(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157629
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241031BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 651B
H01L21/304 651L
H01L21/304 643A
H01L21/304 651M
H01L21/306 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072077
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】植村 知浩
(72)【発明者】
【氏名】正司 和大
(72)【発明者】
【氏名】篠原 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】根本 脩平
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043DD07
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE12
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157AC04
5F157AC26
5F157BB23
5F157BB44
5F157BH18
5F157CB13
5F157CB23
5F157CE22
5F157CE55
5F157CF16
5F157CF22
5F157CF30
5F157CF34
5F157CF70
5F157CF74
5F157CF92
5F157DB17
5F157DB37
5F157DB51
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】基板の上方にカップを上昇させる前に、当該カップを短時間で乾燥させる。
【解決手段】この発明は、基板を回転させつつ当該基板に処理液を供給して薬液処理や洗浄処理などを施す基板処理方法および基板処理装置に関するものである。この発明では、処理液で基板を処理する際に、カップの内周面が基板から飛散する処理液の液滴を捕集する。当該処理後で、かつカップ上昇位置へのカップの上昇前に、カップを回転させた状態で加熱気体が基板の上面を経由してカップの内周面に供給される。このようにカップの回転とカップへの加熱気体の供給とによりカップが乾燥される。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転可能な基板保持部に保持された、基板の外周をカップで囲みながら前記基板に処理液を供給することで、前記処理液で前記基板を処理しながら前記基板から飛散する前記処理液の液滴を前記カップの内周面で捕集する工程と
(b)前記処理液が付着する前記基板および前記カップを乾燥させる工程と
(c)乾燥された前記カップを前記基板よりも高いカップ上昇位置に上昇させる工程と、を備え、
前記工程(b)は
(b-1)前記基板の外周を前記カップで囲みながら前記基板を保持する前記基板保持部および前記カップを回転軸まわりに回転させる工程と
(b-2)前記カップおよび前記基板の周辺温度よりも高い温度に加熱された加熱気体を回転している前記基板の上面に供給することで、前記基板を乾燥させる工程と
(b-3)回転している前記カップの前記内周面に前記基板の上面を経由して前記加熱気体を供給することで、前記カップを乾燥させる工程と、
を有することを特徴とする、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記工程(a)は
(a-1)前記基板の外周を前記カップで囲みながら前記基板を保持する前記基板保持部および前記カップを回転軸まわりに回転させる工程と
(a-2)前記加熱気体を回転している前記基板の上面に供給することで、回転している前記カップの前記内周面に前記基板の上面を経由して前記加熱気体を供給する工程と、を有する、基板処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記工程(a-2)は、前記基板の前記上面から上方に第1距離だけ離間した処理位置に遮断部材を配置した状態で実行され、
前記工程(b-2)および工程(b-3)は、前記基板の前記上面から上方に前記第1距離よりも長い第2距離だけ離間した乾燥位置に前記遮断部材を配置した状態で実行される、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(b-3)は、少なくとも前記工程(b-2)と重複して実行される、基板処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理方法であって、
前記工程(b-3)は、前記工程(b-2)の完了後も継続して実行される、基板処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板処理方法であって、
前記工程(a)は、前記基板の周縁部に前記処理液を供給することで、前記周縁部を処理する工程であり、
前記工程(b-2)および前記工程(b-3)において、前記加熱気体は前記基板の上面のうち前記基板の上面中央部と前記周縁部との間の中間部に供給される、基板処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理方法であって、
前記基板保持部は、前記基板の下面のうち前記上面中央部に対向する下面中央部を吸着することで、前記基板を保持する、基板処理方法。
【請求項8】
基板を保持しながら鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転可能に設けられる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に処理液を供給して前記基板を処理する処理機構と、
前記基板の外周を囲みながら前記回転軸まわりに回転可能でしかも鉛直方向に昇降可能に設けられたカップを有し、前記基板から飛散する前記処理液の液滴を前記カップの内周面で捕集する回転カップ部と、
前記基板保持部および前記カップを回転させる回転機構と、
前記カップを昇降させる昇降機構と、
前記基板の上面に対し、前記カップおよび前記基板の周辺温度よりも高い温度に加熱された加熱気体を供給する気体供給機構と、
前記カップを前記基板よりも高いカップ上昇位置に上昇させる前に前記基板および前記カップが回転しながら前記加熱気体が前記基板の上面を経由して前記カップの前記内周面に向かうように、前記回転機構、前記昇降機構および前記気体供給機構を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に処理液を供給して当該基板を処理する基板処理技術に関するものである。ここで、基板には、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、太陽電池用基板、等(以下、単に「基板」という)が含まれる。また、処理には、エッチング処理が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板を回転させつつ当該基板に処理液を供給して薬液処理や洗浄処理などを施す基板処理装置が知られている。例えば特許文献1に記載の装置では、回転される基板から飛散する処理液などを捕集して回収するために飛散防止部が設けられている。飛散防止部は、回転される基板の外周を取り囲むように固定的に配置されたスプラッシュガード(「カップ」と称されることもある)を有している。スプラッシュガードの内周面は、基板の外周と対向しており、回転される基板から振り切られた処理液の液滴を捕集する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬液処理や洗浄処理などの処理は、スピンチャックなどの基板保持部に基板を保持した状態で行われる。そして、当該基板に対する一連の処理を行った後で、上記従来、スプラッシュガードは下降し、基板保持部に保持された基板よりも下方に移動していた。しかしながら、近年、一連の処理完了後に、カップやスプラッシュガードなど(以下「カップ」と称す)を基板保持部に保持された基板の上方に移動させる基板処理装置が検討されている。このようにカップを基板よりも上方に移動させる場合、その時点でカップが十分に乾燥していないと、カップに付着している処理液の液滴が基板に落下することがある。基板に落下した液滴はパーティクルの主要因のひとつである。そこで、カップを基板の上方に移動させる前に、短時間でカップを十分に乾燥させる必要がある。しかしながら、このような要望を満足する具体的な技術は従来、存在していなかった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板の上方にカップを上昇させる前に、当該カップを短時間で乾燥させることができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、基板処理方法であって、(a)鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転可能な基板保持部に保持された、基板の外周をカップで囲みながら基板に処理液を供給することで、処理液で基板を処理しながら基板から飛散する処理液の液滴をカップの内周面で捕集する工程と、(b)処理液が付着する基板およびカップを乾燥させる工程と、(c)乾燥されたカップを基板よりも高いカップ上昇位置に上昇させる工程と、を備え、工程(b)は、(b-1)基板の外周をカップで囲みながら基板を保持する基板保持部およびカップを回転軸まわりに回転させる工程と、(b-2)カップおよび基板の周辺温度よりも高い温度に加熱された加熱気体を回転している基板の上面に供給することで、基板を乾燥させる工程と、(b-3)回転しているカップの内周面に基板の上面を経由して加熱気体を供給することで、カップを乾燥させる工程と、を有することを特徴としている。
【0007】
また、本発明の他の態様は、基板処理装置であって、基板を保持しながら鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転可能に設けられる基板保持部と、基板保持部に保持された基板に処理液を供給して基板を処理する処理機構と、基板の外周を囲みながら回転軸まわりに回転可能でしかも鉛直方向に昇降可能に設けられたカップを有し、基板から飛散する処理液の液滴をカップの内周面で捕集する回転カップ部と、基板保持部およびカップを回転させる回転機構と、カップを昇降させる昇降機構と、基板の上面に対し、カップおよび基板の周辺温度よりも高い温度に加熱された加熱気体を供給する気体供給機構と、カップを基板よりも高いカップ上昇位置に上昇させる前に基板およびカップが回転しながら加熱気体が基板の上面を経由してカップの内周面に向かうように、回転機構、昇降機構および気体供給機構を制御する制御部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、処理液で基板を処理する際に、カップの内周面が基板から飛散する処理液の液滴を捕集する。当該処理後で、かつカップ上昇位置へのカップの上昇前に、カップを回転させた状態で加熱気体が基板の上面を経由してカップの内周面に供給される。このようにカップの回転とカップへの加熱気体の供給とによりカップが乾燥される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、カップ上昇位置へのカップの上昇前に、当該カップを短時間で乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
【
図2】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の構成を示す図である。
【
図6】回転カップ部の構造を示す分解組立斜視図である。
【
図7】スピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。
【
図8】回転カップ部および固定カップ部の一部を示す図である。
【
図9】上面保護加熱機構の構成を示す外観斜視図である。
【
図10】
図9に示す上面保護加熱機構の断面図である。
【
図11】処理機構に装備される上面側の処理液吐出ノズルを示す斜視図である。
【
図12】ベベル処理モードおよびプリディスペンスモードにおけるノズル位置を示す図である。
【
図13】処理機構に装備される下面側の処理液吐出ノズルおよび同ノズルを支持するノズル支持部を示す斜視図である。
【
図14】雰囲気分離機構の構成を示す部分断面図である。
【
図15】
図2に示す基板処理装置により基板処理動作の一例として実行されるベベル処理を示すフローチャートである。
【
図16A】基板の搬出入時における装置各部の動作を示す模式図である。
【
図16B】基板のセンタリング時における装置各部の動作を示す模式図である。
【
図16C】ベベル処理時における装置各部の動作を示す模式図である。
【
図16D】乾燥処理時における装置各部の動作を示す模式図である。
【
図16E】観察処理時における装置各部の動作を示す模式図である。
【
図17A】上カップの傾斜角を60゜に設定したときのカップ回転速度とカップ乾燥時間との関係を示すグラフである。
【
図17B】上カップの傾斜角を70゜に設定したときのカップ回転速度とカップ乾燥時間との関係を示すグラフである。
【
図18】加熱ガスの流量と乾燥時間との関係を示すグラフである。
【
図19】本発明の第1実施形態および比較例における乾燥処理のシーケンスを示す図である。
【
図20】本発明の第2実施形態における乾燥処理のシーケンスを示す図である。
【
図21】本発明に係る基板処理装置の第4実施形態における上面保護加熱機構の構成を示す断面図である。
【
図23】本発明に係る基板処理装置の第5実施形態におけるベベル処理および乾燥処理を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。これは基板処理システム100の外観を示すものではなく、基板処理システム100の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理システム100は、例えばクリーンルーム内に設置され、一方主面のみに回路パターン等(以下「パターン」と称する)が形成された基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。そして、基板処理システム100に装備される処理ユニット1において、処理液による基板処理が実行される。本明細書では、基板の両主面のうちパターンが形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターン形成されている面を意味する。
【0012】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0013】
図1に示すように、基板処理システム100は、基板Wに対して処理を施す基板処理エリア110を有している。この基板処理エリア110に対し、インデクサ部120が隣接して設けられている。インデクサ部120は、基板Wを収容するための容器C(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121を有している。また、インデクサ部120は、容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Wを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Wを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Wがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0014】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Wを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0015】
基板処理エリア110では、載置台112がインデクサロボット122からの基板Wを載置可能に設けられている。また、平面視において、基板処理エリア110のほぼ中央に基板搬送ロボット111が配置される。さらに、この基板搬送ロボット111を取り囲むように、複数の処理ユニット1が配置される。具体的には、基板搬送ロボット111が配置された空間に面して複数の処理ユニット1が配置される。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット111は載置台112にランダムにアクセスし、載置台112との間で基板Wを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Wに対して所定の処理を実行するものであり、本発明に係る基板処理装置に相当するものである。本実施形態では、これらの処理ユニット(基板処理装置)1は同一の機能を有している。このため、複数基板Wの並列処理が可能となっている。なお、基板搬送ロボット111はインデクサロボット122から基板Wを直接受け渡すことが可能であれば、必ずしも載置台112は必要ない。
【0016】
図2は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の構成を示す図である。また、
図3は
図2のA-A線矢視平面図である。
図2、
図3および以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。基板処理装置(処理ユニット)1は、回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8および基板観察機構9を備えている。これら各部2~9は、チャンバ11の内部空間12に収容された状態で、装置全体を制御する制御ユニット10と電気的に接続されている。そして、各部2~9は、制御ユニット10からの指示に応じて動作する。
【0017】
制御ユニット10としては、例えば、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御ユニット10においては、プログラムに記述された手順に従って主制御部としてのCPUが演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を制御する。なお、制御ユニット10の詳しい構成および動作については、後で詳述する。また、本実施形態では、各基板処理装置1に対して制御ユニット10を設けているが、1台の制御ユニットにより複数の基板処理装置1を制御するように構成してもよい。また、基板処理システム100全体を制御する制御ユニット(図示省略)により基板処理装置1を制御するように構成してもよい。
【0018】
図2に示すように、チャンバ11の天井壁11aには、ファンフィルタユニット(FFU)13が取り付けられている。このファンフィルタユニット13は、基板処理装置1が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバ11内の処理空間に供給する。ファンフィルタユニット13は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバ11内に送り出すためのファンおよびフィルタ(例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ)を備えており、天井壁11aに設けられた開口11bを介して清浄空気を送り込む。これにより、チャンバ11内の処理空間に清浄空気のダウンフローが形成される。また、ファンフィルタユニット13から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレート14が天井壁11aの直下に設けられている。
【0019】
図1および
図3に示すように、基板処理装置1では、チャンバ11の側面にシャッター15が設けられている。シャッター15にはシャッター開閉機構(図示省略)が接続されており、制御ユニット10からの開閉指令に応じてシャッター15を開閉させる。より具体的には、基板処理装置1では、未処理の基板Wをチャンバ11に搬入する際にシャッター開閉機構はシャッター15を開き、基板搬送ロボット111のハンド(
図16A中の符号RH)によって未処理の基板Wがフェースアップ姿勢で回転機構2のスピンチャック(基板保持部)21に搬入される。つまり、基板Wは上面Wfを上方に向けた状態でスピンチャック21上に載置される。そして、当該基板搬入後に基板搬送ロボット111のハンドがチャンバ11から退避すると、シャッター開閉機構はシャッター15を閉じる。そして、チャンバ11の処理空間(後で詳述する密閉空間SPsに相当)内で基板Wの周縁部Wsに対するベベル処理が実行される。また、ベベル処理の終了後においては、シャッター開閉機構がシャッター15を再び開き、基板搬送ロボット111のハンドが処理済の基板Wをスピンチャック21から搬出する。このように、本実施形態では、チャンバ11の内部空間12が常温環境に保たれる。なお、本明細書において「常温」とは、5℃~35℃の温度範囲にあることを意味する。
【0020】
回転機構2は、基板Wを、その表面を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持しつつ回転させるとともに、基板Wと同一方向に飛散防止機構3の一部を同期して回転させる機能を有している。回転機構2は、基板Wおよび飛散防止機構3の回転カップ部31を、主面中心を通る鉛直な回転軸AXまわりに回転させる。なお、回転機構2により一体的に回転する部材や部位などを明示するために、
図2では被回転部位にドットを付している。
【0021】
回転機構2は、基板Wより小さい円板状の部材であるスピンチャック21を備えている。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸AXに一致するように設けられている。スピンチャック21の下面には、円筒状の回転軸部22が連結されている。回転軸部22は、その軸線を回転軸AXと一致させた状態で、鉛直方向に延設されている。また、回転軸部22には、回転駆動部(例えば、モータ)23が接続されている。回転駆動部23は、制御ユニット10からの回転指令に応じて回転軸部22をその軸線周りに回転駆動する。したがって、スピンチャック21は、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能である。回転駆動部23と回転軸部22とは、スピンチャック21を回転軸AX中心に回転させる機能を担っており、回転軸部22の下端部および回転駆動部23は筒状のケーシング24内に収容されている。
【0022】
スピンチャック21の中央部には、図示省略の貫通孔が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、バルブ(図示省略)が介装された配管25を介してポンプ26が接続されている。当該ポンプ26およびバルブは、制御ユニット10に電気的に接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて動作する。これによって、負圧と正圧とが選択的にスピンチャック21に付与される。例えば基板Wがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプ26が負圧をスピンチャック21に付与すると、スピンチャック21は基板Wを下方から吸着保持する。一方、ポンプ26が正圧をスピンチャック21に付与すると、基板Wはスピンチャック21の上面から取り外し可能となる。また、ポンプ26の吸引を停止すると、スピンチャック21の上面上で基板Wは水平移動可能となる。
【0023】
スピンチャック21には、回転軸部22の中央部に設けられた配管28を介して窒素ガス供給部29が接続されている。窒素ガス供給部29は、基板処理システム100が設置される工場のユティリティーなどから供給される常温の窒素ガスを制御ユニット10からの窒素ガス供給指令に応じた流量およびタイミングでスピンチャック21に送給し、基板Wの下面Wb側で窒素ガスを中央部から径方向外側に流通させる。なお、本実施形態では、窒素ガスを用いているが、その他の不活性ガスを用いてもよい。この点については、後で説明する中央ノズルから吐出される加熱ガスについても同様である。また、「流量」とは、窒素ガスなどの流体が単位時間当たりに移動する量を意味している。
【0024】
回転機構2は、基板Wと一体的にスピンチャック21を回転させるのみならず、当該回転に同期して回転カップ部31を回転させるために、動力伝達部27を有している。
図4は動力伝達部の構成を示す平面図であり、
図5は
図4のB-B線断面図である。動力伝達部27は、非磁性材料または樹脂で構成される円環部材27aと、円環部材27aに内蔵される磁石27bと、回転カップ部31の一構成である下カップ32に内蔵される磁石27cとを有している。円環部材27aは回転軸部22に取り付けられ、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能となっている。より詳しくは、回転軸部22は、
図2および
図5に示すように、スピンチャック21の直下位置において、径方向外側に張出したフランジ部位22aを有している。そして、フランジ部位22aに対して円環部材27aが同心状に配置されるとともに、図示省略するボルトなどによって連結固定されている。
【0025】
円環部材27aの外周縁部では、
図4および
図5に示すように、複数(本実施形態では36個)の磁石27bが回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔(本実施形態では10゜)で配置されている。本実施形態では、
図4の拡大図に示すように、互いに隣り合う2つの磁石27bの一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置されている。
【0026】
これらの磁石27bと同様に、複数(本実施形態では36個)の磁石27cが回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔(本実施形態では10゜)で配置されている。これらの磁石27cは下カップ32に内蔵される。下カップ32は次に説明する飛散防止機構3の構成部品であり、
図4および
図5に示すように、円環形状を有している。つまり、下カップ32は、円環部材27aの外周面と対向可能な内周面を有している。この内周面の内径は円環部材27aの外径よりも大きい。そして、当該内周面を円環部材27aの外周面から所定間隔(=(上記内径-上記外径)/2)だけ離間対向させながら下カップ32が回転軸部22および円環部材27aと同心状に配置されている。この下カップ32の外周縁上面には、係合ピン35および連結用マグネット36が設けられており、これらにより上カップ33が下カップ32と連結され、この連結体が回転カップ部31として機能する。この点に関しては、後で詳述する。
【0027】
下カップ32は、図面への図示を省略したベアリングによって、上記配置状態のまま、回転軸AXまわりに回転可能に支持されている。この下カップ32の内周縁部において、
図4および
図5に示すように、複数(本実施形態では36個)の磁石27cが回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔(本実施形態では10゜)で配置されている。また、互いに隣り合う2つの磁石27cの配置についても磁石27bと同様である。つまり、一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置されている。
【0028】
このように構成された動力伝達部27では、回転駆動部23により回転軸部22とともに円環部材27aが回転すると、磁石27b、27cの間での磁力作用によって、下カップ32がエアギャップGPa(円環部材27aと下カップ32との隙間)を維持しつつ円環部材27aと同じ方向に回転する。これにより、回転カップ部31が回転軸AXまわりに回転する。つまり、回転カップ部31は基板Wと同一方向でしかも同期して回転する。
【0029】
飛散防止機構3は、スピンチャック21に保持された基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能な回転カップ部31と、回転カップ部31を囲むように固定的に設けられる固定カップ部34と、を有している。回転カップ部31は、下カップ32に上カップ33が連結されることで、回転する基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能に設けられている。
【0030】
図6は回転カップ部の構造を示す分解組立斜視図である。
図7はスピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。
図8は回転カップ部および固定カップ部の一部を示す図である。下カップ32は円環形状を有している。その外径は基板Wの外径よりも大きく、鉛直上方からの平面視においてスピンチャック21で保持された基板Wから径方向にはみ出た状態で下カップ32は回転軸AXまわりに回転自在に配置されている。当該はみ出た領域、つまり下カップ32の上面周縁部321では、周方向に沿って鉛直上方に立設する係合ピン35と平板状の下マグネット36とが交互に取り付けられており、係合ピン35の合計本数は3本であり、下マグネット36の合計個数は3個である。これら係合ピン35および下マグネット36は回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔(本実施形態では60゜)で配置されている。
【0031】
一方、上カップ33は、
図2、
図3、
図6および
図7に示すように、下円環部位331と、上円環部位332と、これらを連結する傾斜部位333とを有している。下円環部位331の外径D331は下カップ32の外径D32と同一であり、
図6に示すように、下円環部位331は下カップ32の周縁部321の鉛直上方に位置している。下円環部位331の下面では、係合ピン35の鉛直上方に相当する領域において、下方に開口した凹部335が係合ピン35の先端部と嵌合可能に設けられている。また、下マグネット36の鉛直上方に相当する領域において、上マグネット37が取り付けられている。このため、
図6に示すように凹部335および上マグネット37がそれぞれ係合ピン35および下マグネット36と対向した状態で、上カップ33は下カップ32に対して係脱可能となっている。なお、凹部と係合ピンとの関係については逆転させてもよい。また、下マグネット36と上マグネット37との組み合わせ以外に、一方をマグネットで他方を強磁性体で構成してもよい。
【0032】
上カップ33は、昇降機構7により鉛直方向において昇降可能となっている。上カップ33が昇降機構7により上方に移動されると、鉛直方向において上カップ33と下カップ32との間に基板Wの搬入出用の搬送空間(
図16A中の符号SPt)が形成される。一方、昇降機構7により上カップ33が下方に移動されると、凹部335が係合ピン35の先端部を被るように嵌合し、下カップ32に対して上カップ33が水平方向に位置決めされる。また、上マグネット37が下マグネット36に近接し、両者間で生じる引力によって、上記位置決めされた上カップ33および下カップ32が互いに結合される。これによって、
図3の部分拡大図および
図8に示すように、水平方向に延びる隙間GPcを形成した状態で、上カップ33および下カップ32が鉛直方向に一体化される。そして、回転カップ部31は隙間GPcを形成したまま回転軸AXまわりに回転自在となっている。
【0033】
回転カップ部31では、
図7に示すように、上円環部位332の外径D332は下円環部位331の外径D331よりも若干小さい。また、下円環部位331および上円環部位332の内周面の径d331、d332を比較すると、下円環部位331の方が上円環部位332よりも大きく、鉛直上方からの平面視で、上円環部位332の内周面が下円環部位331の内周面の内側に位置する。そして、上円環部位332の内周面と下円環部位331の内周面とが上カップ33の全周にわたって傾斜部位333により連結される。このため、傾斜部位333の内周面、つまり基板Wを取り囲む面は、傾斜面334となっている。すなわち、
図8に示すように、傾斜部位333は回転する基板Wの外周を囲んで基板Wから飛散する液滴を捕集可能となっており、上カップ33および下カップ32で囲まれた空間が捕集空間SPcとして機能する。
【0034】
しかも、捕集空間SPcを臨む傾斜部位333は、下円環部位331から基板Wの周縁部の上方に向かって傾斜している。このため、
図8に示すように、傾斜部位333に捕集された液滴は傾斜面334に沿って上カップ33の下端部、つまり下円環部位331に流動し、さらに隙間GPcを介して回転カップ部31の外側に排出可能となっている。なお、傾斜面334は水平面に対して60゜傾斜している。つまり、傾斜面334の傾斜角は60゜に設定されている。この点については、後で詳述する。
【0035】
固定カップ部34は回転カップ部31を取り囲むように設けられ、排出空間SPeを形成する。固定カップ部34は、液受け部位341と、液受け部位341の内側に設けられた排気部位342とを有している。液受け部位341は、隙間GPcの反基板側開口(
図8の左手側開口)を臨むように開口したカップ構造を有している。つまり、液受け部位341の内部空間が排出空間SPeとして機能しており、隙間GPcを介して捕集空間SPcと連通されている。したがって、回転カップ部31により捕集された液滴は気体成分とともに隙間GPcを介して排出空間SPeに案内される。そして、液滴は液受け部位341の底部に集められ、固定カップ部34から排液される。
【0036】
一方、気体成分は排気部位342に集められる。この排気部位342は区画壁343を介して液受け部位341と区画されている。また、区画壁343の上方に気体案内部344が配置されている。気体案内部344は、区画壁343の直上位置から排出空間SPeと排気部位342の内部にそれぞれ延設されることで、区画壁343を上方から覆ってラビリンス構造を有する気体成分の流通経路を形成している。したがって、液受け部位341に流入した流体のうち気体成分が上記流通経路を経由して排気部位342に集められる。この排気部位342は排気部38と接続されている。このため、制御ユニット10からの指令に応じて排気部38が作動することで固定カップ部34の圧力が調整され、排気部位342内の気体成分が効率的に排気される。また、排気部38の精密制御により、排出空間SPeの圧力や流量が調整される。例えば排出空間SPeの圧力が捕集空間SPcの圧力よりも下がる。その結果、捕集空間SPc内の液滴を効率的に排出空間SPeに引き込み、捕集空間SPcからの液滴の移動を促進することができる。
【0037】
図9は上面保護加熱機構の構成を示す外観斜視図である。
図10は
図9に示す上面保護加熱機構の断面図である。上面保護加熱機構4は、スピンチャック21に保持されている基板Wの上面Wfの上方に配置された遮断板41を有している。この遮断板41は水平な姿勢で保持された円板部42を有している。円板部42はヒータ駆動部422により駆動制御されるヒータ421を内蔵している。この円板部42は基板Wよりも若干短い直径を有している。そして、円板部42の下面が基板Wの上面Wfのうち周縁部Wsを除く表面領域を上方から覆うように、円板部42は支持部材43により支持されている。なお、
図9中の符号44は円板部42の周縁部に設けられた切欠部であり、これは処理機構5に含まれる処理液吐出ノズルとの干渉を防止するために設けられている。切欠部44は、径方向外側に向かって開口している。
【0038】
支持部材43の下端部は円板部42の中央部に取り付けられている。支持部材43と円板部42とを上下に貫通するように、円筒状の貫通孔が形成されている。また、当該貫通孔に対し、中央ノズル45が上下に挿通している。この中央ノズル45には、
図2に示すように、配管46を介して窒素ガス供給部47と接続されている。窒素ガス供給部47は、基板処理システム100が設置される工場の用力などから供給される常温の窒素ガスを制御ユニット10からの窒素ガス供給指令に応じた流量およびタイミングで中央ノズル45に供給する。また、本実施形態では、配管46の一部にリボンヒータ48が取り付けられている。リボンヒータ48は制御ユニット10からの加熱指令に応じて発熱して配管46内を流れる窒素ガスを加熱する。
【0039】
こうして加熱された窒素ガス(以下「加熱ガス」という)が中央ノズル45に向けて圧送され、中央ノズル45から吐出される。例えば
図10に示すように、円板部42がスピンチャック21に保持された基板Wに近接した処理位置に位置決めされた状態で加熱ガスが供給されることによって、加熱ガスは基板Wの上面Wfとヒータ内蔵の円板部42とに挟まれた空間SPaの中央部から周縁部に向って流れる。これによって、基板Wの周囲の雰囲気が基板Wの上面Wfに入り込むのを抑制することができる。その結果、上記雰囲気に含まれる液滴が基板Wと円板部42とで挟まれた空間SPaに巻き込まれるのを効果的に防止することができる。また、ヒータ421による加熱と加熱ガスによって上面Wfが全体的に加熱され、基板Wの面内温度を均一化することができる。これによって、基板Wが反るのを抑制し、処理液の着液位置を安定化させることができる。なお、これらの作用効果を得るためには、中央ノズル45に供給する加熱ガスの温度や流量を制御するのが望ましい。この点については、後でシミュレーション結果(
図17A、17B、18)などに基づき詳述する。
【0040】
図2に示すように、支持部材43の上端部は、基板Wを搬入出する基板搬送方向(
図3の左右方向)と直交する水平方向に延びる梁部材49に固定されている。この梁部材49は昇降機構7と接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて昇降機構7により昇降される。例えば
図2では梁部材49が下方に位置決めされることで、支持部材43を介して梁部材49に連結された円板部42が処理位置に位置している。一方、制御ユニット10からの上昇指令を受けて昇降機構7が梁部材49を上昇させると、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的に上昇するとともに、上カップ33も連動して下カップ32から分離して上昇する。これによって、スピンチャック21と、上カップ33および円板部42との間が広がり、スピンチャック21に対する基板Wの搬出入を行うことが可能となる(
図16A参照)。
【0041】
図11は処理機構に装備される上面側の処理液吐出ノズルを示す斜視図であり、斜め下方向から見た図である。
図12はベベル処理モードおよびプリディスペンスモードにおけるノズル位置を示す図である。
図13は処理機構に装備される下面側の処理液吐出ノズルおよび同ノズルを支持するノズル支持部を示す斜視図である。処理機構5は、基板Wの上面側に配置される処理液吐出ノズル51Fと、基板Wの下面側に配置される処理液吐出ノズル51Bと、処理液吐出ノズル51F、51Bに処理液を供給する処理液供給部52とを有している。以下においては、上面側の処理液吐出ノズル51Fと下面側の処理液吐出ノズル51Bとを区別するために、それぞれ「上面ノズル51F」および「下面ノズル51B」と称する。また、
図2において、処理液供給部52が2つ図示されているが、これらは同一である。
【0042】
本実施形態では、3本の上面ノズル51Fが設けられるとともに、それらに対して処理液供給部52が接続されている。また、処理液供給部52はSC1、DHF、機能水(CO2水など)を処理液として供給可能に構成されており、3本の上面ノズル51FからSC1、DHFおよび機能水がそれぞれ独立して吐出可能となっている。
【0043】
各上面ノズル51Fでは、
図11に示すように、先端下面に処理液を吐出する吐出口511が設けられている。そして、
図3中の拡大図に示すように、各吐出口511を基板Wの上面Wfの周縁部を向けた姿勢で複数(本実施形態では3個)の上面ノズル51Fの下方部が円板部42の切欠部44に配置されるとともに、上面ノズル51Fの上方部がノズルホルダ53に対して基板Wの径方向Xに移動自在に取り付けられている。このノズルホルダ53が支持部材54で支持され、さらに当該支持部材54が雰囲気分離機構6の下密閉カップ部材61に固定されている。つまり、上面ノズル51Fおよびノズルホルダ53は、支持部材54を介して下密閉カップ部材61と一体化されており、昇降機構7によって下密閉カップ部材61とともに鉛直方向Zに昇降される。なお、昇降機構7の詳細については、後で説明する。
【0044】
ノズルホルダ53には、
図3および
図12に示すように、上面ノズル51Fを一括して径方向Xに移動させるノズル移動部55が内蔵されている。したがって、制御ユニット10からのポジション指令に応じてノズル移動部55は3本の上面ノズル51Fを一括して方向Xに駆動させる。これによって、
図12の(a)に示すベベル処理位置と、
図12の(b)に示すプリディスペンス位置との間を上面ノズル51Fが往復移動する。このベベル処理位置に位置決めたノズル移動部55の吐出口511は基板Wの上面Wfの周縁部に向いている。そして、制御ユニット10からの供給指令に応じて処理液供給部52が3種類の処理液のうち供給指令に対応する処理液を当該処理液用の上面ノズル51Fに供給すると、当該上面ノズル51Fの吐出口511から上記処理液が基板Wの上面Wfの周縁部に吐出される。
【0045】
一方、プリディスペンス位置に位置決めされた上面ノズル51Fの吐出口511は、上面Wfの周縁部の上方に位置して下カップ32に向いている。そして、制御ユニット10からの供給指令に応じて処理液供給部52が処理液の全部または一部を対応する上面ノズル51Fに供給すると、当該上面ノズル51Fの吐出口511から上記処理液が下カップ32に吐出される。これにより、プリディスペンス処理が実行される。なお、ベベル処理およびプリディスペンス処理により使用された処理液の液滴は、
図12に示すように、隙間GPcを介して排出空間SPeに排出される。
図12における符号56は、上面ノズル51Fと、ノズル移動部55を内蔵するノズルホルダ53とで構成される構造体を示しており、以下においては、「ノズルヘッド56」と称する。また、ノズルヘッド56に上面ノズル51Fのみを装着しているが、窒素ガスなどの不活性ガスを吐出するガス吐出ノズルを追加装備してもよく、例えば基板Wが1回転する間に周縁部Wsから離脱せずに残存している処理液をガス吐出ノズルからの不活性ガスでバージしてもよい。
【0046】
本実施形態では、基板Wの下面Wbの周縁部に向けて処理液を吐出するために、下面ノズル51Bおよびノズル支持部57がスピンチャック21に保持された基板Wの下方に設けられている。ノズル支持部57は、
図13に示すように、鉛直方向に延設された薄肉の円筒部位571と、円筒部位571の上端部において径方向外側に折り広げられた円環形状を有するフランジ部位572とを有している。円筒部位571は、円環部材27aと下カップ32との間に形成されたエアギャップGPaに遊挿自在な形状を有している。そして、
図2に示すように、円筒部位571がエアギャップGPaに遊挿されるとともにフランジ部位572がスピンチャック21に保持された基板Wと下カップ32との間に位置するように、ノズル支持部57は固定配置されている。フランジ部位572の上面周縁部に対し、3つの下面ノズル51Bが取り付けられている。各下面ノズル51Bは、基板Wの下面Wbの周縁部に向けて開口した吐出口511を有しており、配管58を介して処理液供給部52から供給される処理液を吐出可能となっている。
【0047】
これら上面ノズル51Fおよび下面ノズル51Bから吐出される処理液により、基板Wの周縁部に対するベベル処理が実行される。また、基板Wの下面側では、周縁部Wsの近傍までフランジ部位572が延設される。このため、配管28を介して下面側に供給された窒素ガスが、
図8に示すように、フランジ部位572に沿って捕集空間SPcに流れる。その結果、捕集空間SPcから液滴が基板Wに逆流するのを効果的に抑制する。
【0048】
図14は雰囲気分離機構の構成を示す部分断面図である。雰囲気分離機構6は、下密閉カップ部材61と、上密閉カップ部材62とを有している。下密閉カップ部材61および上密閉カップ部材62はともに上下に開口した筒形状を有している。そして、それらの内径は回転カップ部31の外径よりも大きく、雰囲気分離機構6は、スピンチャック21、スピンチャック21に保持された基板W、回転カップ部31および上面保護加熱機構4を上方からすっぽりと囲むように配置されている、より詳しくは、
図2に示すように、上密閉カップ部材62は、その上方開口が天井壁11aの開口11bを下方から覆うように、パンチングプレート14の直下位置に固定配置されている。このため、チャンバ11内に導入された清浄空気のダウンフローは、上密閉カップ部材62の内部を通過するものと、上密閉カップ部材62の外側を通過するものとに分けられる。
【0049】
また、上密閉カップ部材62の下端部は、内側に折り込まれた円環形状を有するフランジ部621を有している。このフランジ部621の上面にオーリング64が取り付けられている。上密閉カップ部材62の内側において、下密閉カップ部材61が鉛直方向に移動自在に配置されている。
【0050】
下密閉カップ部材61の上端部は、外側に折り広げられた円環形状を有するフランジ部611を有している。このフランジ部611は、鉛直上方からの平面視で、フランジ部621と重なり合っている。このため、下密閉カップ部材61が下降すると、
図3および
図14に示すように、下密閉カップ部材61のフランジ部611がオーリング64を介して上密閉カップ部材62のフランジ部621で係止される。これにより、下密閉カップ部材61は下限位置に位置決めされる。この下限位置では、鉛直方向において上密閉カップ部材62と下密閉カップ部材61とが繋がり、上密閉カップ部材62の内部に導入されたダウンフローがスピンチャック21に保持された基板Wに向けて案内される。
【0051】
下密閉カップ部材61の下端部は、外側に折り込まれた円環形状を有するフランジ部612を有している。このフランジ部612は、鉛直上方からの平面視で、固定カップ部34の上端部(液受け部位341の上端部)と重なり合っている。したがって、上記下限位置では、
図3中の拡大図および
図14に示すように、下密閉カップ部材61のフランジ部612がオーリング64を介して固定カップ部34で係止される。これにより、鉛直方向において下密閉カップ部材61と固定カップ部34が繋がり、上密閉カップ部材62、下密閉カップ部材61および固定カップ部34により密閉空間SPsが形成される。この密閉空間SPs内において、基板Wに対するベベル処理が実行可能となっている。つまり、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされることで、密閉空間SPsが密閉空間SPsの外側空間SPoから分離される(雰囲気分離)。したがって、外側雰囲気の影響を受けることなく、ベベル処理を安定して行うことができる。また、ベベル処理を行うために処理液を用いるが、処理液が密閉空間SPsから外側空間SPoに漏れるのを確実に防止することができる。よって、外側空間SPoに配置する部品の選定・設計の自由度が高くなる。
【0052】
下密閉カップ部材61は鉛直上方にも移動可能に構成されている。また、鉛直方向における下密閉カップ部材61の中間部には、上記したように、支持部材54を介してノズルヘッド56(=上面ノズル51F+ノズルホルダ53)が固定されている。また、これ以外にも、
図2および
図3に示すように、梁部材49を介して上面保護加熱機構4が下密閉カップ部材61の中間部に固定されている。つまり、
図3に示すように、下密閉カップ部材61は、周方向において互いに異なる3箇所で梁部材49の一方端部、梁部材49の他方端部および支持部材54とそれぞれ接続されている。そして、昇降機構7が梁部材49の一方端部、梁部材49の他方端部および支持部材54を昇降させることで、それに伴って下密閉カップ部材61も昇降する。
【0053】
この下密閉カップ部材61の内周面では、
図2、
図3および
図14に示すように、内側に向けて突起部613が上カップ33と係合可能な係合部位として複数本(4本)突設されている。各突起部613は上カップ33の上円環部位332の下方空間まで延設されている。また、各突起部613は、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされた状態で上カップ33の上円環部位332から下方に離れるように取り付けられている。そして、下密閉カップ部材61の上昇によって各突起部613が下方から上円環部位332に係合可能となっている。この係合後においても、下密閉カップ部材61がさらに上昇することで上カップ33を下カップ32から離脱させることが可能となっている。
【0054】
本実施形態では、昇降機構7により下密閉カップ部材61が上面保護加熱機構4およびノズルヘッド56とともに上昇し始めた後で、上カップ33も一緒に上昇する。これによって、上カップ33、上面保護加熱機構4およびノズルヘッド56がスピンチャック21から上方に離れる。下密閉カップ部材61の退避位置(後で説明する
図16Aにおける位置)への移動によって、基板搬送ロボット111のハンド(
図16A中の符号RH)がスピンチャック21にアクセスするための搬送空間(
図16A中の符号SPt)が形成される。そして、当該搬送空間を介してスピンチャック21への基板Wのローディングおよびスピンチャック21からの基板Wのアンローディングが実行可能となっている。このように、本実施形態では、昇降機構7による下密閉カップ部材61の最小限の上昇によってスピンチャック21に対する基板Wのアクセスを行うことが可能となっている。
【0055】
昇降機構7は2つの昇降駆動部71、72を有している。昇降駆動部71では、
図3に示すように、第1昇降モータ711が設けられている。第1昇降モータ711は、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生する。この第1昇降モータ711に対し、2つの昇降部712、713が連結されている。昇降部712、713は、第1昇降モータ711から上記回転力を同時に受ける。そして、昇降部712は、第1昇降モータ711の回転量に応じて梁部材49の一方端部を支持する支持部材491を鉛直方向Zに昇降させる。また、昇降部713は、第1昇降モータ711の回転量に応じてノズルヘッド56を支持する支持部材54を鉛直方向Zに昇降させる。
【0056】
昇降駆動部72は、
図3に示すように、第2昇降モータ721と昇降部722とを有している。第2昇降モータ721は、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生し、昇降部722に与える。昇降部722は、第2昇降モータ721の回転量に応じて梁部材49の他方端部を支持する支持部材492を鉛直方向に昇降させる。
【0057】
昇降駆動部71、72は、下密閉カップ部材61の側面に対し、その周方向において互いに異なる3箇所にそれぞれ固定される支持部材491、492、54を同期して鉛直方向に移動させる。したがって、上面保護加熱機構4、ノズルヘッド56および下密閉カップ部材61の昇降を安定して行うことができる。また、下密閉カップ部材61の昇降に伴って上カップ33も安定して昇降させることができる。
【0058】
センタリング機構8は、スピンチャック21にローディングされた基板Wの端面に対して近接および離間可能な当接部材81と、当接部材81を水平方向に移動させるためのセンタリング駆動部82とを有している。本実施形態では、回転軸AXを中心として放射状の3つの当接部材81が等角度間隔で配置されており、そのうちの1つのみが
図2に図示されている。このセンタリング機構8は、ポンプ26による吸引を停止している間(つまりスピンチャック21の上面上で基板Wが水平移動可能となっている間)に、制御ユニット10からのセンタリング指令に応じてセンタリング駆動部82が当接部材81を基板Wに近接させる(センタリング処理)。このセンタリング処理によりスピンチャック21に対する基板Wの偏心が解消され、基板Wの中心がスピンチャック21の中心と一致する。
【0059】
基板観察機構9は、基板Wの周縁部を観察するための観察ヘッド91を有している。この観察ヘッド91は、基板Wの周縁部に対して近接および離間可能に構成されている。観察ヘッド91には、観察ヘッド駆動部92が接続されている。そして、観察ヘッド91により基板Wの周縁部を観察する際には、制御ユニット10から観察指令に応じて観察ヘッド駆動部92が観察ヘッド91を基板Wに近接させる(観察処理)。そして、観察ヘッド91を用いて基板Wの周縁部が撮像される。撮像された画像は制御ユニット10に送られる。この画像に基づいてベベル処理が良好に行われたか否かを制御ユニット10が検査する。
【0060】
制御ユニット10は、演算処理部10A、記憶部10B、読取部10C、画像処理部10D、駆動制御部10E、通信部10Fおよび排気制御部10Gを有している。記憶部10Bは、ハードディスクドライブなどで構成されており、上記基板処理装置1によりベベル処理を実行するためのプログラムを記憶している。当該プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能な記録媒体RM(例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等)に記憶されており、読取部10Cにより記録媒体RMから読み出され、記憶部10Bに保存される。また、当該プログラムの提供は、記録媒体RMに限定されるものではなく、例えば当該プログラムが電気通信回線を介して提供されるように構成してもよい。画像処理部10Dは、基板観察機構9により撮像された画像に種々の処理を施す。駆動制御部10Eは、基板処理装置1の各駆動部を制御する。通信部10Fは、基板処理システム100の各部を統合して制御する制御部などと通信を行う。排気制御部10Gは排気部38を制御する。
【0061】
また、制御ユニット10には、各種情報を表示する表示部10H(例えばディスプレイなど)や操作者からの入力を受け付ける入力部10J(例えば、キーボードおよびマウスなど)が接続されている。
【0062】
演算処理部10Aは、CPU(= Central Processing Unit)やRAM(=Random
Access Memory)等を有するコンピュータにより構成されており、記憶部10Bに記憶されているプログラムにしたがって基板処理装置1の各部を以下のように制御し、ベベル処理を実行する。以下、
図15、
図16Aないし
図16Dを参照しつつ基板処理装置1によるベベル処理について説明する。
【0063】
図15は
図2に示す基板処理装置により基板処理動作の一例として実行されるベベル処理を示すフローチャートである。また、
図16Aないし
図16Eは装置各部の動作を示す模式図である。なお、
図16Aにおいて一体的に上昇する構成を明示するために当該構成にドットを参考的に付し、
図16Cにおいて一体的に回転する構成を明示するために当該構成にドットを参考的に付している。
【0064】
基板処理装置1により基板Wにベベル処理を施す際には、演算処理部10Aは、昇降駆動部71、72により下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42を一体的に上昇させる。この下密閉カップ部材61の上昇途中で、突起部613が上カップ33の上円環部位332と係合し、それ以降、下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42と一緒に上カップ33が上昇して退避位置に位置決めされる。これにより、スピンチャック21の上方に基板搬送ロボット111のハンドRHが進入するのに十分な搬送空間SPtが形成される。そして、搬送空間SPtの形成完了を確認すると、演算処理部10Aは、通信部10Fを介して基板搬送ロボット111に基板Wのローディングリクエストを行い、
図16Aに示すように未処理の基板Wが基板処理装置1に搬入されてスピンチャック21の上面に載置されるのを待つ。そして、スピンチャック21上に基板Wが載置される(ステップS1)。なお、この時点では、ポンプ26は停止しており、スピンチャック21の上面上で基板Wは水平移動可能となっている。
【0065】
基板Wのローディングが完了すると、基板搬送ロボット111が基板処理装置1から退避する。それに続いて、演算処理部10Aは、3つの当接部材81(
図16Bでは、2本のみを図示)が基板Wに近接するように、センタリング駆動部82を制御する。これによりスピンチャック21に対する基板Wの偏心が解消され、基板Wの中心がスピンチャック21の中心と一致する(ステップS2)。こうしてセンタリング処理が完了すると、演算処理部10Aは、3つの当接部材81が基板Wから離間するようにセンタリング駆動部82を制御するとともに、ポンプ26を作動させて負圧をスピンチャック21に付与する。これにより、スピンチャック21は基板Wを下方から吸着保持する。
【0066】
次に、演算処理部10Aは、昇降駆動部71、72に下降指令を与える。これに応じて、昇降駆動部71、72が下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42を一体的に下降させる。この下降途中で、下密閉カップ部材61の突起部613により下方から支持されている上カップ33が下カップ32に連結される。つまり、
図6に示すように、凹部335が係合ピン35の先端部を被るように嵌合し、下カップ32に対して上カップ33が水平方向に位置決めされるとともに、上マグネット37と下マグネット36との間で生じる引力によって、上カップ33および下カップ32が互いに結合して回転カップ部31が形成される。
【0067】
回転カップ部31の形成後に、下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的にさらに下降し、下密閉カップ部材61のフランジ部611、612がそれぞれ上密閉カップ部材62のフランジ部621および固定カップ部34で係止される。これにより、下密閉カップ部材61が下限位置(
図2および
図16Cでの位置)に位置決めされる(ステップS3)。上記係止後においては、上密閉カップ部材62のフランジ部621とおよび下密閉カップ部材61のフランジ部611がオーリング64を介して密着されるとともに、下密閉カップ部材61のフランジ部612および固定カップ部34がオーリング65を介して密着される。その結果、
図2に示すように、鉛直方向において下密閉カップ部材61と固定カップ部34が繋がり、上密閉カップ部材62、下密閉カップ部材61および固定カップ部34により密閉空間SPsが形成され、密閉空間SPsが外側雰囲気(外側空間SPo)から分離される(雰囲気分離)。この雰囲気分離状態で、円板部42の下面が基板Wの上面Wfのうち周縁部Wsを除く表面領域を上方から覆っている。また、上面ノズル51Fが、円板部42の切欠部44内で吐出口511を基板Wの上面Wfの周縁部を向けた姿勢に位置決めされている。
【0068】
次に、演算処理部10Aは、窒素ガス供給部47に窒素ガス供給指令を与える。これにより、
図16Cの矢印F1に示すように、窒素ガス供給部47から中央ノズル45に向けて窒素ガスの供給が開始される(ステップS4)。この窒素ガスは、配管46を通過する間、リボンヒータ48により加熱され、所望温度、より具体的には上カップ33および基板Wの周辺温度よりも高い温度に昇温された後で、中央ノズル45から基板Wと円板部42とで挟まれた空間SPa(
図10)に向けて吐出される。これにより、基板Wの上面Wfが全面的に加熱される。また、基板Wの加熱はヒータ421によっても行われる。このため、時間の経過によって基板Wの周縁部Wsの温度が上昇し、ベベル処理に適した温度に達する。また、周縁部Ws以外の温度も、ほぼ等しい温度にまで上昇する。すなわち、本実施形態では、基板Wの上面Wfの面内温度は、ほぼ均一である。したがって、基板Wが反るのを効果的に抑制することができる。
【0069】
こうして基板Wへの処理液の供給準備が完了すると、演算処理部10Aは、回転駆動部23に回転指令を与え、基板Wを保持するスピンチャック21および回転カップ部31の回転を開始する(ステップS5)。基板Wおよび回転カップ部31の回転速度は、例えば1800回転/分に設定される。また、演算処理部10Aはヒータ駆動部422を駆動制御してヒータ421を所望温度、例えば185℃まで昇温させる。
【0070】
これに続いて、演算処理部10Aは、処理液供給部52を制御して上面ノズル51Fおよび下面ノズル51Bに処理液を供給する(同図中の矢印F2、F3)。つまり、上面ノズル51Fから基板Wの上面周縁部に当たるように処理液の液流が吐出されるとともに、下面ノズル51Bから基板Wの下面周縁部に当たるように処理液の液流が吐出される。これによって、基板Wの周縁部Wsに対するベベル処理が実行される(ステップS6)。そして、演算処理部10Aは、基板Wのベベル処理に要する処理時間の経過などを検出すると、処理液供給部52に供給停止指令を与え、処理液の吐出を停止する。
【0071】
このベベル処理中においては、基板Wから径方向に飛散した処理液の液滴は傾斜面334に着弾する。そして、この着弾位置に当該液滴が留まると、続いて基板Wから飛散してきた液滴との衝突が発生することがある。この衝突によって液滴が基板Wに飛んで再付着すると、これがパーティクルの発生要因となってしまう。しかしながら、本実施形態では、ベベル処理中も、加熱ガスが基板Wの上面Wfに沿って径方向に広がり、上カップ33の傾斜面334に吹き付けられる。しかも、上カップ33は回転している。したがって、傾斜面334に着弾した液滴は、加熱ガスの吹付と上カップ33の回転との相乗効果によって、当該液滴は速やかに着弾位置から傾斜面334を経由して下方に移動する。その結果、パーティクルの発生が効果的に防止される。
【0072】
また、ベベル処理後においては、演算処理部10Aは、基板Wおよび上カップ33の乾燥に適した回転数で基板Wと回転カップ部31とが回転するように、回転機構2を制御する。また、演算処理部10Aは、
図16Dの矢印F4に示すように上記乾燥に適した流量で加熱ガスが中央ノズル45から基板Wの上面中央部に向けて吐出されるように、窒素ガス供給部47を制御する。これにより、加熱ガスが回転している基板Wの上面Wfに沿って径方向に広がり、基板Wを乾燥させる。また、基板Wの上面Wfを通過した加熱ガスは上カップ33の傾斜面334に吹き付けられる。したがって、基板Wの乾燥処理中に上カップ33に飛散した液滴は、加熱ガスの吹付と上カップ33の回転との相乗効果によって、当該液滴は速やかに着弾位置から傾斜面334を経由して下方に移動する。このように、基板Wの乾燥処理と並行して上カップ33の乾燥処理が実行される(ステップS7)。
【0073】
ここで、上カップ33の乾燥処理を短時間で行うための手段として、次に説明する実証実験の結果が示すように
(A)上カップ33の回転数を増速する
(B)加熱ガスの温度を高く設定する
(C)加熱ガスの流量を多く設定する
(D)排気量を多く設定する
(E)上カップ33の傾斜角を低くする、
のが好適である。以下、
図17A、
図17Bおよび
図18を参照しつつ実証実験の結果について説明する。
【0074】
図17Aは上カップの傾斜角を60゜に設定したときのカップ回転速度とカップ乾燥時間との関係を示すグラフであり、
図17Bは上カップの傾斜角を70゜に設定したときのカップ回転速度とカップ乾燥時間との関係を示すグラフである。この実証実験では、以下の3つカップ乾燥条件DC1~DC3、
<乾燥条件DC1>
・排気部38による排気圧=80Pa
・加熱ガスの流量=150[L/min]
・(加熱)ガスの温度=室温(5~35℃)
<乾燥条件DC2>
・排気部38による排気圧=220Pa
・加熱ガスの流量=150[L/min]
・(加熱)ガスの温度=室温(5~35℃)
<乾燥条件DC3>
・排気部38による排気圧=174Pa
・加熱ガスの流量=120[L/min]
・加熱ガスの温度=174℃
を用意した。また、各カップ乾燥条件DC1~DC3で上カップ33の回転数[rpm]を1000rpm、1500rpmおよび2000rpmを多段階に変更しながら上記ステップS7を実行した。また、1000rpm、1500rpmおよび2000rpmで、感水試験紙(単に「感水紙」と称することもある)により上カップ33から液体成分が完全に除去されたことを確認されるまでに要する時間、つまり上カップ33の乾燥時間を求めた。
【0075】
図17Aおよび
図17Bでは、乾燥条件DC1における回転数に対する乾燥時間は黒塗り四角印で示され、乾燥条件DC2におけるそれは黒塗り三角印で示され、乾燥条件DC3におけるそれは黒塗り丸印で示されている。この検証結果に基づき、手段(A)および手段(B)が有効であることがわかる。また、乾燥時間を目標時間、例えば
図17Aに示すように7秒程度に抑えるためには、加熱ガスの温度を常温よりも高温に設定する必要がある。このことをさらに検証するため、乾燥条件DC2中の加熱ガスの温度を174℃に引き上げると、例えば
図17A中の白抜き三角印で示すように、1500rpmでの乾燥時間は約26秒から6秒程度に短縮される。
【0076】
また、
図17Aと
図17Bとの比較から、上カップ33の傾斜角の減少にともなってグラフが全体的に低乾燥時間側にシフトしている。このことは、乾燥時間の短縮には上カップ33の傾斜角を低くすることが有効であることを示している。
【0077】
図18は加熱ガスの流量と乾燥時間との関係を示すグラフである。ここでは、
<乾燥条件DC4>
・排気部38による排気圧=80Pa
・上カップ33の傾斜角=60゜
・加熱ガスの温度=174℃
を用意し、当該乾燥条件DC4で加熱ガスの流量を3段階に変更しながら上記ステップS7を実行した。そして、各流量で、感水試験紙により上カップ33の乾燥時間を求めた。同図から明らかなように乾燥時間の短縮には加熱ガスの流量を増大させることが有効であり、上記したように乾燥時間を7秒程度に抑えるためには、加熱ガスの流量を60[L/min]以上に設定することができる。
【0078】
図15に戻って動作説明を続ける。基板Wの乾燥処理および上カップ33の乾燥処理がともに完了すると、演算処理部10Aは、回転駆動部23に回転停止指令を与え、スピンチャック21および回転カップ部31の回転を停止させる(ステップS8)。また、演算処理部10Aは、窒素ガス供給部47に供給停止指令を与え、窒素ガス供給部47から中央ノズル45に向けて窒素ガスの供給を停止する(ステップS9)。
【0079】
次のステップS10で、演算処理部10Aは基板Wの周縁部Wsを観察してベベル処理の結果を検査する。より具体的には、演算処理部10Aは、基板Wのローディング時と同様にして、上カップ33を退避位置に位置決めし、搬送空間SPtを形成する。そして、演算処理部10Aは、観察ヘッド駆動部92を制御して観察ヘッド91を基板Wに近接させる。そして、観察ヘッド91により周縁部Wsが撮像されると、演算処理部10Aは、観察ヘッド駆動部92を制御して観察ヘッド91を基板Wから退避させる。これと並行して、演算処理部10Aは、撮像された周縁部Wsの画像に基づき、演算処理部10Aは、ベベル処理が良好に行われたか否かを検査する。
【0080】
検査後、演算処理部10Aは、通信部10Fを介して基板搬送ロボット111に基板Wのアンローディングリクエストを行い、処理済の基板Wが基板処理装置1から搬出される(ステップS11)。なお、これら一連の工程は繰り返して実行される。
【0081】
以上のように、第1実施形態によれば、基板Wの上面Wfに供給された加熱ガスを基板Wの上面Wfに沿って上カップ33に供給するのみならず、上カップ33を回転させている。ここで、上カップ33の回転による効果を検証するために、ベベル処理に続いて基板Wの乾燥処理およびカップの乾燥処理を実行する際、従来技術と同様に上カップ33を回転させない比較例を
図19の上段に例示する。この比較例と、上カップ33を回転させる第1実施形態とを比較すると、上カップ33の乾燥に要する時間が上カップ33の回転に相当する時間ΔT1だけ短縮される。
【0082】
また、
図17A、
図17Bおよび
図18を参照しつつ説明したように、上カップ33を短時間で乾燥させるには、手段(A)~手段(E)を講じるのが効果的である。これらのうち手段(A)は上カップ33の回転数に関するものであり、手段(B)、(C)は加熱ガスに関するものであり、手段(D)は排気量に関するものであり、これらについては基板Wおよび上カップ33の乾燥処理において適宜変更可能である。そして、基板Wおよび上カップ33の回転数、加熱ガスの温度や流量、排気量については、上カップ33を短時間で乾燥させるのに好適な範囲(以下「カップ乾燥適正範囲」という)が存在する。したがって、
図19中の第1実施形態において、基板Wおよび上カップ33の乾燥処理における回転数R2や加熱ガスの流量FL1などをカップ乾燥適正範囲内に設定するのが望ましい。
【0083】
上記した第1実施形態では、
図16A、
図16Bおよび
図16Eに示す上カップ33の位置が本発明の「カップ上昇位置」の一例に相当している。また、上カップ33が本発明の「カップ」の一例に相当している。また、乾燥ガスが本発明の「加熱気体」の一例に相当している。スピンチャック21が本発明の「基板保持部」の一例に相当している。また、配管46、窒素ガス供給部47およびリボンヒータ48が本発明の「気体供給機構」として機能している。制御ユニット10が本発明の「制御部」の一例に相当している。
【0084】
<第2実施形態>
ところで、カップ乾燥適正範囲が基板Wの乾燥に好適な範囲(以下「基板乾燥適正範囲」という)から外れていることがある。例えば
図20に示すように、基板Wの乾燥処理において基板Wを回転数R2で回転させるのが望ましいが、これがカップ乾燥適正範囲よりも低いことがある。このようなケースでは、基板Wの乾燥処理が完了したタイミングで回転数を基板乾燥適正範囲内の回転数R2からカップ乾燥適正範囲内の回転数R3に変更してもよい。もちろん、このような乾燥処理条件の変更は、回転数に限定されるものではなく、他の条件、例えば加熱ガスの流量についても同様である。
【0085】
<第3実施形態>
基板Wを乾燥させる際の乾燥処理条件、つまり基板Wの回転数や加熱ガスの流量などについては、基板Wの種類などに応じてユーザがいわゆるレシピに設定することが多い。したがって、レシピに設定された基板Wの回転数や加熱ガスの流量などがカップ乾燥適正範囲に収まっているか否かを演算処理部10Aが判断してもよい。そして、当該判断に基づいて演算処理部10Aが乾燥処理のシーケンスを切り替えるように構成してもよい。例えば基板乾燥処理におけるユーザ指定の回転数などがカップ乾燥適正範囲に収まっていると判断したときに演算処理部10Aが
図19の「第1実施形態」に示すシーケンスを実行する一方で、ユーザ指定の回転数などがカップ乾燥適正範囲に収まっていないと判断したときに演算処理部10Aが
図20に示すシーケンスを実行するように、構成してもよい。これにより、ユーザ設定のレシピに対して柔軟に対応しながら上カップ33の乾燥処理に要する時間を短縮することができる。
【0086】
<第4実施形態>
上記第1実施形態ないし第3実施形態では、加熱ガスを基板Wの上面中央部に向けて吐出することで加熱ガスを基板Wおよび上カップ33の乾燥に利用しているが、加熱ガスの供給形態はこれに限定されるものではない。例えば加熱ガスが基板Wの周縁部と中央部との間の中間領域に供給するように構成してもよい(第4実施形態)。
【0087】
図21は本発明に係る基板処理装置の第4実施形態における上面保護加熱機構の構成を示す断面図である。
図22は
図21に示す上面保護加熱機構の分解組立図である。第4実施形態における上面保護加熱機構4が第1実施形態におけるそれと大きく相違している点は加熱ガスの吐出方向であり、その構成である。つまり、第4実施形態では、上面保護加熱機構4は、ベースブロック410と、ベースブロック410の鉛直下方に配置される第1アンダーブロック420および第2アンダーブロック430と、第1アンダーブロック420の内部に配置される周縁加熱ヒータ440と、第2アンダーブロック430の内部に配置される中央加熱ヒータ450と、を有している。ベースブロック410、第1アンダーブロック420、第2アンダーブロック430、周縁加熱ヒータ440および中央加熱ヒータ450が、それぞれ以下のように構成され、しかも、それらが組み合わされることで、遮断板構造体40が構成されている。
【0088】
ベースブロック410は、
図22に示すように、全体的には略円盤形状を有している。ベースブロック410の上面中央部には、基板Wの上面Wfに供給する窒素ガスを導入するための入力ポート41aが取り付けられている。入力ポート41aには、
図2に示すように、配管46を介して窒素ガス供給部47と接続される。
【0089】
ベースブロック410では、
図21に示すように、入力ポート41aの上端部が開口され、この開口41bが「第1開口」の一例に相当している。また、ベースブロック410の下面の中央部には、開口41bよりも広い開口41cが設けられている。この開口41cが「第2開口」の一例に相当している。そして、ベースブロック410の下面側では、ロート状空間41dが形成されている。このロート状空間41dは、開口41bから下方に向って内径が拡径し、開口41cに繋がっている。
【0090】
第1アンダーブロック420は、
図21および
図22に示すように、フランジ付の円環部材42aと円環部材42bとを有している。また、円環部材42aと円環部材42bとにより円環形状の周縁加熱ヒータ440が挟み込まれ、第1アンダーブロック420に内蔵される。円環部材42aは基板Wよりも若干短い直径を有している。また、
図22に示すように、第1アンダーブロック420の周縁部には、切欠部42eが設けられている。これは処理機構5に含まれる処理液吐出ノズルとの干渉を防止するために設けられている。切欠部42eは、径方向外側に向かって開口している。
【0091】
円環部材42aにおいて、フランジ部位に囲まれた領域の中央部では、開口41cと同一形状の貫通孔が設けられ、当該中央部は中空形状を有している。また、円環部材42bおよび周縁加熱ヒータ440も、円環部材42aの中央部と同様に、開口41cと同一形状の貫通孔が設けられた円環形状を有している。そして、上記貫通孔を一致させながら、円環部材42aの上面に対して周縁加熱ヒータ440および円環部材42bがこの順序で積層されている。こうして構成された積層体(=第1アンダーブロック420+周縁加熱ヒータ440)では、円環部材42aと円環部材42bとにより円環形状の周縁加熱ヒータ440が挟み込まれ、第1アンダーブロック420に内蔵されている。また、
図21の左側図面に示すように、当該積層体の中央部に貫通孔42cが形成され、貫通孔42c内の空間が「貫通空間」の一例に相当している。また、この貫通孔42cの上方側の開口42dが「第3開口」に相当している。そして、開口42dがベースブロック410の開口41cと一致するとともに第1アンダーブロック420の上面がベースブロック410の下面と一致するように、上記積層体がベースブロック410に密着されるとともに、ボルトなどの締結部材41eによりベースブロック410に対して第1アンダーブロック420および周縁加熱ヒータ440が固定される。すると、ロート状空間41dと上記貫通空間とが繋がり、一体化される。これによって、次に説明する第2アンダーブロック430を遊挿可能な空間(=ロート状空間41d+貫通空間)が形成される。
【0092】
第2アンダーブロック430は、円盤部材43a、中間部材43bおよび円錐台部材43cを有している。円盤部材43aは、貫通孔42cの内径よりも若干狭い外径を有するとともに、円環部材42aと同じ厚み、つまり鉛直方向における高さを有している。また、中間部材43bは、円盤部材43aと同一形状の円盤部位と当該円盤部位から鉛直上方に延設された円錐台部位とを有している。そして、円盤部材43aと中間部材43bとにより中央加熱ヒータ450を挟み込むことで、中央加熱ヒータ450が第2アンダーブロック430に内蔵される。なお、中央加熱ヒータ450は、円盤部材43aと同一形状でかつ中央加熱ヒータ450と同一厚さを有している。円盤部材43a、中央加熱ヒータ450、中間部材43bおよび円錐台部材43cの回転対称軸を一致させながら、円盤部材43aの上面に対して中央加熱ヒータ450、中間部材43bおよび円錐台部材43cがこの順序で積層されている。こうして形成された積層体(=第2アンダーブロック430+中央加熱ヒータ450)の下面(つまり円盤部材43aの下面)が、鉛直方向において第1アンダーブロック420の下面と一致するように、ロート状空間41dおよび貫通空間で構成される空間に遊挿される。そして、この遊挿状態のまま、ボルトなどの締結部材41fによりベースブロック410に対して第2アンダーブロック430および中央加熱ヒータ450が固定される。これにより、遮断板構造体40において、ベースブロック410および第1アンダーブロック420と第2アンダーブロック430との間に隙間領域40cがガス供給経路として形成される。また、第1アンダーブロック420の下面と第2アンダーブロック430の下面との間に環状吹出口40aが形成される。その結果、開口41bを介して加熱ガスが上面保護加熱機構4に導入されると、加熱ガスは隙間領域40cを介して環状吹出口40aに案内される。そして、基板Wの上面Wfの中央部と周縁部との中間領域、特に周縁部近傍に対し、環状吹出口40aから均一に加熱ガスが供給される。
【0093】
また、上面保護加熱機構4では、周縁加熱ヒータ440を駆動するために、給電部材44aが設けられている。給電部材44aは、
図21に示すように、ベースブロック410および円環部材42bに設けられた貫通孔(図示省略)に挿通され、周縁加熱ヒータ440に接続されている。このため、周縁加熱ヒータ440を作動させるための電力がヒータ駆動部422から給電部材44aを介して周縁加熱ヒータ440に与えられると、周縁加熱ヒータ440から熱が放出される。この熱は、円環部材42aを介して基板Wの周縁部Wsに与えられるとともに、隙間領域40cにおいて環状吹出口40aに向っている流動する加熱ガスを加熱する。これによって、基板Wの周縁部Wsが暖められ、周縁部温度が上昇する。
【0094】
周縁加熱ヒータ440のほかに、中央加熱ヒータ450を駆動するために、給電部材45aが設けられている。給電部材45aは、
図21に示すように、ベースブロック410、円錐台部材43cおよび中間部材43bに設けられた貫通孔(図示省略)に挿通され、中央加熱ヒータ450に接続されている。このため、中央加熱ヒータ450を作動させるための電力がヒータ駆動部442から給電部材45aを介して中央加熱ヒータ450に与えられると、中央加熱ヒータ450から熱が放出される。この熱は、円環部材42aを介して基板Wの上面Wfの中央部に与えられるとともに、隙間領域40cにおいて環状吹出口40aに向っている加熱ガスを加熱する。これによって、基板Wの周縁部近傍に供給される加熱ガスの温度を高め、基板Wの周縁部温度を上昇させることができる。また、円盤部材43aを介して基板Wの上面Wfの中央部が暖められ、周縁部Wsとの温度差を縮めることができる。つまり、基板Wの面内温度を均一化することができる。これによって、基板Wが反るのを抑制し、処理液の着液位置を安定化させることができる。また、本実施形態では、
図21に示すように、樹脂製のスピンチャック21と第2アンダーブロックとの間で(D43>D21)の関係が成立している。つまり、水平面内において、スピンチャック21の上面は第2アンダーブロック430の下面よりも狭く、第2アンダーブロック430の下面の鉛直下方に位置している。したがって、スピンチャック21は、環状吹出口40aから周縁部近傍に供給される加熱ガスや周縁加熱ヒータ440からの熱の影響を受けにくく、スピンチャック21の劣化や形状変化などを防止し、ベベル処理の安定化を図ることができる。
【0095】
さらに、ヒータ駆動部442は、周縁加熱ヒータ440および中央加熱ヒータ450への給電と、周縁加熱ヒータ440のみへの給電と、両者への給電停止とを切り替え可能となっている。しかも、周縁加熱ヒータ440および中央加熱ヒータ450の両方に給電する場合において、周縁加熱ヒータ440に与える電力量と、中央加熱ヒータ450に与える電力量とを個別に制御可能となっている。この電力制御によって、周縁加熱ヒータ440の発熱量と中央加熱ヒータ450の発熱量とを、互いに独立して調整することが可能となっている。その結果、本実施形態では、基板Wの温度をきめ細かく制御することが可能となっている。特に、周縁加熱ヒータ440の発熱量が中央加熱ヒータ450の発熱量よりも大きくなるように制御するのが好適である。
【0096】
こうして加熱された窒素ガス、つまり加熱ガスは上記したように基板Wの周縁部Wsおよび上カップ33を加熱する機能のみならず、基板Wの周囲の雰囲気が基板Wの上面Wfに入り込むのを抑制する機能も有している。つまり、上記雰囲気に含まれる液滴が基板Wと遮断板構造体40とで挟まれた空間SPaに巻き込まれるのを効果的に防止することができる。
【0097】
上記のように構成された上面保護加熱機構4は、
図2に示すように、支持部材43を介して梁部材49に固定される。このため、第1実施形態と同様に、制御ユニット10からの指令に応じて昇降機構7により昇降される。例えば
図2では梁部材49が下方に位置決めされることで、
以上のように、第4実施形態では、環状吹出口40aが基板Wの上面Wfの周縁部近傍に形成されており、当該環状吹出口40aから加熱ガスが基板Wの周縁部近傍に直接的に供給される。このため、次のような作用効果が得られる。スピンチャック21により基板Wの下面中央部を吸着保持する装置では、基板Wの上面Wfの中央部に供給された加熱ガスはスピンチャック21により冷やされる。これによって、加熱ガスの温度低下は不可避である。これに対し、第4実施形態では、基板Wの上面中央部を経由することなく、加熱ガスを基板Wの周縁部Wsおよび上カップ33に供給することができる。したがって、より少ない加熱ガスで基板Wおよび上カップ33を乾燥させることができる。その結果、加熱ガスの使用量を削減することができ、これによって環境負荷を低減させることができる。また、第1実施形態ないし第3実施形態に比べ、乾燥処理に要する時間をより一層短縮することができる。
【0098】
また、隙間領域40cを流通する加熱ガスをさらに加熱するための加熱手段として、周縁加熱ヒータ440が第1アンダーブロック420に設けられている。つまり、環状吹出口40aから供給される直前に加熱ガスがさらに加熱されている。このため、環状吹出口40aから高温の加熱ガスが基板Wの上面Wfの周縁部Wsに供給される。しかも、この基板Wの周縁部Wsは、上記加熱ガスのみならず、周縁加熱ヒータ440によっても加熱される。したがって、第1実施形態ないし第3実施形態に比べ、基板Wの周縁部Wsの温度を短時間で基板処理に適した温度まで昇降することができる。
【0099】
また、上記実施形態では、周縁加熱ヒータ440に加え、中央加熱ヒータ450を設けている。このため、基板Wの上面Wfの面内温度を均一に保ち、基板Wが反るのを効果的に抑制することができる。また、基板Wにおいて既に反りが発生していることがあるが、これにも適切に対応可能である。このように反りを有する基板Wに対して、周縁加熱ヒータ440と中央加熱ヒータ450のヒータ出力をそれぞれ個別に調整することで、基板Wの中央付近と周縁付近での温度差が生じる。その温度差を利用することで各部の熱膨張量を個別にコントロールすることができる。つまり、ヒータ出力の調整によって、基板Wの反りを軽減させることも可能となる。
【0100】
また、上記実施形態では、隙間領域40cが、ベースブロック410と第2アンダーブロック430とで挟まれた傾斜部位と、第1アンダーブロック420と第2アンダーブロック430とで挟まれた垂直部位とで構成されている。つまり、加熱ガスの流通経路が傾斜部位から垂直部位に緩やかに変更される。したがって、傾斜部位と垂直部位との接続箇所での加熱ガスの圧損が抑制され、加熱ガスの温度低下を小さくすることができる。
【0101】
<第5実施形態>
上記実施形態では、本発明の「遮断部材」の一例に相当する遮断板41や遮断板構造体40を基板Wの上面Wfから一定の距離だけ上方に離れた位置に配置しながらベベル処理および乾燥処理を行っている。ここで、例えば
図23に示すように、鉛直方向Zにおいてベベル処理と乾燥処理とで遮断板41の位置を相違させてもよい。
【0102】
図23は本発明に係る基板処理装置の第5実施形態におけるベベル処理および乾燥処理を模式的に示す図である。同図(a)はベベル処理を示す一方、同図(b)は乾燥処理を示している。ベベル処理時においては、同図(a)に示すように、遮断板41は基板Wの上面Wfから第1距離だけ上方に離れた処理位置H1に配置される。したがって、基板Wから飛散した処理液の液滴は処理位置H1の近傍よりも低い位置で上カップ33の傾斜面334に付着する。一方、乾燥処理においては、同図(b)に示すように、遮断板41は基板Wの上面Wfから第2距離(>第1距離)だけ上方に離れた乾燥位置H2に配置される。したがって、加熱ガスは処理位置H1よりも高い乾燥位置H2と同じまたはそれよりも低い位置で上カップ33の傾斜面334に吹き付けられる。そのため、上カップ33に付着している処理液の液滴を確実に乾燥除去することができ、乾燥性能を高めることができる。
【0103】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、
図7に示すように、上円環部位332の内周面の径d332が基板Wの直径Dwよりも小さく、鉛直上方からの平面視で、上円環部位332の内周面が基板Wの周縁部Wsと重なるように位置している。この配置関係でベベル処理および乾燥処理が実行されるが、径d332が直径Dwと同一または直径Dwよりも大きい基板処理装置に対しても、本発明を適用することができる。
【0104】
また、上記実施形態では、基板Wと回転カップ部31とを回転駆動部23で同期して回転させる基板処理装置に本発明を適用している。本発明の適用範囲は、これに限定されるものではなく、基板Wと回転カップ部31とをそれぞれ異なる回転駆動部により回転させる基板処理装置に対して適用可能である。
【0105】
また、「処理液による基板の処理」の一例としてベベル処理を実行し、その後で基板を乾燥させる基板処理装置に対して本発明を適用している。本発明の適用範囲は、これに限定されるものではなく、回転する基板に処理液を供給することで基板に対して基板処理を施した後で当該基板を乾燥させる基板処理装置全般に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
この発明は、基板を回転させつつ当該基板に処理液を供給して薬液処理や洗浄処理などを施す基板処理技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1…基板処理装置
2…回転機構
4…上面保護加熱機構
5…処理機構
7…昇降機構
10…制御ユニット
10A…演算処理部
21…スピンチャック(基板保持部)
31…回転カップ部
33…上カップ
40…遮断板構造体(遮断部材)
41…遮断板(遮断部材)
46…配管(気体供給機構)
47…窒素ガス供給部(気体供給機構)
48…リボンヒータ
AX…回転軸
H1…処理位置
H2…乾燥位置
Wb…(基板の)下面
Wf…(基板の)上面
Ws…(基板の)周縁部
Z…鉛直方向