐出される。例えば図7に示すように、円板部42がスピンチャック21に保持された基板Wに近接した処理位置に位置決めされた状態で加熱ガスが供給されることによって、加熱ガスは基板Wの上面Wfとヒータ内蔵の円板部42とに挟まれた空間SPaの中央部から周縁部に向って流れる。これによって、基板Wの周囲の雰囲気が基板Wの上面Wfに入り込むのを抑制することができる。その結果、上記雰囲気に含まれる液滴が基板Wと円板部42とで挟まれた空間SPaに巻き込まれるのを効果的に防止することができる。また、ヒータ421による加熱と加熱ガスによって上面Wfが全体的に加熱され、基板Wの面内温度を均一化することができる。これによって、基板Wが反るのを抑制し、処理液の着液位置を安定化させることができる。
【0050】
図2に示すように、支持部材43の上端部は、第1仮想水平線VL1に沿って延びる梁部材49に固定される。この梁部材49は、ベース部材17の上面に取り付けられた昇降機構7と接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて昇降機構7により昇降される。例えば図2では梁部材49が下方に位置決めされることで、支持部材43を介して梁部材49に連結された円板部42が処理位置に位置している。一方、制御ユニット10からの上昇指令を受けて昇降機構7が梁部材49を上昇させると、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的に上昇するとともに、上カップ33も連動して下カップ32から分離して上昇する。これによって、スピンチャック21と、上カップ33および円板部42との間が広がり、スピンチャック21に対する基板Wの搬出入を行うことが可能となる。
【0051】
処理機構5は、基板Wの上面側に配置される処理液吐出ノズル51F(図3)と、基板Wの下面側に配置される処理液吐出ノズル51B(図2)と、処理液吐出ノズル51F、51Bに処理液を供給する処理液供給部52とを有している。以下においては、上面側の処理液吐出ノズル51Fと下面側の処理液吐出ノズル51Bとを区別するために、それぞれ「上面処理ノズル51F」および「下面処理ノズル51B」と称する。また、図2において、処理液供給部52が2つ図示されるが、これらは同一である。
【0052】
図8は処理機構に装備される上面側の処理液吐出ノズルを示す斜視図であり、ノズルを斜め下方向から見た図である。本実施形態では、3本の上面処理ノズル51Fがスピンチャック21に保持された基板Wの上方から基板Wの上面Wfの周縁部Wsに向けて処理液を吐出する上面側の処理液吐出ノズルとして設けられるとともに、それらに対して処理液供給部52が接続される。また、処理液供給部52はSC1、DHFおよび機能水(CO2水など)を処理液として供給可能に構成されており、3本の上面処理ノズル51FからSC1、DHFおよびCO2水がそれぞれ独立して吐出可能となっている。
【0053】
各上面処理ノズル51Fでは、図8に示すように、先端下面に処理液を吐出する吐出口511が設けられている。そして、図3中の拡大図に示すように、各吐出口を基板Wの上面Wfの周縁部Wsに向けた姿勢で複数(本実施形態では3個)の上面処理ノズル51Fの下方部が図6の部分拡大平面図に示すように円板部42の切欠部44に配置されるとともに、上面処理ノズル51Fの上方部がノズルホルダ53に対して径方向D1に移動自在に取り付けられている。このノズルホルダ53はノズル移動部54に接続される。
【0054】
図9はノズル移動部の構成および動作を模式的に示す図である。また、図10はベベル処理される領域、ノッチおよび基板端面の関係の一例を模式的に示す図である。図9(a)はホーム位置を示す模式図であり、図9(b)はプリディスペンス位置を示す模式図であり、図9(c)は動作条件を切り替える切替位置を示す模式図であり、図9(d)は最大処理位置を示す模式図である。図9中の符号P0は上面処理ノズル51Fのホーム位置を示し、符号P1~P5は、それぞれ径方向D1におけるプリディスペンス位置、基板Wの端面位置、切替位置、ノッチ位置および最大処理位置を示している。また、図10において、ドットを付した領域がベベル処理されずに残った非ベベル処理領域R1を示し、基板Wの表面のうち非ベベル処理領域R1以外がベベル処理されるベベル処理領域R2を示している。
【0055】
ノズル移動部54は、図9に示すように、ノズルヘッド56(=上面処理ノズル51F+ノズルホルダ53)を保持したまま、後で説明する昇降部713のリフター713aの上端部に取り付けられている。このため、制御ユニット10からの昇降指令に応じてリフター713aが鉛直方向に伸縮すると、それに応じてノズル移動部54およびノズルヘッド56が鉛直方向Zに移動する。
【0056】
また、ノズル移動部54では、ベース部材541がリフター713aの上端部に固着されている。このベース部材541には、直動アクチュエータ542が取り付けられている。直動アクチュエータ542は、径方向Xにおけるノズル移動の駆動源として機能するモータ(以下「ノズル駆動モータ」という)543と、ノズル駆動モータ543の回転軸に連結されたボールねじなどの回転体の回転運動を直線運動に変換してスライダー544を径方向D1に往復移動させる運動変換機構545とを有している。また、運動変換機構545では、スライダー544の径方向D1への移動を安定化させるために、例えばLMガイド(登録商標)などのガイドが用いられている。
【0057】
こうして径方向Xに往復駆動されるスライダー544には、連結部材546を介してヘッド支持部材547が連結されている。このヘッド支持部材547は、径方向Xに延びる棒形状を有している。ヘッド支持部材547の(+D1)方向端部はスライダー544に固着される。一方、ヘッド支持部材547の(-D1)方向端部はスピンチャック21に向かって水平に延設され、その先端部にノズルヘッド56が取り付けられている。このため、制御ユニット10からの処理液供給指令に応じてノズル駆動モータ543が回転すると、その回転方向に対応して(+D1)方向または(-D1)方向に、しかも回転量に対応した距離だけ、スライダー544、ヘッド支持部材547およびノズルヘッド56が一体的に移動する。その結果、ノズルヘッド56に装着されている上面処理ノズル51Fが径方向D1に位置決めされる。
【0058】
このように制御ユニット10から処理液供給指令のうちノズル往復移動に関連する情報に応じてノズル移動部54が3本の上面処理ノズル51Fを一括して径方向D1に駆動させる。これにより、上面処理ノズル51Fが往復移動するが、その間に、プリディスペンス処理およびベベル処理が実行される。一方、3種類のいずれの処理液についても処理液供給指令が与えられていない間、上面処理ノズル51Fは基板Wの端面から十分に離れて退避している、より具体的には、図9(a)に示すように、上面処理ノズル51Fは予め設定されたホーム位置P0に位置決めされる。このとき、運動変換機構545に設けられたバネ部材548がスライダー544により圧縮され、スライダー544に対して(-D1)方向に付勢力を与える。これにより、運動変換機構545に含まれるバックラッシを制御することができる。つまり、運動変換機構545はガイドなどの機械部品を有しているため、径方向D1に沿ったバックラッシをゼロとすることは事実上困難であり、これについて十分な考慮を払わないと、径方向D1における上面処理ノズル51Fの位置決め精度が低下してしまう。そこで、本実施形態では、バネ部材548を設けたことで、上面処理ノズル51Fをホーム位置P0に静止させた際には、常時、バックラッシを(-D1)方向に片寄らせている。
【0059】
3種類のうちの一の処理液(以下「選択処理液」という)について処理液供給指令が与えられると、上面処理ノズル51Fが一括してホーム位置P0から(-D1)方向に移動する。その後、上面処理ノズル51Fは端面位置P2および切替位置P3を経由して最大処理位置P5に往路移動する。ここで、切替位置P3は基板端面から距離dt1だけ離れた位置を意味し、最大処理位置P5はベベル処理領域R2の幅dt2だけ基板端面から離れた位置を意味している(図10参照)。
【0060】
往路移動中、上面処理ノズル51Fの移動はプリディスペンス位置P1で一時停止される。プリディスペンス位置P1は、図9(b)に示すように、径方向D1において端面位置P2の(+D1)側に隣接する位置である。このプリディスペンス位置に位置決めされた上面処理ノズル51Fの吐出口511は上カップ33の傾斜面334に向いている。そして、処理液供給指令に応じてプリディスペンス処理が実行される。プリディスペンス処理の終了後に、一時停止が解除され、往路移動が再開される。これによって、上面処理ノズル51Fが切替位置P3(図9(c)参照)を経由して最大処理位置P5(図9(d)参照)まで移動する。本実施形態では、この切替位置P3をノッチ位置P4と一致させている。つまり、図10に示すように、基板Wの周縁部Wsに設けられたノッチNTは、上方からの平面視で、略V字形状または略U字形状を有している。換言すると、ノッチNTでは、切欠部位が基板Wの端面から中心部に進むにしたがって先細り形状を有しており、基板Wの端面から中心部に向かって距離dtnだけ進んだ位置より内側では存在しない。つまり、当該位置がノッチNTの最深位置に相当し、基板Wの端面から最深位置までの距離dtnが本発明の「切欠部の最深位置までの距離」の一例に相当している。特に、第1実施形態では、距離dtnがベベル処理を施すべき幅dt2よりも短いことを考慮し、切替位置P3をノッチ位置P4と一致させている。なお、距離dtnがベベル処理を施すべき幅dt2以上である場合については、後で説明する。
【0061】
往路移動が完了すると、直ちに復路移動が実行される。つまり、往路移動での経路と逆の経路で上面処理ノズル51Fが移動する。ただし、復路移動では、プリディスペンス位置P1での一時停止は行われず、上面処理ノズル51Fは最大処理位置P5からホーム位置P0に連続的に移動する。
【0062】
こうして往復移動している間に、処理液供給指令に含まれるプリディスペンス処理およびベベル処理に関連する情報にしたがって装置各部が動作し、プリディスペンス処理およびベベル処理が実行される。より具体的には、処理液供給指令にしたがって、以下の制御項目、
・処理液供給部52に設けられた液吐出バルブ(図示省略)の開閉、
・径方向D1における上面処理ノズル51Fの位置制御、
・上面処理ノズル51Fのノズル移動速度、
・基板Wの回転数、
・上面処理ノズル51Fからの単位時間当たりの選択処理液の吐出量(以下「吐出流量」という)、
が制御される。以下、第1実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理について説明する。
【0063】
図11は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。同図および後で説明する図12ないし図17中の符号1stTC、2ndTCは、それぞれ第1動作条件および第2動作条件を示している。第1実施形態では、図9(a)に示すように上面処理ノズル51Fをホーム位置P0に位置決めした状態で、制御ユニット10から処理液供給指令が与えられるのを待っている。このとき、停止条件が満足されている。この停止条件とは、液吐出バルブが閉成され、その結果、吐出流量もゼロとなっている。また、ノズル移動速度はゼロであり、上面処理ノズル51Fは移動停止している。そして、処理液供給指令を受けると、装置各部は、図11に示すシーケンスで動作する。
【0064】
上面処理ノズル51Fがホーム位置P0から(-D1)方向に移動してプリディスペンス位置P1に位置決めされる(タイミングT1)。すると、ノズル移動速度はゼロとなり、上面処理ノズル51Fは、次のタイミングT2までの間、移動を停止する。このノズル移動停止中(タイミングT1~T2)に、プリディスペンス処理が実行される。すなわち、液吐出バルブの開成が開始され、一定の吐出流量FL1での選択処理液の吐出が開始される。なお、選択処理液の吐出は、上記往復移動により上面処理ノズル51Fがプリディスペンス位置P1に戻ってくるまで継続して実行される。また、プリディスペンス処理中における基板Wの回転数は任意であるが、第1実施形態では、次のベベル処理に対応して比較的低い基板回転数RS1に設定されている。この点については、後で説明する第4実施形態、第5実施形態および第7実施形態においても同様である。
【0065】
プリディスペンス処理に続いて、往路移動と並行したベベル処理(以下「往路側ベベル処理」という)と、復路移動と並行したベベル処理(以下「復路側ベベル処理」という)とが連続して実行される。特に、第1実施形態では、基板回転数を除く制御項目を一定に維持する一方で、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理の途中で基板回転数を切り替えている。これによって、本発明の切欠部の一例であるノッチNT(図10)に起因する液はねを防止または抑制している。
【0066】
より詳しくは、往路側ベベル処理(タイミングT2~T4)では、所定の加速度でノズル移動速度をゼロから速度(+MS1)まで高める。そして、その速度(+MS1)で上面処理ノズル51Fが(-D1)方向に等速移動する。また、選択処理液も一定の吐出流量FL1で吐出し続ける。このため、選択処理液に対応する上面処理ノズル51Fから選択処理液を吐出した状態のまま上面処理ノズル51Fは基板Wの端面位置P2の上方を通過し、さらにノッチ位置P4の上方を経由して最大処理位置P5まで移動する。ここで、ノッチNTでの液はねの発生または抑制を図るため、往路側ベベル処理の前半(タイミングT2~T3)での基板回転数を比較的低い回転数RS1に抑えている。一方、タイミングT3で基板回転数を回転数RS1から回転数RS2に増速し、往路側ベベル処理の後半(タイミングT3~T4)の間、基板回転数をベベル処理に適した回転数RS2(>RS1)に引き上げている。このため、単位時間あたりに上面処理ノズル51Fの直下位置を通過するノッチNTの回数は少なく、ノッチNTに到達する選択処理液の量、つまり切欠到達量も少なくなる。その結果、往路側ベベル処理において発生する液はねの量を抑制することができる。
【0067】
こうして往路側ベベル処理が完了すると、直ちに復路側ベベル処理が実行される。復路側ベベル処理(タイミングT4~T6)では、所定の加減速度でノズル移動速度を(+MS1)からゼロに減速し、さらにゼロから(-MS1)まで高める。ここで、ノズル移動速度のプラス符号およびマイナス符号はそれぞれ上面処理ノズル51Fの移動方向が往路方向(-D1)および復路方向(+D1)であることを意味し、MS1は移動速度の絶対値を意味している。これは後で説明するノズル移動速度(+MS2)、(-MS2)も同様である。
【0068】
復路側ベベル処理では、上記ノズル移動速度(-MS2)で上面処理ノズル51Fが等速移動する。また、選択処理液も一定の吐出流量FL1で吐出し続ける。このため、往路側ベベル処理に引き続いて、選択処理液に対応する上面処理ノズル51Fから選択処理液を吐出した状態のまま上面処理ノズル51Fは切替位置P3(ノッチ位置P4)の上方を経由してプリディスペンス位置P1まで移動する。ここにおいても、ノッチNTでの液はねの発生または抑制を図るため、上面処理ノズル51Fが切替位置P3(ノッチ位置P4)の上方に達した時点で、基板回転数が切り替えられている。つまり、復路側ベベル処理の前半(タイミングT4~T5)においては、ベベル処理に適した回転数RS2に維持されたままベベル処理が実行される一方、後半(タイミングT5~T6)においては、基板回転数は比較的低い回転数RS1に抑えられている。このため、単位時間あたりに上面処理ノズル51Fの直下位置を通過するノッチNTの回数が少なく、ノッチNTに到達する選択処理液の量、つまり切欠到達量も少なくなる。その結果、復路側ベベル処理においても液はねの量を抑制することができる。
【0069】
このように、第1実施形態では、基板回転数を比較的低い回転数RS1に抑えることを条件とする第1動作条件と、基板回転数をベベル処理に適した回転数RS2に設定することを条件とする第2動作条件と、が設けられている。そして、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理のそれぞれにおいて、第1動作条件と第2動作条件とをノッチ位置P4に応じて切り替えている。その結果、ノッチNTに起因する液はねの発生防止や抑制によってパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0070】
この第1実施形態では、回転機構2Bが本発明の「回転部」の一例に相当している。また、ベベル処理領域R2の幅dt2が本発明の「ベベル処理距離」の一例に相当している。往路側ベベル処理および復路側ベベル処理がそれぞれ本発明の「往路処理工程」および「復路処理工程」の一例に相当し、それらの中で基板Wを回転させる動作が本発明の「回転工程」の一例に相当している。また、制御ユニット10が本発明の「制御部」の一例に相当している。
【0071】
さらに、切替位置P3が本発明の「中間位置」の一例に相当しており、ノッチ位置P4と一致させている。ただし、切替位置P3の位置はこれに限定されるものではなく、例えば径方向D1においてノッチ位置P4と最大処理位置P5との間に切替位置P3を設定してもよい。また、径方向D1において端面位置P2とノッチ位置P4との間に切替位置P3を設定してもよい。これらの点は以下に説明する第2実施形態ないし第7実施形態においても同様である。
【0072】
ところで、切欠到達量に影響を与える制御項目としては、上記基板回転数のみならず、ノズル移動速度および選択処理液の吐出流量などが含まれる。上記第1実施形態では、ノズル移動速度および吐出流量を固定する一方で、基板回転数のみを変更することで第1動作条件と第2動作条件との切替を行っている。もちろん、切欠到達量を変更するために、上記3つの制御項目のうち一部または全部を変更するように構成してもよい。つまり、ノズル移動速度のみを変更する(第2実施形態)、吐出流量のみを変更する(第3実施形態)、基板回転数およびノズル移動速度を変更する(第4実施形態)、基板回転数および吐出流量を変更する(第5実施形態)、ノズル移動速度および吐出流量を変更する(第6実施形態)、基板回転数、ノズル移動速度および吐出流量を変更してもよい(第7実施形態)。以下、第2実施形態ないし第7実施形態について、それぞれ説明する。
【0073】
<第2実施形態>
図12は本発明に係る基板処理装置の第2実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。以下、第2実施形態におけるプリディスペンス処理およびベベル処理を第1実施形態のそれらと対比しながら第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0074】
第1実施形態と同様に、タイミングT1からタイミングT2の間、ノズル移動を停止しながらプリディスペンス処理が実行される。ただし、第2実施形態では、次のベベル処理において基板Wの回転数が一定の基板回転数RS2に維持されるために、プリディスペンス処理中における基板Wの回転数は第1実施形態のそれよりも高い基板回転数RS2に設定されている。この点については、後で説明する第3実施形態および第6実施形態においても同様である。
【0075】
プリディスペンス処理に続く往路側ベベル処理(タイミングT2~T4)では、上記したように基板Wの回転数が基板回転数RS2に維持されるとともに、選択処理液も一定の吐出流量FL1で吐出し続ける。これに対し、上面処理ノズル51Fの移動速度、つまりノズル移動速度が以下のように変更される。タイミングT2より所定の加速度でノズル移動速度をゼロから第1実施形態よりも高いノズル移動速度(+MS2)まで高める。そして、往路側ベベル処理の前半(タイミングT2~T3)において、上記ノズル移動速度(+MS2)で上面処理ノズル51Fが等速移動する。タイミングT3で所定の減速度でノズル移動速度がベベル処理に適した速度(+MS1)に減速される。すなわち、切替位置P3に到達するまでは第1動作条件(=ノズル移動速度(+MS2):基板回転数RS2:吐出流量FL1)でベベル処理が実行され、切替位置P3で第2動作条件(=ノズル移動速度(+MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)に切り替えられる。このように、上面処理ノズル51Fが基板Wの端面の上方およびノッチNTの上方を経由して切替位置P3に移動されるまでの間、つまり往路側ベベル処理の前半(タイミングT2~T3)において、上面処理ノズル51Fは比較的高速で移動する。このため、上面処理ノズル51FがノッチNTの上方に位置する累積時間は少なく、ノッチNTに到達する選択処理液の量、つまり切欠到達量も少なくなる。その結果、往路側ベベル処理において液はねの発生を防止する、または液はねの量を抑制することができる。
【0076】
こうして往路側ベベル処理が完了すると、直ちに復路側ベベル処理が実行される。復路側ベベル処理(タイミングT4~T6)では、所定の加減速度でノズル移動速度を(+MS1)からゼロに減速し、さらにゼロから(-MS1)まで高める。そして、ノズル移動速度(-MS1)で上面処理ノズル51Fが等速移動する。一方、基板Wは一定の基板回転数RS2で回転するとともに選択処理液も一定の吐出流量FL1で吐出し続ける。このため、往路側ベベル処理に引き続いて、選択処理液に対応する上面処理ノズル51Fから選択処理液を吐出した状態のまま上面処理ノズル51Fは切替位置P3(ノッチ位置P4)まで移動する。そして、このタイミングT5で所定の加速度でノズル移動速度が(-MS1)から(-MS2)に増速される。すなわち、切替位置P3に到達するまでは第2動作条件(=ノズル移動速度(-MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)でベベル処理が実行される。そして、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達した時点で第1動作条件(=ノズル移動速度(-MS2):基板回転数RS2:吐出流量FL1)に切り替えられる。その後に、第1動作条件で上面処理ノズル51FはノッチNTの上方および基板端面の上方を経由してプリディスペンス位置P1に戻る(タイミングT6)。このため、ノッチNTに到達する選択処理液の量、つまり切欠到達量は少なくなる。その結果、復路側ベベル処理においても液はねの発生を防止する、または液はねの量を抑制することができる。
【0077】
このように、第2実施形態においても、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理のそれぞれにおいて、第1動作条件と第2動作条件とを切替位置P3(=ノッチ位置P4)に応じて切り替えている。その結果、第1実施形態と同様に、ノッチNTに起因する液はねの発生防止や抑制によってパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0078】
<第3実施形態>
図13は本発明に係る基板処理装置の第3実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。以下、第3実施形態におけるプリディスペンス処理およびベベル処理を第1実施形態のそれらと対比しながら第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0079】
第1実施形態と同様に、タイミングT1からタイミングT2の間、ノズル移動を停止しながらプリディスペンス処理が実行される。また、プリディスペンス処理に続く往路側ベベル処理(タイミングT2~T4)では、上記したように基板Wの回転数が基板回転数RS2に維持されるとともに、ノズル移動速度が一定の速度(+MS1)に設定される。これに対し、選択処理液の吐出流量はタイミングT2で吐出流量FL1から吐出流量FL2に落とされる。そして、往路側ベベル処理の前半(タイミングT2~T3)において、上記吐出流量FL2(<FL1)が維持される。タイミングT3で選択処理液の吐出流量は吐出流量FL1に戻される。すなわち、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまでは第1動作条件(=ノズル移動速度(+MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL2)でベベル処理が実行され、切替位置P3で第2動作条件(=ノズル移動速度(+MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)に切り替えられる。このように、上面処理ノズル51Fが基板Wの端面の上方およびノッチNTの上方を経由して切替位置P3に移動されるまでの間、つまり往路側ベベル処理の前半(タイミングT2~T3)において、上面処理ノズル51Fから吐出される選択処理液の吐出流量は比較的低く抑えられている。このため、ノッチNTに到達する選択処理液の量、つまり切欠到達量は少なくなる。その結果、往路側ベベル処理において液はねの発生を防止する、または液はねの量を抑制することができる。
【0080】
こうして往路側ベベル処理が完了すると、直ちに復路側ベベル処理が実行される。復路側ベベル処理(タイミングT4~T6)では、所定の加減速度でノズル移動速度を(+MS1)からゼロに減速し、さらにゼロから(-MS1)まで高める。そして、ノズル移動速度(-MS1)で上面処理ノズル51Fが等速移動するとともに、基板Wの基板回転数を一定値RS2に維持されている。これに対し、選択処理液の吐出流量はタイミングT5で吐出流量FL1から吐出流量FL2に落とされる。つまり、往路側ベベル処理に引き続いて実行される復路側ベベル処理では、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまでは第2動作条件(=ノズル移動速度(-MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)でベベル処理が実行される。そして、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達した時点で第1動作条件(=ノズル移動速度(-MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL2)に切り替えられる。その後に、第1動作条件で上面処理ノズル51FはノッチNTの上方および基板端面の上方を経由してプリディスペンス位置P1に戻る(タイミングT6)。このため、ノッチNTに到達する選択処理液の量、つまり切欠到達量は少なくなる。その結果、復路側ベベル処理においても液はねの発生を防止する、または液はねの量を抑制することができる。
【0081】
このように、第3実施形態では、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理のそれぞれにおいて、第1動作条件と第2動作条件とを切替位置P3(=ノッチ位置P4)に応じて切り替えている。その結果、第1実施形態および第2実施形態と同様に、ノッチNTに起因する液はねの発生防止や抑制によってパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0082】
<第4実施形態>
図14は本発明に係る基板処理装置の第4実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。この第4実施形態では、第1実施形態で行った基板回転数の変更と第2実施形態で行ったノズル移動速度の変更とを組み合わせている。つまり、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理において、以下のように動作条件の切替を行っている。
【0083】
往路側ベベル処理において、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまでは第1動作条件(=ノズル移動速度(+MS2):基板回転数RS1:吐出流量FL1)でベベル処理が実行され、切替位置P3で第2動作条件(=ノズル移動速度(+MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)に切り替えられる。このように、上面処理ノズル51Fが基板Wの端面の上方およびノッチNTの上方を経由して切替位置P3に移動されるまでの間、つまり往路側ベベル処理の前半(タイミングT2~T3)において、切欠到達量が低く抑えられ、その結果、往路側ベベル処理において発生する液はねの量を抑制することができる。
【0084】
また、復路側ベベル処理において、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまでは第2動作条件(=ノズル移動速度(-MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)でベベル処理が実行され、切替位置P3から第1動作条件(=ノズル移動速度(-MS2):基板回転数RS1:吐出流量FL1)に切り替えられる。このように、上面処理ノズル51FがノッチNTの上方および基板Wの端面の上方を経由してプリディスペンス位置P1に戻るまでの間、つまり復路側ベベル処理の後半(タイミングT5~T6)において、切欠到達量が低く抑えられ、その結果、復路側ベベル処理において発生する液はねの量を抑制することができる。
【0085】
このように、第4実施形態においても、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理のそれぞれにおいて、第1動作条件と第2動作条件とを切替位置P3(=ノッチ位置P4)に応じて切り替えている。その結果、第1実施形態ないし第3実施形態と同様に、ノッチNTに起因する液はねの発生防止や抑制によってパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0086】
<第5実施形態>
図15は本発明に係る基板処理装置の第5実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。この第5実施形態では、第1実施形態で行った基板回転数の変更と第3実施形態で行った吐出流量の変更とを組み合わせている。つまり、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理において、以下のように動作条件の切替を行っている。
【0087】
往路側ベベル処理において、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまでは第1動作条件(=ノズル移動速度(+MS1):基板回転数RS1:吐出流量FL2)でベベル処理が実行され、切替位置P3で第2動作条件(=ノズル移動速度(+MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)に切り替えられる。このように、上面処理ノズル51Fが基板Wの端面の上方およびノッチNTの上方を経由して切替位置P3に移動されるまでの間、つまり往路側ベベル処理の前半(タイミングT2~T3)において、切欠到達量が低く抑えられ、その結果、往路側ベベル処理において発生する液はねの量を抑制することができる。
【0088】
また、復路側ベベル処理において、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまでは第2動作条件(=ノズル移動速度(-MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)でベベル処理が実行され、切替位置P3から第1動作条件(=ノズル移動速度(-MS1):基板回転数RS1:吐出流量FL2)に切り替えられる。このように、上面処理ノズル51FがノッチNTの上方および基板Wの端面の上方を経由してプリディスペンス位置P1に戻るまでの間、つまり復路側ベベル処理の後半(タイミングT5~T6)において、切欠到達量が低く抑えられ、その結果、復路側ベベル処理において発生する液はねの量を抑制することができる。
【0089】
このように、第5実施形態においても、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理のそれぞれにおいて、第1動作条件と第2動作条件とを切替位置P3(=ノッチ位置P4)に応じて切り替えている。その結果、第1実施形態ないし第4実施形態と同様に、ノッチNTに起因する液はねの発生防止や抑制によってパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0090】
<第6実施形態>
図16は本発明に係る基板処理装置の第6実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。この第6実施形態では、第2実施形態で行ったノズル移動速度の変更と第3実施形態で行った吐出流量の変更とを組み合わせている。つまり、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理において、以下のように動作条件の切替を行っている。
【0091】
往路側ベベル処理において、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまでは第1動作条件(=ノズル移動速度(+MS2):基板回転数RS2:吐出流量FL2)でベベル処理が実行され、切替位置P3で第2動作条件(=ノズル移動速度(+MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)に切り替えられる。このように、上面処理ノズル51Fが基板Wの端面の上方およびノッチNTの上方を経由して切替位置P3に移動されるまでの間、つまり往路側ベベル処理の前半(タイミングT2~T3)において、切欠到達量が低く抑えられ、その結果、往路側ベベル処理において発生する液はねの量を抑制することができる。
【0092】
また、復路側ベベル処理において、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまでは第2動作条件(=ノズル移動速度(-MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)でベベル処理が実行され、切替位置P3から第1動作条件(=ノズル移動速度(-MS2):基板回転数RS2:吐出流量FL2)に切り替えられる。このように、上面処理ノズル51FがノッチNTの上方および基板Wの端面の上方を経由してプリディスペンス位置P1に戻るまでの間、つまり復路側ベベル処理の後半(タイミングT5~T6)において、切欠到達量が低く抑えられ、その結果、復路側ベベル処理において発生する液はねの量を抑制することができる。
【0093】
このように、第6実施形態においても、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理のそれぞれにおいて、第1動作条件と第2動作条件とを切替位置P3(=ノッチ位置P4)に応じて切り替えている。その結果、第1実施形態ないし第5実施形態と同様に、ノッチNTに起因する液はねの発生防止や抑制によってパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0094】
<第7実施形態>
図17は本発明に係る基板処理装置の第7実施形態で実行されるプリディスペンス処理およびベベル処理のタイミングチャートである。この第7実施形態では、第1実施形態で行った基板回転数の変更、第2実施形態で行ったノズル移動速度の変更および第3実施形態で行った吐出流量の変更を組み合わせている。つまり、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理において、以下のように動作条件の切替を行っている。
【0095】
往路側ベベル処理において、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまでは第1動作条件(=ノズル移動速度(+MS2):基板回転数RS1:吐出流量FL2)でベベル処理が実行され、切替位置P3で第2動作条件(=ノズル移動速度(+MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)に切り替えられる。このように、上面処理ノズル51Fが基板Wの端面の上方およびノッチNTの上方を経由して切替位置P3に移動されるまでの間、つまり往路側ベベル処理の前半(タイミングT2~T3)において、切欠到達量が低く抑えられ、その結果、往路側ベベル処理において発生する液はねの量を抑制することができる。
【0096】
また、復路側ベベル処理において、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまでは第2動作条件(=ノズル移動速度(-MS1):基板回転数RS2:吐出流量FL1)でベベル処理が実行され、切替位置P3から第1動作条件(=ノズル移動速度(-MS2):基板回転数RS1:吐出流量FL2)に切り替えられる。このように、上面処理ノズル51FがノッチNTの上方および基板Wの端面の上方を経由してプリディスペンス位置P1に戻るまでの間、つまり復路側ベベル処理の後半(タイミングT5~T6)において、切欠到達量が低く抑えられ、その結果、復路側ベベル処理において発生する液はねの量を抑制することができる。
【0097】
このように、第7実施形態においても、往路側ベベル処理および復路側ベベル処理のそれぞれにおいて、第1動作条件と第2動作条件とを切替位置P3(=ノッチ位置P4)に応じて切り替えている。その結果、第1実施形態ないし第6実施形態と同様に、ノッチNTに起因する液はねの発生防止や抑制によってパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0098】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、図10に示すように距離dtnがベベル処理を施すべき幅dt2以下である場合について説明したが、例えば図18に示すように、距離dtnがベベル処理を施すべき幅dt2以上である場合についても、基本的に第1実施形態ないし第7実施形態を適用することができる。ただし、切替位置P3は、(dt1)<(dt2)を満足するように、設定する必要がある。つまり、本発明の「中間位置」に相当する切替位置P3については、端面位置P2と最大処理位置P5との間に設定する必要がある。
【0099】
また、上記実施形態では、切欠到達量に影響を与える制御項目として、基板回転数、ノズル移動速度および選択処理液の吐出流量を挙げ、これらのうちの少なくとも1つを切替位置P3で切り替えている。制御項目としては、これら以外に、例えば排気部38による排気流量も含まれる。つまり、往路側ベベル処理において、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまでは排気流量を高める一方、それ以降はベベル処理に適した排気流量に戻してもよい。また、復路側ベベル処理において、上面処理ノズル51Fが切替位置P3に到達するまではベベル処理に適した排気流量に設定する一方、上面処理ノズル51FがノッチNTの上方および基板Wの端面の上方を経由してプリディスペンス位置P1に戻るまでの間、排気流量を高めてもよい。このような切替位置P3での動作条件の変更によって、第1実施形態ないし第7実施形態と同様に、ノッチNTに起因する液はねの発生防止や抑制によってパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
また、上記実施形態では、3種類の処理液を用いて基板Wの周縁部Wsに対してベベル処理を施しているが、処理液の種類はこれに限定されるものではない。
【0100】
また、上記実施形態では、基板Wと同期して回転カップ部31を回転させる基板処理装置に本発明を適用しているが、カップ部の回転は必須ではなく、例えば特許文献1に記載のようにカップ部が回転しない基板処理装置にも本発明を適用することができる。
【0101】
また、上記実施形態では、周縁部に略V字形状や略U字形状のノッチNTが設けられた基板Wを対象としているが、それら以外の形状の切欠部が設けられた基板についても、本発明の対象となっている。
【0102】
また、上記実施形態では、往路移動が完了すると、直ちに復路移動が実行されるとしているが、往路移動が完了した後に最大処理位置P5で一時停止し、復路移動を実行してもよい。例えば、往路移動が完了した後、最大処理位置P5において、基板回転数と吐出流量は第2動作条件を維持しつつ、ノズル移動速度を0にする。そして、最大処理位置P5において一定時間の処理を行った後に、復路移動を実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、周縁部にノッチなどの切欠部が設けられた基板を回転させながら基板の周縁部に処理液を供給して処理する基板処理技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1…基板処理装置
2A…基板保持部
2B…回転機構(回転部)
10…制御ユニット(制御部)
51F…処理液吐出ノズル(上面処理ノズル)
52…処理液供給部
54…ノズル移動部
543…ノズル駆動モータ
AX…回転軸
D1…径方向
FL1,FL2…吐出流量
NT…ノッチ(切欠部)
P0…ホーム位置
P1…プリディスペンス位置
P2…端面位置
P3…切替位置(中間位置)
P4…ノッチ位置
P5…最大処理位置
RS1,RS2…(基板)回転数
Ws…(基板の)周縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記動作条件は、前記ノズルから吐出される前記処理液の吐出流量を含み、
前記制御部は、
前記往路側ベベル処理のうち、前記基板の外側から前記中間位置まで往路移動させるときの前記吐出流量が前記中間位置から前記最大処理位置まで往路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく、
前記復路側ベベル処理のうち、前記中間位置から前記基板の外側まで復路移動させるときの前記吐出流量が前記最大処理位置から前記中間位置まで復路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく
なるように、前記処理液供給部を制御する、基板処理装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記動作条件は、前記ノズルから吐出される前記処理液の吐出流量を含み、
前記制御部は、
前記往路側ベベル処理のうち、前記基板の外側から前記中間位置まで往路移動させるときの前記吐出流量が前記中間位置から前記最大処理位置まで往路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく、
前記復路側ベベル処理のうち、前記中間位置から前記基板の外側まで復路移動させるときの前記吐出流量が前記最大処理位置から前記中間位置まで復路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく
なるように、前記処理液供給部を制御する、基板処理装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項10
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項10】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記動作条件は、前記ノズルから吐出される前記処理液の吐出流量を含み、
前記制御部は、
前記基板を回転させるとともに前記ノズルから前記処理液を吐出させながら前記ノズルを前記基板の外側から前記最大処理位置まで往路移動させる往路側ベベル処理のうち、前記基板の外側から前記中間位置まで往路移動させるときの前記吐出流量が前記中間位置から前記最大処理位置まで往路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく、
前記基板を回転させるとともに前記ノズルから前記処理液を吐出させながら前記ノズルを前記最大処理位置から前記基板の外側まで復路移動させる復路側ベベル処理のうち、前記中間位置から前記基板の外側まで復路移動させるときの前記吐出流量が前記最大処理位置から前記中間位置まで復路移動させるときの前記吐出流量よりも小さく
なるように、前記処理液供給部を制御する、基板処理装置。